抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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9が入ってる!!
感謝感激雨霰
面白いと思っていただけましたらお気に入り、高評価(9・10あたり)、感想等よろしくお願いします。


オールマイト

 ひなた、心操、常闇の三人が暴風・大雨ゾーンで(ヴィラン)を全滅させた頃、USJの正面ゲート付近では。

 

「くっ…!!」

 

 13号とクラスメイトに託された飯田は、全速力でゲートに向かって走っていた。

 すると、黒い霧状の(ヴィラン)が身体を霧に変えて飯田を行かせまいと追いかける。

 

「ちょこざいな…! 外には出させない!」

 

 だがその時、麗日が(ヴィラン)に向かって走っていく。

 

「麗日どうしたの!!」

 

「皆!! アレ!!」

 

 背中を損傷した13号を介抱していた芦戸が尋ねると、麗日は黒い靄を指差す。

 よく見ると、靄の中には(ヴィラン)が身につけていたネックアーマーのようなものが浮いていた。

 

「ええい!!」

 

「生意気だぞメガネ…! 消えろ!!」

 

 飯田がゲートに向かって駆け抜けていくと、(ヴィラン)が飯田の目の前に現れてワープゲートを開こうとする。

 すると(ヴィラン)は、いきなり上へと引っ張られる。

 麗日が(ヴィラン)のネックアーマーを掴んで妨害していたのだ。

 

「理屈は知らへんけど、こんなん着とるなら実体があるって事じゃないかな…!!!」

 

 そう言って麗日は(ヴィラン)のネックアーマーに対して“個性”を発動して上へと放り投げる。

 

「行けええ!!! 飯田くーん!!!」

 

 麗日が(ヴィラン)を投げると、(ヴィラン)は『無重力(ゼログラビティ)』によって身体の制御を失って宙に浮く。

 すると瀬呂が(ヴィラン)のネックアーマーにテープを貼り付けて引っ張る。

 

「行けええ!!」

 

 麗日と瀬呂が(ヴィラン)を足止めしている間に、飯田は自動ドアをこじ開けて外へと飛び出す。

 すると瀬呂に投げられた(ヴィラン)は、空中でポツリと呟く。

 

「………応援を呼ばれる…………ゲームオーバーだ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 同時刻、セントラル広場では。

 

「〜〜っ!!!!!」

 

 脳無が相澤を組み伏せ右腕を握り潰す。

 すると相澤は、声にならない悲鳴を上げた。

 

「“個性”を消せる、素敵だけどなんて事は無いね。圧倒的な力の前ではつまりただの“無個性”だもの」

 

 手で顔を覆った(ヴィラン)は、相澤を見下ろして不敵に笑う。

 相澤が残った左腕を動かそうとすると、脳無が相澤の左腕を小枝を折るように叩き潰す。

 

「ぐぁ…!!」

 

 相澤は“個性“を発動しているが、脳無の力はまるで弱まる気配がなかった。

 つまり、オールマイト並みの怪力は素の力だという事だ。

 脳無は、相澤の頭を掴んでそのまま地面に叩きつける。

 水難ゾーンに飛ばされて(ヴィラン)を倒した蛙吹、緑谷、峰田の3人は水中に身を潜めてそれを見ている事しか出来なかった。

 

「緑谷ダメだ…流石に考え改めただろ…?」

 

「ケロ…」

 

 峰田が涙目になりながら両手で口を塞ぎ息を殺してガタガタ震え、蛙吹が不安そうに相澤の方を見る。

 緑谷も、絶望の表情を浮かべて相澤を見ていた。

 するとそこへ、黒い霧状の(ヴィラン)が現れる。

 

「死柄木弔」

 

「黒霧、13号はやったのか」

 

 黒霧という(ヴィラン)が現れ手で顔を覆った死柄木という(ヴィラン)に声をかけると、死柄木は黒霧に尋ねる。

 

「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして……一名逃げられました」

 

 黒霧が答えると、死柄木は不機嫌そうに首を掻き毟る。

 

「…………は? は━━…はあ━━━、黒霧、お前…お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 そう言って死柄木は、首を掻き毟るのをやめて黒霧の方へ歩いていく。

 その様子を峰田はキョトンとした様子で見ていた。

 

「……? 帰る…? 帰るっつったのか今??」

 

「そう聞こえたわ」

 

「やっ、やったあ! 助かるんだオイラ達!」

 

「ええ、でも…」

 

 峰田の問いかけに対して蛙吹が答えると、峰田は涙を流してどさくさに紛れて蛙吹の胸を触りながら大喜びする。

 すると蛙吹は峰田を水に沈めながら緑谷に話しかける。

 

「気味が悪いわ緑谷ちゃん」

 

「うん…これだけの事をしといて…あっさり引き下がるなんて…」

 

 緑谷が死柄木達の方を見て何がしたいのか分からず気味悪がっていると、何を思ったのか死柄木が緑谷達の方を振り向く。

 

「けどもその前に、平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」

 

 そう言って死柄木が蛙吹の方へ手を伸ばそうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「お……お父、さん……?」

 

 

 

 ザリ、と靴が地面と擦れる音と弱々しい少女の声が聞こえ、死柄木は蛙吹に伸ばそうとした手を止めて振り向く。

 するとそこには、完全に血の気が引いた顔で相澤を見ていたひなたがいた。

 無我夢中で全力疾走したせいか息が途切れ途切れになっており、目の前の絶望的な状況のせいか足がガクガク震えていた。

 

「う、そ……でしょ…………なんで……」

 

 ひなたは、両腕を折られ血塗れになった相澤を見てその場で両膝をつきポロポロと大粒の涙を溢れさせる。

 ひなたには、その目で見てもなお目の前の惨状を受け入れられずにいた。

 研究施設の地下の暗い独房に閉じ込められ一度も日の光を見る事もないまま処分されて終わるのかと毎日怯えていた自分を、優しく抱き上げ救い出してくれた手。

 忌々しい実験の記憶に苛まれ心身共にボロボロになり笑う事さえ知らなかった自分の背中をさすって支えてくれた手。

 出来心で悪戯をした時は不機嫌そうな顔で頭を小突き、頑張りを見せた時は珍しく微笑みながら頭を撫でてくれた手。

 嫌な事があって泣き疲れて眠った時に優しく毛布をかけてくれた手。

 その手は、脳無によってボロボロに砕かれていた。

 

「っ……くる、な……ひなた……!」

 

 相澤は、ひなたの“個性”では(ヴィラン)三人を倒すのは無理だと判断しひなたに離れるよう言った。

 だが、父親を傷つけられたショックで放心しているひなたの耳には届かなかった。

 すると死柄木は、何を思ったのかひなたの方へと方向転換する。

 

「……ははっ、マジかよ。『先生』の言ってた通りだ。まさかイレイザーヘッドに子供がいたなんてさぁ…………」

 

「やめ……ろ……」

 

 ケタケタと笑う死柄木に対して相澤が“個性”を使ってひなたへの攻撃を阻止しようとするが、脳無に頭を掴まれて地面へ顔を叩きつけられる。

 

「っ……!!」

 

「安心しろよイレイザーヘッド。あいつは生け捕りにしろって言われてる。嫌がるようなら腕の一本は吹き飛ばしちまうかもしれないけどなぁ!」

 

 そう言って死柄木は、放心しているひなたの方へと突進し右手を伸ばす。

 

「相澤さ……!」

 

 緑谷が目を見開いて動こうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

『う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!』

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 突然耳を劈く悲鳴が響き渡り、空気がビリビリと振動する。

 

「くっ……!?」

 

 身の危険を察した死柄木は反射的に後ろへ跳び、黒霧もワープゲートを開こうとするが、ワープゲートになりかけの靄が音波で破壊され黒霧本人も霧散していく。

 そして脳無も、“個性”由来の器官を内側から破壊され身体が爆発していく。

 “個性”を麻痺させられた死柄木は、不機嫌そうにボリボリ首を掻く。

 

「痛っ……クソ、チートがぁ……! 親が視線で『消す』“個性”なら、娘は声で『壊す』“個性”ってとこか……はあ━━あ、クソ、ホントに“個性”出なくなってやがる……!」

 

「申し訳ございません死柄木弔、まさか私のワープゲートも破壊されるとは……どうやら“個性”の範疇である以上、時空系の“個性”も破壊できるようです。一緒に小娘の『声』を喰らっている生徒達の“個性”が壊れていないのを見る限り、正確に『破壊』を操れる“個性”といったところでしょうか……」

 

「はああああ……黒霧、お前粉々にするよ…………って、俺も今”個性”出ないんだった……ああーあ……気分が悪い……せっかくオールマイトを殺す為の準備をしてここまで来たってのにさ……こんなのないよなぁ……!!」

 

 黒霧は冷静に状況を分析するが、死柄木は“個性”が使えなくなった事に相当腹を立てていたのか首をボリボリ掻き毟る。

 いつ、どうやったら解けるのかも分からない不気味な“個性”にかかっているのだから苛立つのも無理はなかった。

 だが死柄木は、突然何かを思いついたかのようにピタリと首を掻く手を止めて呟く。

 

「…………やれ、脳無」

 

 死柄木が呟くと、脳無はスイッチが入ったかのようにひなたの方へ突進する。

 脳無の巨大な手がひなたの方へ伸びると、ひなたは目を見開く。

 

(……ずっと、人を傷つける事しかできない“個性”だと思ってた。こんな“個性”でヒーローになんてなれるわけがないって思ってた。それでもお父さんは、こんな“個性”でもヒーローになれると言ってくれた。クラスの皆は、こんな僕を拒絶しないでいてくれた。僕は、この力を人を救ける為に使いたい。この力は……お父さんを、デッくんを、梅雨ちゃんを……峰田を、皆を守る為の力だ!!)

 

 

 

 ひなたは、捕縛武器を脳無の方に飛ばして再び叫ぶ。

 

『わ゛!!!』

 

 ひなたが叫ぶと身体を麻痺させられた脳無はよろけ、その隙にひなたは捕縛武器を引っ張り顔面に蹴りを喰らわせる。

 そしてその間に緑谷達に叫ぶ。

 

「逃げて3人共!! 僕が時間を稼ぐから、相澤先生を連れて出口へ!! 早く!!」

 

 そう言ってひなたは、身体が麻痺して思うように動けない脳無に捕縛武器を巻き付ける。

 

「ケロ……でもひなたちゃんは……」

 

「僕は大丈夫! お父さんが教えてくれたんだ、『やればできる』って!! だから信じて!!」

 

 蛙吹が不安そうな目を向けると、ひなたはニコッと笑みを浮かべて3人の方を振り向きサムズアップをする。

 すると緑谷は、覚悟を決めて水から上がり二人に指示を出す。

 

「……っ、行くよあす……梅雨ちゃん! 峰田くん!」

 

「ケロ……無理はしないでねひなたちゃん」

 

「お、オイラは逃げられれば何でもいいよォ!」

 

 一人だけ逃げ腰だったが、何も出来ずにただ水の中に隠れて見ているのは違うと判断し相澤を抱えて撤退を始めた。

 ひなたは、緑谷達が攻撃範囲から脱出したのを確認すると、脳無と交戦する。

 脳無が攻撃を放ってくると、ひなたは驚異的な反射神経と身体能力で脳無の攻撃をいなし、側頭部を蹴った。

 すると脳無は脳震盪を起こしてよろけ、ひなたはその隙に脳無の急所に休みなく重い一撃を加え続けた。

 

「やああああああっ!!」

 

「グボァ!!」

 

 頭、目、顎、首、鳩尾、金的──。

 ひなたは脳無の攻撃を受け流しつつ、“無個性”状態の脳無の急所に容赦なく打撃を与え続けた。

 さらには両腿に装備したスローイングナイフを肩や膝に投げつけ、的確に関節に決して浅くはない傷を与えた。

 それを見ていた死柄木は、焦りを露わにしていた。

 

「チッ……! オールマイトを殺す為の怪物だぞ!? 何であんなガキ一人に押されてんだよ……!」

 

「『あの方』の言葉は本当だったようですね。『雄英高校の1年A組には脳無をも超える怪物がいる』と……」

 

 ひなたに“個性”を壊された死柄木と黒霧は、加勢する事も退く事もできず、脳無とひなたの戦いを見ている事しかできなかった。

 脳無に畳み掛けてダウンまであと一撃のところまで追い込んだひなたは、脳無にトドメの一撃を喰らわせようとする。

 

(見ててお父さん、僕だってヒーローに……!!)

 

 だがその時、脳無はギョロリとひなたの方に目を向け、ブチブチと音を立てながら捕縛武器を引きちぎった。

 

「あ」

 

 ひなたが目を見開いて小さく声を漏らした、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 バァン!!! 

 

 

 

 

「……かはっ」

 

 脳無は、虫でも叩き潰すかのようにひなたの小さな身体に張り手を喰らわせた。

 張り手を喰らい吹っ飛ばされたひなたは暴風・大雨エリアの外壁へと叩きつけられ、外壁はボゴッと音を立てて放射状に割れる。

 ひなたは目を見開いてガフッと血を吐き、頭からドロっと血を流してそのまま意識を失い、崩れた外壁に埋もれる。

 

「相澤さん!!!」

 

 緑谷は、脳無に重傷を負わされたひなたに向かって叫ぶ。

 

「オールマイト用の脳無相手にここまで粘るとはね……“個性”を壊す“個性”、確かに素晴らしいけど素の力が強い相手だと大した事ないね。別に俺達が弱くなったからってお前が強くなったわけじゃないだろ?」

 

 そう言って死柄木は瓦礫に埋もれて気絶したひなたを見下して笑う。

 だが、それと同時にひなたが気絶したにもかかわらず『“無個性”化』が解けていない事に気がつき、ボリボリと首を掻き毟る。

 

「……あれ? …………あ━━━……失敗した。てっきりかけた本人が気絶すれば解けるものだと思ってたけど……クソ、面倒くせぇ事になったな」

 

 死柄木は、発動型の“個性”の殆どがそうであるようにひなたの“個性”もかけた本人が気絶か絶命すれば解除されると思っていたため、ひなたを脳無に殺させて無理矢理解除しようとしたのだ。

 しかし実際には、ひなたの“個性”はひなた本人ですら自在に解除する事が出来ず、たとえひなたが気絶したり死んだりしても解除される事はないという敵からしてみれば厄介極まりない“個性”だった。

 

「……ああ━━……イラつくなぁ…………あークソ、気に食わないが仕方ない。黒霧、お前もうワープ使えない感じか?」

 

「いえ……少しずつですが、“個性”が元に戻りつつあります。おそらく完全に戻るまであと2、3分……といったところでしょうか」

 

「なるほどね、チートな“個性”だけど無敵じゃない。時間制限があるようだ。距離の問題か、それとも有効時間が長い奴と短い奴がいるのか……」

 

 黒霧が身体の形を変えながら報告すると、死柄木は首を掻きながらひなたの“個性”を考察する。

 ひなたの“個性”の効果には個人差があり、同じように“個性”を喰らっても再び“個性”が使えるようになるまでの時間が長い者と短い者とがいるのだ。

 黒霧は、“個性”の問題なのか体質の問題なのか、常人より“個性”の回復が早かった。

 

「……よし、予定変更だ。さっさとこのガキ連れて帰ろう」

 

「よろしいのですか?」

 

「どのみちこいつを連れて帰ってこいって言われてんだ。オールマイトは来ないし、このままじゃ応援が来ちまう。早くしろ」

 

「……かしこまりました」

 

 死柄木が命じると、黒霧は次第に形を変えていく。

 

「やめろ!!!」

 

 緑谷が叫んで黒霧を止める為飛び出し拳を振りかぶった、その時だった。

 

 

 

 バァン

 

 その時、大きな音とともに出口の扉が吹っ飛んだ。

 

「もう大丈夫」

 

 出口付近にいた生徒達は、“彼”が来た事で安堵し涙を流す者もいた。

 そこには、その場にいた誰もが登場を待ち望んだ平和の象徴が立っていた。

 だがオールマイトは笑っておらず、怒りに満ちた表情を浮かべていた。

 

「私が来た」

 

「あ━━━━…コンティニューだ」

 

「嫌な予感がしてね…校長の話を振り切ってやってきたよ。来る途中で飯田少年とすれ違って…何が起きているかあらましを聞いた」

 

(全く、己に腹が立つ…!! 子供らがどれだけ怖かったか…! 後輩らがどれだけ頑張ったか…!! まだ若い少女がどれだけ命を賭して戦った事か…!! しかし……!! だからこそ胸を張って言わねばならんのだ!!)

 

 オールマイトは、生徒や後輩達を危険な目に遭わせ、ひなたに一人で戦わせた挙句重傷を負わせてしまった自分を不甲斐なく思いつつも決め台詞を言いながら登場した。

 

「もう大丈夫。私が来た!」

 

「「「「オールマイトォォ!!!!!」」」」

 

 待ちに待った平和の象徴の登場に、生徒達は叫んだ。

 

「待ったよヒーロー、社会のゴミめ」

 

 待っていたのはこちらも同じと、死柄木は不敵に笑った。

 オールマイトは、下へと駆け降りると一瞬で下っ端達を蹴散らし死柄木を殴る。

 そして、瓦礫の中に埋もれて気を失っているひなたに駆け寄って抱き上げる。

 

「すまない……相澤少女……! もう大丈夫、だから生きてくれ!!」

 

 オールマイトは、死柄木達を睨みつけると一瞬でひなたを安全な場所へ運んだ。

 

「皆、入口へ! 相澤くんとひなた少女を頼んだ!!」

 

「え!? え!? あれ…!? 速え…!!」

 

 一瞬でオールマイトが目の前に現れたので、峰田は驚いていた。

 すると、オールマイトに殴られた死柄木が立ち上がる。

 

「ああああ…ダメだ…ごめんなさい…! お父さん…救けるついでに殴られた…ははは、国家公認の暴力だ。流石に速いや、目で追えない。けれど思った程じゃない。やはり本当だったのかな…? 弱ってるって話………」

 

 オールマイトが死柄木達を倒しに行こうとすると、緑谷が止める。

 

「オールマイト、ダメです!! あの脳みそ(ヴィラン)、相澤さんが“個性”を壊して戦ったけどまるで歯が立たなかった!!」

 

「緑谷少年、大丈夫!」

 

 オールマイトは、ピースサインをして笑ってみせた。

 するとそのまま腕をクロスさせたまま駆け抜けていった。

 

「CAROLINA…」

 

「脳無」

 

「SMASH!!!」

 

 オールマイトが技を放とうとすると、脳無が死柄木の盾になる。

 オールマイトの必殺技は脳無に防がれた。

『ショック吸収』が弱体化させられた分流石に少し効いていたが、それでも耐久力が並外れているらしく倒れなかった。

 

「ムッ!!」

 

 脳無はオールマイトを両手で掴みにかかるが、オールマイトは身体を逸らして避ける。

 

「流石に効いたか…けど弱いな!!」

 

 オールマイトは脳無にボディーブローを叩き込むが、これも僅かにしか効いていなかった。

 

「あーあ…『ショック吸収』が完全に機能してればなぁ。けど脳無はお前並みのパワーとタフさを持ってる。お前の100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ。いくらガキに痛手を負わされたとはいえ、お前でもキツいだろうよ」

 

「わざわざサンキュー、互角というわけか。そういう事ならやりやすい!!」

 

 そう言ってオールマイトは、脳無に重い一撃を喰らわせようとする。

 だが脳無は、オールマイトの脇腹を掴んで指先で抉る。

 

「ぬっ…おおおおお!!」

 

 オールマイトは、脳無に身体を掴まれつつも拳を放とうとする。

 だが、そうはさせまいと動く者がいた。

 

「させませんよ。自分の拳で頭を砕くといい」

 

 ひなたの“個性”が完全に解けた黒霧は、オールマイトの正面と背後にワープゲートを出現させようとする。

 するとその時だった。

 

 

 

 BOOOM!!! 

 

 

 

「どっけ邪魔だ!! モブ共!!」

 

 突然現れた爆豪が、黒霧を爆破しそのまま組み伏せる。

 そして脳無は身体を凍らされ、拘束が緩んだ隙にオールマイトが脳無を殴る。

 

「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」

 

 そこには、地面を凍らせながら歩く轟がいた。

 そして、爆豪と一緒に登場した切島は残った死柄木に攻撃を仕掛けた。

 

「!」

 

「だあー!!」

 

 だが、あっさり死柄木に躱される。

 死柄木に躱された切島は、悔しそうに唸る。

 

「クッソ!!! いいとこねー!」

 

「スカしてんじゃねえぞモヤモブが!!」

 

「平和の象徴はてめぇら如きに殺れねぇよ」

 

「かっちゃん…! 皆…!!」

 

 三人の登場に、緑谷は目を見開いて驚いていた。

 一方、黒霧の動きを封じた爆豪は、自信満々に黒霧の“個性”のタネをバラした。

 

「このウッカリヤローめ! やっぱ思った通りだ! モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られてる! そのモヤゲートで実体部分を覆ってたんだろ!? そうだろ!? 全身モヤの物理無効人生なら、『危ない』っつー発想は出ねぇもんなぁ!!!」

 

「ぬぅっ…」

 

「っと動くな!! 怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐ爆破する!!」

 

「ヒーローらしからぬ言動…」

 

 爆豪が黒霧を脅すと、切島は呆れた目を向ける。

 死柄木は、黒霧を攻略した爆豪達に賞賛の言葉をかける。

 

「攻略された上にさっきのガキ以外は全員ほぼ無傷…すごいなぁ最近の子供は…恥ずかしくなってくるぜ(ヴィラン)連合…! 脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入り口の奪還だ」

 

 すると脳無は、身体が割れたまま立ち上がった。

 どうやらひなたの『共鳴』が解けかかっているらしく、少しずつではあったが身体が再生していた。

 

「身体が割れてるのに…動いてる…!?」

 

「皆下がれ!! 何だ、ショック吸収の“個性”じゃないのか!?」

 

「やっとガキのデバフが切れたか…これは『超再生』だ」

 

 オールマイトが身体を再生させていく脳無に驚いてると、脳無にかかっていたひなたの“個性”が解けたのを確認した死柄木が口を開く。

 脳無は、割れた右半身を再生させると猛スピードで距離を詰め強烈な右ストレートを放った。

 風圧で木々が揺れ、緑谷は脳無の攻撃の射程範囲内にいた爆豪に向かって叫ぶ。

 

「かっちゃん!!!」

 

 だが爆豪は、いつの間にか緑谷の隣にいた。

 

「かっちゃん!!? よっ避けたの!? すごい…!」

 

「違えよ黙れカス」

 

 何故か助かっていた爆豪は、目を見開いていた。

 脳無によって吹き飛ばされた先には、ボロボロになったオールマイトがいた。

 

「ゴホッ、ゲホ……………加減を知らんのか…」

 

 爆豪が無事だったのは、オールマイトが咄嗟に爆豪を投げ飛ばしていたからだった。

 すると死柄木は、何を思ったのか急に饒舌になる。

 

「仲間を救ける為さ、仕方ないだろ? さっきだってホラそこの…あ━━━━━…地味な奴。あいつが俺に思いっきり殴りかかろうとしたぜ? それにイレイザーヘッドの娘とかいうガキ、あいつに痛手を負わされた。他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ? ヒーロー? 俺はな、オールマイト! 怒ってるんだ! 同じ暴力がヒーローと(ヴィラン)でカテゴライズされ、善し悪しが決まる。この世の中に!! 何が平和の象徴!! 所詮抑圧の為の暴力装置だお前は! 暴力は暴力しか生まないのだと、お前を殺す事で世に知らしめるのさ!」

 

「滅茶苦茶だな。そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ」

 

「バレるの早…」

 

 ペラペラと語り出す死柄木にオールマイトが指摘すると、死柄木はニタニタと笑った。

 

「3対5だ」

 

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!! 敵は相澤さんの“個性”で弱体化させられてる!」

 

「とんでもねぇ奴等だが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ…撃退できる!!」

 

 轟と緑谷が言い切島も気合を入れたが、オールマイトが止めた。

 

「ダメだ!!! 逃げなさい!」

 

 すると、轟が些か不満そうに言った。

 

「………さっきのは俺がサポートに入らなけりゃヤバかったでしょう」

 

「オールマイト、血……それに時間だってないはずじゃ…」

 

 轟が指摘し、緑谷がオールマイトを心配する。

 

「それはそれだ轟少年!! ありがとな!! しかし大丈夫!! プロの本気を見ていなさい!!」

 

 そう言ってオールマイトはニカッと笑うと拳を握りしめた。

 だが死柄木は、オールマイトをせせら笑うように言った。

 

「無駄だね。『超再生』は元に戻った。『ショック吸収』もじきに回復する」

 

「そうだな! だったらその前に限界を超えて叩き込むまで!! 私対策!? 私の100%を耐えるなら!! さらに上からねじ伏せよう!! ヒーローとは常にピンチをブチ壊していくもの! (ヴィラン)よ、こんな言葉を知ってるか!!? Plus Ultra!!」

 

 

 

 

 

 ドカァ…ン!!!!! 

 

 

 

 

 オールマイトは、血を吐きながらも脳無に渾身のボディーブローを叩き込みUSJの天井を突き破って空の彼方へと吹っ飛ばした。

 

「チートが…!!」

 

 死柄木は、オールマイトを睨みながらブツブツと恨み言を言った。

 ひなたには弱体化させられ、弱っていると聞いていたオールマイトがたった一撃で脳無を倒してしまい、窮地に追い込まれた事で冷静さを保てなくなっていた。

 

「衰えた? 嘘だろ…完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を…チートがぁ…! 全っ然弱ってないじゃないか!! あいつ…俺に嘘教えたのか!?」

 

「死柄木弔、ここは一旦退きましょう。脳無は回収不能、あなたも小娘に“個性”を消されて戦えない。その間に増援が来てしまえば勝ち目はありません」

 

「………チッ…」

 

 苛立って首を掻き毟る死柄木を黒霧が宥めると、死柄木は不機嫌そうにしながらもここで勝つ算段は無いと判断し退く事にした。

 死柄木が黒霧のワープゲートに入ろうとした、その時だった。

 

 

 

 ビッ

 

「!!!!」

 

 突然、銃弾が死柄木に掠る。

 

「来たか!!」

 

 

 

「ごめんよ皆。遅くなったね。すぐ動ける者を掻き集めて来た」

 

「1ーAクラス委員長飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 

 入り口には、教師陣を大勢引き連れた飯田が立っていた。

 それを見た死柄木は、些か落胆した様子だった。

 

「あーあ、来ちゃったな…ゲームオーバーだ。帰って出直すか。黒霧…」

 

 死柄木がワープゲートに入ろうとした瞬間、スナイプが死柄木を狙撃し大量の銃弾の雨が降り注ぐ。

 それでも何とかワープゲートに片脚を突っ込むと、その瞬間にボロボロになった13号がワープゲートごと二人を吸い込もうとする。

 

「今回は失敗だったけど………今度は殺すぞ。平和の象徴オールマイト」

 

 死柄木がオールマイトをギロリと睨みつけた直後、ワープゲートが閉じ二人は姿を消した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして教師陣が到着した直後、生徒達から事のあらましを聞いたプレゼントマイクは、A組の生徒達に応急処置を施され頭に包帯を巻いて眠っているひなたを見ると血相を変えてひなたに駆け寄る。

 傷ついた娘を壊れ物でも扱うかのように慎重に横抱きにすると、頭から血を流しすぎて血の気が引いて白くなった顔にそっと触れながら呼びかける。

 

『おい! ひなた! ひなた!! しっかりしろ!!』

 

 するとその時、ひなたが「う……」と小さく呻き声を上げて目を覚ました。

 

「…………パ、パ……」

 

 ひなたは、脳無に叩き飛ばされる直前に受け身を取っており、張り手の衝撃を捕縛武器で殺していたため致命傷を免れていたのだ。

 ひなたがまだぼんやりとしか見えない目をうっすらと開けると、必死に呼びかけているプレゼントマイクの顔が映り込み、ひなたは思うように動かない口を動かし“個性”を使い果たして掠れた喉から声を絞り出す。

 

「……ごめん、なさい……ぼく……や、くに……たてな……かった……」

 

『そんな事ない! お前が戦ってくれたから他の生徒達が傷付かずに済んだんだ!』

 

 ひなたが弱々しく手を震わせて涙を流すと、プレゼントマイクはひなたの震える手を掴んで呼びかけた。

 そしてひなたの小さな身体を抱きかかえてUSJの外へと走っていき、外に停まっていた救急車へとひなたを運び込んだ。

 

『頑張れひなた、あと少しの辛抱だからな……!!』

 

 プレゼントマイクがひなたに呼びかけると、ひなたはコクリと頷いてそのままそっと瞳を閉じた。

 この騒動は後に起こる大事件の始まりだったと、この時の生徒達は知る由もないのであった。

 

 

 

 

 




ひーちゃんのお陰で相澤先生の目に後遺症は残らずオールマイトも黒霧の妨害も受けず原作より楽に脳無を倒せました。
ひーちゃん有能w
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