異世界転生したら俺以外の俺が俺TUEEEEEしてた件 作:ヘルシー司
この世界にはいわゆる復活や蘇生といった生き返るための力は存在しない。
そんな力はエイタのルールブックには載っていない。
あるのは回復魔法ぐらいなものだ。
一度失った命は戻らない。
.........。
ならどうして俺は今こんなことを考えている?
どうして生きている?
どうしてこんなに苦しんでいるんだ?
もうこのまま一生寝ていたい。
........
俺は仕方なく身を起こす。
頬が涙で濡れていた。
ここはどこだ?
???「あなた!ようやくブライトさんが目を覚ましましたよ!」
???「ほんとか?良かった、ほんとに良かった。」
「俺が分かるか?」
俺「ウィン....さん?」
よく周りを見渡してみると昨日お邪魔させてもらったウィンさんの家だった。
となると横にいるのは奥さんか。
昨日はいらっしゃらなかったがウィンさん結婚されていたのか。
ウィン「ああ、心臓が止まっていたときはどうしようと思ったけど、なんとか助かって良かった。」
ウィンの妻「ほんとあなたが回復魔法を習得していなかったらどうしようも無かったわね。」
刺された背中の場所をさする。
あれだけの傷が塞がっていた。
俺「ウィンさんが助けてくださったんですか?」
ウィン「ああ、そうだぜ、俺は医者でな。」
「患者の家に行った帰り道でお前を見つけた時は、そりゃあもうパニックだったよ。」
俺「ありがとうございます。」
「ベッドまで使わせてもらって、治療のぶんのお金今は払えないんですけど、絶対に返しますから。」
ウィン「いいんだよ、お金なんて俺とお前の中だ。」
そしてウィンさんは急に真面目な顔になって
ウィン「お前あんなところで何してたんだ?あの傷は事故なんかじゃ付かない。」
俺「そ、それは」
「お前は誰かに明確な殺意を持って刺されたんだ。」
「もし顔を見たなら教えてくれ、今から王国騎士団の元にいって伝えてくる。」
俺「言えない、です。すみません。」
言える訳がない、女の人に告白して殺されたなんて。
ウィンさんは左手で頭を掻いた。
ウィン「いや、言えないならいいんだ。」
ウィンさんは神妙な面持ちで語り始める。
「俺は多くの患者を見てきた、人に殺されそうになった人も沢山治療してきた。」
「もちろん自分を殺そうとした相手を憎み殺してくれというやつが大半だ、そういうときは大抵王国騎士団が捕まえてくれる。」
「でもな、そうじゃないやつもいたんだよ。」
「自分を殺そうとした相手でも憎めないやつが。」
「自分の夫に殺されそうになったその患者は、俺になんて言ったと思う?その夫を救ってくれって言ったんだ。」
「あの人はなにか悪い人に取り憑かれてるだけなんだってな。」
「その患者の体には何年にも渡って受けてきた暴力の痕が残っていた。」
「俺はいたたまれなくなって彼女を抱きしめた。今考えたらキモイだけだけどな。」
「夫はいつになっても見つからなかった。その間俺は彼女にずっと寄り添ってた。」
「月日がたち彼女は退院し、俺は彼女と付き合いだしていた。俺が無理矢理って形だったけど」
「ある日、二人で散歩していたら目の前に1人の男が立っていた。」
そいつは俺の元に返ってこいって彼女に言ったんだ。彼女は俺の横で震えてた。俺はそいつに掴みかかって殴り合った。」
「そしたらそいつはいきなり刃物を突き出してきて俺は刺された。」
「死ぬと思ったけど助けてくれた人がいたんだ。一瞬でそいつを倒して俺を治療し、あとは任せろと言ってくれた。」
「それがレオさんだ。命の恩人だ。」
「で、その彼女が今の俺の家内だ。」
「俺の長話を聞いてくれてありがとな、俺はお前は家内と同じだと思ってたよ。」
「お前はそいつを心の底から憎めないんだろ?」
俺はユイさんを憎んでいないんだろうか?分からない
けど、逃げたくはない、ユイさんともう一度話がしたい。
俺はあの時、刺されたとき少しだけ思い出したんだ。
俺が元の世界で死んだ原因を
俺は....殺されたんだ、誰かに。
誰に殺されたかは分からないけどそれだけは思いだした。
ただのカンだけどユイさんはそのことについて何か知っている気がする。
ウィン「会いにいくんだろ?そいつに。」
俺は問いかけに頷く
ウィン「だろうな、だからこの話をした。だがただ会うだけではもう一度刺されて殺されるのがオチだ。」
「最後に俺たちを助けてくれたのは力だった。力がいる、力で自分の身を守れ。」
「だから会いに行け、王国騎士団に、レオさんに。」
「強くなれ、ブライト。城の門を叩くんだ。」
覚悟は決まった。俺は逃げない。キチンと向き合って進むんだ。
俺「ウィンさん、俺、やります、絶対強くなります。」
ウィン「ああ、そうしろお前なら大丈夫だ。」
いっぱい見送ってもらって、弁当まで持たせて貰った。
本当はいつでも会えるけど。
ウィンさんと次会う時はこの問題が終わってからにしようと決めた。
横にエイタがいない昨日の夜からはぐれたままだ。
俺もエイタにいつまでも頼ってはいられない。
必ず再会できると信じて俺は城の門を大きく叩いた。