ガンプラバトル……
それは、現在世界中で人気を博するゲームだ。
自らの手で組み上げた「ガンダム」の「プラモデル」……
縮めて「ガンプラ」をスキャンし、仮想空間に投影。
AR……拡張現実技術による操縦を用い、ガンプラ同士を戦わせるのだ。
世界中のガンプラファイター達が
己がガンプラこそ最強であると
我がガンプラこそ至高であると
ガンプラ・ザ・ガンプラの称号を夢見て 鎬を削る。
これは、そんな現在より少し未来のお話。
───────
《プロローグ 夜空に浮かぶ、星に願いを》
何処までも広大に広がり、重力は無く身体を縛られない。
日常生活では絶対に味わえない感覚。宇宙は好きだった。
──宇宙の闇の中に浮かぶ、瞬く星達の間に彗星が見える。
その光は青白く、彗星と言う割には不規則な動きをしているかのように見え……
ビ────ッ! ビ────ッ!
瞬間、けたたましい音が耳に入る。アラーム……ロックオン警報だ。
「ふん、このアタシに射撃戦を挑もうって言うの?
──────上等じゃない!」
数度の瞬きで瞳を潤し、目だけで一瞬上を見上げ、改めて目を見開く。
視界良好。敵機をレーダーと目視で補足。
───────
背部のリフターが持ち上がり、自機の最高火力を誇る二門の長射程ビーム砲が起動。
先ずは一射。狙いはざっくりと、ワンショットワンキルに拘らず、出方を見る───────
「いけぇ──っ!」
相手の動きは丸見え。
直撃はしないが、一撃で墜とされかねない火線が掠り慌てている様が見て取れる。
間を置いて、もう一射すれば大体の動き方が見えた。
行きたい所が手に取るように分かる。
そこに……火線を置いてやる。
「お次はこれよ……喰らいなさい」
両手に一丁ずつ保持したビームライフルのトリガーを引くと、先程より細いが、変わらず必殺の威力を誇る緑の光条が飛ぶ。
直撃した──ーが、弾かれた。
ビームを防ぐ盾を避け、脚を狙った筈だが。
相手はお返しとばかりに反撃を試みる様だ。
輪っかを取り出し、投擲。
赤い光の線が尾を引き、光輪がアタシを狙う。
ライフルの通らない脚と、ビームチャクラム。
そこまで見えれば、相手のガンプラが何かは丸わかりだった。
「カバカーリー、ね……射撃武装の少ない機体だってのに、舐められたものね──!」
しかし、今撃ってもチャクラムの方が速い!
なら────
「リフター!」
布石も兼ね、背部のリフターを分離。
親機と子機、お互い対角方向ににひらりとその場から離れ、致死の光輪が空を斬る。
目標が2つに分かれた事に戸惑いを隠せない様だ。
それもそのはず、本体から離れ攻撃を行う遠隔操作兵装は基本的にマニュアル操作。
目と脳で反応できても、手が追いつくはずがない───────
そこに隙が出来る!
「隙あり、よ!」
AMBACで機体の姿勢制御、チャクラムを正面に捉え、サイドスカートのクスィフィアスをアクティブ。トリガー!
電磁誘導により弾丸が高速で連続射出される。
ビームに劣らぬ速度で飛ぶ初弾が円盤を捕え、連続で弾丸が薄い板に叩き込まれる。チャクラムはもはやもみくちゃ、2つとも火を吹き爆散した。
すぐさまメイン操作を
視界が切り替わる。
リフターには、初撃でも使用した自慢の高出力ビーム砲[マーナガルム]がある。
威力故にクールタイムがあるが……感覚に間違いなし。
ちょうど、
相手もリフターが本命と気づいた様だ。
だがレンジの短いショットガンでは対処は───────ショットガンではない!?
大口径かつ長砲身で平均に比べ大振りだが、リボルバー機構を備えたそれは───────ハンドガン!
カバカーリーが射撃を開始、火線が見えない……実弾? そう思考した瞬間バチン、と大きな音が響き機体が揺れる。
ライフルと言っても差し支えないそのサイズは伊達ではなく、長い射程を持っている様だ。
「ちょこざいな……でも、有利はこちらよ!」
リフターは平たく、MSよりも
そして、MSごと動く為の大型スラスターを有しているのだ。
MSが外れれば当然速い。
それにどういう拘りかは知らないが、リボルバー式は装弾数が少なくリロードに手間がかかる。
ワンセットで当てられたのは1発だけ……DPSは良いとは言えない。
それでも、カバカーリーは驚嘆に値する速度でリロードを果たし、再びこちらを狙いすます。
しかし、リフターには当てられない。
無意味───いや、違う。
「なるほど……とにかく撃ちまくって、マーナガルムを撃たせない算段ね?」
大型砲は通常の銃器に比べ威力は高いが、取り回しは悪い。
それに、リフターにはMS程のAMBAC能力は無い。
となれば、弾幕を張り続けられればあちらは避けるしか無くなる。
さらに言えば、避ける動きを観察できる……このままならばいずれは動きを捕え、墜とすことが出来る───────!
「……とでも、思ってるんでしょうけどね!」
残念、あと一撃で沈める算段は、既についている!
6発を撃ち切った、シリンダーからカートリッジを吐き出しリロード……この瞬間を待っていた!
「この為でもあるのよ……マーナガルムの可動機構は!」
大型砲塔の根元をぐるんと回転。
本来はとある機能のついでに取り付けた、射角を広げる為の機構。
だが、長い砲塔を振り回せば質量移動で本体が動く……AMBAC機動となる。
カバカーリーをリフターの正面に、捉えた!
だがやはり、リロードが早い。
あちらも既に狙いを定めている。
相手が直進してくるならば、さぞかし狙いやすいだろう。
カバカーリーの方が速く、リフターの中心をロック……リボルバーが火を噴く!
「させない!」
リフターの機首をポップアップ。
ナイフの様なそれは、突撃時に突き刺す為の実体剣。
強固で傾斜のついた刃が、弾丸を逸らした!
お返しに……トリガー!
初撃と同じ太い光軸が黒い機体を挟み、腕と胴を抉り飛ばす。
カーバの守護神カーリーは火を吹いた後、花火となり宇宙の闇に散った。
───────
リフターと本体のMS……ガンダムが合流。
合体し、再び1つとなった。
「ふふふ……アタシは強い。強いのよ」
ギリギリの所を切り抜け、脳汁が出ているのだろうか。
でも……それでも、なんだか気分は晴れない。
「そう……貴方に負けないくらい、輝いているのよ
……なのに、どうして?」
今アタシは、宇宙に一際強い輝きを放ちながら浮かぶ白い星を追っている。
それは……とても遠かった。手も、ライフルも、マーナガルムも届かない。
それよりも、もっともっと……
周囲の星達が消えていく。
アタシも、アタシのガンダムも、闇に呑み込まれようとしているかのよう。
あの白い星には……どう足掻いても、届かない。
「……アタシも、そこに行きたい。それで、貴方に……なのに、なのに!」
悔しいってもんじゃない。
涙が零れる。
何がなんでも、そこに行きたい……でも、1人では何をやったって駄目だったんだ。
宇宙が、深い闇となって閉じようとしていた。
「アタシは……アタシは……っ!」
藁をもすがる、とでも言うのだろうか。
1つの星屑の欠片を掴む。
この手が潰れても、石ころの海を掻き分けて、貴方の下へ──
その時だった。
掴んだ星が、眩く輝き出した。
アタシの手を、握ったかの様に。
「あっ───────!?」
黄色い光を放つ星が、動き出した。
深く深く、周囲を包み込んでいた闇から抜け出し……星の瞬く宇宙に帰ってきた。
でも、やはり白い星は遠い。
「……これなら、いけるかも。
でも、まだ足りない─────」
黄色の星を掴んだ左手は離さない。
空いた右手を伸ばす。
白い星には届かない……が、それでも、と言い続ける。
「それでも……それでも!」
右手の先に、どこからともなく星が現れた。
白い星ではない。
暖かな、青い光。
それを、掴む。
─────誰かが、にこりと微笑んだ様に気がした。
そして青い星も……動き出す!
「───────っ! 速っ!?」
まるで彗星の様だった。
追ってきていた闇など既に彼方、靄のかかっていた思考も晴れていく。
呼応する様に、黄色の星も輝きを増し、アタシを引っ張ってくれている。
「───────アタシだって!」
引っ張ってもらってばかりなんて性にあわない。
2つとも、逆に引っ張ってやる。そんな気概が湧いてきた。
青、赤、黄の星が並び、宇宙を駆けていく。
白く輝く星が、間近に迫る───────
「届けええええええええええええええええ!!!」
───────
……バッタ───────ン!!
「いいぃーったぁー!?」
「うわぁ! びっくりしたぁ」
痛い。
主に後頭部が痛い。
それに視界がチカチカしている。
椅子ごと転がって倒れ、床で頭を打った様だ。
……ここは、部室だ。
バトルも星も、夢?
「……アタシ、寝ちゃってたのね……っ、イタタ……」
「あ──、えっとー。ユイ姫先輩、おはようございます?」
「あら、マヒロ……来てたのね。
……これは、恥ずかしい所を見られたわね」
「気持ちよさそーに寝てらっしゃったんで、起こすのもアレかなーと。すいやせん」
「良いのよ良いのよ、部活中に居眠りしてた私の方が悪いわ」
ここは、市立
その運動場の脇に建てられたプレハブ小屋、模型部部室の中だ。
模型部はアタシ……テンジョウ・ユイが部長を務めていて、目の前のゆるゆるとした雰囲気のくせっ毛の後輩……ハザマ・マヒロは現在唯一の部員だ。
模型部の備品のパイプ椅子に腰掛け、購買のレモンティーを啜っている。
それにしても、居眠りしちゃってたか。
椅子を立て直しながら今の時間を確認する。
「……今は17時少し前、ね。なに、今日は早かったじゃない。何時もならもっと遅くになるのに」
「今日は授業中にぐっすり寝れたんで、ちょっとふんす! と気合いを入れて早めに来やした。珍しくユイ姫先輩の方が寝てらしたんで手持ち無沙汰でしたけど」
「……授業居眠りしてるところ見られたら、単位貰えないわよ?」
「え、マジすか……今後は気をつけやす」
ちょっとゆるゆるとしすぎてて、心配にはなるが……素直で可愛い後輩だ。
「あっそれはそうと、ちょーっちガンプラ制作の事で聞きたい事がありましてね。教えて貰えますかー?」
「ふふ……勿論よ。何処が分からないの?」
「ええと、部室に置いてある雑誌に乗ってた奴を試したくて。
……どの本か忘れちゃったんですけど」
「……そこからなのね。特徴は覚えてる?」
「アレですねアレ。青いガンダムの、び、び、びる……びるどだ? ってのの特集の」
「わかったわ」
「わかったんすか!?今ので!?」
「ええ。ビルドダイバーズの特集号、初心者向けテクニックが載っているのよね? すぐ準備するわ」
「あ〜そう! それですそれです! びる、ビルドダイバーズ!」
髪についたホコリを払うついでに、まだちょっと痛む後頭部をさすりながらも立ち上がり、部室奥の本棚に向かう。
確かその号ならこの辺に───────
「あ、そいやユイ姫先輩。話変わるんですけど……噂、聞きました?」
「噂? 何のよ。新製品の情報なら欠かさずチェックしているけれど」
「いや、そういうのじゃなくて、ウチの学校のウワサです。
なんか、転校生が来るらしいってのですね。なんだかアニメかマンガのようですけど」
……夢でも見た。
彗星の様な何かがどこからともなくやってきて、闇の向こうへ連れて行ってくれたのを。
なんだか……夜が開けるのも、近い気がした。
見切り発車です。不定期に書いていこうと思います。
大筋は決まってるのでたぶん完走します。と言うかしたいです。