幼女のせいで青春が終わりました、あと世界もついでに終わってます   作:今北産業小説部

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③案外この世は少年ジャンプ

 

 

 俺の住む下宿先のアパートは六畳一間の小さな一室である。安い部屋だから言うべき特徴も特に無い。敢えて挙げるならば風呂トイレ別で、ベランダからはちゃんと二階からの朝日が望めるということくらい。でもまあ男子高校生一人が暮らすに何の不足もない部屋だ。

 

 ベッドに腰を掛けて俺は室内をゆっくり眺める。

 勉強机に、小さなテーブルに、冷蔵庫に、本棚に、空気清浄機に、それから女の子。

 そう、女の子が俺の部屋が鎮座している。精霊と呼ばれていたオッドアイで金髪の女の子が。

 

 何でいるんだよ連れ込んだのかテメエ?と睨んでくる紳士諸君にはどうかその拳を下ろして欲しい。

 本当に違う。違うんだ。

 俺は普通に家に帰って、何故かその後を女の子も着いてきた。それだけの事実しか存在しないんだ。

 まるで自分の家に帰るみたいに女の子は当然のように俺の部屋に入ってきて、それでテーブルの前で俺が入れた麦茶を時折飲みながら寛いでいた。

 

 何だこの状況。

 さっきとは違う意味で分からない。村上春樹の小説だってもっとウェットに富んだ言い回しでシニカルに不法侵入するぞ?こんな何の脈絡もなく上がり込んでくる人間、RPGの勇者くらいでしか見ねえよ。いやこの女の子は人間じゃない可能性もあるのか。なら法律も適用外だな。合法的な不法侵入だ。って納得できるか……!

 

「あ、えっと、その~、どうしてここに?」

 

 女の子がコップを持って、ずずずと啜る音だけが響く。

 女の子は俺の方へと視線を投げると、餌を待つ犬みたいに正座のまま固まってしまった。

 やっぱり喋ってくんないんすね……。どうしようか俺、困っちゃうなー俺。茶化してるけど俺はマジである。

 

「あの……そうだな、何か食べるか?賞味期限ギリギリの菓子パンならあるけど」

 

 そう言ってみれば女の子は前髪を整えるみたいに触り始めた。

 ……これはこの女の子なりの返答?それともただ気になっただけ?分からん、本当に分かんねえ……!

 決まづさから逃げるように俺はキッチンの脇に置きっぱなしだった練乳クリーム入りコッペパン110円を手に取って、依然と俺を目で追う女の子の前に置いた。

 女の子は視線を菓子パンに落とすと、恐る恐るといった感じで外袋を触る。あの、まさか包装をご存じない……?

 ペチぺチと何度も弾いて、危険がないことを理解したのか女の子は漸く手に取って持った。それから包装に爪を立てて、何度もカシャカシャしている。犬か。まるで初めて見たかのような反応じゃん。

 

「あー、ちょっと貸してみ」

 

 女の子から菓子パンを取ると、両手で持って外側に引っ張って包装を破き、コッペパンの先端を袋からちょこっと覗かせた状態にして女の子に返す。女の子は目を丸くしてコッペパンの匂いを嗅いで、それから小さく一口齧った。

 

「っ…………!!」

 

 あからかさまに表情が変わった。目を大きく広げて、パチパチと瞬きをするたびにキラキラと星が瞳から落ちている気がする。

 満面の笑みだ。え、可愛い……ナニコレ。元から美少女ではあるとは思っていたが、ここまで能面フォルムを見てきたらか落差から無茶苦茶可愛く見える。全人類美少女コンテストランカー並みのプリティーさ。ここが新宿渋谷池袋ならアイドルのスカウトが二秒に一回は来るぞきっと。

 

 女の子はパンをじっくりと咀嚼して、嚥下すると唇に着いたパン屑を一切気にせずにすぐ次の一口をパクリ。どうやら気に入ったらしい。ただのコンビニの菓子パンなんだけどな……。

 

 そのままの勢いを維持して二分と掛からず食べ終えると、外袋を机に置いた。また無表情に戻ったが、頬に着いた練乳クリームがコッペパンに夢中だった証として残っている。何だか小動物みたいだな……リスとかウサギとか、そういう類の。

 

 ……結局どうしよう。

 俺、この女の子をどうすれば良いんだ。誘拐とか拉致とか言われても何も言えねえんだよな。実際は勝手に着いてきて無言で居座ってるだけなのに。男の肩身は狭いぜ。でも追い出すのも違うしな……命の恩人だし。

 

 諦めてインスタンスコーヒーを入れて飲んで落ち着いていると、アパートの呼び鈴が鳴った。

 ネット通販なんか使ってないんだけど……実家からの仕送りか?

 

 俺が立ち上がるのを不思議そうに視線を送ってきたので軽く笑みを返して、玄関のチェーンを外す。

 ドアを押して開けると、サラリーマンみたいなスーツを身に纏わせて立っていたのは細い眼鏡を掛けた見知らぬ男だった。また幼女じゃない……いや俺、これが普通の光景だからな。何でちょっと寂しげなんだよ。ロリコンか。ロリコンじゃねえよぶっ飛ばすぞ。

 

「初めまして。こちらに精霊は……いらっしゃいますね」

「ええと……どなたです?」

「申し遅れました、私はSNP日本支部所属の秋川敬吾(あきかわけいご)と申します。錦田一心様ですね。突然の訪問、失礼いたしました。組織名を名乗っても分からないと思いますので、どうか私のことは超常現象の専門家とでも覚えていただければ幸いです」

「は、はあ。てかちょっと待てよ、何処で俺の名前なんて」

「そちらを拝見させてもらいました」

 

 そう言ってスーツの男、秋川は玄関脇に掲げられた表札に指を向ける。

 それもそうか、口ぶり的にあの女の子に用があるといった雰囲気だ。その女の子の居場所が分かっているなら、彼女以外が玄関に出てきたらそれを家主と判断するのは容易い。

 

「少々お時間、よろしいでしょうか?」

「……その前に一つだけ、聞いていいか?」

「何でしょう?」

 

 秋川は控え目に笑みを湛えているが、目は笑っていない。

 こいつ、超自然現象の専門家とか自称していたが……あの和装女とも何か繋がっているんじゃないか?或いは仲間という可能性だってある。そうなれば、間違いなく俺の敵だ。

 

「お前、あの子を殺そうとしているんじゃないよな」

 

 その質問に秋川はふっと息を漏らした。慇懃な態度を取り続けていた秋川が突如溜息を落としたことで、俺の身体も強張る。

 ……扉を閉めれば数秒くらいは稼げるか。あとはあの女の子を抱えて窓から飛び降る、のは二階だから無理だし消防用の梯子を使って下に降りて逃げるしかない。ただ俺の足だとあの和装女と似た身体能力を有していた場合に確実に追いつかれてしまうから最悪また女の子に頼ることになるな。情けねえな、俺。

 

 口内がカラカラに乾く。再び訪れたかもしれない生命の危機に、緊張が最大限まで高まる。

 いつでも扉を閉めれるようドアを持つ手に力を込めていると、秋川は俺の顔を見て申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

 

「そうでした。一点、私から謝らせてください。先程貴方を襲った女は私の妹です」

「は……?」

 

 予想外の返事に再度俺の身体は固まった。

 純粋に理解が出来ない。この男があの凶暴な和装女の兄妹……?いやいや、対応の差が歴然とし過ぎて全然想像つかねえぞ……?

 

「名前は秋川京果(あきかわけいか)と言います。あの子は少々……いえ。かなり直情的な人間でして、錦田一心様におかれましては大変なご迷惑をおかけしたとお聞きしています。申し訳ございませんでした」

 

 呆然とする俺を置いて、秋川は頭を下げた。きっかり角度は45度、礼儀正しい綺麗な謝罪だ。

 どうやら、その秋川京果とやらが秋川敬吾の妹であるのは本当のことらしい。ここまで真摯に頭を下げるということはそうとしか考えられない。

 

 とは言えだ。それと個人的な感情は別物だろ。

 なんせ俺だって殺されかけたんだ。それも話すら聞いてもらえず、一方的に。ラノベ主人公なら許してしまうのかもしれないが、俺はそこまで器量が広くない。出るとこ出れば殺害未遂の現行犯とその被害者だぞ、たった数秒頭を下げただけで許されるんならこの世の全ての暴力が正当化されるくらいとんでもないことだ。

 

「謝罪は受け取りません。それは本人と会話して、俺が判断します。本音を言えば会いたくないとこではありますが、秋川さんの言葉を一旦は信じてそう言っておきます」

「……そうですか。承知致しました。一先ずは錦田様の部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか?立ち話というには長くなります」

「分かりました。あの子を害すって訳じゃないなら別に構いませんよ」

「勿論です。では失礼いたします」

 

 玄関の戸を潜ると、秋川は定期的に磨いているのか黒光りするビジネスシューズを丁寧に縦に揃えて狭い一室へと入った。几帳面だな、俺なんて制服のローファー汚いぞ。よくそんな管理できるな。

 秋川は俺の部屋が物珍しいのか、辺りを見渡すと女の子の姿を見てその動きが止まった。怜悧な視線が女の子を刺す。だが敵意が無いのは本当らしく、二秒ほど眺めると直ぐに視線を外した。

 

 そのまま秋川はテーブルの前に立つと、スーツの皺を気にしながら正座した。対面には女の子。女の子は見知らぬ男が現れたことには一切反応を見せることなくコッペパンの外袋に印刷された文字を観察していた。秋川も口を固く結び、無言が空間を支配する。なんつーか、すっげえ口を開きづらい空間だな。

 俺は秋川の前に茶を出すと、ありがとうございますと小さく一礼して受け取る。

 秋川はコップに口を付けて、ほんの少量を口内に流しこむと机の上に置いた。俺はその様子を見て何だか安心する。これで『私は粗茶は飲まない主義なので』とか言われたらどうしようかと思ったぜ。固い雰囲気はあるが極限まで堅物という訳でもなさそうだ。

 

 俺は何処に座るか悩んで、女の子の隣に座った。秋川の隣に座って横同士で話するとかダチみたいでかなりキショいし、異性耐性ならこの一年で鍛えられてる。今ならどんな幼女が隣に座っても俺が気にすることはない!って自分で言ってて危険人物みたいだな。俺は本当にロリコンじゃない。

 

「早速本題に入りましょう。錦田様はどの程度、今の状況を把握していますでしょうか?」

 

 口火を切ったのはやはり秋川だ。

 全人類が幼女に見える……くらいしか分かってないんだよな。こうなって一年も経っているのに。

 

「世界中の人間が幼い女の子に見えるようなってしまった……以外には知らないです。それも俺だけみたいですし……その、秋川さんは知ってるんですか?今何が起きてるのかを」

「私も全てではありませんが、職業柄錦田様よりは存じ上げています」

「本当ですか!?」

 

 と、机に思わず乗り出して秋川はカチャリと眼鏡を持ち上げた。はい、勝手に盛り上がってすんませんした。静かに体勢を戻す。

 

「まず、錦田様は勘違いされています」

「勘違い……すか?」

「俺だけが、と申されましたが私もこの街の住人全てが幼い女児に見えます。錦田様ではなく、他の住人が変化したのです」

「それは…………はい?」

 

 俺以外の人間が変化?

 待てよ。待ってくれ。それは話がおかしいだろ。

 それって要するに、本当に、真の意味でTS幼女化したって言ってるみたいじゃないか。

 

「根拠はあるんですか?そんな、突拍子の無いことが……」

「根拠、ですか。この場でそれを語るのは少し間違っていますね」

 

 良いですか錦田様、と秋川は語気を強める。

 

「飛行機がどうやって飛ぶかはご存知でしょうか?」

「ちょっとくらいならまあ……。アレですよね、揚力が翼を持ち上げるからとか何とか」

「大方はその通りです。より正確には空気の循環が生まれることで翼の下部の圧力が上部より強くなり、上に向かう力が発生して翼に揚力が生まれます」

「……なるほど」

 

 良く分からん。空気の循環って何だ。

 俺が理解しているかどうかは重要なことじゃないのか秋川は無視して話を進める。

 

「この中でも空気の循環を証明した理論のことをクッタ・ジューコフスキーの定理というのですが、この理論が発表されたのは1906年です。一方、ライト兄弟が初めて操縦可能な飛行機を作り上げたのは1905年のことになります」

「理論より、飛行機が作られるのが先だった……?」

「現象が先行し、理論が後塵に期すことは多いです。寧ろ基本的にはそうだと言えます。我々、SNPは超常現象を扱っていますが超常現象と語られるそれらも理論が確立されていません。加えて超常現象は科学理論や常識では考えられないほど信じ難い現象も多い。例えば今この街で起きていることみたいに。証明はこの先も難しいでしょう」

 

 そこで一区切りなのか、秋川は再び茶を口元に運ぶ。

 

 超常現象、か。

 まあ自然界の理から外れているのは分かっていたことだ。去年から俺は変な目を持ってしまったと思っていた。それだけでも超常現象に値すると言える。

 なのに、世界がおかしいとかな。正直、マジすか?と口から出そうになった。

 秋川さんが語ったように俺の目がおかしくないと言うのが本当なら、生理学的に女性だけでなく成人男性までもがアンチエイジングしちゃってるこの世界はどんな尺度を用いても説明は出来ないだろう。

 

 でもな、やっぱ受け入れらんねえよ。

 その言葉を信じるには規模がデカすぎる。

 

「あの、俺。やっぱり自分の目がおかしいと思うんですけど……何か無いんすか?秋川さん、自分のことを超常現象の専門家って言ってましたよね。この世界がおかしいってんなら、その証拠……何か見せてくださいよ」

「分かりました。では、この手をご覧下さい」

「……はい?」

 

 秋川はまるでマニュアル通りかの如く俺の要求に即座にレスポンスしてきた。

 予想と違うんだが……。もっと渋ってくるかと思ったのに、まるで簡単なコインマジックでも始めるかのような様相で右手を頭上に掲げると軽く握ったり開いたりと繰り返す。種も仕掛けもございませんと言ってるようにだ。

 

「では、失礼して」

 

 秋川は懐からポケットティッシュを取り出すと、徐に一枚だけ指で摘まんだ。珍しい、黒い色をしたティッシュだ。炭とか配合してるのか?

 俺が見ていると秋川はそのティッシュを頭の上まで持ち上げる。自ずと秋川は両手をハンドアップする形になった。

 すると、指から力を抜いて宙に落とした。

 ティッシュは不格好に落下する。重力によって、緩い錐揉み回転をしながらテーブルへと落ちる。

 

 落ちて、落ちて、落ちて、落ちて。

 そして、パッと消えた。

 

 何の脈絡も無く、壮大なSEも無い。

 さながらシーンを切り替えたかのようだった。

 

 俺は目を見開いてティッシュが落ちていた軌跡を凝視する。だが幾ら見てもティッシュは無かった。秋川の手にも、机の上にも。欠片すら見当たらない。

 本当に、この場に存在したという歴史が無くなったみたいに消えた。

 ブラックホールに引きずりこまれたみたいに、前触れも無くだ。

 

「これは、マジック……じゃないすよね」

 

 思わず疑ってしまう。

 だが同時に、それは無いなという結論も脳内で既に出ていた。

 秋川の両手は依然と頭上にある。つまり、秋川には干渉可能性が無い。秋川が落ちるティッシュをどうにかできるなんて到底思えないのだ。

 

「これが私の持つ固有の超常現象……超能力になります」

「超能力……ってあの?サイコメトリーとかテレキネシスとかそういうタイプの?」

「そうです。私は違いますが、そういう使い勝手の良い力を持った同僚もいます」

 

 極自然に秋川はそう宣う。

 超能力……マジかよ。いやホント、ホントに……マジで?

 当たり前を言うようだが、俺はこの世界には魔法も超能力も巨大ロボットもいないのが当然と思って生きてた。だが、これを見せられると……信じたくなる。信じたくなっちゃうのが男子高校生の性というものだ。

 

「でも……ティッシュが消えたのは有り得ないしヤベえと思いましたけど……ビミョいですね」

「……この能力、私が言うのも何ですが非常に危険なものになります」

「はい?」

 

 ティッシュ一枚、おおよそ0.5グラム程度でしかない。しかも形状は変わりやすく、物質としても柔く脆いだろう。それが消えたところで、地味に見えるが……。

 

「錦田様、色を覚えているでしょうか?ティッシュの色です」

「色……ティッシュだし白だったんじゃ?」

「先程私が使ったのはこちらです」

 

 そう言って再びポケットティッシュを取り出す。

 ……アレ、黒色だ。

 そうだよ俺。灰配合のティッシュかと思って見てたじゃんか。なのに何で忘れたんだ?

 

「詳しくは言えませんが、この力で無くなったものからは歴史が無くなります。錦田様が特徴的なティッシュの色を覚えていなかったのも、それが原因となります」

「歴史が無くなるって、ミクロ的に言えば記憶から消えるってことかよ……むっちゃヤバくないすか!?」

「はい、ヤベえです。だからこそこんな力は乱用すべきではありませんし、使うとしても世界に影響を及ぼさない、こんなティッシュ一枚くらいが消す対象として丁度良いんです」

 

 世界に影響……って。

 さっきの話なんかよりよっぽどこっちの方が大事に思えるんだが。

 超能力一つ使うだけで歴史が消える?

 んなチート能力と比較したら俺の事情なんてミジンコ並みにちっぽけだ。ただ世界中の人間が幼女に見えるだけで、俺を除いて誰も困ってない。一年間、俺の世界は通常稼働を続けていたのだ。

 

「錦田様、ここからが話の肝なのですが。この超常現象……名前を女児異変とでも仮称しましょうか」

「なんか意識高いPTAが列を成して台頭してきそうな名前ですね……」

「こういうのはシンプルなものほど好まれますので。我々は理解に難しい超自然現象を扱うことが多いですから分かりやすいネーミングの方が良いのです。話を戻しましょう。そこで恐縮なのですがこの女児異変、錦田様にも解決を手伝って頂きたいのです」

 

 そこまで言うと、秋川は今日一番の深い角度で頭を下げた。

 話を理解するのに数秒掛かった。

 ……手伝うって、その、はあ!?俺が!?

 

「む、無理っすから!」

「アルバイトや部活動などなさってるのなら、お手すきの時でも構いません」

 

 いやそういうことを懸念したわけじゃねえよ!

 

「俺、何も出来ないですよ!?だって俺以外が幼女してからずっと半ニート生活してたから身体能力には自信無いですし、秋川さんみたいに空想科学読本で研究されてそうな超能力も持ってませんって!」

「問題ありません。危ないことは全て私と、それからこの場にはおりませんが妹で行うので」

「妹……いや、今は置いといて!俺には出来ませんって!」

「それと1つ、錦田様にも超能力があると思われます。私の個人的な推定ではありますが」

「俺に超能力なんて……超能力あるんですか俺!?」

 

 否定しようと口を開いて、その口で俺は速攻で聞き返した。

 だって超能力だぞ超能力!アニメやゲームで見る分には憧れは無かったが、こうして実在すると分かれば欲しいに決まってるだろ!

 

「俺ってどんな能力なんです!?エレクトロマスター!?それともパイロキネシス……いやテレポーターなら世界旅行が何時でも出来て良いなそれが良いそれですよねそうなんすよね秋川さん!」

「私の個人的見解では、錦田様の能力は無効化(イレイズ)だと思います」

「へ……?無効化……?」

 

 興奮する俺を完璧に無視して秋川さんは言った。

 無効化……ちょっと地味だがそれも悪くない。何だかラノベ主人公っぽい能力で良いじゃん。強そう。って我ながら小並感すぎる感想だなおい。

 

「見たところですが、外見の変化が起きているのはこの市周辺でのみの現象のようです。ですが錦田様は一年間暮らしているにも関わらず外見に変化が認められません。これは超自然現象をレジストしているからに他ならない……と思いますが、確証はありませんのでこの事は話半分に思っておいて下さい」

「そうか……住人全てが幼女になったってんなら俺もなってなかったらおかしいって結論に至れるのか」

「その通りです」

 

 今までロリ魔眼説を推してきたから考えもしなかったぜ……。

 俺の思考回路は普通だった。世界が狂ってて、俺だけが正常だなんて考える方が都合が良すぎるってもんだろう。自分に瑕疵がある可能性を見過ごして思い通りにならない世界に責任を押し付けることを現実逃避って言うんだ。まあオンラインゲームに移住しようとしてた俺が言っても蟹程度の重みしかないけどな。

 

「錦田様には超能力を使ったお手伝いをしていただこうとは思っておりません。我々はまだ来たばかりで現地調査が必要です。この地で一年暮らす錦田様の御助力があれば、この状況に対する解決法も自ずと分かってくると私は考えています」

「調査……ですか」

「難しいことは要請しません。あくまで変わったことが無かったか、不審人物が目撃されていないかという点について重点を置いて調べて欲しいのです」

 

 ……うん、それくらいなら俺でも出来るな。

 つまり人……と言うか幼女たちから話を聞いて、それを纏めて秋川さんに報告すれば良いということだ。見た目幼女と話すのは少し気後れするが、それでこの状況が解決できるのならやらない理由も無い。

 頷いて見せると、秋川さんは初めて口を緩ませた。

 

「ありがとうございます。勿論これは業務扱いとなりますので、錦田様に内容に応じて少ないですが報酬を支払わせていただきます」

「俺に任せてください秋川さん。その役目、俺が絶対に成し遂げてみせます」

「ご協力感謝いたします」

 

 自分でもさっきより一段は真剣な目になったのが分かる。

 この現代の資本主義社会において万物の源は金である。

 だから俺は守銭奴じゃない。男子高校生だし、あまり金ねえし。いや誰でも引き受けるってこんな仕事ならな。

 俺は不思議そうに首を傾げる女の子に、汚い心を見抜かれないよう曖昧に笑うのであった。

 

 

 

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