抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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OVA・4 雄英ヒーローズ・バトル
雄英ヒーローズ・バトル


 2学期が終わって冬休みに入っても、ひなた達は全員学校の寮に残り、実家に帰る事はなかった。

 もちろんそれには理由があった。

 

「「はぁ〜〜〜…」」

 

 寮の一階の談話スペースでは、上鳴と峰田がテーブルに突っ伏してどんよりとしていた。

 そんな二人を見兼ねて、飯田が呆れ気味に本から目を離す。

 

「せっかく冬休みになったってのに…外出禁止って何なんだよ」

 

「どこにも遊びに行けねえし…」

 

 峰田と上鳴は、負のオーラを放ちながら文句を漏らす。

 するとソファーに座っていた瀬呂は、トランプを切りながら話しかける。

 

「トランプでもすっかぁ?」

 

「「飽きたァ!!!」」

 

 瀬呂が提案すると、上鳴と峰田が同時にキレる。

 

「何か楽しい事はねえのかよぉ!?」

 

「出かけてえ遊びてえ映画見てえ!」

 

 峰田は不平不満を言い、上鳴に至ってはソファーの上に寝そべってバタバタと子供のように暴れた。

 すると委員長の飯田と副委員長の八百万が、二人を諭す。

 

「君達! 学校側が俺達に寮生活を勧めた理由を忘れたのか?」

 

(ヴィラン)連合に狙われている私達ヒーロー科の生徒を、雄英の防衛システムや先生方のお力で守って下さっているんですのよ?」

 

 飯田と八百万が諭すと、峰田と上鳴が縮こまる。

 

「わ、わかってるって…」

 

「けどさぁ! 実家に帰っていいのが大晦日だけってのはさぁ!」

 

「それこそわかっとらん!」

 

「私達には実家に帰省する際は」

 

「一人一人、先生方が実家まで護衛してくださるんだぞ!」

 

「護衛が足りない分は、プロヒーローに協力を要請したそうですわ!」

 

「何かと忙しくなる年末年始、プロの手を煩わせるんだ!」

 

「帰省させてもらえるだけ」

 

「ありがたいと思いたまえ!!」

 

 飯田と八百万が説教をすると、峰田と上鳴は身を寄せ合って縮こまった。

 そして二人で手を繋ぎ合い、教師陣やプロヒーローに護ってもらえるありがたさを噛み締めた。

 

「ありがとうございます先生ぇ…!」

 

「ありがとう、プロヒーロー…!」

 

「「感謝し賜わりますぅ…!!」」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、ひなた達A組は、寮の一階の談話スペースに集まって雑談をした(昼寝をしている爆豪と、外で雪遊びをしている麗日と葉隠以外)。

 

「まぁ〜、外出禁止も帰省の短縮も、仕方ない事だとは思うけどよ? アレが中止になったのは痛えよなぁ」

 

「あぁ〜、アレね」

 

 切島が話すと、芦戸も賛同する。

 そして芦戸と緑谷の間に座っていたひなたも、テーブルに顎を乗せて毛布にくるまってぬくぬくしながら賛同する。

 

「確かにねぇ。やりたかったよねぇ、アレ。…ん、おいひ」

 

「アレなぁ」

 

 小さめのソファーに座っていた心操がみかんを剥き、ぬくぬくしているひなたに餌付けをする。

 その様子をクラスメイトが微笑ましく見守っていると、青山と砂藤が話に入ってくる。

 

「僕、楽しみにしてたんだよね☆アレ☆」

 

「俺も!」

 

 青山が決めポーズをしながら言うと、砂藤も頷く。

 するとちょうど談話スペースにやってきた轟が話しかける。

 

「何だ、アレって」

 

 轟が砂藤に尋ねたちょうどその時、外で遊んでいた麗日と葉隠が戻ってくる。

 

「あ〜、寒かったぁ」

 

「いやぁ、冷えたねぇ」

 

「おかえり。お茶いる?」

 

「ありがとう!」

 

 コートを脱ぎながら談話スペースに足を踏み入れる二人に心操が話しかけると、葉隠が礼を言い、ちょうどそのタイミングでひなたがズズ…とお茶を啜る。

 そんな中、麗日が何やら皆で何かを楽しそうに話していた空気を察し、クラスメイトに尋ねる。

 

「あれ? 何の話しとるん?」

 

「アレだよアレ」

 

「雄英名物、新年会の事!」

 

 麗日が尋ねると、切島と芦戸が答える。

 すると轟が納得したように口を開く。

 

「あぁ、毎年神社で派手にやってるやつか」

 

「新年の宴…!」

 

「俺、見に行った事あるけど、凄かったぜ!」

 

「私もテレビで観た事ある!」

 

「僕、毎年行ってるよ」

 

「いいなぁ」

 

 常闇が少しワクワクした様子で呟くと、切島と芦戸が上機嫌で話す。

 ひなたも触角をピコピコさせながら話すと、心操がひなたを羨ましがる。

 雄英新年会を毎年楽しめるのは、イレイザーヘッドとプレゼントマイクの娘の特権だ。

 そんな中、雄英新年会を知らないメンバーもいるようだ。

 

「くぅ〜っ、俺見てねえ!」

 

「俺も。ねえ、雄英新年会ってどんな感じなの?」

 

 雄英新年会を観た事がない瀬呂と尾白は、見た事があるメンバーに尋ねる。

 

「緑谷! 解説頼む!」

 

「ん! 頼んだデッくん!」

 

 切島、芦戸、ひなたは、笑顔で緑谷に向かってサムズアップをする。

 

「えっ!? あ…えっと…雄英新年会っていうのは、毎年元旦から3日まで、地元の呉賀神社で行われる、雄英高校主催の新年行事の事で! 先生方が監督してくれているので、“個性”使い放題なイベントが盛り沢山なんだ! 力自慢が無病息災を願いつつバトルする巨大羽つきや!」

 

「思ったより巨大や!」

 

 緑谷が言うと、麗日が驚く。

 

「幸せな一年を願いながら巨大ダルマをハンマーで叩く、巨大ダルマ落とし!」

 

「巨大だぜ!」

 

 さらに緑谷が言うと、切島のテンションが上がる。

 

「強く逞しくなるよう、巨大なコマをぶつけ合う、巨大コマ回しバトル!」

 

「巨大だわ」

 

「もうデカけりゃいいみたいなノリになってないか?」

 

 さらに緑谷が言うと、蛙吹と心操がコメントする。

 

「その他にも、クックヒーロー『ランチラッシュ』がおせちやお餅を振る舞ったり…!」

 

「おせち…」

 

「お餅…!」

 

 緑谷が言うと、ひなたと麗日は頬を緩ませる。

 

「文化祭でミスコンに選ばれた人が巫女姿で登場したり!」

 

「「巫女ぉ!」」

 

 緑谷が言うと、上鳴と峰田のテンションが上がる。

 

「とにかく! 豪華で楽しいイベントが目白押しなんだ!」

 

「って事は…もし新年会があったら、波動先輩の巫女姿を見られたのかぁ…」

 

「お餅……」

 

「おせち…甘酒…お汁粉…お雑煮…」

 

「食べるの好きな、お前」

 

 緑谷が興奮気味に言うと、上鳴は波動の巫女姿を想像して頬を緩め、麗日とひなたは無限に増える餅やおせちを想像して涎を垂らしたりした。

 食べるのが好きで食べ物が無限に増える妄想をしているひなたを見て、心操がさらにみかんを剥いて餌付けする。

 

「ダルマ落としなら俺、結構いいところまでいけるんじゃねえか!?」

 

「よっシュガーマン!」

 

 砂藤が自信満々に言うと、瀬呂が掛け声をした。

 すると葉隠がブンブンと腕を振りながら提案する。

 

「じゃあさ! 私達だけでやんない!? 新年会!」

 

「え〜、雪積もってんじゃん! さみーよ!」

 

「道具も無えし…」

 

 葉隠が提案するが、男子からは不満や反対の声が上がった。

 そんな中、麗日が涎を垂らしてゾンビのような表情で口を開く。

 

「じゃあせめてランチラッシュ呼んでお餅を…」

 

「おせち…おせち……」

 

「必死ね、お茶子ちゃん、ひなたちゃん」

 

 麗日とひなたがどうしても餅やおせちを食べたがっているので、蛙吹がツッコミを入れる。

 A組が新年会をやりたそうにしている中、飯田と八百万がクラスメイトを諭す。

 

「諸君、残念だが新年会は諦めるしかない」

 

「そうですわね…外出できないですし、機材もないのであれば…」

 

「いいや、できるね!」

 

 突然後ろから聞こえた声にA組が振り向くと、麗日と葉隠が作った巨大な雪だるまがピョンピョン飛び跳ねながらリビングに侵入していた。

 そして次の瞬間には、巨大な雪だるまの中から通形の顔が現れる。

 

「皆! メリークリスマス!」

 

「と、通形先輩!? クリスマス終わってますけど…」

 

「寒くないのかしら」

 

「どうやってここまで来たんだろ!」

 

「というかリビングビチャビチャ…」

 

 雪だるま姿の通形に、緑谷、蛙吹、ひなたがツッコミを入れると、麗日が一番まともなツッコミを入れる。

 

「笑えないギャグに身体張りすぎっすよ」

 

「風邪引いても知りませんよ」

 

「ははは、メンゴメンゴ!」

 

 切島が苦笑いを浮かべながら言い、心操が真顔で言うと、通形は笑いながら謝る。

 そして…

 

「ふんっ!!」

 

 全身に力を込めて雪だるまを壊すと、雪の塊が四方八方に飛び散り、中からブーメランパンツ一丁の通形が現れる。

 そして通形が散らした雪の塊は、ひなた以外のA組全員の顔にべちゃっと飛んできた(ひなたは雪が顔に飛んでくる前に声で雪を水滴に変えた)。

 

「いやあ、実はさ! ヒーロー科とサポート科共同で、来年の新年会用の新イベントを作ったんだよね! 新年会は中止になっちゃったけど、せっかくだし、皆でこの新イベントで遊ばないかって、提案をしに来たんだよね!」

 

 通形が提案すると、A組のテンションが一気に上がる。

 

「新年会用の新イベント!?」

 

「面白そう!」

 

「巨大なんですか!?」

 

 上鳴、芦戸、切島は、新イベントに興味津々な様子だった。

 

「はははは! 大きくないよ」

 

「いつの間にタンクトップ着てる…」

 

 いつの間にタンクトップを着ていた通形が笑いながら答えると、心操がツッコミを入れる。

 

「私にもできます!?」

 

「僕もやりたいですそれ!」

 

 麗日が尋ね、ひなたも触角をピコピコさせて腕をブンブン振った。

 

「ルールさえ覚えればね!」

 

「画面切り替わる毎に服が増えてる…」

 

 今度はセーターを着た通形が言うと、心操はまたしてもツッコミを入れた。

 A組の生徒が新イベントに興味津々な中、飯田がクラスを代表して通形に尋ねる。

 

「通形先輩! そのイベントとは!?」

 

「名付けて! 雄英ヒーローズバトル! だね!」

 

 そう言って通形は、カードゲームを自信満々に掲げた。

 そして、近くにあったテーブルに持ってきたカードを広げる。

 

「簡単に説明すると、雄英ヒーロー科の生徒をモデルにしたカードを使って、バトルする遊びなんだよね!」

 

「「「「おおっ!」」」」

 

 通形がカードを広げると、ひなた達A組は歓声を上げる。

 そこにはヒーロー科の生徒のカードが入っていて、もちろんひなたと心操のカードもあった。

 だが、カードに書かれたキャラは何故か全員目が大きかった。

 

「って、目デカくね!?」

 

「GANNRIKI…」

 

「小せえ事気にすんな!」

 

 上鳴とひなたがツッコミを入れると、野暮だと言わんばかりに切島が笑う。

 そんな中、峰田がカードをチェックしながら質問する。

 

「先輩! カードゲームによくある能力解説や数値が書かれてないんですけど。どうやってバトルするんですか?」

 

「大丈夫! その為にサポート科が開発した、バトルボードがあるんだよね!」

 

 そう言って通計は、デスク一台分の面積はありそうなバトルボードをA組に見せた。

 

「このバトルボードがカードに描かれてるキャラの能力を読み取り、立体映像にしてバトルする事ができるんだよね!」

 

 通形がバトルボードに峰田のカードをセットすると、峰田のカードが光り、ボード上にミニサイズの峰田の立体映像が現れる。

 ミニ峰田は、本物の峰田のように頭からもぎもぎをもいで投げた。

 するとひなたと緑谷が驚く。

 

「おおっ、峰田だ!」

 

「すごい! 本格的ですね!」

 

「詳しいルールはバトルボードが教えてくれるから、とりあえずやってみるといいよ!」

 

 そう言って通形は、A組の寮を出て自分の寮へと帰っていった。

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

 通形を見送ったA組は、早速ヒーローズバトルのバトルボードに目を向ける。

 

「せっかく通形先輩が持ってくてくれたんだ!」

 

「皆で遊んでみましょう!」

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

 飯田と八百万が言うと、A組の生徒達は一斉に掛け声を上げた。

 まずは肝心のルールの確認だ。

 

「どうだ? 緑谷くん」

 

「うん…ここに触ればいいみたい」

 

 そう言って緑谷が付属の機械のボタンに触れると、ボタンが光り、立体映像の発目が現れる。

 

『雄英ヒーローズバトルへようこそ!』

 

「サポート科の発目さん!?」

 

「ミニめいめいだ! カァアイイ!」

 

 発目が現れると、緑谷が目を見開き、ひなたがキャイキャイとはしゃぐ。

 

『雄英ヒーローズバトルのルールはとっても簡単! A組生徒のカードとエクストラカードを使うだけ! カードに描かれたキャラの能力は、バトルボードのAIが判断! 攻撃や防御、特殊技など、様々な効果を自動的に繰り出すのです!』

 

 発目が例として飯田のカードを使うと、飯田の立体映像が現れ、体育祭のスタジアムを模したフィールドを自由自在に駆け回る。

 

『エクストラカードは、お助けヒーローが登場します! ただし! 一回使ったら自動的に消えてしまうので、使い所に注意が必要ですよ!』

 

「なるほど…」

 

「頭脳戦ってわけか」

 

 発目がエクストラカードの説明をすると、飯田と心操が納得する。

 

『カードバトルは、対戦者同士にカードを3枚ずつ配ってから開始! そして互いに、カードを出し合い! 体育祭の決勝トーナメントと同じ! 相手を倒すか、場外に追い出すなどして、相手のカードを3枚倒した方の勝利となります!』

 

「体育祭の屈辱をなぜ再現したあああ!!?」

 

「ドンマイ」

 

 発目が勝手に場外して飯田の屈辱的な不戦勝の再現をすると、飯田が憤慨し、ひなたが飯田に同情する。

 

『勝負の鍵は、クラスメイトやエクストラカードの“個性”をしっかりと見極める事! レッツ雄英ヒーローズバトル!』

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「「「「じゃんけんぽい!」」」」

 

 厳正なるジャンケンの結果、雄英ヒーローズバトルを最初にやる事になったのは、緑谷対尾白だ。

 

『雄英ヒーローズバトル! レディィイイゴォ!!』

 

 プレゼントマイクの合図と共に、カードバトルが始まる。

 最初の戦いのフィールドは、森林を模したフィールドだ。

 緑谷は耳郎の、尾白は砂藤のカードをセットした。

 するとフィールドの中にミニ耳郎とミニ砂藤が現れる。

 フィールドの中を走るミニ砂藤を、ミニ耳郎が“個性”で捕捉した。

 

『おーっとイヤホン=ジャックがシュガーマンの接近を捕捉したァ!!』

 

「しまった!」

 

『ハートビートファズ!!!』

 

 ミニ耳郎は、地面にジャックを刺したまま大音量を放ち、ミニ砂藤をぶっ飛ばした。

 ミニ耳郎の頭上には、『WINNER』の字が表示される。

 

『死角から襲われたシュガーマン、良いとこまるでなくやられたぁ!!』

 

「よしっ!」

 

 プレゼントマイクの実況風のアナウンスが流れる中、緑谷がガッツポーズをし、恥ずかしそうに笑う耳郎を上鳴が茶化した。

 一方で、自分のミニキャラを負かされた砂藤は、涙目になっていた。

 

「尾白ォ!!」

 

 砂藤が涙目で仇を取ってくれと言わんばかりに訴えると、尾白が二枚目のカードをセットする。

 

「だったらこれでどうだ!?」

 

 尾白が次に召喚したのは、ミニ上鳴だ。

 

「上鳴くんか…!」

 

「索敵される前に、全方位攻撃で!」

 

『無差別放電…130万ボルト!!』

 

『シビビビビビ!!』

 

 ミニ上鳴は、ミニ耳郎目掛けて放電した。

 電撃に耐え切れなくなったミニ耳郎は、フィールドから消える。

 そして電撃を使いすぎたミニ上鳴も、アホになって使い物にならなくなっていた。

 

『ああっと! 放電を受けてイヤホン=ジャックがやられたァ!! しかーし!! チャージズマもアホになってるぞ!!』

 

「だったら…青山くん!」

 

 緑谷は、今度は青山のカードをセットし、ミニ青山を召喚した。

 

『ネビルレーザー!!』

 

『うェ…?』

 

 ミニ青山は、最大出力のネビルレーザーを放ち、ミニ上鳴をチリも残さず消し飛ばした。

 カードを出した緑谷も、こんなはずではなかったのか、顔を引き攣らせてドン引きしていた。

 

「えっ」

 

『ネビルレーザー最大出力!! アホを場外に追い出すだけでいいのに、容赦ない全力攻撃!!』

 

「緑谷お前…そういう奴だったんだな」

 

「あ、ち、ち、違うんだ! 場外に追い出すつもりだったんだけど、AIが勝手に…! って、お腹痛くなってる!?」

 

 すっかり落ち込んでいる上鳴に緑谷が弁解しようとしている中、ミニ青山は腹痛を起こして動けなくなっていた。

 すると、尾白が召喚したミニ尾白が、そっとミニ青山を場外に追い出す。

 

『紳士的! テイルマンが、あくまで紳士的に勝利したァ!! これでお互いのカードは残り一枚ずつ! 果たして、緑谷の最後のカードは誰だァ!?』

 

「頼むよ…!」

 

 緑谷は、最後のカードを使ってキャラを召喚する。

 すると次の瞬間、フィールド全体が凍てついた。

 

『出たァアア!! 半冷半燃のショートォオオオ!!!』

 

『フゥ…悪かったな。レベルが違いすぎた』

 

 ミニ轟は、ミニ尾白を氷漬けにして完封した。

 

『テイルマン動けない!! 勝者、緑谷出久!』

 

「しゅ、瞬殺かよぉ…」

 

「ごめん、本当ごめん!」

 

 負けて落ち込んでいる尾白に、緑谷が平謝りした。

 そんな中、他のクラスメイトも雄英ズヒーローバトルをやりたがった。

 

「次はオイラにやらせて!」

 

「私も! やってみたいわ!」

 

「じゃあチームでやろっか!」

 

「うんうん!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 他のクラスメイトが雄英ズヒーローバトルをやって大体ルールやAIの判定のいい加減さなどがわかってきたところで、次はひなたと心操が対戦した。

 二人が対戦するフィールドは、入試の時のような市街地だ。

 

「負けないよ、ひー君!」

 

「こっちこそ」

 

『雄英ヒーローズバトル! レディィイイゴォ!!』

 

 ひなたと心操は、カードを同時にセットした。

 

「頼むぞ…チャージズマ!」

 

『無差別放電…130万ボルト!!』

 

 心操が召喚したのは、ミニ上鳴だ。

 ミニ上鳴は、身体からありったけの電撃を放った。

 だが…

 

「だったらこっちは…! エクストラカード! イナズマさん!」

 

 ひなたが召喚したのは、ミニイナズマだ。

 ミニイナズマは、ミニ上鳴とは比べ物にならない威力の青白い電撃を全身から迸らせると、金棒に電撃を蓄積する。

 

『喰らえや…霹靂神!!!』

 

『うェ!?』

 

 ミニイナズマは、金棒を振り抜きながら、雷撃を一気に解き放った。

 すると轟音を立てながら街一帯を消し飛ばす威力の雷が迸り、ミニ上鳴をチリ一つ残さず消し飛ばした。

 

『オーバーキル!!! 完全なる上位互換!!! アホを場外に追いやるばかりか、チリも残さず完全焼却!!!』

 

「ひなちゃん…そりゃあねえだろ…」

 

「ち、違うよ! これはAIが…!」

 

 イナズマに瞬殺された上鳴が落ち込んでいると、ひなたが慌てて弁解する。

 だがその直後、ひなたの召喚したミニイナズマがホログラムと化して消滅する。

 

『しかぁし!! エクストラカードなので勝利しても消滅!! これでお互いのカードは二枚ずつとなったァアア!!!』

 

「先手はくれてやる。行け、ショート!」

 

 心操は、今度はミニ轟を召喚した。

 

「だったら…お願い、クリエティ!」

 

 ひなたが二人目に召還したのは、ミニ八百万だ。

 ミニ八百万は、遠距離から散弾砲やグレネードランチャーなどを創造してミニ轟を狙撃する。

 だがミニ轟は、それらを全て炎熱で薙ぎ払うと、フィールド全体を凍てつかせる氷結を放った。

 

『穿天氷壁!!』

 

 ミニ轟が氷結を放つと、ミニ八百万が立っていたビルが一瞬にして凍てつき、ミニ八百万も氷塊でガチガチに拘束される。

 氷漬けにされたミニ八百万は、ガチガチと寒そうに震えたかと思うと消滅した。

 

『あぁっと! クリエティが氷結を受けてやられたァ!! これで相澤のカードは残り一枚!!』

 

「ひ、ひなたさん…!」

 

「ご、ごめん!」

 

 自分のキャラが負けてショックを受ける八百万に、ひなたが平謝りする。

 一方で峰田は、氷結で拘束を喰らったミニ八百万を見て興奮していた。

 

「いいぞいいぞぉ…! もっとや「黙りなさい」

 

 峰田がヒーローらしからぬ発言をしようとすると、蛙吹が舌で引っ叩いた。

 

「だったら…これでどうだ! 行け、僕!」

 

 ひなたが最後にセットしたのは、自分のカードだ。

 今度はミニひなたが、元々ミニ八百万のいた場所に召喚される。

 

滅葬歌曲(モルテカンタービレ)!!!!』

 

 ミニひなたは、髪を逆立てて両眼を輝かせると、ありったけの大音量でシャウトを放つ。

 すると周囲のビルを覆っていた氷塊が一瞬にして消し飛び、ついでにシャウトを直接喰らったミニ轟がダウンして消滅する。

 

「なっ…!」

 

「やったあ!」

 

 ミニひなたがミニ轟を破ると、心操が僅かに目を見開き、ひなたが無邪気に喜ぶ。

 

『おっとォ!! 最強で可愛いクレシェンド・モルトの渾身の爆音攻撃に、ショート撃沈!! これでお互い残りのカードは一枚ずつ! いいぞ頑張れひなた────!!』

 

「AIがものすごく身内贔屓してる…!」

 

 プレゼントマイクを模したAIがひなた贔屓をすると、緑谷がツッコミを入れる。

 

「というかこれ、冗談抜きで最強カードじゃねえ…?」

 

「もう何のカード出しても勝てねえじゃん!」

 

「心操はこの窮地を如何にして攻略するか…」

 

 男子陣営として心操を応援していた瀬呂、峰田、常闇の三人は、ハラハラした様子で心操を見守る。

 一方で、最強カードのうちの一つである轟のカードを潰した事で調子に乗ったひなたは、ニヤニヤしながら心操を挑発していた。

 

「へっへーん、今のうちに降参したっていいんだよ?」

 

「…いや。だったら俺は、このカードに賭ける」

 

『さぁ果たして心操の最後のカードは誰だァ!?』

 

 心操は、心の中で祈りながら最後の一枚をセットする。

 するとミニ心操がフィールド上に現れる。

 心操が最後に召喚したのは、自分自身だった。

 

『ひなた…もう乱暴はやめてくれないか。お願い』

 

『きゅぅ』

 

 ミニ心操がミニひなたに話しかけると、ミニひなたは大量の鼻血を噴きながらノックアウトした。

 耳や首まで真っ赤にし目をハートにして鼻血と涎を垂れ流し間抜け面を晒したミニひなたは、負け判定と見做されて消滅した。

 

『瞬殺!! クレシェンド・モルト、ヒトシのハニトラで一発KO!! 勝者、心操人使!!』

 

 最後の最後に自分自身を召喚して勝った心操は、安堵のため息を漏らす。

 一方で、納得のいかない負け方をしたひなたは、雄英ヒーローズバトルに対して文句を言っていた。

 

「ちょい!! 何コレぇ!? 鼻血ブーで負けってドユコト!? この判定あり得なくない!? 壊れてんじゃないこのAI!? クソゲーだクソゲー!!」

 

(((いや、割と忠実だと思う)))

 

 勝敗に納得いかないひなたが不平不満を言うが、クラスメイトのほとんどはこの判定を妥当だと思っていた。

 その後もカードゲームで楽しんでいると、爆豪が1階に降りてくる。

 

「ったく、ギャーギャーうっせえなあ。昼寝もできやしねえ…」

 

「あっ、かっちゃん」

 

「てめえら!! うっせえぞ!!!」

 

 ひなたが真っ先に爆豪に気付いた直後、爆豪が怒鳴る。

 すると切島と上鳴が爆豪に気付いて話しかけた。

 

「おっ、爆豪! お前もやるか?」

 

「あ!?」

 

「通形先輩がカードゲームを持ってきてくれたんだよ!」

 

「しかも俺らや先生達が出てくるカードゲーム!」

 

 切島と上鳴が言うと、爆豪は一瞬ポカンとする。

 そしてすぐに、燃えるようなオーラを激らせながらメンチを切ってきた。

 

「1番強えカードはどいつだァ!!?」

 

「やっぱ先生達じゃね? 何たってプロだし…てかやられてんの俺じゃん!?」

 

「ドンマイ!」

 

 いつの間にかミニ相澤にやられているミニ瀬呂を見て、瀬呂が落ち込む。

 そこからは、生徒のカードの中で一番強いのは誰かという論争になった。

 

「先生達のカード以外で強いのは、轟、爆豪、ひなちゃん、それから緑谷だな」

 

「ひなちゃんのカード、今んとこ心操のカード以外の勝率100パーだもんな」

 

「鼻血ブーだけどな」

 

「くっ……!」

 

 切島、上鳴、瀬呂が言うと、ひなたの顔が引き攣る。

 

「轟の勝率も高いけど、緑谷もなかなかのもんだぜ?」

 

「やっぱり超パワーって汎用性高いし、他のカードとの連携が上手いんだ。爆豪のカードは、そこんとこちょっと弱いんだよな」

 

「強いわ!!」

 

「いや、さっき一人で特攻してひなたと緑谷に惨敗してたぞ」

 

「あぁ!!?」

 

 切島と心操の挑発に対して、案の定爆豪が狂犬の若く噛みついてくる。

 

「俺は負けねえ。現実でも、カードバトルでもな」

 

 そう言って爆豪が談話スペースに割り込んでくると、切島、上鳴、心操がコソコソと話す。

 

「やっぱ乗ってきた…!」

 

「こりゃお約束だな」

 

「単細胞「どけ!!」

 

 心操がコソッと言うのを遮るように、爆豪が峰田の頭のもぎもぎを引っ掴みながら開始位置についた。

 

「勝負しろよデク。ギタギタにしてやる!」

 

「か、カードバトルだからね!? わかってるよね、かっちゃん!?」

 

「いいからやっぞ!!」

 

 緑谷はいつものように爆豪を宥めようとするが、爆豪は聞く耳を持たずに勝負を仕掛けてきた。

 

「カードバトルにありがちな駆け引きだ、運の要素なんざ要らねえ。デク。てめぇは自分のカードを出せ。俺は俺のカードを出す! 一枚だけのタイマン勝負だ!」

 

 爆豪は、自分のカードを見せながら言う。

 すると緑谷も、真剣そうな表情を浮かべてカードを出した。

 

「…うん。わかったよ」

 

『レディ…GO!!!!』

 

 試合開始の合図と同時に、フィールド上にミニ爆豪とミニ緑谷が現れる。

 

「いけ、俺!!」

 

「デク、行きます!」

 

「喰らえ…『徹甲弾(A・Pショット)機関銃(オートカノン)』!!!」

 

 先に仕掛けたのはミニ爆豪だ。

 ミニ爆豪は、機関銃のように爆破を連射した。

 

「『エアフォース』!!」

 

 ミニ緑谷は、全身に緑色のオーラを纏い、空気を押し出す事でミニ爆豪の爆破を撃墜した。

 

『懐に入り込む!』

 

『させねえ!!』

 

 そこからは、目に留まらぬ空中戦が繰り広げられた。

 空中で飛び回りながら爆破をするミニ爆豪に対し、ミニ緑谷は緑色のオーラで相殺する事で応戦する。

 

『爆破を…』

 

『相殺する!!』

 

 二人の凄まじい戦いに、クラスメイトは目を奪われていた。

 

「カードバトルとは思えない程の凄さだな…」

 

「ああ。AIも、二人の特徴をよく捉えてる。だから、二人とも懐に飛び込む決め手に欠けてる」

 

「うん。でも、僕が注意した癖が直ってない。このAIが戦わせてるのは、過去の二人だよ」

 

 飯田と轟が言うと、ひなたも戦いをじっくり観察しながら言った。

 緑谷と爆豪も、フィールド上で戦っているアバターが今の自分ではない事はわかっており、思うように動かないアバターに対してもどかしさを抱いていた。

 

(こんなんじゃ…)

 

(こんなもんじゃねえ!!)

 

 二人は、互いに悔しそうな表情を浮かべながら、アバター同士の試合を見届ける。

 だがそこで、試合はタイムアップとなってしまった。

 

『おぉーっと、ドローだァ!! 時間切れによる引き分けとなってしまったァ!!』

 

「納得いかねえ!! さっきのクソデクの攻撃なんざ、リアルならあっさり躱して反撃しとるわ!!」

 

 時間切れによる引き分けという結果に、爆豪がキレる。

 すると緑谷は、珍しくムキになって反論した。

 

「で、でもかっちゃん! それなら僕も、こうやってカウンターに…!」

 

「撃たせる前に距離詰めて爆破だっての!」

 

『引き分けなので、サドンデスの延長戦へと突入だ! 延長戦は、カードの山から一枚ずつ引き、そのカードで相手を倒した方が勝利となるぞ!』

 

 実況AIが言うと、爆豪はカードの山の中から一枚取り出す。

 

「たとえカードゲームでも、俺は誰にも負けたりなんかしねえ!」

 

「…わかったよ。決着をつけよう」

 

 爆豪が宣戦布告すると、緑谷もカードを手に取った。

 

「喰らえ!!」

 

 爆豪がカードをセットすると、アバターがフィールド上に現れる。

 爆豪が引いたのは、オールマイトのカードだ。

 

「爆豪、出しやがった! 超SSレアカード、オールマイトだ!!」

 

「超最強カードじゃん!!」

 

「こんなん緑谷の負けじゃねえか…」

 

 爆豪側に立っているミニオールマイトを見て、クラスメイトは爆豪の勝利を確信する。

 そんな中、麗日とひなたは不安そうに緑谷のカードに目を向けていた。

 

「デクくんのカードは…エクストラカード!」

 

「オールマイトに対抗できる、お助けヒーロー…」

 

「一体誰なんだ…?」

 

 クラスメイトの注目が、緑谷のカードに集まる。

 緑谷の側に現れたのは、一匹の犬だった。

 

『ワン!』

 

「い、犬!?」

 

 ヒーローどころか人ですらないキャラの登場に、緑谷がギョッとする。

 

「可愛いですわ!」

 

「何でこんなカードがあるんだ…」

 

「猫がよかった」

 

「この犬、雄英生なのか」

 

「そういう問題じゃねえだろ」

 

 八百万が犬を可愛がり、飯田が呆れ、心操と轟が的外れなコメントをすると、切島がツッコミを入れる。

 弱そうな犬のカードを見て、爆豪は勝利を確信した。

 

「まあ何にせよ俺の勝ちだ。やっちまえ! オールマイト!!」

 

 爆豪が命令すると、ミニオールマイトは犬に歩み寄る。

 そして、犬の前で片膝をついて話しかけた。

 

『怯えているね。迷子になったのかな? でももう大丈夫。何故って? 私が来た!』

 

 ミニオールマイトは、ニカっと笑みを浮かべると、そのまま犬を抱えて飛び出した。

 

『さ、一緒に飼い主を探しに行こう! とうっ!!』

 

『オールマイトが犬を抱えて立ち去った!! そして、そのまま場外に出てしまったァ!! 引き分けだァ!! またしても引き分けだァ!!』

 

(さすがオールマイト…! 困っている犬だって、絶対に助けてくれるんだ!)

 

 まさかの決着に爆豪が呆れる一方で、緑谷はミニオールマイトのヒーローらしい行動に感動して涙を流していた。

 だが当然爆豪がこの勝負の決着に納得いくはずもなく、掌からボボボボっと爆破を放つ。

 

「ふ、ふ、ふざけんな!!! 何なんだこのクソゲーは!? 舐めてんのかあ゛ぁ!!?」

 

「まずい!!」

 

「死ねぇええええっ!!!」

 

『やめろこのバクダンクソイガグリ!!!』

 

 爆豪が爆破を放とうとすると、ひなたが“個性”で大音量を放つ。

 ハイツアライアンスには、二人の絶叫が響き渡った。

 その後ひなた達は、相澤によってカードゲーム禁止令を出されたのだった。

 

 

 

 

 

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