ガンダムビルドリンカーズ   作:繊月ライラ

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それは、乗り越えるべき壁

──────

 

 

 

 

 

あれよあれよという間に、2週間という時間は過ぎた。

今日は試合の当日。

放課後の部活動時間に、紅葉学園の体育館を貸し切りにそれは行われる手筈だった。

 

 

「まったく重てぇなぁ」

 

「なんで部活を中止にされた挙句、こんなおっもいモン運ばにゃならんのかねぇ」

 

「ところでコレ何なん?」

 

「ゲームの筐体らしいぜ。ガン…プラ?とかなんとか」

 

「なんでそんなモンが学校にあんだよ?」

 

「少し前に定年で辞めた先公が寄付した、らしいぜ」

 

 

バトルシステムを運んでいるのは男子バレーボール部。

何時もは体育館を利用して活動しているのだが、今日限り体育館の貸し出しで部活が休みになった為に、設備運搬の手伝いをさせられているのだ。

 

 

「てか、小体育館の方でいいんじゃね?」

 

「卓球部が拒否ったらしいぜ」

 

「俺らには拒否権ねーのかよ!?クソか?」

 

「まったくだなぁ」

 

 

ぐちぐち言いながらも運搬は進み、体育館は間近だった。

そんな彼らに、パタパタと駆け寄る人影があった。

 

 

「バレーボール部の皆さんですね?こちらです!」

 

「おう、あんがと……お」

 

 

それは少女で、たれ目がちな翡翠色の目の美少女だった。

星の飾りのついた髪留めで長い前髪を留めている。

……バレー部の野郎どもは、その美貌に見とれてしまっていた。

 

 

(可愛いなこの娘)

 

(え?こんなカワイイ子ウチに居たっけ?)

 

(ああこの娘が……ふーん、いいじゃん)

 

「ありがとう、お嬢ちゃん。所で、彼氏は?」

 

「えっ……えっ?誰かと付き合った事は無いのですが……?」

 

(あっ)

 

(出たな何時もの悪い癖)

 

(彼氏の有無から入る奴があるかよ)

 

「ふふ…ならばこの俺と熱い恋を……」

 

「何鼻の下伸ばしてんのよスケベ共」

 

 

いつの間にか、彼らの後ろに立っていた人影が1つ。

 

 

「ゲッ……テンジョウ」

 

「何がゲッ……よ!ウチの後輩は安くないわよ!」

 

「へ、へーい」(この娘模型部だったのか……)

 

「そこのあんたらも!時間ないんだからさっさと運びなさい!」

 

「ウィッス」

 

「えっ、えぇーっと……こっちの方です、はい」

 

 

 

…………

 

 

 

「……よし、これで準備完了だ」

 

 

無事にシステムは全機体育館内に納められ、キリタニによってセッティングが終えられていた。

 

 

「あとは、トライエースが来るのを待つだけね」

 

「やば、ちょっと緊張してきたカモ……」

 

「練習通りやれば良いのよ、練習通りにね」

 

「ユイ先輩もですよ?」

 

「わ、分かってるわよ」

 

 

「アオイー!」

 

「アオイ、僕達も来たぞ」

 

「あっ、イナホちゃんにユウヤくん!」

 

「あら、あの時の」

 

「へー、ウチの学校だったんだ」

 

 

直接模型部に声を掛けてきたイナホとユウヤだけでなく、手持ち無沙汰になった男子女子バレーボール部員を中心に、体育館にはぞろぞろと観客が集まってきていた。

 

 

「アオイ、やるからには全力で応援したるからね!」

 

「僕も応援してるよ」

 

「イナホちゃん、ユウヤくん……ありがとう!」

 

「ふーん、いい友達じゃない」

 

「そういうアンタは、真っ先にアオイを頼ったりで友達いないんか?」

 

「なっ……しっつれいね貴女!?」

 

 

イナホはユイの事を怪訝な目で見ている。

サラッと毒を吐いた事と言い、以前の事をまだ許していないらしい。

 

 

「ユイ姫先輩は友達いないけど、うちらがいるから問題ないんだよね!」フンス

 

「マヒロ!?フォローしてるようで、フォローになってないわよ!?」

 

「本当におらんのか……うわ……」

 

「その……今からでも、友達は作った方が良いと思うんだ」

 

「出来たら作ってんのよぉぉお!!

あと可哀想な物を見るような目をするのやめてもらえないかしら!?」

 

「あ、あはは……」

 

 

アオイは苦笑するしか無かった。

が、わちゃわちゃした事で張り詰めた空気が少しだけ解れた様だった。

 

……そんなこんなしているうちに、見慣れぬ制服の集団が体育館に入ってきていた。

 

 

「おや……来たようだ」

 

「「「!」」」

 

「ほなら、ウチらは退散しますわ」

 

「応援してるぞ」

 

「ありがとうね、2人とも」

 

 

そうして……2チームが対峙した。

チーム・トライエースを引き連れるは、オールバックの偉丈夫。

 

 

「久しいな、大尉。いや、今は教官殿と読んだ方がよかったか?」

 

「よしてください、生徒達が勝手にそう呼んでいるだけです。あなたこそ、少佐とお呼びしましょうか?」

 

「ふっ……過去話はこの位におこう。よく来てくれたね、テラサワ(寺澤)先生」

 

「あなたも変わりない様で、キリタニ先生」

 

「テラサワさん……!」

 

「エルフ・ブルを駆る、元世界レベルのプロファイターね。向こうも教導者は一流ってワケ」

 

 

この2人、現役時代は世界選手権でしのぎを削った者同士でもあるのだ。

その教え子同士がぶつかり合うことになるとは、奇妙な縁を感じずにはいられない。

 

 

「そちらの3人の乙女が、あなたの教え子……紅玉の女王と、そのチームメイトで間違い無いですな?」

 

「ああ、そうだ」

 

「女王の噂はかねがね……だが、こちらの教え子も、それぞれ女王に負けぬ粒ぞろいだ。紹介しましょう」

 

 

先頭に立つは、四角い眼鏡をかけた少々チャラい雰囲気の男子。

 

「チーム・トライエース、リーダーのカドカワ(門川)キイチ(輝一)!」

 

「どうも〜」

 

その右後ろには、顔の古傷が目立つツンツン頭の快活そうな男子。

 

「メンバーその1!ハセベ(長谷部)ムツキ(睦月)!」

 

「押忍!」

 

そして最後は……ショートヘアで鋭い目付きの、中性的な美人。

 

「メンバーその2の、ミツルギ(御剣)フユキ(冬雪)だ!」

 

「……」

 

 

2つのチームの間で、バチバチと火花が散る。

 

 

「宜しくお願いしますね、女王サマ?」

 

「ナメてるわね、貴方?今にわからされても、知らないわよ」

 

「正直、あなた達の実力は分かりません……が、おれたちは全力でやらせてもらうっスよ」

 

「うちらの本気を侮るなよ〜?」

 

「私たちも、全力でいかせていただきます!」

 

「……全力でやり合えるなら、それに越したことはない。

四の五の言うのは苦手だ、始めよう」

 

 

 

 

 

 

体育館の扉の多くが閉められ、電灯が消される。

それと共に、機械音声を上げて起動したバトルシステム……全国大会のレギュレーションに合わせ、7台を対称形状に連ねたもの……から溢れた光が館内を照らした。

 

 

「マヒロっち〜!あーしがついてるぞい!!ファイトぉーっ!!!」

 

「わぁ、アケミちゃーん!ありがとー!」

 

 

野次馬の最前列からエールが飛んできて、マヒロは手を振り返した。

ユイはちょっと遠い目で微妙な表情をしている。

 

 

「……オホン、気を取り直して……やるわよ、2人とも。準備は良いかしら?」

 

「もち!」

 

「はい!何時でも!」

 

《You have control!Battle start!》

 

「テンジョウ・ユイ!グローリィジャスティスガンダム!」

 

「ハザマ・マヒロ!ヘルムヴィーゲ・カスタム!」

 

「アカツキ・アオイ!ガンダムスターライト!」

 

 

「じゃあ、行くわよ!チーム……チーム……」

 

 

……

 

 

「……うん?」

 

「……私たち、チーム名決めてましたっけ?」

 

「……ええい!紅葉学園模型部チーム!出るわよ!」

 

「が、がってん!」

「は、はい!」

 

 

 

 

「お相手さん、グダグダっスね」

 

「……どうでもいい」

 

「んじゃま、こっちはビシッと決めますかね。

 

……カドカワ・キイチ、スタークジェガンフルカスタム!」

 

「ハセベ・ムツキ!頑駄無陽炎武頼(ガンダムカゲロウブライ)!」

 

「ミツルギ・フユキ……BR-ジャガーノート」

 

 

「チーム・トライエース!」

「「「Go Ahead(進軍せよ)!」」」

 

 

 

 

 

「行けーアオイー!」

 

「アオイ、頑張れ……!」

 

「キャー!マヒロっち〜!」

 

「すんげェな、これがゲームかよ」

 

「テレビで見た事はあったけど、実物はもっとすげえや」

 

「見ててなんかワクワクしてくるな……!」

 

 

「やっと始まったか。して、彼女達はどうなのかね?」

 

 

野次馬群から離れ、試合を俯瞰して見られる体育館2階には、事の発端のマカべ教頭に、キリタニとテラサワ、そしてもう1人の影があった。

 

「できる限りの事はしました。仕上がりは上々でしょう」

 

「見て分かりますな。ハザマ、と言いましたか。初心者だと聞いていましたが……彼女の動きも荒削りではあるが、悪くはない」

 

「トライエースは、今年の大会でも有力とされていますが……彼女らのポテンシャルも負けていない。少し気を抜けば、足元を掬われるでしょう」

 

「勝てるかどうかは彼女ら次第、という事か。

 

……ところで、金髪の君は誰なのかね?」

 

「おっと、お初にお目にかかります。ホビーショップN-FLAGオーナーのマークです」

 

 

教師陣に紛れしれっとこの場に居たのは、マークだった。

手馴れた様子でマークが名刺を差し出し、それをもぎ取る様に受け取りながらもマカべ教頭が吼えた。

 

 

「何故部外者がここにいるのだね!?」

 

「熱いガンプラバトルが見られるのならば、火の中水の中。私はそういう人間なのです」

 

「我が模型部の備品たるプラモデルは、彼の店から卸されているのです。入校許可も得ているのでご容赦ください」

 

「ふ、ふん……まあきちんと手続きを踏んでいるならよい」

 

「……おっと、そろそろ会敵する様ですな。紅葉学園模型部の実力、見せていただきましょう」

 

 

 

 

 

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