ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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気がつけば水星の魔女は終わってるし劇場版SEEDも大成功してた……大変お待たせしました





命運賭けた、力任せ

 

 

 

 

 

「その狼狽えよう……やはり、ソレが切り札だったか」

 

 

スターライトの盾に食らいつき穿った大蛇が、宙でのたうつ様にその身体を縮めてゆき……そして、バイス・クローが元通りの位置に収まる。

アオイは、それを苦々しげに見ている事しか出来なかった。

 

 

(これまで使われていない、奥の手。警戒していたつもりでしたが……!)

 

 

虚を突いた、搦手による一刺し……十分に留意しバトルに臨んでいたつもりだったが、結果はこのザマだ。

あの盾を用いなければ使えない“アレ”が、作戦の一番の肝心要だったのだ。

完全にしてやられてしまい、アオイは歯噛みをする思いであった。

 

 

 

一方……駆け付けたユイとマヒロはと言うと。

 

 

「ど……どどどどどどーしましょ!どーしましょ!?」

 

 

マヒロと言えど、状況のマズさはよくよく理解していた。

助けを求める様にユイの方へ視線を向けるが。

 

 

「……」

 

「あっ……ダメだこりゃ!」

 

 

通信ウィンドウに映るユイは、先程の勝ち誇った様な様子など欠片も無く……白目を剥いて口をあんぐりと開けていた。

 

こうしてる間にも、後方からはあの機体が迫っており……

立ちすくんでいた2機が、後ろから突き飛ばされた。

 

 

「わあーっ!」

「ギャーッ!」

 

「オラァーッ!」

 

 

キサラギ・ガロウ、現着。

チーム・アウトレイジはこれにて全員集合……分断は、解かれた。

 

 

 

……

 

 

 

「あ、アオイがやられた……!?」

 

 

観客席。

何時ものメンバーには、にわかに緊張が走っていた。

今まで、あれ程の強さを見せつけていたあのアオイのガンダムスターライトが、明確に大きな損傷を負った……その事実は、あまりにも衝撃的であった。

 

 

「……次善の策は、無いのかい?」

 

「考えておく様に指示はしたが……あの様子では、恐らく。

余程自信があったのだろうが……」

 

「えーっ!?」

 

「つ、詰んでる……!?」

 

 

応援団は悲鳴を上げ、マークは呆れたと言った様子で鼻を鳴らし、キリタニも思わず目を覆う。

それ程に、厳しい状況である事は観客席にも伝わっていた。

 

 

 

 

「……なーるほどねぇ」

 

「アウトレイジ相手では厳しかったか……?」

 

「でもまぁ、どっちもまだ一機も墜ちてはないし、どうなるやら」

 

 

観客席の少し後ろ……入り口付近の壁に背を預け観戦するのは、チーム・トライエースの3人。

試合が被らなかった為、敵情視察に乗り出していたのだった。

 

 

「どの道、この位のアクシデントは乗り越えて貰わなくちゃ───────」

 

「───────勝ち抜けは、全国は厳しいな」

 

 

互いに、近くに居る事は知る由もない。

しかし、キリタニとキイチの意見は一致していた。

 

 

 

……

 

 

 

「ご、合流しちゃった……ってコト!?」

 

「大きすぎる……!」

 

 

18mの機体を見下ろす威容……アーベントウルフ。

全身が煤け、幾つもの弾痕を付け、Iフィールドジェネレーターが停止していようとも、威風堂々と立つガンプラ……それに対抗する手段は、失われてしまっている。

そんな状態で、僚機との合流すら許した今の状況は、絶望的と言わざるを得ない……

 

 

「……なぁーるほど。ここからは、シンプルな殴り合いってェ訳だな!」

 

「そういう事になるな……!」

 

「っ!退避!」

 

 

固まっていた戦場の最中、ヴェテルノ・ガルスが徐に掌からビームを放つ。

それに気づいたユイが号令をかけ、立ちすくんでいたMS達が動き出す。

 

 

「よ、よし、私も……!」

 

「くっ……」

 

「わわわ……あれ?ガロウさんは」

 

「マヒロ、上よ!」

 

「ほえ?」

 

 

ガルスにカルドゥス・ジャジャも同調し、ベイオネットのビームガンを連射。

ビルドリンカーズはビーム弾幕を躱すべく機体を走らせるが……視線を外した一瞬の内に、アーベントウルフの巨躯が消える。

それから程なくして、ヘルムヴィーゲの周囲に影が落ち……

 

 

「どっせぇい!」

 

「おわぁーっ!?」

 

 

地を砕き割る程の鉄槌(オルテガハンマー)が叩き込まれる!

間一髪でマヒロは回避に成功したが、直撃していればヘルムヴィーゲ・アイギスとて無事では済まなかっただろう。

 

捲れた地面のクレーターの中心、巨躯がゆらりと立ち上がり、次の獲物を見定める……

 

 

「ちぃいっ……兎に角、生き延びる事だけ考えなさい!」

 

「でも、逃げ回り続けるだけでは……!」

 

「わァかってんのよそれくらい!」

 

 

アーベントウルフを倒す事が出来なければ、活路は開けない。

しかし、その倒す手段はもうない。

このまま逃げ回り、時間切れを待てば延長戦となる。

そうすれば、機体状態がリセットされる。

それを利用して切り札を補充するという手も考えうるが……相手も条件は同じである上に、延長戦はは1on1(タイマン)だ。

この手も、勝てる保証は無い。

 

 

「あぁもう、ちゃんとリカバリー策も練っとくべきだった……!

今捻り出さないと、この状況をひっくり返すプランD……」

 

「所謂ピンチですね」

 

「茶化すなッ!!」

 

「はっ!?す、すみません、リンクスだった頃の癖でつい!」

 

「アオイちゃあん!無敵のスターライトで何とかしてよぉ!」

 

「む、無茶言わないで下さいっ!」

 

 

バトル開始時の統率など何処へやら……3人は焦りに呑まれつつあった。

 

 

「混乱している様だが……よく避ける」

 

「そ、そこっ!」

 

「ほっ!?」

 

 

それでもスターライトとジャスティスはビーム弾幕に呑まれる事は無く、ヘルムヴィーゲは盾で光弾を的確にシャットアウトする。

射撃で詰め切る事は難しいだろう……ならば、やはり鍵はガロウのアーベントウルフにある。

 

 

「じれってェな!

ここは……レオ!ミカゲ!“アレ”をやるぞッ!!」

 

「あ、アレ?」

 

「決まってんだろ?

 

───────“合体技”だッ!」

 

 

光弾の雨が止み、ガルスとジャジャが巨躯の後方に位置取る。

アーベントウルフは気合いを入れる……若しくは、威嚇するかの様に両の拳を胸の前でガチン、と打ち鳴らす。

そして、腰を落とし───────

 

 

「何?何かが、吼える様な……」

 

「何か……来ます!」

 

 

唸る様な駆動音を響かせた後、榴弾が炸裂したかのような爆炎を上げ……巨躯が高速で相手目掛け、駆け出す!

タックルなどと言う生易しい物では無い……硬く、重く、大きいその機体そのものを、砲弾として撃ち出したかの様……!

 

 

「……!退避ぃっ!」

 

「させるかッ!」

 

 

地面を捲り上げながら突き進む巨体だが、直線的な突進故に、それだけならば容易に回避出来るものだ。

ユイの号令に合わせ、ビルドリンカーズは散開しようとする……

しかし、それを成す事は出来なかった。

 

吶喊するアーベントウルフの後方には僚機2機がピッタリと追従してきており……ビルドリンカーズが退避を選択した瞬間、飛び上がり、挟み込む様に弾幕を形成する。

ガロウの標的を逃がさぬ様に、進路を塞ぐ様にビーム弾幕を撒いたのだ。

 

そうして足をすくませた頃には……既に、巨躯は回避不能な迄に接近し───────

 

 

「っ!?」

 

「やば……」

 

「ふ、2人ともおおお!」

 

 

───────そこに割って入る様に、ヘルムヴィーゲ・アイギスが2枚の大盾を構える。

そして、マヒロは吼えた。

 

 

「“ジャンプ”っ!!」

 

「「!」」

 

 

意図を理解したアオイとユイは、自機をヘルムヴィーゲの背中に密着させ……衝突の寸前、息を合わせて同時に機体を浮かせる。

 

そして、重苦しい金属の衝突音が轟く……少女たちが、轢かれた。

 

 

「おおおぉぉぉぉぉおおッ!!!」

 

「ぬわぁーっ!」

「ぐぅっ……!」

「きゃああっ!」

 

 

男の裂帛。

三者三様の悲鳴。

それらが入り交じり、団子状態のままビルドリンカーズは弾き飛ばされる。

しかし、幾らか破片を撒き散らしながらも……3機とも、五体満足を保っている。

衝突の寸前、寄り集まったビルドリンカーズは空中でバックブーストをかけた……それにより、衝撃を可能な限り受け流したのだ。

 

撥ね飛ばされ、何十kmも吹き飛ばされた3機は、着地の寸前に前進ブーストをかける。

徐々に減速し、地面と激突すること無く、足を地に擦らせながら不時着した。

結果……必殺の一撃をモロに受けながらも、そのダメージは最小限に抑える事に成功したのだった。

 

 

「……何とか、なった……けど、何てデタラメなのよあの機体!」

 

「流石に、肝を冷やしました……」

 

「うへ、盾が……もっかいは無理かも」

 

 

マヒロの言う通り、ヘルムヴィーゲのシールドは大きく傷付いている。

同じ受け方をしたとしても、先程のタックル攻撃を耐えられるものでは無いのは明白だった。

 

 

「直に、また詰めて来ますよ……!何か、打開策は……」

 

「あればこんな苦労してないわよ……!」

 

 

やはり、状況をひっくり返す事は出来ないのか……

 

ユイとアオイの思考は、諦観に似た感情に支配されようとしていた……

その時である。

 

 

「こーなれば……うちの“切り札”を使うっきゃないね!

ね、2人とも!」

 

 

不意に、マヒロは鼻を鳴らしながら、そんな事を言い出した。

その言葉を向けられた2人は、鳩に豆鉄砲でも食らったかのような、きょとんとした顔で返す。

 

 

 

「……はい?“切り札”ですか?」

 

「何それ、初耳なのだけど」

 

「えっ」

 

 

 

……草木の青々と茂ったジャングルなのに、何処かで木枯らしが吹いた。

 

一拍おき、合点がいったとばかりにマヒロは手を打ち……頭を掻きながら、バツが悪そうに口を開く。

 

 

「言うの忘れてましたぁ」

 

「こんの、おバカ〜!!!」

 

「れ、レーダーに感あり!」

 

「ええい、端的に説明なさい!」

 

「えぇーと、かくかくしかじか……!」

 

 

ジャスティスがヘルムヴィーゲをがしゃがしゃと揺らしせっつく。

そうしている間にも、敵機は迫って来ており……

 

不意に、木の1つが大きく吹き飛ばされる。

その木陰から、巨躯がビルドリンカーズを覗いた。

 

 

「おおっ、本当に生き残ってら!」

 

「言っただろう……さて、仕上げといくか」

 

「や、やります……!」

 

 

アウトレイジが再度接敵。

 

 

「万事休すか……」

 

「アオイ……先輩方……!」

 

 

観客席も、雌雄は決したかと見ていた。

 

しかし。

 

 

「マヒロ……

 

貴女のお陰で、また、勝機が見えた……!

プランDを説明するわ!一息で言うから聞き逃さないで!」

 

 

ユイとマヒロの目も、まだ死んでいない。

それならばと、アオイも気を取り直し、機体を立て直す。

ビルドリンカーズ、再度臨戦態勢……!

 

 

「覚悟は決まってるみてェだなぁ!

行くぞお前ら!もう一度“合体技”だッ!!」

 

「わ、分かりました……決着を!」

 

「ああ、トドメだ……!」

 

 

立ち上がった3人の少女達に再び、巨躯が砲弾として撃ち出される。

巨体を飛ばす為に搭載された、メタルパーツの大型スラスターが成せる技だ。

原始的な攻撃方法ではあるが、これ程の質量と阻む事出来ぬ重装甲があれば、脅威以外の何者でもない……!

勿論、ヴェテルノ・ガルスとカルドゥス・ジャジャもその後方に追随する……さながら、変則ジェット・ストリーム・アタックと言った所か。

 

 

「アオイ、ライフル!」

 

「ありがとうございます!」

 

「フォーメーション!“突撃する”わよっ!」

 

 

それに対し、ユイ達も動き出す。

グローリィジャスティスが2丁装備していたライフルの片方をスターライトに投げ渡す。

使用権限はアンロック済み……スターライトの右手に収まった瞬間、FCSと連動。

 

そして……少女達は、巨砲弾に真っ向から突撃をかけた。

 

 

「何!?」

 

「向かってくるか!?」

 

 

「なんや、三角形……?」

 

「鶴翼陣……か?」

 

 

彼女らの無謀とも言える立ち回りは、それを見る者達全てを動揺させた。

ただし彼女らは、マヒロを中心に据えその両手前にユイとアオイが位置取り、綺麗な正三角形を描くフォーメーションを取っている……何か企んでいるのは、明白であった。

 

 

「奴ら、ガロウを取り囲むつもりか?だが、それは通らんよ……!

ミカゲ、タイミングを早める。両翼のガンダムを叩くぞ!」

 

「了解……!」

 

 

対面するレオは、ビルドリンカーズのフォーメーションを、先頭に立つ最も厄介であろうガロウ機の排除を目的とした動きと、そう解釈した。

3機で多角的に囲み攻撃を加える事で、行動不能かあわよくば撃破を狙うのだろう、と。

そうなれば我らは手負い、優劣はひっくり返ると。

 

ならば、それを防ぐべく動く必要がある。

先程よりもかなり早いタイミングで、ガルスとジャジャは対称的に飛び上がり、それぞれの得物を対面するガンダム達へ向ける……

 

 

 

「「掛かったッ!」」

 

 

 

その瞬間、ビーム・カノンとビーム・ベイオネットのマズルが、真正面から緑色の光条に穿たれた。

 

 

「「っ!?」」

 

 

レオとミカゲは、得物と同時に度肝を撃ち抜かれた。

アオイとユイは、初めから此方を狙っていたのだ……その事実にも驚いた。

しかし、肝要なのはそこではない。

その選択から見えた真の思惑は……レオ達には、正気の沙汰ではないものに思えたのだ。

 

 

「馬鹿なっ!?」

 

「バカとは、随分な言い草ねっ!」

 

 

飛び上がった2機を見るジャスティスとスターライト。

その視線は脇に向けられることは無く……突き進むアーベントウルフを、素通りした。

 

 

「ばっっちこぉーいっ!」

 

 

巨躯を迎え討つのは、先程思い切り力負けしたヘルムヴィーゲ・アイギスだけしか居ない。

思い切りが良いと言えばそうではあるが、既に結果の出ている事を再び繰り返すのは、愚の骨頂と言わざるを得ない。

それに堂々と賭けるとは、焼きが回ったか。

 

 

「その意気やよォオ───────しッ!!!」

 

 

思い切った選択に、ガロウは思わず吼える。

真っ向からの、がっぷりよつ……それも、ヤケになったのではなく、正面から堂々と勝ちを掴む気概のもの。

マヒロの立ち向かう様に、ガロウは思わず口角を上げる。

 

なればこそ……敬意を表し、全力を振るわなければ失礼と言うもの。

高速で駆けるアーベントウルフが、勢いのまま巨腕を伸ばす……!

 

 

「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」

 

 

2人の呼気と、同時に絞り出される気迫が重なり合う。

それと同時に、金属音を鳴らしてアーベントウルフがヘルムヴィーゲの両手を握り、ヘルムヴィーゲはそこに被せる様に大盾ハサミで挟み込み、がっちりと組み合う。

牛の蹄の様なソールを展開して地に食らいつき、それでも幾らか押し込まれながらも……巨砲弾を、ヘルムヴィーゲが真っ向から停止させた。

 

 

「やるじゃあねェか!だがな……!」

 

 

しかし止められたとしても、その分ダメージは甚大なものとなる事は明らかであり。

そして、根本のトルクの差は到底埋められるものではない。

 

 

「ダメだ……!」

 

「分かりきっていた事だろうに……!」

 

 

「このまま、押し切って───────」

 

 

アーベントウルフが、ぐっと力を込める。

しかし……ビクともしない。

 

 

「───────!?」

 

 

ガロウの脳裏に過ぎったイメージは、自身よりもはるかに巨大な、大木。

ただ1人の力では、梃子でもどうにもならぬ……重心が地の底にある様な、大地に根付いた圧倒的質量の様。

先程の衝突時とはまるで違う手応えに、思わず勢いを削がれてしまう程に驚愕する。

 

そして、取っ組み合ったヘルムヴィーゲに異変が起きる。

甲冑の様な肩装甲、及びバックパックから、不意に青白い炎のようなものが立ち上る。

開いた装甲の隙間から、まるで狼の唸り声の様な駆動音が漏れ出す。

ヘルムヴィーゲが顔を上げると……

 

 

「───────むんっ!!」

 

「何ッ!?」

 

 

騎士の面の様なゴーグルバイザー。

そしてその奥の、単眼の眼窩。

 

翠色に灯っていたそれらが、紅に染まっていた。

 

そして発光部の端から、同じく紅い稲妻の様なエフェクトが迸る。

……それは、ヘルムヴィーゲの素体であるヴァルキュリア・フレームには、本来存在しない機能。

 

 

「リミッター解除……!?」

 

「おいおい、なんでガンダム・フレームの機能を……!」

 

 

「……あの札を切ったか!」

 

「キリタニ先生……あれは!?」

 

「ヘルムヴィーゲ・アイギスは、超重量の2枚の大型シールドに加え、多彩な武装を扱う事を想定して組み上げられたガンプラだ。

故に……そのままでは強度は兎も角、出力が不足していたのだよ」

 

「だから、“足した”訳だな」

 

「ああ……出力の源、エイハブリアクターを直接増設する形で、な。

流用元は、HGガンダム・バルバトスルプスレクス。その移植の副次効果なのさ、あれは……!」

 

 

「うおおおおおーっ!!」

 

 

マヒロが吼える。

主に呼応し、ヘルムヴィーゲも遠吠えの様な駆動音を奏でる。

迸る力は留まる事を知らず……自身よりも巨大な体躯を持つアーベントウルフを、真っ向から押し返しつつあった。

 

 

「……ッッ!!!」

 

 

思わず、ガロウは仕切り直さんと組み合いを振り解こうとした。

相手の気迫に、予想だにしなかった敵機の異様な変化に、気圧されたのだ。

しかし……振り払えない。

握力すら相手が上回り、シールドハサミが万力の様に前腕部を締め上げる。

仕切り直しも、不可能だった。

 

そんな取っ組み合いの最中、ヘルムヴィーゲに更なる変化が起きる。

胸部装甲の一部が切り欠けた様に分離し、騎士の様なマスクの上から顔部に被せられる。

更に、天を衝いていた牡牛の様なツノが、基部から前方に倒れた。

そして……

 

 

「どりゃぁぁああああ!!!」

 

 

ツノの先が、頭突きの要領でアーベントウルフの胸部の傷口に捩じ込まれる。

一見、ヤケになったかの様にも思える行動だが、これもユイが捻り出した策の内の一手。

……ヘルムヴィーゲのツノは、その影の薄さから知らぬか、忘れている方も多いだろうが……立派な武装の一つである。

その名は……

 

 

「電・撃・角ぅ〜っ!!」

 

「うぉおッ!?」

 

 

昼間だと言うのに、周囲が更に明るく照らされる程の紫電が迸る。

カテゴリとしてはヒート・ロッドやウミヘビ、スパーク・ナックルと言った、敵機の内部機構をショートさせる事を目的とした兵装だが……唸りをあげ続ける3基のリアクターから莫大なエネルギーが注ぎ込まれた事で、まるで落雷の様なド派手な一撃に昇華しているのだ。

そしてそれは、アーベントウルフの巨体すら一瞬の内に貫く。

 

 

「なッ……!?」

 

 

アーベントウルフの内部機器が強制放電を起こし、ガロウのコンソール画面が光を失う。

撃墜された訳では無いが……電撃ダメージによる、所謂スタン状態に陥ったのだ。

復帰までの時間、15秒。

モノアイが光を失い……巨躯が、力無く項垂れた。

 

 

「ガロウ……!?」

 

「ガロウさん!?」

 

 

チームの不倒の大黒柱が、倒れた。

その事実は、チームメンバー達を同様させるには十分過ぎた……目の前に敵が居ながら、2人の視線はガロウ機に釘付けとなる。

 

もちろん、そんなあからさまな隙を逃すユイとアオイではない。

 

 

「……あれ!?何処にっ」

 

 

一瞬目を逸らした隙に、補足していた青いガンダムはミカゲのコンソール画面から姿を消していた。

非常に不味い。

たらりと冷や汗が流れ、慌ててカメラを操作しようとレバーを動かす……

 

 

「そこですっ!」

 

ガァアンッ!

 

「きゃあぁ!?」

 

 

その瞬間、ジャジャに強烈な衝撃が走る。

右の横っ腹に、大きく迂回し助走を付けたスターライトのブーストチャージが突き刺さったのだ。

頑丈な膝の装甲ブロックを叩きつけられ、ジャジャが破片を散らしながら弾き飛ばされる。

その先には……

 

 

ガシャアンッ!

 

「ひゃっ!?れ、レオさ……」

 

「ぐうっ!?ミカゲのジャジャ……!?」

 

 

レオのガルスが居た。

空中でド派手に衝突し、否応なく体勢が崩され……2機はもつれる様に降下していく。

 

その先には、それを待ち構える紅いガンダム。

 

 

「いっちょう上がり、ね!」

 

「しまった……!」

 

 

ビームライフルと連射レールガン、そして二門のプラズマ収束ビームが一斉にガルス達に襲いかかる。

所謂フルバースト……立て直しも出来ぬ2機に、避ける術などなかった。

緑の光条が貫き、電磁射出された連弾が砕き、そして挟み込む様に放たれた極太の光の奔流が焼き溶かす。

無防備だった2機は耐えきれず……そして、とうとう爆散した。

 

 

「さぁ、仕上げよ!アオイ!マヒロ!」

 

「はい!」

 

「おいさぁ!」

 

 

ここまで、凡そ7秒。

2機のガンダムは、すぐさま切り替えて踵を返す。

3機中の2機を撃墜し、勝敗は決したかの様に見えるが……残る1機は、単騎で戦況をひっくり返しかねない怪物なのだ。

 

効果の薄いライフルを揃ってかなぐり捨て、サーベルを抜刀。

スターライトは片手で両サイドスカートから二刀を引き抜き、板状のグリップを重ね、マニピュレータで挟むように保持。

ユイのジャスティスは両手に一刀ずつの二刀流……それを、発振口を揃える様に構える。

そうして発振されたサーベルは、二刀の刀身が混じり合い、通常よりも太く、長く形成される。

ウッソ君の大発明……と言う程ド派手では無いが、そのままよりも遥かに強力なサーベルが二振り、練り上げられた。

 

 

「ごめんアイギス……もう一瞬だけ踏ん張って!」

 

 

紅い稲妻状の眼光を迸らせ、全身の関節を軋ませながらヘルムヴィーゲが大きく踏み込む。

 

 

「縁の下のぉ───────」

 

 

そして、掲げた巨体を振りかぶり───────

 

 

「力任せ、じゃあああああああああっ!!」

 

 

アーベントウルフの巨体を、ユイとアオイに向かって放り投げた!

それと同時に、ヘルムヴィーゲの両肘、両膝関節が砕け、大地に沈む。

役割は果たした……そう言わんばかりに煙を吐き、リアクターも 停止する。

 

 

「上出来よマヒロ……!

アオイ、いくわよ!」

 

「そちらに合わせます!」

 

 

放り投げられた巨躯に向かって、スターライトとジャスティスが並んで駆け出す。

互いにアイコンタクト、タイミングをピタリと合わせ……

 

「「はぁああああッ!!」」

 

交差する軌跡を描き、二刀が同時にアーベントウルフの胸部に食らいつく!

これまでの射撃に電撃のダメージ蓄積が功を奏し、パテで成形された分厚い胸部装甲がとうとう溶断され、ボロボロと崩れ落ちた。

しかし、まだ撃墜には至らない……!

 

「おォおおおおおっ!!!」

 

男が吼え、それと同時にモノアイに光が灯る。

 

「オラぁっ!!!」

 

「ぐっ!?」

 

裂帛と共に巨大な拳の右フックが襲いかかり、ジャスティスの右手に掠る。

その衝撃でサーベルの一刀を取り落とす……が、気を取られている暇もなく、そのまま拳が開き手刀での薙ぎ払いに移行……!

 

「捕っ……!?」

 

ガンプラ2機分を軽く断ち切るであろう恐るべきチョップが、空を切った。

タイミングを見切り、2機のガンダムは一瞬急下降する事で回避したのだ。

 

「これでッ!」

「トドメ、ですッ!」

 

二刀のサーベルが、同時に突き出される。

それを防ぐものは、もうない。

赤く装甲を焼き溶かし、光刃が根元まで捩じ込まれ……ようやく、巨人は息の根を絶たれた。

 

 

 

《Battle ended. Winner……“BUILD LINKERS”!!》

 

 

 

「やっ……」

 

「「「「やったあああああ!?」」」」

 

ギリギリの勝負。

ただ1つボタンを掛け違えていれば、敗北していた……紙一重での勝利であった。

観客席の応援団も、沸き立つ……

 

次の瞬間、ユイもアオイも、応援団も、揃って崩れ落ちた。

 

「つ……つかれた……」

 

ユイが絞り出したその一言が、全てを物語っていた。

 

 

 

 

「すまない、ガロウ。この結果では……」

 

「わ、わたし……ごめ……」

 

「いいや、2人ともよォくやってくれた」

 

レオは苦々しげに、ミカゲは半泣きで、謝罪を口にする……が、ガロウは責める事はしなかった。

2人がやるべき事をやり遂げている事は分かっていたからだ。

労う様に、2人の肩を叩く。

そして、対面した少女たち……2人はへたりこみ、1人ははしゃいでいる様子……を見やりながら口角を上げ、口を開く。

 

「だが今回は……アイツらのクソ度胸に乾杯(完敗)だな」

 

 

「いやったーい!ぶいぶい!」

 

「あ、はは……やったー……」

 

「つかれた……」

 

 

「……それは、“乾杯”と“完敗”を掛けたシャレか?」

 

「流石、分かってるじゃねェか」

 

 

兎にも角にも、ビルドリンカーズは4回戦へ駒を進める事が出来たのであった。

 

 

 

 

 





《次回予告》

私、ダイバ・リリ!14歳!

ガンプラアイドルを目指す一環で、ガンプラバトルの全国選手権にも出場してるの。

ええっ!?次の対戦相手って、私の大ファンなの!?

嬉しい!とっても強い人だから、胸を借りるつもりで挑まなきゃ……!

……うん?あれ?今のは……

次回!ガンダムビルドリンカーズ!

《戦う相手は、自分の心》

……ちょっと、「お話」しようか?
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