TSウマ娘はトレーナーにガチ恋せずに三年間駆け抜けられるか 作:TS娘には恋させよ
生徒会長シンボリルドルフ。ウマ娘達の憧れであり、前人未踏の偉業を成し遂げた存在。
そんな彼女は、というと……。
「というわけでこのギャグは直前の語句の韻を踏んだ上でだね」
生徒会室を極寒の地にしていた!
いやさ、シンボリルドルフのギャグは別に『救いようがない』とまでは言わないよ。1つ1つ切り取ってみれば、ああ結構上手くできるな、と思うものもある。
事実有名な本などからの抜粋も多く、コメディアンが話せば笑いを取れるようなネタも多い。
「ふむ、その反応だとこのジョークはダメそうだね」
だけどさぁ! あの『皇帝』シンボリルドルフがそれを真顔で言うのは絶対だめだって! 笑うべきかそうじゃないのかがわからん!
「あのー、ギャグ自体は悪くないと思うんですよね。言うタイミングが問題というか……」
「ふむ、だが『韻を踏む』都合上このタイミングがベストだと思うのだが」
「だから真面目な雰囲気漂ってる会話の途中で、そんなオヤジギャグみたいな笑いを突っ込んでくるのがダメなんですよ!」
エアグルーヴが後ろで深く頷いてる。
だって考えても見てくれよ。目の前にいるのは憧れのウマ娘、そんな状況で口からオヤジギャグが飛び出したら。まず初めに耳を疑って、次に偶然そうなったのを疑うだろ。
「むぅ……。やはりこの前見た『爆笑ギャグ100選』から抜粋したほうが」
「まずは会話にギャグ突っ込むのやめましょう?」
シンボリルドルフがそうやって『親しみやすさ』を確保するために、ギャグを勉強しているのはわかる。だけど、まずは雰囲気というかそういうのからなんとかするべきでは……?
「なかなか難しいね。これに関しては要研究としておこう」
今日俺が生徒会室に来ているのは、シンボリルドルフのギャグの品評のため……ではない。
「今日は急に校内放送で呼び出されたから何事かと思いましたよ。休日だっていうのに」
「何か用事があったならすまなかった。一応キミのトレーナーには確認したんだけどね」
なんでトレーナー経由で呼ばなかった!? 校内に俺の名前が響き渡ってめちゃくちゃビビったんだぞ!?
「いや、キミの連絡先を勝手に他人から入手するのはどうかと思ってね」
「生徒会から呼び出されたって事実を学園中に知られることをしっかり天秤にかけて判断してください……」
まあ生徒会と繋がりがある、とアピールできるのは決して悪いことばかりではない。
だけどさ、校内放送での呼び出しは心臓が止まるんだよ。
「さて、そろそろお湯も沸いたころだ。エアグルーヴ、お茶菓子と合わせて頼むよ」
座った俺の前に、お茶菓子とコーヒーが並べられる。
む、結構いい豆だな? 最近は香りだけでもある程度コーヒーの品質がわかるようになってきた。
お茶菓子も……美味い! なかなかコーヒーに合う。後でどこで買ったか教えてもらおう。
「その様子だとお気に召したようだね?」
「ふぅ……。ええ、どっちも私好みの味です。お茶菓子の詳細後で教えてもらえますか?」
「ああ、もちろん。エアグルーヴイチオシの店でね、彼女に聞くといい」
「私イチオシの店だ。行列が出来るからなかなか買えないが、少しなら口利きしてやろう」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
コーヒーもお茶菓子も、みるみるうちに俺の腹へと消えていき、気づけばカップも皿も空に。
生徒会所属のウマ娘は育ちがいい子ばかりだ、とは思っていたけど、こういうところでもそれが表れるとは……。
最近は豆に関しては詳しくなったが、お茶菓子に関してはまだまだなんだよなぁ。新規開拓のために街に繰り出してはいるのだが、いかんせんノウハウがなさすぎる。
「今日君に来てもらったのは他でもない、テイオーのことだ」
「あー、もしかしてまた何か……?」
もしやまた厄介ごと……? そしてさっきのコーヒーとお茶菓子は前払いの報酬……? などと身構えた俺だったが、どうやら違うようだ。
「ああ、身構えなくていいよ。今日は礼をしようと思って呼んだだけだからね」
「礼って……」
「テイオーのトレーナーが決まっただけじゃない、メイクデビューも無事勝てたんだ。昔から世話を焼いている身からすれば、これ以上ないほどの幸福だよ」
コーヒーを啜りながらそう語るシンボリルドルフの顔は、慈愛に満ちていた。
やはりテイオーを取り巻く状況はかなりの心労になっていたらしい。彼女自身口には決して出さないが、雰囲気からそれが伝わってくる。
「最近はテイオーがよくキミやアグネスタキオン、マンハッタンカフェのことを話すようになってね。嬉しい限りだよ」
「あはは……。私はよくシンボリルドルフ生徒会長の話を聞かされていますよ。『カイチョーはすごいんだぞ!』っていつも言ってますから」
「ふふ、テイオーらしいね」
再びカップにコーヒーが注がれる。
「ああ、これについても言っておくべきかな? スプリンターズステークス勝利おめでとう。レースは見させてもらったよ。流石は『流星』と言ったところか。見事な走りだった」
う……。あのシンボリルドルフにそこまで褒められると、こう背中がムズムズする。嬉しいんだけど、なんとなく居心地が悪いというか……。
なんといえばいいんだろうか、この感覚。
「かなりギリギリでしたけどね……。何か1個でも足りなければ、1着は私じゃなかったはずです」
「だが勝ったのはキミだ。……レースで勝つために必要なのは3つ。才能と努力、そして」
「運、ですよね?」
「流石に知っているか。キミは『運』に恵まれている。これは他の何より大切なことだよ」
『運』がなにより大切……。これを言ってるのがシンボリルドルフでなければ、煽りと取られても仕方ない言葉だろう。
だが『皇帝』として走り、『生徒会長』として数多のウマ娘を見てきた彼女の言葉としては、これ以上ないほどに実感と想いがこもった言葉と言える。
「……マルゼンスキーは運に恵まれず、ダービーという舞台に
「それは」
「そしてテイオーもそうなるかもしれなかった。トレーナーが見つからなければ、土俵に立つことすら許されない」
思い返してみれば、アプリのストーリーはどれも『綱渡り』だ。
トレーナーがウマ娘を
偶然に偶然を重ねた結果が、アレなのだ。
「本当にキミには感謝しているよ。トレーナーが付いては離れて、を繰り返しているときのテイオーはとても見ていられなかった。声を掛けることすら憚られるほどにね」
テイオーに初めて会ったとき、彼女は
……テイオーの足が脆いっていうことまで考えると、結構ギリギリだったのかもしれないな。
ある意味で『運が良かった』ということか。
「キミは『縁』にも恵まれ、『運』にも恵まれている。そして才能もあって、努力も怠っていない……。スプリンターズステークスを勝つことが出来たのも納得だね」
「ほんと、そこまで評価していただけると嬉しいんですけどなんか居心地が……」
「ふふ。それに今回も随分私の走りを有効活用してくれたようだね? 最終直線で見せてくれたアレは、テイオーの走りも入っていたね」
ウッソだろ? 1レース見ただけでわかるのかよ……。
「そこまでわかるとは……」
「なに、昔からこういうのは得意でね。キミならわかると思うが、私は常に頭を使いながら走るのを得意としているから、どうしてもこういう風に理詰めでレースを見てしまうのさ」
かのシンボリルドルフは、騎手の指示を無視してレースに勝ったことすらあるという。
勝つときは最低限の労力で勝ち、あまりにも圧倒的な走りから『つまらない』とまで言われたというが……ウマ娘となった彼女もまた、聡明で圧倒的と言えた。
「加えて言うなら、テイオーがメイクデビューで見せていたのにはキミの走りが入っているだろう? 驚きだよ、テイオーが私以外の走りを真似するだなんてね」
「あれはタキオンさんの指示だと思うんですけど……」
「それでもだよ。テイオーが私以外に執着を見せるなんてそうそうないから、これはいい兆候だと思ってる」
「まあ、それはそうですが」
そうして考えるのは、テイオーのこれからについて。
史実ではシクラメンステークス、若駒ステークス、若葉ステークスなどを経由して皐月賞に臨んだ。が、こちらではどうやら違うようだ。
次走の予定はホープフルステークス。そこからは三冠路線に向けてローテーションを組むらしい。
新入生名簿を見ていると、テイオーのライバルになりそうなウマ娘は2人。
まずはナイスネイチャ。そして
ブルボンの同期に居ないと思ったらここに居たのかよ!
「どうしたんだい? 急に表情をコロコロと変えて」
「いえ、今後について考えてたら頭痛くなってきただけです……」
なんでさ、俺の周りには故障しそうな子ばっかり集まるかなぁ!?
その点ナイスネイチャは癒しと言える。GⅠの勝ちこそないものの、長年走り続けた挙句に引退してゆったりと余生をすごしている様は、見ていて安心するものだ。
今度敵情視察も兼ねて、癒されにでも行くか……。
「ふむ、大丈夫かい? 頭痛薬ならあるが」
「病気とかじゃないんで大丈夫です……。知恵熱とかそっちなんで……」
「それならいいが。さて、おかわりはいるかな?」
「お願いします……砂糖マシマシで……」
「すまないエアグルーヴ、一杯頼めるかな? やはりキミが淹れた方が美味しいからね」
「わかりました会長」
砂糖とカフェインで心を落ち着かせ、なんとか正常な思考を取り戻す。
テイオーの足に関してはアグネスタキオンに丸投げしておけばとりあえずは問題ない。ライスシャワーは……どうするかなぁ。確か彼女が故障するのは
ワンチャン問題なく走り抜けてくれない? ダメ?
「ふぅー……。よし、もう深く考えるのはやめだ! 自分のレースに加えて、こんなのまで考えてたら脳がいくらあっても足りない!」
「ふむ、吹っ切れたようでよかったよ。それと、そっちが素のキミかい?」
「あっヤベッ」
やらかした! クソ、脳みそ沸騰してたから、取り繕い切れなかった。
ジッとシンボリルドルフがこちらを見てくる。あの、あの……。
「私個人としては、キミの素を見てみたいのだよ。前々から取り繕っているのはうっすらと分かってはいたが……」
流石に視線に耐え切れず、俺はため息を1つ吐くとゆっくりと口を開いた。
「あ……これでいいか? あの、『皇帝』にタメ口とか死ぬほど気が引けるんだけど……」
「かまわないさ。私としてはもっと親しみを持って接してもらいたいと思ってるんだけどね」
「無理でしょ……」
コーヒーを飲み、シンボリルドルフが笑う。
まあウマ娘原作からして、『皇帝』なんて呼ばれてるけど案外お茶目で寂しがりだからな……。気の置けない友人というのを欲してはいるのだろう。
「ああ、やはりキミはそちらのほうがいい」
「なんか最近俺の本性がバレる機会が多い気がする……タキオンも気付いてる節、というか絶対気づいてるし!」
クソ、世の中ままならないことばかりだ。
「飲まないとやってられん……」
「ならもう一杯淹れようか。キミと話していると退屈しないな」
「その言葉をどう受け取っていいのか、わからん……」
2人、コーヒーを啜りながら生徒会室で他愛のない話をして過ごす。
そんな中でも度々飛び出すくだらないギャグ。少し離れたデスクで作業をしているエアグルーヴは、耳をペタンと閉じて知らぬ存ぜぬを通していた。
エアグルーヴ……お前……。
結局夕方まで生徒会室に居座って休日を潰すこととなった俺。
しかしねぇ、このシンボリルドルフの連絡先ってどう使えば……?
【独占インタビュー】シンボリルドルフが語る、URAファイナルズ
9月○×日 22:00 配信 102
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ドリームシリーズで優勝し
ライブでセンターを飾るシンボリルドルフ
ドリームトロフィーシリーズ、その登竜門であるURAファイナルズ。今回はかの『皇帝』シンボリルドルフに、URAファイナルズについて語ってもらった。
——近年設立されたドリームトロフィーシリーズ、その意義については?
シンボリルドルフ:ウマ娘が現役でいられる期間は長くはありません。長くても6年ほど、短いものならば3年ほどとなるでしょう。そうして一線から身を引くことになってもレースへの熱が冷めるわけではありません。そんなウマ娘たちに、走る場を与えるのが『ドリームトロフィーシリーズ』となります。年2回なのは体への負荷を考えて、GⅠが無い時期に開催されているのは他のレースとバッティングしないようにですね。
——URAファイナルズ、こちらについてはどうでしょうか
シンボリルドルフ:URAファイナルズは、適正などが狭いウマ娘にもスポットが当たるようにと設立されたレースですね。三冠などと言った称号は、どうしても距離適正の都合で諦める子が出てきますので、こういった『特定の距離帯に置いて無類の強さを発揮するウマ娘』へスポットが当たることは良いことだとおもいます。
——今年のURAファイナルズ、ズバリ見どころは?
シンボリルドルフ:黄金世代、と呼ばれる子たちの出走が期待されていますので、やはりそれでしょうか。
積み重ねた歴史こそ少ないものの、確かな意味を与えられて設立されたドリームトロフィーシリーズとURAファイナルズ。今年もその動向からは目が離せないだろう。
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