ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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絆を繋ぐ、少女たち

 

 

「ビルド、リンカーズ……」

 

「……気に入らないね、自分たちが主役と言わんばかりでさ」

 

「文句があるなら実力で下してみなさいな、トライエース」

 

 

そう言葉を交わしたその時、控え室の天井付近に備えられたモニターが光を灯し、アナウンスが流れた。

 

 

『トーナメント表を発表致します。本日は、午前の部にて1回戦、午後の部にて2回戦までを予定しております。参加者は順次準備をお願いします───────』

 

 

映されたトーナメント表……枝分かれの先の両端に、ビルドリンカーズとトライエースの名はあった。

 

 

「見事に別れたっスね」

 

「こりゃ決勝戦でしかかち合えないねぇ」

 

「なら、勝ち上がるだけよ。アタシたちは第1試合……準備するわよ、2人とも!」

 

「あい!」

 

「了解です!」

 

 

「……待ちなよ」

 

「……何よ」

 

 

準備の為控え室を去ろうとするビルドリンカーズに声をかけたのは、キイチだった。

不敵に笑い……言い放つ。

 

 

 

「決勝でオレらがぶちのめすまで、負けんじゃねぇぞ」

 

「ふん、そんな事……貴方達こそ、アタシたち以外に無様にやられたら許さないから」

 

 

「……おれも、借りを返させて頂くっスよ!」

 

「うちだって!今度こそ防ぎきるからねぇ!」

 

 

「……また君と戦えるのを、楽しみにしている」

 

「……はい!決勝で会いましょう、フユキさん……!」

 

 

 

決意を新たに、ファイター達は戦いの舞台へ赴く───────!

 

 

 

…………

 

 

 

「よっしゃ、いい席あったで!」

 

「良く見えるし、みんな座れるな」

 

「イナホっぴなーいすぅ!ささ、マーくんさんにアリアさまもこっちこっち〜」

 

「ありがとうね、アケミさん♪」

 

「運転ありがとうございました、マークさん」

 

「いいって事さ、生で観戦するのは例年の事だ。それに、こういうのは同行者が多い方が楽しいものだ」

 

「アオイちゃんたちが出るのなら、私も見に来るしかないもの!」

 

 

ドームの観客席。

東京や名古屋の著名なドームに比べれば小さいが、それなりの広さはある観客席にイナホ達3人組とN-FLAGオーナー夫妻の姿はあった。

3人は、マークの運転する車に便乗しビルドリンカーズの応援に駆けつけたのだった。

因みにレントは用事が入り不在だ。

 

薄暗いドームの中央には6角形のバトルシステムが7基、対象形状に連ねられ青い光を灯している。

 

 

「バトルシステムに明かりが点いている……もうすぐか」

 

「彼女達は1回戦の第1試合。皆準備している事だろう」

 

「もう準備は万端さ」

 

「あら、キリタニ先生!お久しぶりです♪」

 

「キリタニ先生、何時ぞやの練習試合以来ですね。彼女らに着いていなくともよいので?」

 

「ライバルにあてられていてね、士気は高い。問題は無いよ。

……新装備も間に合った事だしね。昨年の汚名挽回は期待してもらっていい」

 

「せんせー、汚名挽回って使い方間違ってないすかー?」

 

「間違ってないさ。後で調べてみるといい……アリアさん、マークさんの隣に失礼しても?」

 

「ええ、構いませんことよ♪」

 

 

そうしてキリタニも席に着いた時……その男たちは、彼らの席の前列にやってきた。

 

 

「今年も始まりますなぁ、シブタさん。今年のイチオシはどこです?」

 

「やっぱり堰衛のトライエースは有力だよ、フナツ君。後は……母校だからって贔屓目にはなるけどM2Rには頑張って欲しいね」

 

「M2R……去年は2回戦敗退でしたっけ。今年は1回戦の第1試合、早速の出番ですやん」

 

「ああ。まあー、今年も奇遇な事にあのアカンたれ(女王サマ)と当たったからね。もう勝ったようなもんさ」

 

「ああ、あの誤射しまくりの紅玉(ルビー)の女王ですかぁ……今年も出てはるんですか、それはアカンですやん!」

 

 

「誰がアカンって??」

「うるるるるる…(威嚇)」

「お、落ち着け、2人とも」

「言いたい人には言わせておけばいいのよ」

 

 

「紅玉の女王は語られ尽くしているので置いておいて……ほか2人のメンバーが今年は変わってるのですなぁ。しかしこのマヒロって娘?ヘルムヴィーゲの最大の特徴(バスターソード)を外して盾を“2枚”とは!相当誤射が怖いんでしょうなぁ、可哀想に!」

 

「こっちのアオイって娘も大概さ!あんなスタンダードなガンダムタイプじゃ、手の内を全て晒している様なものだよ。それで勝てると思ってるとは、なんて傲慢なんだろうね!」

 

「これはアカンたれですわなぁ!」

 

「こんなアカンたれなら誰だって楽勝さ!」

 

 

そう締めくくりガハハと笑う2人、その後ろで……

 

 

「ガルルルルル!」アケミィ

 

「フシャーッ!」イナホォ

 

「処すか?処せばいいな?」ユウヤァ

 

「やっちゃいなさい、あんな奴ら!」アルミリアァ

 

「……落ち着きたまえよ、君たち」

 

「だって!」

 

「言わせておけばいいと言っていたのは貴女でしょうアリアさん」

 

 

ビルドリンカーズ贔屓の4人は飛びかからん程の勢いだったが、なんとかマークとキリタニ先生が抑える。

 

 

「まあ……見ていてくださいな。彼女たちはやってくれますよ。

───だから、だから落ち着け!流石に暴力はいけない!」

 

 

「うるさいなぁ」

 

「子供のしつけくらいしっかりして欲しいものですなぁ」

 

 

「ガルルルルル!!」

 

「落ち着けと言っているだろう君たち!」

 

 

 

…………

 

 

 

「ドッドドドドドウシヨウ……おなかキリキリしてきた」

 

「アオイならともかく、貴女がプレッシャーにやられるなんて」

 

「だあってぇ!こんなドームで真ん中に出る側になるなんて初めてなんすよぉ!」

 

「もう出番なんだからシャキッとしなさいよ!」

 

「アオイちゃんだって!さっきからずっと固まってるじゃないすか!?」

 

 

中央のスタジアム入口前。

ビルドリンカーズは準備を整えスタンバっていたが……マヒロが緊張でガタガタ震えていた。

アオイも微動だにしていない。

 

 

「────あっ、すみません。私に話振られました?」

 

「ほらぁ!」

 

「もう!2人とも大丈夫なの!?」

 

「……ふふっ」

 

「その笑いは何!?」

 

 

困ったような顔でクスリと笑った後、アオイは答えた。

 

 

「全く緊張していないと言えば、嘘になりますが……緊張よりも、どんな相手が出てくるのか。この大舞台で、全力で戦えるのか、と……すっごく、ワクワクしてるんです」

 

「武者震いってやつ?」

 

「です……かね?」

 

「……何よ、アオイの方は問題なさそうね」

 

「……」

 

 

慣れており自然体の先輩に、いつになく奮い立っている後輩を見て、マヒロは。

 

 

「……んぇぇえええええええい!」バチィーン!!

 

「!?」

 

 

自分の顔をビンタした。

 

 

「うちだけビビってる訳にも行かないんで!気合い注入ですぞ!」

 

「うわぁ見事なもみじが……って、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃないかも!いたい!」

 

「……ぷっ」

 

 

さながら紅葉のような赤いあとのついた両頬をさすりながら、涙目で苦笑するマヒロ。

それを見てあはは、とひとしきり笑う2人。

緊張は、完全にほぐれたようだった。

 

 

「じゃあ、そろそろ……

───────行きましょうか!」

 

「「了解!」」

 

 

 

 

 

入口から、スタジアムに1歩踏み入れれば……響く声援が耳をつんざき、薄暗い中に青い光の灯った幻想的な光景が目に映る。

バトルシステムを挟んだ反対側……対戦相手は、お待ちかねであった。

 

 

「やっと来やがった」

 

「随分と調子よさそうだね?」

 

「ほっときなさい。去年の借りは熨斗つけて返してあげるから」

 

「誤射しかしない様な奴が偉そうにしやがって。そっちの2人だって、マジで強いのかよ?」

 

「強いわよ。目ん玉かっぽじって見ておきなさいな」

 

「いーや、見る価値もねえな。今年も後進に道を譲ってもらうぜ、老害が」

 

「なんだかこの辺りの人って口の悪い人多くないですか?」

「確かに〜」

 

 

ユイが相手チーム……M2Rの3人とバチバチと火花を散らしながらも、各々手早く準備を整える。

ガンプラをスキャンし、ARが起動。

網膜投影が開始され、それぞれの目にモニター越しの出撃カタパルトの景色が映る。

そこまで準備が進めば……出撃カタパルトに立つ、両チームのガンプラがドームの大型モニターに映し出された。

 

チーム・M2Rの側は、赤と青に黒の機体。

チーム・ビルドリンカーズの側は、紅と黄に白青の機体。

 

 

「ほう、3機とも前回の練習試合より洗練されているな」

 

「シンジョウと私が監修したのですから、これくらいは」

 

「相手も強そうだ……でも」

 

「大丈夫や!気張ってけー!ビルドリンカーズ!」

 

 

 

舞台は整い、役者は揃った。

 

 

 

《Battle start!》

 

 

 

後は、雌雄を決するのみ。

 

 

 

「ゴウド・ジョウジ、Ez-8FF!」

 

「ワダ・ロクトォ!カッリストDG!」

 

「カトウ・モリヤ。ジェスタPB」

 

「チーム・M2R!ミッション開始だ!」

 

 

 

「こっちも行くわよ、2人とも!

テンジョウ・ユイ、グローリィジャスティスガンダム!」

 

「うい!ハザマ・マヒロ、ヘルムヴィーゲ・アイギス!」

 

「はい!アカツキ・アオイ……ガンダム、スターライト!」

 

「チーム・ビルドリンカーズ!Ready(準備はいい)?」

 

「「Alright(勿論)!」」

 

 

6機のMSが、一斉に宇宙空間に飛び出す。

今回選ばれたステージは、資源衛星周辺宙域。

小惑星を中心にまばらに小岩のデブリが散らばっており、身を隠せる障害物は少なく広々とした空間の広がるステージだ。

 

宇宙空間に飛び出したビルドリンカーズの3機は先日のカスタムによって、トライエースとの試合時とは違った姿となっていた。

アオイのスターライトはシールドが流用品から銃口らしきものを備えた中型の物に換装されており、ユイのグローリィジャスティスは後部スカートに尾羽の様にパネル状のユニットを下げ、マヒロのヘルムヴィーゲは最大の特徴である盾を1枚プラス……大盾を2枚引っ提げたスタイルとなり、銘も“アイギス”と名付け直していた。

 

 

「そういえば、今回の作戦は聞いていないと思うのですが。どうされますか?ユイ先輩」

 

「アオイなら解ってると思っていたけど、わざわざ聞くの?

……アタシたちの、ビルドリンカーズの門出はド派手に行くわよ。見敵必殺、サーチ・アンド・デストロイ(見つけ次第殲滅)よ!」

 

「まあ……そうだとは思いましたが!」

 

「わかりやすくて助かるます!」

 

 

と、その時。

3人の耳にアラート音が飛び込んできた。

 

 

「……先手を取られましたか!」

 

 

それと共に認めるは、青と黄に塗られた一機。

アオイのスターライト目掛け、一直線の吶喊を敢行する。

 

 

「ここはうちが!」

 

「マヒロ先輩!」

 

 

大盾を翳し、マヒロのアイギスが入れ替わり構える。

敵機は両腕に括り付けられた刃を振るい、それを突進の勢いのまま叩き付ける。

ごきんと金属音を立てが激突、盾が刃を受け止めるが……

 

 

「のぉお〜〜っ!?」

 

「まっ、マヒロせんぱーい!?」

 

 

……そのままマヒロは敵機に押され、1人陣形を外れていく。

 

 

「うっうちの事は気にせずー!……んえぇい!」

 

「ウオッ!?」

 

 

通信の途切れる寸前にマヒロはそう叫び、それから盾を力任せに振るって敵機を振り払った。

 

 

「お相手は……青い、百里だったかな?」

 

「チィイッ、やるじゃあねェーか!!!!!」

 

「うわうるっさ!?」

 

 

マヒロの相対する機体は、青と黄の派手でヒロイックなカラーリングに塗られた百里……のカスタム機、鉄血のオルフェンズ月鋼に登場する「カッリスト」。

メイン武装であるブレードシールドとついでにマニピュレーターが取り払われ、代わりに腕そのものを延長するかの様な形で金の刃を持つ斧状のブレードが備えられていた。

 

 

「去年のボンクラ共とは違ェってか!!!!!だがなぁ!!!!!!!」

 

「でっっか、声でっかいって!」

 

「こちとら新しいガンプラを持ってきてんだ!!!!!最新型が負ける訳ねェ──だろ!!!!!!!」

 

 

カッリストはその場で両の武器腕を叩き付ける様に振るい、自身を奮い立たせる。

 

 

「行くぞおおぉぁああ!!!!!!!!!!!!」

 

「は、早くとっちめないと……うちの耳がバカになるぅ!」

 

 

マヒロは目の前の相手を引き受けた事をかなり後悔しながらも、両の盾の裏から、鍔の位置に円形のモールドのある長い菜切包丁の様な武装を引き抜き、2枚盾と二刀流で応戦を開始する───────!

 

 

 

 

 

「マヒロ先輩は……」

 

「構ってる暇は無いわ!来るわよアオイ!」

 

 

取り残されたアオイとユイだったが、そこに残りの2機が接敵。

マヒロに構う暇はなく、応戦を強要される。

現れたのは、背に二門の折り畳まれたキャノンを背負った黒い機体「ジェスタ」に、両手に銃を持ち赤く塗られた……

 

 

「……はァ!?「Ez-8」!?」

 

「ええっ!?そんな、ギャザービートみたいな……」

 

「行くぜオラァ!」

 

「撃ってき……あれ、これでは避ける必要ありませんね」

 

「あらほんと」

 

 

完全に陸戦型であるはずのEz-8が宇宙に居る、その事に度肝を抜かれた2人だったが……そんな虚を突く射撃はあらぬ方向へ飛んでいく。

因みに、ギャザービートの様とアオイは称したが実際の所、赤いEz-8はブルーディスティニーシリーズの宇宙用バックパックを背負っているだけである。

牽制の指切り射撃が外れたのに構わず、改造Ez-8は右手に持ったジムライフルと左手のビームマシンガン、その両方をフルオート連射しながら……ユイのグローリィジャスティスに距離を詰める。

 

 

「去年と変わらねぇ射撃型!詰め寄ればどうと言う事はねえってなぁ!」

 

「ああ、そういえば去年アタシを墜としたのはあんただったわね……丁度いいわ!」

 

「ユイ先輩!チームワークで!」

 

「君の相手は、こっちだよ!」

 

「わっ!?」

 

 

ユイのカバーに入ろうとしたアオイの目の前、資源衛星の地面に砲撃が着弾、炸裂。

改造ジェスタの背負う二門のフォールディング・キャノンだ。

 

 

「君の事はリサーチ済みだよ。格闘戦が得意なんだってね?“蒼の彗星”さん」

 

「! 私の事を……」

 

「ふふ……近寄らなければ戦えない相手なら、射撃で嬲ればいいって事さ!」

 

 

そのままジェスタはキャノンにライフルを加え、アオイのスターライトに向け連続射撃を開始する……!

 

 

 

 

 

「これは……バラバラになったな」

 

「これでは3対3では無く、並行で3組の1対1をしている様なものだな」

 

「分断されたら、連携が取れないって事……もしかしてマズいんじゃ!?」

 

「ええっ!?そうなの?」

 

 

 

「これは……大丈夫なんでしょうかシブタさん?」

 

「いや、これでいいのさ。

M2Rは3人中2人がカッとなりやすくて連携は苦手なんだが、その分個々の実力は高いからね」

 

「ははあ……粒揃いだからさしたる問題は無いと」

 

「むしろ願ったり叶ったりさ」

 

 

観客席。

観戦者たちはバトルの推移を見守り、ファイター達の動きに一喜一憂する。

 

 

「まあ、詳しい所は……キリタニ先生に聞けば良いだろう。

どうです?彼女らは」

 

「彼女らは息が合ってきていて、中々の連携もこなせる様にはなっているが……付け焼き刃故にまだまだ詰めるべき所はある。それに、ビルドリンカーズは3人ともどうにもアクが強いからね」

 

「つまり?」

 

「分断された事はさほど問題ではない。向こうが粒揃いだと言うのなら、こちらはそれ以上さ

……「枷が外れた」と、そう見ていいさ」

 

 

 

 

 

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