異世界転生したら俺以外の俺が俺TUEEEEEしてた件   作:ヘルシー司

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第十八話 自責

 

シナイさんの手引きによりなんとか木の下に降りる。

 

俺の体は鎧の犠牲とシナイさんのおかげで傷一つなかったがシナイさんの傷口からはまだ血が流れ出ていた。

 

シナイ「エウリカを探さないとな。」

 

シナイさんが傷口を手当しながら呟く、確かにこの傷は魔法でもない限りそう簡単には治せないだろう。

 

改めて魔法の便利さを実感する。

 

俺「俺、探してきますよ。」

 

「駄目だ、危険すぎる。」

 

「なんでです?この森のモンスターはさっきのデビルベアーによってみんないなくなった筈ですよ」

 

「第6隊の敗走はつい1週間前のことだ、この広大な森の生物を食べ尽くすにはちょっと時間が足りなくないか?どう思う?」

 

言いながら立ち上がり、周りを警戒し始める。

 

「つまり、どういうことです?」

 

「デビルベアーは1匹だけじゃない、おおかた第6隊で効果を確認しいきなり急増したってところか。」

 

「少なく見積もっても10体はいるな。くそ、これは明らかな攻撃行為に当たるぞ。あいつらはなにがしたいんだ。レオさんの結婚式が近いというのに。」

 

シナイさんは話しながら近くの木に拳を叩きつけ怒りを露わにする。クールな姿しか知らなかったから少しビクッとしてしまう。

 

まったく俺には事情が分からないがあのシナイさんが余裕を失うほど深刻な状況のようだ。

 

シナイさんの体を支え一緒に歩き始める。

 

俺「少しずつでいいので話してくれませんか?俺にはなんの話か全く分かりません。」

 

シナイ「ああ、話してやる。だができるだけ短くまとめて話す。なんせ今この間にも隊員が襲われているかもしれない、残りの9体のデビルベアーを倒せるのは俺だけだ。」

 

「早くエウリカを探さないといけない。」

 

無理をしないでと言いたいが、この人じゃないとデビルベアーを倒せないのは確かだ、頼りっぱなしの自分にうんざりする。

 

今の俺はいざとなったら分身を発動することもできない。

 

エイタと一緒にあのとき封印をしたのだ。実は封印を解くこともできるがエイタがいない今それも不可能だ。

 

このままいつまでたってもエウリカさんが見つからなければシナイさんも俺も襲われて、第2隊は全滅するかもしれないという最悪の考えが頭に浮かぶ。

 

だがこんなことを考えても仕方がない、そんな気分の沈む考えを捨て話が始まるのを待つことにした

 

シナイ「デビルベアーを作ったのは隣国のアジャパビト帝国のやつらで間違いない。」

 

アジャパビト帝国か。5大大国のうちの1つだったな確か魔法の国だったか。

 

「あの国は5大大国で唯一悪魔の作った国だ。しかも言葉の話せる上級悪魔の国。熊に入りデビルベアーとなった悪魔は低級のもので言葉は話せない、上級悪魔にとってはただの兵器だ。」

 

「上級悪魔は今では人間を自称し亜邪派人アジャパビトと名乗っている、突然この大地に現れ人間に取り入り、ついには人間を支配するようになった。」

 

「そうして生まれたのがアジャパビト帝国。そして悪魔の支配に抵抗するために生まれた騎士団が大きくなり生まれたのがハイレンドラ王国だ。」

 

「といっても500年ほど前のことだが」

 

俺「じゃあずっと争ってきたってことですか?でも今は争ってないですよね?」

 

シナイ「そうだ、この戦争は俺たちハイレンドラ王国の勝利によって60年前に終わりを告げた。負けたアジャパビト帝国は魔法で国を浮かし空に逃げた。」

 

「でもどうやって勝ったんです?剣で簡単に魔法に勝てるとは思えない。」

 

「レオさんの一族、ヴォーパルソード族がいたからだ。そのおかげで戦争はつねにこちら側が優勢だった。ヴォーパルソードはどんな物でも斬れるという性質を持つ。飛んでくる魔法を斬って斬って斬りまくり無力化できるんだ。」

 

「いつだったかレオさんにそれとなくヴォーパルソードについて聞いたとき本当の覚悟を持つ者にのみ使いこなすことができる神剣で、一族の血を引いているかいないかなんて関係ない。神からの贈り物だと答えられたよ。」

 

俺は1人でエイタに挑んでいたレオさんの姿を思い出した。

 

そのときのレオさんは間違いなく本当の勇気を持つ者だっただろう。

 

流石5年前に魔王を倒した勇者パーティーの一員というだけある。

 

ん?そういえばあそこにいたのはレオさんだけだったな、他のメンバーはどうしてエイタと戦わなかったんだろう。

 

俺「レオさん以外の魔王を倒したメンバーは今どうしてるんですか?」

 

シナイ「魔王?いきなりだな、他の2人は分からないけど大魔法使いのオルナさんならアジャパビト帝国に捕らえられているとレオさんが言っていたな、いつか助けに行きたいとも。」

 

「捕らえられてるんですか?物凄く強い筈なのに?」

 

「俺も詳しいことは分からないんだ、すまんな。」

 

「いや充分です、ありがとうございます。」

 

「そうか?じゃあ話の続きを、、

 

 

(ドオォォォォォォォォォォォォォォン)

 

 

シナイさんが続きを話そうとした途端、物凄い轟音が森中に鳴り響いたとともに今までの目の前の狭い道が延々と続くうっそうとした森の景色が消え一転して視界が広がった。

 

そしてその開けた視界の真ん中にいるのは宙に浮いたエウリカさんだった。

 

更地になった元森周りには爆発に巻き込まれた隊員達が横たわっている。

 

そしてエウリカさんを見つけたシナイさんは止まる間もなくエウリカさんの元に突っ走っていき、

 

そのままその横にいた何者かに吹っ飛ばされた。

 

俺は開いた口が塞がらなかった。

 

それは何故か?

 

目の前でエウリカを捕らえ隊員を全滅させ、シナイさんを吹っ飛ばした新たな敵を知っていたからだった。

 

その人物を俺が知らない筈は無かった。

 

なにせ毎日毎日朝早くから顔を合わせるのだから。

 

そう、俺だった。

 

俺は1人残った俺を上空から見つめていた。

 

俺があのとき送り出した200人の俺の1人だ。

 

まだどの俺か特定できない、この世界では名前が分からないと誰か全く分からないのだ。

 

俺「えっと、お名前はなんと仰るのでしょうか?」

 

下手に出て聞いてみる、まあ特定できたところでどの俺でも勝ち目はないが。

 

俺「名前か、いいぜ教えてやるよ。」

 

「ジニアスだよ、ジニアス。これで満足か?」

 

ジニアス、確かエイタとの戦いのとき最後まで俺の隣にいた俺か。

 

スキルは(全属性魔法超適正)だったか。

 

そうだ命名したのを覚えている。全部の魔法を使えるから天才、ジーニアスでジニアスと名付けたんだ。

 

あの時とはずいぶん性格が変わったらしい。何があったんだろう、青いローブを身に纏い右手を強く発光させ俺に向けている。

 

避ける間もない、俺は覚悟を決める。

 

が、その攻撃は俺ではなく、再び動きだしたシナイさんに当てられた。

 

その一撃でシナイさんの鎧が完全に壊れた。

 

ジニアスは次の攻撃の準備を始めているが、次攻撃が当たれば終わりだというのにシナイさんは一歩も動かずにずっとエウリカさんを見つめている。

 

俺「危ない!!」

 

見ていられず叫ぶが遅く、すでに魔法は放たれていた。

 

無情にもシナイさんにぶつけられた魔法跡の煙は止むことはない。

 

もう立ち尽くすしか無かった。

 

また俺のせいで人が死んだ。

 

ただジニアスからの攻撃を待つ。

 

俺が死ねば分身は皆消える、ジニアスを道連れにできる。

 

他の俺には悪いことしたな、あの世で俺の分身達は許してくれるだろうか。

 

エイタなら許してくれるかな。

 

なあ、エイタお前今どこにいるんだよ。

 

 

 

 

しかし目の前で起こっている現実が俺の意識を一気に引き戻す。

 

シナイさんが目の前でジニアスを吹っ飛ばし返していたのだ。

 

身体に赤いオーラを纏っていた。

 

まさか間一髪で抜け出したのか!?エウリカさんを抱き抱えているのが見える。

 

シナイ「エウリカ、無事か?」

 

エウリカ「ええ、シナイ」

 

ジニアスの魔法から剥がされ意識を取り戻している。

 

「使ったのね。あの力。」

 

「仕方ない、キミを二度とあの帝国に戻すわけにはいかないから」

 

「ありがとう、私助けられてばかり。」

 

「何を言ってるんだ。今だって俺を回復してくれてるじゃないか」

 

ジニアスが起き上がってくる。

 

ジニアス「へぇ、お前らそういう関係だったんだな。その幸せ粉々に砕いてやるよ。」

 

「はは、楽しみだ!!」

 

シナイ「エウリカ、ここは危険だ。ブライトと共に逃げるんだ。」

 

エウリカ「嫌よ、私あなたを回復し続けないと」

 

「MPが無限にあるわけじゃないだろう。それにただ逃げるだけじゃない、レオさんを呼んでくるんだ。」

 

ジニアスが両手でエネルギーを溜め始める、強力な魔法が飛んでくるのは時間の問題だろう。

 

「ブライト、エウリカと一緒に逃げろ。エウリカなら雷魔法で早く逃げることができる。」

 

俺「シナイさんはどうするつもりですか。」

 

「そりゃあ2人が逃げる時間を稼がないとな」

 

それじゃあシナイさんが犠牲になるだけじゃないか。

 

「シナイさん、俺なら、俺ならあいつを倒せます。」

 

「本当に本当です。100%です。」

 

シナイ「無理すんなよ、ブライト。」

 

違うんだ、本当なのに。あなたが犠牲になる必要はないのに。

 

エウリカ「ブライト、早く行こう。」

 

そう言う彼女の目には大粒の涙が溜まっている。

 

でもそれだけではなくその瞳の奥に覚悟が見えた。

 

今からレオさんを呼べればまだ助かると本気で思っているらしい。

 

無理なんだよ、あの戦いを経験した俺なら分かるんだ。

 

こいつはチートなんだ。最強なんだよ。

 

「早く行かないと、間に合わないかも知れない!!」

 

涙声で叫ばれる。

 

なんで信じてくれないんだ。泣きたいのはこっちだと思ったが、知らぬ間にもうすでに泣いていた。

 

俺「シナイさん、お願いですから俺にやらせてください。」

 

必死に訴えかける。

 

シナイ「カッコつけさせてくれよブライト。もしかしたらお前が返ってくるまでに倒してしまってるかもな、なんて。」

 

とびっきりの笑顔で返された。

 

また始めてみるシナイさんの顔だった。

 

俺はまだこの人のことをなにも知らない。

 

まだこれからなんだ、これからだったんだよ。

 

 

そうだ俺は何も知らないんだ、もしかしたらシナイさんが本当に勝つかも知れないじゃないか。

 

俺が信じなくてどうする。自分のことを信じてもらう前に相手を信じないといけない。

 

俺が母さんに教えて貰ったことじゃないか。

 

 

そうだった、俺まだ母さんと仲直りしてないんだ。

 

ああ、俺生きなきゃ

 

俺の脳内から自己犠牲の判断が消えて行くのが分かる。

 

頭では勝てっこないと分かっているのに、自分に都合が良いように考えることがやめられない。

 

シナイさんを見捨てる判断を選ぼうとしている。

 

俺はなんて醜いんだ。

 

いや、人間みんなこんなものか。

 

なら仕方ない、人間だって悪魔だって何も変わらないじゃないか。

 

そうだ俺だけが悪いんじゃない。

 

いつのまにかまた自分を正当化する理由を探していた。

 

「分かりました、じゃあ俺行きます。そうだ、話、話の続きして下さいよ。まだ俺何も分かって無いんですから。だから絶対勝って、、

 

まで言ったところでエウリカさんにつかまれ、そのまま魔法が発動し凄い速度でその場から離れていく。

 

シナイさんの姿がどんどん小さくなっていく。

 

俺は無心でその姿を目に焼き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分近く飛んだだろうか、もう少しで王国というところでいきなり宙に放り出される。

 

もう夕方だった。夕日が沈んでいくのが見える。

 

これからは闇の時間だ。

 

エウリカ「MPが切れた。早く走るわよ!」

 

すぐさま猛ダッシュでかけていくが、俺には追いかける元気は残っていない。

 

情けない、この疲れをレベルの低いせいにしてすぐ自分に言い訳してしまう自分が情けない。

 

走っていった先にレオさんの姿が見えた。

 

後ろには第2隊を除くすべての隊が集結し、森に向かって歩いているのが見える。

 

そうかよく考えてみればあんな大爆発気づかない訳がない。

 

エウリカさんが必死にレオさんに説明をしている。

 

ここからでもレオさんの表情が強張るのが分かった。

 

俺もようやく身を起こし隊列に近づこうとする。

 

 

 

ジニアス「よお」

 

いきなり後ろから囁かれる。

 

自分自身に恐怖で動けなくなってしまう。

 

こいつがここにいるということはそういうことなんだと理解してしまう。

 

俺のせいだ。俺がジニアスを生み出したから

 

ジニアス「なあ、あの女をつれて行くのが俺の仕事なんだよ。」

 

「邪魔しないでくれよ、、、俺」

 

予想もしていなかった言葉に驚きと恐怖で今にも倒れそうになる。

 

記憶は変えたはず、こいつが俺のことを自分と同じだと認識するのは不可能な筈なのに。

 

どうして、どうしてなんだ。

 

頭が痛い、もう何も考えたくない。

 

俺は疲れたんだ、疲れたんだよ。

 

 

 

 

「予想外の収穫だよ、あの女を連れてくついでに俺を見つけられるなんて、アナザーにも褒められるな。」

 

「俺ってほんとラッキー。さてと、これで何人目だ?」

 

「ああこれで16人目か。安心しなお前はあの女と違って特別待遇で出迎えてやるからさ。」

 

「さっき俺を100%倒せるとか言ってたよな。やっぱお前もチート能力持ちなんだな。」

 

「早くもったいぶらないで見せてくれよ、なっ」

 

「あ、見られた。見つかっちゃったか。」

 

「バレないように2人だけお持ち帰りと思ってたけど、見つかっちゃったら仕方ないよなぁ」

 

「さてと、虐殺の時間だ。」

 

「はい、ドカーンっと」

 

「終わったかな〜」

 

「あ?」

 

「なんか1人だけ生きてるやついるじゃん」

 

「はいドカーンドカーンっと」

 

「え、まだ生きてんの?めんどくさいなぁ!」

 

「しぶといのは嫌いなんだよ!」

 

「ん?その身体鋼鉄でできてんのか。スキルか?そりゃ並の威力じゃあ倒せないな。しかも魔法を斬って無力化とかやるじゃん。」

 

「まあ、これで終わりかな。」

 

「闇魔法、導く死Death read」

 

「ふぅー疲れた。じゃあ連れていこうかな」

 

「ってもしかして意識失ってる?」

 

「じゃあ女から運ぶか、便利魔法でワープゲート作ってと。」

 

 

 

 

「グハッ 何すんだよテメェ!!」

 

「魔法で防御数値カンストの俺を刺しただと!?なんなんだよその剣は!」

 

「チッ なんだよその目は!勝ったとでも思ったか?」

 

 

 

「くそ、腹が立って頭吹っ飛ばしちまった。」

 

「お前にとっては起死回生の一撃だっただろうが俺は回復魔法のおかげでもう治るんだよバーカ。」

 

 

 

「なんでお前頭飛ばされても目開いたままなんだよ!なんで腕の力が落ちねぇんだ!」

 

「回復魔法も何故か効かないし、まさかスキル侵害Invadeか?」

 

「まさかお前上級悪魔か?じゃないとこのスキルは使えないはず、まさかお前が逃げ出した亜邪派人族の王女だったのかよ。」

 

「腕が上がってくる、やめろ!止められない、喉まで上がってきやがる!」

 

「くそ、なんで教えといてくれなかったんだよ。アナザァァアーー」

 

夕日は沈みきり、死体の山にて披露される断末魔は誰にも届くことなく消えていき、真の覚悟を持った少女さえも闇に溶けていった。

 

 

 

 

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