本話戦闘シーンBGM推奨曲
ガンダムビルドファイターズOSTよりbuild-fight
及びspeed-star
───────
《GUNPLA BATTLE Combat mode start up》
N-FLAG2階、薄暗い部屋に青い光が灯り、英語の機械音声が流れる。
《
促されるまま、対面する2人は機械に……片方はマゼンタ色の、もう片方は白と青の……己のガンプラを預ける。
すると、ガンプラのお立ち台が機械の中に沈み込み、ガンプラが収まるとスライドしフタが閉まる。
機械の中で四方八方からガンプラが撮影され、それを元にゲーム内のモデルデータをリアルタイムで作成。
更に2人がスマホを操作すると、システムとリンクした専用アプリによりガンプラの設定データが読み込まれる。
そのデータと、撮影されたガンプラの出来栄え判定によって、ゲーム内で性能が決定づけられるのだ。
その間、2人はVRグローブ……ユイは持参の紅いラインの入った、アオイは貸し出しの細い指に合うもの……を手に嵌め、システムに備え付けられたVRヘッドセットを装着した。
目を覆うものではなく、網膜投影とホログラムの合わせ技で
そして、アオイは財布等を入れていたバッグから、星を象った小さな装飾の付いたバレッタを取り出した。
それで手早く前髪を留め、普段隠れている左目を出し、1度目を閉じ深呼吸。
目を開き、気合いを入れた。
《
「「網膜投影、スタート」」
システム音声と共にホログラム形成に特化した特殊粒子が散布される。
すると、彼女達の居る空間はホログラムの壁で外界と隔てられ、その中には幾つかの宙に浮かぶウィンドウと……操縦の為のレバーが現れる。
ユイは、肩後ろに現れたそれを、両手で耳をすませるような体勢から更に後ろに手を出して掴み、肩上を通して、アームで繋がれたそれを前へ引き出す。
上品な白いカラーリングと手を包むような流線型のカバー、手元のコンソールが特徴的なそれは、Gのレコンギスタに登場した、G-セルフのコックピットに備えられたレバー。
アオイは、自身の前…両サイドの壁から生える無骨なレバーを掴み、細い指でトリガーとその他ボタンをパチパチと弾いて感覚を確かめる。
グレー地に多数の白いボタンが映えるそれは、ガンダムUC冒頭のスタークジェガンのパイロットでお馴染み……U.C.96年式、地球連邦規格。
光壁の内側には網膜投影、外側にはホログラムで映し出されたそれらに実体は無いが、彼女達にはVRグローブにより、実際にそれに触れているような感覚がある。
《Field 3.Forest》
そして、バトルフィールドも決定された。
俯瞰視点のフィールドマップが、バトルシステム上面にホログラムによって、ジオラマの様な形で映し出される。
森……と言う割に鬱蒼としたものではなく、桜並木が美しいフィールド。
ファイターの見るウィンドウには、自機……ガンプラから見た景色が映される。
森ではなく、等間隔に並んだ電灯によって照らされる、レールのある空間。
ガンダム好きなら誰もが憧れる、カタパルトデッキ───────
《You have control.
───────Battle start!》
そして遂に、システムによって、戦いの火蓋が切って落とされた事が告げられた。
「テンジョウ・ユイ! インフィニットジャスティスガンダム、出るわよ!」
「アカツキ・アオイ……“ガンダムスターライト”、行きます!」
直立から腰だめ体勢に移行した2機を乗せ、カタパルトがバチバチを火花を立てながら稼働……乗せたモノを宙に投げ出し、その勢いに併せてスラスターを吹かす。
2機のガンダムが桜並木の上空に躍り出た───────!
「───────始まったか」
「カッチョいいガンダムだ! どっちも頑張れ〜」
「ちょっ……アンタそれでいいんか」
オーディエンスは、店内に居たアオイとユイ、それとアリアさんを除く6人。
アリアさんは席を外している様だ。
勝負の邪魔にならないよう、バトルスペースを区切るガラス壁の外から、ジオラママップでバトルの様子を見ている。
「大丈夫……きっと、アオイが取り返してくれる」
「「……!」」
タマキ兄弟は、何やら浮かない様子だったが……バトルが始まった事で、内心のワクワクは止められていない様だ。
「テンジョウ君は、インフィニットジャスティスガンダム……
「でもつよ〜いですよ、ユイ姫先輩は」
「姫……?」
((ユイひめ……?))
「アオイのは、白くて青いな。それと……手に何も持ってないようだが」
「……えっ?」
ユイのガンプラはインフィニットジャスティス。
全身凶器と言える程に多数の武装を細身と背負い物に搭載した、マゼンタのガンダム。
ビームキャリーシールドをオミットし、色を塗り替えたストライクフリーダムの2丁ビームライフルを装備する射撃戦寄りのカスタムをしている。
対するアオイの、白と青のガンプラ……オリジナルのガンダムスターライトは、インフィニットジャスティスと対象的な状態だった。
シンプルな機体に背負い物も無く、両腕はフリー。
つまり……
「丸腰!?」
「タクにーちゃん!? あの知らないガンダム、武器持ってなくね!?」
「ほ、ほんとだ!? どうすんだアオイおねーさん!?」
「いや、あの姿……1つだけ、武器はあるだろう」
アオイは慣れた様子で、ボタンをブラインドタッチ。
すると、スターライトは右手をサイドスカートに伸ばし……ポップアップした長方形のデバイスを手に取り、そこからピンクの光刃が伸びる。
「あれは……?」
「ライトセーバーって奴か?」
「違うよねーちゃん!」
「ビームサーベルだよ!」
「でも、それだけって事はさ〜……」
遠くから相手を攻撃出来る武器が無いと言う事。
そしてこの勝負は、
スターライトは、多数の火器を持つジャスティスに、正面から詰め寄るしかない!
「吶喊します!」
「そんなバカ正直に、突っ込んでくるなんて!」
ユイとて、相手が丸腰でも武装面の有利を捨てる程バカでは無い。2丁のビームライフルと、持ち上がったリフターのハイパーフォルティスをアクティブ。
ビームの弾幕を形成する。
「……この程度なら!」
アオイは構わず突っ切る事を選択する様だ。
弾幕の中に飛び込み、致命傷になりうるビームだけをひらりと回避───────
「……っ!?」
「……は?」
「えっ!?」
───────しようとしたアオイの視界が、予想以上にぐわんと回転。
スターライトは弾幕そのものを迂回する大振りな回避機動となり。
「くっ、これは……!」
そのままスターライトはバランスを崩し、墜落。
桜並木の間から砂煙が立ち上った。
「……」
「うーん? これはどうなってるのかな?」
「あれは……もしや」
不時着したアオイはすぐにスターライトを立て直す。
しかし……
「見つけた!」
「っ!」
ユイもすぐにアオイを見つけた。
ジャスティスは宙に浮いたまま、スターライトは地を這う……地上は空中より障害物が多く、上からの方が当然見渡せる範囲は広い。
射撃戦は撃ち下ろす側が有利だ。
……アオイは、武装的不利だけでなく、高度的不利も背負うこととなる───────!
4門のビーム兵器から、緑の光の雨霰が飛ぶ。
それを回避するスターライト……当たってはいないが幾つか掠っており、木にぶつかりそうな時もあり、明らかに動きが覚束無い。
「くっ……っ! ふっ───────!」
「どうしたのよ、蒼の彗星! その程度なの?」
確かに並より速い……が、それだけ。
むしろ速さに振り回されている。
そこに、ユイは違和感を感じていた。
(この程度が、地区最強と持て囃されてたの? 西東京は今、それほどレベルが低いのか……それとも?)
「───────考えたって答えは出ない、なら……!」
「!」
ユイは2丁のライフルを連結し、1丁のロングライフルモードへ移行。
ハイパーフォルティスでスターライトを追い立て……
「シュート!」
これまでの弾幕とは違う、一筋の高火力ビームが桜並木を薙ぎ払う。それに対して、アオイは。
「───────ここで、行きます!」
2基のスラスターを吹かし、大跳躍!
火線を躱しながら、木々の上空へ。
高出力ビームを撃った今なら、隙がある……詰め寄るチャンスがある、そう踏んでの行動。
しかし。
「……っ!? これは、リフター!?」
ジャスティスを捉えた、と思いきや……そこに居たのは、ハイパーフォルティスを撃つリフターのみ。
ジャスティス本体は何処へ……そう思った途端、アラート!
「掛かったわね!」
「下!? いや、上下から……っ!」
ユイは、アオイが高出力ビームを避けながらこちらへ跳躍してくる事を読み……撃ち切る前にリフターをパージ、ジャスティス本体を敢えて自由落下させた。
すると、リフターが上昇するスターライトの頭を抑え、ユイのジャスティス本体は下から攻める……挟み撃ちの形となる!
ジャスティスが脚部のグリフォンビームブレイドを起動、スターライトへ、下から打ち上げる回し蹴り!
「くっ!」
それを紙一重で避けるアオイ。
しかし、眼前には別のビームブレイドが迫る───────リフターのウイングの、グリフォン2ビームブレイド!
避けられないそれをサーベルで受け止める……が、空中かつ体制を崩しているスターライトは、リフターの全推力をかけた突撃に対し、踏ん張れない……!
「───────うあぁっ!」
ビームブレイドはスターライト本体を切り裂くことは無かった……が、バチィンと音を立てビームサーベルを叩き落とし、スターライトを再び墜落させたのだった。
「くっ……」
「まさか、とは思っていたけど……本気を出してその程度だなんて。筋は良いけど、それ以上の物がない」
尻もちを付いた体勢で不時着したスターライトの前に、再びリフターと合体したインフィニットジャスティスが舞い降りる。
射撃戦のレンジでは無く、すぐさまクロスレンジに詰められる距離……それでも、アオイに対抗手段が無いと判断しての事だった。
「それに、その機体もピーキーね。貴女に合っていないんじゃなくて?」
「……」
図星だった。
問答に答えられず、アオイは押し黙る。
「……もういいわ、終わらせましょう」
そう言いながらジャスティスはロングライフルを左手に持ち替え、右手で腰にマウントされたビームサーベルを取り出し、連結。
長大な双刀サーベルを構える。その間になんとかスターライトも体勢を立て直すが……左スカートのサーベルの抜刀は間に合わない。ジャスティスが吶喊する……!
「“あの子たちのガンプラ”と同じ様に……切り刻んであげる!」
「……!!!」
「アオイ!!」
それは、アオイの中で灯っていた
ガァン!
「ぐっ!? 何!?」
サーベルが突き立てられるより先に、重厚な金属の激突音が鳴りジャスティスは吹き飛ぶ。
その衝撃で、手にした武装は取り落としてしまっていた。
「なんだ、今の」
「……見えた?」
「見えんかった……速い、速すぎるよ」
「うちでなきゃ見逃しちゃうね……見えなかったけど」
「いや見えんかったんかい!」
「……成程、やはりそうか」
六者六様、様々な反応の中、ジャスティスが立ち上がる。
その視界に映ったのは、残心を取るスターライトの姿。
(脇腹に衝撃ダメージ……無手よ? 相手は。有り得ない、これだけのダメージ……!)
ジャスティスの脇腹に深い深い衝撃ダメージが入り……ユイの見るコンソールには、腰の関節軸が破損寸前と言った診断状況が映し出されている───────!
(「ただの蹴り」でこれだけのダメージ! あの細身の機体じゃ有り得ない!)
……スターライトのふくらはぎのスラスターは、サブではない。
バックパックの3基のスラスターと、何ら遜色ないもの。
つまり、アレはメインスラスターだ。
アオイがカウンターで叩き込んだのは、反応速度にその推進力を乗せた、超高速の回し蹴り……!
「……テンジョウ・ユイさん」
「……何かしら、アオイさん」
「申し訳ありません。本当の事を言うと、私、
今日、初めてでしたからね……“この子”を動かしたのは……!」
「……!」
ユイはジャスティスの腰を労り、リフターと上半身のスラスターのみでホバリングに移行してから、ハイパーフォルティスをアクティブ、不意打ち気味に放つ。
しかし、ビームは空を切る……スターライトが、最小限の動きでビームを躱したから……!
「この子の調子……
「……ふ、ふふふ……ふはは……!」
ユイは思わず笑みを零す。
目の前の少女を、そのガンプラを、完全に過小評価していた。 シンプルな機体と、とてつもなくピーキーな調整の真意……それは、アオイが、
これまでの不調は、慣熟をしていなかった為。
それを、この場でこなしたのだ。
舐めていた……目の前に立つのは、自分と同等か、下手をすればそれ以上のポテンシャルを持っているファイター……!
「良い……良いわ、貴女!」
なら、今出来る全力を。
ジャスティスは全力でバックブーストをかけながら、ビームとバルカンを乱射。
所謂、引き撃ちである。
近接武器しか持たない機体なら、最も嫌がるであろう択。
それに対し、スターライトは左スカートのサーベルを右手で掴み抜刀。
両手で光剣を構え、構わず吶喊───────!
「乱れ撃ってるだけじゃ、ないんだから!」
ジャスティスも負けじと、突進を確認してから、牽制をバルカンに任せてビームで正確に白のガンダムを狙う!
「……! この位なら!」
スターライトが、自身を狙う弾幕をすり抜けていく……!
舞い散る花びらの中、最小限の動きで射線を避け、それでいて勢いを全く殺さず、それどころか、5基のスラスターが唸りを上げて、更にスピードを上げ駆けていく
……その様は、宇宙を翔ける彗星のよう───────!
「アオイの、ガンプラ……綺麗だ」
(……振り切れない! それに、蹴れば腰は耐えられない。これは───────)
「いっけぇぇぇええええ!!!」
桜吹雪が吹き、
そして、そのまま光刃を振り抜き、追い抜き去る。
スターライトは右手は振り抜いたまま、左手を地面につき、膝立ちの体勢で急ブレーキ。
1拍置いて、上下に別れたインフィニットジャスティスが爆散
……スターライトが、爆炎で紅く照らされた。
(───────アタシの、負けね)
《Battle ended!》
───────
「あなた、出来たけど……本当に良いの?」
「ああ、助かったよアリア」
「アオイ……本当に、強いんだな」
「アオイねーちゃんすげー!」
「すげーよほんと! ほんとすっげ!」
「あーあ、負け負け。驕りすぎたわね、アタシも」
「ユイ姫先輩も凄かったけど、アオイちゃんも凄いんだねぇ! 1対1でユイ姫先輩が負けるの初めて見たよ〜」
バトル後。
店内はバトルの熱気で皆のぼせたようで、打って変わって和気藹々とした雰囲気が流れていた。
「そんな事より早く返してあげてください」
「そんな事より早く返してやってよ」
「「アッハイ」」
前言撤回。アオイとイナホは氷点下だった。
「おっとすまない、テンジョウ君、アカツキ君。事後承諾の形になってしまって申し訳ないが、バトルルームを使用する時は、この紙にサインをして欲しいんだ」
「サインですか? わかりました」
「え? そんなのありましたっkもごもご」
「あーあー、あったわねそれも。今書くわ。マヒロ、クアンタとバルバトス渡しておいて」
「もご……あい、がってん」
そう言うと、マークの用意したシートに手馴れた様子でサインをするユイ。
その後に、アオイがサインをしようとするが、その欄のすぐ上には紙の継ぎ目が。
「……? これは?」
「ああ、コピー用紙のサイズを間違えてしまってね。継ぎ足してるんだ」
「そういう事でしたか」
借り受けたボールペンで、アオイも署名を終えた。
「はい、どーぞ。ありがとね〜2人ともゴニョゴニョ」
「おれのクアンタ……」
「バルバトス……」
「ちゃんと返してもらえて良かったな、2人とも」
「アオイにお礼言っとき?」
顔を見合わせるタマキ兄弟。
何やら浮かない表情だ。
「これで良かったね? 2人とも」
「……ええ、バッチリよ! 流石マークさん」
「はえ〜、そう言う事だったんすねぇ……」
「「……アオイおねーさん」」
「? 何かな?」
「「……ごめんなさい」」
「うん?」
「は?」
「え?」
兄弟が口にしたのは、謝罪だった。
「実はおれたち、ガンプラ取られたわけじゃないんだ。取られたフリをしてほしいって」
「あのおねーさんたちにたのまれて、マークさんも協力するって言ったから、かしてたの」
「うん……うん?」
イマイチ話が理解できない3人。
……と、その時。ドアが開き、チリンチリンと音が鳴った。
出ていこうとしていたのは、ユイとマヒロ。
ふとそちらを見たアオイと、バッチリ目が合う。
ユイのその手には、[入部届け]と言う見出しに、希望部活動に模型部と書かれ……下部には、間違いなく先程アオイが記入したサインが書かれていた。
釣れた、と言うユイの発言。
つい先程戻ってきたアリアさん。
彼女らの目的。
マークさんが協力。
継ぎ足した、と言っていた紙。
「……あぁあーっ!??」
繋がった。アオイの中で全部繋がってしまった。
バトルよりも、どさくさに紛れてそっちを手に入れるのが本命───────
「目的は達したわ! 行くわよマヒロ!」
「あらほらさっさ!」
「まっ、まってくださぁぁぁああい!?」
扉を開けっ放しで走り出す2人。
それを慌ててアオイが追いかけていった。
「まったく、高校生になってまであんな事……マーク、あなたも子どものいたずらのような事しちゃって」
「ふっ……だがあの娘、やはり凄まじい実力だ。恐らく……新しい風を吹き込んでくれるだろう」
「んもう、まったく……」
「「……?」」
「ねーちゃん、ユウヤにーちゃん、おれらあのおねーさんたちからおかしもらった〜」
「なんか悪いことしちゃったみたいだから、これアオイおねーさんにあげてほしいな」
「あ、ああ……うん?」
「お、おう……うん?」
結局、ユウヤとイナホは話に着いてこれていなかった。
空いた扉の外で、アオイが足をひっかけてべしゃり、と倒れ込む姿が見えた……
《次回予告》
平穏は、身勝手な人達に壊されていく。
えっ、理由があったんですか?それならば、言ってくださればよかったのに。
次回、ガンダムビルドリンカーズ第2話
《このままじっと、してられない》
3つの運命が、伝説になる……の、ですかね?
───────
本作OPイメージ曲:Dawn Blue