翌朝、ホークスはナインが現れた現場付近の調査をしていた。
ホークスは、現場を見て顎に手を当てて考え込む。
(被害者の中にまた“個性”喪失者が…ただ、今回の被害者はヒーローではなく一般人。しかも身元のわかるものが全て奪われている。犯人は…奪った“個性”が何なのかを知られたくない…? 何故隠す必要が…)
その様子を、瓦礫の上から死柄木が眺めていた。
◇◇◇
その頃、いおぎ荘の雄英ヒーロー事務所では。
芦戸が電話で依頼者の相談に乗っていた。
「はい! 雄英ヒーロー事務所です! …旅行バッグの紛失ですね? 分かりました! すぐ向かいます! 商店街で観光客の荷物が失くなって…」
「私行く行くー! 青山くん! ご一緒しよ!」
「ウィ☆」
旅行バッグの捜索は、葉隠と青山が行く事になった。
峰田は、忘れ物の依頼を聞いて呆れていた。
「また忘れ物かよ、そのくらい自分で…「依頼者の声、すっごく可愛かったなぁ」うっひょー! 困ってる人は放っとけねーぞぉ!!」
呆れる峰田に対して芦戸が独り言を言うと、峰田は浮かれた様子ですぐに事務所を飛び出していった。
すると障子からの連絡を受けた八百万が報告する。
「障子さんから、ビーチに応援が欲しいとの事ですわ!」
「なら俺が行くよ!」
「俺も定時パトロールに…」
八百万が報告すると、尾白が立候補し常闇もパトロールに向かった。
すると緑谷が立ち上がって言った。
「僕も! 新島さん家の畑の手伝いに行ってくるね!」
緑谷が立ち上がると、ひなたも立ち上がる。
「僕も行く! すぐ近くの比嘉さんとこ、家の手伝いして欲しいんだって!」
一方、活真はいおぎ荘の近くまで訪れていた。
勇気を出していおぎ荘を訪ねようとしたその時、緑谷が出発する。
「行ってきまーす!!」
緑谷が飛び出してくると、活真は引っ込んでしまう。
緑谷は、引っ込んでしまった活真に声をかけた。
「活真…くん? どうかしたの?」
緑谷が声をかけると、活真はオドオドした様子で謝る。
「あ、あの…昨日はごめんなさい…」
活真が謝ると、緑谷は一瞬キョトンとするもののすぐに笑顔を浮かべた。
「偉いね! ちゃんと謝りに来てくれたんだ! 大丈夫だよ、怒ってないから!」
「もう一人のヒーローにもごめんなさいって言ってくれる?」
「うん! 言っておく! でも活真くん、どうして昨日あんな事を?」
緑谷が尋ねると、活真は俯きながら話し始める。
「…お姉ちゃんヒーロー嫌いなんだ」
「え?」
「昨日も、
活真が小さな声で自信なさそうに言うと、緑谷は笑顔を浮かべる。
「信じてくれたんだ」
「え?」
「僕らが助けに行くって信じてくれたんだよね? だから呼びに来てくれた!」
緑谷が笑顔を浮かべながら言うと、活真も微笑みながら頷く。
「…うん」
すると緑谷は、活真のバッグの紐に付いているエッジショットのバッジに気がつく。
「! そのバッジ、忍者ヒーロー『エッジショット』のでしょ!?」
「うん!」
「活真くんもヒーロー目指してるの!?」
緑谷が尋ねると、活真は自信なさげに俯く。
「………僕の“個性”、ヒーロー向きじゃないし…それに、お姉ちゃんも危険だって」
活真が言うと、緑谷は母親が泣いて自分を心配してきた時の事を思い出した。
緑谷は、活真を心配する真幌を自分の母親と重ねていた。
すると緑谷は、活真の横にしゃがみ込んで尋ねる。
「ねえ、活真くん。活真くんはどんなヒーローになりたいの?」
緑谷が尋ねると、活真は少し笑みを浮かべながら答える。
「悪い
「そうなんだ…僕は、困ってる人を助けるヒーローになりたいんだ」
活真が言うと、緑谷も自分の夢を語った。
すると活真が緑谷の方を見て尋ねる。
「困ってる人を助ける…?」
「うん。活真くんの、敵に勝って人を助けるヒーロー。僕の、人を助ける為に敵に勝つヒーロー。順序は違うけど、目指してるものは同じ。『最高のヒーロー』なんだと思う。だから、お互いに頑張ろう!」
「…うん!」
緑谷が手を差し伸べながら言うと、活真は笑顔でその手を取った。
「あ、でもなるべく家族には心配かけない感じで」
「うん!」
緑谷と活真は、お互い家族に心配かけないような最高のヒーローになる約束をした。
するとその時、走っている犬を追いかけているひなたが二人の前を横切った。
「待てええええ!! このバカ犬!!」
「バウッバウッ!!」
「よーし捕まえた!!」
ひなたは、上から犬に飛びついて押さえ込む。
すると緑谷は目を見開きながらひなたに尋ねる。
「相澤さん!? 比嘉さん家に手伝いに行ってたんじゃ…」
「そうなんだけど、あの家で飼ってる犬が散歩中に勝手に逃げてさ! あー!! おのれェ!! よくも僕のなけなしのサルミアッキを!! 残り食べるから返しなさい!! ペッしなさいペッ!!」
「バウッ」
「ドブに吐き捨てるなあああ!!」
ひなたが手伝いに行った家の飼い犬に手を拱いていると、活真がその様子を見て緑谷に尋ねる。
「あの人もヒーローなの…?」
「一応ね…」
「よーしよしよし、ステイステイ…っと、あ! 君は昨日の! えっと、活真くんだよね?」
ひなたは、ようやく捕まえた犬を抱えながら活真に挨拶をする。
「無事お姉ちゃんに会えて良かったねぇ! 僕は『クレシェンド・モルト』! 雄英ヒーロー事務所のヒーローです!」
ひなたは、ニッコリと笑って活真に話しかける。
「また何か困った事あったら何でも言ってね! それじゃ!」
ひなたは、暴れる犬を連れて走り去っていった。
その後、活真は緑谷に別れの挨拶をして姉の元へ向かっていった。
その様子を、住民の中年女性が見て呟く。
「活真ちゃん、本当にヒーローが好きなんだねえ。はいこれ」
「ありがとうございます、鈴村さん」
女性は、畑で採れた野菜を緑谷に渡した。
すると女性が緑谷に言った。
「優しくしてあげてね」
「え?」
「あの子ん家ね、母親を早くに亡くして父親は年中出稼ぎ。姉の真幌ちゃんと二人きりで暮らしてるんだよ。もちろんあたしら近所の者も面倒を見てるよ。けど、あの歳で親がいないってのは寂しいだろうから…」
中年の女性が言うと、ひなたは暴れ犬の散歩をしながら複雑そうな表情を浮かべて聞いていた。
◇◇◇
そして夕方、滑り台の前では。
姉の真幌が、活真の帰りを待っていた。
すると活真が真幌を呼ぶ。
「お姉ちゃーん!!」
「どこ行ってたの活真!」
「デク兄ちゃんのとこ!」
「え」
「昨日の事謝ってきた!」
「どうして?」
活真が言うと、真幌が尋ねる。
すると活真は、自分の思いを真幌に伝えようとする。
「僕、お父さん好きだよ。お父さんのようなカッコいい人になりたい。でも、でも…!!」
活真が何かを言いかけたその時、突然港の方から大きな音が響き渡る。
「な、何…!?」
真幌が活真を守りながら後ろを振り向くと、港にはフェリーが直進しており、防波堤を破壊していた。
そのままフェリーが直進すると港の漁師達は一斉に逃げていき、フェリーは港に乗り上げる。
真幌と活真は、驚いた様子で崖の柵から身を乗り出して港の様子を確認する。
「なに…?」
「どういう事!?」
港に乗り上げたフェリーには、ナイン達が乗っていた。
ナインは、キメラとマミーに命令する。
「キメラ、マミー。邪魔をされたくない。陽動を頼む」
「やり方は?」
「好きにしていい」
「承知」
キメラがナインの命令に対して尋ねるとナインは新たに指示を出し、マミーが頷く。
ナインは、さらにスライスに命令しようとする。
「スライス」
「わかってるわ」
スライスが言った直後、ナイン、キメラ、マミーの三人はフェリーから飛び降りる。
するとスライスは、“個性”で髪を飛ばして漁船を破壊していく。
その様子を見ていた真幌と活真は、物陰に隠れていた。
「ヴィ、
「お姉ちゃん、ヒーローに連絡して!?」
「でも、あいつらまだ学生…「デク兄ちゃんなら助けてくれるよ! 絶対に!」
◇◇◇
その頃、A組が借りていたいおぎ荘では。
畑仕事を終えた緑谷が、走りながら戻ってくる。
「畑仕事終わりました!!」
「おかえり、緑谷くん!」
「お仕事お疲れ様!」
緑谷が施設の中へと走っていくと、飯田と麗日が出迎えた。
すると、その直後ひなたも仕事を終えて帰ってくる。
ひなたは、両手に南国のフルーツの籠を抱えていた。
「比嘉さんとこのお手伝い終わりました!」
「お疲れ」
「あ、ひー君! あのね、見て見て! お手伝いのお礼にこんなに果物貰っちゃった! これとかどうやって食べるんだろうね?」
帰ってきたひなたを心操が出迎えると、ひなたは手伝いに行った家の住民に貰った果物を見せて自慢した。
一方、事務所で留守番をしていた爆豪はというと。
事務所の電話が鳴っていたので、爆豪は若干面倒臭そうに電話を取る。
「何だァ? チンケな依頼だったら受けな…『
爆豪が電話に出ると、いきなり真幌が叫ぶ。
すると爆豪は、声の主が真幌である事に気がつく。
「…その声、昨日のクソガキだな?」
そのやり取りを、ちょうど戻ってきた緑谷が聞いていた。
爆豪は、昨日真幌に騙されたので呆れ返った様子で真幌に説教をする。
「お前なァ、そう何度も騙さ『嘘じゃないって!! 本当なんだってばバクゴー!!』
真幌が切羽詰まった様子で言うと、緑谷は血相を変えて爆豪から受話器をひったくって受話器に向かって叫ぶ。
「もしもし!? デクだけど!!」
「てめェ…」
『漁港にヴィ…』
真幌が何かを言おうとしたその時、電話が切れた。
真幌の言葉を聞き逃した緑谷は、爆豪に尋ねる。
「真幌ちゃん何て?」
するとその時、ひなたが事務所に戻ってきた。
「デッくん、かっちゃん…何、どうかしたの!?」
◇◇◇
そして同時刻、キメラが送電塔を破壊していた。
「通信の遮断、完了。次は…」
◇◇◇
一方、緑谷とひなたは急いで漁港に向かっていた。
「杞憂ならいいけど…! とにかく漁港に…!!」
「待ってデッくん!! ちょ、速!!」
緑谷が全速力で駆け抜けていくと、ひなたがアコースティックシューズで高速飛行をして追いかけた。
すると緑谷は、後ろを振り向いてギョッとする。
「相澤さん!? 何でついてきてくれたの!?」
「ったくもう、何の考えも無しに飛び出すんだから! 僕なら広範囲の索敵ができるし、
「た、確かに…! とにかく急ごう!」
◇◇◇
その頃、旅行バッグを見つけた青山、葉隠、峰田はというと。
「「本当にありがとうございます」」
「良かったね、まー君♡」
「そうだね、みーたん♡」
旅行バッグが無事見つかったカップルは、三人の前でイチャイチャしていた。
青山と葉隠はバッグが見つかった事を素直に喜んで拍手を送っていたが、峰田は血眼で唇を噛んで悔しがっていた。
(何だよカップルじゃねーか芦戸めェ〜!!)
するとその時、外から何かの破壊音が聞こえる。
「何だ!?」
三人が外に出ると、住民達が一斉に走って何かから逃げていた。
「うわああ!?」
「ヴィ、
住民達が逃げていく方向とは逆の方向に走っていくと、その先には赤い包帯で巻かれたミイラが暴れ回っていた。
「マジで
「唐突すぎるね☆」
「な、何とかしなくちゃ!!」
「青山、ヘソビームだ!!」
「くっ、ネビルレーザーだから☆」
峰田が指示を出すと、青山はネビルレーザーで赤いミイラを焼き払っていく。
すると、“個性”でミイラを操っていると思われるマミーが現れる。
「ほほう、こんな辺境にヒーローが三人も!」
そう言ってマミーは、包帯を飛ばす。
すると包帯は車や自動販売機に巻きつき、巻き付けたものをミイラに変えていく。
「「!?」」
それを見た青山と峰田は顔を青くして狼狽える。
そうしている間にも、次々とミイラは増えていく。
「逆に増えてるね☆」
青山は自分の周りに反射鏡を展開してネビルレーザーで次々とミイラを攻撃し、峰田も次々とボールをもいでは投げる。
「うわあああ!! 葉隠ぇ! 事務所への連絡を!!」
「電話繋がらない! 旗が立ってないよ!!」
葉隠は、自分の携帯を指差しながら言った。
携帯は圏外になっており、電波マークの棒が一本も立っていなかった。
「嘘だろ!?」
葉隠の報告を聞いた峰田が狼狽え、青山も限界が近づいていた。
「これ以上打ち続けると、僕のお腹が…☆」
青山が言うと、峰田は半泣きになりながらひたすらボールをもいでは投げる。
「クソォ!! どうすりゃいいんだー!?」
◇◇◇
そして一方、海岸では。
「フロッピー! テンタコル! 皆の避難を最優先に!!」
尾白は、海岸にいた蛙吹と障子に声をかける。
「わかってる!!」
「早くここから離れて!」
二人は、“個性”を使って海岸にいた客の避難誘導をしていた。
「『尾空旋舞』!!」
尾白は、尾を使って海岸で暴れていたキメラに攻撃を仕掛ける。
だがキメラは、あっさり尾白の攻撃を受け止めた。
尾白は、そのまま空中で身体を一回転させて尾でキメラの顔面目掛けて突きを放った。
「『尾突』!!」
尾白が尾でキメラの顔面を突くと、キメラが尾白を睨みつける。
「ちっ…痛えな」
キメラが尾白の尾を振り払うと、尾白は距離を取ってキメラに尋ねる。
「何が目的だ!? 何故こんな事を!?」
「ヒーローにしては若ェなァ」
そう言ってキメラは、両手で岩を持ち上げて尾白目掛けて投げつける。
尾白は、何とか降ってくる岩を避け続ける。
だが避け切れずに岩が目の前に迫ってくる。
尾白は、降ってきた岩を咄嗟に尾で砕いた。
だが次に飛んできた岩までは砕き切れず、岩が尾白に迫ってくる。
するとその時、常闇が『黒の堕天使』で飛んで尾白を救出する。
「常闇!!」
「遅くなった! 『
「アイヨ!!」
「『宵闇よりし穿つ爪』!!」
常闇は、
常闇は、
だがキメラは、常闇の攻撃を避けるどころか受け止めると、軽々と薙ぎを放った。
「ふん!!」
「ぐぁ…!」
キメラは、常闇の攻撃を薙ぎ払うと、すかさず右ストレートを放った。
常闇は、
尾白は、キメラの方に走りながら常闇に指示を出す。
「スマホが使えない!! 事務所に戻って応援を!!」
「しかし!」
「ここは俺が持ち堪えてみせる!!」
そう言って尾白は、キメラの前に立ちはだかった。
◇◇◇
その頃、事務所にいた麗日達はというと。
「あれ? 携帯が圏外になっとる…」
「本当だ…」
「俺のも」
「ウチのも」
「どうなってんだ…?」
麗日が言うと、上鳴、瀬呂、耳郎も携帯を確認する。
心操は、急に事務所を飛び出していったひなたと連絡が取れないため苛ついていた。
「クソッ…何しに行ってんだひなたの奴…!」
すると、その時だった。
「大変だ!! ヴィ、
突然、住民の一人がバイクで事務所に駆け込んでくる。
すると駆けつけてきた砂藤が驚く。
「
「商店街で暴れ回ってる!! ヒーローが戦ってくれてるけど!!」
するとその時、常闇が空から飛んできて報告をする。
「報告!! 海岸に
「んだと!?」
「尾白達が防戦中! 応援を乞う!!」
常闇が言うと、八百万が飯田に指示を仰ぐ。
「飯田さん!」
すると飯田は、すぐに判断を下してクラスメイトに指示を出した。
「躊躇している時間は無い! ここにいる者は二班に分け、
「この島にいるヒーローは私達だけ。島の皆さんを救えるのも、私達だけですわ!」
「雄英高校ヒーロー科1年A組、出動!!」
飯田と八百万が言うと、A組は一斉に島民の救助に向かった。
◇◇◇
一方、漁港に向かっていた緑谷とひなたはというと。
「何これ…!?」
「漁港が…!! 皆に伝えなきゃ!」
「デッくん!」
緑谷がクラスメイトに連絡しようとすると、ひなたが携帯を見せる。
ひなたの携帯は、圏外になっていた。
「圏外!?」
「クソッ、インカムもイカれてる!」
緑谷は圏外になっている事に驚き、ひなたのサポートアイテムのインカムも使えなくなっていた。
すると緑谷は、フルカウルを使って飛び出す。
「きゃ!? ちょっ! デッくん!!」
ひなたも、飛び出した緑谷を追いかけていく。
二人は、電話をかけてきた真幌を探していた。
「デッくん…どうしよう、島の人達は…」
「
「…うん!」
緑谷が言うと、ひなたはコクリと頷く。
するとひなたは、“個性”を使って特殊な音波を出す。
「『
ひなたは、音波で周囲の人影を探る。
すると、鈴村宅の近くの二人の家の付近に、二つの反応があるのを見つけた。
「デッくん! 真幌ちゃんと活真くんいた! 今家に避難しようとしてる!」
「急がなきゃ…!」
緑谷とひなたは、猛スピードで真幌の自宅へと向かった。
◇◇◇
そしてその頃、役場の前では青山、葉隠、峰田の三人がマミーの生み出したミイラ相手に苦戦を強いられていた。
だが二人は、“個性”を酷使しすぎて限界を迎えていた。
「も、もう…お腹限界☆」
「オイラの頭皮も限界だぁ…」
「峰田くん!! 青山くん!!」
するとその時、突然マミーのミイラが次々と爆発する。
爆発で発生した爆煙の中からは、爆豪が現れる。
「雑魚に梃子摺りすぎなんだよ!! このモブ共!!」
「「爆豪」くん!!」
爆豪が罵倒すると、葉隠と峰田が安心する。
その直後、二人の頭上にミイラが降ってくる。
すると、切島がミイラを殴り飛ばした。
「オラァ!!
そして上鳴は、次々とポインターをミイラに投げて電撃を放っていく。
「同じくチャージズマ参上!!」
「二人共☆」
応援が現れた事で、ミイラを操っていたマミーは不機嫌そうな表情を浮かべる。
「仲間か…」
するとその時、八百万達三人が駆けつけてくる。
「皆さん!!」
「ヤオモモ! 皆!」
「私達は、島民の皆さんの避難と救助を!」
「うん!」
八百万達三人は、峰田達三人を連れて島民の救助に向かった。
一方、爆豪は爆破でミイラを吹き飛ばしていた。
「『
爆豪は、機関銃のように爆破を放つ技でミイラを蹴散らしていく。
上鳴は、腰に差した刀身の無い剣を抜き、剣に電気を流して某SF映画のようにバチバチと火花が散る刀身を生み出し、剣を振り抜いた。
「必殺! 『デンゲキソード』!!」
上鳴は、自分の周りの包帯を電気の剣で焼き切った。
マミーの攻撃を焼き切った上鳴は、キリッとキメ顔をする。
「決まった…」
だがその直後、上鳴の背後からミイラが攻撃を仕掛けてくる。
すると爆豪は、足からの爆破でミイラを蹴飛ばした。
「何油断しとんじゃアホ!!」
「ごめん!」
爆豪がミイラを蹴散らしながら上鳴に怒鳴ると、上鳴がアホ面を晒しながら謝る。
そして切島も、次々とミイラを殴り飛ばす。
だが切島は、マミーの包帯で腕を絡め取られてしまった。
「しまった!」
だが次の瞬間、爆豪が爆破でマミーの包帯を焼き切る。
「!! すまねえ!!」
爆豪に助けられた切島は、爆豪に声をかけた。
だが、爆豪は切島を助けた代わりに自分が包帯を巻かれて拘束されてしまう。
「爆豪!!」
一方、上鳴も電気を放ちすぎて徐々に電撃が弱まっていく。
するとミイラが上鳴に攻撃を仕掛けてくる。
「クソッ…おわあ!?」
爆豪に巻き付いた包帯は、そのまま全身を覆い尽くした。
「ん゛ん゛…何だこりゃあ!?」
「包帯に巻きつかれた者は拙者の意のままに動く! 生物に効果は無いが、お前が身につけている物質! プロテクターや衣服は拙者の思いのままとなる!」
マミーは、そう言って爆豪の衣服を操る。
すると爆豪は、上鳴と切島の前に叩き落とされる。
「爆豪!!」
「フン、仲間同士で潰し合うがいい!」
そう言ってマミーは、大量のミイラを二人にけしかける。
◇◇◇
一方海岸では。
キメラは、尾白の尾に拳を打ち付けて尾白を殴り飛ばす。
「ぐ…!」
「尾白ちゃん!!」
尾白が殴り飛ばされると、蛙吹が叫んだ。
尾白は、態勢を立て直すと、何度もキメラに尾での攻撃を叩き込む。
「ふっ、セイ!! てやぁ!!」
尾白は、尾で渾身の突きを放ち、キメラを吹き飛ばした。
だがキメラは、数メートル後ろに吹っ飛ばされただけで、尾白の攻撃を無傷で受け止めていた。
「痒い…痒いぜオイ」
「くそ…!」
キメラが尾白の攻撃を完封すると、尾白が尾の痛みに顔を歪める。
すると今度は障子が飛び出す。
「『オクトブロー』!!」
障子は、無数の複製腕を生成し、キメラに攻撃を仕掛ける。
だがキメラは、障子の攻撃を全て無傷で受け止めながら距離を詰めてきた。
「チッ…ふん!!」
障子は、いとも簡単にキメラに顔面を掴まれてしまった。
キメラは、障子を持ち上げながら話しかける。
「そのナリ…! お前相当いじめられたクチだろ? 両親を恨まなかったか!? なあ!?」
するとその時、飯田が駆けつけてキメラに蹴りを叩き込む。
「たあ!!」
飯田の蹴りが入るとキメラは障子から手を離し、その隙に飯田は障子を抱えて距離を取った。
「障子くん!!」
「ここは俺らに任せろ!」
「尾白を頼む!」
轟は氷を出し、瀬呂はテープでキメラを巻きつけた。
すると飯田が指示を出す。
「今だ!! 常闇くん!! 砂藤くん!!」
飯田が指示を出すと、常闇が砂藤を投げ飛ばす。
「『シュガーラッシュ』!!」
「図に乗るな!!」
キメラは、轟と瀬呂の拘束をいとも簡単に解き、砂藤を殴り飛ばした。
「ぐ!?」
「砂藤くん!!」
殴り飛ばされた砂藤は、数メートル吹き飛ばされて岩場に叩きつけられる。
海岸にいた島民を避難させていた麗日と心操も、思わず目を見開く。
すると、キメラが轟達に歩み寄りながら口を開く。
「おいおい…! ガキばっかとはいえ、ヒーロー増えすぎだろ」
そう言ってキメラは、轟達の方へ飛び出していった。
◇◇◇
一方、真幌と活真はというと、畑の中を走って逃げていた。
「お姉ちゃん! ヒーローに
「携帯通じないんだからしょうがないじゃない! 一度家に戻って、村の皆に…!」
真幌が言ったその時、二人が住んでいた家が突然吹き飛ぶ。
「きゃあ!?」
「わあ!?」
家が吹き飛んで発生した爆風が二人に吹きつけ、二人の帽子が飛ばされる。
真幌と活真は、吹き飛ばされた家を見て愕然としていた。
「家が…!」
すると、爆煙の中からナインが現れる。
ナインは、“個性”を発動して目を光らせていた。
「見つけたぞ。B型の細胞活性…少年、君の“個性”を奪おう」
ナインがそう言って二人に歩み寄ると、真幌が活真を庇う。
「安心しろ、殺しはしない」
「こ…来ないで!!」
真幌が怯えながら叫ぶが、ナインは全く聞く耳持たずに二人に歩み寄る。
「来るなったら!!」
真幌は、叫びながら幻のシーサーを生み出す。
だがナインは、一切怯まずに真幌の幻を消した。
「幻なのは分かっている」
「「ひっ!!」」
ナインは、怯える二人に歩み寄る。
そして、活真の方に手を伸ばした。
「お、お姉ちゃん…!」
だが、その時だった。
『ROCK 'N' ROOOOOOOLLLLLL!!!!!』
「ぐっ…!?」
突然、後方から爆音攻撃が浴びせられ、ナインは一瞬怯んだ。
自動的にナインを守るように展開した空気の壁も粉々に割れ、直に破壊音波を喰らう。
するとその直後、ひなたと緑谷が駆けつけ、真幌と活真を助け出した。
「しばらくこっち来ないでね!」
ひなたは、『
ひなたに“個性”を消されたナインは、身体中がピリッと痺れて“個性”が出せない感覚に苦しみつつも、逃げていくひなた達を目で追った。
「“個性”が出ない…いや、
一方、ナインから数百メートル程逃げた二人は、雑木林を抜けた先で真幌と活真を地面に下ろす。
「大丈夫!?」
二人は、真幌と活真の無事を確認する。
すると真幌と活真が同時に頷く。
「「うん!」」
「相澤さん、あいつにかけた『声』はどれくらい保ちそう!?」
「2分弱! あいつ“個性”いっぱい持ってる上にヤクキメてて波長ゴチャついてたから、あの場での足止めが精一杯だった!」
「“個性”の複数持ち…!? それってまるで…」
((オールフォーワン…!))
ひなたがナインにかけた“個性”の事を話すと、緑谷が目を見開く。
緑谷は、ナインがひなたに“個性”を消されて足止めを喰らっているうちに倒そうと考え、ひなたに指示を出す。
「『クレシェンド』! 二人を頼んだ!」
「わかった!」
緑谷が指示を出すと、ひなたは真幌と活真を抱えてその場を離れる準備をする。
「二人とも、しっかり掴まってて。ちょっとピリッとするけど我慢してね」
「「うん…!」」
「『
ひなたは、髪を逆立てて“個性”を発動し、アコースティックシューズを起動させると、靴の裏から放たれる衝撃波を使って猛ダッシュでその場を離れた。
いつナインの“個性”が復活して襲いかかってきても二人を守れるよう、音のバリアを作った。
ひなたがその場を離れると、緑谷は雑木林の方を睨む。
ナインがゆっくりと雑木林の中から近づいてくると、緑谷は戦闘態勢を取ってナインに尋ねる。
「止まれ!! 何故あの子達を狙う!?」
「退け」
「退くわけないだろ!!」
そう言って緑谷は、ナインがひなたによって“個性”を封じられている間に勝負を決めるべく、全速力で駆け出した。
緑谷が飛び出してくると、ナインは受け身を取ろうとする。
だが緑谷は、ナインの寸分手前で衝撃波を起こして土を舞い上がらせ土煙を作った。
ナインが一瞬怯んだ隙に、緑谷は『黒鞭』でナインを拘束して組み伏せた。
「もう終わりだ!」
「退け。退かないと殺す」
ナインは、自分を組み伏せた緑谷に対して殺気を放った。
するとその直後、ナインから衝撃波が発生し緑谷は身体をくの字に曲げて吹き飛ばされる。
「ぐぁ…!!」
(相澤さんが言ってた時間より『抹消』の“個性”が解けるのが早い…! こいつ、まさか自力で無理矢理解いて…!?)
緑谷は、ひなたが言っていた時間よりもはるかに早く“無個性”化の“個性”が解けた事に驚いていた。
ナインは、無表情のまま立ち上がると、そのまま五指からビームを放って緑谷を攻撃する。
◇◇◇
一方爆豪はというと、マミーに操られて上鳴と切島に攻撃を仕掛けていた。
「やめろ!! 爆豪!!」
切島が呼びかけるが、爆豪は二人に拳を叩き込もうと腕を振り下ろす。
二人は間一髪爆豪の攻撃を避けた。
「完全に操られてる…!」
「どうするよ、切島!?」
「どうするって…」
切島が何かを言おうとしたその時、二人の身体に包帯が巻き付けられる。
「しまった!」
「クソッ…!」
二人が包帯で巻き取られると、マミーが二人に言った。
「選べ。このまま拙者の傀儡となるか、仲間に倒されるか」
「「ぐ…!」」
マミーが大量のミイラを二人にけしかけようとした、その時だった。
「ざ…けん…なァ!!!」
突然爆豪のミイラが膨れ上がり、大爆発を起こす。
「何…!?」
マミーが目を見開いて驚くと、爆炎の中から爆豪が現れる。
「ナメんじゃねぇ、このミイラ野郎!!」
爆豪は、右腕の籠手が破壊されていた。
自分の籠手を破壊する事で、無理矢理マミーの“個性”を解いたのだ。
(自らをも犠牲にして…!!)
マミーは、大量のミイラを爆豪にけしかける。
だが爆豪は、ミイラを次々と爆破し高速飛行で一気に距離を詰める。
マミーは咄嗟に刀に手を伸ばすが、刀を抜く暇もなく塀に叩きつけられる。
「たっぷり溜めておいたぜ…爆線マックスだ!! 死ねェェ!!!」
そう言って爆豪は、籠手のピンを抜いて大爆発を放った。
至近距離で大爆発を喰らったマミーは、ついに意識を失う。
するとマミーの“個性”が解け、ミイラにされていたものが元に戻った。
「おー、さすが爆豪!」
「建物の被害も最小限かよ…」
爆豪がマミーを完膚なきまでに叩きのめすと、切島と上鳴が驚く。
するとそこへ八百万達が駆けつけてくる。
「皆さん!!」
「
「ああ!? 軽く捻った!!」
耳郎が尋ねると、爆豪がぶっきらぼうに答える。
すると駆けつけてきた八百万に、切島が訪ねる。
「島の人達は!?」
「全員西地区に避難させましたわ!」
八百万が言ったその瞬間、爆豪は空を飛んでどこかへ行ってしまった。
「どこ行くの爆豪!?」
「救助は任せた!! 残りの
耳郎が尋ねると、爆豪はそれだけ言って他のクラスメイトの加勢に向かった。
◇◇◇
一方、海岸では。
キメラが拳を放って轟の氷を砕く。
すると次の瞬間、キメラが轟の前に迫ってくる。
瀬呂は、咄嗟に轟の身体にテープを巻き付けて助け出した。
「クソッ…パワーでねじ伏せて来やがる…!」
「飯田、打つ手は!?」
「今は奴を釘付けにする事だけを考えるんだ。島民の避難が完了するまで!」
瀬呂が尋ねると、飯田が指示を出す。
その頃蛙吹、麗日、心操は“個性”で島民の救助をしていた。
次の瞬間、常闇と飯田がキメラに攻撃を仕掛ける。
「『
「『レシプロ・バースト』!!」
常闇は『
だがキメラは、地面を踏んで衝撃波を起こし二人の攻撃を弾き飛ばした。
「「!?」」
「歯ごたえ無えなあ!! 消えろ!!」
キメラが突進してくると、轟は左手から炎を放つ。
するとキメラは、口から炎を放った。
キメラの口から放たれた炎で、轟の炎が掻き消される。
「クソ!」
轟は、咄嗟に氷の壁でキメラの炎を防いだ。
すると氷と炎がぶつかり合った事で空気が膨張し、突風が巻き起こる。
◇◇◇
その頃緑谷は、ナインと交戦していた。
「『デラウェアスマッシュ・エアフォース』!!」
緑谷は空気砲を放つが、ナインはバリアで緑谷の攻撃を防いだ。
緑谷は、連続で空気砲を放って牽制をする。
ナインは突風で緑谷を遠ざけ、今度は指からビームを放ってくる。
ナインが複数の“個性”を持つ以上時間を稼ぐのは無理だと考えた緑谷は、今の自分にできる最強の必殺技を放つ。
緑谷は『黒鞭』で右脚を覆って鎧代わりにすると、渾身の一撃を放つ。
(『ワンフォーオール・フルカウル』…70%…!!)
「『セントルイススマッシュ』!!」
緑谷は超パワーの蹴りを放つと、ナインは空気の壁ごと吹き飛んでいく。
ナインは木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んでいき、倒れた木に埋もれる。
「やったか!?」
緑谷がそう言った直後だった。
ナインは、倒れてきた木を吹き飛ばすと、そのままゆっくりと立ち上がって歩み寄ってくる。
「な……!」
「いつまでもお前の相手をしている時間はない。…仕方ない、あれを使うか」
「!? やめ……」
ナインが左手からバチバチと火花を散らしながら言うと、『危機感知』でナインの動きを予知した緑谷はナインを止めようとする。
だがその直後、ナインは空気の壁で緑谷を弾き飛ばす。
「ぐぁ!!」
ナインの“個性”で弾き飛ばされた緑谷は、丘の斜面に激突する。
よほど激しくぶつかったのか、その音は爆速で駆け抜けているひなたの耳にも聴こえてきた。
すると、緑谷の危機をいやでも感じ取った活真がひなたの腕の中で暴れる。
「デク兄ちゃん!!」
「ねえ、やっぱり戻ろう…!? デクが、デクが…!」
「ダメ! デクに託されたんだ、『君達を守って』って!」
活真と真幌は緑谷のもとへ戻るよう言うが、ひなたは二人をしっかりと掴んで逃げ続けた。
だがその時、活真が恐る恐る空を指差した。
「お姉ちゃん…あれ……」
活真が指差した方向をひなたが振り向いた、その直後だった。
空を埋め尽くしていた暗雲が一瞬光り、その直後、紫電の雷撃が降り注いだ。
それを見た緑谷は、雷撃が落ちたのがちょうど逃げていた三人の頭上だと気がつくと、絶望と同時に怒りが込み上げてくる。
「お…まえ……!!」
「安心しろ。殺してはいない。逃げられなくしただけだ。死んでいなければ“個性”は奪える。『細胞活性』も、『抹消』も、奪う価値がある“個性”だ」
三人に雷撃を落としたナインは、そのまま活真とひなたの“個性”を奪いに行こうとする。
すると、三人を攻撃されて激昂した緑谷が、ナイン目掛けて拳を振りかぶった。
「うああああああああ!!!」
緑谷は渾身の一撃を放つが、ナインの壁に阻まれて攻撃は届かなかった。
するとナインは、追い討ちをかけるかのように五本の指先からビームを放った。
「ぐぁ…!!」
ビームで身体を貫かれた緑谷は、血飛沫をあげながらその場に膝をつく。
ナインは、“個性”を使って倒れ込んだ緑谷を見た。
「お前、“個性”を複数持っているな」
「!」
「ここで殺すには惜しい“個性”だが…生憎空きストックに収まり切らない。脅威となる存在は、排除するまで」
そう言ってナインは、緑谷を殺そうとする。
だがその直後だった。
『AHHHHHHHHHHHHH!!!!』
「!」
突然、ナインの死角から爆音攻撃が飛んでくる。
ナインは“個性”による自動防御で爆音攻撃を防いだが、またしても防御を破られ、一瞬ピリッと身体の内側が痺れる感覚が走った。
ナインが爆音のした方に視線を向けて“個性”を発動すると、信じがたい光景が目に飛び込んでくる。
「ふ、ふ……!」
「「………!」」
ひなたは、音の盾を展開して雷を防いでいた。
ひなたに守られていた二人は無傷だったが、その場に尻餅をついて唖然としていた。
“個性”でその光景を見ていたナインは、雷撃を受けてもなお立っているひなたを見て驚いていた。
「驚いた。あれを喰らってもなおほとんど無傷とは…」
「あ、相澤…さん…」
「面白い…だが、いつまで耐えられるかな」
そう言ってナインは、風を操って浮き上がると、ひなた達を俯瞰しながらさらに攻撃を放とうとする。
緑谷は再びひなたを攻撃しようとするナインを止めようとしたが、空気の壁に阻まれ暴風で吹き飛ばされた。
ナインは、二人を守っているひなた目掛けて先程とは比べ物にならない程の威力の雷撃を浴びせた。
だがひなたは、音のバリアで雷を防いでダメージを最小限に抑えていた。
「ぐぅ、う゛うぅううう…!!」
「クレシェンド!!」
「クレシェンド姉ちゃん!!」
ひなたが真幌と活真を守ると、二人は目を見開いて叫ぶ。
だがその直後、二人の背後から青い竜のような召喚獣が現れる。
そのまま召喚獣が襲いかかってくるが、ひなたは声を纏わせた捕縛武器を鋭い刃物に変形させて召喚獣を切り裂いた。
すると召喚獣の切り裂かれた部分が再生するが、ひなたは声で召喚獣を消し飛ばした。
「馬鹿な…!? 何故倒れない!?」
常識的に考えればとっくに死んでいるはずの攻撃を何度も受けてもなお立ち向かい続けるひなたを見て、ナインは珍しく取り乱して大きく目を見開く。
その直後、“個性”の使い過ぎによるガタが来たのか、ナインの全身に激痛が走る。
「クソッ、“個性”を使いすぎたか…!」
“個性”の過剰使用によって、ナインは全身の激痛に苦しむ。
緑谷は、その隙にナイン目掛けてスマッシュを打った。
「SMAAAAAASH!!!」
「チィッ…!」
緑谷がスマッシュを打つと、ナインは咄嗟に空気の壁で防御し、レーザーで返り討ちにした。
レーザーで肩を貫かれた緑谷は、激痛に悶える。
「ぐぁあ!!」
ひなたは、ナインからの攻撃を受けつつも、二人を守り抜いていた。
“個性”を何度も使ったひなたは、息を切らしながら真幌に話しかける。
「真…幌…ちゃん……お願いが…あるの…何でもいい…出来るだけ大きな幻を作って…!」
「わ、わかった…!」
ひなたが頼み込むと、真幌は戸惑いながらも頷く。
真幌は、祈るように手を組みながら幻を作り出した。
「お願い…誰か…! デクとクレシェンドを守って!!」
真幌は、ボロボロになり頭から血を流したひなたの幻を作る。
真幌が自分達を守ってくれた二人を助ける為に幻を出した、その時だった。
突然ナインの前に爆豪が現れ、爆破を放つ。
ナインは、片手でバリアを出して爆豪の爆破を防いでいた。
「爆発の“個性”!?」
「見つけたぜ、クソ
「「かっちゃん…!」」
爆豪が駆けつけてきたので、緑谷とひなたは安心して笑みを浮かべる。
「あの人…」
「バクゴー!」
「ガキ共!! よく見とけ!! No.1ヒーローになる男の強さをなァ!!」
そう言って爆豪は爆速ターボで一気にナインに距離を詰める。
ナインは、バリアを張って爆発を防ごうとする。
すると爆豪は、空中で方向転換をしナインの背後から爆破を放とうとする。
「貰ったァ!!」
だがナインは振り向いてビームを次々と放つ。
爆豪は爆破による高速飛行でビームを避け続けていくが、避けきれずにビームが掠る。
ナインは、追い討ちと言わんばかりに今度は空気の壁で爆豪を吹き飛ばす。
突き飛ばされた爆豪は、地面にめり込んだ。
「かっちゃん!! ぐ…!」
ナインの“個性”を直接喰らった緑谷は、苦しそうにその場で蹲っていた。
「クソが…」
「かっちゃん! 相手は“個性”の複数持ちだ。“個性”を奪う…!」
「チッ…オールフォーワンもどきか…なら、尚更ブッ潰さねえとな!!」
緑谷が忠告すると、爆豪は高速飛行で一気に距離を詰める。
するとナインは、次々とビームを放つ。
「一度見せたモンが…」
爆豪は、ビームを避けながら一気に距離を詰め、ナインがバリアを張ると同時に方向転換をしてバリアの死角から爆破を放つ。
「この俺に通用するかァ!!」
爆豪は、ナインの周りに汗の飛沫を飛ばし、全方位からの連続爆破を浴びせた。
全方位にバリアを張って防いでいたナインだが、やがてバリアでの防御が追いつかなくなり、直接爆破を喰らう。
「ぐ…!」
「トドメだァ!!」
ナインが爆破を喰らうと、爆豪はその隙に畳み掛けようとする。
だが次の瞬間、青い竜のような召喚獣が爆豪を突き上げる。
ナインが拳を握ると、召喚獣は爆豪を地面に叩きつけた。
爆豪は、召喚獣に噛まれたまま地面に叩きつけられて肋が折れる。
「よく鳴く犬だ」
ナインがそう言ってそのまま召喚獣で爆豪を噛み殺そうとすると、爆豪は掌をナインに向ける。
「それ…てめぇだ!!」
爆豪は、ナイン目掛けて大爆発を放った。
「クソデク!! 触角!!」
「『デトロイトスマッシュ』!!!」
「『
爆豪が呼びかけると、緑谷とひなたは同時に攻撃を仕掛けようとする。
だが…
「寄るな、しつこい蝿共が!!」
ナインは、ひなたと緑谷に粘られ、爆豪にバリアを攻略されたのがよほど堪えたのか、目を見開いて自身を中心に竜巻と雷、さらには雹まで発生させる。
「「「ぐぁあああぁあああああああああ!!!」」」
三人は、ナインの起こした竜巻によって巻き上げられ、雷で身体を焼かれ、針状の雹で身体を切り裂かれた。
それと同時に、ナインが発生させた災害の影響で島中の電力が落ちる。
三人を倒したナインは、真幌と活真の方を振り向く。
「さて…」
すると、その時だった。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』
突然ナインの背後から叫び声が聞こえ、ナインの“個性”が消える。
ナインが振り向くと、ボロボロになりながらも“個性”を発動しているひなたがいた。
ひなたは最後のエネルギーで音のバリアを作って相殺していたため、ダメージは最小限で済んだのだ。
「僕達が…守らなきゃ……!」
「クレシェンド姉ちゃん!!」
「クレシェンド!!」
ひなたが必死の抵抗でナインを足止めしていると、真幌と活真が叫ぶ。
ひなたがフラフラの状態で捕縛武器を伸ばしナインを拘束すると、緑谷と爆豪もナインの足を掴んだ。
「行かせ…ない…!」
「まだ勝負は…終わって…」
ボロボロになってもナインに喰らいつく二人を見て、真幌と活真が目を見開く。
「デク兄ちゃん…」
「バクゴー…!」
ナインは、緑谷と爆豪を足蹴にして振り解き、そのまま二人を蹴り飛ばす。
だが唯一、ひなただけは拘束を離さなかった。
ひなたは立ったまま気絶しており、意識を失ってもなお拘束を一切緩めなかった。
ナインは、三人の狂気とも呼ぶべき執念に思わず冷や汗をかく。
「本当にヒーローというものは…」
ひなたの拘束を振り解こうとしたナインは、突然苦しみ出してその場に蹲る。
するとその時、どこからかスライスが現れた。
スライスは、ひなたの捕縛武器を髪で切り裂くと、ナインを介抱する。
「ナイン! しっかりしてナイン」
「しょ…少年を…」
「わかったわ」
ナインが命令すると、スライスは髪を刃物に変える。
すると真幌と活真は、怯えながら互いに抱きつきあった。
「大人しくなさい」
そう言ってスライスが攻撃しようとした、その時だった。
「やめろ!!」
「な…!? 今度は何…」
「『動くな』!」
どこからか聴こえた声に反応したスライスが声を漏らすと、スライスの動きが止まる。
するとその隙に障子が真幌と活真を抱えて逃げる。
「安心しろ! 味方だ」
「今のうちに早く逃げろ!」
障子が二人を抱えて逃げると、“個性”でスライスを封じた心操も声をかける。
そして麗日は、緑谷、爆豪、ひなたの三人に触れて“個性”を発動する。
「梅雨ちゃん!」
「ケロ!」
麗日が合図を送ると、蛙吹が舌で三人を巻いた。
心操は、ボロボロにやられたひなたを見てギリッと歯を食い縛る。
「クソ…ひなた…!」
麗日達は、そのまま何処かへと逃げ去っていった。
一方で、ナインをその場で押さえておくよう命令されたスライスは、心操の命令を実行に移そうとする。
「おい…何をしている…!? 起きろ!」
そう言ってフラフラのナインが操られたスライスを叩くと、洗脳が解けたスライスが正気に戻る。
「…!! くっ、やられた…!」
「追え…! あの少年を…何としても…「ナイン、彼らはこの島を出られない。今は身体を癒すべきよ」
何としても活真から“個性”を奪おうとするナインをスライスが止め、スライスは作戦中止の合図の閃光弾を放った。
◇◇◇
そしてその頃海岸では。
スライスの放った閃光弾を見たキメラは、A組との戦いを中止する。
「ここまでか…フン、命拾いしたなガキ共」
そう言ってキメラは、ボロボロになったA組から逃げた。
「逃げた!?」
「見逃してもらったと言った方が正解か…」
キメラが逃げた事に瀬呂が驚き、常闇が冷静に言った。
「クソ!」
「行くな!」
轟がキメラを追いかけようとすると、飯田が轟の肩を掴んで止める。
「罠かもしれない! これだけの人数でも仕留められなかった相手、単独行動は危険だ!」
「だが…!」
「今は島民の安否の確認、それもヒーローの務めだ」
轟が反論しようとすると、飯田が轟を説得した。
飯田が言うと轟は引き下がり、クラスメイトと共に島民の安否を確認した。