抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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2/15 話を一部編集しました。


USJ襲撃編
未知との遭遇


 委員長決めとマスコミパニックの後日、相澤がホームルームを執り行う。

 午後のチャイムと同時に相澤が話し始め、彼の時間を厳守する合理主義的な性格にひなたは身内として感心していた。

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトそしてもう1人の3人体制で見る事になった」

 

 相澤は、生徒達にそう説明した。

 最初はオールマイトだけで授業をする予定だったのだが、先日のマスコミパニックの際に(ヴィラン)が侵入してきていたため念には念を入れて3人体制で授業を執り行う事になったのだ。

 

「ハーイ! 何するんですかー!」

 

 相澤が言うと、瀬呂が手を上げて質問した。

 ひなたも、前回は戦闘訓練だったため今度は何をするのかとワクワクして触角をピコピコさせていた。

 

「災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練だ!!」

 

 そう言って相澤は『RESCUE』と書かれたカードを見せた。

 

「レスキュー…今回も大変そうだな」

 

「ねー!」

 

「バカおめー! これこそヒーローの本分だぜ!? 鳴るぜ!! 腕が!!」

 

「水難なら私の独壇場。ケロケロ」

 

「あはは……」

 

 上鳴、芦戸、切島、蛙吹が説明中に私語を挟んでいるとひなたが苦笑いを浮かべる。

 話の途中に私語を挟むとどうなるかがわかっていたからだ。

 するとひなたの予想通り、相澤が生徒達を睨みつける。

 

「おい、まだ途中」

 

 案の定相澤が凄んできたので、ひなたも含めて全員震え上がった。

 

「今回、コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、準備開始」

 

 相澤は、相変わらず合理的に要点だけ伝えてコスチュームが入ったロッカーを出す。

 するとひなたが真っ先にコスチュームを取りに行く。

 

「さ、皆早く準備しよ。お父……相澤先生グズグズするの嫌いだから」

 

「せ、せやね……」

 

 そう言ってひなたがコスチュームを持ってそそくさと更衣室に向かうと、ひなたの隣の席の麗日もロッカーからコスチュームを取り出す。

 すると他のクラスメイトも一斉に席を立ちコスチュームを取り出しに行く。

 

「クソウ、俺が指示を出すべきだった!!」

 

 ひなたに先を越された飯田は、悔しそうに膝をついていた。

 その様子を見たクラスメイトは、心の中で『大丈夫かこいつ』と思っていた。

 やはりというべきなのか、せっかくコスチュームを着られる機会に着ないというのは考えられず、爆豪の爆破でコスチュームが破れた緑谷以外は全員コスチュームに着替えた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして、全員が着替え終わりバスの前に集合した。

 緑谷だけはコスチュームを着ておらず、体操服に顔や手足のガードといった格好だった。

 すると麗日が緑谷に話しかける。

 

「ん、デクくん体操服だ。コスチュームは?」

 

「戦闘訓練でボロボロになっちゃったから…」

 

「だってさ」

 

「こっち見んな」

 

 緑谷が事情を麗日に説明するとそれを聞いたひなたがわざとらしく爆豪に白い目を向けて言い、ひなたに蒸し返された爆豪は不機嫌そうに悪態をつく。

 

「修復をサポート会社がしてくれるらしくてね。それ待ちなんだ」

 

「そっかぁ。早く直るといいね」

 

 緑谷が麗日とひなたに事情を説明すると、ひなたは緑谷を慰める。

 すると、早速飯田がホイッスルを吹きながら指示を出してきた。

 

「バスの席順でスムーズに行くよう番号順に2列で並ぼう!!」

 

「飯田くんフルスロットル…………!」

 

 先程の失態を取り戻すべく、飯田は先頭で仕切っていた。

 すると、バスの形状を見てバスの内部構造を大体察したひなたが引き攣った笑みを浮かべながら飯田に尋ねる。

 

「天ちゃん、これ意味ある?」

 

「そこ!! 私語は謹んで並びたまえ!!」

 

(理不尽……)

 

「ごめん」

 

 飯田がひなたを注意すると、ひなたは心の中で文句を垂れつつ素直に謝る。

 ……が。

 

「こういうタイプだった、クソウ!!!」

 

「だから言ったじゃん」

 

「イミなかったなー」

 

「ぐおぁあおぉぉぉ!!」

 

 バスの席はボックス席ではなく前半分が向かい合って座るタイプの座席になっているバスだった。

 飯田は、完全に指示が空回りしてガックリと落ち込んでいた。

 バスの扉が前と後ろに二箇所あったためこのような構造になっているのではないかと気づいていたひなたは、落ち込む飯田に対して言った。

 芦戸もさらにトドメの一言を放つと、飯田はさらに落ち込んで叫び声を上げる。

 ちなみにひなたはというと、心操の隣に座っていた。

 すると、蛙吹が緑谷に話しかける。

 

「私、思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

 

「あ!? はい!? 蛙吹さん!!」

 

 蛙吹が言うと、緑谷は肩を跳ね上がらせて返事をする。

 それを見たひなたは、女子に慣れていないのかなと思って瞬きをする。

 

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの“個性”、オールマイトに似てる」

 

「!!!」

 

 蛙吹が言うと、緑谷が目を見開いて驚く。

 ひなたは、追い討ちをかけるかのように蛙吹に同調する。

 

「あ、確かにねー! デッくんのアッパー、あれ見てオールマイト思い出しちゃったもん! やっぱりコスチュームといいオールマイト愛が強いなデッくんは!」

 

 ひなたは、無邪気に目を輝かせて緑谷に話しかける。

 

「そそそそそそうかな!? いや、でも、僕は、その、えー」

 

 蛙吹とひなたに核心を突くような事を言われた緑谷は、明らかに動揺する。

 すると、切島が否定してくる。

 

「待てよ二人共。オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるアレだぜ」

 

「あ、確かに。言われてみればそうかも。オールマイトは何か、全身からオーラ? みたいのが漲ってる感じするけど、デッくんのはザ・必殺! 超パーンチ! って感じ?」

 

「どんな感じだよそれ……」

 

 ひなたがオールマイトと緑谷の違いを説明しようとすると、説明が大雑把すぎたのか心操がツッコミを入れる。

 すると、ひなたの説明で何かを閃いたのか、緑谷がひなたの方を振り向いて食い気味に尋ねる。

 

「相澤さん! 今、何て言った!?」

 

「え!? ごめん、バカにしたつもりじゃ……」

 

「いや、そうじゃなくて! ()()()()()()!?」

 

 緑谷が言うと、ひなたは目を点にする。

 ひなたからしてみれば何気ない一言だったのだが、ひなたなりに自分の意見を話した。

 

「んーっと……オールマイトは、全身からオーラ? 力の凝縮? みたいなのが漲ってるけど、デッくんのは“個性”そのものが必殺技っていうか……腕から一気にパワーをドーン! って放出してるじゃん? だから、厳密には違う“個性”なんじゃないのかなぁって」

 

 ひなたが自分の見解を話すと、緑谷は、天啓を得たのか大きく目を見開く。

 

「それだ……! ありがとう、相澤さん!」

 

「え? あ、う、うん」

 

 緑谷が笑顔でひなたに礼を言うと、ひなたはいまいちよくわからない様子で頷いた。

 二人のやり取りを聞いていたクラスメイトは、興味が湧いたのか何人か食いついてくる。

 

「おお!? 何か知らねーけど良いな緑谷!」

 

「天啓を得たか……」

 

「ケッ」

 

 切島は緑谷に興味を抱き、常闇は独り言を言い、爆豪は一人で盛り上がっている緑谷に嫌気が差していた。

 そこで互いの“個性”の話になり、切島が緑谷の“個性”を羨ましがる。

 

「いやぁ、しかし増強型のシンプルな“個性”はいいな! 派手で出来る事が多い! 俺の硬化は対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなぁー」

 

 切島は、左手を硬化させながら言った。

 するとひなたと緑谷がフォローする。

 

「鋭ちゃんの“個性”だって凄いさ! 戦闘訓練でもカッコよかったしな!」

 

「僕も凄くカッコいいと思うよ! プロにも十分通用する“個性”だよ」

 

「プロなー! しかしやっぱヒーローも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」

 

「尚更鋭ちゃんに向いてるよ! 防御力高いヒーローとか、守られる側は心強いじゃんか」

 

「そうか!?」

 

 ひなたと緑谷が言うと、切島が返す。

 するとひなたはさらに切島を褒めちぎり、切島は上機嫌になっていた。

 

「僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み」

 

「でもお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」

 

 青山が自慢するが、直ぐに芦戸が心を抉る言葉を投げかける。

 青山は、笑みを浮かべてはいたものの見るからに傷ついていた。

 芦戸に悪気は一切無かったが、時には無邪気な一言が一番人を傷つけるのだ。

 ひなたは、そのやり取りを聞いて「せめて臭いとか外に漏れない仕様にした方がいいんじゃないかな」とアドバイスを加えた。

 すると次は切島が話題を切り出す。

 

「派手で強えつったらやっぱ轟と爆豪とひなちゃんだな!」

 

「ケッ」

 

「そうかなぁ。でも僕のは対人戦闘一強だしなぁ。使い勝手悪いし怖がられそう」

 

「そんな事ないと思うぞ。実際、俺はお前に助けられた」

 

 切島が言うと爆豪が不機嫌そうな表情を浮かべ、ひなたは照れ臭そうに頭を掻く。

 ひなたが恥ずかしくなって自分を卑下すると、心操がフォローを入れる。

 ひなたは自分の“個性”を『(ヴィラン)っぽくて対人戦闘にしか役に立たない』と謙遜していたが、クラスメイトからしてみればひなたは注目株の一人で、心操からしてみれば入試で窮地から救ってくれただけでなく心まで救ってくれたヒーローだった。

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

 

「確かにな!」

 

「んだとコラ出すわ!!」

 

「ほら」

 

「わー怒っちゃんだ!」

 

「怒っちゃん言うな触角チビ!!」

 

 蛙吹が正論を言いひなたも蛙吹に同調すると、爆豪がキレ散らかす。

 ひなたが爆豪に対して『怒っちゃん』という中々センスのあるあだ名をつけると、爆豪がひなたに対してキレる。

 

「この付き合いの浅さでクソを下水で煮込んだ様な性格って認識されるってスゲェよ」

 

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」

 

「怒っちゃんおやつのバナナあげるから落ち着きな」

 

「動物園の猿じゃねンだよコラ!!」

 

(かっちゃんが普通にいじられてる……!!)

 

 上鳴が爆豪を貶すと、爆豪が怒鳴り散らしてくる。

 さらにひなたが爆豪をおちょくると、爆豪がさらにキレる。

 爆豪の幼馴染みの緑谷は、爆豪がいじられまくっている光景を見て愕然としていた。

 

「低俗な会話です事!」

 

「でもこういうの好きだ私」

 

「爆豪くん、君本当に口悪いな!」

 

「そういうのどうかと思うよ、ヒーローとして」

 

 八百万は不機嫌そうな顔をするが、麗日は逆に楽しそうだった。

 飯田と心操は、態度が悪い爆豪に対して注意をする。

 すると蛙吹がひなたに話しかける。

 

「ねぇひなたちゃん。私、あなたの“個性”の事で思った事があるの」

 

「なあに梅雨ちゃん?」

 

「あなたの“個性”、相澤先生とプレゼントマイク先生を足して2で割ったような“個性”よね」

 

「ギックゥ!?」

 

 蛙吹が核心を突いてくると、ひなたは肩を跳ね上がらせる。

 するとさらに上鳴も核心を突くような事を言ってくる。

 

「あー……! そういえば、ひなちゃんの顔どっかで見た事あると思ったんだよな! 言われてみりゃ確かに目元とかマイクに似てんな!」

 

「そ、そそ……そぉー……かなぁー……? あははは……」

 

(最近の子って何でこんな鋭いんだろ……)

 

 上鳴がひなたを指差して言うと、ひなたは苦笑いを浮かべつつはぐらかした。

 そして内心では、クラスメイト達の鋭さに恐れ入っていた。

 蛙吹は元々鋭いところがあり、普段は単純な傾向にある上鳴も女性の事になるとやけに鋭くなる節があった。

 

「やっぱり親戚だったりするん?」

 

「あ! あー……っとね! うん、そうなの! あんまり知られてないんだけど、相澤先生とマイク先生の従兄姉同士で結婚しててさ! 僕のお父さんとお母さんがその二人なんだけど、僕が物心つく前に交通事故に遭って死んじゃったんだ。だから相澤先生の家に長い事お世話になってて、それでもう今では何か親子みたいな関係になってるってわけ」

 

 麗日が尋ねると、ひなたは笑って誤魔化しながらそれっぽい嘘をついた。

 既に実の両親が亡くなっているという設定の嘘をつけばそれ以上詮索されないと思ったのだ。

 当然の事ながら決してクラスメイトを騙す事に罪悪感が無いわけではなかったが、『(ヴィラン)によって造られたイレイザーヘッドとプレゼントマイクの実子です』とは口が裂けても言えなかった。

 

「親子にしては歳が近すぎると思ってたけど……じゃあやっぱり本当の親子じゃないのね」

 

「う、うん! 親戚!」

 

 蛙吹が尋ねると、ひなたはコクコクと頷く。

 

「そうだったんだ……何かごめんね相澤さん」

 

「ううん、いいのいいの! 僕が勝手に話しただけだし! 気にしないで!」

 

 緑谷が謝ると、ひなたはブンブン両手を振って謙遜した。

 むしろひなたは、即興の嘘でクラスを暗い空気にさせてしまったので謝るのは自分の方だと思っていた。

 ひなたの作り話が即興とは思えないほど辻褄が合った話だったため、クラスメイトはそれが事実だと思いそれ以上は詮索しなかった。

 すると相澤が、ため息をつきつつひなたの素性を詮索されるのを防ぐために注意をして生徒達を黙らせた。

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ…」

 

「「「ハイ!!」」」

 

 相澤がA組に対して凄むと、A組は一斉に返事をする。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 バスで移動する事数十分、ひなた達がやって来たのはあらゆる災害や事故の現場を模したエリアが設置された巨大なドームだった。

 

「「「すっげ━━━!! USJかよ!!?」」」

 

 生徒達は一斉に湧き上がり、ひなたも目を輝かせて触角を振るう。

 すると宇宙服のようなコスチュームを纏ったスペースヒーロー『13号』が現れ説明をする。

 

「水難事故、土砂災害、火事etc.あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)!」

 

(((USJだった!!)))

 

 連れて来られたのが本当にUSJだったので、A組は全員心の中でツッコミを入れる。

 

「スペースヒーロー『13号』だ! 災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わー! 私好きなの、13号!」

 

 緑谷と麗日が興奮気味に言い、麗日に至ってはキャッキャとはしゃいでいた。

 一方相澤は、オールマイトがまだ来ていない事について13号と話していた。

 

「13号、オールマイトは? ここで待ち合わせるはずだが」

 

「通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでいます」

 

「不合理の極みだなオイ」

 

 13号がオールマイトの現状を伝えると、相澤は不機嫌そうにツッコミを入れる。

 相澤が不機嫌になったのを察したひなたは、苦笑いを浮かべていた。

 結局、多少不安要素を抱えつつも来ていないものは仕方ないのでオールマイト抜きで訓練をする事にした。

 

「仕方ない、始めるか」

 

「えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」

 

(((増える…)))

 

 13号が小言を1つずつ増やすと、生徒達は心の中でツッコミを入れる。

 すると13号は、自分の“個性”を生徒達に説明する。

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の“個性”は『ブラックホール』。どんな物でも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

「その“個性”でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

 

 緑谷が13号の話を聞いてそう答え、麗日はヘドバンをするかのように激しく首を縦に振った。

 すると、13号が説明を始めた。

 

「えぇ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそう言う“個性”が居るでしょう」

 

「!」

 

 13号が言うと、ひなたはわずかに目を見開く。

 元はといえば、ひなたの“個性”は人を壊す為に人為的に造られた力だった。

 叫ぶだけで人を一生“個性”を使えない身体に変える事ができるという強力で危険な力を持っており、実際に“個性”を暴走させて運悪く人を殺してしまった事もあった。

 ひなたは、そんな力で人を救う事ができるのかとずっと不安に思っていた。

 

「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた“個性”を個々が持っている事を忘れないで下さい。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めてる可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では…心機一転! 人命の為に“個性”をどう活用するかを学んで行きましょう! 君達の力は傷付ける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」

 

 13号がそう言うと、ひなたは自分の力を人を救う為に使う術をこの授業で精一杯学ぼうと意気込む。

 

「以上! ご清聴ありがとうございました」

 

「ステキ—!」

 

「ブラボー!! ブラーボー!!」

 

 13号が礼をしながら締めくくると、麗日と飯田は声を上げ、ひなたも拍手を送る。

 

「そんじゃあまずは…」

 

「先生……あれ……」

 

 相澤の話を遮ってひなたが目を見開きながら相澤の背後を指差すので相澤が振り向くと、黒い渦のようなものが揺れ動いており、渦が少しずつ大きくなっていた。

 そして、渦の中から顔を手で覆った男が現れる。

 

 

 

「一かたまりになって動くな!!!」

 

 相澤は生徒達に向かってかつて聞いた事ない程声を大きく張り上げて叫ぶが、ひなた以外は状況が飲み込めずキョトンとしていた。

 

「13号!!! 生徒を守れ!!」

 

 相澤は声を張り上げて13号に指示を出すが、瀬呂に至っては入試の時同様学校側が用意した仮想(ヴィラン)だと勘違いしていた。

 

「なんだアリャ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

「動くな!! あれは(ヴィラン)だ!!!!」

 

 瀬呂が混乱していると、相澤が叫んだ。

 すると、黒い霧のような姿をした男が声を上げる。

 予定と少し違ったのか、男は怪訝そうに言った。

 

「13号に…イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが…」

 

「やはり先日のはお前らの仕業か…!」

 

「ほう! ご存知でしたか」

 

 黒い霧のような男の発言に対して相澤が言うと、雄英が自分達の存在に気付いていた事に感心し声を上げる。

 すると、手で顔を覆った男が上を向いたまま声を上げる。

 

「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…子供を殺せば来るのかな?」

 

 手を顔で覆った男が言うと、ひなたは顔を真っ青にしてゾクッと背筋を震わせる。

 すると今度は切島が口を開いた。

 

(ヴィラン)ンン!? 馬鹿だろ!? ヒーローの学校に入り込んで来るなんてアホ過ぎるぞ!」

 

「先生、侵入者用センサーは!」

 

「勿論ありますが…」

 

 八百万が尋ねると、13号が答える。

 すると轟が冷静に現状を分析する。

 

「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういう事が出来る“個性(ヤツ)”がいるって事だな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数(クラス)が入る時間割…バカだがアホじゃねぇ、これは『何らかの目的』があって用意周到に画策された『奇襲』だ」

 

「何も考えてないなら、わざわざ一旦カリキュラム盗むなんて事しないもんね。どこまで情報漏れてんのかは知らないけど、どのみち先手打たれた以上、今は命を守る事を最優先に動かなきゃ」

 

 轟が言うと、ひなたもコクリと頷いて言った。

 

「13号、避難開始! 学校に連絡試せ! センサーの対策も頭にある敵だ、電波系のヤツが妨害している可能性がある! 上鳴、相澤、お前らも“個性”で連絡試せ!」

 

「っス!」

 

「はい!」

 

 相澤が指示を出すと、上鳴とひなたは“個性”を使って校舎との連絡を試みる。

 すると緑谷が相澤に対して口を挟む。

 

「先生は!? 1人で戦うんですか!? あの数じゃいくら“個性”を消すっていっても!! イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の“個性”を消してからの捕縛だ、正面戦闘は………」

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号! 任せたぞ」

 

 そう言い残すと、相澤は一人で(ヴィラン)の方へ突っ込んでいった。

 すると(ヴィラン)は下品な笑みを浮かべながら他の仲間へ声をかける。

 

「射撃隊行くぞぉ!!」

 

 (ヴィラン)の1人が声を荒げると、(ヴィラン)達は“個性”での射撃の準備をする。

 

「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったか!? ありゃ誰だ!?」

 

「知らねぇ!! が、1人で正面突っ込んでくるとは大まぬけ!!!」

 

 そう言って(ヴィラン)達が相澤を撃ち落とそうとするが、(ヴィラン)達は“個性”での狙撃が出来なかった。

 

「あれ? 出ね…」

 

 (ヴィラン)達がキョトンとしている間に相澤は素早く捕縛武器を(ヴィラン)三人に巻きつけ、捕縛武器を引っ張って(ヴィラン)同士の顔面をぶつけ合わせて倒した。

 すると別の(ヴィラン)が倒れた三人に向かって叫ぶ。

 

「馬鹿野郎!! あいつは見ただけで“個性”を消すっつうイレイザーヘッドだ!!」

 

「消すぅ~!? へっへっへっ、俺らみてぇな異形型のも消してくれるのかぁ!?」

 

 そう言って4本の腕を持つ異形型の(ヴィラン)が相澤の前に立ち塞がると、相澤は異形型の(ヴィラン)の顔面を正面から殴る。

 

「いや、無理だ。発動型や変形型に限る」

 

 そして(ヴィラン)の足に捕縛武器を巻き付け、右足を絡め取る。

 するとその直後、別の(ヴィラン)が背後から相澤に殴りかかるが、相澤は空中で身を翻して回避した。

 

「が、お前らみたいな奴の旨みは統計的に、近接戦闘で発揮される事が多い」

 

 そう言って相澤が捕縛武器を引っ張ると、異形型の(ヴィラン)の身体が奇襲を仕掛けた(ヴィラン)の方へと飛んでいき、巨体同士が衝突し合って二人ともダウンした。

 

「だからその辺の()()はしてる」

 

 相澤がものの10秒程で5人の(ヴィラン)を倒すと、手を顔面につけた(ヴィラン)が不機嫌そうに首筋を掻く。

 

「肉弾戦も強く…その上ゴーグルで目線を隠されていては『誰を消しているのか』分からない……集団戦に於いてはそのせいで連携が遅れをとるな…なるほど、嫌だなプロヒーロー。『有象無象』じゃ歯が立たない」

 

 手で顔を覆った男は、顔を掻きながら呟いていた。

 

「凄い…多対一こそが先生の得意分野だったんだ…」

 

「デッくん!」

 

「分析している場合じゃない! 早く避難を!!」

 

 イレイザーヘッドの戦いに感心する緑谷の手をひなたが引き、飯田が避難を促した。

 だが……

 

 

 

「させませんよ」

 

 13号が生徒を連れて向かった先に、突然黒い霧のような男が現れる。

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながら……この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃる筈…ですが、何か変更があったのでしょうか? まぁ…それとは関係無く…私の役目はこれ」

 

 (ヴィラン)が最後まで言い終わる前に13号が指先のキャップを外して個性を使おうとしたが、それと同時に二つの影が(ヴィラン)の前に現れた。

 爆豪と切島は、同時に(ヴィラン)に攻撃を仕掛けた。

 

「その前に、俺達にやられる事は考えなかったか!?」

 

「危ない危ない………そう…生徒と言えど優秀な金の卵」

 

 黒い霧が散ったかと思えばすぐに人型に戻り、(ヴィラン)は無傷だった。

 

「ダメだ! 退きなさい二人とも!」

 

「馬鹿!!」

 

 13号が叫び、ひなたが咄嗟に捕縛武器で二人を掴んで後ろへ投げる。

 二人が13号の攻撃射線上に入ってしまい13号が(ヴィラン)を捕らえ損ねてしまったため、ひなたはいきなり攻撃を仕掛けた二人を注意する。

 

 

 

「散らして嬲り殺す!!」

 

 次の瞬間、黒い霧がクラスメイト全員を覆った。

 

「皆!」

 

 包み込まれたモヤの中、緑谷が叫ぶ。

 だが、次の瞬間には殆どの生徒がその場から姿を消していた。

 霧が晴れ、その場にいたのは13号と、芦戸、飯田、麗日、砂藤、障子、瀬呂のA組6人だった。

 

「皆は!? いるか!? 確認できるか!?」

 

「散り散りにはなっているがこの施設内にいる」

 

 飯田が声を上げると、障子が複製した耳で全員の音を聞き取って報告する。

 

「物理攻撃無効でワープって…!! 最悪の“個性”だぜおい!!」

 

 瀬呂が黒い霧状の(ヴィラン)を見て言った。

 瀬呂の言う通り、先程切島と爆豪の攻撃が通じなかったばかりだった。

 すると13号が飯田の方を見て言う。

 

「………委員長!」

 

「は!!」

 

「君に託します。学校まで駆けてこの事を伝えてください。警報が鳴らず、そして電話も圏外になっていました。警報機は赤外線式…先輩…イレイザーヘッドが下で“個性”を消して回っているにも拘わらず無作動なのは…恐らくそれらを妨害可能な“個性”がいて…即座に隠したのでしょう。とするとそれを見つけ出すより君が駆けた方が早い!」

 

「しかしクラスを置いてくなど委員長の風上にも…」

 

 13号が指示を出すと、飯田が反対しようとする。

 委員長として自分だけがクラスメイトを置いて離脱する事など出来なかったからだ。

 すると砂藤が飯田に向かって言った。

 

「いいから行けって非常口!! 外に出れば警報がある! だからこいつらはこん中だけで事を起こしてんだろう!?」

 

「外にさえ出られりゃ追っちゃこれねえよ!! お前の脚で靄を振り切れ!!」

 

 砂藤につづけて瀬呂も言うと、13号も飯田に言い放つ。

 

「救う為に“個性”を使って下さい!!」

 

「食堂の時みたく…サポートなら私超出来るから! する!! から!! お願いね、委員長!!」

 

 13号と麗日が言うと、飯田は覚悟を決めたのか力強く頷く。

 すると(ヴィラン)は13号を嘲りながら霧散していく。

 

「他に手段がないとはいえ敵前で策を語る阿呆がいますか」

 

「バレても問題がないから 語ったんでしょうが!!」

 

 そう言って13号は、“個性”で(ヴィラン)を吸い込もうとする。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「……わっ!?」

 

 視界が暗闇に包まれたかと思えば謎の浮遊感が足元を襲い、次の瞬間には落下していた。

 するとその直後、ひなたの身体に冷たい風と人工雨が当たる。

 ひなたは、捕縛武器を使って器用に着地すると、まるで犬や猫のように身体をブルブルと震わせて髪や肌についた水滴を弾き飛ばす。

 そして、周りをキョロキョロと見渡して状況を把握する。

 ひなたがワープさせられたのは、暴風・大雨ゾーンだった。

 

「うー、ビショビショ。撥水仕様にって要望書いといて良かったー」

 

 他にワープさせられた誰かがいないか見渡していると、上の方に黒い渦が二つ現われる。

 そしてその直後、誰かが落ちてきたのでひなたは咄嗟に捕縛武器で巻きつけて落下を防ぐ。

 ひなたが捕縛武器を巻きつけたのは、心操と常闇だった。

 

「あれ!? ひー君! ふみにゃん!」

 

「相澤……! 何と奇遇な……お前もここに飛ばされたのか」

 

「とりあえずありがとう、ひなた」

 

「いえいえ!」

 

 ひなたが目を丸くして驚いていると、常闇も驚き心操はキャッチしてくれたひなたに礼を言う。

 奇しくも全体的に黒い3人が一箇所に集まり、側から見ればヒーローというよりは暗殺者集団だった。

 

「俺達の他には? 誰かいなかったか?」

 

「えーっと……まだわかんな……」

 

 心操の質問にひなたが答えようとした、その時だった。

 

 

 

「おっ、マジか! ホントに雄英のガキが来てんじゃん!」

 

「「「!」」」」

 

「殺していいんだよな!? なぁ!?」

 

 ひなた達は、見るからに(ヴィラン)といった風貌の集団に囲まれている事に気がつく。

 集団はひなた達を見てどう料理してやろうかと考えてニヤニヤしていたが、ひなたにはどう見てもただのチンピラが集まったようにしか見えなかった。

 するとチンピラの一人がひなたにいやらしい目を向ける。

 

「ひゃっほぉう! 女だ! 女がい……チッ、何だよく見りゃ女装した野郎じゃねぇか」

 

「あ゛?」

 

 ひなたにいやらしい目を向けたかと思えば、その中性的な見た目から女装趣味の男子と勘違いして勝手にガッカリする(ヴィラン)に対して、それを聞いていたひなたがビキビキと額に青筋を浮かべて低い声を漏らす。

 その間、心操と常闇は現状を把握して話し合っていた。

 

「先日のマスコミ乱入の時、ひなたが職員室で不審者を二人見つけてる。あのマスコミは囮だったんだ。嫌な予感してたけど、やっぱりカリキュラムが割れてたか……!」

 

「虎視眈々とこの機を狙っていたというわけか……烏合の衆を連れてまでオールマイトを殺しに来たという事は、殺す算段があるから来たという事」

 

「でも俺達の“個性”と実力まではバレてないっぽい。もし“個性”がバレてるなら、俺や常闇は炎で囲まれてて“個性”を使いづらい火災ゾーンに移動させられてるはずだし……それに実力がバレてるならこんなチンピラじゃなくて少数でも精鋭を寄越してくるはず」

 

「ならば、俺達がすべき事はただ一つ……」

 

 二人が話し合っていると、(ヴィラン)が三人の方へ迫ってくる。

 

「ヒャッハァア!! 死ねェエ!!」

 

 (ヴィラン)が武器を振り上げて襲い掛かってきた、次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

『う゛ぇろろろろごうろろろあ゛あ゛ッッ!!!!!』

 

 

 

 

 

「ぐぁっ……!?」

 

「な、何だ!? “個性”が壊れ……」

 

「何でだ!? 変身できねぇ!?」

 

「痛え!! め、目が!! 目がぁぁぁ!!」

 

 ひなたの叫び声が(ヴィラン)達に襲い掛かり、ある者は白目を剥き泡を吹いてその場に倒れ込み、ある者は攻撃しようと出した“個性”を粉々に砕かれ、ある者は“個性因子”を破壊されて変身できなくなる。

 異形型に対しても、“個性“に由来する器官に大ダメージを与えて戦闘不能に陥らせていく。

 そして、両手に捕縛武器を握って(ヴィラン)に投げつけて縛り上げる。

 

「必殺……イレイザーヘッド直伝『自衛上段回し蹴り』ィ!!」

 

「ぐぎゃ!!」

 

 ひなたは、縛り付けた(ヴィラン)の頭に上段回し蹴りを喰らわせる。

 ひなたの蹴りが直撃した(ヴィラン)は、メキメキと顎の骨が砕ける音を立てて気を失う。

 その後も、ひなたは相澤に教わった格闘技と捕縛術を使って目に留まらぬ速さで次々と(ヴィラン)に重い一撃を喰らわせていく。

 

「な……速「『自衛鳩尾砕き』!!」ぼぇっ!?」

 

「見失うな、確実に殺「『自衛地獄突き』!!」おごっ!?」

 

「あのカマ野郎どこ行っ「『自衛脳天落とし』!!」ぎゃべっ!!」

 

「な、何だこのチビ強…… 「『自衛胴回し回転蹴り』!!」ぐぁあっ!!」

 

「ばっ、ばけも…… 「『自衛踵落とし』ィィ!!!」ごぎゃ!!」

 

 ひなたは、たった数秒の間に次々と(ヴィラン)に大ダメージを与えて撃沈させていく。

 大型でパワー系の相手にも、律儀に『自衛』という大義名分を叫びつつ圧倒的な機動力を武器に一撃必殺の攻撃を叩き込んで無力化させていく。

 ひなたは(ヴィラン)に自身の中性的で小柄な外見を馬鹿にされた事に対してブチ切れ、そのせいか軽く普段の倍を超える馬鹿力を発揮しており、般若の顔をしているひなたは誰にも止められなかった。

 大の大人が(見た目だけは)幼女に次々と撃沈させられていく様は、もはや地獄絵図だった。

 

「誰の胸が竹をわったみてぇだって!?」

 

「そ、そんな事一言も……「確かに聞いたぞコラァ!! 必殺『自衛鎖骨割り』ィ!!!」ぎぁっ!?」

 

 次々と(ヴィラン)に薙ぎ倒していくひなたを見て、女の恐さを目の当たりにした男子二人は引いていた。

 

「あいつ、技の前にいちいち『自衛』をつけてあくまでも正当防衛で済まそうとしてるぞ……『必殺』って言っちゃってる時点でアウトだろ」

 

「もはや過剰防衛……」

 

 すると、肉弾戦では勝てないと判断した(ヴィラン)が銃火器でひなたの死角から狙撃しようとする。

 

「チッ、“個性”が使えねぇならこいつで蜂の巣にしてやる!!」

 

「行け、黒影(ダークシャドウ)!!」

 

「アイヨ!」

 

「ぎゃあ!?」

 

 常闇は、武器を持った(ヴィラン)達を黒影(ダークシャドウ)で蹴散らしていく。

 

「“個性”を消す“個性”だァ!? ハッハァ、俺ァ関係ねぇ!!」

 

 “個性”とは関係なしに巨漢で怪力の(ヴィラン)は、メリケンサックをつけた拳を心操へ振りかぶる。

 心操が咄嗟に横へ跳んで避けると、拳を打ちつけられた地面が粉々に砕ける。

 

「チッ……」

 

「ブッ潰してミンチにしてやるよ僕ちゃん達ィ!!」

 

 (ヴィラン)が拳についたコンクリートの破片をパラパラと落としながらニヤリと笑うと、(ヴィラン)の怪力に目をつけた心操は(ヴィラン)を煽る。

 

「そう言ってる割には避けられるとか、もしかしてあんた大した事ないんじゃないの?」

 

「ッ……!! ガキが、ブッ殺「『周りにいる奴らを気絶させろ』」

 

 心操の挑発に乗って(ヴィラン)が返事をすると、心操は(ヴィラン)に指示を出す。

 すると(ヴィラン)は、周りにいた仲間を蹴散らし始める。

 

「は!? えっ、ちょっ!? 俺らは味方ぐぎゃ!!」

 

「こいつまさか操られぼぇえっ!?」

 

 操られた(ヴィラン)は次々と他の(ヴィラン)を蹴散らしていき、あっという間に他の(ヴィラン)を全員倒し終えてしまった。

 

「ご苦労様。『もう寝ていいよ』」

 

「…………」

 

 心操が命令すると、(ヴィラン)はその場でうつ伏せに倒れ込んでいびきをかき始めた。

 心操が眠っている(ヴィラン) を拘束すると、(ヴィラン)を倒し終えた心操と常闇はため息をつく。

 

「これで全部か」

 

「大した事なかったな……」

 

「さて、そろそろ聞いとかないとね。こいつらがオールマイトを殺せるっていう根拠」

 

 そう言ってひなたは、比較的傷の浅い(ヴィラン)を叩き起こして尋ねる。

 

「あのさ。君ら、オールマイトを殺しに来たんだよね? その割には()()()()調()()()()()()()()()()の戯れでこんな目に遭ってるわけだけど。でもさ、わざわざ来たって事は、オールマイトを殺せるっていう勝算があるんだよね? 話してよ」

 

「へっ、誰が言うかよ」

 

 (ヴィラン)がガフっと血を吐きながら悪態をつくと、ひなたは拳を鳴らしながら凄む。

 相澤と顔つきが似ているせいか、こういう時のひなたは普段の幼くて可愛らしい顔とは裏腹に恐ろしく威圧感があった。

 

「『自衛』……」

 

「わ、わかった!! わかった言うよ!! 死柄木さんから聞いたんだよ!!」

 

「渋柿? 渋柿がどうしたのよ。食べたいの?」

 

「言ってねーし!!」

 

 (ヴィラン)が話し始めると、聞き間違いをしたひなたが天然発言をし、(ヴィラン)がツッコミを入れる。

 

「し、死柄木さんが言ってたんだよ!! 活動限界だか何だか知らねぇが、弱りきって力を使い果たした後なら対オールマイト用の超パワーの奴をぶつければ勝てるって!! チクショウ、俺はあの人に雇われただけなんだよ! 『子供と戯れるだけの簡単な仕事』だって! 金に目が眩んじまったんだ! なあ、頼むから見逃してくれよ!!」

 

「…………!」

 

 それを聞いたひなたは、大きく目を見開く。

 対オールマイト用の超パワー、それを聞いてひなたは黒い霧のような(ヴィラン)のワープゲートから顔を出していた筋骨隆々で黒い肌をしており脳味噌が剥き出しになった(ヴィラン)を思い出す。

 そしてUSJの中心で戦っている相澤の事を思い出し、頭の中でそれら二つを繋ぎ合わせて最悪の結末を思い描いてしまった。

 

「…………お父さん……?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方相澤は、手で顔を覆った(ヴィラン)と交戦していた。

 

「23秒」

 

「本命か」

 

 (ヴィラン)が迫ってくると、相澤は捕縛武器を(ヴィラン)に向かって飛ばす。

 すると(ヴィラン)は捕縛武器を掴みながら相澤の“個性”が解けるまでの間隔を数える。

 

「24秒、20秒」

 

「チッ!!」

 

「17秒」

 

 相澤は、一気に距離を詰めると(ヴィラン)が掴んだ捕縛武器を引っ張って腹に肘打ちを喰らわせる。

 だが(ヴィラン)が相澤の肘を掴むと、相澤の肘の皮膚がボロボロと崩れていく。

 

「動き回るので分かりづらいけど、髪が下がる瞬間がある。一アクション終えるごとだ。そしてその間隔は段々短くなってる。無理をするなよイレイザーヘッド」

 

 相澤は、(ヴィラン)に左ストレートを喰らわせて一度距離を取る。

 すると他の(ヴィラン)が相澤に攻撃を仕掛けてきたので、相澤は(ヴィラン)達の“個性”を消して倒していく。

 すると相澤の肘を崩した(ヴィラン)がゆっくりと立ち上がる。

 

「その“個性”じゃ…集団との長期決戦は向いてなくないか? 普段の仕事と勝手が違うんじゃないか? 君が得意なのはあくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか? それでも真正面から飛び込んできたのは、生徒に安心を与える為か? かっこいいなあ、かっこいいなあ。ところでヒーロー、本命は俺じゃない」

 

 そう言って(ヴィラン)のボスは、脳が剥き出しになった大型の(ヴィラン)をけしかける。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「13号、災害救助で活躍するヒーロー。やはり……」

 

「「「先生ー!!!!」」」

 

「戦闘経験は一般ヒーローに比べ半歩劣る。自分で自分をチリにしてしまった」

 

 黒い霧状の(ヴィラン)が嘲る中、生徒達は悲痛な叫び声を上げる。

 13号の正面と背後にワープゲートが現れ、13号の背後から発動した『ブラックホール』によって13号の背中がチリになってしまった。

 

「飯田ァ走れって!!!!」

 

 重傷を負って倒れる13号を見て呆然としている飯田に砂藤が叫ぶと、飯田はハッとして自分の任務を思い出し全速力で駆け出した。

 

「くそう!!」

 

 すると霧状の(ヴィラン)は、飯田に目をつけて自身の形を変えていく。

 

「散らし漏らした子供…教師達を呼ばれてはこちらも大変ですので」

 

 そう言って(ヴィラン)は、飯田の目の前に現れる。

 すると障子が(ヴィラン)を掴んで足止めする。

 

「行け!! 早く!」

 

「くそっ!!」

 

 障子が叫ぶと、飯田はクラスメイト達の無事を祈りながら走り出した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方相澤は、脳が剥き出しになった(ヴィラン)に組み敷かれ右腕を小枝のようにいとも容易く折られていた。

 (ヴィラン)のボスは、その様子を不気味な笑みを浮かべながら見ていた。

 

「対平和の象徴、改人“脳無”」

 

 そしてその様子を、心操や常闇の制止を振り切って全速力で駆けてきたひなたが目の当たりにしていた。

 

「……お父さん…………!」

 

 

 

 

 




USJでのそれぞれの位置

入場ゲート…13号、芦戸三奈、飯田天哉、麗日お茶子、砂藤力道、障子目蔵、瀬呂範太
セントラル広場…イレイザーヘッド
暴風・大雨ゾーン…相澤ひなた、心操人使、常闇踏陰
倒壊ゾーン…切島鋭児郎、爆豪勝己
水難ゾーン…蛙吹梅雨、緑谷出久、峰田実
土砂ゾーン…轟焦凍、葉隠透
火災ゾーン…尾白猿夫
山岳ゾーン…上鳴電気、耳郎響香、八百万百
???…青山優雅
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