初めにおれが直接彼女を見たのは『スコーピオン』開発後に使用感を伝えに言ったり、最適化の為に開発室の方に何度も足を運んでいる時期だった。
「トリオンの出力が超過しちゃうなぁ……これだと武器としても耐久面が保たないし、使えばチップが焼ききれる……とはちょっと違うけど直ぐに壊れちゃう……待てよいっその事、使い捨てのトリガーとかもロマンなのでは……」
「馬鹿者!!一々壊れる様な物を作る資材も予算も、時間にも余裕はないわ!!」
「ですよねぇ……いやいや、分かってるからそんなに怒らないでよ鬼怒田さん」
彼女はトリガー開発に関わる職員って訳ではない。戦闘員として有望な人材として会議の話題にも出ていたので名前と顔は知っていた。
夜景空…同じサイドエフェクト所持者としても気にはしてたし、おれのサイドエフェクトでレイジさんの周りで朧気に見えてたのもおそらく彼女だろう。
特に害はなさそうだから関わる事はなかったし、夜景が部隊を組んでも組まなくてもそこまで大きな影響は無かったから此処にいるのも問題ない。
「とりあえずこれで出来る筈…ちょっと試してきますね!!」
「まったく、念の為データはとっておくように」
困った様にしつつも何やらそこまで怒らずに見守る鬼怒田さんに楽しげに駆け出していく夜景の姿に何処か喜んでいるおれがいた。
「あれもボーダーの在り方の1つだよな」
『スコーピオン』を使った戦闘データと共にレポート形式でおれの見解を提出しながらその日は開発室を後にした。
それからも度々夜景を見かける機会はあり、こちらが見るだけでなく向こうに気付かれる事ももちろんある。
そこから『スコーピオン』の開発者の1人として話を聞かれたり、方向性は違うけど視る事に関するサイドエフェクト持ち同士として話すこともあった。
「ん、面白い未来が見えたな」
夜景の未来であり、おれの未来でもある光景。別にそうならなくても大筋は変わらない。けれどもそちらの方が良くて、特に苦労も無いのであれば一興だろうとおれは夜景にレイジさんが完璧万能手と呼ばれ始めた事をそれとなく伝えた。
「はっ?!なにそれ私も成りたい!!てか絶対に成る!!」
元より射手としての強さは頭一つ抜けており当時は『アステロイド』と『バイパー』のポイントはマスターであり、攻撃手としても死角の無さと自身の戦いやすい場を作る力で『スコーピオン』のポイントはマスターに届いていた。
そんな夜景が毛嫌いしてあまり使っていない狙撃トリガーのポイントを獲得するために動き出した。個人ランク戦にて『バイパー』か『ハウンド』で相手を補足して『アイビス』で撃ち抜く。
夜景自身は『バッグワーム』を使いながら姿を隠して、一方的に相手を見つけて比較的弾速が遅く、シールドを貫ける『アイビス』で倒す。
相手が『カメレオン』を使ったり、運良く先に彼女を補足しない限りはアイビスに吹き飛ばされる。仮に見つけられても『アイビス』で倒すのを諦めるだけで『バイパー』で蜂の巣にされる。
当時の夜景と当たった相手は一部を除いて絶望的な表情を浮かべて戦闘に臨んだと言う。そうして夜景は1月の内に『アイビス』で8000点を稼いで二人目の完璧万能手となった。
そして上機嫌のままにまたランク戦から離れて開発室に入り浸り、幾つか夜景の満足行くトリガーが完成した。そして出来たとなれば使いたくなるのが人情だが彼女はB級である。
この時にも正式に認められたトリガーはあった。だがそれはオプショントリガーであり、その数は1つ。個人ランク戦で使ったり、他の人が使ってるのを見てはじめは満足していたが……
「他のも実戦で試してみたい……」
「ならA級目指してみたら?オペレーターなら紹介出来るし、夜景ちゃんなら1人でも目指せるよ。おれのサイドエフェクトがそう言ってる」
言っても言わなくても目指し始めたらA級に成る。そこが変わらないから、今のタイミングで目指して欲しいから珍しく出来る出来ないを教えた。
「すみません、オペレーターを紹介してもらっても良いですか?」
「おっ、任せて夜景ちゃんに相性ぴったりの子と合わせてあげよう」
そうして紹介したオペレーターの子、
「あん時背中を押してくれた迅のおかげだ。深く感謝する」
「いやいや、隊を組んだ時点で決まってた未来だからね。おれは何もしてないよ。それにしてもその役作りは続けるの?」
「むしろここからだな。作ったもんでやってくんだ。ならオレもやりきるしか無いだろ?」
強いし、優しいし、悪い子じゃないのは確かだけど夜景ちゃんも中々にキャラが濃いと言うか、なんで使うトリガーに合わせて自分の性格を変えようと思ったのか、この未来は見えなかったなぁ。
まぁ面白いのは確かだし、近界民にそこまで恨みがなくて強い子と仲良くなれたから色々と良い感じかな。
「未来は良い方向に進んでるな」
それからは個人ランク戦で戦ったり、セクハラして殴られたり、一緒に食事をしたりとそれなりに仲良く過ごし、そしてついには個人的な趣味にも付き合ってもらう…そんな楽しい未来が遥か遠くに見えた。