ワールドトリガー A級奇術師   作:ひよっこ召喚士

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木崎レイジ①

 

 俺と夜景が初めて出会った時の事は覚えてはいる。あのボーダーが公になった日、大規模侵攻の時に助けた市民の1人だ。

 

 ボーダーの戦える人間は今と比べるまでもないくらいに少なくて次ぎ次ぎに湧いてくるトリオン兵の処理に追われまくっていたのを覚えてる。

 

 トリオン兵を倒したら次の現場へと向かいまた倒す、それを繰り返しているとモールモッドに襲われている人が見えて急いで向かいギリギリだが助けた。

 

 急いではいるが危険な状況だったし、対応が悪くて後に響いたら問題だと思い怪我はないか確認の意味で声をかけた。

 

「無事か?」

 

「…は、は、はァイ!!あり、ありがと…うございます?」

 

 それが夜景だったと知ったのはあいつがボーダーに入隊してB級に昇格してからお礼を言いに来て、その時の状況を伝えてからだがな。

 

 まぁあの時に人一人の顔まであの時に覚えている余裕はなかった。夜景もそれが分かっているし、状況からあの時のと思い出してくれるだけで十分だと笑っていた。

 

 噛みまくっていた事を思い出した時には「それは忘れてください」と言っていたが流石に印象が強かったので難しい。まぁからかうような事はしないがな。

 

 夜景とその家族からとお菓子を渡された。悪いと言ったんだが命の恩人ですからとグイッと渡された。色々とやらかしてる噂は今でも聞くけど根は律儀な奴だ。

 

 ちなみにお菓子は当時2歳の陽太郎に半分ほど持っていかれた。小南や迅も食ってたがあいつらは戦ってからまぁ食う権利はあるだろう。それに陽太郎も今よりも子供なんだから仕方ない。

 

 夜景のやる事の中にはやらかしと言えばやらかしだが、偉業と言えば偉業な事もある。そんな中で俺に非はないが関わってしまった事件もある。

 

 その最たる例が爆速完璧万能手事件だろう。別名狙撃手強襲事件と呼ばれるそれは個人ランク戦のトドメを狙撃トリガーで行う夜景が現れた一ヶ月の事を指す。

 

 個人ランク戦を狙撃手が行うことは無い。狙撃以外のトリガーを使う人がやることはあるし、その際に狙撃トリガーを使うのもありだ。

 

 B級以上なら複数のトリガーを組み合わせて戦うのは当たり前だし、戦略として無理がない範囲ならむしろ推奨され、狙撃トリガーもその選択肢に入ってある。

 

 つまりB級以上なら狙撃手ポジションが個人ランクに居ることは珍しいが無くはない。ポイント移動ありで倒した際に狙撃トリガーを使っててもポイントは入る。

 

 まぁ真っ当な狙撃手ポジションが個人ランク戦にいる時は他のトリガーの戦い方を学ぶか、攻撃手のや射手銃手相手の立ち回り練習が普通だがな。

 

 それを悪用って訳じゃ無いが執拗に相手を追い詰めては『アイビス』を撃ち込んで倒すと言うやられる側からしたらオーバーキルとも所謂ナメプとも取れる行為を続けたそうだ。

 

 狙撃手の訓練にも参加し、防衛任務も狙撃トリガーで行っていたそうだが、それによって俺に続く2人目の完璧万能手に夜景がなった。

 

 上層部は夜景に対してどうしても良いのかかなり悩んだらしい。強くなろうとするのも目標の為に頑張るのも悪い事じゃないし、規則に違反もしていないのだ。

 

 迅も何やら動いてたが、ボーダーと言う組織の役割からしても強い隊員を逃す事は出来ない為に厳重注意と言う形でその事件は幕を閉じた。せめて俺はしっかり叱っておこうと思ってたんだが……

 

「レイジさん、私も完璧万能手に成りました!!」

 

 そう笑顔で報告してくる夜景を見るといきなり叱りつける気にもなれずに俺はとりあえず凄いなと褒めた。周りにも気を使うようにも言ったが、慕ってくる後輩には俺も少し甘くなる事に自分でも驚いた。

 

「あのレイジさんがねぇ」

 

「レイジくんにもそういう所があるのね。ふふ」

 

 そう言って小南には驚かれたし、妙に感心していた。ゆりさんには笑われたんだが、あれは良い印象の笑いだよな。そう思っておかないと心が潰れる。

 

 いやその話は良いんだ。それからも夜景は『イーグレット』以外の俺が使っているトリガーは覚え、実力を付けてA級に実質単独で昇格を果たした。

 

 何やら背中を押したのが迅だったらしく、お礼を言いに来たのでそのままお祝いを玉狛支部で行った。忍田本部長派に属しているが、かなり玉狛にも近い位置にいる。

 

 上層部から睨まれないかと心配にもなったが、開発室に出入りしていて鬼怒田さんと仲が良いと迅から聞いてるのでたぶん大丈夫だろう。

 

 時間が経てば大暴れのせいで流れてた悪評も薄れていき、時折A級ランク戦にてポカをやらかす事はあっても概ねボーダー内でも認められて、居場所は確立されている。

 

「助けられて良かった」

 

 ふとそう思えるくらいには身内の様な扱いをしている夜景、あいつがあいつらしく楽しめてる。助けた命の先を見るってのは眩しいもんだな。

 

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