ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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本話戦闘シーンBGM推奨曲
鉄血のオルフェンズOSTよりStrengths Focus



宇宙の荒波に、抗って

 

 

 

「さぁーて、何時も通り前衛頼むぜ、ムツキちゃん」

 

「押忍! 任せて欲しいっス!」

 

 

今回選ばれたフィールドは、コロニーの外壁だったと思しき巨大なデブリと、岩や金属片の混じったデブリ群が織り成す暗礁宙域ステージだ。

キイチとムツキは、ツーマンセル行動で宙域に突入、フユキは別行動だ。

 

キイチが駆るスタークジェガンフルカスタムは、その名の通りUC版スタークジェガンをベースに、ジーラインフルカスタムを参考としたカスタムを施した黒き機体。

ライフルに連装ビームキャノン、ジェガン系のグレネードらしきものも多量に搭載した火力支援向きの武装でありながら、スタークジェガンから引き継いだ良好な足周りも健在な重装甲万能機だ。

そしてムツキの駆る頑駄無陽炎武頼は、漫画作品のガンダム武頼に登場する鉄機武頼を再現した機体だ。

カラーリングは陽“炎”の名に恥じぬ紅蓮色に染め上げられており、1部装甲レイアウトや関節、腰に下げた刀に原典との違いが散見される。

 

 

「さーて、お相手さんは……」

 

「まだ見当たらないような……いや、来るっスよ!」

 

「数は?」

 

「……1! 単騎駆け!?」

 

 

警戒行動を取っていた二機に、前方から凄まじいスピードで向かってくる青い機影が一つ。

複数のスラスターを吹かしながら、かの赤い彗星の様にデブリを蹴って更に加速……! 

 

 

「……撃つよ!」

 

 

フルカスタムが三条のビームを放つが、その青い影はスラスターを切り返しひらりと回避……それどころか、更に距離を詰めつつ、ドッズライフルを放つ! 

 

 

「速ぇ! あれは捕らえられない!」

 

「くっ!」

 

 

フルカスタムと陽炎武頼は、止められないと悟り回避を選択。

単騎駆けを果たしたのは……

 

 

「……敵機補足! 数は2機、フルアーマーのキャノンタイプと、近接型のガンダムタイプです!」

 

 

アオイのガンダムスターライトだ。

速力と技量を活かした強行偵察を行ったのだ。

 

 

「でかしたわアオイ! 2機しか居ないのなら……」

 

「一気に叩きましょうぞ!」

 

 

デブリ帯を抜け飛び出したのは、ユイのグローリィジャスティスとマヒロのヘルムヴィーゲ。

フルカスタムと陽炎武頼の後ろにアオイが抜け、ユイとマヒロはアオイの後を追う様に飛び出し……トライエースの2機は取り囲まれた形となる。

この場には紅葉学園チームは3機、トライエースは2機……紅葉学園チームの方が数が多い。

戦いは数だとよく言われるがそれはその通りで、1人居ると居ないとでは大違い。

目の数も手数も違うのだ。

 

 

「そこよ!」

 

「ちぃっ!」

 

「おりゃおりゃぁ!」

 

「くっ!」

 

 

グローリィジャスティスが放つ緑の光条がフルカスタムの装甲を焼き、ヘルムヴィーゲカスタムが乱射する速射砲が回避行動を取る陽炎武頼に掠る。

相手の逃げを防ぎ、かつ集中砲火を浴びせやすい包囲戦術だが……ただ有効な戦術と言うだけではなく、実際の所はユイの射撃癖対策の一環でもあった。

 

 

「これならユイ姫先輩に撃たれる心配は無いもんね……いくよぉ!」

 

「来るかっ……!」

 

 

分断された陽炎武頼にヘルムヴィーゲが突撃。

ヘルムヴィーゲが大盾を振りかざし、陽炎武頼はそれに応える様に腰に下げた太刀を抜刀───────! 

 

 

「マヒロが行ったわ!」

 

「私たちは、堅いフルアーマータイプを!」

 

「まあ、重そうなこっちに来るよな……!」

 

 

そして、スターライトとグローリィジャスティスはフルカスタムを挟み込む。

グローリィジャスティスの大型砲、マーナガルムが吼える! 

 

 

「流石の威力……それでも!」

 

 

フルカスタムは咄嗟に射線を合わせ、迫る赤白のビームに向けてビームキャノンを放つ。

威力は拮抗……紫電を撒き散らし、一対二条同士のビームが相殺し合う。

 

 

「アタシのと同等!?」

 

「それだけじゃあないよ!」

 

 

そして続け様にフルカスタムはグレネードをフルオープン。

グローリィジャスティスに向けて弾雨が迫るが、リフターの大推力で射線を躱す。

 

 

「弾速の遅いグレネードなんて、当たらないわよ!」

 

「誰がグレネードって言った?」

 

「……なっ!?」

 

 

ジェガンのシールドを使用したと思しきユニットから射出された弾頭は、うねる様な方向転換をしグローリィジャスティスを追う。

グレネードでは無く、高誘導ミサイルだったのだ。

失念されがちだが、ガンプラバトルは基本的にミノフスキー粒子が戦闘濃度に散布される事などそうそう無い。

そういうレギュレーションも無くはないが、公式大会の王道ルールでは無く……ガンプラにそういう機能を搭載する事も出来なくは無いが、リソース的にそれに特化した機体になってしまう為に採用などほぼされない。

よって、誘導ミサイルは意外にも有効な武装なのだ。

 

 

「ちぃいっ!」

 

 

連射モードに切り替えたライフルとCIWSの弾幕でミサイルを撃ち落とす……1発も当たる事は無かったが、デブリの奥に追いやられ射線を切られてしまっていた。

 

 

「……まだ私が居ますよ!」

 

「! やっぱ速ぇ!」

 

 

しかし数秒の攻防の間に、スターライトがフルカスタムに肉薄していた。

機動性、運動性はスターライトの方が圧倒的に上であり、至近距離まで詰められればフルカスタムの方が不利だ。

 

 

「いきます!」

 

 

スターライトはドッズライフルを腰にマウントし、シールド裏のサーベルをパージ。

クルクル回りながら宙に射出されたそれを右手でキャッチし、右肘を引きながらサーベルを発振、突撃しながら突き込む……! 

 

 

「接近戦に弱いと思ったら……」

 

 

後ろを取り突撃するスターライトに対して、フルカスタムは的確にアポジモーターを吹かして急速旋回、そして……左手で膝部装甲にマウントされていたユニットを引き抜いた。

 

 

「!」

 

「大間違いなんだよね!」

 

 

バチリと音を立ててサーベル同士がぶつかり合う……鍔迫り合いだ。

フルカスタムが手にするのは、ツインサーベル……ジム・ストライカーのツインビームスピアをコンパクトにしたような近接兵装。

2つあるビーム発振器の片側だけ起動し、スターライトのサーベルを受け止めたのだ。そして、もう片方のサーベルも発振し、手首を捻る。

 

 

「これは……!」

 

「こんな使い方も出来るんだよね……!」

 

スターライトのサーベルはガッチリと固定されてしまった。

二叉のサーベルが刀身を絡め取り、ビームの反発で挟まれたのだ。

所謂十手の使い方だ。

ツインサーベルの、攻めの兵装と言う印象を逆手に取った見事な護身技……! 

 

 

 

 

「セイヤァーッ!」

 

「うわぁあーっ!?」

 

 

そしてマヒロ対ムツキだが、こちらも修羅場であった。

陽炎武頼は、肉厚な太刀を用いた連撃を繰り出す。

ひたすらに全力をぶつけるその剣技は、示現流と呼ばれるそれに近い……! 

完成度の高いヘルムヴィーゲの大盾でなければ、とっくに打ち破られていただろう。

盾を保持するアームが可動で衝撃を受け流すが、それでも少々軋む音を上げていた。

 

 

「はぁッ!」

 

「ぐぅっ……!」

 

 

そして、締めの大上段からの一撃から、太刀と大盾の押し合いとなる。

パワータイプのヘルムヴィーゲだが…… 陽炎武頼の膂力も細身のイメージに反し尋常では無く、なんとヘルムヴィーゲが少々押し込まれていた……! 

 

 

「そんな痩せっぽちなのに!」

 

「痩せっぽちでも、力のあるガンダムはあるんスよ! 

ヘルムヴィーゲを使いながら、それが分からないなんて!」

 

「あうっ!?」

 

 

陽炎武頼は切り返しで横薙ぎ。

押し込む方向にアームのトルクを込めていたヘルムヴィーゲは、大盾を弾かれてしまう。

真っ直ぐ高速で転がるボールが、横から別のボールが軽く当たるだけで容易に軌道を変えられてしまう様に……一方向への力、押し込む力と言うのは、横からの力に非常に弱いのだ。

ヘルムヴィーゲは、大盾を引き剥がされた形となる……! 

 

 

「やばぁっ!?」

 

「チェェエストォ!!」

 

 

陽炎武頼は、太刀を真っ直ぐに立て掲げる蜻蛉の構えから、ヘルムヴィーゲ本体に向け全力で太刀を振り下ろす───────! 

 

ガギィン! 

 

「おっおっ、おおお……!」

 

「───────何っ!?」

 

 

ムツキは大盾に目が行き失念していたが、ヘルムヴィーゲにはもう1枚盾がある。

大盾に比べ小振りで薄い左手の盾……太刀が深く食い込んでしまったが、渾身の一撃を確かに防いでいた! 

 

 

「……うりゃっ!」

 

「くっ!」

 

 

ヘルムヴィーゲが右手の片手剣を振るう。

それを太刀を素早く抜き回避する陽炎武頼だが……続けざまに、壁の様なブ厚い大盾が迫る! 

 

 

「……はぁっ!」

 

「おお!? これも避けるなんて!」

 

 

その大盾も、足で受け屈伸の様に膝を曲げ衝撃を受け流す。

それどころか、その勢いを活かしデブリ蹴りの要領で距離を取った。

窮地を脱した様に見えた陽炎武頼だが……紅蓮の機体に向け、多数の光条が飛んできた。

ヘルムヴィーゲにも少し掠る。

 

 

「くっ、合流された!?」

 

 

辛うじてAMBACで弾幕を捌く陽炎武頼。

ムツキを狙ったのは……ユイだ。

 

 

「マヒロぉ!」

 

「ユイ姫先輩!? アオイちゃんの方は?」

 

「あっちは何とかなるわ! 

アタシ達はあのガンダムフレーム(・・・・・・・・)をやるわよ!」

 

 

 

 

 

アオイは、挟まれたサーベルを取り返せないと即座に判断し、サーベルから手を離した。

そして……連撃される前に右手のライフルで撃ち抜く算段だったフルカスタムに対して、回し蹴りを放つ! 

 

 

「はぁあっ!」

 

「うぉっ!?」

 

 

所謂、劇場版のMk-IIキック。

渾身の回し蹴りはキイチの視界を揺らし、フルカスタムをよろめかせ、ツインサーベルを取り落とさせる。

そして、スターライトはスラスターの強制噴射で距離を取り、ドッズライフルを連射。

 

 

「ちぃっ、やるじゃん……蒼の彗星とか、眉唾だったけども!」

 

「……!」

 

 

フルカスタムはライフル弾を増加装甲で的確に弾く。

盾では無く各部の装甲で受け流すのは、相当の習熟が要るテクニックだが、キイチはそれを難なく成し遂げた。

ライフルのDODS効果で無傷とはいかないが、それでもなんと装甲表面を少し抉られるだけで済んでいた。

自分では出来ない芸当を難なくやってのけたフルカスタムを見て、アオイは思わず舌を巻く。

 

 

(……すごい。ああいう事を本当にできる人もいるなんて……世界は広い……!)

 

(……おいおい、すんげぇプレッシャーだな……!)

 

 

───────アオイは所謂ゲーマーだ。

それも、「死んで憶える」だとか「鬼畜ゲー」と呼ばれるモノを、好きで幾つもこなしている生粋のそれ。

大きな壁にぶち当たれば、それを面白い、乗り越えてやると思える気概があり、その乗り越える過程を楽しめる人種だ。

今、壁にぶち当たったと認識したアオイは……儚げで可憐な容姿とは裏腹に、口角を吊り上げ、瞳孔は開き、内で獣の様な闘争心を燃やしていた……! 

 

 

「ふふっ……うふふふっ……!!」

 

 

 

 

 

「「「「……!!!」」」」ズキューz_ン

 

一方その頃、野次馬の野郎どもはアオイのギャップでやられていた。

 

「あ、アオイ、すんごい顔しとるな……」

 

 

ユウヤは持参の一眼レフでバトルの様子を……邪魔にならぬようフラッシュは焚かずに……撮影していた。

 

 

「……イイ笑顔だ。凄く楽しそうだ」

 

「まあ、楽しいんならええんやけどね」

 

「サムライをっ! やっつけろっ! フレッフレッ、マヒロっち!」

 

 

そして、アケミと呼ばれたギャルはいつの間にか赤いチアリーダー服に着替え応援をしていた。

ぶっちゃけめっちゃ浮いている。

 

 

「見ろ、チアリーダーが居るぞ、イナホ……!」

 

「え? あーしは服飾部やけど?」フレフレ

 

「いや、チアやないんかい!?」

 

 

 

 

「……ほう、あの娘はスペシャルですな」

 

「西東京最強とも噂された、蒼の彗星だよ。純粋な実力では、我が模型部でもトップだ」

 

「あの紅玉の女王を差し置いて、ですかな?」

 

「彼女は、撃ち合いならば強いがそれ以外は平均的なのさ」

 

「しかし、蒼の彗星など“実在しない”などと言う噂も聞きましたが……」

 

「ふむ? それはどういう……」

 

「……テンジョウ君、随分と良くなっているじゃないか? 連携などしよう物ならば、1度は味方の背中を撃っていただろう」

 

「ああそこは、随分と苦労したが……きっちりと矯正したよ。仕上がりはご覧の通りさ」

 

「その分、以前ほどのプレッシャーは感じられませんな」

 

「そこは、これから慣らしていけばいいのさ」

 

「ハザマも悪くない。反射神経も良いし、ごちゃごちゃした機体を良く扱えている」

 

「彼女、できる事が多い方が何かと動き易い様でな。初心者にはシンプルな方が良いと思っていたから、盲点だったよ。

……そちらのトライエースも、噂に聞く以上の実力だ。1枚落ちで良くやるものだ」

 

 

キリタニ、テラサワ、マークの間で専門トークが飛び交い話の輪に入れていなかったマカべ教頭だが、気になっていた話題が出てきた為に食い付いた。

 

 

「……そうだ、テラサワ君。君たちのチームだが、ミツルギという少女の姿が見当たらないが……大丈夫なのかね?」

 

「大丈夫です。これはそういう作戦(・・・・・・)なのですから」

 

「……もしや、全国の為の作戦を?」

 

「彼らが言ったはずでしょう。全力だ、と」

 

 

 

 

 

(……やっぱりおかしいわね。3機目はステルス機で、裏を取ってくるものだと思っていたのだけれど)

 

 

射撃戦を展開し、アオイとマヒロよりも俯瞰して戦場を見ているユイも、喉の奥に引っかかる様な違和感を感じていた。

 

 

(スナイパー? いや、でも流石にこんなにも撃って来ない事は……一体、何を狙っているの?)

 

 

バトル開始から数分。制限時間はもうすぐ折り返しと言った所だが、一向に姿を見せないフユキ機が非常に気がかりだった。

舐めプレイかとも思ったが、フルカスタムと陽炎武頼の様子を見るにそんな余裕がある訳でも無さそうだ。

寧ろ、枚数有利で押している。

 

それでもユイは、味方に当てないように細心の注意を払いながらも援護射撃を射し込む。

 

それぞれアオイ、マヒロと打ち合っているフルカスタムと陽炎武頼が、ユイの援護射撃を嫌がる様に離脱を開始し……デブリで射線が途切れる。

 

 

「ちぃいっ、ポジションチェンジね」

 

 

そうしてデブリ帯から顔を出したユイは、2機を見つけ───────

 

 

───────その瞬間、リフターの右砲塔が爆ぜた。

 

 

 

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