トムホ版ピーターになっちゃった…   作:匿名

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スパイダーライフ

学校が終わった合図であるチャイムを聞いたピーターは軽い足取りで校門に向かって走る。校門が閉まっているのを見て、周りを見渡したピーターは、軽く跳躍して校門を飛び越える。学校から出たピーターは行きつけのサンドイッチ屋さん、デルマーの店に向かう。

 

「やあどうも!」

 

「おう、どーも」

 

デルマーの店前に座っていた顔見知りの男性に挨拶して、店に入る。店に入ってすぐの場所にあったグミの袋を2つ掴んで店主であるデルマーの前に置く。

 

「いらっしゃいパーカー、いつものか?」

 

「こんにちはデルマーさん。あ!ピクルスを沢山挟んでぺちゃんこにしてね!」

 

「カシコマリマシタ」

 

デルマーの後ろにいた店員に要望を伝える。ピクルスを挟んでぺちゃんこに潰すのがピーターのお気に入りの食べ方だ。

 

「叔母さんは元気か?」

 

「…まあね。元気ですよ?」

 

「はは、『イタリア系の美人だぞ』」

 

『おお、良いね』

 

イタリア語で話す店員たちの会話を聞いて肩を竦めたピーターは軽く笑いながらデルマーに話しかける。

 

『ねぇ、娘さんは元気?』

 

「…10ドルだ」

 

「えぇ?5ドルでしょ?」

 

「今の言葉で10ドルだ」

 

「冗談ですよ~!はい、5ドル」

 

デルマーに5ドルを差し出すとデルマーは軽くため息をついてサンドイッチを袋に入れて渡してくる。

 

「ニューヨークで一番のサンドイッチだ。…学校は楽しいか?」

 

「学校?楽しいよ、友達もいるしね!授業はつまんないけど」

 

「授業はきちんと受けとけよ?そうじゃないと俺みたいになっちまうからな!」

 

「それはそれで最高かも!また来るね!」

 

サンドイッチを受け取ってピーターは店から飛び出していく。そんな様子を見て苦笑を零す店員たち。そんな店の中の様子は気にせずピーターは路地裏でスーツを着て、マスクをつける。

 

『こんにちは、ピーター』

 

「やあカレン、いい天気だね」

 

『ええ、今日は一日快晴の予定です。今日はどうしますか?』

 

「いつも通りパトロールかな。警察無線をジャックして」

 

『はい、ピーター』

 

ブツリと電波が繋がる音と共に無線特有の音質の悪い警察無線の声が聞こえるようになる。

 

「うーん、これだけじゃ味気ないかも…」

 

『では、ラジオを聞きますか?』

 

「うわ、最高!じゃあ適当にラジオに繋いで!」

 

『分かりました』

 

カレンがラジオに繋いだ瞬間、ピーターにとって聞き覚えしかない声が聞こえてくる。

 

【やあ!ニューヨークの善良なる市民たち!J.ジョナ.ジェイムソンのJJJラジオの時間だ!】

 

「うわ、JJJだ。今日も元気だなぁ」

 

『知り合いですか?』

 

「まあね。彼は僕の熱心なファンだよ。ある意味だけど…」

 

ピーターが黙り込んだ途端に聞こえてくるのはスパイダーマンを無駄に豊富な語彙を使って罵るJJJの声。もはや、様式美すら感じる罵倒にピーターも呆れたように笑う。

 

「ね?」

 

『チャンネルを変更します』

 

「あはは、その方がいいかも」

 

カレンが変えた先のラジオからは女性の声が響く。ラジオから聞こえる話は、ある意味でJJJの真逆の会話だった。

 

【やっほーみんな!ダニキャストの時間だよ!】

 

「ダニカのラジオ!彼女は普通に僕のファンだから最高!じゃあこれをBGMにパトロールといこっかな」

 

ダニカ・ハートという女性のラジオを聞きながら、警察無線を聞いて様々な場所を飛び回るピーター。自転車を盗もうとした男を捕まえたり、道に迷ったお婆さんに道を教えたり、色々なことをしていると直ぐに夜になった。

 

「うわっ、もうこんな時間?そろそろ帰らないとおばさんに怒られる…!」

 

『では、帰宅しますか?』

 

「うん、そろそろ帰ろうかな…って、タイミングで大抵何か起こるんだよね」

 

ビルの屋上からニューヨークを眺めていたピーターはマスクの複眼を細めながら近くの銀行を見る。その銀行には、顔を隠すためのマスクを被った謎の人影が見えた。

 

「カレン、銀行内には何人いる?」

 

『---スキャン中。スキャン完了。人数は五名のようです』

 

「武器とか持ってそう?まあ持ってると思うけど」

 

『エネルギースキャン完了。起動すれば相当な被害を齎すエネルギーを内包した武装が銀行内に三つ存在します』

 

「それってホント?…カレン、ユリに…ああ、ユリコ・ワタナベに電話をかけて」

 

『了解しました』

 

プルルル…という待機音が響く。ピーターは銀行強盗達が逃げないように銀行を見つめながら通話が繋がるのを待つ。

 

『もしもし?』

 

「やあユリ!こんな時間にごめん」

 

『いいえ、構わないわ。それでどうしたの?』

 

「実は---」

 

ピーターがカレンが調べたことをユリに伝えていくと、ユリが誰かに指示を出すような声が聞こえてくる。

 

『事情は分かったわ。今から向かうけど貴方はどうする…なんて、聞く必要も無いわね』

 

「もちろん。彼らを捕まえるのは任せてよ。捕まえたあとは君たちの仕事だ!」

 

ビルから飛び降り、ウェブを使って銀行の向かいにある店の屋上に降り立つ。ユリとの通話を一度切ったピーターはカレンがスキャンしている銀行内の様子を見ながら作戦を頭の中で組み立てる。

 

「カレン、あの銀行に通気口とかある?」

 

『発見しました。あそこです』

 

「ありがと。あそこは僕専用の入口だ」

 

銀行の近くまで音を立てずに近寄ったピーターはカレンが見つけてくれた通気口の入口を外して通気口の中に入り込む。通気口の中から下にいる銀行強盗達と武器の場所を確認する。

 

「ラッキー!アイツらみんな金庫に釘付けだ。じゃ、今のうちに…」

 

音を一切立てずにカレンの報告にあったヤバそうな武器の上まで這っていく。そして、自分の近くの床を剥がして、銀行内に侵入出来るようにすると誰も見ていない隙をついて武器の一つをウェブで天井裏に回収する。

 

「よしよし、あと二つ…」

 

また場所を変えて、もう1つの武器をウェブで回収したピーター。だが、最後の一つは銀行強盗の一人が大事そうに抱えていた。

 

「仕方ないか…カレン、電気ショックウェブ」

 

『はい、ピーター』

 

「よーく狙って…今!」

 

パシュッと軽い音を立てて放たれたウェブは武器を持った強盗に張り付く。そのウェブを伝って電撃が流れ、強盗は痙攣しながらガクリと倒れる。

 

「やあ元気?もしかしてパスワード忘れちゃった?ダメだよ、パスワードはしっかりメモしてなきゃ!それと、アベンジャーズの仮面あんまり似合ってないかも!」

 

突如として仲間の1人が倒れたことに驚いている隙に銀行強盗たちの前に降り立ったピーターは近くにいた二人にウェブを貼り付けて引き寄せると二人の頭をぶつけ合わせて気絶させる。

 

「わあ、痛そう。おおっと、ナイフを振り回したら危ないから止めようね」

 

頭をぶつけられて気絶した二人を見ていたピーターの背後からナイフを振るう強盗だったが、見ることも無くバク転で頭の上を飛び越えられて避けられ、背後に降り立ったピーターが強盗の持つナイフをウェブで奪い取って蹴り飛ばすことで気絶させる。

 

「あと君だけだね。やる?」

 

「…チッ!」

 

「ああ、ちょっと!逃げないでよね!」

 

不利を悟ったのか逃げ出そうとした最後の一人だったが、そんなことが許されるはずもなく背中にウェブを貼り付けられてピーターの元へと引き寄せられる。引き寄せられると、ピーターがそれを片手で掴んで初めに電気ショックウェブで気絶させた男の元に投げ飛ばすと二人ともを閉じ込めるようにウェブを貼り付ける。

 

「お仕事完了!…あ、キミの武器もしっかり回収しとかないとね」

 

捕らえられている強盗の近くに落ちている武器を拾うと、天井裏に置いてあった武器も回収する。そんなタイミングでパトカーのサイレン音が聞こえる。

 

「お、来た来た。僕はちょっと警察の人と話があるからそこで大人しくしとくんだよ!」

 

強盗たちを指さしながら言ったピーターは銀行の外に出ると見覚えのある女警官がいた。

 

「やあユリ。いいタイミングだね!」

 

「お疲れ様、スパイダーマン。それで、貴方の報告にあったのはその武器?」

 

「うん。カレン…ああ、僕の頼れる相棒からの情報によると、チタウリの武器を改造したものだってさ」

 

「チタウリの…分かったわ、その武器は私たちで預かるわね」

 

「ありがとう」

 

ユリの近くにいた警察官に武器を渡すとその警察官は敬礼をしながら武器を受け取ってくれる。そんな警察官に軽い敬礼を返しながらピーターは時計で時間を確認する。

 

「うわ、もうこんな時間だ。大目玉確定だな…」

 

「あら、それは大変ね。あとは任せなさい。ステイシー警部、構いませんね?」

 

「ああ、ここからは我々の仕事だ。協力感謝するよ、スパイダーマン!」

 

「どういたしまして。それじゃあね、ユリ、ステイシーさん!」

 

二人に背を向けて立ち去ろうとするピーターだったが、ステイシー警部に呼び止められる。

 

「ああ、スパイダーマン。少しいいか?」

 

「ん?何?」

 

「サインを貰えないか?私の娘が君のファンなんだ」

 

「もちろん!紙とペンある?なんて書けばいい?」

 

「グウェンへ、とだけ書いてくれ」

 

「オッケー!」

 

ステイシー警部がカバンから取り出した色紙にサインペンでサインを書いたピーターはウェブを近くのビルに貼り付ける。

 

「貴方の娘さん…グウェンさんにいつも応援ありがとうって伝えておいてね!」

 

「ああ、ありがとうスパイダーマン」

 

ウェブを引っ張ってその場から立ち去ったピーター。その後ろ姿を見送った警察官たちは銀行内で捕らえられた強盗たちに手錠をかけて逮捕していった。

 

「ただいま!メイおばさん!」

 

「今日は遅かったわね、パトロールは程々にね?」

 

「ごめんよ!着替えてくるね!」

 

「あ、ピーター!今貴方の部屋には──」

 

メイおばさんが何か言いかけていたが、勢いのままに部屋に入る。その部屋の中には、デス・スターを組み立てている途中のネッドが居た。

 

「…スパイダーマン?」

 

「…ネッド?」

 

「ああ、だから止めたのに」

 

メイおばさんが顔を手を当てて呆れたようなため息をつく。完全に硬直したネッドとピーターは顔を見合わせて──

 

「「ええええええええ!?!?」」

 

全く同じタイミングで叫び声を上げた。

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