抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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始業一発気合入魂鍋パだぜ!!!会

 相澤と山田がひなたを連れて学校を飛び出した、その一方で。

 ひなたを除くA組20人は、グラウンドαで訓練をしていた。

 

『去ねヤ人類、俺タチがこの世界のスカイネットだ!!』

 

 大量のロボットが、A組の方へ押し寄せていた。

 すると、青山がネビルレーザーでロボットを真っ二つにしていく。

 

「ネビルセーバー」

 

 A組は、その様子をオールマイトが作った綿菓子を食べながら見ていた。

 

「新技!! 青山お前もソード出せるようになったのか!」

 

 青山の技に上鳴が盛り上がり、他の生徒達も綿菓子を食べながら感心していた。

 すると、青山の前に葉隠が出てくる。

 

「よっしゃオッケー青山くん」

 

 葉隠は、青山のレーザーを曲げてロボットを破壊した。

 

「曲げたァ」

 

「見ててキモティーなァ」

 

「光の屈折をグイッと出来ちゃうんです」

 

 コンボでロボットを破壊していく青山と葉隠だったが、さらにロボットが出てくる。

 

『ええいカカレ審判の日は今日なり!!』

 

 ロボットが突進してくると、芦戸が高く跳び上がる。

 芦戸は、自分の身体を粘性の高い酸で覆う。

 

「粘性MAX! 『アシッドマン』!」

 

 芦戸は酸でできた巨人の中にすっぽりと収まり、芦戸を攻撃しようとしたロボットは酸で溶ける。

 

『ニンゲン…コワッ…』

 

「こーんな」

 

「感じでーす」

 

 新技を披露した芦戸と葉隠は笑顔を浮かべ、青山は後ろで腹を下していた。

 するとオールマイトが拍手をしながら三人を褒める。

 

「素晴らしい、皆拍手だ! 芦戸少女達は具足ヒーローヨロイムシャの下でインターンだったな」

 

「攻防一体の策が多くてついていく為にコンボや新技を開発しました」

 

 葉隠が上機嫌でブンブン動き回っていると、青山に膝がぶつかりその拍子に青山が力尽きた。

 芦戸は、顔についた酸をブンブンと振り払い切島に話しかける。

 

「あ、ねーねー、アシッドマンねー。アンブレイカブルからパクった」

 

 芦戸が舌を出して二へっと笑うと、切島もニッと笑みを浮かべる。

 

「──おォ!」

 

「この調子で各々インターンの経過を見せてくれ!」

 

 オールマイトが言い、次はライオンヒーロー『シシド』の元へインターンに行った尾白と砂藤の番となった。

 

「「手数と先読みの力!」」

 

 そして次は、鯱ヒーロー『ギャングオルカ』の元へインターンに行った障子と耳郎が技を披露する。

 

「「索敵強化中!」」

 

 次は、Mt.レディ、シンリンカムイ、エッジショット、プリンセスプリティハニーのチーム『チームラーカーズ』の元へインターンに行った上鳴、瀬呂、峰田が技を披露する。

 

「「「最短効率チームプレイ!」」」

 

 次はノーマルヒーロー『マニュアル』の元へインターンに行った飯田。

 

「物腰」

 

 抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』の元へインターンに行った心操。

 

「瞬発力」

 

 ウイングヒーロー『ホークス』の元へインターンに行った常闇。

 

「総合力向上!!」

 

 BMIヒーロー『ファットガム』の元へインターンに行った切島。

 

「いかに早く戦意喪失させるかや!」

 

 ドラグーンヒーロー『リューキュウ』の元へインターンに行った蛙吹と麗日。

 

「「決定力!」」

 

 魔法ヒーロー『マジェスティック』の元へインターンに行った八百万。

 

「予測と効率!」

 

 そして最後は、フレイムヒーロー『エンデヴァー』の元へインターンに行った爆豪、轟、緑谷の番となった。

 

「底上げ」

 

 爆豪は、新たに生み出した技で次々とロボットを破壊していく。

 

「スピード」

 

 轟は、氷と炎で瞬く間にロボットを破壊していく。

 

「経験値」

 

 緑谷は、高く跳び上がると黒鞭と浮遊とシュートスタイルの合わせ技でロボットを破壊する。

 

「おいバクゴー、てめー冬を克服したのか」

 

「するかアホが! 圧縮打ちだ!」

 

 切島が話しかけると、爆豪がキレながらも説明する。

 

「轟くんついに速いイケメンになっちゃったねえ」

 

「いや…まだエンデヴァーには追いつけねぇ」

 

 葉隠が感慨深そうに言うと、轟は今の自分を反省する。

 

「緑谷ァおめー頭痛克服かよ!」

 

「うん!」

 

「あのなァ! 鞭出せるわ浮けるわでもう俺の立場ねーじゃん! ただでさえひなちゃんとか心操とか梅雨ちゃんとかに俺のアイデンティティ取られてるってのによー!」

 

 峰田が緑谷に話しかけ緑谷が返事をすると、瀬呂が緑谷を小突く。

 ただでさえひなたと心操に捕縛術の練度で先を行かれており、蛙吹とも舌で相手を拘束するという技で出来る事が被っており、緑谷も秋のインターン明けから黒鞭を使えるようになったので、瀬呂はもはやアイデンティティを喪失しているのを気にしていた。

 すると心操が瀬呂に声をかける。

 

「いや…そんな事言ったら俺だって相澤先生に比べたらまだまだだし…瀬呂の“個性”は切り離せる分色々と融通利くからそれを強みにしたらいいと思う」

 

「心操ぉ!! おめー徳の高さで何歩も先行ってるよ!!」

 

 心操が瀬呂をフォローすると、瀬呂が心操と肩を組む。

 すると上鳴が心操に話しかけてくる。

 

「心操おめーどうしたさっきの!? ロボ蹴り砕いてたけどよ! あれもう武闘派よ!?」

 

「脚力の向上を中心にトレーニングしてきたからな。あと、相澤先生の助言で靴の素材変えた。戦闘力で先行きたいなら使いこなせる武器を増やしたらどうかって言われて」

 

「へー」

 

 心操は、靴の爪先をトントンと地面に打ち付けながら言った。

 ソールの部分が特殊合金でできたスパイクがついており、爪先と踵にも特殊合金のプロテクターを仕込んだ、武器として使える靴だった。

 

「…けど、できれば最初にひなたに見せたかったな。この技考える時、ひなたにアドバイス貰ったりしたし」

 

「おまっ…結局それかよ!? このリア充が!!」

 

「痛い」

 

 心操がひなたの名前を出すと、上鳴が心操を小突いた。

 峰田が嫉妬のあまり緑谷を小突いていると、麗日が声をかける。

 

「デクくん!」

 

「麗日さん」

 

「あんね! デクくんの戦い方見て、私もこのワイヤー導入したの。短いし瀬呂くんや心操くんみたいな使い方はできんけど……私はとっくに力に変えた。お互い向上したって事で!」

 

「─────ありがとう!!」

 

 二人が軽く拳を突き合わせると、峰田が血走った目でその光景を凝視する。

 

「何なん。爪逆剥けろ」

 

「まだ言ってる…」

 

「知るかお前も逆剥けろ」

 

 峰田が唾を吐き捨てて悪態をつくと、心操がツッコミを入れる。

 すると峰田は、心操にも怒りの矛先を向ける。

 その後、オールマイトは全員を集めて反省会をした。

 

「皆しっかり揉まれたようだね。録画しといたから相澤くんに渡しておくよ! 引き続きインターン頑張ってくれ! 更なる、向上を───」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 夕方、タルタロスから帰ってきたひなたは、A組の寮に戻っていた。

 

「ただいまー!」

 

 ひなたが声をかけるが、誰も返事をしなかった。

 玄関には靴が一足もなく、まだ誰も帰ってきていない様子だった。

 

「…って、まだ誰も帰ってない…もう授業時間終わってるはずだけど…」

 

 ひなたは、スマホで時刻を確認した。

 とっくに授業の終了時間は過ぎていたが、クラスメイトは全員反省会や着替えでまだ校舎に残っていた。

 

「しょうがない、僕は僕にできる事をやろう! 皆疲れて帰ってくるはずだし」

 

 そう言ってひなたは、ふんっと鼻を鳴らすと両手で拳を作る。

 肩口まで伸びた髪を後ろで縛り、厨房に入っていくとどこからかエプロンを取り出し身につけた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、教師寮には相澤と山田が戻ってきていた。

 相澤は、ソファーにうつ伏せに寝転がっている山田に尋ねる。

 

「…どうする」

 

「……胃に優しいモンがいいな。うどん」

 

「聞けよ」

 

 相澤の質問に対して山田が夕食の話をすると、相澤がツッコミを入れる。

 相澤は、タルタロスでの話について山田に意見を求める。

 

「インターンの件といい、公安は何か掴んでる」

 

「だろな」

 

 山田が返事をすると、相澤が尋ねる。

 

「脳無の製造元わかったら、お前どうする」

 

「飛んでってカラオケ大会してやるよ。腑が煮えくりかえってモツ煮だ。お前は──…」

 

「──俺は…」

 

 山田に聞き返され、相澤が答えようとしたその時だった。

 

「先生ー!」

 

 突然、通形と天喰が声をかけてくる。

 

「お休み中すみません! イレイザー、エリちゃんが…」

 

 相澤が壊理の元へ駆けつけると、そこには角を押さえて泣きじゃくっている壊理がいた。

 ひなたの手助けもあって合同訓練後から“個性”の訓練をしていたのだが、“個性”を使っている途中に制御が効かなくなってしまったのだ。

 

「角が…ムズムズする…」

 

 壊理が泣きじゃくると、波動が壊理を抱き抱え、風華が壊理を落ち着かせた。

 相澤は、壊理の“個性”を消しながら壊理の頭を撫でる。

 

「大丈夫。ここは雄英高校だ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、訓練を終えたA組は寮に戻っていた。

 

「ただいまー!!」

 

「っつっても誰もいねーけど」

 

「あれ? でも靴あんぞ?」

 

「ケロ。ひなたちゃん、もう帰ってたのね」

 

 芦戸が元気よく寮の中に入り、切島がそれに対してツッコミを入れる。

 すると上鳴が、玄関に靴がある事に気がつく。

 おそらく女子の靴と思われA組のメンバーの中では一番サイズが小さい靴だったので、蛙吹はひなたがもう帰っているのだと判断した。

 

「今日の授業、ひなたちゃんの技見たかったなー」

 

「しょうがないよ、ひなたは急用があったんだもん」

 

「うむ! 明日ひなた君も交えて録画で反省会を開こう!」

 

 ひなたが三学期初回の授業を欠席したので技を見られなかった葉隠が残念がっており、耳郎と飯田がひなたの授業の話をした。

 

「何だ、帰るなら帰るって連絡くれりゃあいいのにさ。ただいまーひなちゃん!!」

 

「あ、おかえり皆ー! 今ね、ちょうど鍋の準備してたとこ!」

 

 ひなたは、クラスメイトが帰ってきた事に気がつくと、バタバタと厨房から駆けつけてくる。

 心操は、ひなたの目元が泣いた後なのか少し赤くなっている事に気がつく。

 そしてひなたはというと、緑谷と爆豪がいない事に気がついた。

 

「…あれ? デッくんとかっちゃんは?」

 

「あいつらなら仮眠室に用があるそうだ」

 

「焦ちゃん!」

 

 ひなたが尋ねると、轟が答える。

 ひなたは、触角をフリフリ振りながら轟に尋ねる。

 

「仮眠室って! またオールマイト絡み!?」

 

「さあな…詳しくは聞いてねえ」

 

「そっか!!」

 

 ひなたが包丁を持っていない方の腕をブンブン振って尋ねると、轟が答える。

 すると飯田がクラスメイト達に声をかける。

 

「皆! ひなた君にだけやらせてないで俺達も手伝うぞ!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

 飯田が言うと、ほとんど全員が返事をした。

 心操は、手を洗って着替えた後、厨房で調理をしていたひなたに話しかける。

 

「ひなた、どこまで進めてくれた?」

 

「まだ全然! さっき帰ったばっかだし!」

 

「そっか。手伝うよ」

 

「ありがとう!」

 

 心操が腕まくりをして隣に立つと、ひなたは触角をピンと立てて礼を言った。

 ひなたと心操は、一緒に鍋の具を調理していた。

 ひなたは、インターン帰りにエンデヴァーが土産にと持たせてくれた牡丹鍋用の肉を使って、牡丹鍋を用意していた。

 味噌ベースのスープと猪肉を使った牡丹鍋は、エンデヴァーの故郷である静岡県の郷土料理のひとつだ。

 

「鍋パ楽しみだねえひー君! 僕、こんな大人数で鍋パなんてした事ないからワクワクさんだよ!」

 

「って事は鍋パ自体は初めてじゃないんだ」

 

「うん、お父さんと一緒にね。てかぶっちゃけ準備が楽だから冬はいっつも鍋になっちゃうんだ。お父さん、僕が作ったものなら基本文句言わずに食べてくれるからありがたいんだけど」

 

 ひなたは、一切無駄のない手つきでザクザクと野菜を切っていく。

 すると心操がひなたに話しかける。

 

「…ねえ、何かあった?」

 

「ん?」

 

「いや、目が腫れてるから…泣くような事でもあった?」

 

 心操が言うと、ひなたは少し間を置いて答えた。

 

「……うん。お父さんとパパの親友に会ってきたの」

 

「相澤先生とマイク先生の?」

 

「しっ」

 

「…あ、ごめん」

 

 心操が普通の声のボリュームで聞き返すとひなたが口の前で人差し指を立てたので、心操は声のボリュームを落とした。

 

「これ、センシティブな話だから本人達の前でしないでね。その親友がね、二人が高校生の頃に亡くなってるんだけど、意外な所で見つかって…それで僕の“個性”で助けようとしたんだけど……ダメだった。そんで…二人が泣いてるの見たら、耐えられんくなって…最悪、せっかくやっと収まってきたとこなのに、何で涙ってすぐ出てくるんだろ…」

 

 ひなたは、目に浮かんだ涙を肩で拭った。

 

「…僕、助けたい。元に戻って、お父さん達にちゃんと会ってもらいたい。その為の“個性”があるのに、何もできなかったのが悔しくて…だから、強くなるって決めた。手の届くところにいる人は絶対に助ける。誰一人見捨てたりなんかしない。そんなヒーローになるんだ」

 

 ひなたは、涙を拭うとグッと唇を噛み締めた。

 すると心操がひなたに話しかける。

 

「ひなたは十分強いよ」

 

「え」

 

「相澤先生が言ってたんだけどさ…手の届くところにいる人だって助けられない事はある。俺達はオールマイトみたいにはなれないから、せめて一人でも多く救うんだって。ましてや、お前はまだ仮免ヒーローなんだから全員を救い切れなくて当たり前。ひなたは強いから…強すぎるから、重圧を一人で請け負えちまうんだ…と思う。その点で言えば、もっと強くならなきゃいけないのは俺の方だ」

 

「ひー君…」

 

「お前には、心から笑っていてほしいから…お前がどこかに行くなら、俺はお前の隣にいられるよう全力で追いかけていく。お前が強くなるなら、俺はもっと強くなる。一人で突っ走ろうとすんな、一緒に頑張ろうって言ってくれたのはお前だろ」

 

 心操が言うと、ひなたは僅かに目を見開く。

 そしてクスリと微笑んだ。

 

「…そうだったね。ありがとう、何かスッキリした」

 

 ひなたは、微笑みながら視線を下に落とす。

 すると自分の手が止まっている事に気がつく。

 

「って、手止まってるよ! 早く全部作っちゃわなきゃ!」

 

 ひなたは、慌てて鍋を作り始める。

 一方で峰田は、厨房でセンシティブな話をしている二人を見て、イチャイチャを見せつけているのかと勘違いして勝手に僻んでいた。

 

「ああいうのどうかと思うんスよ…学生の本分は勉学でしょ?」

 

「後頭部に思いっきりブーメラン刺さってんぞ」

 

「少なくともお前が言うのは違うだろう」

 

 峰田が血眼になって言うと、瀬呂と障子がツッコミを入れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその後、緑谷と爆豪が寮に戻ると、ひなたが声をかける。

 

「あー! デッくんとかっちゃん! おかえりなさい!」

 

「ただいま相澤さん、もう帰ってたんだ!」

 

「うん!」

 

 ひなたが綺麗に魚の切り身が並べられた皿を運びながら声をかけると、緑谷が返事をする。

 すると瀬呂と上鳴も話しかけてくる。

 

「何してたんだ遅ェ〜〜よ謹慎ボーイズ」

 

「早く手伝わねーと肉食うの禁止だからな!」

 

 すると緑谷は、猛スピードで厨房へと走っていく。

 

「すぐやるね!」

 

 一方爆豪は、上鳴に向かって怒鳴り散らしていた。

 

「肉を禁じたらダメに決まってんだろがイカれてんのか!!」

 

「ええ…ヤベェ人じゃん」

 

「さすがかっちゃん! 相変わらずネジ飛んでる!」

 

「嫌なら手伝えよー」

 

 爆豪がキレると、上鳴とひなたがツッコミを入れ、切島が爆豪に声をかける。

 

「何でも入れてよろしいなんて素敵なお料理ですわね」

 

「お茶っ葉はよろしくないですわよ!?」

 

「闇鍋じゃありませんのよ」

 

 八百万が紅茶の茶葉を持ってプリプリしていると、麗日と心操がツッコむ。

 

「ニラ切った奴誰だ!」

 

「俺だ!」

 

「姉ちゃん泣くぞ!! クソが!!」

 

(うーん…僕がちゃんと料理教えてあげれば良かったかな)

 

 爆豪は、きちんと切れておらず繋がったニラを見せて轟に怒鳴る。

 ひなたは、轟が切った繋がったニラを見て、相変わらず轟の料理の腕が上達していなかったので苦笑いを浮かべる。

 

「オレンジジュースの人ー、烏龍茶の人ー」

 

「サルミアッキジュース「無えよ」

 

「火つけまーす」

 

「後でB組も合流するんだよね」

 

「小大がソファ持ってきてくれるって」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、準備が終わり鍋パーティーが始まった。

 寄せ鍋、キムチ鍋、豆乳鍋、ゴマ坦々鍋、イタリアン鍋、レモン鍋、もつ鍋、とろろ明太鍋、辛味噌牡蠣鍋、そしてひなたが作った牡丹鍋など、たくさん食べるA組も満足できるよう色々な種類の鍋が用意されていた。

 

「では! 『インターン意見交換会』兼『始業一発気合入魂鍋パだぜ!!! 会』を始めよう──ー!!!」

 

 飯田が言うと、全員グラスを上に掲げる。

 

「フゥ〜」

 

「キャー!」

 

「三奈ちゃん」

 

「食べる〜〜!」

 

「埃立つから跳ねないの」

 

「ッパァアア!!」

 

「腹減ったな」

 

「轟、ゴマの肉取って」

 

「美味しそう」

 

「いっぱいあるからどんどん食べて!」

 

「カンパーイ」

 

「良い香りですね」

 

「ウィ☆」

 

「ウェーイ」

 

 A組は、鍋と食材が並んだテーブルを囲んで乾杯をした。

 

「それねぇ、まだ火通ってないよ!」

 

「わざとやってるでしょ」

 

 葉隠が鍋を指差しながら言うと、尾白が呆れ返る。

 葉隠の指が見えないので、どれの事を指差しているのかわからず、尾白は困惑していた。

 

「寒い日は鍋に限るよなァ〜!!」

 

「だねぇ!」

 

 切島が鍋をハフハフしながら食べていると、心操は隣に座っていたひなたに声をかける。

 

「ひなた、取ってほしいのあったら言って」

 

「寄せ鍋の白菜とつくね多め!」

 

「はいよ」

 

「ありがと」

 

 ひなたのリクエストを受けた心操は、ひなたのとんすいに鍋の具を取り分けて渡した。

 取り分けられた具を受け取ったひなたは、美味しそうに鍋の具を頬張る。

 

「美味しいねぇ」

 

「俺の一口いる?」

 

「いただきます」

 

 心操が蓮華で自分のとんすいのスープをすくうと、ひなたは美味しそうに鍋のスープを飲んだ。

 豆乳の濃厚な甘さに、ひなたは思わず頬が緩む。

 

「うん、美味しい! お返しに僕の一口あげるね」

 

「ありがと」

 

「ウワアアリア充ムーヴやめろ!!」

 

 ひなたがお返しに自分のとんすいの具とスープを心操に食べさせると、峰田が二人の間接キスに過剰反応して喚き散らす。

 峰田が嫉妬を爆発させる中、耳郎がとんすいに具を取り分けながら呟く。

 

「暖かくなったらもうウチら2年生だね」

 

「あっという間ね」

 

「怒涛だった」

 

 耳郎、蛙吹、麗日が今までの事を振り返る。

 すると他のクラスメイトも話し始める。

 

「後輩できちゃうねえ」

 

「ヒーロー科部活無理だからあんま絡み無いんじゃね」

 

「有望な奴来ちゃうなァ、や〜だ〜」

 

「いい事じゃん!」

 

 上鳴が憂鬱そうに言うと、ひなたは近くにあった水炊きを取り分けながら言った。

 すると飯田が全員に向かって言った。

 

「君達! まだ約三ヶ月残ってるぞ!! 期末が控えてる事も忘れずに!」

 

「やめろ飯田飯が不味くなる!」

 

 飯田が言うと、峰田が飯田に向かって叫んだ。

 すると轟が平然と言った。

 

「味は変わんねェぞ」

 

「おっ…お前それもう天然とかじゃなくね…!?」

 

「皮肉でしょ。『期末慌ててんの?』って」

 

「高度!!」

 

「俺は味方だぞ峰田ー」

 

 耳郎が言うと、峰田が目を丸くして二人を見る。

 上鳴は、笑いながら峰田に話しかける。

 緑谷も笑っていると、常闇が緑谷に話しかける。

 

「緑谷、ポン酢を取ってもらえるか」

 

「僕は… 僕は恵まれ過ぎてる」

 

 緑谷がこれまでの道のりを振り返って言うと、常闇が目を細める。

 

「緑谷…ポン酢を…」

 

「ああごめん! はい!!」

 

「かたじけない」

 

 常闇にポン酢を催促された緑谷は、慌てて常闇にポン酢の瓶を渡した。

 だが、そんな時だった。

 

「ん゛っ!?」

 

 突然、ひなたが顔を青くして箸を止めた。

 心操は、ひなたの顔を覗き込んで尋ねる。

 

「どうしたひなた」

 

「ん゛ん゛……」

 

「ひなた、お前まさか…」

 

 心操が尋ねると、ひなたは喉を手で押さえて苦しそうな表情を浮かべていた。

 そんなひなたのとんすいには、一口齧った鱈の身。

 それを見た心操は、大体の事情を察する。

 

「あれ? ひなちゃんどうかした?」

 

「ああ、ちょっとな。魚の骨が喉に刺さったぽい」

 

「それはいけない、すぐに保健室へ──」

 

「いや、大丈夫。俺ちょっと診てやるから、続きやってて」

 

「そうか…お大事にな」

 

 魚の骨が喉に刺さったひなたをクラスメイトが心配するが、心操は大した事じゃないと言ってひなたを連れて席を立った。

 ひなたと心操を除いて楽しい空気が続く中、来客が現れた。

 

「お邪魔するよー!」  

 

 和気藹々と鍋を囲んでいたA組の面々が、開いた玄関に注目する。

 拳藤を先頭にやってきたのは、小大、塩崎、小森、角取、取蔭、柳のB組女子メンバーだ。

 

「さぁ、どうぞ上がってくれたまえ!」

 

「いらっしゃーい!」

 

 委員長として出迎えた飯田と八百万。

 麗日達もそれに続いて出迎えにいく。

 何度か訪問し合っている仲なので、来る方も迎えるほうも気兼ねはない。

 

「これ差し入れ。ジュースとかお菓子。食後に食べようよ」

 

「まぁありがとうございます」  

 

 八百万に差し入れの入った袋を渡す拳藤。

 その隣で“個性”で小さくした数台のソファを持っている小大に、ササッと近づいた上鳴が笑顔で手を差し出す。

 

「ソファ、持つよ!」  

 

「大丈夫」

 

 女の子にいいところを見せようと小大のソファを持とうとするが、近くにいた柳が“個性”でソファを浮かして移動させる。

 それに気づいた砂藤や轟が、オットマンやソファを移動し場所を空ける。

 ソファが間隔を空けて置かれてから、小大が“個性”を解除すると元の大きさに戻り、鍋の置いてあるテーブルをぐるりと囲むように全員が座れる場所ができた。  

 小大を手伝っていいところを見せようとしていた上鳴がなんとも言えない笑顔を浮かべる。

 

「目論見が外れたなぁ、上鳴ィ!」

 

「俺はみんなに優しい男なんだよっ」  

 

 上鳴の心情が手に取るようにわかった峰田のツッコミに反論する。

 しかし峰田にちょいちょいと手招きされ、不思議に思いながら近づいた。

 

「しかし上鳴……女子が増えるのはいい事だなぁ……」

 

「そうだなぁ、峰田。囲まれてーよな……」

 

「俺、来世は鍋になる。囲まれてつつかれるんだ……そんで、熱くてハフハフされるんだ……」

 

「……最高だな、それ」  

 

 うっとりとする二人の内緒話が聞こえていた峰田の隣の耳郎があきれたように言う。

 

「バカじゃないの?」

 

「なんだよ、ちょっとかわいい妄想話してただけだろー」

 

「気持ち悪いの間違いでしょ」  

 

 よりによって断罪役のひなたが席を外していたため、峰田を止められる者がいない。

 B組女子に変な事をしないかちゃんと見張ってようと思った耳郎の向かいで、「あら?」と蛙吹が玄関のほうを見て何かに気づいたような声をあげた。

 

「あとはもう来ないのかしら?」

 

「男達? もちろん来るよ。ちょっとねー……いろいろ持ってくるよ。A組、先に謝っておく。ごめんね」  

 

 申し訳なさそうに言った拳藤に、A組の面々がきょとんとする。

 

「何ー? 何かあるの?」  

 

 首をかしげる芦戸に、爆豪が鍋を食べている箸をとめて苦虫を嚙み潰したような顔で言った。

 

「B組のお騒がせの元は一人しかいねえだろ」  

 

 その言葉に他のA組がハッとしたとき、まるで呼ばれるのを待っていたようなタイミングでB組を愛しすぎるあまりA組に対抗心を燃やす問題児がやってきた。

 

「やぁ! 待たせたね!! 待たせすぎたかな!?」  

 

「いや、待ちすぎてはいねえ」

 

 バーンと登場した物間に、轟が自分で中途半派に切りそこなったニラを飲みこんでから応えた。

 それにかまう事なく、ツカツカ上がってきた物間はまっすぐテーブルまで来るといい感じに煮えている鍋を覗く。

 

「さぁさぁ、皆で作った鍋だ! 遠慮しないでたくさん食べてくれ!」  

 

 鍋を勧める飯田の声に、砂藤がサッと皿と箸を用意する。

 だが鍋を見る物間の目は、食欲をそそられているそれではなく、品定めするような目だった。

 ひなた達が作ったのは、A組の料理担当がこだわり抜いて選んだ鍋10種だ。

 皆、それぞれ自分の食べたい鍋の前に座っている。

 

「ふふ……ずいぶんベタな鍋をそろえたものだね」

 

「何だよ? ずいぶん突っかかるな」  

 

 A組の料理長、砂藤が訝しむ。

 料理が得意な砂藤は全ての鍋の監修を担っていた。

 どの鍋もどこに出しても恥ずかしくない自慢の鍋だ。

 

「そうだそうだ、皆で一生懸命作ったんだぞー。その鍋だってひなちゃんが持ってきてくれた肉で作ったやつだし! 美味いから食べてみろって!」

 

「上鳴くん、僕がただ単に君達A組の作った鍋を食べる為に来たとでも?」  

 

 物間の言葉に飯田がバッと手をあげて応えた。

 

「安心してくれ! もちろん、インターン意見交換会はきっちりやるぞ!」

 

「それはあとでおいおい……僕が言いたいのはそういう事じゃなく、B組だって美味しい鍋を作れるという事さ……君達以上のね!!」  

 

 A組の面々が再びきょとんとしたその時、玄関から何かを持ってきた残りのB組男子達全員がやってきた。

 

「物間ぁ、持ってきたぞー!」

 

「一人で先に行くんじゃねーよっ」  

 

 そう言う鉄哲と円場が慎重に持っているのは鍋だった。

 骨抜、泡瀬、口田も同じように鍋を持ちながら入ってくる。

 

「お邪魔します。あ、皿と箸、俺達の分は持ってきてるから」

 

「おや、お気遣いありがとう!」  

 

 骨抜の言葉に飯田が頭を下げ、鍋に気づいた。

 

「鍋も持ってきてくれたのかい? B組の皆の分も用意してあったのに」

 

「A組……この鍋は僕達B組からの挑戦状さ。どちらが美味しい鍋を作ったのか、勝負しようじゃないか!!」  

 

 バーンとA組の鍋を指差す物間。突然の宣戦布告に「はぁ?」と啞然とするA組の面々に拳藤が申し訳なさそうに言い添えた。

 

「ごめんね? こいつ、言いだしたら聞かなくてさ……」  

 

 疲れたような苦笑を浮かべる拳藤に、物間の暴走を止める苦労が垣間見える。

 だがそんな中、物間は先程から姿の見えないひなたと心操について言及する。

 

「おや? そういえばさっきから、相澤さんと心操くんの姿が見えないけど?」

 

「ああ、それがよ。相澤の奴、魚の骨が喉に刺さっちまったみたいでよ。今心操に看病してもらってる」

 

 物間が言うと、砂藤が事情を説明した。

 すると物間は、ここぞとばかりにひなたを嘲笑った。

 

「魚の骨ェ!? A組トップクラスの実力者ともあろう者が、魚の骨如きでリタイアとは失笑だなァ!! 所詮A組はその程度……」

 

「やめろ、洒落にならん!」

 

 物間がひなたを嗤うと、拳藤が物間の首筋に手刀を当てた。

 喉が“個性”のひなたにとっては、魚の骨一本でもヒーロー活動が難しくなる程の死活問題なのだ。

 幸い傷は深くなかったので心操一人の処置で事足りたが、これ以上深く刺さっていたら冗談抜きでリカバリーガールの治療が必要だった。

 その間に、鉄哲達が持ってきた鍋をテーブルに置いた。

 

「いい匂い……!」  

 

 その匂いにいち早く反応した食いしん坊な麗日に、物間がぐいっと近づく。

 

「だろう!? 美味しそうだよねぇ!?」

 

「ヒッ」

 

「食べてみたいよねぇぇ!? ……ぐえっ」  

 

 常軌を逸しそうな顔で迫る物間の首筋に拳藤の手刀がお見舞いされた。

 物間の代わりに「ごめん」と麗日に謝る。

 一瞬気を失った物間だったが、A組を負かしたいという欲望に突き動かされたように意識を取り戻した。

 

「……さぁ、この勝負受けるかい?」

 

「いやいや、勝負とかじゃなくてフツーに鍋食べようぜ」

 

「おやぁ? もしかして僕達B組の鍋が怖いのかい? ええ? 爆豪くん」

 

「あぁ? んなもんどっちでもいーわ」  

 

 冷静に応える爆豪に、A組の導火線に火をつけ損ねた物間が「おや?」と首をかしげる。

 A組B組対抗戦から爆豪のキャラ変とも思えるような成長に驚いたが、物間もそこから学んでいた。

 爆豪がさっきから食べているキムチ鍋に目をつける。

 

「……そうだね、僕らB組の鍋はA組の鍋とは比べものにならない。例えばそこのキムチ鍋なんてただキムチを突っこんだような創意工夫もない鍋だもんねぇ!?」  

 

 すると、爆豪がガシャンと箸を置いた。

 

「てめえ、俺のキムチ鍋にケチつけんのか」

 

「ケチじゃないよ、ただそう見えるだけさ」

 

「そんじゃ食ってみろや!」  

 

 それに砂藤も口添えする。

 

「この鍋は俺の出汁をベースに爆豪が自分の激辛調味料で味を調えたんだぞ! 何度も味見して、仕上げたんだ。ただ辛いだけじゃない、うまみとコクと複雑な辛みが豚バラと野菜を引き立ててるんだ!」

 

「爆豪、おめえ、そんなにこの鍋に思い入れがあったのかよ……道理で美味いわけだぜ……! ようし、みんな鍋対決引き受けようぜ! 俺達の鍋が負けるわけがねえ!」  

 

「いいぞー!」

 

「やろうぜー!」

 

 そんなキムチ鍋裏話に感激した爆豪の隣の切島が立ち上がって、皆を扇動する。

 ノリのいい上鳴や瀬呂などが囃し立て、鍋対決が決まった。

 

 

 

 

 

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