忍の末裔が呪術師になるようです   作:H-13

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※無いです(五条悟が迎えに行ってる段階で遅れてくることは想定済みの学長であった)

みんなのお気に入りのおかげで書く意欲爆上がりです。ありがてえ


入試遅れてもここから入れる保険があるんですか!?

結論から言うと17歳にして高専に入学する事になった。実質的には18歳の高校1年生である。字面だけ見ればおかしいことこの上ない。

 

高専3年からでも良い実力では合ったが、家系や生い立ち的に呪術界に疎いと判断されたためだ。五条先生曰く

 

「青春がちょっと伸びたんだ。気にせず気楽に行こうよ。」

 

巡の両親は昨晩多くのことを五条先生と話していたらしいが、巡自身は参加しなかった。

 

改めて強さの基準として彼の自己認識を聞いたところ、当たり前の様に最強と返され、それを巡の目で真であると判断を下したからだ。

 

本来手本とすべき父から小学生のうちに勝ち星を拾い始め、中学に上がる頃には完全に追い抜いてしまった。体術も、呪力量も、術式も……

 

故に呪霊(?)の溢れる山に踏み込んだ。私有地故に人気も無く、知らない者は入り込めない場所だ。

 

天照大御神の御膝元。神域の類いの場所に居るモノがただの呪霊な訳は無いが、そんな事を呪術界に疎い巡が知る訳もない。ついでに言えば神霊もよくわかっていなかったりする。ただ知らないだけなので、学べば覚える程度の頭は備えてある。

 

自力で鍛える術を身につけ呪霊相手に経験値を積むも、その伸びの頭打ちを実感したのは五条先生が家に来た原因の戦闘だ。

 

見た目より接戦であり、相性が悪ければ食い殺され取り込まれたのはこちらであったが、それは万華鏡写輪眼のままだったらの話。縛りにて現在は封をした状態であるが、解放してしまえば直ぐにかたが着いてしまう。そのレベルの力を身につけてしまった。

 

「最強に学べるならば。」

 

狭い世界に居るよりも、もっと広い視野を持つ。このまま自己鍛錬を畑仕事の傍ら勤しんだとしても、これ以上は容易に上がらないと薄々感じてしまっている。それを一言伝えて寝た朝。父親から家宝を手渡された。

 

「巡、お前はオレよりも強い。オレから伝えることはとっくのとうに尽きていた。今からお前が千葉家当主だ。家はオレと母さんが死ぬまでは護っている。好きに帰ってこい。」

 

 

「それ特級相当じゃん。家宝が呪具なのウケる。」

 

五条先生の茶化しの様な言葉を無視して、柄を握る。ズッシリとした重みに、傷一つ無い姿に武具としての存在感を感じる。瓢箪型の扇状のモノであり、唯一無二の形状を晒している。

 

瓢摩(ひょうま)と云う。我らが祖の武具の一つと言われている。攻撃自体の吸収、反射と不変の力を持つという。餞別だ。持っていけ。」

 

まだ行かないのに気が早い事だと苦笑いしながらそれを受け取っておく。高校にはもう行く意味が無いからと、退学の意向を示さないとな。

 

「お邪魔したねー。じゃ巡、4月に迎えに来るから」

 

家宝伝承までしっかりと見届けた五条先生は、迎えも来ない朝早い時間から帰ると言い出した。玄関先まで家族3人で見送りに行けば、そう言いながら両手を組み、消えた。

 

消えたというのは少し違う様に感じたが、写輪眼を開いていなかったからかそれ以上は分からなかった。

 

ここからが楽しみだと、壮絶な笑みを浮かべながら 両親に断りを入れて山の中へ風のように走っていった。いち早くこの呪具に慣れる為。4月が余程楽しみな様子に両親は微笑み、畑仕事に出ていった。毎日山篭りの真似事をしている以外は以前と変わらぬ日常が過ぎていった。

 

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「遅刻!?なんてことしてくれてるんですか!?」

 

「だいじょぶだいじょぶ。普通に学長と面談するだけだから。遅れて機嫌悪くなってるかもだけどノープロブレム。」

 

「どーしてこうなった!!!」

 

 

絶賛車の中で冷や汗垂れ流してる千葉巡です。おはようこんにちはこんばんは。叫んだらちょっと落ち着いた。そりゃ入学するなら試験とか必要なのは分かるよ?でもこのクソ目隠し今朝の今朝まで黙っていた上に遅れるの確定とか言い出す始末。

 

「試験ってほら、誰かと手合わせとか。」

 

「無い無い。巡が力出したら試験官が可哀想だよ。」

 

どんな理由かは知らないけれど、力がしっかりと認められていること自体は喜ばしい。ただ面接には一切関係無さそうなのが怖いところではある。

 

「着いたよー。こっちこっち。」

 

「本当に東京ですか?ウチと大差ないですよコレじゃ。」

 

【東京都立呪術高等専門学校】。東京の名前を使うなら都会らしい都会に出来なかったのかと思いながらも、秘匿性を考えれば合理的だとその点だけは頷けた。

 

土地勘なんてものは無い未知の土地。遅れているがマイペースな五条先生の後をついて行かなければいけないもどかしさを言葉ごと呑み下し、その後ろをついて行く。手ぶら故に身軽であるが心は既に暗い。

 

「此処ここ。ささっと、入った入った。」

 

文句の一つでも吐いてやれば良かったが、そんな事より謝罪と手土産の一つでも渡さないと──。後者は賄賂に間違われても仕方ないタイミングではあるが、現状が現状。自分自身が元凶ではなくとも、責任の一端はあるのではないかと思う程度には常識を知っている巡だった。

 

「俺が呪術高専東京校の学長をしている夜蛾正道だ。千葉巡、お前に聞くのは一つだ。何故呪術高専に来た。」

 

 

 

……面接って何だっけ???

 

 

扉を開け真っ直ぐに見据えた先に居る学長から投げかけられた言葉に、そう純粋な疑問を持ったものの、本質を突く簡潔で良い質問だと思い直す。

 

「俺が最強になる為だ。呪術界の事も据も興味は無いが、井の中の蛙になる前に見つけ出されたのは運が良かったと今なら思う。弱者は意を突き通せない。どの世界でも本質はそれだ。だからこそ取捨選択の余地は失いたくない。……かな。」

 

「僕の前で言うねぇ。やるかい?」

 

「茶化すな悟。お前と巡が本気でぶつかれば地図を書き換えなければいけなくなるぞ。良いだろう。夜蛾正道の名において千葉巡の入学を許可する。悟、案内してやれ。」

 

「はいはい。ということで、だ。寮行くよ寮。」

 

だだっ広い敷地内に立つ男子寮の一室。木造で古そうに見えるが、意外としっかりしており綺麗な部屋だった。布団ではなくベッドだったことだけが不満点ではあったが、巡は早速家から持ってきた衣服やら嗜好品やらを"眼"から取り出して並べだした。

 

「車の中で聞いたけどほんとにあるんだね、異空間。」

 

「戦闘には使えないんで、収納スペースになってますけどね。」

 

瞳に映る紋様は手裏剣を捻じ曲げたような特殊なモノ、万華鏡写輪眼。開眼すれば固有能力が宿るとされている。巡が持つ能力は「天香山命(アメノカグヤマ)」と「月読」の二つ。対人戦において無類の強さを誇る初見殺しと、異空間に繋がる瞳からあらゆるものを出し入れ出来る能力は派手では無いが凶悪である。

 

五条悟からすれば便利程度ではあるが、呪具を常に持ち歩かなければいけない者が自由にモノを出し入れ出来る異空間を持つ利点は凄まじい。手が空いたままでも戦闘を行え、尚且つ情報を削ぎ落とせるのだ。呪具をいくら取り換えても邪魔にならないおまけ付きである。

 

「はい、この辺りの地図と、関係者の資料。ついでにどんな事やるかとか纏めといてくれたみたいだし読んどいてね〜。じゃ、ごゆっくり!」

 

「分かりました。明日でしたよね、入学式というかなんというか。」

 

「そうだよー。巡含めて男3人、女1人。合計4人だよ。」

 

「すっくな!?」

 

「呪術界の人手不足を表してるでしょ?あ、そうだこれこれ。学生証渡しとかなきゃ。とりあえず強さは僕の折り紙付き。実績も充分。でもまだ子供だ。上の連中にちょっかい出されないように二級スタートにしておいたからね。せっかくの青春、山に篭ってないで楽しみなよ。巡ならすぐ一級まで行っちゃいそうだけど。」

 

「……ありがとうございます。」

 

目の前の大人からの優しさ。どれだけ強くとも巡はまだ未成年だ。それがまだまだ悔しくもあり、嬉しくもある。五条悟が去った後、夜まで敷地内の端から端まで見て歩き、早めに就寝した。

 

思ったより疲れていたのか、思いの外直ぐに寝息を立て始めた年相応の彼の姿が、カーテンの隙間から覗く月に照らされていた。




評価感想誤字脱字頼みます。

・コメントで神威について意見頂いたので自分なりに解釈した上で名称を変更しました。詳しくは次話の設定見てねー

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