抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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これにて劇場版編最終話です。
ではでは。


ヒーローズ:ライジング・4

 轟がキメラを倒した頃、ナインは全身の細胞が死滅して苦しんでいた。

 すると、それを見た緑谷はひなたと爆豪に声をかける。

 

「かっちゃん! 相澤さん! 畳み掛けるぞ!」

 

「うん!」

 

「命令すんな!!」

 

 出久が言うと、ひなたが頷き爆豪が吠える。

 するとナインは背中から器具を生やし、元々背中から生えていたシリンジ内の薬品が体内に流し込まれ空になる。

 

「さ、『細胞活性』さえ手に入れば…」

 

 そう言ってナインが呻いている間も、緑谷達三人はナインの元へ駆けつける。

 

(ここで確実に…!!)

 

 だがナインは、顔にはめていたマスクを外し目を見開いた。

 

「温存など…必要無い!!」

 

 するとそれを見た三人が足を止める。

 

「ぐぁああああぁああああ!!!」

 

 ナインは、苦しそうに声を上げながら天候を操り、豪雷を落とした。

 するとひなた達は、ナインが落とした雷に吹き飛ばされる。

 ナインの落とした雷は、周囲の物を破壊し尽くして目を焼く程の凄まじい閃光を上げる。

 しばらくして雷が止むと、真幌と活真を守っていた尾白、障子、耳郎が城跡から恐る恐る顔を出す。

 

「デク兄ちゃん…」

 

「バクゴー…クレシェンド…」

 

 活真と真幌は、黒煙を上げる地面を見ながら目を見開いてわなわなと震えていた。

 そして、攻撃が直撃した三人の身を案じてか、はたまた一縷の望みに賭けてか、二人は泣きながら三人の名前を叫んだ。

 

「デク兄ちゃん!!」

 

「バクゴー!!」

 

「「クレシェンド」姉ちゃん!!」

 

 すると、単眼鏡で様子を確認していた耳郎が目を見開く。

 

「!!」

 

 耳郎の視線の先には、黒煙の中から現れこちらへと歩を進めるナインがいた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、九州の病院では。

 

「『細胞の活性化』?」

 

 ホークスは、入院中の真幌と活真の父親である島乃に話を聞いていた。

 すると島乃は頷いて話し始める。

 

「ええ…ですが私が活性化できるのはA型細胞だけで…とても人の役に立つような“個性”では…」

 

 島乃が自信なさげに言うと、ホークスがさらに島乃に質問をした。

 

「島乃さん、ご家族は?」

 

「故郷の那歩島に…娘と息子が…」

 

 島乃が答えると、ホークスはナイン達の侵攻ルート上に那歩島がある事を思い出した。

 するとその時ホークスの携帯が鳴った。

 

「失礼」

 

 そう言ってホークスは席を外し、携帯を取った。

 

「何です?」

 

『九州沖を航行中の漁船が救難メッセージを受信した。『那歩島に(ヴィラン)襲来。至急救助を』』

 

 メッセージを受け取ったホークスは、目を見開く。

 そして血相を変えて病院の窓へと走っていった。

 

「それ、“個性”喪失事件の容疑者です!!」

 

『何だと!?』

 

 ホークスは、連絡を取りながら病院の窓から飛び去っていった。

 

「至急救助チームを那歩島に! それと、雄英高校に連絡を!」

 

『雄英!? 何故だ!?』

 

「公安肝入りの、実務的ヒーロー活動推奨プロジェクト! 那歩島を担当しているのは、雄英高校ヒーロー科1年A組です!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、尾白達はというと。

 

「障子、活真くん達を連れて脱出を!」

 

 尾白は、隣にいた障子に指示を出す。

 真幌と活真は、障子の腕の中で泣いていた。

 

「頼んだよ」

 

 耳郎が障子に託すと、障子が頷く。

 

「わかった」

 

 障子は、二人を連れて走り去っていった。

 すると尾白が耳郎に声をかける。

 

「絶対に食い止めるぞ」

 

「うん!」

 

 そしてその頃、ナインは二人を連れて逃げる障子をその目に捉えていた。

 

「見つけた…」

 

 ナインが“個性”を使おうとすると、身体に激痛が走りナインは胸を押さえて苦しがる。

 そしてそのタイミングを狙って耳郎と尾白が飛び出した。

 

「『ハートビートファズ』!!」

 

「『尾空旋舞』!!」

 

 二人はそれぞれの必殺技を繰り出し、ナインが渡ろうとしていた橋を落とした。

 ナインが落ちたのを確認すると、二人はホッとして笑みを浮かべる。

 だがその直後、いきなり召喚獣が現れ尾白を突き上げた。

 

「がっ!!」

 

「尾白…ぐあ!!」

 

 一匹目の召喚獣が尾白を、二匹目の召喚獣が耳郎を突き上げ、二匹はそのまま二人を城の防壁に叩きつけた。

 

「「ぐああ!!」」

 

 二人を叩きつけたナインは、そのまま召喚獣を使って城を登っていく。

 その頃障子は、二人を連れてナインから逃げていた。

 

「脱出経路を…」

 

 だがその時背後からビームが襲い掛かり、障子は咄嗟にビールを腕で払い除けた。

 障子は、自身が盾となって次々と襲ってくるビームから二人を守った。

 障子がふらついた勢いで二人は投げ出され、二人は地面に尻餅をついたまま障子を見上げる。

 障子は、全身ボロボロになりながらも全ての腕を広げて二人を守っていた。

 

「に…逃げろ…走れ…!」

 

 障子は二人に逃げるよう言うが、二人は怯え切ったまま動けなかった。

 するとその時、ナインの左側から爆音攻撃が襲いかかり、ナインはそれをバリアで防いだ。

 

「二人とも逃げて!!」

 

「早く!! 行け!!」

 

 耳郎と尾白は、ナインに攻撃を放って時間稼ぎをしようとした。

 だがナインは、自分を覆うようにバリアを張ると、突風の“個性”で三人を吹き飛ばした。

 三人を倒したナインだったが、“個性”の使い過ぎで苦しんでいた。

 ナインが苦しみながらも活真に歩み寄ると、隣にいた真幌が泣きながらも立ち上がる。

 

「活真逃げて…!」

 

「お、お姉ちゃん…!」

 

「いいから逃げて!!」

 

 真幌はナインの方へ走っていき、両手を広げて叫んだ。

 

「来るな!! あたしの弟に手を出すな!! 来るなって!!」

 

 そう言って弟を守ろうとする真幌だったが、ナインは容赦なく真幌の首を掴んで持ち上げた。

 

「お姉ちゃん!!」

 

 活真が目を見開いて叫んだその時、ナインが胸を押さえて苦しみ出す。

 ナインは、苦しみながらも活真の方へ真幌を向ける。

 

「こ…こいつの命が惜しければ…こちらに来い…!」

 

「ダメ…逃げて…逃げて……!」

 

 真幌が首を締められて苦しみながらも活真を守ろうとすると、活真は大粒の涙を流す。

 

「叶えさせてくれ…私の…願いを……!」

 

「か…つま……!」

 

 ナインが焦点の合わない目を活真に向けながら訴えかけ、真幌が消えそうな声を絞り出す。

 すると活真は、泣きながらナインの方へ走り出した。

 

「いやだあああああ!! 僕が守る!! 僕がお姉ちゃんを守るんだあああ!!!」

 

 活真が拳を振り上げながら走り出すと、ナインは活真の方へ手を伸ばす。

 するとその時だった。

 

「SMAAAAAASH!!!」

 

『YEAHHHHHHHH!!!』

 

 緑谷が全力でナインの元へ駆けつけ、ナインの頬に蹴りを叩き込んだ。

 さらに、ひなたが爆音攻撃をナインに直撃させる。

 すると活真が目を見開き、ナインは数十メートル吹っ飛ばされる。

 

「きゃああああ!!」

 

 ナインが吹っ飛ばされた勢いで真幌も吹っ飛ばされると、爆豪が真幌をキャッチして抱え込んだ。

 

「遅れてごめん!!」

 

「デク兄ちゃん…」

 

「よく頑張ったね、活真くん! すごいよ!」

 

 緑谷が笑顔を浮かべながら言うと、活真は目を見開いて大粒の涙をこぼす。

 

「バクゴー…生きて…」

 

「言っただろうが! 俺はオールマイトをも超えてNo.1ヒーローになる男だってな!」

 

 真幌が驚いていると、爆豪は力強く言った。

 すると真幌が目に涙を溜めて大きく目を見開く。

 

「もう大丈夫だよ! 僕達が来たから!」

 

 ひなたは、捕縛武器を使って地面に降り立つと、ニコッと笑みを浮かべてサムズアップをした。

 雷が落ちる寸前、ひなたが声で雷を相殺していたおかげで、三人とも雷によるダメージは最小限で済んでいた。

 

「真幌ちゃんと逃げて!」

 

「うん!」

 

 緑谷が言うと、活真が頷き真幌の手を引いて逃げる。

 

「お姉ちゃん!」

 

 二人が安全圏に逃げた事を確認すると、三人はナインの方へ飛び出した。

 ひなたの“個性”で一時的に“個性”を消されたナインは、そのまま直撃を喰らった。

 

「くっ……小娘…貴様の“個性”か……!!」

 

「僕の一番嫌いなものが何かわかる? てめェのエゴで小さい子を傷つけるクソ野郎だよ!!」

 

 ひなたの“個性”を喰らって上手く“個性”が出せなくなったナインが睨むと、ひなたは“個性”で髪をざわつかせながら睨み返す。

 

「SMAAAAAAAASH!!!」

 

「死ねえええええ!!!」

 

『AHHHHHHHHHHHHHHH!!!』

 

 三人は、それぞれ今の自分に出来る最大限の必殺技を放った。

 緑谷は『フルカウル』の蹴りを、爆豪は周囲を吹き飛ばす程の大爆破を、ひなたはナインの周囲全体を覆う爆音攻撃を放つ。

 三人の攻撃で吹き飛ばされそうになった真幌と活真は、咄嗟に岩の影に隠れた。

 三人の攻撃が直撃すると、爆豪はニッと笑みを浮かべる。

 だが…

 

 

 

「終われない…終われるはずがない…! この程度で…終わってなるものかああああああ!!!!」

 

 ナインは、その執念と“個性”増幅装置で無理矢理ひなたの“個性”を解き、“個性”を暴走させる。

 するとナインの背中のシリンジが割れ、背中から翼が生えると同時に炎が周囲に広がっていく。

 ナインを中心に黒煙が巻き起こったかと思うと、次の瞬間には黒煙が晴れ、紫色の翼を生やしたナインが現れた。

 ナインは、突風の“個性”で炎を巻き上げ、炎の柱を幾つも形成していく。

 さらにそれを一つに纏め上げ、凄まじい威力の炎の竜巻を放った。

 

「竜巻…!」

 

「チッ、またアレをやる気か…!」

 

「嘘でしょ…!? 僕の攻撃がまるで効いてない…!!」

 

 ナインが起こした炎の竜巻を見た三人は、思わず目を見開く。

 緑谷とひなたの脳裏にあったのは、岩の影に隠れていた真幌と活真、そして島民達と島民達を守る上鳴・砂藤・葉隠の安否だった。

 ナインは、那歩島諸共沈める勢いの大災害を引き起こしていた。

 

(ワンフォーオール…100%!!!)

 

「あんなもん…最大火力で吹っ飛ばす!!」

 

「全部まとめてブッ壊す!!」

 

 緑谷は“個性”を最大限発動させて緑色の火花を散らし、爆豪は爆破を放ちながら駆け抜け、ひなたも『共鳴』を発動した状態で駆け抜けた。

 

「デトロイト…スマアアアアアッシュ!!!」

 

「『榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)』オオオオオ!!!」

 

「『滅葬歌曲(モルテカンタービレ)』!!!」

 

 緑谷はフルパワーのパンチを放ち、爆豪は高速回転しながら大爆破を放ち、ひなたは辺り一帯の“個性”を全て消し飛ばした。

 死力を振り絞ってナインを討とうとする三人を見て、活真と真幌は目を見開く。

 

「デク兄ちゃん…」

 

 だが、三人のフルパワーはナインの圧倒的な力の前にはまるで通用せず、三人共炎の竜巻で巻き上げられた。

 さらに、炎の竜巻で巻き上げられた瓦礫が活真と真幌の方へ振ってくる。

 

「きゃあああああ!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

 するとその時障子が二人を庇い、障子の背中に瓦礫が降り注いだ。

 瓦礫は島民の避難所の方へも降り注ぎ、降ってきた瓦礫を砂藤が押さえていた。

 

「入り口が…!!」

 

「砂藤くん!!」

 

「ここは支える!! 皆を奥へ!!」

 

 上鳴と葉隠が目を見開いて叫ぶと、砂藤が指示を出した。

 そしてその頃、ひなた達三人はナインの竜巻でボロボロにやられて倒れていた。

 

「ひゃ…100%でも…通じない…」

 

「クソが…自分曲げてデクと一緒に戦ってんのに…!」

 

「ガハッ、ゲホッ……声が……」

 

 三人はフラフラの状態で立ち上がり、ひなたに至っては“個性”の使いすぎで喉が裂けて血を吐いていた。

 するとボロボロの三人にナインが歩み寄る。

 

「無駄だ。その程度の力では生きられない。私の作る新世界では」

 

「新…世界…?」

 

 ナインの言葉に緑谷が反応すると、ナインは三人をビームで攻撃した。

 

「力を持つ者、強き者が弱き者を支配するユートピアだ」

 

「そんなもん…」

 

 ナインの発言に爆豪が何かを言おうとすると、ナインは召喚獣で三人を突き上げた。

 

(ヴィラン)もヒーローも関係ない。力の前では全てが平等。それは、真の超人社会のあるべき形だ」

 

 そう言ってナインが三人を持ち上げながら言うと、三人はナインに反論する。

 

「そんな身勝手な思い込みで…!!」

 

「イカレてんじゃねぇ…!!」

 

「そんな事……させない……!!」

 

 三人がナインに反論すると、ナインは召喚獣で三人を噛み殺そうとする。

 

「新世界を拒むか。ならば消え去るがいい」

 

 そう言ってナインが三人を噛み殺そうとした、その時だった。

 

「デク兄ちゃん!!」

 

 突然活真の声が聞こえ、緑谷は目を見開く。

 

「バクゴー!!」

 

「クレシェンド姉ちゃん!!」

 

「「負けないで!!!」」

 

 活真と真幌は、ありったけの声で三人に向かって叫んだ。

 

「そこにいたか」

 

 ナインは、不気味な笑みを浮かべながらゆっくりと二人に歩み寄る。

 するとその時だった。

 

『止まれええええええええ!!!!』

 

「っぐ…!?」

 

 突然ナインに爆音攻撃が降り掛かり、ナインは全身に走る激痛と背中の翼がブレていく感覚に目を見開く。

 爆音がした方を見ると、相澤が“個性”を発動した時のように髪を逆立て目を光らせるひなたがいた。

 ひなたは、“個性”の使いすぎで喉が裂けて声がおかしくなっていたが、それでも二人を守る為にも負けるわけにはいかなかった。

 

「小癪な……!!」

 

 ナインは、ひなたに“個性”を壊されて苦しみながらも、召喚獣でひなたの小さな身体を噛み砕く。

 するとひなたの身体はバキバキと音を立てながら折れ、即死してもおかしくない量の血が噴き出る。

 ナインは、そのまま召喚獣でひなたを地面に叩きつけた。

 血まみれで虫の息となっているひなたを見て、活真と真幌は目を見開く。

 

「相澤…!!」

 

 ひなたが致命傷を負わされたのを見て、緑谷は目を見開き爆豪は小規模な爆破を出しながらひなたの名前を口に出す。

 

「大人しく“個性”を差し出せば生かしてやってもいいと思っていたが…貴様の“個性”にはもう興味が無い。私の作る新世界には要らない力だ」

 

 そう言ってナインは、再び活真の方へ歩み寄ろうとする。

 するとその時、緑谷が爆豪に声をかけた。

 

「かっちゃん…方法がひとつだけ…たったひとつだけある」

 

 そう言って緑谷は、爆豪の方へ手を伸ばした。

 

「か…かっちゃん…!!」

 

「で…デク…!!」

 

 緑谷が手を伸ばすと爆豪も手を伸ばし、二人は手を握り合った。

 するとその瞬間、二人を中心に突風が巻き起こり、ナインの方にも瓦礫が飛んでくる。

 ナインは、一度召喚獣を消し、緑谷と爆豪がいた方向を忌々しそうに睨む。

 

「何だ…!?」

 

 ナインの視線の先には、ゆっくりと立ち上がる二人がいた。

 

「こんな事して…てめェは使えんのかよ…」

 

「わからない…でも…! オールマイトは譲渡した後も、残り火で僕らを守ってくれた」

 

 爆豪が尋ねると、緑谷は拳を握りしめながら答える。

 

「何をした!?」

 

 何が起こったのか分からないナインは、動揺して声を荒げる。

 ナインの視線の先には、“個性”を発動して火花を散らす二人がいた。

 

「「二つの…『ワンフォーオール』!!」」

 

「これで助ける!!」

 

「これで勝つ!!」

 

 二人は髪を逆立て、緑谷は緑色の火花を、爆豪は橙色の火花を散らした。

 

「この死に損ないがああああ!!!」

 

 ナインは、声を荒げながら竜巻で二人を襲う。

 すると爆豪は、緑谷に話しかける。

 

「てめェの夢も、これで最後だな」

 

「いいんだ。これしかない。それにオールマイトなら、君なら大丈夫だって言ってくれる。秘密を共有している君なら、同じ人に憧れ続けた君なら…!」

 

 二人の脳裏に浮かんでいたのは、二人が憧れた最高のヒーロー、オールマイトの姿だった。

 

(どんだけピンチでも、最後は絶対…)

 

「勝つんだよおおおおお!!!」

 

(どんなに困ってる人でも、笑顔で…)

 

「助けるんだあああああ!!!」

 

 二人は、叫びながら全力で拳を振りかぶる。

 するとナインは、天候を操って島を沈める威力の雷を放とうとする。

 

「笑わせるなあああああ!!!」

 

「「デトロイトオオオオオスマアアアアアアアアッッシュ!!!」」

 

 緑谷と爆豪は、同時に拳を振り抜きありったけのパワーを天に向かって放った。

 すると膨大なパワーが黒雲を突き抜けていき、二人が立っている真上の空が晴れ渡った。

 それを見たナインは、目を見開いて叫ぶ。

 

「な、何だ…何だその力ああああ!!?」

 

 ナインが見たのは、それぞれ左腕と右腕をボロボロにしながらも拳を突き上げて立つ爆豪と緑谷の姿だった。

 

「俺の道を…阻むな!!」

 

 ナインは、“個性”の副作用による痣を全身に走らせながら叫ぶ。

 一方緑谷は、腕の激痛に顔を歪めながら爆豪に声をかけた。

 

「かっちゃん、行こう!」

 

「ああ!? 俺に命令すんじゃねえ!!」

 

「阻むなあああああ!!!」

 

 ナインが怒り狂って叫びながら“個性”を放つと、二人は同時に飛び出して『ワンフォーオール』を駆使してナインの放つ“個性”を打ち破っていく。

 爆豪は、『ワンフォーオール』の酷使によって両腕がボロボロになりつつも、爆破の勢いに『ワンフォーオール』を上乗せして放った。

 

「ふざけるなああああああ!!!」

 

 ナインが叫んだその瞬間、ナインの身体に裂けるような激痛が走り、“個性”どころか指一本動かせなくなる。

 

「邪魔してるよ」

 

「な…!?」

 

 突然身体が動かなくなり、ナインは訳が分からず混乱する。

 すると、身体の内側からひなたの声が聞こえる。

 ナインの内側では、ひなたが最後の力を振り絞って響かせた声がナインの“個性”を侵食していた。

 内なる不可避の『共鳴』が、ナインを確実に蝕んでいく。

 

「お前が他の人達から奪った“個性”、返してもらうよ」

 

「やめろぉおおおおおおおおお!!!!」

 

 ひなたがナインの“個性”に触れると、ナインの“個性”がボロボロに壊れ、奪った“個性”が引き剥がされていく。

 ひなたにほとんどの“個性”を壊されたナインは、天候を支配する“個性”を暴走させて緑谷と爆豪目掛けて最大火力の雷を落とそうとする。

 すると二人は、『ワンフォーオール』を使ってナインに渾身の一撃を叩き込む。

 

 

 

(これが僕が放つ…最後の…最後の……!!)

 

「「SMAAAAAAAAAAASH!!!!!」」

 

 二人が同時に『ワンフォーオール』を放つと、海が荒れる程の膨大なエネルギーがナインに降り注ぐ。

 爆豪の放った爆破と緑谷の放った蹴りのエネルギーは、凄まじい光を放ちながら竜巻を起こした。

 すると二人の攻撃を受けてナインの“個性”が消滅し、ナインの支配から解放された空から光が差し込む。

 そしてそれと同時に、緑谷の中に残ったワンフォーオールの残り火が消滅した。

 

 

 

 ───さよなら、ワンフォーオール。ありがとう。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、ホークスはというと。

 

「大丈夫かい? 三人共」

 

 ホークスは、洞窟でスライスと戦闘していた芦戸、心操、常闇の三人に尋ねる。

 救い出された常闇は、ホークスに尋ねる。

 

「ホークス! 何故…」

 

「一足先に救けに来たんだ。俺と、もう一人」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、緑谷はというと。

 ボロボロになった緑谷がゆっくりと目を開けると、オールマイトが緑谷の顔を覗き込んでいた。

 

「お、オール…マイト…」

 

「緑谷少年。来るのが遅くなった」

 

 緑谷が掠れた声で言うと、オールマイトは緑谷を横抱きにしたまま遅れた事を謝った。

 緑谷は、ふとボロボロになった爆豪とひなたの事を思い出す。

 

「か、かっちゃんは…相澤さんは……」

 

 緑谷がオールマイトに尋ねると、オールマイトは呆れたように笑みを浮かべながら答える。

 

「君はいつでも人の心配を先にするな。ボロボロだが大丈夫。命の心配は無い。相澤少女も、危ない状態だったが一命を取り留めた」

 

 爆豪は緑谷の隣に寝かされており、全身を噛み砕かれたひなたは“個性”で咄嗟に自分を回復させていたため一命を取り留めており、携帯型の人工呼吸器を口に当てられていた。

 

「良かった…かっちゃんにすごく無理をさせたから…」

 

「爆豪少年に?」

 

 緑谷が二人の無事を知って安心していると、オールマイトが緑谷に尋ねる。

 緑谷は、目に涙を浮かべながら事情を説明した。

 

「オールマイト…じょ、譲渡したんです…『ワンフォーオール』を…かっちゃんに…」

 

 緑谷が言うと、オールマイトは目を見開く。

 

「!? 『ワンフォーオール』を!?」

 

「二つの『ワンフォーオール』を使わないと、そうしないと島の人達を守れなかった……(ヴィラン)を倒せなかった…だから…後悔してません…でも……ごめんなさい…せっかく後継者に選んでくれたのに…ヒーローになれるって言ってくれたのに…でも僕はどうしても皆を守りたくて……」

 

「緑谷少年…」

 

「ごめんなさい…オールマイト…ごめんなさい…でも…僕は……」

 

 緑谷は、涙を流しながらオールマイトに謝罪した。

 するとオールマイトは、優しく緑谷の身体を抱きしめる。

 

「緑谷少年。私は、君に『ワンフォーオール』を渡した事を微塵も後悔していない。君は正しく使ったのだ。紡がれてきた義勇の心を。その結晶である力を」

 

 オールマイトが緑谷に告げたその時、緑谷の身体に『ワンフォーオール』の光が走る。

 

「!?」

 

 それを見たオールマイトは、目を見開いて驚く。

 

「『ワンフォーオール』が!?」

 

 オールマイトがふと爆豪の方を見ると、爆豪の方の『ワンフォーオール』は完全に消滅していた。

 爆豪が完全に『ワンフォーオール』を受け取る前に気絶したため、『ワンフォーオール』の一時譲渡に成功した。

 否、歴代の『ワンフォーオール』達が二人に奇跡を起こしたのだ。

 

「お師匠…歴代の皆様…ありがとうございます…!」

 

 オールマイトは、二人に力を貸してくれた歴代『ワンフォーオール』達に感謝した。

 一方、他のA組は駆けつけたヒーローや救急隊員によって救助され、(ヴィラン)三人は警察に逮捕された。

 そしてナインはというと、ひなたの“個性”によってオールフォーワンの“個性”因子が完全に消滅し、元々あった天候操作の“個性”も使えなくなっていた。

 寿命が伸びたのと引き換えに“無個性”として余生を過ごす事を余儀なくされ、緑谷と爆豪の放った『ワンフォーオール』によって満足に動けない身体になったナインは、自分の夢が潰えた事に絶望していた。

 するとそこへ死柄木が『ワープ』の“個性”で現れる。

 

「やっぱり生きてた」

 

 死柄木が歩み寄ると、ナインは花畑の上に仰向けに倒れたまま何も映さなくなった瞳を死柄木に向ける。

 

「死柄木弔……」

 

「気分はどうだい? 余生と引き換えに“個性”を失った気分は」

 

 死柄木が尋ねると、“個性”を失った事に完全に絶望したナインは正気が保てなくなり譫言を呟く。

 

「まだだ…これからだ…私の夢は……」

 

「安心しな。あんたの夢は俺が継ぐ」

 

 そう言って死柄木はナインに歩み寄り、ナインの顔面に手を伸ばす。

 

「な…何を……」

 

「おやすみ、ナイン」

 

 そう言って死柄木はナインの顔面を掴み、“個性”を発動してナインを消滅させた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしていおぎ荘の診療所で目を覚ました爆豪はというと。

 

「いってえええええええ!!!」

 

 爆豪は、目を覚ました途端痛みのあまり大声で叫んだ。

 爆豪は、自分のバキバキに折れた両腕を見て驚愕する。

 

「どうなってんだこりゃあ!!?」

 

「チユ〜〜〜〜!!」

 

 爆豪は、嫌々ながらもリカバリーガールの治療を受けた。

 真幌は、リカバリーガールにキスをされている爆豪を見て何故か顔を赤らめていた。

 緑谷も同様の治療を受け、回復傾向にあった。

 爆豪は『ワンフォーオール』の事を全く覚えておらず、『ワンフォーオール』は未だ緑谷の中にあった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、隣の部屋で入院中のひなたはというと。

 

『ひなたあああああああああああ!! お前@◻︎$#★※%◎*▲!!』

 

「ぎゃ」

 

「うるせえぞマイク傷に響く。あと後半何言ってんのかわからん」

 

 ひなたを心配するあまり飛んできた山田は、ひなたを抱きしめながら泣き喚いた。

 あまりにもうるさすぎて傷に響きそうだったので、相澤が山田の襟首を掴む。

 ベッドの隣のテーブルには、ひなたの大好物のコーヒーゼリーが山積みに置かれていた。

 するとその時、心操がひなたの病室に入ってくる。

 

「ひなた…」

 

「ひー君」

 

 心操は、ひなたの病室に入ってくるなりひなたに抱きついた。

 ひなたは、少し顔を赤らめつつも、心操の背中に手を回して抱き返した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして後日。

 

「「お父さ〜〜〜ん!!!」」

 

「真幌!! 活真!!」

 

 真幌と活真は、無事退院して帰郷してきた父親に抱きついた。

 ナインに“個性”を奪われた二人の父親だったが、ひなたがナインをオールフォーワンの“個性”因子の移植手術を受ける前の状態に巻き戻したため、“個性”が復活していた。

 

 今回の事件、島民達を守り切る事はできたがその被害は小さくなかった。

 ヒーロー公安委員会は、即座にプログラムの中止を決定した。

 だがA組は、期日まで島に残り復興作業の手伝いをした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてプログラム終了の日が訪れた。

 A組は、全員島民達には黙って帰りのフェリーに乗り込んでいた。

 

「何も黙って帰る事無くね?」

 

「ねー」

 

 上鳴と芦戸は、不満そうに海を眺めながら言った。

 すると飯田が窘める。

 

「復興の邪魔をするわけにはいかない」

 

「ま、黙って立ち去るのも」

 

「ヒーローぽいか!」

 

 上鳴と切島が言うと、芦戸と八百万が微笑む。

 一方緑谷は、甲板に出ていた爆豪に声をかけていた。

 

「この島ともお別れだね」

 

「せいせいするわ」

 

「こら! そんな事言わないの!」

 

 爆豪が悪態をつくと、ひなたが横から出てきて注意をした。

 爆豪は、名残惜しそうに港を眺める緑谷とひなたに声をかける。

 

「あのガキ共に挨拶せんでいいんかよ」

 

「言ってあげたい事はあったけど、でもいい。きっと伝わってると思うから」

 

「うん!」

 

 緑谷が言うと、ひなたも力強く頷いた。

 するとその時、活真が大声で緑谷を呼ぶ。

 

「おーい!! おーい!! デク兄ちゃーん!!」

 

「バークーゴー!! クレシェンドー!! みんなー!! 島の人達を守ってくれて!!」

 

「「ありがとー!!」」

 

 活真と真幌は、走ってフェリーを追いかけながら大声でA組に礼を言った。

 するとフェリーに乗っていたA組のほとんどが微笑む。

 活真は、大きく見開いた目を輝かせながら緑谷に言った。

 

「デク兄ちゃん!! 僕、強くなるね!! お父さんとお姉ちゃんを守れるくらい、強くなるから!! そして、デク兄ちゃんやバクゴーさん、クレシェンド姉ちゃんみたいな、カッコいいヒーローに絶対なってみせる!!」

 

 活真が言うと、爆豪はニッと笑って言った。

 

「その言葉、忘れんなクソガキ」

 

「活真くーん!! 君は!! 君はヒーローになれる!! 雄英で待ってるー!!」

 

 緑谷は、二人の方へ手を振りながら言った。

 活真は、小さくなっていくフェリーを見送りながら、帽子のつばを両手で握って満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

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