抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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今回は連日投稿です。
それではどぞ!!


いざ!エンデヴァー事務所!

 大晦日、全寮制の経緯から帰省は難しいと思われたが、プロヒーローの護衛付きで生徒は一日だけ我が家に戻れる事になった。

 ひなたも、相澤と一緒に家に帰って年を越した。

 相澤は『自分だけ休むわけにはいかない』と言い張ったのだが、『年末なんだからひなた君と一緒に過ごすといいさ』と校長がほぼ無理矢理相澤に休みを取らせ、さらに『ひなた君を放っぽって仕事するの禁止』とまで言ってきたのだ。

 

「全くあの人は、人の仕事を無理矢理…全く合理的じゃない…」

 

「まあまあ、ありがたい事じゃない。休みをくれたんだから。僕はお父さんと一緒に年末過ごせて嬉しいよ? ほら、お蕎麦茹で上がったから机片付けて」

 

 相澤がほぼ無理矢理休みを取らせてきた校長の愚痴を言っていると、ひなたが相澤を宥めて年越し蕎麦を運んできた。

 海老天とネギ、かまぼこ、ほうれん草が乗った温かい蕎麦は、ひなたが麺から手作りした手打ち蕎麦だ。

 蕎麦のお供には、だし巻き卵や板わさ、鴨つくねなどが並んだ。

 

「打ちたての蕎麦うめ〜」

 

「出前でいいものを何でわざわざ…」

 

「何言ってるのお父さんっ、年越しは手打ち蕎麦に限るでしょ!」

 

「違いがよく分からん」

 

「え〜っ、作り甲斐ないな〜!」

 

「悪い」

 

 合理主義者の相澤がポツリと呟くと、ひなたが身を乗り出して言った。

 そして食後、風呂に入り部屋着に着替えたひなたが台所でおせち作りをしていると、突然携帯が鳴った。

 確認すると心操からのラインだったため、ひなたは嬉しそうにニンマリと画面を眺めた。

 するとおせち作りを手伝っていた相澤が顔を出してひなたに尋ねる。

 

「心操か」

 

「きゃあああ!!?」

 

 相澤がいきなり話しかけてきたので、ひなたは耳まで真っ赤にして叫ぶ。

 

「ちょっと、勝手に人のスマホ見ないで!?」

 

「俺がいるところでお前が勝手に見たんだろうが」

 

「う……」

 

 自分のスマホの画面を隠しながら怒鳴るひなたに対して相澤が正論で切り捨てると、ひなたは頬を膨らませて押し黙る。

 すると相澤が唐突に尋ねる。

 

「あいつとは上手くやってるのか」

 

 相澤が尋ねると、ひなたは口をモニョモニョさせながら答える。

 

「うん…お父さんに言われた通り、ちゃんと学業と両立してるよ。お部屋デートの時も勉強と“個性”伸ばしの訓練一緒にやってるもん」

 

「そうか。ならいい」

 

 ひなたが答えると、相澤は頭を掻きながら目を細める。

 ひなたは、画面を眺めながら顔を赤くしていた。

 こうしてひなたと相澤は、二人で年末を過ごした。

 

 そして新年、朝。

 相澤が起きると、ひなたは雑煮を椀に盛り付けながら話しかける。

 

「あ、お父さんおはよー」

 

「おはよう」

 

「お雑煮あっためたから一緒に食べよ。あとおせちも」

 

「ああ」

 

 ひなたが声をかけると、相澤は席に座った。

 昆布と鰹節でとった一番出汁で作った雑煮には、こんがり焼けた切り餅、鶏肉、椎茸、かまぼこ、手毬麩、ほうれん草、そして香り付けの三つ葉と柚子が入っていた。

 ちょうどテーブルの真ん中には重箱が置かれていて、そこにはひなたお手製のおせちが入っていた。

 ひなたは、クリスマスパーティーの翌日からおせちを少しずつ作り始めていたのだ。

 一の重には、紅白かまぼこ、栗きんとん、伊達巻き、田作り、黒豆、たたきごぼう、昆布巻き、錦卵、数の子。

 二の重には、鯛の塩焼き、鰤の照り焼き、海老の旨煮、蒸し鮑、棒鱈、松風焼き、ローストビーフ、八幡巻き、合鴨スモーク。

 三の重には、手綱コンニャク、筑前煮(蓮根、ゴボウ、梅花人参、サヤエンドウ、椎茸、コンニャク、タケノコ、鶏肉)、里芋、くわい、百合根の甘煮、生麩、金柑の甘露煮。

 与の重には、紅白なます、菊花かぶ、酢蛸、酢蓮、チョロギ、しめ鯖、酢ナマコ。

 五の重には、苴。

 

「美味いな」

 

「でしょ。人美さんにレシピ教えてもらったからね。しめ鯖うんめ〜」

 

「おい、言葉遣い。彼氏いるんだから少しくらい気をつけろ」

 

「今日くらいいいでしょ!?」

 

 相澤がひなたの言葉遣いを注意すると、ひなたはあたふたと言い訳する。

 その後、二人で一緒に近所の小さな神社に初詣に行き、神前でお参りをした。

 

(雄英の皆と今年も楽しく健康に過ごせますように…っと)

 

 神社でお参りをした後、相澤はひなたに声をかける。

 

「じゃあ、行くか」

 

「うん!」

 

 ひなたは相澤と一緒に雄英へ戻っていった。

 これから相澤は、バスで生徒達を迎えに行くのだ。

 雄英から家が一番近いひなたは、一番乗りに教室に戻っていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその後、ひなた、轟、爆豪、緑谷の4人はというと。

 

「ようこそ、エンデヴァーの元へ」

 

 私服姿のエンデヴァーは、4人に笑顔を向ける。

 だがその直後、いつもの厳格な表情に戻った。

 

「なんて気分ではないな」

 

 エンデヴァーは、納得いかない様子で文句を言い始めた。

 

「焦凍の頼みだから渋々許可したが!! 焦凍とクレシェンドだけで来て欲しかった!」

 

「許可したなら文句言うなよ」

 

「しょっ、焦凍!!」

 

 轟が諫めると、エンデヴァーはショックを受ける。

 すると爆豪が口を開く。

 

「補講の時から思ってたが、キチィな」

 

「かっちゃん、あんた失礼」

 

「焦凍、本当にこの子と仲良しなのか!」

 

 爆豪が言うとひなたが爆豪を注意し、エンデヴァーが爆豪を紹介してきた轟に対して怒鳴る。

 

「まァトップの現場見れンなら何でもいいけどよ」

 

「友人は選べと言った筈だ!」

 

 爆豪が『デク』『ナメプ』『触角』と『トップ』を天秤にかけた結果トップの方に重きを置くと、エンデヴァーが再び怒鳴る。

 すると緑谷がインターンを許可したエンデヴァーに礼を言う。

 

「許可して頂きありがとうございます」

 

「お久しぶりです。快調そうで何よりです」

 

 緑谷が礼を言うと、ひなたもペコリと礼儀正しく頭を下げた。

 エンデヴァーは、相変わらず威圧感が強かったが、ハイエンド事件を経て雰囲気が変わっていた。

 

「学ばせてもらいます!」

 

 緑谷が言うと、エンデヴァーが口を開く。

 

「焦凍は俺じゃない…だったな」

 

「え」

 

 するとその直後、ひなたが触角をピンと立てて目を見開く。

 それとほぼ同時に、エンデヴァーが突然振り向き走り出した。

 

「!?」

 

「申し訳ないが焦凍とクレシェンド以外に構うつもりはない。学びたいなら後ろで見ていろ!!」

 

 すると、4人はコスチュームの鞄を開いてサポートアイテムを装着する。

 

「ああ思い出したあったよこんな事…!」

 

 ひなたは、咄嗟に両手首に捕縛武器を、両足にアコースティックシューズをつけて走り出した。

 

「指示お願いします!」

 

「後ろで!! 見ていろ!!」

 

 その頃、エンデヴァーと4人が向かっている方角ではガラス球に乗った老人が“個性”を悪用していた。

 

「私は宇宙からの啓示を得た。逃げよ、逃げよ、国民達よ。冥王の口角が弧を描いておる! 終焉の時は近い━━━!!」

 

 老人は、ガラス球を操り市民を襲い始めた。

 その様子を、ホークスがビルの上で眺めていた。

 

「あーらら…タイミング悪…」

 

 一方、ひなた達4人は、全速力でエンデヴァーを追いかけていた。

 

「『後ろで見ていろ』って」

 

「ついて行かなきゃ見れない」

 

「うん!」

 

 ひなたは、捕縛武器とアコースティックシューズを使って高速移動をする。

 エンデヴァーは、炎でコートを燃やしコスチューム姿になると炎を纏って上空へと飛び出した。

 そしてその頃、騒ぎの中心部では。

 

「凶星達が結託しておる! 彼らを阻止せねばならぬ!!」

 

「アレ二丁目の『星のしもべ』じゃん」

 

「朝っぱらからうるせ…」

 

 ビル内の会社員達は、『星のしもべ』と呼ばれる老人に呆れ返っていた。

 すると次の瞬間、窓ガラスが星のしもべの元へ引き寄せられる。

 

「この地は闇に覆われようとしている!!」

 

「硝子が吸われてる! マジかあのジジイ!」

 

「……ヒーロー待ってらんねェな」

 

 会社員達は、“個性”を使って自分の身を守ろうとした。

 

「逃げよ国民!! 私は闇の元凶を討ち滅ぼす者なり」

 

 星のしもべは、集めたガラスを巨大な球体へと変えていく。

 

「『光明墜王』いざ、炙り出さん! 冥王の使いよ、出でよ!!」

 

 星のしもべは、そう言って巨大な球体を投げる。

 すると、正面から炎が飛んできて球体を穿つ。

 

「『赫灼熱拳』!!」

 

 

 

 BWAM!! 

 

 

 

 猛スピードで球体へと突っ込んだエンデヴァーは、内側から炎で球体を破壊した。

 

「硝子操作か、ご老人。素晴らしい練度だが…理解し難いな。俺の管轄でやる事じゃない」

 

「エンデヴァー!!! あっちち…」

 

「熱い熱い早よ逃げよ」

 

 エンデヴァーの攻撃によって周囲まで熱が及ぶと、会社員達は一斉に逃げ出した。

 間近で熱攻撃を喰らった星のしもべは、熱でダメージを負う。

 

「おおおお喉が焼ける!!」

 

 星のしもべは、急に方向転換をし路地裏へと逃げていった。

 するとエンデヴァーも星のしもべを追って路地裏へと駆け出していく。

 そこへ、他のヒーローも駆けつける。

 

「エンデヴァー!!」

 

「避難を頼む!」

 

 全速力で星のしもべを追うエンデヴァーだったが、何を思ったのか星のしもべが突然叫び出した。

 

「今じゃやれェ!!」

 

 すると、死角から三人の男が飛び出してくる。

 

「「「イエスマスター!!!」」」

 

 その直後、緑谷、爆豪、ひなたの三人がそれぞれ男達の前に現れ、エンデヴァーは星のしもべを捕獲した。

 ひなたが声で男の“個性”を消そうとした、その時だった。

 

 

 

「あれ!? ああ、インターンか!!」

 

「!」

 

 ひなたが息を吸っていたその瞬間には、男が吹き飛ばされていた。

 いつの間にか、三人の背後にはホークスがいた。

 

「ごめん、俺の方がちょっと速かった」

 

「「ホークス!?」」

 

「エンデヴァーさんがピンチかと思って」

 

「この俺がピンチに見えたか」

 

 するとそこへ、轟も駆けつけてくる。

 ホークスは、轟の前に降り立って声をかける。

 

「見えたよねぇ、焦凍くん」

 

「え…あ…はぁ…」

 

 轟が戸惑っていると、エンデヴァーがホークスを睨む。

 

「来る時は連絡を寄越せ」

 

「いやマジフラッと寄っただけなんで」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、星のしもべとその部下達は警察に逮捕された。

 

「星のしもべに命令されただけだ!!」

 

「離せ! 離さんか手遅れになるぞ」

 

「後はこっちで」

 

「助かる」

 

 すると、星のしもべが突然妄言を吐き始める。

 

「其奴こそが元凶じゃ!! 奴の放つ光が!! 闇を!! 終焉を招くのじゃ〜〜〜!!」

 

 警察は、星のしもべを捕らえたエンデヴァーに礼を言った。

 

「また被害者ゼロで済んだ。君が目を光らせてるうちはこの街も安泰だよ」

 

 一方、緑谷とひなたはホークスに挨拶をしていた。

 

「緑谷と言います!」

 

「超パワーの子」

 

 緑谷が自己紹介をすると、ひなたもNo.2ヒーローのホークスの前なので若干緊張気味に自己紹介した。

 

「相澤ひなたです! ヒーロー名は『クレシェンド・モルト』といいます! ご指名いただきありがとうございました」

 

(ひゃーやっべ生ホークスだテレビで見るよりイケメンだぁサイン頼んだらくれるかな)

 

 ひなたは、人気ヒーローのホークスを前に心の中ではしゃいでいた。

 ひなたが自己紹介をすると、ホークスはひなたにも神対応をする。

 

「イレイザーんとこの娘! 体育祭惜しかったねー。何かテレビで見た時より可愛くなった?」

 

「そ、そうですか!? ありがとうございます!」

 

(可愛いって言われた…可愛いって言われた…!)

 

 ホークスが笑顔を浮かべながらひなたを褒めると、ひなたは触角を立てて喜ぶ。

 するとホークスは、常闇の話をした。

 

「ツクヨミくんから聞いてる。いやー、俺も一緒に仕事したかったんだけどね━━」

 

「常闇くんは…!? ホークス事務所続行では…」

 

「うん、僕もそう聞いてるけど」

 

「地元でサイドキックと仕事してもらってる。俺が立て込んじゃってて……悪いかなァって…思ってるよ」

 

 ホークスが爆豪の方を見ると、爆豪はホークスを睨み返す。

 

「さっきのぁ俺の方が速かった」

 

「それはどーかな!」

 

「かっちゃん…!」

 

 爆豪がホークスに喧嘩を売ると、ホークスは笑って返してみせた。

 ひなたは、No.2ヒーローにも遠慮せず張り合っていくスタイルの爆豪に少しヒヤヒヤしていた。

 すると、エンデヴァーがホークスに尋ねる。

 

「で!? 何用だホークス!」

 

「用って程でもないんですけど…」

 

 そう言ってホークスは『異能解放戦線』というタイトルの本を取り出した。

 

「エンデヴァーさんこの本読みました?」

 

「異能解放戦線…」

 

「?」

 

 エンデヴァーが首を傾げていると、ホークスはいきなり本の宣伝を始めた。

 

「いやね! 知ってます? 最近エラい勢いで伸びてるんスよ。昔の手記ですが、今を予見してるんです。『限られた者にのみ自由を与えればその皺寄せは与えられなかった者に行く』とかね。時間無ければ俺マーカー引いといたんでそこだけでも! デストロが目指したのは究極アレですよ。自己責任で完結する社会! 時代に合ってる!」

 

「何を言ってる…」

 

「そうなればエンデヴァーさん、俺達も暇になるでしょ!」

 

 ホークスは、真顔で本をエンデヴァーに渡した。

 エンデヴァーは、ホークスの表情に違和感を抱く。

 

「読んどいて下さいね」

 

 二人のやり取りを見ていた緑谷は、真剣に考え込む。

 

「No.2が推す本…! 僕も読んでみよう。あの速さの秘訣が隠されてるかも…」

 

「そんな君の為に持ってきました」

 

「用意が凄い! どこから!!」

 

「そうそう時代はNo.2ですよ! 速さっつーなら時代の先を読む力がつくと思うぜ!」

 

 ホークスは、目に留まらぬ速さでひなた達4人にも本を配った。

 すると轟が天然発言をする。

 

「この本が好きなんですね…こんなに持ってるなんて「布教用だと思うよ」

 

「あー、僕もやった事あるわ…」

 

 轟が天然発言をすると緑谷が指摘し、ひなたが頷く。

 ひなたは自分の好きな本を布教用に買って竜崎に勧めた事があったので、その事を思い出していた。

 

「そゆ事緑谷くん、ひなたちゃん。全国の知り合いやヒーロー達に勧めてんスよ。これからは少なくとも解放思想が下地になってくと思うんで。マーカー部分だけでも目通した方がいいですよ。“2番目”のオススメなんですから。5人とも、インターン頑張って下さいね」

 

 そう言って、ホークスは飛び去っていった。

 4人は、去っていくホークスの背中を見て呟く。

 

「若いのに見えてるものが全然違うんだなあ…まだ22だよ」

 

「6歳しか変わんねえのか」

 

「可愛いって言われた…可愛いって言われた…ぐふふ、ふふふ…!」

 

「ムカつくな……」

 

 緑谷と轟はホークスの凄さに感心し、ひなたは褒めて貰った余韻を噛み締めていた。

 爆豪は、終始ホークスに対して苛ついていた。

 エンデヴァーは、ホークスに渡された本を読んで頷く。

 

「ああ…そうだな」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 星のしもべを逮捕し終わった後は、早速エンデヴァー事務所でインターンをする事となった。

 ひなた達がエンデヴァー事務所に行くと、サイドキック達が出迎えてきた。

 

「ようこそエンデヴァー事務所へ!」

 

「「「俺ら炎のサイドキッカーズ!」」」

 

「爆豪くんと焦凍くんは初めてのインターンって事でいいね!? 今日から早速我々と同じように働いてもらうわけだけど!! 見ての通りここ大手!! サイドキックは30人以上!! つまァりあんたらの活躍する場は!! なァアい!!」

 

「面白ェ、プロのお株を奪えって事か」

 

「そゆこと! ショートくんも!! 息子さんだからって忖度はしないから!! せいぜい食らいついてきな!!」

 

 サイドキック達は、4人の顔を覗き込むと熱苦しく絡んできた。

 サイドキック達は、見事なチームワークで仕事を捌いていた。

 

「活気に満ち溢れてる…!」

 

「懐かしいなァこのテンション」

 

 緑谷はサイドキック達の活気に驚き、ひなたも職場体験の時の事を思い出していた。

 

「No. 1事務所だからね。基本的にはパトロールと待機で回してます! エマージェンシーや警護依頼、イベントオファーなど一日100件以上の依頼を我々は捌いてる!」

 

 サイドキックが言うと、爆豪が右拳を左の掌に打ち付ける。

 

「そんじゃあ早く仕事に取り掛かりましょうや。あのヘラ鳥に手柄ブン奪られてイラついてんだ」

 

「ヘラ鳥ってホークス!?」

 

「かっちゃんあーた相変わらず酷いねぇ!」

 

 爆豪が言うと、緑谷とひなたがツッコミを入れる。

 するとサイドキックが爆豪を宥めながら言った。

 

「威勢は認める。エンデヴァーの指示を待ってな!」

 

「100件以上捌くんだろ何してんだよ」

 

「かっちゃんもうやめてヤバい」

 

「かっちゃんステイ!」

 

「ハッハッハッハ、いい加減にしろよお前!」

 

 爆豪がサイドキック達を睨むと、緑谷とひなたが注意をしサイドキック達が笑いつつも窘める。

 その頃、エンデヴァーは自室でホークスに渡された本に目を通していた。

 エンデヴァーは、ホークスの発言と表情に違和感を抱いていた。

 するとふと『マーカー部分』と『2番目』という単語が結びつく。

 マーカー部分の二文字目が繋がっており、ホークスはエンデヴァーに暗号を残していたのだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、ホークスは超常解放戦線のアジトに戻っていた。

 

「とりあえず解放思想の浸透を頑張ってます!」

 

 ホークスが報告すると、ジュースを飲んでいたトゥワイスが誉める。

 

「おいホークスお前すげー頑張るな! 良い奴だな!! 悪人だろ! 俺の部下にしてえよ!」

 

「公安は未だに『連合は少数で潜伏してる』って思ってます! 解放軍の存在に気付いてない。泥花市事件の連合関与について捜査中ですが、戦士達が上手くやってます。あとは例の悠長な後進教育が始まってますねー」

 

 ホークスが言うと、幹部達はタブレットでエンデヴァーとひなた達4人の様子を確認した。

 

「ああ、エンデヴァーの元に4人いたな」

 

「出久くんとひなたちゃんです!!」

 

「101号あいつエンデのとこいたんだな」

 

「マジで!? 奇遇だな」

 

 荼毘は、ホークスに仕事を奪られる4人の様子を見て鼻で笑う。

 

「あまり成長してねぇみてぇだな」

 

「ま━━━言っても学生ですからね━━」

 

「ご苦労! 下がりたまえホークス君」

 

 リ・デストロが言うと、ホークスは敬礼をして会議室から出て行く。

 だが、ドアに剛翼を挟んで会議を盗聴していた。

 

『予定通りで宜しいでしょうかスピナー』

 

『ああ、戦士達の士気を維持しておけ』

 

『弔くんが『力』を手に入れたらいよいよやっちゃうんですね。全部、BOMB! 壊す。by弔くんです』

 

 その頃、死柄木はというと氏子の元で改造手術を受けていた。

 氏子が死柄木に与えようとしていた力は、ワンフォーオールさえも掌の上となる力だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、サイドキック達はひなた達に仕事の説明をしていた。

 

「まーしかし、ショートくんとクレシェンドちゃんだけ所望してたわけだし、多分2人は私達と行動って感じね!」

 

 サイドキックの一人バーニンが言うと、爆豪がブチ切れる。

 

「No.1の仕事を直接見れるっつーから来たんだが!」

 

「見れるよ、落ち着いてかっちゃん!」

 

「うちのかっちゃんがすみません」

 

「でも思ってたのと違うよな。俺から言ってみる」

 

 爆豪が文句を言うと緑谷が爆豪を落ち着かせ、ひなたがサイドキッカーズにペコペコと頭を下げながら爆豪の無礼を謝り、轟がエンデヴァーに進言しようとする。

 するとその時、ドアが開きエンデヴァーが自室から出てくる。

 

「ショート、クレシェンド、デク、バクゴー。4人は俺が見る。俺がお前達を育ててやる。だがその前に、貴様ら2人の事を教えろ。知らん。今貴様らが抱えている“課題”、出来るようになりたい事を言え」

 

 エンデヴァーが尋ねると、緑谷が答える。

 

「力をコントロールして、最大のパフォーマンスで動けるようにしたいです」

 

「超パワー…だったな」

 

「はい! でも最近になって副次的な力が発現して…あ、その副次的な力っていうのは、鞭状のエネルギーを出す力と、自分を浮かす力と、危険を感知する力なんですけど、今は鞭と浮遊を使った立体的な機動とキックを中心にした戦闘スタイルを中心にしてます。でも新しく使えるようになった危機感知の力、これがまだ完全には使いこなせていない状態です。この力は危険を感知すると頭の中で警鐘が鳴るというものなんですが、自分でオンオフの切り替えができず、発動中はひどい頭痛がするんです。それで最近、反動を抑えつつ回避率の向上や不意打ちへの対策、予測の補強に使う訓練をしているんですが、そうすると今度は別の力のコントロールが鈍ってしまい…」

 

「何て!?」

 

「長くて何言ってんのかわかんない!」

 

「自分の分析か」

 

「ああああウゼー!」

 

 緑谷の自己分析を聞いたひなたとバーニンがツッコミを入れ、轟と爆豪もコメントする。

 だが、エンデヴァーは緑谷の自己分析を聞いて自分で要約をしていた。

 

「つまり…活動中常に力の並行処理ができるようになりたいと」

 

「わかったんかいNo.1は伊達じゃない!」

 

「流石エンデヴァー…!」

 

 エンデヴァーが緑谷の言いたい事を要約してみせると、バーニンがツッコミを入れひなたも感心していた。

 

「難儀な“個性”を抱えたな。君も、こちら側の人間だったか…」

 

 エンデヴァーは、緑谷のやりたい事を聞くと次は爆豪に尋ねる。

 

「次、貴様は?」

 

「逆に何が出来ねーのか、俺は知りに来た」

 

 爆豪が言うと、バーニンはドッと笑い出す。

 

「ナマ言ってらー!!」

 

「うるせーなさっきからてめー何でいンだよ」

 

「私今待機」

 

「本心だ、クソが。『爆破』は、やりてェと思った事何でもできる! 一つしか持ってなくても一番強くなれる。それにただ強ェだけじゃ強ェ奴にはなれねーって事も知った。No.1を超える為に、足りねーもん見つけにきた」

 

「いいだろう。クレシェンド、君は“個性”の弱点の克服だったな」

 

 エンデヴァーは、今度はひなたに尋ねる。

 するとひなたは、拳を軽く握りながら答えた。

 

「はい。僕の“個性”は仕様上どうしてもコンマ数秒出遅れてしまうのと、消耗しやすいのであまり無駄撃ちができなくて…接近戦や持久戦だとどうしても限界があるんです。その弱点を克服したくてここに来ました」

 

「『いずれはオールマイトをも越えていく』、だったな」

 

「!」

 

「……いい目だ。では早速…」

 

 エンデヴァーが事務所を出ようとすると、轟が声をかける。

 

「俺もいいか」

 

「ショートは赫灼の習得だろう!!」

 

「ガキの頃お前に叩き込まれた“個性”の使い方を、右側で実践してきた。振り返ってみればしょうもねェ…お前への嫌がらせで頭がいっぱいだった。雄英に入って、こいつらと…皆と過ごして競う中で…目が覚めた。エンデヴァー、結局俺はお前の思い通りに動いてる。けど覚えとけ。俺が憧れたのは…お母さんと2人で観たテレビの中のあの人だ。俺はヒーローのヒヨっ子として、ヒーローに足る人間になる為に俺の意志でここに来た。俺がお前を利用しに来たんだ。都合良くてわりィなNo.1。友達の前でああいう親子面はやめてくれ」

 

「ああ。ヒーローとしてお前達を見る」

 

 エンデヴァーが事務所を出ると、4人はエンデヴァーについていく。

 

「救助、避難、そして撃退。ヒーローに求められる基本三項。通常“救助”か“撃退”、どちらかに基本方針を定め事務所を構える。俺はどちらでもなく、三項全てを熟す方針だ。管轄の街を知り尽くし、僅かな異音も逃さず、誰よりも早く現場へ駆けつけ、被害が拡大せぬよう市民がいれば熱で遠ざける。基礎中の基礎だ。並列思考、迅速に動く。それを常態化させる。何を積み重ねるかだ。雄英で『努力』を、そしてここでは『経験』を。山の如く積み上げろ。貴様ら4人の“課題”は経験で克服できる。この冬の間に一回でも、俺より速く(ヴィラン)を退治してみせろ」

 

 そう言ってエンデヴァーが走っていくと、4人も走り出した。

 ひなたは、早速“個性”を使い、バイクで爆走する(ヴィラン)を見つけ出した。

 ひなたは、(ヴィラン)を見つけるなり息を大きく吸い、声の弾丸を放った。

 

『わ゛!!』

 

 ひなたは、エコーロケーションで炙り出した(ヴィラン)目掛けて叫んだ。

 するとバイクの運転手の身体がピリッと痺れ、バイクが横転する。

 

「どわぁああああ!!?」

 

 ひなたは、バイクが制御を失って横転したのを確認すると、捕縛武器を伸ばして捕縛しようとする。

 だがひなたが捕縛武器を伸ばすより早く、エンデヴァーが(ヴィラン)の確保に動いた。

 

「あいたァ!!」

 

 エンデヴァーは猛スピードで(ヴィラン)に接近し、瞬く間に捕らえた。

 するとエンデヴァーのサイドキックも出てくる。

 

「当て逃げ犯確保」

 

「一足遅かったな」

 

(速い…! そっか、通信機でサイドキックと連携してるのか…!)

 

 エンデヴァーのサイドキックが出てくると、ひなたは思わず目を見開く。

 エンデヴァーに先に(ヴィラン)を捕獲されてしまった4人は、悔しがったりエンデヴァーの速さに驚いたりしていた。

 

「クソが…!!」

 

「速すぎる…さすがNo.1だ…!」

 

「ああ…!」

 

 ひなたも、声には出さなかったものの他の三人同様エンデヴァーのスピードに驚いていた。

 するとサイドキッカーズがひなた達に声をかける。

 

「ここは任せて! あの人が焦凍くん以外にモノ教えようとするなんてレアだから!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「そうか…! 火炎放射で逃走経路を絞りながら…!」

 

 ひなた達は、一斉に走り出しエンデヴァーの後に続いた。

 するとエンデヴァーが4人に言った。

 

「先の九州ではホークスに役割分担してもらったが…本来ヒーローとは一人で何でも出来る存在でなければならないのだ。ちなみにさっきのガラス(ヴィラン)の手下も俺は気付いていたからな?」

 

「小っせェな」

 

「人の事言えない気が…」

 

「何か言ったか!?」

 

「いや、何も」

 

 エンデヴァーの発言に対して爆豪が突っかかるとひなたがボソッと呟き、爆豪がひなたの方を振り向きながら捲し立てるとひなたはとぼけてみせた。

 ひなたが足からの衝撃波の噴射でエンデヴァーの横を走っていると、エンデヴァーが声をかける。

 

「クレシェンド。さっきのは貴様の方が早かった。索敵しながら俺について来るとは、大したもんじゃないか」

 

「いえ、確保したのはエンデヴァーさんの方が早かったんでノーカンですよ。あのやり方だと(ヴィラン)は退治できても救助活動に応用できないですし、何より波長がゴチャついてる相手だと読むのに気を取られて出遅れちゃうんで」

 

「それもそうだな」

 

「…………」

 

 エンデヴァーがひなたを褒めると、ひなたが謙遜しつつ、自分の反省点をエンデヴァーに話した。

 するとエンデヴァーは開き直ってひなたの謙遜を肯定してきたので、ひなたは若干ムスッとして頬を膨らませる。

 ひなたの反省点は、(ヴィラン)退治には強くても救助活動の時は(ヴィラン)退治の時のようにいかない事、普通の(ヴィラン)になら先手必勝が通用してもイレギュラーな相手に対してはどうしても出遅れてしまう事だった。

 ひなたがエンデヴァーの反応に若干イラつきつつも反省点を見直していると、エンデヴァーが声をかける。

 

「貴様の課題は今自分で言った通りだ。力の制御と状況の先読み、この二つを無意識でもできるようにしろ。そうすれば多少は先程言った課題を克服出来るはずだ」

 

「っはい!」

 

 エンデヴァーが言うと、ひなたはシューズのギアを上げてエンデヴァーを追いかけた。

 さらにエンデヴァーは、自分のちょうど後ろを高速飛行している爆豪に声をかけた。

 

「バクゴー」

 

「ンだよ」

 

「何が出来ないかを知りたいと言ったな。確かに良い移動速度、申し分ない。ルーキーとしてはな。しかし今まさに俺を追い越す事が出来ないと知ったワケだ」

 

「冬は準備が「間に合わなくても同じ言い訳をするのか? ここは授業の場ではない。間に合わなければ落ちるのは成績じゃない。人の命だ」

 

 そう言ってエンデヴァーは、通行人を轢きそうになっていたトラックを片手で止めた。

 あと一歩のところで先を越されたひなたは、悔しそうにギリッと歯を食いしばる。

 

「ショート、バクゴー。とりあえず貴様ら2人には同じ課題を与えよう」

 

 エンデヴァーが言うと、爆豪は露骨に嫌そうな顔を浮かべて文句を言う。

 

「何で毎度こいつとセットなんだよ…」

 

「それが赫灼の習得に繋がるんだな?」

 

「溜めて放つ。力の凝縮だ。最大出力を瞬時に引き出す事。力を点で放出する事。まずはどちらか一つを、無意識で行えるようになるまで反復しろ」

 

 エンデヴァーは、炎を推進力に飛び上がりながら二人にアドバイスをした。

 

「かっちゃん! 『徹甲弾(A・P・ショット)』と同じ要領だ!」

 

「何で要領知ってんだてめー本当に距離を取れ」

 

「君ら本当に水と油だね」

 

「笑うなクソ触角!!」

 

 緑谷が爆豪に話しかけると、爆豪は全身に鳥肌を立てて遠ざかる。

 それをひなたが苦笑いを浮かべながら見ていると、爆豪がひなたに怒鳴った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、4人はビルの上で軽食を食べながらエンデヴァーのアドバイスを聞いた。

 

「ショートはどちらも途上。まずは点での放出だ。氷の形状をコントロールできていたな。あのイメージを炎で実践してみろ。デク。貴様は引き続き力の反動を抑える訓練をしろ。危険が迫る度に頭痛がするようじゃ話にならん。当分はうまく使いこなそうなどと考えなくていい。まずは負担なく動ける戦闘スタイルを確立させろ」

 

「でも…並列に考えるんじゃ…」

 

「そもそも誰しもが日常的に並列に物事を処理している。無意識下でな。あくびしながら車の運転をしているあの男。奴も初めから運転できたわけじゃない。ハンドル操作、アクセル・ブレーキ、前方・後方の確認、一つ一つ段階を踏みそれらを無意識で行えるように教習されている。まずは無意識下で二つの事をやれるように。それが終わればまた増やしていく。どれ程強く激しい力であろうと、礎となるのは地道な積み重ねだ。例外はいる。しかしそうでない者は積み重ねるしかない。少なくとも俺はこのやり方しか知らん。同じ反復でも、学校と現場では経験値が全く違ったものになる。学校で培ったものを、現No.1ヒーロー事務所で身体に馴染ませろ。なに、安心して失敗しろ。貴様ら4人如きの成否、このエンデヴァーの仕事に何ら影響する事はない!」

 

 エンデヴァーが言うと、ひなたはグッと拳を握り締める。

 こうして、エンデヴァーのもとでの一週間のインターンが始まった。

 

 

 

 

 




そういや最近プリ小説を読んでみたら相澤先生の妹が主人公の夢小説があって、一瞬「ひーちゃんと名前一緒やんけ!?」となったって事がありました。
でもよく見たら『あなた』っていう名前の子でした。
ハイ、それだけです。
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