ようやく世界中に、インターネットサービスが一般向けに普及し始めた。
ここまで長かったなぁ…
でも、これで『死神』への仕事の依頼をネットを通じて受けることが出来る。
別に現地で直接受けてもいいんだけど、居場所がわかりやすいし、毎回たくさんの尾行を巻くのもめんどくさいから正直助かる。
仕事以外では極力殺さないようにしてるんだよ、私は。
誰彼構わず殺すような殺人鬼では無いからね。
今の私は、念で強化した指パッチンでクラップスタナーをかけることが出来る。
傍から見れば、私は魔法を使ったように見えるだろうね。
なぜ指パッチンだって?
猫騙しだと、ほらぁ…少しダサいじゃないか……
指パッチンの方がスタイリッシュでカッコよくない?…(小声)
それに、
原作「暗殺教室」の殺し屋の代表的な技だぞ?
鍛えるに決まっておろうが!!!
あとは、ミスディレクションを応用して、できるだけ多くの人数の意識を私に都合のいいタイミングに、ちょうど波長が山になるように調節するだけだ。
こうすれば、指パッチンでいきなり複数人が倒れたようになる。
これを見た者は、訳が分からず恐怖に駆られるだろうなぁ…
でも、結局はこの経験が君たちを生かすことになるんだよ?
ほら、人間って、「分からない」ってことが怖いだろう?
君たちが程々に私に恐怖を抱いてくれれば、手を出して来ないじゃないか。
仕事以外で私は殺しは極力しないが、仕事の邪魔になりそうなら殺すことも手段の一つに含めた排除に動かなくちゃいけないからね?
だからね、
好奇心に駆られて、私に深入りしない方が身のためだよ?
黒羽盗一。
《黒羽盗一side》
その影を見かけたのは本当に偶然だった。
私は、高校を卒業して直ぐにマジシャンとして身を立てた。腕が良かったが、日本では満足出来なかった。だからアメリカに行き、講演を重ねて武者修行を始めた。
アメリカは、さすがショービジネスの国というべきか、今の私が井の中の蛙だと嫌という程思い知らされる。技術も、そして客への魅せ方も。
私が住んでいるアパートは、安い代わりに周辺の治安は悪く、マフィアやゴロツキがウロウロしていた。家に出入りするだけでも危険だ。
自分で言うのもなんだが、私は少々怖いもの知らずの無鉄砲な所がある。
自分でもバカだと思いつつも、
私のマジックでこの辺のゴロツキ達をあしらうことが出来るようになれば…等という考えを思いついてしまった。
そして実際に上手くいったのだ。
アメリカでは喧嘩や脅しに、直ぐに銃が出てくる。
これらに対応するために私は必死だったが、おかげで、
変装術や視線誘導、そして日本の暗器術を応用した物や仕掛けの隠し方など…
若干マジックかどうか怪しいものが混じっているが、私の技術は遥かに向上した。
そうしてスリリングで充実した日々を過ごしていたが、ある晩、借りていた部屋の窓からアパートの外を何となく眺めていた時だった。
「あれ」を見たのは。
その男?女?…顔を隠している。体格からも分からない。性別不明…『正体不明』だ。
そいつは、明らかに一筋縄じゃいかないような者達に囲まれていた。
その『正体不明』が、「バチンッ」と指を鳴らしたと思ったら、次の瞬間、屈強で威圧的な男たちが一斉に崩れ落ちたのだ。
失神している………
……………あれはなんだ?…
マジックでは、視線を誘導したり意識を逸らすのに指を鳴らすことはよくあるし、私もよくやる。
だが、「あれ」は違う!!
体が震える。寒い。
これは恐怖しているのか??
だが、それでも私は見たことの無い技術に興奮していた!
直ぐに変装した私は、その『正体不明』を尾行を始めた。
改めて私は自分のバカさ加減に嫌気がさしたよ。
いつの間にか対象を見失い、アパートに帰ろうとした時、
そいつは後ろから声をかけてきた。
名前も何故か知られている…
恐ろしい……
「バチン!」
目の前が真っ白になり、身体中に痺れが走った。
気づけば、私は路上で倒れていた。
あの夜は私には忘れられない夜になった。
後に怪盗キッドとして活動して、裏の事情にある程度詳しくなった頃に、
あの『正体不明』が、裏社会の伝説的殺し屋『死神』だったのではないかと気づいた時、既に過去の事なのに私は冷や汗が止まらなかった。