ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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Don't stop beeting 'en up!



激戦は、絆を育んだ

 

 

 

 

 

「───────ッッッ!?」

 

「ユイ先輩!?」

 

「あるぇ!?」

 

 

表示が一気にイエローゾーンとなり、ユイは動揺。

一撃で中破と言えるダメージを受けた僚機に、アオイとマヒロも戸惑いを隠せなかった。

そうして、頭が冷えたアオイも違和感に、そして可能性に気付いた。

 

 

(……姿が見えなかった、3機目……!)

 

「……注意して、2人とも! ステルス機のスナイパー(・・・・・・・・・・・)が居るわ!」

 

「す、ステルスしたスナイパー!? それなんてニンジャ!?」

 

 

ユイは砕け散ったマーナガルム右砲塔のダメージ状況から、下手人がどういう機体か何となく理解した。

すぐさまこの場を離れなければ、もう1射で確実に胴を撃ち抜かれる……その確信があった。

が、リフターに当たって、衝撃が伝播した為だろうか。

メインスラスターの出力が一時ダウンしている……! 

 

 

「ユイ先輩!」

 

「アオイ!?」

 

 

窮地に駆けつけたのはアオイだった。

フルカスタムが1度退いた為にフリーだったのだ。

スターライトが、グローリィジャスティスを強引にデブリ群の中に引っ張り込む……と、すぐに一瞬前までいた場所を何かが過ぎ、デブリ岩に着弾し砕いた。

 

 

「……間一髪、でしたね」

 

「そうね……ありがと、アオイ」

 

 

ユイとアオイの居る場所に、マヒロも遅れて合流してきた。

 

 

「こっからどうするんです? 見えないスナイパーとか、対処のしようが無いんじゃ……」

 

「“見えない機能”なら……今の2発を撃った事で、見える様になっている可能性が高いです」

 

「そうね」

 

 

何をしても透明であり続ける様なシステムは、チートでも無ければ存在しない。

「攻撃行動を取れば解除される」「レーダーに映らなくなるだけで実体は見える」等、制約が必ずあるのだ。

ここはゲームバランス的に調整されている部分だった。

 

 

「……ユイ先輩」

 

「なにかしら?」

 

「まだ使いたくなかったので、おふたりには黙っていたんですが……

このガンダムスターライトには、“長距離を高速移動できる機能”があります」

 

「それって……場所が分かれば、倒しに行けるってコト!?」

 

「そういう事です」

 

「……信じたわよ。大体の位置はデータリンクでマップに示すわ。

でも、正直の所もう1射受けてみなければ正確な位置は掴めないわ」

 

「もう1発……? まさか、ユイ姫先輩を囮に?」

 

「そうしないと、厳しいですね」

 

「ギリギリの綱渡りよ、でも……アオイが何とか出来るなら、勝機はあるわ……!」

 

「……任せて、ください!」

 

「……やるなら、うちも腹くくるよ! ユイ姫先輩はうちが守る!」

 

「よし、やるわよ……アオイ、先に言っておくわ。アタシのダメージ状況から考えて、スナイパーは───────」

 

 

 

 

「───────見つけたっスよ!」

 

「こんな所で隠れんぼしちゃってさぁ!」

 

 

デブリ帯の合間を縫って模型部チームに詰めてきたのは、キイチとムツキ。

フユキの姿は見て取れ無かった。

 

 

「……来たわね!」

 

「君たちなら、どんとこーい!」

 

 

待ち構えるはユイとマヒロだ。

アオイの姿は無かった。

 

 

「おいおい、あの娘は芋掘り(スナイパー狩り)にでも行ったのかい? 見つかりっこないのにさ!」

 

「見つかるかどうかは……アンタ次第かもね」

 

 

フルカスタムは再びミサイルをグローリィジャスティスに斉射。

それに合わせて、陽炎武頼は高速で強襲をかける。

が……

 

 

「アンタ達の動きは!」

 

「散々見たよ!」

 

 

ミサイル群を、割って入ったヘルムヴィーゲが大盾で受ける。

MS1機など容易く焼き尽くす爆炎を見事に受けきり、爆煙でユイとマヒロの姿が掻き消える。

 

 

「!?」

 

「おおっ!?」

 

 

そして、その中から飛び出した赤白の太い光条がフルカスタムに掠り、緑の弾幕が陽炎武頼を捉えた。

ユイの偏差射撃……直接見えずとも、レーダーや直前の状況からのアタリを付けて射撃したのだ。

咄嗟にこれを行おうとする者は多いが、実戦レベルでモノにしたファイターは数少ない。

 

 

「───────けど、それで位置バレバレだよ!」

 

 

フルカスタムが、爆煙の中に向けてカウンタースナイプ。

当たらなかったが、煙は晴れ、回避したグローリィジャスティスとヘルムヴィーゲが目に見える位置に躍り出る。

 

 

「行くっスよ!」

 

 

そして、急速に接近する陽炎武頼。

手負いのグローリィジャスティスに向け、太刀が振るわれる……! 

 

 

「───────ホイ! うちだようち!」

 

「また硬い貴女かっ……!」

 

 

またしてもマヒロが割り込み、太刀を大盾が受け止める。

そうして少しずつ下がりながら戦闘を行うユイとマヒロだったが……

 

 

(これでいい)

 

(追い込み漁っス……計画通りっスね)

 

 

それは、キイチとムツキに追い立てられているのと同義。

少しずつ……少しずつ、死地が近付いていた。

 

 

「───────来たっ!」

 

「撃ち抜け……!」

 

 

そして、グローリィジャスティスはデブリがあまり密集してない区域に飛び出た。

チーム・トライエースの、思惑通りに。

発射された砲弾が、真っ直ぐにグローリィジャスティスの胴中心に吸い込まれ───────

 

 

「ここで、撃ってくるんでしょうがァ!!」

 

「!?」

 

 

───────グローリィジャスティスが、当たる瞬間に身体を90°倒し、リフターをパージした。

本体とリフターの狭間に隙間ができ、その間を……大口径の砲弾が掠めた。

 

……ユイは、下手人が何処で撃ってくる可能性が高いか、という点も大まかに予測していた。

ここに飛び出るのは、ユイの思惑通りでもあったのだ。

 

 

「予測、出来た! アオイぃ!!」

 

「データリンク、ありがとうございます……行きまぁす!」

 

 

 

 

 

キラリ、と宇宙を流星が駆ける様が見えた。

 

 

「……チッ、避けたか」

 

 

直撃弾を回避したユイを見て少し怪訝な表情を浮かべる少女が1人。

ミツルギ・フユキだ。

主戦場から遠く離れた巨大なコロニー外壁デブリの1部……身を隠しやすく射線を通しやすい、絶好の狙撃ポイントを陣取っていた。

 

 

(……リフターと本体が分かれてからの方が動きが良い。それに、こちらの射線を把握している様だ……損傷は負わせたが、固執は出来ない。

次の狙い目は、盾のヘルムヴィーゲだな)

 

 

そう判断したフユキは、狙撃ポイントの移動を開始した。

 

 

「……アクティブ・カモはまだ使えないな。まあ、バレた所でここまで詰められる筈は───────」

 

 

そう言いかけた瞬間……螺旋状の光条が、フユキ機の砲塔(・・)を貫いた。

 

 

「───────っ!? 馬鹿な!?」

 

「見つけました! 情報通りの位置───────!」

 

 

それはアオイのスターライトが放ったドッズライフルだ。

スターライトはフユキ機、BR-ジャガーノートにとって致命的である……直上を取っている! 

 

 

(───────スナイパーは、十中八九タンク(戦車)タイプ。破損状況はAPFSDS弾のそれ、精度から考えても、恐らく単砲型よ!)

 

「情報通りの、タンクタイプ! ……しかし、四脚型!?

まるで、MT(マッスルトレーサー)……!」

 

「チッ、どういう仕掛けだ!」

 

 

ジャガーノートはスラスターを吹かしながら四脚でデブリを蹴り、タンクとは思えぬ高速移動での離脱を計った。

ガンダムシリーズでは珍しい多脚機。

バクゥ等とは違う、さながら虫の様な動きは1部の人間に嫌悪感を与えるだろうが……

 

 

「……速い!」

 

「そう簡単に捕えられると思うな……!」

 

 

……実の所、走破性についてはかなりの物だ。

陸戦だけでなく宙間戦闘等特殊シチュエーションもあるガンプラバトルに、意外な程適している。

ジャガーノートはそれに加えスラスターとAMBACすらも織り交ぜ、驚く程の機動性を見せていた。

 

 

「ライフルじゃ、埒が明かないですね……ここは、接近戦で!」

 

 

スターライトは残弾数の少ないライフルを捨て、右腰のサーベルを抜刀。

速力はスターライトの方が上……スロットルを開け、一気に詰め寄る。

狙うは、やはり戦車の弱点の上面! 

 

 

「捕らえました!」

 

「……そう来ると、思った!」

 

 

スターライトがサーベルを振り下ろし、ジャガーノートは為す術なく切り裂かれる……というアオイの予想は、裏切られた。

 

 

「……!?」

 

 

サーベルを、トンファー型のヒートブレードが受け止めていた。

タンクには似つかわしくない、明らかにマニピュレータで保持された武装───────! 

 

そして……ジャガーノートはそのまま“変形”し始めた。

上面装甲が砲身の折れた滑腔砲ごと“背部”に折り畳まれ、“両腕”が解放。

四脚の内二脚は折り畳まれ、もう二脚は“二足”に変形。

フレームが可動して“ヒトガタの胴”と化し、暗視ゴーグルの様な顔に四つ目が灯った。

その姿は……

 

 

「黙示録第三の騎士、ブラックライダー……ステルスのタネは、これですか!」

 

「その通り……これが私の、BR(ブラックライダー)-ジャガーノートだ……!」

 

 

 

 

 

「……アオイがスナイパーを見つけたわ!」

 

「あとは、やられないように……かつ、運が良ければ不意をついてぶっ潰す、ですな!」

 

「その通りよ!」

 

「フユキが見つかったぁ!?」

 

「どういう隠しダネっスか……!」

 

 

一方、2on2の会場となっているデブリ帯。

紅葉学園チームには喜色が見え、トライエースの2人は動揺していた。

 

 

「手元がお留守だよ! そりゃあ!」

 

「くっ!」

 

「モタモタしてると、そのフルアーマー剥げるわよ!」

 

「ヤバい、ドッズライフル受けたのマズったか……!」

 

 

ヘルムヴィーゲが大盾を振るい、陽炎武頼の左肩装甲を抉り飛ばす。

グローリィジャスティスのクスィフィアスがフルカスタムの傷付いた装甲を叩き、軋ませる。

 

 

「お返しっス!」

 

「おわぁ、盾が!?」

 

「本体は囮で、そっちが本命なんでしょ!」

 

「ちぃいっ、バレてたかっ!」

 

 

陽炎武頼の振るう太刀が、大盾のパネルの1枚を切り落とす。

フルカスタムがビームキャノンを撃ち、射線を合わせようとしていたリフターを穿った。

お互いに機体が限界近く、ギリギリだった。

 

マヒロとムツキが、それぞれボロボロになった得物を押し付け合う。

 

 

「言われるまで、全然気づかなかった……そのガンダム、ミカのバルバトスのお仲間なんだね……!」

 

「そういう事っスよ……!」

 

 

陽炎武頼は、ガンダムフレームを軸に武頼の再現ビルドをした機体だったのだ。

技の印象の強い原典に対し、トルクを活かして剛撃を叩き込む力の機体に仕上がっている。

しかし今はダメージで関節にも傷が付き全力を出せず、ヘルムヴィーゲのパワーと拮抗していた。

 

そしてユイとキイチの方も、殆どの弾を撃ち尽くした為に接近戦に移行していた。

グローリィジャスティスが双頭刃のサーベルを、フルカスタムが残された右のツインサーベルを抜刀。

ピンクの光刃同士が鍔迫り合う。

 

 

「凌ぎ切れば、アオイがタンクを墜としてくれる……そこまで持てば、アタシ達の勝ちよ!」

 

「そういう算段かい! 

残念ながら、狙撃だけなファイターじゃないぜ……フユキはさ!」

 

「……なんですって?」

 

 

ユイがチラリと見やった先には……バトル終了までのカウントが。

時間は、あまり残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

青と白のガンダムが舞い、二刀のサーベルを振るう。

黒と紺色の黙示録の騎士が、両拳を覆う赤熱刃を振るう。

どちらからともなく始まったその攻防は、非常に目まぐるしく。

互いに高速で刃を振るい、時に打ち合い、時に躱し。

嵐の様にすら見えるその攻防の間には、間違いなく彼女達だけの時間が流れていた。

 

 

(……凄い、凄い……! ここまでギアを上げて打ち合える人が、あの人以外にも……!)

 

(ここまで着いてこれるとは……いや、これは……まだいけるか!)

 

 

自然と口角が吊り上がる。

目を見開き、瞳孔も開く。

互いに、確信していた……相手は自分と同じタイプの(インファイトが得意な)ファイターであり、自分と同等かそれ以上の実力を持っていると……! 

 

 

「フッ……中々、どうして……!」

 

「ふふっ……楽しい……!」

 

 

思わず笑みがこぼれる。

それと共に、示し合わせる事もなく嵐は更に加速した。

もはや、第三者が割って入るなど不可能。

2人は時間など忘れ、剣戟の応報を心ゆくまで楽しんでいた。

 

 

(……ああ、この時間が……)

 

(……ずっと続けば、良いのに……!)

 

 

ブラックライダーは、上段に掲げた両腕をクロスし打ち下ろし。

スターライトは、両腕をクロスした居合抜きの様な斬り上げ……

交差した刃同士が、強くぶつかり合う───────! 

 

 

 

その時だった。

 

 

《Over the time limit.Battle ended》

 

 

宇宙の時が止まり、ブザーとともに機械音声が、時間切れを告げた。

 

 

「「……えっ」」

 

 

《This battle is a……DRAW!》

 

 

 

 

 

ホログラムが解除されると共に、ファイター達の耳にはどよめきと歓声の混じった観客達の声が飛び込んできた。

 

 

「ドローって言った? 引き分け!?」

 

「……凄い戦いだった」

 

「マヒロっち〜! やられなかっただけヨシ!」

 

「すっげー!」

 

「アニメみてーだな!」

 

「最後のアレとかドラゴンボールかよ!」

 

 

紅葉学園チーム、トライエースともになんと損失ゼロ。

よって……バトルは引き分けだった。

 

 

「「……」」

 

「……引き分け、ね」

 

「うーん、やられなかっただけマシかな?」

 

「マジかよ、俺達が1機も墜とせないなんて」

 

「よもやよもや、っスね」

 

 

両チームの間には、バトル前の剣呑な雰囲気は既に無かった。

あるのは……互いを讃える想い。

 

 

「やるじゃんかよ、女王サマ」

 

「そっちこそ、チャラ男の癖に」

 

「ここまで打ち破れなかった盾は初めてっス。感服しました!」

 

「へへへ……でもキミのカタナもすごかったよぉ」

 

 

賛辞を交わしながら、6人はバトル開始前の様に再び集った。

 

 

「……アカツキ・アオイ、と言ったな?」

 

「……はい、そうです」

 

 

フユキがギロリとアオイに視線を向け、それに少し身を震わせながらも、アオイは視線を逸らさない。

フユキの目付きは鋭いが……口元は、確かに笑っていた。

 

 

「……素晴らしいバトルだった。貴女とは、また戦いたい」

 

「……!」

 

そう言い、フユキは右手を差し出した。

アオイは一瞬逡巡する。

目を閉じ、深呼吸。

バトルは辞めると言ったが……強敵と出逢い、今、アオイの心は戦いに惹かれていた。

アオイは目を開き……両手で、フユキの手を取った。

 

 

「……はい、こちらこそ、です! 

でも……次は、私が勝たせていただきますから!」

 

「フッ……それはこちらの台詞でもある!」

 

 

それは「全国大会に出る」という言質でもあり。

ユイは微笑ましく様子を眺めながらも、心の中でガッツポーズしていた。

 

 

 

 

所は変わり、体育館2階。

下とは違い、少々重い空気が流れていた。

 

 

「……引き分け、かね」

 

「……先日も申しましたが、我々は結成されたばかりのチーム。それを踏まえれば、上々の結果でしょう」

 

「その通りですな。まさか……ここまで粘るとは」

 

「もう少し準備が整っていれば、テンジョウ君達の方に分があったかもしれませんね」

 

 

マカべ教頭の出した条件は、結果を出す事。

今回の引き分けは、見る者が見れば悪くないと言える結果だが……勝利と言う明確な形では無い為、詳しくはないマカべ教頭が認めるか、と言う不安があった。

しかし……

 

 

「……ふん、結果などどうでもよい」

 

「……は?」

 

 

マカべ教頭が放ったのは、当初とは矛盾する言葉。

彼は、和気藹々とした様子のファイター達を見やった後、踵を返した。

 

 

「私が見たかったものは見られたのだ。模型部の存続を認めよう。後の手続きは任せたまえ」

 

「は、はあ……ありがとうございます」

 

 

困惑しながらも、キリタニは去るマカべ教頭に頭を下げた。

確かな結果とはならなかったが、紅葉学園模型部は存続が認められたのだった……! 

 

 

 

 

 




《次回予告》

次回、ガンダムビルドリンカーズ第4話〜、《あの輝きを、確めに行こう》

いやー、模型部は無事に存続決定したし、アオイちゃんもやる気になってめでたしめでたし!

そんな訳で、まあちょっとはゆるゆる過ごせるかなって感じよね〜。

ところでさ、当のアオイちゃんはどこ行ったの?

へー、ガンダムベース!そんな楽しそうな所があるの!?

ねぇねぇ、うちもついてっていーい?

……デートだから、駄目ぇ!?


───────


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