最近色々忙しかったのと、今考えている話の執筆をしていたのとでこっちを疎かにしてしまっていました。
ちなみに、今作ではひーひーカップルを書きたいので、自動的に心操くんのインターン先である相澤先生が映画に介入します。
チートすぎて物語崩壊するからって出来杉くんポジションに置くのはヨクナイと思うのです。
ワールドヒーローズミッション・1
とある組織の所有する講堂にて、男が語った。
「昔、超常的異能、即ち“個性”が人類にもたらされたのは何故か?」
男が言うと、組織の者達は一斉に槍を光る赤子の像に突きつける。
すると男が再び話し始める。
「初めの異能者、光る赤子が生まれたのはなぜか? 全ては悲劇である。“個性”は人類にとっての福音ではなく終末への始まりだったのだ。この“個性”終末論に記されている。世代を経るにつれ“個性”は混ざり、進化し、やがて誰にもその力をコントロールできなくなる。人類の8割が“個性”という病に侵された時代、残された2割の純粋な人類も、“個性”保持者と交わりその数を減らしていく。絶滅は目の前に迫っているのだ。我々『ヒューマライズ』は、今こそ立ち上がらなければならない! たとえ大地を血に染めてでも、人類の救済を」
ヒューマライズの指導者、『フレクトターン』が“個性”終末論の本をまるで聖書のように掲げながら言うと、信者達も一斉に復唱する。
「「「「「人類の救済を!! 人類の救済を!! 人類の救済を!!」」」」」
信者達が復唱する中、信者の一人が講堂から抜け出しマスクを取った。
右眼に眼帯をつけた男は、切羽詰まった様子で逃げ出す。
その頃講堂では、フレクトターンが剣を振り上げていた。
「では、始めよう」
フレクトターンがそう呟いた瞬間、剣からは不気味な光が放たれ、講堂内にあった謎の巨大な装置も怪しげな光を放つ。
するとその直後装置から緑色の煙が放たれ、煙は驚異的な速度で地下を伝っていき、やがてマンホールを突き破って外へと噴き出す。
それを見た外の住民は、パニックを起こして悲鳴を上げながら一斉に逃げていた。
だがそうしている間にも、街全体が緑色の煙に覆われていく。
煙に覆われた一般人達は、次々と“個性”が暴走して苦しみ出す。
そしてそれはヒーローや
街中が血煙を上げながら火の海と化していく様は、もはや地獄絵図だった。
「…!」
そんな中、煙の影響を受けなかった“無個性”の男性は頭を抱えて怯えていた。
すると、後ろから女性信者が声をかける。
「あなたは、“個性”を持っていないのですね。おめでとうございます。あなたは救われたのです」
女性信者がマスクを外しながら微笑みかけると、男性は目を見開いて怯える。
◇◇◇
一方、オセオン国上空では、二台のジェット機が飛行していた。
その中には、エンデヴァーをはじめとしたヒーロー達、そしてひなた、心操、轟、爆豪、緑谷が乗っていた。
ひなた達は、ジェット機内のモニターで映像を見ていた。
『先日の無差別テロの犯行声明を出したのは、『ヒューマライズ』、人類救済を標榜する指導者、フレクトターンによって設立された思想団体である。テロに使用された装置は、“個性”因子誘発物質、『イディオトリガー』を強化したものだと推測される。以後、この装置を『トリガーボム』と呼称する。我々選抜ヒーローチームの任務は、世界二十五ヶ所にあるヒューマライズの施設を一斉捜索。団員達を拘束したのち、一刻も早く保管されているトリガーボムを確実に回収する事である。施設では、団員の抵抗が予想される。また、トリガーボムを使用する危険も高く、各国の警察への協力要請は自粛せざるを得ない』
日本の高速道路上を走る輸送車にはファットガムをはじめとしたヒーロー達と天喰、そして切島と鉄哲が乗っており、別の車両にはギャングオルカをはじめとしたヒーロー達、そして耳郎と障子が乗っていた。
エジプトの上空を飛行するジェット機には、チームラーカーズをはじめとしたヒーロー達、そして上鳴、瀬呂、峰田、塩崎が乗っていた。
フランスな道路を走る輸送車には、リューキュウをはじめとしたヒーロー達や波動、そして蛙吹と麗日が乗っていた。
シンガポール・マレーシアには、マジェスティックをはじめとしたヒーロー達や八百万と取蔭がいた。
そしてアメリカの高速道路には輸送車とその上空を飛行するジェット機が同時に目的地へ向かっており、常闇とホークス、そして五常姉妹が“個性”で上空を飛んでいた。
◇◇◇
そしてアメリカ・ニューヨークの統括司令部では。
「火急かつ速やかに任務を実行してほしい。オールマイト」
司令部長官が後ろにいたオールマイトに声をかけると、オールマイトが前に出て話し始める。
「ヒーロー諸君。この作戦の成否は君達の双肩にかかっている。テロの恐怖に怯える人々の、笑顔を取り戻そう!」
◇◇◇
オールマイトがヒーロー達の士気を高めると、ひなた達は顔を見合わせて頷き、一斉に立ち上がってフードを被る。
ひなたはこの日の作戦の為に作ってもらったコスチュームを着ており、普段のコスチュームと似たデザインの黒いドレスの上に白く発光する五線譜が書かれたロングコートを羽織り右側の髪を編み込んでいた。
『各ヒーローチーム…スタートミッション!!』
司令部長官の掛け声を合図に、ヒーロー達は一斉にジェット機から飛び降りた。
するとエンデヴァーが他のヒーロー達に声をかける。
「Aチーム! トリガーボムを爆破される前に確実に回収するぞ!!」
「「「「了解!!」」」」
一方、緑谷達はというと。
「あれが、ヒューマライズのオセオン本部…!」
「俺達Bチームの任務は、施設の制圧とボスのフレクトって奴の確保だ! 油断するな!」
「うん! 重大任務だもんね! 特にかっちゃ「誰に物言ってんだ!? ああ!?」ヒェッ」
轟とひなたが言うと、爆豪が反発して爆速ターボで先に地上に降りそのまま爆速で本部へと一直線に向かった。
すると続けて轟が氷結で滑りながら、ひなたが捕縛武器を使って空中の地面スレスレを器用に移動しながら、そして緑谷が超パワーで駆け抜け猛スピードで本部へ向かった。
すると門番二人が槍を持って威嚇する。
「と、止まれ!!」
「許可なく立ち入りは…!」
「抵抗すれば容赦はせん!!」
エンデヴァーは、大量の炎を放って強行突破した。
するとエンデヴァーに続けて、他のヒーロー達が乗り込む。
エンデヴァーは、一緒にいた女性ヒーローの一人に声をかける。
「クレア! トリガーボムを探してくれ!」
「わかったわ。『ボヤンス』!」
女性ヒーロー『クレアボヤンス』は、“個性”を発動した。
すると本部内の構造が全て透けて見える。
信者達はヒーロー達が“個性”を発動したのに反応し、抵抗の意思を見せる。
「ここで“個性”を使うなど…」
『『
信者達が刃向かってくると、ひなたはプレゼントマイクのような普通の爆音攻撃で全員の聴覚にダメージを与えた。
「ぐぁ……!!」
爆音を浴びた信者達が怯んだ隙に、轟が刃向かってきた信者達を全員凍らせる。
轟は、爆速ターボで駆け抜ける爆豪に声をかける。
「爆豪! 団員のほとんどは“無個性”だ! 手荒い真似は…「わあっとるわぁ!! 『
爆豪が閃光を放つと信者達が怯み、その隙に轟が信者達を凍らせる。
一方、心操はその“個性”で数人の信者達を操り仲間割れを起こしていた。
そして相澤はというと、一斉に襲いかかってきた信者達を数人捕縛武器で拘束し、頭同士をぶつけ合わせて気絶させた。
「そいつだ! その小僧を囲んで仕留めるぞ!」
「ああ、わかって…」
信者の声に答えた別の信者が、心操の洗脳に引っかかって隣にいた信者の頭を槍で殴って気絶させる。
すると、指示を出したはずの信者が動揺して口を開く。
「!? おい、今のは俺の声じゃないぞ!!」
「仮面してんのが仇になったな」
ペルソナコードで声を変えた心操は、捕縛武器で信者を引き寄せると、信者の顎に掌底打ちを放って気絶させた。
だがその直後、心操の背後から別の信者が襲い掛かる。
「よくも!!」
「…!」
心操が複数人の『洗脳』の維持で集中力が切れかけ反応が一瞬遅れたその時、相澤が奇襲を仕掛けた信者の顔面に膝を入れる。
「ヒトシ! 『洗脳』を維持するより先に、迅速に戦意を削ぐ事に重点を置け!」
「…はい!」
相澤が言うと、心操は態勢を立て直しながら返事をした。
一方、“個性”でトリガーボムを探していたクレアボヤンスと連絡を取り合っていたエンデヴァーはというと。
『エンデヴァーおかしいわ! どこにも見当たらない!』
「何だと!? くっ、Bチームフレクトは!?」
エンデヴァーが尋ねると、Bチームのヒーローが応答する。
『間もなく突入する!』
「確保次第トリガーボムのありかを聞き出せ!!」
◇◇◇
エンデヴァーから指示を受けたヒーローは、無線越しに返事をする。
「了解!」
それを聞いていた緑谷は、目の前の扉を睨みつける。
(あの部屋にフレクトターンが…!)
ヒーロー達は、フレクトターンがいるはずの講堂の扉を開けた。
だが、そこにはフレクトターンは既にいなかった。
「クソッ! 指導者不在、周囲の捜索を!」
講堂にフレクトターンがいない事がわかると、ヒーロー達は周囲の捜索にあたった。
結果、世界中にあるヒューマライズの施設のどこからもトリガーボムを発見できなかった。
◇◇◇
一方、アメリカでは。
露出度の高い紋付袴を纏い鬼を連想させる角のような骨格を生やした麗人イナズマは、捕らえた信者達を尋問していた。
「ほなお兄ちゃんら、知ってる事教えてくれるか? トリガーボムはどこにあんねん。おうち帰りたかったら自分、答えた方が身の為やぞ?」
「姉ちゃん、ヒーローの顔やなくなっとるよ…」
イナズマが笑顔で左手からバチバチ青白い火花を散らすと、妹のイブキがツッコミを入れる。
すると、捕らえられた信者の一人が口を開く。
「し、知らない!」
「嘘こくと自分の為にならへんで? い、て、こ、ま、す、ぞ?」
「本当だ!! …というか、そもそも何だそれは!?」
「は?」
信者が言うと、イナズマは目を点にした。
イナズマは、一応“個性”で相手の脳波を測定し、嘘はついていないと判断した。
「…嘘はついてへんみたいやな。しっかし厄介な事になってもうたわ。ホークスはん」
イナズマは、信者達を尋問して得られた情報をホークスに報告する。
その後ホークスは、司令部と連絡を取り合った。
「はい、捕らえた団員達を尋問しましたが、トリガーボムの保管場所を知る者は一人もいませんでした。というか、存在すら知りません。他の施設の団員も同様のようです。先のテロ事件は、ヒューマライズの指導者フレクト直属の者達による犯行である可能性が高いと思われます」
◇◇◇
その頃、司令部では。
長官は、ホークスからの報告を受けて拳を固く握りしめる。
するとオールマイトが長官に話しかけた。
「長官。我々が知らない別の施設があるのかも」
「こちらの動きを察し、トリガーボムを事前に…」
長官は、少し考え込んだかと思うと、世界中にいるヒーローに指示を出した。
「各チームは現地で待機! ヒーローの増員を要請しつつ、ヒューマライズの隠し施設を探り出せ!」
◇◇◇
一方、世界規模のミッションが行われている中、オセオン国内の森の奥では。
眼帯の男アラン・ケイが布に包まれた何かを脇に抱えながら必死に走っていた。
(届けなくては…このままでは…世界が滅亡してしまう…!)
◇◇◇
その翌日、オセオン飛行場の近くの街では。
トレーラーハウスの中では、ポニーテールのような髪型が特徴的な青年ロディが身支度を整えていた。
「ロロ、ララ。そろそろ仕事行ってくっから、お前らちゃんと…」
「「勉強しまーす!!」」
ロディが声をかけると、ロロとララという名前の幼い少年と少女がロディにネクタイを渡しながら笑顔で答える。
「うん、帰りが遅くなるようだったら?」
「「ご飯を作りまーす!!」」
ロディが尋ねると、ロロとララが笑顔で答える。
するとロディは、ニヤリと笑いながら振り向く。
「もし…変な奴が声かけてきても…?」
ロディがニヤニヤしながら二人に襲いかかるような手つきをすると、二人は笑いながらロディから逃げ、ソファーの上で仁王立ちしながら言った。
「「絶対に無視しまーす!!」」
二人が自信満々に答えると、ロディも仁王立ちする。
「よーし!」
「「よーし!!」」
いつものやり取りを終えたロディは、扉を開けて二人に声をかけた。
「でも、今日はそこまで遅くならねーと思うわ」
「「やったー!!」」
ロディが言うと、二人は無邪気に喜んだ。
するとピンク色の変わった小鳥が二人の方へ飛んでくる。
「ピノ!」
ロディは、ピノという小鳥と戯れる二人を微笑ましそうに見つめると、二人に声をかける。
「じゃ、行ってくっから」
ロディが二人に声をかけるとピノがロディの肩に乗り、ロディは出発した。
すると、二人は家の中からロディを見送った。
「「行ってらー!!」」
二人に見送られたロディは、町の中を歩いていく。
その途中、上空をジェット機が飛行しているのを見つけるが、特に気に留めずに目的のバーに入っていった。
ロディは、バーに入ると早速店主の男に声をかける。
「おっちゃん、仕事あるかい?」
ロディがグラスを拭いている店主に声をかけると、店主は若干不満そうな顔をする。
ロディがカウンターに紙幣を置くと、店主は紙幣を回収しながら渋々といった様子で仕事の説明をする。
「…イースト3番通りの路地裏で受け取り、届け先はサウスグローブのチャイナレストランだ」
「ギャラはいくらくらい…」
「フン、おめーが交渉できる立場かよ。黙って言い値でやってりゃいいんだよ」
店主がロディを嘲笑いながら言うと、ピノが腹を立てた様子でロディの頭から飛び出した。
するとロディは、ピノを手の中に押さえ込みながら店主に作り笑いを向けた。
「はいはい、分かりましたよ」
そのまま不貞腐れ顔で店を出たロディは、路上に停めてある自転車に目をつけると、しれっとその自転車で仕事場へと向かった。
すると店主が窓から飛び出して怒鳴りつける。
「てめー!! 俺のチャリを!!」
「どうせ盗品っしょ? 後で持ち主に返しておくよー♪」
ロディが飄々とした表情を浮かべながら言うと、ピノもざまあみろと言わんばかりに店主を煽る。
すると店主は、怒りで顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らした。
「勝手な事すんじゃねークソガキ!!」
「さあ、お仕事お仕事♪」
ロディは、背後から聞こえてくる店主の怒鳴り声を無視して鼻唄交じりに仕事場へと向かった。
◇◇◇
一方、オセオンの都市部では。
ひなた達は街で買い出しをしており、両手に買い物袋を抱えていた。
賑やかな街の様子に、緑谷は目を丸くする。
「おお…にぎやかだなぁ…」
「オセオンで一番大きな都市だからな」
「んん! んまい!」
緑谷と轟が話している横では、ひなたがアメリカンドッグのようなものを頬張っていた。
すると、一緒に買い出しをしていた爆豪が不満を漏らす。
「ケッ、待機だかなんだか知らねーが、なんで俺が買い出ししなきゃなんねーんだぁ!?」
爆豪が怒鳴ると緑谷がビクッと肩を跳ね上がらせ、轟が冷静に話し始める。
「チームで一番下っ端なのは俺らだ」
「ああ!?」
「世界選抜チームに加われたのも、エンデヴァー事務所にインターン中だったから。いわばオマケみたいなもんだ」
「クソが!! つーか何で俺らは買い出しで根暗野郎はホテルで待機なンだよ!?」
「心操は相澤先生のサイドキック扱いだからな。向こうも向こうでデスクワークに追われてるらしいぞ」
爆豪が心操だけ快適なホテル内で待機している事に不満を漏らすと、轟が事情を説明した。
「まあまあ! 光栄な事じゃない! 学生の僕らが世界選抜チームに選ばれるなんて! 雑用上等! プルスウルトラさ!」
ひなたが口元をケチャップで汚しながら満面の笑みで言うと、轟がツッコミを入れる。
「ところで相澤…お前何食ってんだ」
「揚げパンにケチャップかけたやつ。朝ご飯足りなかったから自腹で買ったの。食べる?」
(ホント隙あらばだな相澤さん…!!)
ひなたが緩み切った表情を浮かべながら食べかけの揚げパンを差し出してくると、緑谷が心の中でツッコミを入れる。
緑谷は、自分のやるべき事を思い出して真剣な表情を浮かべる。
「でも、チームに加わったからには、全力でテロから皆を守らないと…!」
「思想団体、ヒューマライズ…」
「クソ妄想にとりつかれたクソ団体…何が『“個性”終末論』だ…何の根拠もねぇ、眉唾もんの御託を真に受けやがって…」
「そういう考え方の人もいるんだねぇ。……んまっ」
緑谷、轟、爆豪が言うと、ひなたも真剣な表情で言った。
するとその直後、数メートル先にある宝石店が突然爆発した。
「「「「!!」」」」
爆発が起こった宝石店からは、盗んだ宝石が入っているであろう鞄を抱えた
宝石店の店主も飛び出し、周りの住民に向かって叫ぶ。
「宝石強盗だ! 捕まえてくれ!!」
するとひなた達4人は、猛スピードで
「クソ! ヒーローだ!」
「いつもの所で! ケース頼むぞ!」
4人が追いかけてくると、二人組の
ピンクアフロ
「てめーらは右行け!!」
「わかった!」
爆豪が指示を出すと、三人はリーゼント
リーゼント
「どけどけ!! どけっつってんだろ!!」
「黒鞭!!」
リーゼント
「轟くん相澤さんは犯人を!!」
「うん!」
「任せろ!」
緑谷が指示を出すと、轟は氷結で建物の外壁を滑りながらリーゼント
一方爆豪に追い詰められたアフロ
するとアフロが爆発を起こし、爆煙が広がった。
それを見た
「フフッ、ザマァねえぜ」
「ショボい爆発だな!」
突然上の方から声が聞こえ、
「本物見せてやるよ!」
そう言って爆豪は、爆破で
爆豪にやられた
◇◇◇
一方、ロディはというと。
ロディは、若干苛立った様子で路地裏で人を待っていた。
「遅えな…ガセ情報だったらタダじゃ…」
その時、路地裏の奥の方から悲鳴が聞こえてくる。
そしてその直後、リーゼント
「頼む!」
「え…な、何だ!?」
リーゼント
その直後、目の前の道が轟の氷塊に阻まれた。
「あ…っ!!」
ロディは、戸惑いつつも踵を返してアタッシュケースを抱えたまま逃げた。
轟は、氷結で高速移動しながらリーゼント
だがリーゼント
「へへっ、効かねえなぁ!」
その直後、轟の氷の上を滑っていたひなたがビルの上から飛び上がり、真上から
『ROCK'N'ROOOOOOOOOLL!!!!!』
ひなたの爆音攻撃をモロ浴びた
無事
「ん゛ん゛…喉いたい…これだから重低音は嫌いなんだよ」
ひなたが独り言を言っていると、轟が駆け寄ってくる。
「相澤、助かった」
「なんの!!」
「手間取っちまったな」
轟とひなたはアタッシュケースを回収しようとしたが、
「んっ!? あれ!?」
ひなたは、一応
すると緑谷が二人に駆け寄ってくる。
「轟くん!! 相澤さん!!」
「緑谷!! ケースが無え!!」
「そっちで見なかった!?」
轟とひなたが言うと、緑谷は目を見開きある可能性を思いつく。
「投げ捨てた…!? あっ」
緑谷が物音のした方を振り向くと、アタッシュケースを脇に抱えたロディが逃げていた。
「仲間がいる!!」
「ん! 追っかける!」
緑谷が叫ぶと、ひなたは緑谷の跡をついていった。
そのまま路地裏を抜けた二人だったが、人混みのせいでロディを見失う。
だがその時、クラクションの音が鳴り、ふと見ると信号無視をして横断歩道を走っているロディがいた。
「あっ!! 待っ…この!!」
ロディを見つけた二人は、噴水の上を跳んで道路の向こう側に渡り、ロディに追いつこうとした。
「デッくん!! 僕は上から追いかけるよ!!」
「わかった!」
ひなたは、緑谷に軽く作戦を伝えて建物の避雷針に捕縛武器を巻き付けると、そのままアコースティックシューズから衝撃波を連続噴射して爆速で空中を移動する。
だがロディは、既に非常階段を駆け登っていた。
「いた!!」
緑谷は、『浮遊』の“個性”を使ってロディに接近する。
するとロディの髪の中からピノが飛び出してきて、緑谷の顔面にアタックしてきた。
「うわっ!?」
「デッくん!?」
まさかの事態に、ひなたも目を丸くしていた。
ピノが緑谷の顔面の上で屁をこくと、あまりの臭さに緑谷は目眩を起こす。
「うう…」
「デッくん!!」
緑谷がそのまま地面へと落ちると、ひなたが目を丸くして叫ぶ。
ロディは、そんな緑谷を見て笑いながら階段を駆け上がっていく。
「へへっ、残念でした」
「まだだよ!!」
突然背後から声が聞こえたのでロディが後ろを振り向くと、外壁を滑るように移動して上から接近していたひなたが眼前まで迫っていた。
「話くらい聞いてってば!!」
そう言ってひなたがロディを捕らえようとすると、ロディはひなたを指差して言った。
「あっ、パンツ見えてる」
「へっ!? 嘘!?」
ロディが言うと、ひなたは目を点にして慌てる。
するとその拍子に足元を滑らせ、シューズを誤作動させてしまう。
「あっ」
ひなたが右足のシューズを誤作動させると、シューズから衝撃波が放たれひなたは空中を何度も回転しながら明後日の方向へと飛んでいった。
「うわああああああ!!!」
そしてそのまま近くの路地裏へとダイブし、たまたま下にいた筋骨隆々で強面の中年男性にお姫様抱っこの形でキャッチされる。
「ヘイお嬢ちゃん、あんた翼をもがれた天使かい?」
「う、うぅ…」
男がしれっと口説いてくるが、ひなたはそれどころではなく目を回して気分を悪くしていた。
ロディは、勝手に自滅して明後日の方向へ飛んでいったひなたを笑いながら逃げていた。
「へへっ、ズボン穿いてんだから見えるわけないだろ〜!」
一方で、ピノの屁にやられた緑谷は、ふらつきながらもロディを追おうとしていた。
すると、ロディが建物の屋根の上を走っているのを発見する。
「もうあんなとこまで!」
そして男に抱えられていたひなたも、パチっと目を覚ますと男の腕から飛び上がって去っていった。
「あっ、すみません! お怪我は!?」
「見ての通り、ピンピンしてるぜ。それよりお嬢ちゃん…」
「じゃ、僕急いでるんで!」
「またいつでもおいで、リトルレディ」
男は、捕縛武器を使って屋上へと飛び上がるひなたを微笑みながら見送った。
緑谷は、屋上を走って逃げるロディを追いかけた。
爆速で追いかけてくる緑谷とひなたに、ロディは思わずギョッと目を見開く。
「まっ…じかよォ!?」
万事休すかと思ったその時、ロディの視界に何かが映る。
それを見たロディは、ニヤリと笑った。
「アレだ!」
そう言ってロディは、勢いをつけてアタッシュケースを投げ、自分もビルから飛び降りた。
一方、ロディが飛び降りたビルの真下では、カップルがイチャイチャしていた。
「見てよこのスクーター。今日のデートの為に買ったんだ」
「すご〜い♡」
「ふふふ、驚くのはまだ早いさ☆この最新モデル、最高時速は何と…「借りてくぜ〜!!」
「あああああ!!!」
キザな男が彼女と思しき女性にスクーターを自慢していると、真上から降ってきたロディは目に留まらぬ速さでスクーターに乗り、そのまま盗んだスクーターで走り出した。
彼女に自慢している間にスクーターを盗まれた男は、顎が外れる程口をあんぐりと開けて悲痛な叫び声を上げた。
その直後、緑谷とひなたがビルの上から降り、顔面蒼白になって倒れている男に声をかけた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あああ…! 僕の、僕のスクーターがぁぁぁ…!!」
「安心して下さい、必ず取り返します!」
緑谷とひなたは、必ずスクーターを取り戻すと約束すると、全速力でロディを追いかけた。
だが路地裏に逃げ込んだのか、二人はロディを見失ってしまう。
「デッくん、僕は『声』であいつを探すよ!」
「お願い!」
ひなたは、索敵の範囲を広げてロディを探った。
その頃ロディは、スクーターに乗って全速力で二人から逃げていた。
路地裏を通って逃げたロディの前に目の前に階段が現れると、ロディは階段の手摺りの上をスクーターで滑り降りた。
手すりは、ロディが走ったそばからひしゃげて崩れていく。
「へっ、この俺を捕まえようなんて100万年早いっつーの」
◇◇◇
その頃、高速道路上をアランが運転する車が走っていた。
車の助手席には、布で包まれた何かが乗せられていた。
するとその時、一台のバイクが他の車を追い越して近づいてくるのがバックミラーに映った。
その直後、バイクが一瞬光ったかと思うと次の瞬間にはリアガラスが粉々に割れアランの右頬に赤い筋が走っていた。
「ぐぁ!!」
アランは、バイクからの攻撃を受けつつもさらに車のスピードを上げて撒こうとする。
だがバイクに乗っていた女性は、“個性”で左手に弓矢を生み出すと、5本の矢を前方の車に飛ばした。
すると矢がタイヤに当たってパンクし、コントロールを失った車は横転してガードレールに衝突し、そのまま道路上を回転しながら防音壁に突っ込んでいく。
◇◇◇
同時刻、ロディは緑谷とひなたから逃走を図っていた。
だが、無茶な走りをしたせいでスクーターのエンジンがエンストを起こし、タイヤもパンクした。
「チッ、これだからボンボンは…! ちゃんと耐久性考えて選べっての!」
ロディは、焦った様子でスクーターを乗り捨てると、そのまま自分の足で目的地へと走る。
すると頭上から爆発音が聞こえ、上を見上げると崩れた防音壁や瓦礫などが自分の方へ降り注ぐ。
「どわああ! ちょ! 待って! ぐわっ!!」
ロディは、慌てつつも降ってくる瓦礫を全て避けた。
◇◇◇
その頃、緑谷とひなたは屋上から地上を見渡してロディを探していた。
するとその時、背後から爆発音が聞こえた。
「事故!?」
「行ってみよう!」
「うん!」
するとその時、地上にいた轟が二人に声をかけた。
「緑谷! 相澤! あっちは俺に任せろ!」
「お願い!」
轟が巨大な氷塊を生み出しながら一直線に事故現場へ向かうと、緑谷とひなたはロディを追いかけていった。
◇◇◇
その頃、事故に巻き込まれたロディはというと、頭を抱えて身を守っており辛うじて無傷だった。
するとピノがロディを心配して鳴き声を上げる。
「だ…大丈夫」
心配するピノを安心させて立ち上がったロディだったが、アタッシュケースを手放してしまった事を思い出して急いでアタッシュケースを探す。
だが、案外近くに落ちていたのを見つけると安心してため息をつく。
アタッシュケースは、奇跡的に無傷だった。
「時間に遅れちまう!」
ロディは、落ちていたアタッシュケースを中身を確認する事なく拾い上げると地下鉄へと向かった。
すると緑谷とひなたは、ロディが地下鉄へと逃げ込むのを見つけた。
「いた!!」
「ゲゲッ!」
「待て!!」
緑谷とひなたは、地下鉄のホームへと逃げ込むロディを追いかけた。
「………」
一方高速道路上にいた狙撃手の女性は、事故現場を見下ろしてから何処かへと走り去っていった。
その頃ロディは、扉が閉まろうとしている地下鉄に駆け込み乗車をしていた。
「待って待って待って!」
「待つのはお前じゃコラアアアアアア!!!」
逃げるロディをひなたが怒鳴りながら追いかけたが、ロディが乗り込んだ直後にドアが閉まりひなたは電車のドアに顔面をぶつけた。
「どぁ!!」
何とかひなたから逃げ切ったロディは、膝に手をついて息を整えていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、バカで助かった…」
息を整えて一安心したロディは、アタッシュケースを拾いながら立ち上がった。
ロディは、服がボロボロになっているのに気がつくとぶつくさと文句を言った。
「ろくでもない日だな…あ~、せっかくの一張羅が台無しじゃねーか。それもこれも、全部あのヒーロー達のせい…あっ」
そういえば見ない顔ぶれだった。
ふと気付いたロディは、肩に乗っていたピノに話しかける。
「あんなヒーロー達、ここらの管轄にいたっけ?」
ロディが尋ねると、ピノは首を傾げる。
ロディは、どうでもいい事だと思い直して肩をすくめた。
「ま、いっか。もう会う事もねーし」
「ヒイイイイイ!!」
「え?」
車掌の悲鳴にロディが振り向くと、緑谷が電車にしがみついて窓に顔を貼り付けていた。
その絵面は、もはやホラーだったー。
それを見たロディは、顔を真っ青にして悲鳴を上げる。
「ヒイイイイイイ!!! あいつらまだ追いかけて来てたのかよ!?」
ロディが悲鳴を上げていると、背の低い女性が声をかけてくる。
「あいつらって誰?」
「決まってんだろ!? モジャモジャ頭とちっこい女の二人組……え?」
緑谷に驚きすぎてパニックを起こしながら女性の質問に答えたロディだったが、しばらくしてその声に聞き覚えがある事に気がつく。
恐る恐る後ろを振り向いた、その時だった。
「誰がド貧乳だって?」
「ギャアアアアア!!!?」
ひなたがニタァ…とホラーじみた笑みを浮かべながら声をかけると、ロディは緑谷の時以上に悲鳴を上げた。
電車に乗り込んだ時点でひなたから逃げ切れたと思っていたロディだったが、実はひなたは車窓から車内に乗り込んでいたのだ。
結局ロディは二人に捕まり、次の駅で尋問を受けた。
◇◇◇
二人に追い詰められたロディは、ホームのフェンスにもたれかかりながら二人に尋ねる。
「何で追いかけてくんだよ?」
「そっちが話も聞かずに逃げるからでしょうが! あと貧乳っつったの取り消せ!! 僕はし、Cカッp「何の話だよ」無視すな!!」
ひなたが説教ついでにしれっと嘘をつこうとすると、ロディがひなたの発言を遮ってとぼけた。
それに対してひなたがさらにキレている一方で、緑谷がロディに尋ねる。
「どうして逃げたの?」
「仕事で急いでたんだよ」
緑谷が尋ねると、ロディは顔を反対側に向けながら答える。
すると緑谷は、ロディの顔の前に回り込んで尋ねる。
「何の仕事?」
「商談だよ。商談。こう見えてもやり手の営業マンなんだよ。仕事の邪魔しないでくれるかな?」
「それにしたって、道路交通法違反、住居侵入罪、器物損壊罪、その他諸々、色々お尋ねしたい事があるんですが」
「うるさいな、人の仕事の邪魔しといて説教垂れないでくれるかい? んじゃ、俺急いでるから」
ひなたを弾いたロディは、そのまま立ち去ろうとする。
すると緑谷が後ろから呼び止めた。
「ケースの中身、見せてもらえないかな?」
緑谷が声をかけると、ロディは振り向いて言った。
「いくらくれる?」
「え?」
「見たいなら、金払うの当然だろ?」
二人から金を巻き上げようとするロディにひなたは内心イラッとして引き攣った笑顔を浮かべ、緑谷はゆっくりとロディに歩み寄る。
「中身を確かめるだけだから」
緑谷が言うと、ロディは振り向きながら言った。
「あんたら、この国のヒーローじゃないよな? 他所の国で勝手にヒーロー活動していいわけ?」
「ちゃんと許可取ってますよ。ご存じありませんでしたか?」
ロディが言うと、ひなたはハッタリを使いながら堂々と歩み寄ってその場を凌ごうとする。
だがロディは、ひなたのハッタリを見破ったのか余裕綽々とした態度を崩さずに二人に詰め寄る。
「だからって俺を逮捕する権限なんて無いだろ〜? 権限もないのに命令しないでくれるかなぁ? それとも、一方的に追いかけられて尋問されたって警察に通報するぅ? しちゃおっかなぁ?」
「ぐぐっ…」
「はぁ…」
ロディがニヤニヤしながら二人を指差して追い詰めると、緑谷は困惑してしまい、ひなたもハッタリは通じないだろうと諦めてため息をついた。
「わかってもらえて嬉しいよ。そんなにヒーロー活動したけりゃ自分の国でやりゃあいい。そんじゃ♪」
「待って!」
二人を言い負かしたロディは、そのまま立ち去ろうとする。
すると緑谷がロディの左腕を引っ張って引き止める。
「…まだ何か?」
「ケースの中身を見るだけだから」
緑谷が言うと、ロディが振り向きながら言った。
「見たけりゃ金払え」
「払うから見せて」
「いくらで見せてくれる?」
緑谷とひなたが言うと、ロディはとんでもない金額を言ってきた。
「10万ユール!」
「高すぎる」
「なら離せ!」
「ちょっとだけ!」
ロディが立ち去ろうとすると、緑谷が食らいつく。
するとロディはヒョイとアタッシュケースを持ち上げ、その隙にひなたがアタッシュケースを回収する。
「隙あり!!」
だがアタッシュケースのロックを外そうとした時、ロディにアタッシュケースを奪い返されそれをさらに緑谷が奪い取ろうとする。
「あっ!」
「いい加減に…!」
三人がアタッシュケースの引っ張り合いをしていると、ピノが緑谷の顔面に激突し、緑谷はバランスを崩して仰反る。
だが、その拍子にアタッシュケースが吹っ飛んでしまった。
「「「ああっ!!」」」
三人は、アタッシュケースを回収するため急いで駆け寄った。
三人は、互いに押しのけ合いながらアタッシュケースに辿り着く。
だが、開いたアタッシュケースの中に入っていたのは本や書類で、宝石は一欠片も入っていなかった。
「「「え?」」」
三人は、唖然としてアタッシュケースを眺めていた。
すると緑谷とひなたが気まずそうにロディに尋ねる。
「「宝石は?」」
二人が尋ねると、ロディの顔がさらに青ざめる。
◇◇◇
一方、事故現場に駆けつけた轟はというと、警官と事務手続きを済ませていた。
「ご苦労様でした」
「おい! こっち来てくれ!」
警官が轟に声をかけたその時、鑑識が声をかける。
二人が駆け寄ると、鑑識がひしゃげた自動車を指差しながら言った。
「見てくれこれ!」
鑑識が指差した先には、何かで貫かれたような穴が空いていた。
「何だこの痕は!?」
(あれは…)
轟は、車体に空いた穴を見て少し考え込んでいた。
◇◇◇
一方、奇襲を仕掛けた女性狙撃手はというと、路地裏に隠れてアタッシュケースの中身を確認していた。
狙撃手は、手頃なゴミバケツの上にアタッシュケースを乗せると、蓋を開けて中身を見る。
だが中身を見た狙撃手は、思わず目を見開く。
中には宝石しか入っていなかったため、狙撃手は悔しそうにゴミバケツを蹴飛ばして宝石をぶちまけた。
狙撃手は、アタッシュケースの回収に失敗した事をフレクトターンに報告する。
『そうか、わかった。こちらでも手を打っておく。追跡を続けよ』
「ありがとうございます」
『忘れるなベロス。病魔に冒された者が唯一行える贖罪は…純粋なる人類を救済する事だけだという事を…』
「分かっております」
フレクトターンが言うと、狙撃手べロスは、胸に手を置き忠誠を誓った。
◇◇◇
一方、地下鉄の駅ではというと。
「「本当~っに、すみませんでしたぁぁっっ!!!!」」
緑谷とひなたは、ロディに向かって見事な土下座をしていた。
ロディは、二人の完璧なまでの土下座に度肝を抜かれていた。
(すっげぇ…これがジャパニーズドゲザ!!)
通行人が駅で堂々と土下座をする二人を不審者を見るような目で見ていると、ロディは慌てて引き攣った笑みを浮かべながら対応する。
「まあ…疑いが晴れて良かったよ。何てゆーの? ヒーローだって間違いの一つ二つしちゃうこともあるっしょ…?」
「う…」
(…でも、肝心の宝石はどこ行っちゃったんだろ…? 今頃誰かに拾われてたら、絶対盗られてるじゃんね。はぁぁ〜…)
ひなたが反省しつつも心の中で深いため息をついている一方で、ロディは内心焦っていた。
(おいおいどうなってんだよ!? ケースの中身違うじゃん!! 宝石じゃねーのかよ!? あっ、もしかしてあの時…)
ロディは、爆発に巻き込まれた際にアタッシュケースが二つ転がっていた事を思い出す。
宝石が入っていたケースは黒煙に紛れて気付かなかったため、間違えて本の入ったケースを回収してしまったのだ。
(取り違えたああ…!!)
ロディが滝のように冷や汗を流しながらガクガク震えていると、緑谷とひなたは怪訝そうな表情を浮かべる。
「「?」」
「じゃ…じゃあ、時間無いから俺はこれで…」
「汗すごいよ? 大丈夫?」
「病院行った方がいいんじゃ…」
「だ、大丈夫! それじゃ!」
ロディが顔色を悪くしながら去っていくと、緑谷とひなたが心配する。
するとロディは慌てて体調不良を否定しつつ、二人の前から去っていった。
(マズい、早くあの場所に戻んねーと…でもケースあるか? 誰かに拾われて中身見られたら、確実にネコババされっだろ! 相手は
ロディが肩身狭そうに地下鉄を抜けて街を歩いていると、後ろから二人が声をかける。
「あの…」
「ヒィ!」
「身体、本当に大丈夫?」
「やっぱりちゃんと診てもらった方が…」
「ああ!? 何でもねーよ!」
緑谷とひなたが心配すると、ロディは強がって立ち去ろうとする。
「あ、でも…!」
だがその時、何重にも重なっているサイレンの音が聞こえた。
その直後、何台ものパトカーが接近し、あっという間にロディを囲んでしまった。
追い詰められたロディは、顔を真っ青にする。
(警察!? 何で!? 準備良すぎだろ!?)
ロディがアタフタしている間にも、パトカーから大勢の警官が出てきてロディに拳銃の銃口を向ける。
「両手を上げて、その場に伏せろ!」
「う、ううう…お、俺…」
ロディが青ざめてその場に尻餅をつくと、緑谷とひなたがロディを庇う形で前に出た。
「ちょっと待って下さい!! 彼は…」
「俺は、何も取ってねーから!」
パニックを起こしたロディは、アタッシュケースを抱えて逃げ出してしまった。
すると、警官の一人がロディに警告しながら他の警官に指示を出す。
「止まれ!! 許可は出ている! 撃てっ!!」
「えっ!? ちょっ、待っ…」
警官は、ひなたが制止しようとしているのも聞かずに発砲した。
するとひなたは、捕縛武器を高速回転させ盾代わりにして銃弾を防いだ。
「ああもう!! デッくん!!」
ひなたが声をかけると、緑谷はロディを抱えて上空に逃げる。
「前見て! 歯を食いしばって!!」
「ギャアアアアアアア!!!」
緑谷は、目の前のペガサス像に黒鞭を貼り付けると、跳躍して逃げた。
緑谷の無茶な移動にロディは吐き気を催すが、緑谷はお構いなしに超スピードでパトカーから逃げた。
緑谷が狭い路地裏に逃げ込むと、パトカーは人を轢きそうになるのもお構いなしに爆走する。
緑谷がそのまま路地裏を抜けて高く跳び上がると、パトカーが崖っぷちで急ブレーキをかけ、後ろのパトカーが激突する。
緑谷は、電車に向けて黒鞭を伸ばして飛び乗ると、それと同時に何とか警察を撒いたひなたも電車に飛び乗った。
「どうしていきなり発砲を…?」
「わかんない…! い゛っ…」
ひなたは、激痛に顔を歪めながら答える。
ひなたの右肩は、銃弾が掠ったのか血塗れになっていた。
「相澤さん! まさか、撃たれて…「平気、掠っただけ」
緑谷が心配すると、ひなたは笑顔を浮かべながら小物入れの中に入っていた救急ポーチで応急処置をする。
一方で、ロディは緊張の糸が緩んで気が抜けていた。
「死ぬかと思った…」
するとその時、視界横で何かが光るのが見えた。
そして次の瞬間、光を纏った矢がひなた達の方に飛んできた。
緑谷はエアフォースで矢を弾くが、矢は軌道を変えて再び緑谷を狙った。
緑谷は、腰を抜かしていたロディを抱えると、追跡してくる矢を避けた。
(追いかけてきた…!)
「っ…!!」
矢が再び三人を狙ってくると、ひなたは“個性”を発動した。
すると矢に発動された“個性”が消え、矢はコントロールを失った。
「チッ」
ひなたが“個性”を消してくると、ベロスは今度は三本の矢を三人に飛ばしてくる。
「ギャアアアアア!!!」
三本の矢が列車の車窓を粉々に割りながら三人を狙うと、ロディは叫び声を上げ、列車の乗客も悲鳴を上げる。
(ここじゃ巻き添えの危険が…!)
「追っかけてくる~!!」
緑谷は、喚くロディを傍に抱えながら『黒鞭』と『浮遊』で飛び回りながら逃げ、ひなたは次々と飛んでくる矢の“個性”を消した。
高所で揺さぶられ続けたロディは、ついに限界を迎えて気を失う。
「あっ、しまった!」
つい油断してロディを手放してしまった緑谷は、急いでロディを助けに行く。
ひなたは、緑谷を追いかける矢を“個性”で弾き飛ばす。
「行ってデッくん!!」
ひなたが叫ぶと、緑谷は空中でロディをキャッチする。
だがその時、パトカーが三人を追ってきた。
「っ、しつこいよもう!」
(早くここから離れなきゃ…!)
警察と戦うわけにはいかないと判断した緑谷とひなたは、顔を見合わせて頷く。
二人は、そのまま真下の河へと飛び込んで警察と
「チッ」
三人を見失ったベロスは、停めていたバイクに跨って次の手を打つため走り去っていった。
◇◇◇
そしてその頃、オセオンチームの待機ホテルでは。
「バカ者!!」
轟と爆豪は、エンデヴァーに説教されていた。
「今は重要任務中だぞ! それ以外の事件は、地元のヒーローに任せておけばいい!」
「困っている人を救けるのがヒーローだろ」
「仕事に大小つけんのかよ。インターンでんなこと習ってねえんだよ」
「反省せんか!!」
「ケッ」
エンデヴァーの説教に轟と爆豪が反論すると、エンデヴァーが怒鳴った。
それに対して爆豪が反省した様子を見せずに不貞腐れると、エンデヴァーは呆れて物も言えないと言わんばかりにため息をつく。
「ハァ……それで? デクとクレシェンドはどうしてる?」
エンデヴァーが尋ねると、轟が答える。
「宝石強盗の仲間を追跡している。だが、全然電話に出ねぇ」
「たるんどる!! インターン中だからと連れてくるのではなかった!」
轟が報告すると、エンデヴァーが怒鳴り散らした。
するとその時、轟の携帯から着信音が鳴る。
「! 緑谷からだ。緑谷、犯人とケースは?」
『警察にいきなり襲われた!』
轟が尋ねると緑谷がいきなり報告し、轟が僅かに目を見開いて尋ねる。
「なっ…お前ら、何をやった?」
『わかんないんだ!』
◇◇◇
その頃緑谷は、河川敷で轟と連絡を取り合っていた。
その後ろでは、ひなたがロディに胸部圧迫をして水を吐き出させていた。
「事情も話さずに、いきなり僕らを撃って、相澤さんが撃たれた…! それで慌てて逃げたら今度は、
『落ち着け。起きた事を順番に話せ』
「……えっと、ケースを持って逃げた子を相澤さんと一緒に追いかけて捕まえたんだけど、その子が持っていたケースの中に宝石は無くて…」
◇◇◇
一方、ホテルでは、轟、爆豪、エンデヴァーの三人が緑谷の報告を聞いていた。
すると、クレアボヤンスが三人のもとへ駆けつけてくる。
「エンデヴァー! 大変よ! デクとクレシェンドが…!」
三人は、クレアボヤンスに呼ばれるまま会議室に入った。
会議室にはチームアップを組んだヒーローやサイドキックが集まっており、その中にはエンデヴァーと同じチームの相澤と心操もいた。
「来たか、お前ら」
「相澤先生!」
相澤が振り向いて声をかけると、轟が駆け寄る。
すると相澤は、顔を顰めながら呟く。
「……最悪だ」
相澤が額に手を当てている一方、心操はモニターを見て呆然としていた。
「ひなた…緑谷…! 嘘だろ…!?」
その表情を見て事の深刻さを察した轟は、モニターに視線を移す。
モニターに表示されていたのは、オセオンのニュース番組だった。
『情報提供を呼びかけています。繰り返しお伝えします。警察の発表によると、死者12名を出した殺人事件の犯人は、日本から来たヒーロー“デク”、本名イズク・ミドリヤ。そして同じく日本から来たヒーロー“クレシェンド・モルト”、本名ヒナタ・アイザワと断定。全国に指名手配しました。なお、容疑者には共犯者が一名いるとの情報もあり…』
モニターに映っていたニュースキャスターがニュースを読み上げると、エンデヴァー、轟、爆豪が目を見開く。
するとその時、携帯の向こうから緑谷の声が聞こえる。
『もしもし!? もしもし轟くん!?』
緑谷が言うと、轟は目を見開いて唖然としたまま緑谷に話しかける。
「お前ら…本当に何やった?」
『何もしてないってば!!』
「お前ら、大量殺人犯として指名手配されたぞ」
◇◇◇
一方で、轟の報告を聞いた緑谷は、目を見開いて唖然とする。
「え…し、指名手配ってどういう事?」
『それについては、既に相澤先生と心操が調査をしてくれてる。いいか、今から言う事を相澤にも伝えろ。すぐにその場から離れろ。GPSで追跡される。スマホの電源切ったらバッテリーを抜くのも忘れんな』
轟が言うと、緑谷は状況が飲み込めずに苦悶の表情を浮かべる。
するとその時、ロディが緑谷の肩に手を置きひなたが声をかける。
「デッくん」
「わっ!」
「うおっ! ビックリした!」
ロディが緑谷の肩に手を置くと、緑谷はビクッと肩を跳ね上がらせ、ロディはそれに対してビックリする。
肩に手を置いたのがロディだったので、緑谷は安心してため息をつく。
すると、ロディとひなたが緑谷に尋ねる。
「仲間と連絡取れたんだろ?」
「焦ちゃん、何て?」
二人が話しかけると、緑谷は思い出したようにスマホを分解してバッテリーを抜く。
緑谷がいきなりスマホを分解し始めたので、ロディが気になって尋ねる。
「何でバッテリー抜くんだよ? 迎えはいつ来るって?」
「そ、それが……」
緑谷は、バッテリーを抜きながら現状を二人に話した。
「………え」
緑谷から事情を聞いたひなたは、唖然として目を見開く。
ひなたと緑谷は今、凶悪犯罪者としてオセオン中の警察から追われていた。