忍の末裔が呪術師になるようです   作:H-13

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初めまして。思いついたので書き出してみました。いつまで続くかわかりませんがよろしくお願いします。評価してくれたら続き書く意欲出ます。


私有地に出て来た妖怪討伐したら変な人が家に来た

2016年8月■□日。三重県○△市◾︎※山の山頂にて『窓』が特級相当の呪霊を確認。任務として五条特級呪術師に要請。

 

到着予定時刻よりも三十分程早く、莫大な呪力反応を山頂より確認。

 

五条特級呪術師が現場に到着した時には戦闘は終了しており、溶解し硝子と化している地面とそれを両断する様に地面に深々と付けられた斬撃痕のみが確認された。

 

残穢から判断し、地面を溶解させたものが『窓』が確認した呪霊と判断する。現場の状態や神域に等しい座標から鑑みてこの呪霊を「特級火葬神霊アマテラス」と仮称する。

 

上記の特級神霊を祓った者の残穢を調査した所、未登録の呪術師と断定。過去の未解決の呪詛師案件の事件の残穢とも照合結果が合わなかった為犯罪歴は無しとし、継続調査をするものとする。

 

 

 

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────ぴんぽーんっ。

 

 

山沿いの木造の一軒家。田舎特有の地主の屋敷のような都会では豪邸扱いされる家のチャイムを押したのは、胡散臭い目隠しをした白髪の男。それを出迎えるのはエプロン姿の高校生。

 

「はーい!…えーと、どちら様?」

 

「君が千葉(めぐる)君かぁ。君、呪術高専に入学する事になったから」

 

 

田舎では無いが、よく訪ねてくるのは顔見知りの爺さん婆さんと高校の知り合い位である。久しぶりに遭遇した初対面の相手は、伝えていない名前を把握して意味のわからないことを言ってくる胡散臭い人だった。よく顔を見ればヘラヘラして芯が無いように見えて一本軸がしっかりしていたり、常人とは違う様な雰囲気をヒシヒシと感じてしまう。

 

無性に逃げ出したい気持ちになってしまったが今日は休日。街中で会ったなら逃げられたがここは実家。それに、心当たりはあった。

 

「……とりあえず、お茶飲みます?」

 

返事を聞く前に元々居た台所に戻り火を消して、来客用と自分用の湯呑みを取り出す。玄関で待っているのかと思ったがなんにも言わず勝手に居間まで移動している様子だ。

 

自由な人だな、と楽観的に考えながらも、先程彼が言った「呪術高専に入学する事になったから」という言葉を咀嚼する。

 

現在巡は17歳。普通の高校に通う現役高校生である。来年には大学受験も控えているのに何を言うのかと疑問が尽きない。

 

「お待たせしました。羊羹くらいしか無かったけど良かったら食べてください」

 

「悪いねぇ〜。あ、僕は五条悟。よろしくぅ。君が高校2年生ってのも、経歴に不審な点が無いことも確認済みだけど、8月■□日に帳も降ろさないで「特級火葬神霊アマテラス」を祓っちゃったのはダメだったね。場所が場所だったから上層部が騒がしかったけどそれは僕の権限で黙らせた。でもこのまま一般人で居れば厄介事は免れられない。君の選択肢は多くないよ ?」

 

ぐだぁっと長い脚を伸ばし畳の上でダラける五条悟と名乗った男の目の前に茶と茶菓子を置く。彼が名乗りながら雰囲気と同じように緩く手をふらふらと振る仕草を見せたかと思えば、一瞬で空気が重たいものに変わる。必死に眼を切り替えないように務めながら、目の前の男を真っ直ぐに見つめる。

 

目で語る一族。それが父親から言い聞かされて来たことだ。敵対すると決まった訳では無い上に、相手は厄介事を一つ以上片付けて来てくれているのが今の言葉で分かる。無下にはできない。

 

「……両親に会って話していただけますか。決定はそれからでも遅くないはずです。」

 

「良いよ〜。」

 

絞り出すように出した言葉に被せるようにされた気の抜けた返事に、拍子抜けして頭から倒れそうになる。

 

「さっきの緊張感は…?」

 

「いや、一応事実だけは言っとかなきゃでしょ?それに抵抗されたら僕でも面倒臭いって思うくらいには強いでしょ君」

 

「初見でよくそこまで分かりますね、五条さん?」

 

「五条先生で良いよ〜。僕"も"眼に自信はあるからね。術式も中々見ない面白いもの持ってるし特筆すべきはその眼かな。良かったら見せてよ。僕の六眼でも霧がかってて全部は見えないから。」

 

目隠しを取った下には綺麗な蒼色とも翠色ともとれる宝石の様な瞳があった。目隠し外せば胡散臭さが少しは無くなるだろうと思っていたけれど、あえてそれを付けているのにも納得した。それに、その効果も。

 

「術式?とか一目で看破出来る魔眼ですか。いや、それだけじゃ眼の格が高過ぎませんか?……本来見せ付けるようなものでは無いんですが分かりました。バレてる人に隠してもしょうが無いので…」

 

「六眼も知らないでここまで力着けてるの、中々の天然記念物じゃない君?」

 

真っ黒の瞳に朱よりも深い赫が混じる。クルクルと回るように勾玉型のモノが三つ組み合わさったようなモノが浮かび上がれば、魔眼が完成する。

 

呪術高専もさっき知ったんだから情報疎いの分かってるだろと愚痴のように心の中で思いながら、確認のような形で説明を始める。

 

「これが一応俺と父さんが持ってる写輪眼って名前のやつになります。基本的には動体視力の向上とか色々あるんですけど見た人の呪力の量とかを大雑把に把握したり目を合わせた相手に幻術を掛けたり出来ます。」

 

話しながら簡単な実践として周囲の景色をあの日のものにする。

 

──尻尾が5本生えた獣人のような見た目をした化生 。僅かに浮いているものの、足元から円状に融解させる程の高温をその身から発している狐女。対峙するのは瞳の紋様が写輪眼と似て非なるものとなった千葉巡 。彼を護るように骨が、肉が、皮が上半身のみではあるが巨人を形作る。両手に剣、顔部分は天狗のようなお面を付けた半透明のソレは、右手に持つ剣を振り上げる。

 

『天叢雲剣』

 

最初で最後の一撃。妖狐も無抵抗な訳では無く、はっきりとそう口にした。意思疎通の取れるであろう凛とした、それで居て禍々しい星を降らす神の力。

 

『禍音星落火流錐』

 

拮抗は数瞬。最初から断たれていたかのように真一文字に全てが斬られた。堕ちてきた星も、妖狐も、地面も諸共に両断される。アマテラスと名づけられるソレも、その呪力で形作られた星も、不自然に溶けていく 。─────

 

本来と違う崩壊の仕方に流石の五条悟も目を見張るが、原因は時間が教えてくれた。

 

巨人の持つもう一対の剣。掲げられたそれに吸い込まれるようにして特級神霊が姿を消したからだ。

 

 

「見せてくれたって事は説明してくれるってことで良いのかな?」

 

いつの間にか周囲の景色は家の中。完全に目隠しを外した彼の疑問には、瞳の紋様を変えることで応じる。

 

「万華鏡写輪眼。それがこの目になります。基本的には写輪眼の強化版という認識で大丈夫です。あの巨人のような技ですが、須佐能乎という呼び名で呼んでいます。心の鎧、闘志が形創ったモノ、らしいです。」

 

片目毎に固有の能力がある事は伏せ、更に繋げるように話すのは巨人が持っている剣について。

 

「あの呪霊を切ったのが天叢雲剣、倒した呪霊を純粋な呪力として吸収したのが布都御魂剣になります。文献によると固有武器であり須佐能乎使用時に使える様になると。」

 

「へぇ。それに、まだまだあるんでしょ?僕の六眼より便利そうじゃん。」

 

「眼のオンオフが出来ない五条先生のよりは良いかなとは。」

 

段々と、心は許せてきた。然し、これ以上の瞳力があると看破するその眼に畏怖を抱く。あらゆる初見殺しを既知のモノとする彼の瞳は、コレと同等の力を持つと認識した。

 

 

「五条先生は、呪術界での強さはどの程度ですか? 貴方みたいなのがゴロゴロ転がっているのなら、俺は鍛え直さなきゃいけない」

 

「ん?言ってなかったっけ。僕はさい 「帰ったぞ 、巡(巡〜。ただいまー)」 あ、ご両親かな?ならちゃっちゃと行ってきまーっす。」

 

一番の疑問が中断される。目の前にいた教師が一線級、ソレも最強とは思っていない巡は、五条悟が呪術師の当たり前だと思ってしまう。特級呪霊がどの位の等級なのかも分からないまま、これが当たり前だとする勝手な認識を改める為の質問だったが、それは畑に行っていた両親の帰宅により遮られた。

 

流れる様な身のこなしで止める間もなく玄関に向かっていった彼の背中を見ながら、両親の性格も鑑みた上で今夜のおかずを1人前多くしておく必要があるだろうなと考える千葉巡であった。




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