TSウマ娘はトレーナーにガチ恋せずに三年間駆け抜けられるか   作:TS娘には恋させよ

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59 ホープフルステークス、テイオーの走り

 ターフを駆ける白い影。

 他のウマ娘の追随を許さないその様は、まさに芝の上の『帝王』だった。

 

「トウカイテイオー強い! もはや独走状態! 後ろの子たちはもう間に合わない! これは決まった!」

 

 その圧倒的過ぎる走りに、俺は何も言うことが出来ず、ただただ立ち尽くす。

 もしかすると俺は、とんでもない化け物を生み出す手伝いをしてしまったのかも知れない。

 ゴール板を1着で駆けるトウカイテイオーを見ながら、そんなことをぼんやりと考える。

 事の始まりは語るには、トウカイテイオーが俺の部屋へやってきたところまで時を巻き戻さなくてはならない。

 

「ねーねールクス、ボクのレースもちろん見に来てくれるよね!?」

 

 ボタンを連打して、画面の中の俺をボコボコにしがながらテイオーが言う。

 トウカイテイオーの次走はホープフルステークス。まあ正直なところ、ここ最近は暇を持て余しているので、観戦くらいならいくらでも行くのだが……。

 素直にそれを言っても面白くない。

 

「テイオーがこれで勝ったら行ってあげますよ。ほら前に言ってましたよね? 今日こそは私に勝つって」

「むっ……」

「おや? もしかして大天才にして無敵のテイオー様が自信が無いんですか」

「ある! あるよ! 覚悟してよね! 今日こそルクスに勝っちゃうんだから!」

 

 俺が取り出したのは戦略ゲーム。

 こうして頭をフル回転させるゲームは俺の方が強いんだよね。このゲームは適度に運が絡むこともあって、未だに俺はテイオーに負けていない。

 俺はかなり運が良い方なのか、ピンチにすらならないんだよな……。そして逆にテイオーは死ぬほど運が悪い。うん、まあわからんでもないわそれは……。

 まあこんな事を言っては見たが、結果は関係なしにテイオーのレースは見に行くつもりだ。

 

「おわ、なんか今日運が悪いな……?」

「へへーん、やった! 今日のボクはついてるよ! このままルクスに勝っちゃうもんね!」

「うぐぐ……そうはさせませんよ……一か八か、これで一発逆転を……」

「あっ」

「あっ」

 

 2人同時に声を上げてしまう。

 俺の画面はおどろおどろしいエフェクトが浮かび、一発逆転の策が失敗した事を告げていた。

 

「うわぁ、なんか今日ほんと運が悪いねルクス……」

 

 さっきまで威勢の良かったテイオーが、こちらを慰めるほどの不運。

 なんか今日一直線で負けなかったか……? 常に一番悪い選択肢を引かされ、トドメと言わんばかりに追い打ちを掛けられたなこれ。

 もしかするとこれは、『テイオーのレースは必ず見に行けよ』という天からのお告げかもしれない。

 

「はぁ……まあ元々テイオーのレースは見に行く予定だったし構いませんよ。で、ホープフルに向けて作戦は立ててあるんでしょう?」

「もっちろん! 当日は楽しみにしててね! タキオンからもいろいろとオッケーもらったし!」

「なら楽しみにしておきましょうか」

「ふふん、ボクが『無敵』だってところ、見せちゃうからね!」

 

 とまあそんな事もあり、ホープフルステークスの会場である中山レース場へとやってきたのだ。

 しかしジュニア級のレースだってのに人が多いな……。

 

「本日はあいにくと天候に恵まれず、バ場は稍重となりました。これがレースにどのように影響してくるでしょうか?」

「そうですね……ジュニア級という事もあり、まだ走りも体も完成しきってない子が非常に多いです。その為、パワー不足での失速が頻発すると考えられます」

「初めてのGⅠということで、雰囲気に飲まれてしまう子も出てきそうですね!」

「はい。そういったことからも、荒れるとの予想ができます」

 

 まあこれは自分がジュニア級だったころを考えればよくわかる。あの頃はどう頑張ったって、中山の坂を減速せずに駆け上がるなんて無理だった。

 ううむ、テイオーは一体どうするつもりなんだろうか。

 まあそうは言っても、『トウカイテイオー』の行く手を阻めるようなウマ娘なんて指で数えるほどしかいない為、特に策なんて無いのかもしれない。

 

「本日の1番人気を紹介します! メイクデビューで圧倒的な走りを見せたトウカイテイオー! 三冠を狙うと宣言している、自信たっぷりのウマ娘です!」

「普通なら笑うところなんでしょうが、彼女ならもしや……と思ってしまうほどの走りをするウマ娘です。もしかするとこのまま無敗で三冠を取れるかもしれません」

「青と白の勝負服がとてもよく似合っていますね! なんでも憧れであるシンボリルドルフを意識したデザインなのだそうです」

 

 ターフの緑に、テイオーの勝負服がよく映える。

 

「テイオーはなんか最近妙に俺に執着してるし、今回も俺の走りを真似して……いや、それは無いか……? うーん、わからん!」

 

 一体今回はどんな走りを見せるのか、想像もつかず頭を抱える。

 シンボリルドルフの走りを真似するならば、全てが計算ずくの上で()()()()()()()()()()()()()()()()()走りをすることだろう。

 そして俺を真似するならば、最後の最後で捲るように走るはず。

 まあどちらにせよ、足をためつつ最後の最後で勝ちを狙いに突っ走るという走りになるのは間違いない。

 とはいえこの仮説も、俺かシンボリルドルフの走りを真似しているという前提の元になりたっている。

 

「おやおや、随分と悩んでいるようだねぇモルモットくん!」

「あー、そりゃいますよねタキオンさん。で、今回はどのような指示を出したんですか?」

「それは見てのお楽しみさ! きっとアッと驚くと思うよ?」

「まあ、テイオーならなにやっても驚かないですよ……」

 

 アグネスタキオンへと傘を差し出す。既に数滴、天から雫がこぼれ落ちてきており、本降りとなるのは時間の問題といえた。

 なんでタキオンは傘さしてないんだ……。

 

「それにしてもキミがいて助かったよ! 傘を忘れてしまってねぇ、どうしようかと思ってたところだ」

「ええ……タキオンさん、これから先、生活していけるんですか……?」

「問題無いよ? 私は当分学園から出なくて済むからね! こうしてトレーナーポジションについていれば、自然と生活は保障されるという訳さ!」

「……タキオンさんがそれで満足ならいいですけど」

 

 芝の上で、テイオーは相変わらずステップを披露している。

 あのステップやっぱ足首への負荷ヤバいよなぁ……。俺もアレンジして使ってるので、負荷の強さよくわかる。あんなのをレース中ずっとやってたら、そりゃG I2回程度でぶっ壊れるだろう。それに消耗も多いため、そこまで多用出来る技でもないはずだ。

 スパートの最後で使うのが関の山と言ったところだろうか。

 だけどなぁ、こうなんかぞわぞわするんだよ今回。

 

「ほら、始まるよルクスくん。我々の研究の成果をとくとご覧あれ!」

 

 ゲートからテイオーが飛び出す。

 取った位置は……前方、先頭集団の中。これはルドルフの走りを真似るつもりか。

 うーむ、確かにそれは悪く無いんだが、予想が当たるとなんか残念な気分になるな。テイオーならもっとぶっ飛んだ事をしてくれると思ってたし。

 

「おや、随分と不満そうだね? テイオーくんが無難な走り方をすることがそんなに気に食わないのかい?」

「いえ、そういうわけではないですよ。とはいえ、前回のを見てしまったから、ちょっと期待してたのは本当ですが」

「ならば目を離さないようにしたほうがいい」

 

 随分と意味深なことをいうな? とりあえずタキオンの言葉に従い、レースからは目を離さないでおく。

 そうして中盤が過ぎ、3コーナーへと差し掛かった頃。

 先頭集団に位置していたウマ娘たちが失速を始めた。やはり稍重というバ場状態は、ジュニア級のウマ娘達に取ってかなりの負担になっていたようだ。

 だがしかし。そんな中でもスタミナを保っているウマ娘がいた。

 ()()()()()()()()。彼女は先頭の2人より少し後ろ、3番手の位置で足をためている。そしてその瞳は、()()()()()宿()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ、れは……」

「おや、この距離から気づくかい? やはりキミは素晴らしい研究対象だ! 疑似固有領域とでも言おうか。キミがやっているように、他のウマ娘たちの技を模倣して自分の技へと仕上げる……ふふふ、驚いてくれたようで何よりだよ」

 

 『U=ma2』。アプリウマ娘におけるアグネスタキオンの固有にして、彼女が導き出したレースにおける方程式。

 その性能は、『終盤のコーナーでスタミナを回復しつつ速度を上げる』というもの。

 

「トウカイテイオー上がって来た! 先頭までは残り1バ身! おっと、トウカイテイオーがステップを踏んだぞ!」

「前回のレースでも見せてくれた『テイオーステップ』ですね。前回よりもキレがよいように思えます。ここまでスタミナを残していただけでも驚異的なのに、あれほどの加速まで可能とは恐れ入りました」

 

 そしてトドメとばかりに繰り出されるテイオーステップ。それもただのテイオーステップではない。体捌きを駆使し、足への負荷を最小限に抑えた『完成された』テイオーステップだ。

 おいおいおいおい……まさかもう完成したのかよ!?

 しかもまだゴールまでは距離あるぞ!?

 

「私が考えていた理論と、テイオーくんの走りが組み合わさった結果がアレだよ」

 

 言葉を紡ぐことも忘れ、呆然と立ち尽くす俺。

 あまりにも化け物過ぎるだろう、トウカイテイオー……。

 

「テイオーくんの走りを見ていく中で、彼女の距離適正の問題が露呈してね。簡単に言えば、彼女のスタミナだとどう頑張っても中距離あたりで限界が来る。それこそ、走れて2500mだろう。だがそれだとどう頑張っても、クラシック三冠は無理なんだよねぇ」

「菊花賞は、京都の3000m……」

「ああそうだ。秋シニア三冠ならば最長距離は2500mだけれど、テイオーくんがその選択肢を選ぶとは思えなくてね。何か対策が必要だったのさ」

 

 だからってさぁ! そんな方法で対策するか普通!?

 

「前々から理論だけは完成していた走法があってねぇ。持て余していたのでテイオーくんに叩き込んでみたんだが……ここまでハマるとは思っていなかったよ」

 

 他のウマ娘がヘバるなか、一切疲れを見せてないテイオー。彼女は一足で先頭集団から抜け出すと、そのまま距離を離していく。

 2バ身、3バ身……まだ離せるのか……?

 

「トウカイテイオー強い! トウカイテイオー強い! まさに圧倒的! これが未来の三冠ウマ娘なのか!」

「これは……すさまじいです、ね……」

 

 解説すら声を失っている。

 俺だって同じだよ……。トウカイテイオーは強いと思っていた。だがここまでとは……。

 そのままテイオーは1着でゴール板を駆け抜ける。

 まさに、『帝王』。ターフの支配者であり、絶対強者。

 そりゃそうだろうよ……。片やあの『皇帝』の息子にして無敗の二冠馬。片や未来の菊花賞馬たちを下した『幻の三冠馬』。

 そんな奴らの走りを混ぜ合わせたらこうなるに決まってる。

 

「トウカイテイオーが指を一本突き立てた! これはまだまだ無敗で勝利を重ねる自信があるという事でしょうか!」

 

 もし、トウカイテイオーの快進撃を止められるものがいるとしたら。

 そう考えたとき、ふと俺の脳裏に1人のウマ娘が浮かんだ。俺と同じ片目隠れのウマ娘。

 彼女なら、もしかするとこの無敵のコンビを打ち倒すかもしれない。

 

「いやぁ、満足のいく実験結果だったよ! おや、どうしたんだいなにかを考え込んで。まさか私の理論が欲しいのかい? ふむ、対価さえ払ってもらえれば構わないが、キミの距離適正では実戦投入は難しいと思うよ」

「それは自分でもわかってます。今考えていたのはそうじゃなくて……」

「ふむ……」

 

 ライバルの不在。これがテイオーの成長にどのような影響を与えるのか。あまりにも未知数過ぎる。

 これも懸念事項の1つだった。

 とはいえ考えても仕方ない。もしテイオーにそのようなウマ娘が出来ずに、このまま三冠達成出来るなら、それもそれでいいだろう。

 

「テイオーくんの次走は弥生賞の予定だ。そこで最終調整を終わらせて、クラシック三冠路線へと殴り込みを掛ける予定さ」

 

 トウカイテイオー。

 新たなる『帝王』がこれからどのように成長していくのか、それから目を離すことは出来ないだろう。そう思うのだった。

 

 

 


 

 

【ホープフルステーク】驚愕の走り、圧倒的強さのトウカイテイオー

12月○×日 19:34 配信    231 

          

 

   

勝利のアピールをする

トウカイテイオー

 12月の中山で行われたホープフルステークス、その勝者となったのは1番人気のトウカイテイオー。前走からその圧倒的な実力でファンたち間で話題となっていたが、今回は前回以上の凄さを見せてくれた。

 

 トウカイテイオーはレース序盤から好位置を維持し続けていたが、最終コーナー付近で突如加速。そのまま他のウマ娘たちを後方に置き去って、ゴール版を駆け抜けた。

 

 トウカイテイオーはレース後のインタビューで、このまま三冠を狙うことを宣言。会場からはどよめきではなく納得の声があがるという、異様な光景が見られた。もし無敗で三冠を達成することが出来ればシンボリルドルフに並ぶ偉業を達成することとなる。

 

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