末永く爆発してて欲しい
……
「出来た……!」
「お疲れ様!……っと、私も出来たよ」
ビルドスペースで腰を落ち着かせ、作業開始から2時間弱。
ガンダム端白星とGバウンサー、共に素組みが完成した。
「うん、いい出来栄えだね」
「アオイが色々教えてくれたから、綺麗に出来た……白くなった切り口は爪で擦ると消えるとか、シールはつまようじを使うと貼りやすいとか」
「どう?作ってみた感想は」
「凄く、愛着がわく……これが、僕の初めてのガンプラなんだな。よろしくな、端白星」
「うぇーい!でーきたー!!」
「ひゅいっ!?」
「アオイ?どうかしたのか?」
「き、聞き憶えのある声がしたような……ううん、気の所為だよね。ここまで来ないよね……うん、大丈夫」
「そ、そうか」
別の席では4人組席の内2人の女子が1人を抑え込み肝を冷やしていたが、アオイたちは気が付かなかった。
「……よし!ガンプラが出来た事だし、次は!」
「ガンプラバトル、だな!」
「……あれっ!?」
「む、どうした?」
アオイが鞄を覗き込み、素っ頓狂な声を上げた。
「……まずい、何時もの髪留め忘れてきちゃった」
「髪留め……バトルする時の、星の飾りのアレか」
「うん。前髪はどうにかしないといけないし……どこか、小物を売ってる所が無いか見てくるね」
「待ってくれ。髪留めなら……うん、これを使うといい」
そう言ってユウヤが取り出したのは、マゼンタ色の花の飾りの付いた髪留めだった。
「わあ、可愛い髪留め……でもこれって、ユウヤ君のじゃないよね?」
「……預かり物だよ。使わないよりは、誰かが使った方がその髪留めも浮かばれると思うしな。使ってほしい」
「うん、わかった……ふふ、ありがとう」
アオイは花の髪留めを受け取り、何時もの様に前髪を留めた。
……
「おお、実物が無いのにそこにあるようだし、握ってる感覚もする」
「最新のARコントローラだよ。凄いでしょう?」
「ああ。でもガンプラバトルはこれだけじゃない、よな」
「もちろん!」
CGSの麓の赤い火星の荒野に降り立つは、ユウヤの駆るガンダム端白星。
これより始まるは、アオイによるガンプラバトル初心者講座だ。
「まずは、右のスティックで視点移動。周りを見渡せるよ」
「ふむふむ」
ユウヤの操作に合わせて端白星が首を振り、首の可動だけで足りなくなると旋回を始める。
それに合わせてユウヤの見る画面も、映す景色が写り変わる。
「次に、左のスティックで移動だよ。スティックだけだと、歩きになるね」
「こうか……おおっ」
ユウヤが左のスティックを倒すと、その方向にドシンドシンを地を鳴らしながら端白星が歩む。
「左の親指のボタンを押しながらスティックでダッシュ!右のボタンはジャンプだよ」
「ふむ、こうだな!」
アオイの言う通りに操作すれば、端白星は腰後ろのスラスターを吹かし高速移動を開始する。
操作をやめれば、自動で制動をかけ少し滑りながら静止する。
「ダッシュボタンを2連打で緊急回避!これでだいたいの攻撃を避けられるけど、ダッシュやジャンプで使うブーストゲージが空になっちゃうから、使い所には注意だよ」
「それぞれスティックにダイヤルがあるよね?それを回せば、武器を交換するよ」
「それぞれのスティックのトリガーで攻撃!画面の真ん中のレティクルに向かって自動で攻撃するよ。武器ごとに動きの癖は違うから使って試してみてね」
「鉄血のオルフェンズのモビルスーツは、ホバー移動をする事も出来るよ。歩くより速いんだけど、少し滑るから注意してね」
「覚えることが……覚えることが多いな」
「これでもかんたん操作なんだけどね。操作項目も増えるけど、その分より細かく操作が出来るマニュアル操作もあるんだ」
「アオイたちはそっちなのか?」
「そうだよ。全国大会クラスの人達は皆マニュアルだと思う」
「ふむ、これを覚えてもまだまだ、か」
「でも、ユウヤ君筋が良いね。これなら、もうアレに挑戦してもいいかも」
「アレ」とは……バトルに臨むファイター達の登竜門とされる、初級ミッションだ。
《You have control. Mission start!》
「足を止めないで!動き続ければ、そうそう当たらないよ!」
「わかった!ブーストを切らさない様にダッシュ、だな!」
ステージを変えずにシームレスに始まったミッション。
相手は、2機の深緑の角張ったトカゲの様な顔のMS……グレイズだ。
端白星はホバー移動とダッシュの切り返しを駆使し、2機のグレイズのライフル弾幕を避ける。
「当たりそうになったら、シールド!」
「こうだな!」
ブーストゲージがカツカツとなり足が止まりそうになる端白星。
だがアオイの指示通りシールドを構える事で、ライフル弾を浴びずにやり過ごす。
暫くすると、グレイズ達のライフルはガチ、と音を立て弾を吐き出さなくなる。
「隙あり、だよ!」
「こういう時に一気に攻める、だな!」
少し立ち止まった事でブーストを回復した端白星が、リロードを開始したグレイズ達に向け吶喊。
左腰から右手でショートライフルを引き抜き、グレイズ達に向け連射しながら距離を詰める。
リロードに集中していたグレイズ達はバチバチと弾雨を浴び怯む。
だが、グレイズ達もやられているばかりではない。
端白星の接近を感知し、ライフルをかなぐり捨てバトルアックスを手に取る。
「接近戦は相手の虚を突いた物勝ち、だろう!」
そう言うとユウヤは、ショートライフルをパージする操作。
端白星はダッシュ移動しながら、ショートライフルそのものをグレイズ目掛け投擲!
前方のグレイズが飛来したショートライフルをアックスで叩き落とすが……まだそれなりに残っていた弾薬が衝撃で引火、纏めて炸裂。
火星の赤い土を巻き上げ、煙幕となる。
グレイズ達は端白星を見失った。
そして、この煙幕が致命的な隙を産んだ。
「ここだッ!」
端白星は煙幕を飛び越えるかの様な大跳躍をし、前方のグレイズ目掛け落下。
右腰からスマートメイスを右手で引き抜き、逆手に構える。
そして、そのまま落下の勢いを乗せ、思い切り叩きつけた。
ゴキィン!と重厚だが小気味いい金属音が響き、グレイズの頭が胴体にめり込む。
そのまま、メイスを叩き込まれたグレイズは沈黙し、膝を折った。
「あと一機!……なっ」
煙幕が晴れぬうちにもう一機と視線を向けるが……グレイズにめり込んだメイスが抜けない。
もう煙幕は晴れかけており、残ったグレイズが端白星を再補足。
すぐ近くに迫っていた端白星にバトルアックスを振り下ろす!
「!……ここはッ、これだ!」
もうひとつ武装がある事を思い出したユウヤは、左拳ごとシールドを叩きつける。
シールドの両サイドの黄色いパーツが展開、カギの付いたハサミ型ブレードがグレイズに食い込む。
アックスを振り上げた右腕に片方のブレードが刺さり、振り下ろしを阻止した。
そして、最後の武装が起動……ドリルが高速回転しながら打ち込まれ、2機目のグレイズのコックピットを穿いた。
《Battle ended! Mission completed!
Congratulation!》
「ふぅ……これで、終わりか」
「お見事!上手だったよ、ユウヤ君」
「ああ、アオイが教えてくれたお陰だ。ありがとう」
「ふふ……どういたしまして。初めてのガンプラ制作とバトル、どうだった?」
「もちろん、とても……」
《New fighter fieldin. Free battle mode.》
「え?」
唐突にアナウンスがされると共に、幾つもの光条が端白星を狙う。
咄嗟の操作で緊急回避に成功し、間一髪でビームを避ける。
火星の荒野に、6機のバイザーのMSが降り立った。
「いきなり乱入して不意打ちなんて!」
「な、なんなんだ君たちは?」
「そっちがなんなんだよ!」
「俺たちチームの何時もの台を勝手に使いやがってよォ」
「挙句美男美女でイチャイチャしやがって!許せん!」
「まるで意味が解らんぞ!?」
言いたい事だけ言い、何故か血涙を流している乱入者達は端白星に向け攻撃を開始。
グスタフカール、ジムIII、ドッペルホルン装備のダガーLが射撃を開始。
ビームと実弾の入り交じった濃密な弾幕が迫る。
「うわっ、とと……ぐっ!」
ビームと砲弾は何とか避けるが、間を縫って飛来したジムIIIの誘導ミサイルは避けられず、盾で受け止める。
画面にアラート。
「……なっ、1発受けただけで!?」
頼もしかったシールドだが、今のミサイル1発で抉れて割れ、ハサミとドリルはもちろん装甲としても役に立たぬ物に成り下がった。
ひとえに、ガンプラの完成度の差だろう。
やってる事は兎も角、ガンプラをしっかり作り込める者達ではあるらしい。
「ここは、俺達の場所だ!」
「ここから、出ていけぇ!」
「しまっ……」
動揺している隙に、残りの3機が一気に距離を詰めてきていた。
獅電がパルチザンを振るい、カットシーが脚のサーベルで斬りつける。
我に返ったユウヤは、間一髪で攻撃を躱すが……体勢を崩してしまった。
「卑怯なんて言うなよ……レフェリーは、居ないんだからな!」
「……!」
そこを見逃される訳もなく。
ジムストライカーがツインビームスピアを振るう。
緊急回避も出来ず、直撃コース……武装も無い。
万策尽きた───────
《New fighter fieldin.》
「させません!」
更に乱入した白い機体がサーベルで庇い、バチィ、とビームの刃が反発し合う。
アオイのGバウンサーだ。
「やぁっ!」
「おおっ!?」
「何っ!」
「この……!」
そのままジムストライカーを蹴り飛ばし、反動で跳ぶGバウンサー。
獅電にはシールドのシグルブレイドを振るい回避を強制させ、空を飛ぶカットシーにはいつの間にか持ち替えたドッズライフルで身をひねりながらフリックショット。
端白星から敵機を引き剥がす事に成功した。
「ごめんなさい、少し手間取っちゃって!」
「あ、ああ……ありがとう、アオイ」
「お礼は、バトルが終わってからでいいよ」
「チッ、女の癖にやるじゃねェか」
「ケドよぉ、こちとら全国目指してるチームなんだぜ!素組みに負けてたまるかよ!」
再び2機に弾幕が殺到する。
Gバウンサーは特段防御に優れた機体ではない、距離を離してしまったが為に、万事休すか。
《New fighter fieldin.》
「むぅん!」
割り込んだ盾が、弾幕を見事に受け流し防ぐ。
「……!その盾のこなしは」
「お、オホン……手こずっているようですね。手を貸しましょうか」
「え?その声は」
「初対面ですが、初対面ですが見ていられなかったので。加勢させてくださいな」
「は、はあ、初対面……?でも声は聞いたことがあるような……」
乱入したのは、ギャンと小豆色のイナクト。
アグリッサ仕様イナクトのファイターはサングラスにパンクファッションでありながら敬語という、なんだかインパクトの強いキャラをしている。
何にせよ、アオイたちに加勢してくれる様だ。
「なんだよなんだよ、続々素組みが集まってきやがって!」
「俺達が悪者みたいじゃねーか!」
「いやいや、どう見ても男女の仲を裂こうとする悪者だよキミたちぃ」
そう言いながらずびし、とサーベルで指さすギャン。
「ちくしょう……俺達だってなぁ!」
「見苦しいですね。そんなだから、モテないのでしょう?」
「「「「「「ち、チクショー!!」」」」」」
哀しき男達の咆哮が重なる。
もはや完全にやけっぱちだった。
しかしながら、煽るのはイナクト乗りの作戦であった。
「今です!」
「 合 点 承 知 !
唸れぇ、ギャラクシーキャノォン!発射あああああああぁぁ!!!」
遠くで待機していたガンダムフラウロスこと4代目流星号がファイターと共に吼えた。
空を裂き、2つの弾体がドッペルホルンとグスタフを穿いた。
突き抜けて地に突き刺さった弾体が爆煙を立て、2機の機体爆発が更に土を巻き上げた。
「そ、狙撃!?」
「何処から!?」
「ここやぁあ!」
間髪入れず、小さな影が土煙の中飛び込んだ。
それは、劉備ユニコーンガンダム……SDガンダム!
緑地の三白眼と全身の赤い発光部をギラつかせながら剣に光を灯す。
超 絶 龍 破 斬
「人の恋路を邪魔する奴ァ、馬に蹴られて地獄に落ちな!」
「あ、アバーッ!」
見事両断されたカットシーはしめやかに爆散。
煽って引き付けておいてから最大火力を叩き込む……ガンプラの出来で一歩譲るからこその戦術だったが、計画通りに刺さった様だ。
「まだまだ行くよぉー!」
「ヤバいぞ!」
「ハメられたからちくしょう!」
更にギャンがシールドのニードルミサイルをフルバースト。
残った3機を追い詰める。
3機はギャンに狙いを絞る……が。
「ふっ!」
「なっ!?」
「にぃ!?」
回り込んだ白い影……Gバウンサーがサーベルを投擲。
獅電とジムストライカーの脳天に突き刺さる。
「隙ありよ!」
「うわっ!」
「らばっ!」
体勢の崩れた2機を、イナクトのリニアガンが的確に撃ち抜く。
「く、くそ!丸腰の奴だけでもぉ!」
最後に残ったジムIIIがビームジャベリンを取り出し、端白星に向け吶喊する。
だが、端白星は丸腰ではなかった。
「これで終わりだっ!」
「なっ……何ぃーっ!?」
それは、アオイのGバウンサーから譲り受けたシグルブレイド。
リーチでジャベリンには勝てないので、真正面から向かってくるジムIIIに向け投擲。
シグルブレイドは胴体に深々と突き刺さった。
《Battle ended!》
勝負アリ。
哀しき男達の遠吠えは、落日に染まった。
「くそぅ!くそぅ!」
「覚えてやがれーっ!」
バイザー顔MS六人衆は、捨て台詞を吐きそそくさと逃げ帰っていった。
「うーん、なんだったんだろう……」
「よく分からないな……」
実は台風の目だった2人は何処吹く風である。
「……あれ、助けてくれた人達は?」
「居ないね……もう行っちゃったのかな。お礼、言えてなかったけど」
「うえぇぇえ〜!アオイっちともハイタッチさせてぇ〜!」
「ステイっ!ステイっ!」
「どうどう」
「バレない内に撤収よ撤収!」
「……あ、その、ユウヤ君」
「アオイ?どうかしたのか?」
「その……初めてのガンプラバトル、なんだか変な事になっちゃって……その、嫌いになってない?」
心配そうに聞くアオイに、ユウヤはキョトンとした後……にこり、と笑いながら答えた。
「いや……凄く、楽しかった!」
今回のデートは、2人にとってかけがえのない思い出となるのだった。
帰りの電車で、疲れて2人寄り添いながら寝ている所を「偶然通りすがった」ユイに激写され、揃って弄られる事になるのはまた別のお話。
《次回予告》
みぃ〜なさまお待ちかね!!!(大声疾呼)
さぁいよいよ全国大会、開幕ですぞぉ!
え?まだ予選だって?細かいことはいいのよぅ!
あーしも全力で応援するからねぇー!
ふれっふれっ、「ビルドリンカーズ」!
次回、ガンダムビルドリンカーズ!第5話!《加速していく、世界で》!
ガンプラバトルぅ、レディ〜〜……ごうっ!