ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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明日が 夢が まだ見えなくても






6話
浪漫と不穏、それと嵐


 

 

 

 

全日本ガンプラバトル選手権……その岐阜地区予選が行われているドーム内の一室。

なぜか照明を落とした薄暗い部屋の中、3人の男たちは1つのタブレット端末に目を落としていた。

 

 

 

『ふぅー、ふぅーっ……よ、よぉし!』

 

『借りは、キッチリ返したわよ!』

 

『はあ゛ぁぁぁああっ!』

 

 

タブレットに映っているのは、つい先刻(5話後編)行われた1回戦のリプレイ。

つまり、男たちは次に戦う相手のリサーチをしているのだ。

 

 

「ふむ……これが“ビルドリンカーズ”か」

 

「強い……迸るほど、強いな」

 

「成程、これは強敵だ」

 

 

薄暗い部屋で瓶底メガネにタブレットの光を反射させた男たちが、神妙な様子でそう口にする……

 

 

「しかァし!」

 

 

不意に中央の男が立ち上がり、叫ぶ。

 

 

「彼女らには足りないものがあるッ!それが解るか、同志達よッ!!!」

 

「「応ッ!!!」」

 

「伝えねばなるまい……面と向かってッ!!!」

 

 

男達は立つ……地区予選2回戦のフィールドに。

 

 

「君たちに足りない物ォ!それはッ!」

 

「情熱・思想!」

 

「理念・頭脳!」

 

「気品・優雅さ・勤勉さ!そして何よりもぉ〜ッ!!!」

 

 

「「「“浪漫”が足りないッ!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

「……は、はあ、そうですか」

 

「聞くだけムダよ、このロマン馬鹿どもの戯言は」

 

「確かに気品と優雅さは無いよね。アオイちゃん以外」

 

「え?私も大概じゃないですか?」

 

 

 

「どうやら、我々の言葉は届いていない様だ」

 

「言葉は不要、そういう訳だな」

 

「だが……それもまた、浪漫だ!」

 

「「然り!」」

 

 

「後は……戦場で、浪漫を交すのみッ!」

 

 

バトルシステムが起動。

ファイター達は自らのガンプラをシステムに預け、戦場に躍り出る───────

 

 

「往くぞ、同志達よ!手筈通りに!」

 

「「応ッ!」」

 

 

彼ら……チーム“フロック・フロッグ”は、揃ってギラついた緑色に塗りあげられた機体を駆る。

3機とも足が無く、同じ形状の腕が6本見受けられる異形の機体。

 

 

「サイコミュ高機動試験用ザク……えっ」

 

「さ、さい……なんて?」

 

「……は?正気?」

 

 

それは、ベースにサイコミュ高機動試験用ザクを使用し、3倍に増やした5連装メガ粒子砲内蔵マニピュレータを装備したカスタム機だった。

通称通りの「タコザク」、或いはコンパクトなネオ・ジオングと言った装いとなっており、メタリックグリーンのメインカラーも合わさって見る者に多大なインパクトを遺す外見だ。

 

 

「五指をメガ粒子砲とした腕を3倍の数搭載!」

 

「それを3機用意!」

 

「5×6で一機あたり30!3機で90ッ!90門のメガ粒子砲によるオールレンジ・アタックだッ!」

 

「「「浪漫!!!」」」

 

 

揃った掛け声と共に、18本の前腕が射出される。

ビルドリンカーズを迎え撃たんと、ワイヤーが宙に網を張る……

 

が、しかし。

 

 

「な、何故だ!何故、思い通りに動かん!?」

 

「絡まる……落ちる!?」

 

 

有線ハンド達は、そのオールレンジ兵装としては非常に大きなボディを大気(・・)に煽られ、有線ワイヤーを絡ませ、そして次々と地に落ちていく(・・・・・・・)

 

 

「そ、そうか!ここは……」

 

「「「地球上ッ!!!」」」

 

 

そう、今回のバトルに選ばれたステージは“軍港基地”。

ガンダムUCにて、連邦に一泡吹かせるべくジオンの旧式MS達が集ったトリントン基地を彷彿とさせる、海に面した基地ステージだ。

 

……当然ながら地球の重力と大気は存在するし、海辺の為に強い海風も吹いている。

宇宙空間での使用しか想定されていない有線ハンドが飛ぶには、酷すぎる環境であった。

全ての腕のワイヤーを伸ばしきった状態で、それがところどころ絡まり合いながら次々と腕たちが墜落し、照準を定める事すら儘ならぬ有様となる。

 

 

「くっ……一旦立て直すぞッ!」

 

「応ッ!戦略的撤退……ッ!」

 

「……いやしかし、これは……ッ!?」

 

 

立て直しを図る為、一斉にスラスターを吹かす3機のタコザク。

 

 

しかし、今回は地上ステージ。

スラスターを吹き返すには、遅かった。

重力に引かれてとっくの昔から落下し続けていた3機は、揃ってランディングギアとスラスター口を地面でガリガリと削りながら、虚しくも墜落する。

内一機は地面上で停止出来ず、そのまま海に落ちた。

 

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「「隊長ーッ!?」」

 

 

隊長と呼ばれた男のタコザクは、タコの名を冠するにも関わらず海で溺れ、沈んだ。

もっとも、完全な宇宙戦仕様である事を考えれば当然だが。

 

その時、何とか停止した2機の音感センサーがズシン、と鳴るMSの足音を拾う。

その方向を見やれば……蒼、紅、黄の信号機カラーの3機のMSが、こちらへのしのしと進軍している様が見て取れた。

 

 

「な……成程、これは……」

 

「け、検証……失敗か……ッ!」

 

 

 

 

「「「ユニバースッ!!!」」」

 

 

 

 

海に、断末魔の様に3つの爆発音が虚しく響き渡った。

 

 

 

 

 

《第6話 信じた、道を征け》

 

 

 

 

 

2回戦後、場所は移り選手、観客入り交じった休憩スペース。

熱に浮かされた様な人々の中、少し重い空気の流れる場所があった。

 

 

「……勝ちましたね」

 

「勝ったわね」

 

「これで3回戦に出場決定……順調ですね」

 

「ええ、そうね」

 

 

 

……

 

 

 

「……勝った気が、しないのですが!」

 

「そうよねぇ……まさかまるで成長していないとは」

 

「まさか、昨年もああだったのですか?」

 

「アッグで統一した編成だったわ。宇宙で溺れて2回戦敗退だったわね」

 

「うわ……」

 

 

やりたい事自体は理解できるとどこかでフォローを入れるつもりだったアオイだが、流石にアッグ統一パーティにはドン引きした。

 

 

「……まあ、去年アタシはそれ以下の初戦敗退だった訳だけどね」

 

「もうこの話やめましょう」

 

 

うふふふ、と何故か不気味に笑いながららしくない自虐に走り始めたユイ。

勝ったのに、勝った事を話すとテンションが下がっていく……彼らは妖怪の類だったのかもしれない、とすらアオイは思い始めていた。

 

不本意とはいえ、動けなくなった相手に一方的に殴られる痛さと怖さを教える戦いになったのは事実。

この結果を勝ち誇る者はそうは居ないだろう……

 

 

「うぇーい!」

 

「うちらサイキョー!」

 

 

居た。

マヒロと、マヒロ全肯定botアケミだ。

 

 

「運も実力の内ってねー!ピスピース!」

 

「完っ全に舞い上がってらっしゃりますね……」

 

「ちょっと頭痛くなってきた……」

 

「……まあ、勝ったは勝ったんだし、いいんじゃないか」

 

「せやせや、くよくよしててもしゃーないって」

 

 

 

ユウヤ、イナホも居る。

自販機の並ぶ休憩スペースで、紅葉学園模型部とビルドリンカーズ応援団は1つのテーブルを占拠して各々飲み物を手に一息入れているのだった。

昼も過ぎ、今日のプログラムは終了した為に後は帰宅するだけ……だが、足を担当するキリタニ先生とマークさんがアリアさんと共に席を外しているため、戻るのを待っているのだ。

 

 

「あっ、そだそだ忘れるとこだった〜。ユウヤくん、お願ーい」

 

「ん?ああ、あれか。よし」

 

「え、何をするの……?」

 

「記念写真だよ。無事勝ち抜いたら撮ってほしいと、マヒロ先輩に頼まれていた」

 

「気が早いわねぇ。全国大会の予選、まだその折り返しにすらたどり着いていないのに」

 

「結果だけじゃなくて、過程も大事だからね〜!こういうのもいいっしょ!」

 

「私の受け売りですか」

 

「ほらほらアオイちゃん、ユイ姫せんぱい、寄って寄って〜」

 

 

何時もの一眼レフではなく、懐から取り出したスマホを構えるユウヤ。

その写角に収まる様にマヒロは2人を抱き寄せる。

流されるままアオイは控えめにピースをしながら微笑み、なんだかんだユイもキメ顔をレンズに向ける。

 

 

「笑って笑ってー……はい、チーズ」

 

 

パシャリ、と音が鳴りシャッターが切られる。

撮り終われば直ぐに陣形は崩れ、マヒロがユウヤのスマホを覗き込む。

 

 

「……どうかな?」

 

「……うん!ばっちぐー!早速送って送って〜」

 

「わかった」

 

「どう?いい感じに撮れたかしら?」

 

「それはもう」

 

「あ……ふふ、こういうのも、いいかも」

 

 

続いてユイ、アオイも写真を確認。

なんだかんだ美人ぞろいな為に、素人目にもいい画になっているのが何となくわかった。

マヒロもスマホを取り出し、着信を確認する。そして……

 

 

「よっしゃ!すぐついったにアップじゃあ!」

 

「「待って待って待って待って待って待って!?」」

 

「ど、どったの」

 

「どったの、じゃありませんが!?」

 

「ネットリテラシーはどうしたのよ、リテラシーは!?」

 

「と言うか、何処で上げているんですか!?マヒロ先輩の個人アカウントですか!?」

 

「アケミちゃんと一緒に運営してるビルドリンカーズの公式だけど」

 

「「いつの間にそんなものが!?」」

 

「あ……本当だ。ビルドリンカーズのアカウントがある」

 

「マジかいな!?」

 

「うぇーい、あーしがやりました」

 

「ちっとは悪びれなさいよ!」

 

 

衝撃の事実。

地方の高校の1部活でしかないビルドリンカーズは、SNSで全世界に広報されているのだった。

メディア欄には部活動の様子と称して、少々のプラモ作例とメンバーの写真……アオイのものが多くその次点でユイ、多少のマヒロの自撮り……がずらりと並ぶ。

 

 

「ひ、ひぃい〜っ!?!???!?」

 

 

アオイは恐怖した。

学園の猫と戯れる様子やら、アップルパイを口いっぱいに頬張りご満悦な姿やら……いつの間にかガードの甘い所を撮られていたどころか、それが拡散されてしかもそこそこのいいねを稼いでいたのだから。

そんなの、誰だって怯えて竦む。

 

 

「おお、今しがたのつぶやきもなんだか返信が沢山付いているな」

 

「えっ、フォロワー1000人超えとるやんか!?」

 

「うわ……なんかそこまで行ってると切り捨てるにも勿体無いわね」

 

「そんな!?私の人権は!?」

 

「……一旦保留にしましょう」

 

「私のプライバシーは!?!?」

 

 

 

「なんだァ、えらく盛り上がってるじゃねぇか」

 

 

 

わちゃわちゃしていたビルドリンカーズの上から、芝居がかった男の声が降ってくる。

気付けば、ビルドリンカーズの屯するテーブルの周りを如何にも不良ですと言わんばかりの柄の悪そうな男たちが、下卑た笑みを浮かべて取り囲んでいた。

取り乱していたアオイも気を取り直す。

 

 

「まさか、こうして直接相見える事になるたァな。願ったり叶ったり、借りを返せるってェもんよ」

 

「借り……?ねぇ、誰かこいつらと知り合いなのかしら?」

 

「こんなおっとこ前な知り合いは居ないかなー」

 

「ま、全く憶えがありませんが……」

 

「とぼけんじゃねぇぜ、“アカツキ・アオイ”!それに、“オグラ・ユウヤ”!」

 

「え……僕?」

 

「ほら、アオイの知り合いだって言ってるわよ。何かやらかしたんじゃないの?」

 

「身に覚えがありませんが!?」

 

 

リーダー格の男は吼えながらアオイを睨みつける。

本当に男を見た覚えすらないアオイとユウヤは困惑するばかりだ。

 

 

「“ドームフロントベース”のバトルスペースで……公衆の面前でガンプラバトルに乱入し、ウチの連中をコテンパンにしてくれたと聞いている。その借りを返しに来た、という訳だ」

 

 

筋骨隆々としたリーダーの男の隣に立つ、リーダーとは正反対……華奢で中性的な美少年が冷静にそう告げる。

それで漸く、アオイとユウヤは合点がいった。

 

 

「ドームフロントベース!デ……お出かけした時のあのバトルの……!」

 

「グレイズを倒した所に乱入してきた人達か、そういえば……」

 

 

リーダーの男、その副官的な美少年、リーダーの影から少しだけ顔を出してビルドリンカーズを見ている少女……この3人を除けば、アオイとユウヤには確かに取り囲む男達に見覚えがあった。

 

 

「そういうこった!他人様の勝負に水を差すふてえ野郎はァ、このキサラギ(如月)ガロウ(我朗)とチーム“アウトレイジ”が成敗してくれる!あ、神妙にしや……」

 

「待て、ガロウ」

 

 

大見得を切るガロウを、美少年が手で制す。

 

 

「んだよレオ、いーまいいとこだっただろうがよォ」

 

「お前は毎度早とちりし過ぎだ。

……事実確認をしたい。貴様らは、ウチのこの連中を知っているな?」

 

「は、はい」

 

「会ったのはドームフロントベースのバトルスペース、だな?」

 

「そうだな」

 

「俺達は、ウチの連中がバトルしている所に貴様らが乱入したと聞いているが、合っているか?」

 

「それは違うな」

 

「ユウヤくんに、バトルのやり方を教えていた所にこの人達が乱入してきたんです。確かに、枚数不利を見兼ねて後から加勢して下さった通りすがりの方達は居ましたが」

 

(((ほっ……バレてないバレてない)))

 

「そうか。成程な……聞いたかガロウ?」

 

 

レオと呼ばれた美少年が冷静に状況整理した事で、アオイ達を悪者と決め付けていたガロウにも事態が理解出来ていた。

周りの下っ端達は、先程の笑みを浮かべる余裕も無く冷や汗をダラダラ流している。

 

 

「……手前ェら、ウソ付きやがったなァ!?」

 

「ひ、ひいっ!」

 

「違うんすよ、これは言葉のアヤと言うかなんというか」

 

「リア充爆発しろと言うか」

 

「問答無用ッ!親しき仲には礼儀を持て、赤の他人だろうと礼儀を持てと常日頃から言ってるだろうがァ!全員説教だ、そこに直れェ!!」

 

「こ、ここでは勘弁してくれぇ!」

 

 

カンカンになったガロウは最早止まらない。

一目散に逃げ出す下っ端達とガロウの追いかけっこが始まる……渦中だったはずのアオイ達は最早置いてけぼりだった。

 

 

「……」

 

「……迷惑をかけた。代わりに謝罪しておく」

 

「あっいえ、はい」

 

「事態を収拾せねばならんのでな、失礼する。行くぞ、ミカゲ」

 

「あっ……あっ、えっと、失礼しまひゅ」

 

 

そう言ってレオもガロウ達の後を追う為足早に去って行き、少女も噛み噛みながら一言残し、びくびくしながらレオの後に着いて行った。

 

 

「……なんやったんや」

 

「ガロウって人が男前な事はわかった」

 

「マヒロ先輩、ああいう方がタイプなんですか?」

 

 

「……不味いわねぇ」

 

 

渋い顔をしてそうつぶやくユイ。

 

 

「何か不味い事が……?」

 

「チーム・アウトレイジ。名前を聞いてピンと来たわ。

 

……彼奴らは“去年の地区大会準優勝チーム”、あのトライエースをあと一歩まで追い詰めた強豪よ」

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

「……元気にやれている様だな。少しほっとした」

 

 

ドームの連絡通路。

スマホで先程の1、2回戦のアーカイブを閲覧しながらそう独り語ちる男がいた。

見ているのはどちらもビルドリンカーズのバトル……だが、フロック・フロッグの面々とは違い、言葉通りどこか安心している様だった。

 

 

「勤勉だな。有力チームの査察かな、ガリガリ君」

 

「だから、俺はガエリ……じゃなくてギャリーだと」

 

 

その男に声をかけたのは、キリタニ先生だった。

 

 

「ってなんだ、少佐か。態々昔のイジり方をしてくれなくてもいいじゃないか……」

 

「久し振りだね、特務三佐。そっちのチーム(・・・)はどうだい?」

 

「どうだかね……って、マークにアリアまで来ているのか」

 

「地区大会の観戦は毎年の事だからな。前にも話したとは思うが」

 

「お久しぶりですわ、ギャリーお兄様」

 

 

マークさんとアリアさんもキリタニ先生と共にあった。

ガ……ギャリーと呼ばれた男と親しい様子。

 

 

東京の学校で勤務(・・・・・・・・)していた筈だったな、今は。態々こちらまで出向くほどの価値はあったか?」

 

「あるさ。なんせ、アカツキ・アオイは俺の“元教え子”だ」

 

「……えっ!?アオイちゃんが!?」

 

「ああ、やはりそういう事か」

 

 

さらりとそう事実を告げたギャリー。

キリタニ先生とマークさんは何かを察した様だったが……アリアはギャリーに「説明を要求する」と言わんばかりに視線をぶつける。

少しして、ギャリーは観念したかの様に口を開いた。

 

 

「……東京からこの岐阜まで、家族ぐるみで引っ越して来ているんだ。何か理由があるだろうとは思わなかったのか?」

 

「それはわかってます!聞きたいのは……」

 

「その理由、だろ。……少佐には元より伝えるつもりだったがこの際だ、ここで話そう。

 

アカツキ・アオイに、何があったのか。俺の知っている限りをな」

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

岐阜地区大会の開幕から数日。

ビルドリンカーズはいつもの部室にて、次の対戦に向けた作戦会議を行っていた。

 

 

「チーム・アウトレイジ。キサラギ・ガロウがリーダーを務め、メンバーがソウマ(操真)レオ(玲音)アザミノ(薊野)ミカゲ(みかげ)と言う構成よ。このチームの強みは……アオイ、分かるかしら?」

 

「白兵戦特化機で固められた故の吶喊能力と乱戦における強さ、でしょうか」

 

「その通り。この間のアーカイブによると、機体は昨年から大きく変わってはいないわ。その分情報はあるけれど……」

 

「なーんだ、対策簡単じゃないすか?」

 

「そうも行きませんよ。変わっていない、と言うのは外から見た感想で、実の所は恐らく“敢えて変えていない”。つまり、“変える必要がない程完成されてる”と言う事なんです」

 

 

ガンプラバトルシステム公式のアプリを用い、タブレットにてシミュレーションを行いながら作戦を練っている所であった。

アオイの解説を聞き「ほへー」と気の抜けた返事を返すマヒロだが、その視線はタブレットに注がれている。

昨日の息抜き(幕間1)もあり、3人の士気は……ユイは実際どうなのか不明だが……高まっていた。

 

 

「厄介なのが、ガロウの“アーベントウルフ”ね。元のドーベンウルフから射撃兵装をごっそり削った代わりに、格闘仕様のギガンティック・アームとそれに付随する重装甲、そして高出力のIフィールドが特徴よ」

 

「Iフィールド……ビームを弾いちゃうバリアでしたっけ」

 

「所謂タンク(盾役)として、岐阜地区で最上級と言っていい耐久性ですね……正直、私でも“切り札”を切らなければとても削り切れる気がしません」

 

「アタシたちビルドリンカーズはここまでゴリ押しで何とかしてきたけれど、この相手はそのゴリ押しでアタシたちの上を行く。だから、強みを押し付けられない立ち回りが必要ね」

 

「具体的な所は……どうしますか?」

 

「アタシに考えがあるわ。三段構えによる攻略作戦……倒れぬ巨人を、三本の矢を束ねて穿つのよ。まずは……」

 

 

ユイが構想していた作戦を口にする……その時。

 

 

「頼もぉ〜うッ!」

 

 

バァン、と音を立てて部室のドアが開け放たれた。

声の主は……

 

 

「……あれー!?」

 

「キサラギ・ガロウ……!?何故ここに?」

 

「おう、用があって来たんだ」

 

「態々うちの学校まで来るなんて……入校許可証が無い辺り、不法侵入でもしたのかしら?」

 

「え、あの、ユイ先輩……」

 

「何よ」

 

「服、制服……よく見てください」

 

 

ガロウは上着を袖で結んで腰に巻いたり、シャツの胸元を開けたりなど制服を大きく着崩していたが……紺色の上着にブラウンチェックのネクタイやボトムスと言う特徴は、ユイ達の制服と同じものであった。

それ即ち。

 

 

「あー、もしかして……うちの生徒?」

 

「同じ学校の人だったんだ!?」

 

「そういう事だ。不法侵入だなどと、人聞きの悪い」

 

 

ガロウの後ろから、レオも姿を現す。

レオもまた、紅葉学園の制服を……ガロウと違ってキッチリ正しく……身にまとっていた。

 

 

「それは謝るわ。……で、要件は?」

 

「ああ、それなんだがな。……おい、ガロウ」

 

 

レオが呼び止めるのも聞かず、ガロウはずんずんと歩み……アオイの前で静止した。

そして。

 

 

「本ッッッ当に……申し訳ねェ!」

 

「え……あ、え!?」

 

 

飛び出したのは謝罪。

そして、土下座。

全力の詫びだった。

 

 

「え、えっと……」

 

「ウチのモンから話は聞いたッ!あの後こってり絞っておいたッ!頭ッから決め付けてかかって、本当に申し訳ねェ!この通りだッ!」

 

「あ、あの……誤解は、解いて頂けた……んですよね?」

 

「そうだッ!」

 

「その、顔上げてください!過ぎた事ですし、それ程気にしてはいませんから……」

 

「嫌だッ!」

 

「嫌なんですか!?」

 

「この詫びを受け取って貰わなきゃあ、俺の気がすまねェ!」

 

「受け取っているつもりですが!?えっと、その……ど、どうしろと!?」

 

 

もう良いと言われても土下座を止めないガロウ。

アオイは困惑した。

とりあえず隣に居たユイに目線で助けを求めたが、ユイは静かに首を横に振った。

 

 

「もう良いと言っているだろ」

 

「痛ってぇ!」

 

 

土下座したままのガロウの後頭部にずびし、とレオのチョップが突き刺さる。

そうして顔を上げたガロウは、土下座の際に打ち付けたのか額も真っ赤だった。

 

 

「……いいのか?」

 

「……いい、ですよ?」

 

 

ガロウの両目から、ぶわっと涙が溢れ出す。

 

 

「恩に着る……ッ!」

 

「泣くほどですか!?」

 

 

「騒がせてすまないな。コイツは見ての通りのバカで、これと決めたら止まらないものでな」

 

「アンタ……苦労してるのね」

 

「まあ、な……」

 

 

ひとしきり男泣き(?)した後、ガロウはぐっと涙を拭う。

そうして改めて、ビルドリンカーズに向き合った。

 

 

「よォし、詫びも済ませたし次に会う時は3回戦だな!」

 

「お互い、悔いの無い闘いをするとしよう。

……さて、そろそろ行くぞ」

 

「だな!……じゃあな!楽しみにしてるぜ」

 

 

登場とは真逆に、レオは静かにドアを閉めて2人は去っていった。

 

 

「嵐のような連中ね……」

 

「なんだか、疲れました……」

 

 

まともに作戦会議に入る前にぐったりと机に突っ伏すユイとアオイ。

そして、全く話の輪に入ってこなかったマヒロはと言うと……

 

 

「キサラギ・ガロウ……」

 

 

嵐のように去っていった男に見惚れていたのだった。

その事は、他の2人はまだ知る由もなかった。

 

 

 

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