ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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Q.幕間って何するんです?

A.色んな人達の掘り下げですね



ガンプラは出てこない事の方が多いかも


幕間その1

 

 

 

 

 

《幕間1 キミが待っていても、いなくても》

 

 

 

 

 

夏に向け、だんだん暑くなる昼下がり。

僕は1人、自転車を押して歩く。

あの場所に行った後は、いつもあの日(・・・)の事を思い出す。

やっぱり後悔というのは、いつまで経っても消えてはくれないな……

 

 

「やあ。久しぶりだね」

 

 

上から聞き覚えのある声が降ってきた。

顔を上げれば、想像と同じ相手の姿が見えた。

短い髪に細い目の穏やかな笑顔。

それと反対に、威圧感しかない筋骨隆々の大きな身体。

 

 

「ヒジカタ……先生、お久しぶりです」

 

「今、帰りかい?」

 

「はい」

 

「そうか……娘に会ってきてくれたんだね」

 

 

ヒジカタ(土方)サイゴ(斉梧)先生。

紅葉学園の“学園長”をしている人で、僕の親友(・・)のお父さんだ。

 

 

「私も、久々に暇が出来たから……これから会いに行く所さ」

 

 

そう言って先生は、片手に持った花束を掲げて見せる。

 

 

「先生もですか。カエデは放っておいたら、怒りますよ?」

 

「知っているさ、私の娘だもの。しかし、こればっかりはどうしようもないからね……」

 

「それは……そうですね」

 

 

 

……。

 

 

 

「……折角の祝日だ、暗い話はこれくらいにしておこうか。

そうだ、さっきイナホ君にも会ったよ」

 

「イナホに?用事があると言ってましたが」

 

「ああ、弟達に挟まれて忙しそうにしていたよ。すこし話をしたんだが、君のことも言っていたよ……最近、よく笑うようになったってね」

 

「え、そう……ですかね?」

 

「私から見ても、学園で見かける君が生き生きしてる様に見えるよ。……彼女のお陰かな?」

 

「彼、女……」

 

 

思い浮かんだのは、最近出会ったばかりの、女の子……

少し、顔が熱くなってくる。

 

 

「……あ、えっと、その、アオイとは、まだ、そういう関係では……」

 

「アカツキ君だとは一言も言っていないがね?」

 

「う」

 

 

一気に顔の温度が上がる感覚がした。

 

 

「はっはっは、そう恥ずかしがらなくても良いじゃないか。学生なんだ、青春して然るべきさ」

 

「か、からかわないでくださいよ……」

 

「からかっているんじゃないさ、君が前を向いているのが嬉しいんだよ」

 

「わっ」

 

 

そう言ってヒジカタ先生は、すれ違いざまにばんっと、痛くはないけど身体が押される位に僕の背中を叩いた。

 

 

「待たせたら申し訳ないからね、そろそろ行くよ。

……また、進展したら話を聞かせてくれ」

 

「あ、ちょっと!」

 

 

まだ話は終わってない、と喉まで出かかった……が、大体は図星だった。

冷静になってそう思い至れば、溜飲は自然と下がった。

たぶん、今は呆れた様な顔をしているんだと思う。

ふう、とため息を吐いて……僕もまだ、向かうべき所があるのを思い出し、去っていく背中とは反対方向に向かう。

 

押していた自転車に跨って、漕ぎ出す。

家に帰る際に曲がる角を無視して直進、向かう先は……

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

「部長さ〜ん!打ち上げ!やりませんか!?」

 

「何の打ち上げよ」

 

 

予選大会初日を終えた翌日、登校日。

いつもの部室には模型部メンバーと、模型部じゃない常連メンバーが集まっていた。

両手を上げてそう提案するアケミに、愛機を前に頬杖をつきながらあしらうのはユイだ。

 

 

「アケミちゃ〜ん、何の話〜?」

 

「マヒロっち!ここのみんなでさぁ、カラオケとかなんでも集まってパーティしたいなって話!」

 

「いいねぇ!」

 

「ただ騒ぎたいだけなんじゃないんですか……?」

 

「そうよね」

 

「その騒ぐだけが楽しいんじゃないすか〜」

 

「ね〜」

 

「そいや、明後日だっけ?」

 

「確か祝日だったな」

 

「そそ!せっかくなんだしさぁ、パーッとやんない?」

 

「いやいや、アタシ達は今問題(・・)を抱えてるのよ、その対策に充てなきゃ……」

 

「そんなのなんとかなるっしょー!」

 

「うちら強いもんね!」

 

「わぁ、見事なまでに天狗になってますね……」

 

「甘く見すぎなのよ本当に!」

 

 

勝手に盛り上がるマヒロとアケミ。

呆れた様な困った様な様子のアオイに、憤慨するユイ。

なるようになれ我関せずと言った様子のユウヤとイナホ。

 

 

「いいじゃないか。休息と言うのも必要だよ」

 

 

そこに、鶴の一声……意外にも、発言したのはキリタニ先生だった。

 

 

「先生!ですが……」

 

「ふむ、テンジョウ……猫背になっているな。少し失礼するよ」

「あっ、何を……あ゛っだだだだだだ!?」

 

 

キリタニ先生はするりとユイの後ろに回ると、ユイの両肩を掴んで後ろに引っ張る。

するとユイが悲鳴を上げ、その肩と背骨がバキバキと音を鳴らす。

そのまま肩を揉まれ、苦悶の表情でユイは悲鳴を上げた。

 

 

「い、いっだっ!?あだだだ……」

 

「根のつめ過ぎだ。この分だと首も目も辛かったろう?」

 

「いだだっ!わ、分かりました!休みますからぁ!」

 

 

ユイがそう言うと、キリタニ先生はパッと手を離す。

反対派の片方は陥落した。

 

 

「あ、でもだいぶ楽になった……」

 

「さて、アカツキはどうかな?」

 

「はあ……どう、と言われましても、ユイ先輩の言い分も一理あるかと」

 

「色々あって、まだこの町の事をあまり知れていないだろう……

それに、そろそろ別のゲームもやりたくなってきているんじゃないかな?」

 

 

アオイは目を逸らして、両人差し指を合わせてもじもじしていた。

……図星だったようだ。

 

 

「それじゃあ決まりだ。明後日の祝日、午後から集まって打ち上げをしよう」

 

「やったーい!」

 

「うぇーい!」

 

「やるのはいいんすけど、会場はどうするんです?」

 

「それも抜かりは無い。ここの部長は、実家がカフェを営んでいるのだよ」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「知らなかったな」

 

「言う必要無かったから、ね……」

 

「部活の仲間で“友達”だと言えば、快く貸していただけるのではないかな?」

 

「はぁ……ほんっと先生には敵いませんね……

分かりました、父には言っておきます」

 

「……お父さまも知ってられるんですね、友達居ないって」

 

「あーもう!どうせ友達なんていませんよーだ!!!」

 

「あー、アオイちゃんがユイ姫先輩泣かしたー」

 

「ええっ!?その、ごめんなさい?」

 

「なんで疑問形なのよ!」

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

「……それで、今日はユイ先輩のお宅に伺う所なのですが」

 

「誰と話をしているんだ?」

 

「わあっ!?ゆ、ユウヤくんいつの間に……ううん、独り言」

 

 

私は今、駅前……から、少しユイ先輩の家に近いバス停で降り、そこからは徒歩で向かっている所。

そこで、ユウヤくんが後ろから、自転車を押して歩きながら声をかけてきて……ちょっとびっくりしてしまった。

 

 

「そうか……アオイは好きなゲーム、出来たのか?」

 

「うん!久しぶりにACVDにDXMもやったし、バトオペに、あとサンブレイクにスプラトゥーン3とかも……あっ、言ってもわからない……かな?」

 

「うーん、ゲームはそんなにわからないけど……アオイが楽しそうなのはわかった」

 

「へ、へへ……その、ユウヤくんは、午前中何してたの?」

 

「へ?僕は……そうだな」

 

 

ユウヤくんは、訳は分からないけど少し言い淀んだ。

……何か、あったのかな?

少しあって、なんだか意を決した様に話し始める。

 

 

「……そう、だな。久しぶりに親友に会ってきたんだ」

 

ガンダムベースの時(4話後編)に言ってた、エクシアの人?

……そういえば、名前も知らないなぁ」

 

「ああ……ヒジカタ・カエデって言うんだ。学園長先生の娘さんなんだ」

 

「へえ〜、カエデさん……うん?」

 

 

あれ……?

聞き間違いじゃなければ、今ユウヤくんは「娘」って言った……よね?

 

 

「あの……そのカエデさんって、女の子?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「い、異性が親友……へぇー……」

 

 

それはもしかして。

ライバルというやつなのでは無いのだろうか。

 

……い、いやいや、1回デートしたとは言えまだ会ってひと月くらいだし友達だし、そんな浮ついた考えでは───────

 

 

「……アオイ?どうかしたのか?」

 

「えっ!?あ、ううん!何でもないよ!うんうん!」

 

「何でもある様な剣幕だな」

 

 

ちょっと立ち止まってしまってた様で、ユウヤくんは私よりも少し進んだ位置で、他人事の様にくすくすと笑ってた。

まったく、誰のせいだと。

 

 

……手を当ててみると、ちょっとほっぺが熱く感じた。

頭、冷やさないと。

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

「おっ、キタキタキタ!こっちよー!」

 

「うぇーい!」

 

「マヒロ先輩にアケミ先輩!お早いですね」

 

「そりゃもう!楽しみで夜と昼しか寝れなかったよ!」

 

「それは大変……ん?あれ、問題ないか?」

 

「ぐっすりですね」

 

 

「Cafe&Dining Leone」と白字の筆記体で書かれたシンプルな、それでいてお洒落な雰囲気を醸し出す赤レンガの看板。

落ち着いた緑の外壁が特徴的な、こぢんまりとした二階建てのお店。

それらはユイ先輩に教えて貰った特徴と一致する……ここが、ユイ先輩のご実家で間違いない。

 

車2、3台分程度の小さな駐車場には見慣れた人影。

それはいつも通りのテンションの高いお2人でした。

 

 

「キリタニ先生はまだいらっしゃってないのですか?」

 

「さっきしごおわして、今車で向かってるってさ〜」

 

「そっちもイナホちゃんは一緒じゃないのん?」

 

「用事があると言ってた」

 

「あっ……10分程前に連絡来てました。N-FLAGまで来てたそうです。」

 

「そかー、そーなるとあと10分位かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁーっ着いた!おまたせなぁ」

 

「やぁ、皆揃っているようだね」

 

 

程なくして自転車と自動車が駐車場に滑り込み、いつものメンバーが1人除いて揃った。

 

と、その時。

キィ……と静かに音を立てて、カフェ入口のドアが開く。

そこから覗くのは……

 

 

「……」

 

「「「「「……」」」」」

 

 

鋭い目付きの、髭面で強面の男。

睨めつける様に、集まった一同を見ていた。

 

 

(((((こ、怖い人出てきたー!?)))))

 

「どうも、予約していた紅葉学園模型部です」

 

 

ビビる学生一同。

それとは対照的に、物怖じせず普通に声をかけるキリタニ先生。

 

 

男は……

 

ぱあっと、にこやかに笑った。

 

 

「よ〜うこそ、お待ちしておりました!娘がお世話になっております。私、ユイの父でオーナーのタイガ(大我)と申します」

 

(((((娘!?父!?)))))

 

「ご丁寧にどうも。模型部顧問のキリタニです」

 

「ささ、中へどうぞ!」

 

 

声色も、顔の怖さからは想像もつかない程明るい。

しかも口ぶりからしてユイの父親らしい。

……似ても似つかないが。

人は見かけによらないものである。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜……なんてね」

 

「ユイ姫先輩だ!やっほー!」

 

「あれ、ユイ先輩は何故エプロンを……?」

 

 

カランカランとドアベルが鳴り、一同はぞろぞろと入店。

店内はあまり広くは無いながらも、外観同様落ち着いた雰囲気で纏められなんとも居心地が良さそうな空間となっている。

そこで待っていたのは、父・タイガ同様の店のロゴ入りエプロンを身につけたユイだった。

 

 

「夕飯、食べるんでしょ?なら腕を振るわなくっちゃね」

 

「お料理、出来るのですか?」

 

「アタシを誰だと思ってるの?全国大会覇者で、模型部部長で、ここの跡取り娘よ」

 

「当店のメニューは一通りこなせますぞ、ユイは。調理師免許は取得済みです。

ユイのオムライスは絶品で、当店の看板メニューの1つなのですよ」

 

「オムライスなら任せなさい。最高にふわとろなやつを作ってあげるから」

 

「ふわとろオムライス!絶対うまいやつじゃーん!」

 

「テンジョウ、折角の打ち上げ会だが良いのか?」

 

「休息なら午前にとりました。ストレッチなんかもしましたし。それに、アタシが居るのに看板メニューを出せないんじゃ、いずれ継ぐ店の沽券に関わります」

 

「立ちっぱなしも難ですし、どうぞお座りくださいな」

 

 

ユイは言っても聞くつもりは無いようだ。

テンジョウ家の2人に促され、一同は席につく。

 

席につくなりマヒロとアケミは、テーブルに備えられたメニュー表を広げた。

それに釣られて各々もメニューに目を通し始めるのだった。

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

「あ〜、ふわとろオムライスおいしかったぁ」

 

「むむむ……認めざるを得ない、部長さんの料理の腕前はあーしより上……!」

 

「何を張り合っとるの」

 

「中々、ボリューミーでしたね……ご馳走様でした、すっごく美味しかったです」

 

「お粗末様。ま、喜んでもらえた様で良かったわ」

 

 

結局、全員がユイの得意とするオムライスを注文する事となった。

店の看板メニューと言うだけあり絶品で、そろって舌鼓を打ったのだった。

そしてユイが空になった皿を集め厨房に持ち帰るのと入れ違いに、銀色のトレーにグラスやカップを載せたタイガによって、食後の飲み物が提供され始める。

 

 

「はい、まずはジンジャーエールにオレンジとアセロラだね」

 

「きちゃ!うちオレンジジュース!」

 

「あーしアセロラー!」

 

「ジンジャーエールはウチですウチ。ありがとうございま〜す」

 

「それとストレートティーね。コーヒーももう少しで出来ますからね〜」

 

「ありがとうございます。……あっ、これ」

 

 

グラスに注がれた色とりどりのジュースたちと、きちんとしたソーサーとティーカップに入った深いオレンジ色の紅茶が先に提供された。

湯気と共にふわりと紅茶の良い香りが漂う。

 

 

「この香り……ダージリンですね。それもけっこう上質な……ずばり、R・ホークのダージリンティーですね?」

 

「驚いた……当たりだよ。香りだけで当てられる人はそうそう居ないんだけどね」

 

「えーなになに?匂いだけでお茶がわかるの?」

 

「利き紅茶……って奴か?アオイにそんな特技があったとは」

 

「まあ……うん、特技と言う程でも。友達付き合いでよく飲んだし、パパもママもお紅茶好きだから」

 

「付き合いで紅茶……まるでお嬢様だな」

 

「べ、別に由緒ある家系とか言う訳ではないんだけどね」

 

「アカツキは、転校前は飛鳥(あすか)学園だったろう?在学していただけでも十分エリートだと思うがね」

 

 

都立飛鳥学園。

アオイがかつて暮らしていた東京の学校で、中高一貫校だ。

由緒ある家系の跡取りや企業の御曹司等も多数在学するエリート校であり、一般からの入学は少ない椅子を取り合う為に例年凄まじい倍率となっている。

所謂御曹司やお嬢様の通う様な学校の代表例として、全国的に有名な学園である。

 

 

「飛鳥学園!?え、えらいとこにおったんやな!?」

 

「あの学校か……写真で見ても綺麗な所だったな」

 

「えぇー!?すご……アオイっちすごくない!?」

 

「ほへー、道理でかしこいと思ったぁ」

 

「盛り上がってるわね。何の話?」

 

「あ、ユイ姫先輩おかえりなさーい。アオイちゃん元飛鳥学園なんだって」

 

「へぇ、飛鳥学園ねぇ……飛鳥ぁ!?」

 

「その、居ただけですし、そんなに凄い事でもないですよ」

 

「「「嘘おっしゃい」」」

 

 

重ねて言うが、飛鳥学園はコネのある由緒ある家系の人達や企業の御曹司達が殆どの席を埋める為に、一般の倍率は凄まじいものとなっている。

エリートとなるべく通う学生ばかりという事もあり、当然ながら受験の時点で非常にハイレベルだ。

コネがないと言うならば、それらの不利を実力で跳ね除けて入学した訳である。

実際凄い。

 

 

「えぇ……だけどあそこ、学費も凄まじかったわよね?」

 

「お金だけはありますからね。パパが仕事大好きなので、稼ぎまくってます」

 

「そういやアオイっち、良いとこ通ってたのになんでこっち来たの?」

 

「……パパの仕事の都合、ですね」

 

「……ほんとぉ?」

 

「ねぇねぇ、アオイちゃんってお嬢様の友達とか居るのー?」

 

「!……まあ、はい……多少は」

 

「ユイとユウヤ君にカフェオレ、それと先生にブレンドのブラックお待ちどうさまです」

「父さん、ありがと」

「あ、どうも」

「ありがとうございます」

「だってさ〜ユイ姫せんぱーい」

 

「なんでアタシの方を哀れんだ目で見るのよ」

 

「まぁ、部長さんは誰彼構わずツンケンした態度とるから……そこ直せば増えるんじゃないすかね」

 

「はァ……もうこの手のはもう定番ネタみたいになってきたわね」

 

 

そんな頭を抱えるユイに助け舟を出したのは、今しがたコーヒーを提供しに来た父親のタイガだった。

 

 

「ユイだって友達は居ないわけじゃ無いさ。ただ、仲良くしてくれる2人はどっちも遠い所に行っちゃってね」

 

「遠い所……!?」

 

「片方は故郷の大阪に帰って、もう片方は静岡に引っ越してるんだ」

 

「ほっ……そうなんですね」

 

 

そこまで言った所でタイガは、飾り棚に立てられたフォトフレームを指さした。

収まった写真には、ユイと2人の男子が写っている。

 

 

「ちょっと厳つい顔してる子の方がキドウ(鬼道)マサト(将人)君で、イケメンな子の方がカンナギ(神薙)ヒロ()君だよ。2人ともよくしてくれてねぇ……」

 

「……キドウ?カンナギ?」

 

「あら^〜確かにイケメンだぁ」

 

「ちょ、ちょっとお父さん、その辺で……」

 

「ヒロ、マサト、ユイ……あっ、「レグルス」!」

 

「れぐるす?」

 

「3年前のガンプラバトル全国大会の優勝チーム……そうですよね、ユイ先輩」

 

「あー、うん、そうよ。これ、優勝した時にチームで撮った写真なのよ」

 

「そして、史上初の全国大会3連覇を成し遂げたのがカンナギ・ヒロさん、でしたよね?」

 

「そ。そのうち最初の一冠を取ったのが、アタシ達のレグルス。残りの二冠は向こうで組んだらしい「シリウス」ってチームよ」

 

「……ほんとに凄い人だったんか部長さん」

 

「イマイチ信用無いわよね。散々言ってるでしょう優勝経験者だって」

 

 

そう言って溜息を吐くユイは、なんだか少しだけ苛立っている様だった。

ユイの視線の先には、タイガが先程指さした写真立て。

ずけずけと物を言う後輩に対しての苛立ちではなさそうだ。

視線は逸らさないまま、カフェオレを口に含む。

 

 

「で、ユイ姫先輩……どっちが本命?」

 

「ぶっ!?」

 

「うわぁっユイ先輩!?」

 

 

何気なくマヒロの放り込んだ一言に反応して、ユイは口に含んだカフェオレを噴き出した。

 

 

「あぁ、勿体ない……」

 

「お!?もしかしてもしかして〜?」

 

「成程!部長さんも恋煩いしてらっしゃると!?」

 

「は、はァ〜!?誰があんなスカした奴の事……」

 

「スカした奴?」

 

「あっ」

 

「つまり……こっちのイケメンなヒロさんの事が……!?」

 

「そこんとこ詳しく!詳しくぅ!」

 

「ああもう、だからその辺にしてって言ったのに〜!!」

 

「その辺で止めたよね!?」

 

 

ユイは過去に見た事無い程に顔を赤らめて、カーテンで隠してあった階段を駆け上がって行った。

ユイもなんだかんだ乙女だったようだ。

 

 

「逃がすか〜!」

 

「待て待て〜!」

 

 

恋バナを聞きたいだけのマヒロとアケミもその後を追っていった。

普通に考えたら2階は居住スペース……プライベート空間なのだが、躊躇無く踏み込んでいく。

 

 

「青春だねぇ」

 

 

それを微笑ましく見送るテンジョウ・タイガ。

それでいいのか。

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

それから暫く。

ユイたちは2階から戻ってこず、タイガは食器洗いに厨房に戻り、キリタニ先生は仕事の電話に出ていた。

つまるところ、アオイとユウヤとイナホの3人が残っていた。

 

 

「あの……ユウヤくん」

 

「どうした?アオイ」

 

 

暫くの沈黙を経て、恐る恐ると言った様子で声を掛けたのはアオイだった。

 

 

「さっき話してた、カエデさんのこと……なんだけど」

 

「っ!……ユウヤ、話したんか?」

 

「あ、ああ。全部は、まだ……」

 

「……うん、だと思った」

 

 

血相を変える2人。

追求が来るのだろう、ユウヤはそう思ったが……

 

 

「まだ、話さなくてもいいよ」

 

「……え?」

 

 

アオイが口にしたのは、追求の逆だった。

そして……意を決した様に、アオイは語り始めた。

 

 

「私にも、東京に親友が居て、ね……名前を、ユリカちゃんって言うの」

 

「……」

 

「その……私も、親友の事なんだけど、ちょっと色々……あってね」

 

 

アオイは、どことなく寂しそうに微笑みながらそう言った。

だが、直ぐに切り替えて、次の言葉を紡ぐ。

 

 

「でも、近いうちに紹介したいなとも、思ってるの」

 

「……!」

 

「だから……その時には、カエデさんのことを教えて欲しいな」

 

 

……たっぷり数十秒、ユウヤ達は押し黙った。

そして、こちらも意を決して、応えた。

 

 

「わかった。約束しよう」

 

「!……いいの?」

 

「ああ」

 

 

そう言って、ユウヤは右手の小指を出した。

 

 

「約束だからな……指切りげんまん、だ」

 

「あ……ふふ、うん。わかった」

 

 

「「ゆーびきーりげんまん……」」

 

 

指を絡めて約束を交わすユウヤとアオイを見て、イナホは神妙な面持ちだった。

 

 

(ユウヤがええっちゅうんならええけど……こりゃ1波乱あるな)

 

 

「「……指切った!」」

 

 

今はまだ、お互いに秘密を抱えたまま。

だが、いつか必ずそれを明かすと、約束が交わされたのだった。

 

 

 

 

 

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