TSウマ娘はトレーナーにガチ恋せずに三年間駆け抜けられるか   作:TS娘には恋させよ

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62 インタビューと化粧について

 トレーナー室に設置されているテレビが、URAファイナルズの様子を映し出していた。

 

「先頭に躍り出たのはタイキシャトル! やはり強い! 海外帰りを感じさせない力強さだ!」

「すさまじいな、タイキシャトル。国外GⅠ3連勝は伊達じゃないな。正直アレと走って、前に出てるビジョンが思い浮かばんよ俺」

「既に彼女の行く手を阻むものはない! このまま一勝目を勝ち取るのか!」

 

 URAファイナルズ。ドリームトロフィーシリーズの登竜門にして、年始から年度初めに掛けて行われるレースだ。

 レースとしては珍しい『トーナメント形式』のレース。アプリでやっていたように3回戦、とは行かないか、それでも予選と決勝少なくとも2回を勝ち抜かなくてはならない。

 

「タイキシャトル1着! やはりこのウマ娘は強かった! 2着フリルドドレス! 3着オイシイパルフェ!」

「決勝いくのはこの3人だね。マイルはタイキシャトルが強すぎて荒れる気配が全くないね……」

「まあマイルのサクラバクシンオーと考えれば納得の結果だよな」

「6人の中で決勝へと歩みを進めたのはこの3人! 決勝が楽しみとなるレースでした」

 予選は6人立てという大変珍しい形式を取っている。

 決勝を18人立てのフルゲートでやる都合上、それでも36人の参加者が必要となるのだが。

 アプリの3回戦・毎回フルゲート形式だとさすがに開催すら不可能だしな……

 

「キングも短距離部門で決勝確定だしな。しかし、キングの走りはすごかった……」

「そうだねぇ。短距離で6人立てという状況にどう対応するのかと思ったけど、最後の最後に全員撫できったのはすごかった。まさに『王』って感じだったね」

 

 さて、観戦もいいが俺たちもやることをやらないといけない。

 

「で、今年の目標はどうする? 僕としては、GⅠを中心としながら出れそうなGⅡや季節行事に出たいと思ってるんだけど」

「まあ俺もその方針でいいと思うんだけど……季節行事ってなんだ?」

「ああ、そういえばルクスは未経験だったね。確か……あったあった、これ見てみよう」

 

 そう言ってトレーナーが1本の動画を再生する。

 映し出された映像では、素っ頓狂な格好をして走るウマ娘たちが。

 あああー……、つまり『月末スト-リーイベント』か……。あの『衣装チェンジ』ってやつ。

 

「こんな風に、特別レースが組まれることが度々あってね。これは年間予定には記載されないし、突然決まることも多いから、出れそうなら出る感じにしておこうと思うんだけど」

「まあそれでいいかなぁ。というかレース以外もあるんだろ?」

「そうだね。過去の例だとバレンタイン合わせのスイーツコンテスト出場とか、ジューンブライド合わせのとかあったらしいよ」

「ふーん……」

 

 そうして映像が切り替わり、ウェディングドレス姿のウマ娘たちが現れる。

 よくよく考えるとさ、学生にこの格好させるのヤバくないか?

 エアグルーヴとかどこからどう見ても学生には見えない。完全に人妻だぞあれ。

 しかしウェディングドレスねぇ。俺には一生縁の無い衣装だろう。

 

「とまあ、こんな感じに知名度を上げていきつつ、GⅠやその他重賞レースに出て行くのが基本方針でいいんじゃないかなって」

「さんせーい。となると当面の目標は『高松宮記念』か? で、その後はヴィクトリアマイルと安田記念、と」

 

 カレンダーをめくり、赤丸を付けていく。

 短距離GⅠである『高松宮記念』を勝つことが出来れば、短距離GⅠを制覇することが出来る。

 そう考えると俄然やる気が出てきた。

 

「よーし、やるぞ!」

 

 むんっ! と気合いを入れる。とはいえ、今できるのはトレーニングくらいしかないが。

 

「じゃあそれにあわせてメニューを組もうかな。また併走とかのお誘いが来たら連絡してね? ルクスは併走とかを積極的にやっていった方が伸びるみたいだし」

「あいよー」

 

 机に向かって作業を始めるトレーナー。

 ふと未消化の書類に目をやると、『インタビューのお願い』という文字が目に飛び込んできた。

 んー?

 

「トレーナー、インタビューの依頼来てるっぽいんだけど? 最近あんまり受けてなかったし、受けてもいいんじゃないか?」

「む。これは……今まで受けたことのないところだね。でも悪い話は聞かない出版社だし、受けても問題なさそうだね。ルクスは受けたいのかい?」

「こういうのも『知名度アップ』と『ファン獲得』には大切だろ?」

「うん、ルクスの言う通りだ。ならこれは承認しておくよ」

 

 というわけで、俺のインタビューが決定したのだが……。

 

「勝負服での写真とインタビュー記事両方欲しい?」

「そういうことみたい。ルクスは私服でのインタビューが多かったからね。勝負服の写真も見たい、ってことでこうなったらしいよ」

 

 まあその気持ちはよくわかる。

 そんなこんなで勝負服に着替え、インタビューの準備をしていく。始めはあんなに時間の掛かって、しかも他人の手を借りながら着ていた勝負服だったが、今では1人で手早く着れるようになった。

 というか男モノの服、その感覚を忘れて久しい。

 

「っと、どうだ? どっか変なところないよな」

 

 着替えて更衣室の外に出ると、くるりと1回転してトレーナーにお披露目する。いくつか指差しながらチェックすると、最後に少しだけ髪飾り――俺のトレードマークともなった『ティアラ』に触れた。

 これともだいぶ長い付き合いになったなぁ。トレーナーにプレゼントされたのは初めだっけか。

 

「うん、これで大丈夫。いつも通りの可愛いルクスだよ」

「んなっ! そういうことを突然言うなよ!」

「へ?」

 

 可愛いと言われるのにはかなり慣れた。というかファンはみんな可愛い可愛い言ってくれるし、ネットの反応も良好だ。

 だけどさぁ! トレーナーに言われるのだけはなんか違うんだよなぁ!

 くそ、妙に体が熱い……

 でも何度言われてもうれしい……

 

「全く、誰にでもそういうこと言ってるのか?」

「いや、ルクスだけだけど……」

 

 はぁ、ほんとこの男は。

 

「すいませーん、準備終わりましたかー?」

「あ、はいすいません。今行きますね」

「じゃ、早速インタビューといきますか」

 

 スタジオに入り、インタビュアーから挨拶を受ける。名刺を受け取って確認すれば、結構な肩書きの記者のようだ。

 カメラマンもかなり高そうなカメラを抱えている。一角には本格的な撮影機材も大量に並んでいて、いかにもと言った感じになっていた。

 

「ミーティアルクスです。よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。早速撮影……と行きたいところなのですが……」

「えっと、何か問題でも?」

「あんまりこういう事を聞くべきではないとは思っているんですが……お化粧とかって……?」

「え、してませんけど」

 

 服装や耳飾り、尻尾の手入れ等はいろいろと指南されてきたが、化粧については一切教わってこなかった。

 というか元男だからしゃーないだろ。

 が、その答えを聞いた記者の顔が驚愕で歪む。

 

「やっぱり……その、1回でいいんでお化粧されてみませんか?」

「いえ、あの道具とか全く持ってなくて」

「大丈夫です! そのですね、インタビューを受けるって言うんで気合いを入れて変なお化粧してきちゃう子もいるので……うちはメイクアップアーティストが常に同行するようにしてるんです」

 

 見れば後ろの方でこちらに向かって手を振っているウマ娘がいた。

 メイクさん、ウマ娘なのか……

 

「そういえばルクスは化粧しないねぇ」

「必要とされませんでしたので。トレーナー、やはりメイクしたほうがいいですか?」

「こういう場だし、試しにしてみてもいいかもね。ルクスも自分がどれくらい変わるのか気になるんじゃないかい?」

「それは、まあ……」

 

 別に必要性は感じないが、トレーナーが試してもいいって言うし、せっかくだからやってもらうか。

 記者とメイクさんに頭を下げ、道具を用意してもらう。

 ガーゼのようなもので顔に液体を塗りたくられたかと思えば、肌色の何かを叩くようにして塗りつけられる。当然1回だけで終わる事はなく、なんども道具を変えて顔へと化粧が施されていく。

 まつげを見た事のない道具で弄られ、目元にペンや筆でなにかを描かれ、頬をブラシが撫でる。

 たっぷりと時間を使い、やっとのことで俺は解放された。

 メイクって、こんな大変なのか……?

 

「トレーナー、どうですか? まだ鏡見てないんでどんな風に仕上がったかわからないんですけど」

「これは……」

「はい、すごいですね……なかなかに化粧のノリがよさそうな肌だとは思ってましだけど……ここまでとは……」

 

 くるり、と鏡が俺へと向けられた。

 

「ふぇ?」

「かなり可愛い系のメイクにしたんですね?」

「ええ、どっちかというと顔立ちに幼さが混じっている感じでしたので、このようにさせていただきました。髪を上げて、両目を出すのも考えたのですが……それだと逆に彼女の魅力を1つ消してしまうと思いましたので」

「片方の目が髪で隠れているのはルクスの魅力の1つでもありますからね」

 

 鏡の中に絶世の美少女がいた。

 確かに俺の顔立ちは平均より上に位置していると言ってもいい。ウマ娘様々……などと思っていたのだが……その、これはかなり……いやすごく可愛くないか?

 あまりにも現実感がなさ過ぎて、つい顔に触れてしまう。

 

「ですので、見えて居る目元と頬を強調してみました。普段のナチュラルな感じもいいですが、こちらも結構なものだと思いますよ。私としてはメイクしててとても楽しかったです」

 

 すこしふわふわとした感じのまま、俺の撮影が始まる。

 指定された通りにポーズを取り、フラッシュへと体を晒していく。

 

「はい、オッケーです! お疲れ様でした。次はインタビューに移らせていただきますね」

「わかりました」

 

 記者からの問いかけに、1つずつ答えていく。

 

「それで去年の秋、スプリンターズステークスのことですが……」

「はい、あのレースにはかなり気合いを入れていました。レース前の仕上がりも悪くなく、本番の最中も序盤からかなりの手応えがありましたから、1着を取れてよかったと思っています」

「あのレースは私も見ていて感動しました! ライバルのミホノブルボンを差し切ってのゴール……写真判定が終わるまで手に汗握りっぱなしでしたよ!」

 

 ウマ娘雑誌の記者というだけあって、ウマ娘とレースが大好きなようだった。レースやトレーニングの裏話を話せば、食い入るようにメモをする様に、ついつい気分がよくなり次々と話をしてしまう。

 この記者、出来る……

 

「それでクリスマスはトレーナーさんと一緒に過ごされたんですね?」

「え、ええ。スイーツを食べに街へ……」

「とても仲が良いのですね! とてもいいことだと思います」

 

 なんか話さなくていいことまで話してしまってる気がする!

 

「今年はどのような予定ですか? 短距離とマイルを主戦場にしていることから、『高松宮記念』が本命との意見が強いですか」

「そうですね……トレーナー?」

「ああ、かまわないよ」

「許可も出ましたので……一応は高松宮記念を目指しつつ、それ以外にも気になるレースがあれば出走していく形になると思われます」

 

 最後に今後の予定についての話をして、インタビューは終わりとなる。

 なんかめっちゃいろいろと話した気がするな……。これが記事になるのか。いや、大丈夫? なんか余計なことまで文字記録として残らない?

 でもちゃんとしてる出版社らしいし、記事の確認くらいさせてくれるだろ……。

 

「はー終わった終わった。なかなか濃厚なインタビューだったな……」

「かなりいろいろと聞かれたね。あと写真撮影も思ったより本格的だった」

「それなぁ。こんなメイクまでされるとは思ってなかったよ。しかもメイク道具お裾分けされちゃったし」

「やっぱりメイクの仕方とか知らない子も多いんだろうね。あのメイクさん、『布教用』とかって言ってたけど……」

 

 俺の腕に抱えられているのは数々のメイク道具。

 ……いや、これ使うか? 普段はメイクしてないけど特に困ってないしなぁ……

 

「まあ持ってればそのうち使うこともあるだろ」

「レースの時に軽くメイクしてもいいかもね。きっとファンも喜ぶよ?」

「あー……機会があったらな」

 

 まあよっぽど()()()()()()()でもなきゃ使わんだろうな!

 そんなの()()()()()()()()だろうし、私生活では死蔵されることになるだろ……うん。

 

 


 

【ミーティアルクス特別インタビュー&独占写真撮影!】『流星』の素顔に迫る 



 


コメント 138件

 


peta*****

 は? かわいすきか?

 


setr*****

 心臓止まった せきにんとって

 


natg*****

 このかわいさは脳に直接効く

 


aneg*****

 成仏できました。ありがとうございます


 

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