気がつけば水星の魔女は終わってるし劇場版SEEDも大成功してた……大変お待たせしました
「その狼狽えよう……やはり、ソレが切り札だったか」
スターライトの盾に食らいつき穿った大蛇が、宙でのたうつ様にその身体を縮めてゆき……そして、バイス・クローが元通りの位置に収まる。
アオイは、それを苦々しげに見ている事しか出来なかった。
(これまで使われていない、奥の手。警戒していたつもりでしたが……!)
虚を突いた、搦手による一刺し……十分に留意しバトルに臨んでいたつもりだったが、結果はこのザマだ。
あの盾を用いなければ使えない“アレ”が、作戦の一番の肝心要だったのだ。
完全にしてやられてしまい、アオイは歯噛みをする思いであった。
一方……駆け付けたユイとマヒロはと言うと。
「ど……どどどどどどーしましょ!どーしましょ!?」
マヒロと言えど、状況のマズさはよくよく理解していた。
助けを求める様にユイの方へ視線を向けるが。
「……」
「あっ……ダメだこりゃ!」
通信ウィンドウに映るユイは、先程の勝ち誇った様な様子など欠片も無く……白目を剥いて口をあんぐりと開けていた。
こうしてる間にも、後方からはあの機体が迫っており……
立ちすくんでいた2機が、後ろから突き飛ばされた。
「わあーっ!」
「ギャーッ!」
「オラァーッ!」
キサラギ・ガロウ、現着。
チーム・アウトレイジはこれにて全員集合……分断は、解かれた。
……
「あ、アオイがやられた……!?」
観客席。
何時ものメンバーには、にわかに緊張が走っていた。
今まで、あれ程の強さを見せつけていたあのアオイのガンダムスターライトが、明確に大きな損傷を負った……その事実は、あまりにも衝撃的であった。
「……次善の策は、無いのかい?」
「考えておく様に指示はしたが……あの様子では、恐らく。
余程自信があったのだろうが……」
「えーっ!?」
「つ、詰んでる……!?」
応援団は悲鳴を上げ、マークは呆れたと言った様子で鼻を鳴らし、キリタニも思わず目を覆う。
それ程に、厳しい状況である事は観客席にも伝わっていた。
「……なーるほどねぇ」
「アウトレイジ相手では厳しかったか……?」
「でもまぁ、どっちもまだ一機も墜ちてはないし、どうなるやら」
観客席の少し後ろ……入り口付近の壁に背を預け観戦するのは、チーム・トライエースの3人。
試合が被らなかった為、敵情視察に乗り出していたのだった。
「どの道、この位のアクシデントは乗り越えて貰わなくちゃ───────」
「───────勝ち抜けは、全国は厳しいな」
互いに、近くに居る事は知る由もない。
しかし、キリタニとキイチの意見は一致していた。
……
「ご、合流しちゃった……ってコト!?」
「大きすぎる……!」
18mの機体を見下ろす威容……アーベントウルフ。
全身が煤け、幾つもの弾痕を付け、Iフィールドジェネレーターが停止していようとも、威風堂々と立つガンプラ……それに対抗する手段は、失われてしまっている。
そんな状態で、僚機との合流すら許した今の状況は、絶望的と言わざるを得ない……
「……なぁーるほど。ここからは、シンプルな殴り合いってェ訳だな!」
「そういう事になるな……!」
「っ!退避!」
固まっていた戦場の最中、ヴェテルノ・ガルスが徐に掌からビームを放つ。
それに気づいたユイが号令をかけ、立ちすくんでいたMS達が動き出す。
「よ、よし、私も……!」
「くっ……」
「わわわ……あれ?ガロウさんは」
「マヒロ、上よ!」
「ほえ?」
ガルスにカルドゥス・ジャジャも同調し、ベイオネットのビームガンを連射。
ビルドリンカーズはビーム弾幕を躱すべく機体を走らせるが……視線を外した一瞬の内に、アーベントウルフの巨躯が消える。
それから程なくして、ヘルムヴィーゲの周囲に影が落ち……
「どっせぇい!」
「おわぁーっ!?」
地を砕き割る程の
間一髪でマヒロは回避に成功したが、直撃していればヘルムヴィーゲ・アイギスとて無事では済まなかっただろう。
捲れた地面のクレーターの中心、巨躯がゆらりと立ち上がり、次の獲物を見定める……
「ちぃいっ……兎に角、生き延びる事だけ考えなさい!」
「でも、逃げ回り続けるだけでは……!」
「わァかってんのよそれくらい!」
アーベントウルフを倒す事が出来なければ、活路は開けない。
しかし、その倒す手段はもうない。
このまま逃げ回り、時間切れを待てば延長戦となる。
そうすれば、機体状態がリセットされる。
それを利用して切り札を補充するという手も考えうるが……相手も条件は同じである上に、延長戦はは
この手も、勝てる保証は無い。
「あぁもう、ちゃんとリカバリー策も練っとくべきだった……!
今捻り出さないと、この状況をひっくり返すプランD……」
「所謂ピンチですね」
「茶化すなッ!!」
「はっ!?す、すみません、リンクスだった頃の癖でつい!」
「アオイちゃあん!無敵のスターライトで何とかしてよぉ!」
「む、無茶言わないで下さいっ!」
バトル開始時の統率など何処へやら……3人は焦りに呑まれつつあった。
「混乱している様だが……よく避ける」
「そ、そこっ!」
「ほっ!?」
それでもスターライトとジャスティスはビーム弾幕に呑まれる事は無く、ヘルムヴィーゲは盾で光弾を的確にシャットアウトする。
射撃で詰め切る事は難しいだろう……ならば、やはり鍵はガロウのアーベントウルフにある。
「じれってェな!
ここは……レオ!ミカゲ!“アレ”をやるぞッ!!」
「あ、アレ?」
「決まってんだろ?
───────“合体技”だッ!」
光弾の雨が止み、ガルスとジャジャが巨躯の後方に位置取る。
アーベントウルフは気合いを入れる……若しくは、威嚇するかの様に両の拳を胸の前でガチン、と打ち鳴らす。
そして、腰を落とし───────
「何?何かが、吼える様な……」
「何か……来ます!」
唸る様な駆動音を響かせた後、榴弾が炸裂したかのような爆炎を上げ……巨躯が高速で相手目掛け、駆け出す!
タックルなどと言う生易しい物では無い……硬く、重く、大きいその機体そのものを、砲弾として撃ち出したかの様……!
「……!退避ぃっ!」
「させるかッ!」
地面を捲り上げながら突き進む巨体だが、直線的な突進故に、それだけならば容易に回避出来るものだ。
ユイの号令に合わせ、ビルドリンカーズは散開しようとする……
しかし、それを成す事は出来なかった。
吶喊するアーベントウルフの後方には僚機2機がピッタリと追従してきており……ビルドリンカーズが退避を選択した瞬間、飛び上がり、挟み込む様に弾幕を形成する。
ガロウの標的を逃がさぬ様に、進路を塞ぐ様にビーム弾幕を撒いたのだ。
そうして足をすくませた頃には……既に、巨躯は回避不能な迄に接近し───────
「っ!?」
「やば……」
「ふ、2人ともおおお!」
───────そこに割って入る様に、ヘルムヴィーゲ・アイギスが2枚の大盾を構える。
そして、マヒロは吼えた。
「“ジャンプ”っ!!」
「「!」」
意図を理解したアオイとユイは、自機をヘルムヴィーゲの背中に密着させ……衝突の寸前、息を合わせて同時に機体を浮かせる。
そして、重苦しい金属の衝突音が轟く……少女たちが、轢かれた。
「おおおぉぉぉぉぉおおッ!!!」
「ぬわぁーっ!」
「ぐぅっ……!」
「きゃああっ!」
男の裂帛。
三者三様の悲鳴。
それらが入り交じり、団子状態のままビルドリンカーズは弾き飛ばされる。
しかし、幾らか破片を撒き散らしながらも……3機とも、五体満足を保っている。
衝突の寸前、寄り集まったビルドリンカーズは空中でバックブーストをかけた……それにより、衝撃を可能な限り受け流したのだ。
撥ね飛ばされ、何十kmも吹き飛ばされた3機は、着地の寸前に前進ブーストをかける。
徐々に減速し、地面と激突すること無く、足を地に擦らせながら不時着した。
結果……必殺の一撃をモロに受けながらも、そのダメージは最小限に抑える事に成功したのだった。
「……何とか、なった……けど、何てデタラメなのよあの機体!」
「流石に、肝を冷やしました……」
「うへ、盾が……もっかいは無理かも」
マヒロの言う通り、ヘルムヴィーゲのシールドは大きく傷付いている。
同じ受け方をしたとしても、先程のタックル攻撃を耐えられるものでは無いのは明白だった。
「直に、また詰めて来ますよ……!何か、打開策は……」
「あればこんな苦労してないわよ……!」
やはり、状況をひっくり返す事は出来ないのか……
ユイとアオイの思考は、諦観に似た感情に支配されようとしていた……
その時である。
「こーなれば……うちの“切り札”を使うっきゃないね!
ね、2人とも!」
不意に、マヒロは鼻を鳴らしながら、そんな事を言い出した。
その言葉を向けられた2人は、鳩に豆鉄砲でも食らったかのような、きょとんとした顔で返す。
「……はい?“切り札”ですか?」
「何それ、初耳なのだけど」
「えっ」
……草木の青々と茂ったジャングルなのに、何処かで木枯らしが吹いた。
一拍おき、合点がいったとばかりにマヒロは手を打ち……頭を掻きながら、バツが悪そうに口を開く。
「言うの忘れてましたぁ」
「こんの、おバカ〜!!!」
「れ、レーダーに感あり!」
「ええい、端的に説明なさい!」
「えぇーと、かくかくしかじか……!」
ジャスティスがヘルムヴィーゲをがしゃがしゃと揺らしせっつく。
そうしている間にも、敵機は迫って来ており……
不意に、木の1つが大きく吹き飛ばされる。
その木陰から、巨躯がビルドリンカーズを覗いた。
「おおっ、本当に生き残ってら!」
「言っただろう……さて、仕上げといくか」
「や、やります……!」
アウトレイジが再度接敵。
「万事休すか……」
「アオイ……先輩方……!」
観客席も、雌雄は決したかと見ていた。
しかし。
「マヒロ……
貴女のお陰で、また、勝機が見えた……!
プランDを説明するわ!一息で言うから聞き逃さないで!」
ユイとマヒロの目も、まだ死んでいない。
それならばと、アオイも気を取り直し、機体を立て直す。
ビルドリンカーズ、再度臨戦態勢……!
「覚悟は決まってるみてェだなぁ!
行くぞお前ら!もう一度“合体技”だッ!!」
「わ、分かりました……決着を!」
「ああ、トドメだ……!」
立ち上がった3人の少女達に再び、巨躯が砲弾として撃ち出される。
巨体を飛ばす為に搭載された、メタルパーツの大型スラスターが成せる技だ。
原始的な攻撃方法ではあるが、これ程の質量と阻む事出来ぬ重装甲があれば、脅威以外の何者でもない……!
勿論、ヴェテルノ・ガルスとカルドゥス・ジャジャもその後方に追随する……さながら、変則ジェット・ストリーム・アタックと言った所か。
「アオイ、ライフル!」
「ありがとうございます!」
「フォーメーション!“突撃する”わよっ!」
それに対し、ユイ達も動き出す。
グローリィジャスティスが2丁装備していたライフルの片方をスターライトに投げ渡す。
使用権限はアンロック済み……スターライトの右手に収まった瞬間、FCSと連動。
そして……少女達は、巨砲弾に真っ向から突撃をかけた。
「何!?」
「向かってくるか!?」
「なんや、三角形……?」
「鶴翼陣……か?」
彼女らの無謀とも言える立ち回りは、それを見る者達全てを動揺させた。
ただし彼女らは、マヒロを中心に据えその両手前にユイとアオイが位置取り、綺麗な正三角形を描くフォーメーションを取っている……何か企んでいるのは、明白であった。
「奴ら、ガロウを取り囲むつもりか?だが、それは通らんよ……!
ミカゲ、タイミングを早める。両翼のガンダムを叩くぞ!」
「了解……!」
対面するレオは、ビルドリンカーズのフォーメーションを、先頭に立つ最も厄介であろうガロウ機の排除を目的とした動きと、そう解釈した。
3機で多角的に囲み攻撃を加える事で、行動不能かあわよくば撃破を狙うのだろう、と。
そうなれば我らは手負い、優劣はひっくり返ると。
ならば、それを防ぐべく動く必要がある。
先程よりもかなり早いタイミングで、ガルスとジャジャは対称的に飛び上がり、それぞれの得物を対面するガンダム達へ向ける……
「「掛かったッ!」」
その瞬間、ビーム・カノンとビーム・ベイオネットのマズルが、真正面から緑色の光条に穿たれた。
「「っ!?」」
レオとミカゲは、得物と同時に度肝を撃ち抜かれた。
アオイとユイは、初めから此方を狙っていたのだ……その事実にも驚いた。
しかし、肝要なのはそこではない。
その選択から見えた真の思惑は……レオ達には、正気の沙汰ではないものに思えたのだ。
「馬鹿なっ!?」
「バカとは、随分な言い草ねっ!」
飛び上がった2機を見るジャスティスとスターライト。
その視線は脇に向けられることは無く……突き進むアーベントウルフを、素通りした。
「ばっっちこぉーいっ!」
巨躯を迎え討つのは、先程思い切り力負けしたヘルムヴィーゲ・アイギスだけしか居ない。
思い切りが良いと言えばそうではあるが、既に結果の出ている事を再び繰り返すのは、愚の骨頂と言わざるを得ない。
それに堂々と賭けるとは、焼きが回ったか。
「その意気やよォオ───────しッ!!!」
思い切った選択に、ガロウは思わず吼える。
真っ向からの、がっぷりよつ……それも、ヤケになったのではなく、正面から堂々と勝ちを掴む気概のもの。
マヒロの立ち向かう様に、ガロウは思わず口角を上げる。
なればこそ……敬意を表し、全力を振るわなければ失礼と言うもの。
高速で駆けるアーベントウルフが、勢いのまま巨腕を伸ばす……!
「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」
2人の呼気と、同時に絞り出される気迫が重なり合う。
それと同時に、金属音を鳴らしてアーベントウルフがヘルムヴィーゲの両手を握り、ヘルムヴィーゲはそこに被せる様に大盾ハサミで挟み込み、がっちりと組み合う。
牛の蹄の様なソールを展開して地に食らいつき、それでも幾らか押し込まれながらも……巨砲弾を、ヘルムヴィーゲが真っ向から停止させた。
「やるじゃあねェか!だがな……!」
しかし止められたとしても、その分ダメージは甚大なものとなる事は明らかであり。
そして、根本のトルクの差は到底埋められるものではない。
「ダメだ……!」
「分かりきっていた事だろうに……!」
「このまま、押し切って───────」
アーベントウルフが、ぐっと力を込める。
しかし……ビクともしない。
「───────!?」
ガロウの脳裏に過ぎったイメージは、自身よりもはるかに巨大な、大木。
ただ1人の力では、梃子でもどうにもならぬ……重心が地の底にある様な、大地に根付いた圧倒的質量の様。
先程の衝突時とはまるで違う手応えに、思わず勢いを削がれてしまう程に驚愕する。
そして、取っ組み合ったヘルムヴィーゲに異変が起きる。
甲冑の様な肩装甲、及びバックパックから、不意に青白い炎のようなものが立ち上る。
開いた装甲の隙間から、まるで狼の唸り声の様な駆動音が漏れ出す。
ヘルムヴィーゲが顔を上げると……
「───────むんっ!!」
「何ッ!?」
騎士の面の様なゴーグルバイザー。
そしてその奥の、単眼の眼窩。
翠色に灯っていたそれらが、紅に染まっていた。
そして発光部の端から、同じく紅い稲妻の様なエフェクトが迸る。
……それは、ヘルムヴィーゲの素体であるヴァルキュリア・フレームには、本来存在しない機能。
「リミッター解除……!?」
「おいおい、なんでガンダム・フレームの機能を……!」
「……あの札を切ったか!」
「キリタニ先生……あれは!?」
「ヘルムヴィーゲ・アイギスは、超重量の2枚の大型シールドに加え、多彩な武装を扱う事を想定して組み上げられたガンプラだ。
故に……そのままでは強度は兎も角、出力が不足していたのだよ」
「だから、“足した”訳だな」
「ああ……出力の源、エイハブリアクターを直接増設する形で、な。
流用元は、HGガンダム・バルバトスルプスレクス。その移植の副次効果なのさ、あれは……!」
「うおおおおおーっ!!」
マヒロが吼える。
主に呼応し、ヘルムヴィーゲも遠吠えの様な駆動音を奏でる。
迸る力は留まる事を知らず……自身よりも巨大な体躯を持つアーベントウルフを、真っ向から押し返しつつあった。
「……ッッ!!!」
思わず、ガロウは仕切り直さんと組み合いを振り解こうとした。
相手の気迫に、予想だにしなかった敵機の異様な変化に、気圧されたのだ。
しかし……振り払えない。
握力すら相手が上回り、シールドハサミが万力の様に前腕部を締め上げる。
仕切り直しも、不可能だった。
そんな取っ組み合いの最中、ヘルムヴィーゲに更なる変化が起きる。
胸部装甲の一部が切り欠けた様に分離し、騎士の様なマスクの上から顔部に被せられる。
更に、天を衝いていた牡牛の様なツノが、基部から前方に倒れた。
そして……
「どりゃぁぁああああ!!!」
ツノの先が、頭突きの要領でアーベントウルフの胸部の傷口に捩じ込まれる。
一見、ヤケになったかの様にも思える行動だが、これもユイが捻り出した策の内の一手。
……ヘルムヴィーゲのツノは、その影の薄さから知らぬか、忘れている方も多いだろうが……立派な武装の一つである。
その名は……
「電・撃・角ぅ〜っ!!」
「うぉおッ!?」
昼間だと言うのに、周囲が更に明るく照らされる程の紫電が迸る。
カテゴリとしてはヒート・ロッドやウミヘビ、スパーク・ナックルと言った、敵機の内部機構をショートさせる事を目的とした兵装だが……唸りをあげ続ける3基のリアクターから莫大なエネルギーが注ぎ込まれた事で、まるで落雷の様なド派手な一撃に昇華しているのだ。
そしてそれは、アーベントウルフの巨体すら一瞬の内に貫く。
「なッ……!?」
アーベントウルフの内部機器が強制放電を起こし、ガロウのコンソール画面が光を失う。
撃墜された訳では無いが……電撃ダメージによる、所謂スタン状態に陥ったのだ。
復帰までの時間、15秒。
モノアイが光を失い……巨躯が、力無く項垂れた。
「ガロウ……!?」
「ガロウさん!?」
チームの不倒の大黒柱が、倒れた。
その事実は、チームメンバー達を同様させるには十分過ぎた……目の前に敵が居ながら、2人の視線はガロウ機に釘付けとなる。
もちろん、そんなあからさまな隙を逃すユイとアオイではない。
「……あれ!?何処にっ」
一瞬目を逸らした隙に、補足していた青いガンダムはミカゲのコンソール画面から姿を消していた。
非常に不味い。
たらりと冷や汗が流れ、慌ててカメラを操作しようとレバーを動かす……
「そこですっ!」
ガァアンッ!
「きゃあぁ!?」
その瞬間、ジャジャに強烈な衝撃が走る。
右の横っ腹に、大きく迂回し助走を付けたスターライトのブーストチャージが突き刺さったのだ。
頑丈な膝の装甲ブロックを叩きつけられ、ジャジャが破片を散らしながら弾き飛ばされる。
その先には……
ガシャアンッ!
「ひゃっ!?れ、レオさ……」
「ぐうっ!?ミカゲのジャジャ……!?」
レオのガルスが居た。
空中でド派手に衝突し、否応なく体勢が崩され……2機はもつれる様に降下していく。
その先には、それを待ち構える紅いガンダム。
「いっちょう上がり、ね!」
「しまった……!」
ビームライフルと連射レールガン、そして二門のプラズマ収束ビームが一斉にガルス達に襲いかかる。
所謂フルバースト……立て直しも出来ぬ2機に、避ける術などなかった。
緑の光条が貫き、電磁射出された連弾が砕き、そして挟み込む様に放たれた極太の光の奔流が焼き溶かす。
無防備だった2機は耐えきれず……そして、とうとう爆散した。
「さぁ、仕上げよ!アオイ!マヒロ!」
「はい!」
「おいさぁ!」
ここまで、凡そ7秒。
2機のガンダムは、すぐさま切り替えて踵を返す。
3機中の2機を撃墜し、勝敗は決したかの様に見えるが……残る1機は、単騎で戦況をひっくり返しかねない怪物なのだ。
効果の薄いライフルを揃ってかなぐり捨て、サーベルを抜刀。
スターライトは片手で両サイドスカートから二刀を引き抜き、板状のグリップを重ね、マニピュレータで挟むように保持。
ユイのジャスティスは両手に一刀ずつの二刀流……それを、発振口を揃える様に構える。
そうして発振されたサーベルは、二刀の刀身が混じり合い、通常よりも太く、長く形成される。
ウッソ君の大発明……と言う程ド派手では無いが、そのままよりも遥かに強力なサーベルが二振り、練り上げられた。
「ごめんアイギス……もう一瞬だけ踏ん張って!」
紅い稲妻状の眼光を迸らせ、全身の関節を軋ませながらヘルムヴィーゲが大きく踏み込む。
「縁の下のぉ───────」
そして、掲げた巨体を振りかぶり───────
「力任せ、じゃあああああああああっ!!」
アーベントウルフの巨体を、ユイとアオイに向かって放り投げた!
それと同時に、ヘルムヴィーゲの両肘、両膝関節が砕け、大地に沈む。
役割は果たした……そう言わんばかりに煙を吐き、リアクターも 停止する。
「上出来よマヒロ……!
アオイ、いくわよ!」
「そちらに合わせます!」
放り投げられた巨躯に向かって、スターライトとジャスティスが並んで駆け出す。
互いにアイコンタクト、タイミングをピタリと合わせ……
「「はぁああああッ!!」」
交差する軌跡を描き、二刀が同時にアーベントウルフの胸部に食らいつく!
これまでの射撃に電撃のダメージ蓄積が功を奏し、パテで成形された分厚い胸部装甲がとうとう溶断され、ボロボロと崩れ落ちた。
しかし、まだ撃墜には至らない……!
「おォおおおおおっ!!!」
男が吼え、それと同時にモノアイに光が灯る。
「オラぁっ!!!」
「ぐっ!?」
裂帛と共に巨大な拳の右フックが襲いかかり、ジャスティスの右手に掠る。
その衝撃でサーベルの一刀を取り落とす……が、気を取られている暇もなく、そのまま拳が開き手刀での薙ぎ払いに移行……!
「捕っ……!?」
ガンプラ2機分を軽く断ち切るであろう恐るべきチョップが、空を切った。
タイミングを見切り、2機のガンダムは一瞬急下降する事で回避したのだ。
「これでッ!」
「トドメ、ですッ!」
二刀のサーベルが、同時に突き出される。
それを防ぐものは、もうない。
赤く装甲を焼き溶かし、光刃が根元まで捩じ込まれ……ようやく、巨人は息の根を絶たれた。
《Battle ended. Winner……“BUILD LINKERS”!!》
「やっ……」
「「「「やったあああああ!?」」」」
ギリギリの勝負。
ただ1つボタンを掛け違えていれば、敗北していた……紙一重での勝利であった。
観客席の応援団も、沸き立つ……
次の瞬間、ユイもアオイも、応援団も、揃って崩れ落ちた。
「つ……つかれた……」
ユイが絞り出したその一言が、全てを物語っていた。
「すまない、ガロウ。この結果では……」
「わ、わたし……ごめ……」
「いいや、2人ともよォくやってくれた」
レオは苦々しげに、ミカゲは半泣きで、謝罪を口にする……が、ガロウは責める事はしなかった。
2人がやるべき事をやり遂げている事は分かっていたからだ。
労う様に、2人の肩を叩く。
そして、対面した少女たち……2人はへたりこみ、1人ははしゃいでいる様子……を見やりながら口角を上げ、口を開く。
「だが今回は……アイツらのクソ度胸に
「いやったーい!ぶいぶい!」
「あ、はは……やったー……」
「つかれた……」
「……それは、“乾杯”と“完敗”を掛けたシャレか?」
「流石、分かってるじゃねェか」
兎にも角にも、ビルドリンカーズは4回戦へ駒を進める事が出来たのであった。
《次回予告》
私、ダイバ・リリ!14歳!
ガンプラアイドルを目指す一環で、ガンプラバトルの全国選手権にも出場してるの。
ええっ!?次の対戦相手って、私の大ファンなの!?
嬉しい!とっても強い人だから、胸を借りるつもりで挑まなきゃ……!
……うん?あれ?今のは……
次回!ガンダムビルドリンカーズ!
《戦う相手は、自分の心》
……ちょっと、「お話」しようか?