その後、ひなた達は巨大な岩の影に隠れながら隠されていた仕掛けを解いていた。
「うーん…何だ? 何がどうなって…」
緑谷がパズルを解いていると、轟と心操が指示を出す。
「こうじゃないのか?」
「それだと、元に戻って…」
「ならここは?」
「それだと、結局さっき試したパターンと同じになっちゃうんだ」
二人が指示を出すが、緑谷は上手くパズルを解けなかった。
「難しいな…」
「解いた事ないタイプだしな」
「んー、違うな…」
三人がパズルに苦戦していると、それを近くで見ていたひなたが突然閃いたのか、緑谷に詰め寄ってくる。
「あ! ちょっと貸して!」
「あ、うん」
ひなたが詰め寄ると、緑谷はパズルを一旦ひなたに渡した。
するとひなたは、一度パズルを隅々まで観察して解き方を思いついてから解き始める。
「仕組みがね、知恵の輪に似てるの。ここがこう…あ! 待って解けそう!」
「本当か?」
「うん! あとはここを……ん? んっ、んっ、あれっ!? ふぎぎぎぎ…チェリャアアアア!!」
「何やってんの相澤さん!?」
ひなたがパズルの白いプレートのような部品に両手の人差し指を引っ掛けて無理矢理左右に引っ張ると、緑谷がツッコミを入れる。
ひなたは、何とかパズルを開けようと、本来引っ張れないはずの部品を力尽くで引っ張ろうとしていた。
すると、パズルからミシミシと危ない音がする。
「ここが、どうしても、固くて動かない…! あとはここを引っ張れば、開く、はず!! クソッ、無駄に頑丈だな…!」
「それ絶対力技で開けるやつじゃないから! ちょっ、壊れるからやめろ!」
「越えられない壁があるのなら、ブチ破るまで!! プルス…ウルトラアアアア!!!」
「やめろっつってんだろバカ!!」
ひなたが力みながら部品を引きちぎる勢いで引っ張ろうとすると、心操がツッコミを入れた。
そしてひなたからパズルをひったくると、緑谷に返した。
「もうひなたは触るの禁止」
「むぅ…」
心操がひなたの額を軽くつつくと、ひなたが不貞腐れて頬を膨らませながら猫のしっぽのように触角をブンブンと激しく横に振る。
すると、なかなかパズルが解けないのに苛ついた爆豪がついに暴挙に出る。
「貸せ! こんなの俺の爆破でブッ壊してやんよ!」
「あ〜ダメだよかっちゃん!」
「ケッ」
「かっちゃんメッでしょメッ!」
「お前も大概人の事言えなくねえか?」
爆豪が力技で解こうとすると緑谷が止め、ひなたが特大ブーメラン発言をすると轟が冷静にツッコミを入れた。
すると、パズルをしばらく観察していたロディが急に閃き緑谷に声をかける。
「デク、ちょっと貸してくれないか?」
「わかるのか?」
「似たようなパズルを、ガキの頃やった事がある…」
そう言って、ロディは慣れた手つきでパズルを解いていく。
パズルが解けると、カチッと音が鳴った。
「よし! これで…」
ロディが解けたパズルを左右に引っ張ると、中から何かが出てくる。
「あっ!」
緑谷は、出てきたものを咄嗟に拾った。
出てきたのは、情報チップと中指程の大きさの半透明の板だった。
「ん…? 何だろう…」
「!」
(似たようなものをマスターの研究室で見た事がある。これは…)
「…鍵……」
緑谷が板を見て考えていると、ひなたがポツリと呟く。
一方、轟は情報チップを調べていた。
「こっちは情報チップか? よし、麓に町があったはずだ。そこで調べてみよう」
「うん!」
轟が言うと、ひなたが頷く。
そのまま移動しようとすると、ロディがパズルを睨んでいるのに気付いた心操が声をかける。
「どうした?」
「ああ、いや…」
心操が声をかけると、ロディが立ち上がった。
ひなた達6人は、麓の街まで移動した。
◇◇◇
その頃、ヒューマライズの本拠地では。
長官が、フレクトターンに報告していた。
『目標が、隣国のクレイドへ…私の権限でこれ以上の捜索は…』
「構わん」
『え?』
「クレイドならば、計画遂行中にここへ来る事もできまい。計画を実行に移す時は来た!」
そう言ってフレクトターンは通信を切り、団員達に語りかけると剣のような機械を振りかぶった。
すると団員達は、声を揃えて呼応する。
「「「「「人類の救済を!! 人類の救済を!! 人類の救済を!! 人類の救済を!!」」」」」
「人類の…救済を…!」
フレクトターンが機械を作動させると、モニターに世界地図が表示され、世界中のヒューマライズの基地が示される。
◇◇◇
その頃、ニューヨークの司令部では。
「緊急事態! ヒューマライズが、インターネットを通じて放送を始めました!」
「表示しろ」
オペレーターが報告すると、長官が命令する。
オペレーターは、巨大なモニターを作動させた。
すると赤い画面をバックにヒューマライズのマークが表示され、フレクトターンの声が響き渡る。
『我々ヒューマライズは決起する。“個性”という名の病に冒された者達から、“無個性”と呼ばれる『純粋なる人類』を守るために、我々が開発した『人類救済装置』は世界25ヶ国に配置され、既に動き始めた。人類救済までのタイムリミットは今から2時間。だが、我々も無慈悲ではない。この計画を阻止したいと願うなら『人類救済装置』を設置した地域をお教えしよう。我々と異なる考え方をしていようとも、チャンスは平等にあるべきだ…』
そに言葉を最後に、フレクトターンからの通信が切れた。
するとトリガーボムの設置区域が表示され、オペレーターの1人が報告する。
「長官! トリガーボムの設置区域、全25ヶ所…全てヒューマライズの支部がある区域と一致しています!」
「また罠の可能性が…」
「たとえ、そうだとしても…」
長官は罠の可能性を疑うが、オールマイトは世界中の人々の危機を放ってはおけなかった。
オールマイトと長官は顔を見合わせて頷き、長官が指示を出す。
「待機中のヒーローチームに出動要請を!!」
「はっ!」
だがその直後、モニターに警告画面が表示された。
「トリガーボムの全設置区域でパニック発生!」
「設置区域以外にもパニックが波及!」
「交通機関が次々と麻痺していきます!」
◇◇◇
その頃、日本チームの待機ホテルの近くでは。
フレクトターンの発表が原因で人々がパニックを起こし、道路でも事故や渋滞が多発していた。
「ヤベェ!」
「サンイーターは怪我人の救出を!
「「「了解!」」」
ファットガムの指示で、三人は動き出した。
天喰は、指先をタコの触腕に変形させる。
「『キメラ・クラーケン』!!」
天喰は、タコの触腕で次々と人々を救い出した。
「行くぜぇ!!」
「『
鉄哲と切島は“個性”で身体を硬化して同時に駆け出し、道を塞いでいたトラックを殴り飛ばした。
「ここから避難を!」
「急いでください!」
道を作った二人は、周りの民間人に声をかけた。
一方、プレゼントマイクとセメントスはというと。
『セメントス!』
「行きますよ、マイク!」
セメントスはプレゼントマイクがしゃがみこんだ地面に手をつき、“個性”を発動させた。
するとプレゼントマイクを乗せたコンクリートが高速道路に向かって伸びていき、プレゼントマイクは大きく息を吸って叫んだ。
『OKエブリバディ!! 道ができたぜ!! ここから下へGOGO!!』
プレゼントマイクが避難誘導をすると、民間人はコンクリートの上を滑っていく。
「大丈夫! 慌てないで!」
セメントスは、民間人の避難誘導をしつつも索敵班のいるビルの屋上の方を振り向いた。
「頼みます、索敵班!」
その頃日本チームの索敵班は、エコーロケーションで索敵をしていた。
「必ずトリガーボムを探し出すぞ! いいな!!」
「「了解!!」」
ギャングオルカが言うと、耳郎と障子が返事をした。
◇◇◇
その頃、フランスでは。
麗日が浮かせた車を、蛙吹が舌で絡め取って引っ張る。
「ケロッ!」
「こっちの避難誘導は任せてください!」
そう言って麗日は、車を浮かせていく。
リューキュウは、隣にいた波動に指示を出す。
「私達はトリガーボムの捜索を!」
「はい!」
リューキュウが指示を出すと、波動やサイドキック達が返事をする。
◇◇◇
一方、アメリカでは。
「ツクヨミ! イナズマ、イブキ! 避難誘導はアメリカ側に任せて、俺達は空からトリガーボムを捜索する!」
「了解!」
「「りょーかい」」
ホークスが指示を出すと、常闇と五常姉妹が返事をする。
ホークスは、空から大量の羽根を飛ばした。
「行け剛翼! すみずみまで調べつくせ!」
一方で、別の方角へと飛んでいたイナズマは、イブキに声をかける。
「行くでー風華」
「うん、姉ちゃん!」
イブキは大きく息を吸い込むと掌の上に息を噴き出し、掌の上で起こした風を街全体に行き渡らせた。
そしてイナズマも、電光を纏うとそれを金棒に集中させ、弱めの電磁気を一気に街中に解き放った。
「『飄』!!」
「『鳴神』!!」
◇◇◇
その頃、シンガポール・マレーシアでは。
八百万は、“個性”で大量のセンサーを創造していた。
「取蔭さん! このセンサーを使ってトリガーボムを!」
「わかった!」
取蔭は、身体をバラバラに分解させて肉片に一つずつセンサーを持たせ、肉片を四方八方に飛ばした。
「必ず見つけてみせる!」
するとそこへマジェスティックが現れ、八百万を魔法のリングに乗せる。
「百ちゃん! 次の現場に向かうよ!」
「はい!」
◇◇◇
そしてその頃、エジプトでは。
巨大化したMt.レディが自動車を抱えるようにして避難誘導をしていた。
「こんな広範囲の区画で爆弾見つかるのかよ!?」
峰田が文句を言いながら走っていた、その時だった。
「君達! 君達! 君たーち!!」
「「「サラーム!?」」」
“個性”でペラペラになったエジプトのヒーロー『サラーム』が車の間を縫って渋滞を通り抜けていく。
「見つかるのではなく、見つけるのだよ! 我に続け!」
「「速え〜!」」
「ペラペラなのは伊達じゃねえ!」
サラームが言うと、上鳴、峰田、瀬呂が舌を巻く。
一方でプリンセスプリティハニーは、身体から出した粘液で渋滞を解消しつつ、猛スピードで滑って避難誘導をしていた。
「アナタ達!! 急いでトリガーボムを見つけてちょうだい!! いいわね!?」
「「「はいっ、姫!!」」」
プリンセスプリティハニーがアラベスクのポーズをして言うと、サイドキックの美男子達が一斉に返事をした。
(ウフフ♡頑張ってね、ボウヤ達♡)
プリンセスプリティハニーがウインクをすると、遠くにいたはずの峰田が突然胸を押さえて血反吐を吐いた。
「グハッ!!」
◇◇◇
その頃、オセオンでは。
エンデヴァーは、別の場所を探していたクレアボヤンスと連絡を取る。
「クレア、トリガーボムは!?」
『この区域にはないわ、次の区域に移動する!!』
(焦凍、何をしている!? 早く戻って来い!)
クレアボヤンスが報告をする一方で、エンデヴァーは戻って来ない轟達を心配していた。
◇◇◇
そしてその頃、クレイドのホテルでは。
緑谷がカードをパソコンに差し込むと、画面に大量のファイルが表示される。
「うわ! すごい数…どこから調べれば…「どけ! タイムスタンプの最新…この動画ファイルだ」
「おお! 才能マン!」
緑谷がアワアワしていると、爆豪がパソコンを操作して動画ファイルを開いた。
その後ろでは、ひなたが触角をピョコピョコさせていた。
すると、動画ファイルから音声が流れる。
『私の名は、アラン・ケイ。ヒューマライズに拉致された科学者の一人だ』
「拉致…?」
『ヒューマライズは多くの科学者達の家族を人質に取り、“個性”因子誘発爆弾の製造を強要した…それを使った最初の無差別テロは、優秀なヒーロー達をヒューマライズの支部がある場所に集めるための布石…』
「「「「「ん!?」」」」」
アラン・ケイと名乗る男が言うと、ひなた達5人が目を見開く。
『その上で、“個性”因子誘発爆弾を使い、そのヒーロー達を根絶やしにしようと考えている…』
「「「「「なっ…!!」」」」」
ヒューマニズムの目論みを聞いたひなた達は、更に大きく目を見開いた。
『トップヒーロー達を失った社会は崩壊…その混乱に乗じて、“個性”能力者を絶滅させ、“無個性”者のみの世界にする。それが、ヒューマライズの…フレクトターンの真の目的だ……』
「…うっ」
アラン・ケイがヒューマニズムの目論みの全貌を話すと、ひなたは突然吐き気に襲われて口元を手で覆う。
昔の記憶がフラッシュバックして冷や汗を流しているひなたの両肩に、心操が手を置いた。
『私のこの声が、ヒーローに届くことを望む。そして、私と同じく拉致された『エディ・ソウル』が命にかえて作ってくれた爆弾の解除キーで…どうか世界を救ってほしい…!』
「あ…!」
(ロディくんのお父さん…!)
『ソウル』という姓を聞いたひなたは、すぐにロディの父親だと気付く。
するとその時、女性の悲鳴が聞こえてくる。
「キャー!!」
人々が一目散にホテルのロビーから去っていったので、何事かと思いひなた達が後ろを振り向く。
後ろのテレビには、緊急ニュースが表示されていた。
『繰り返しお伝えします。人類救済を標榜する団体、ヒューマライズが世界各地に爆弾を設置、2時間後…リアルタイムで1時間52分後、爆発するという犯行予告を出しました。ヒューマライズが公表した爆弾設置区域はパニックが発生しており、ヒーロー達が避難誘導及び爆弾回収作業にあたっております。爆弾の該当地域は次の通りです』
テレビに表示された該当地域を見たロディは、大きく目を見開く。
「あっ、ウソだろ…!?」
「どうしたの?」
ロディを心配したひなたが尋ねると、ロディが震え声で言った。
「オセオンの被害地域、俺んちも入ってやがる…!」
「そんな…!」
ロディが言うと、緑谷も目を見開く。
すると轟は、パソコンを操作して情報を公開しようとした。
「統括本部にこの情報を送って、ヒーローチームの撤収を…「するわけねーだろ!」
轟が情報を公開しようとすると、爆豪が遮った。
すると緑谷も爆豪に同意する。
「うん。ヒーローはトリガーボムを探し続ける。たとえ爆弾の標的が自分達だったとしても罠だとわかっていても…救いを求めている人たちがいる限り…その人達を置いて逃げるなんて事、ヒーローなら絶対にしない…そこまで考えての作戦なんだ…!」
「全部掌の上って事かよ…! どうすれば…」
緑谷が悔しそうに言うと心操も悔しがり、全員が沈黙した。
するとその静寂を打ち破るように轟が言った。
「だったらその解除キーで、トリガーボムを止めるまでだ!」
轟が言うと、解除キーを調べていたひなたが目を見開く。
「…! 確かに、そのタイプのキーなら誰にでも解除可能だけど…」
「でも、どうやって…」
緑谷は、考えあぐねていた。
問題は、『どうやって見つけ出すか』だった。
すると爆豪は、轟を押し退けてパソコンを操作した。
「どけ! 答えはこン中にあるに決まってんだろうが! 鍵を作っておいて、ドアの位置を報せないアホがいるか!」
「それだ!! かっちゃん天才かよ!!」
爆豪が言うと、ひなたが両手で爆豪を指差す。
爆豪は、犯行声明のポイントが表示された世界地図と、チップの中に残されていた世界地図を重ね合わせる。
「犯行声明にないポイント…」
すると一ヶ所だけ、2枚の世界地図が示す場所が一致しないポイントがあった。
「ここがクソどもの本拠地!」
「オセオンの山岳地…!」
爆豪がそのポイントを拡大すると、ひなたはそのポイントを指差して言った。
すると緑谷は、思い出したように爆豪に尋ねる。
「かっちゃん、トリガーボムの制御システムは!?」
「やっとるわ、クソナード!」
爆豪は、基地の内部構造を表示した。
制御システムがあるのは、本拠地の最下層だった。
「一番奥の地下…!」
「場所が分かったが、ここから直線距離で400キロ以上ある…」
「車で行っても…間に合うわけないか」
「クッ…」
場所が特定できたのはいいが、問題はその距離だった。
5人が考えあぐねていたその時、ロディが言った。
「間に合う」
「え?」
「俺に、考えがある」
そう言ってロディは、パソコンに地図を表示して目的の場所を指差した。
そこはクレイドの飛行場だった。
◇◇◇
その後クレイド飛行場にて、中型のプロペラ機が離陸した。
ロディは、操縦席でプロペラ機を操縦していた。
「大丈夫、操縦の基礎はわかってる。ビビってる場合じゃねえ!」
その頃、5人はそれぞれ自分のコスチュームに着替えていた。
ひなたは、かつて研究施設にいた頃、自分が“個性”を消したせいで志賀に殺された仲間達の最期の絶望の表情を思い出し、震える手を握りしめた。
(もう誰にも…あんな思いをさせない!)
(必ずトリガーボムを止める!)
(イカれたクソ共をブッ潰す!)
(奴等の好きにはさせない…!)
(絶対に守るんだ…ヒーロー達を、世界を!)
轟、爆豪、心操、緑谷の4人も、それぞれの思いを胸に気を引き締めた。
◇◇◇
その頃、ヒーローチーム司令部では。
「オセオン派遣チームのヒーロー、ショートからデータが送られてきました。トリガーボムの解除キーを入手したとの事!」
オペレーターが言うと、オールマイトと長官が目を見開く。
長官は、オペレーターに尋ねた。
「現在地は!?」
「トリガーボムのメインシステムがある、ヒューマライズの隠し施設へ向かっているようです!」
オペレーターの報告を聞いたオールマイトは、地図が指し示す隠し施設の位置を確認しながら、隠し施設に向かっている5人の無事と健闘を祈った。
(轟少年、爆豪少年、心操少年、相澤少女…緑谷少年…!)
◇◇◇
その頃、トリガーボムを探していたエンデヴァーはというと。
「ショートがトリガーボムの解除に向かっただと!?」
司令部からの連絡を受けたエンデヴァーは目を見開く。
飛行系の“個性”を持つエンデヴァーのサイドキックの背中に乗って同様の通信を聞いていた相澤は、教え子達の身を案じた。
「心操も一緒か…あいつら…」
すると、バーニンがエンデヴァーに進言する。
「すぐ応援に…!」
「いや、避難誘導と爆弾解除が優先だ!」
「ええ。それに、あいつらなりに勝算があるから向かってるんでしょう。あいつらは無茶だが無謀じゃない」
エンデヴァーがバーニンの意見に反対すると、相澤もエンデヴァーに賛成した。
するとその時、クレアボヤンスから通信が入る。
『エンデヴァー!!』
「どうした!?」
『トリガーボムを発見!』
「場所は!?」
『オセオンタワーのノースゲート前に停まっている大型トレーラーの中です!』
クレアボヤンスの報告を受けたエンデヴァーは、他のヒーロー達に指示を出す。
「タワー付近のヒーロー、回収に向かうぞ!」
「「「「了解!!!」」」」
エンデヴァーの指示に、ヒーロー全員が返事をした、その直後だった。
『キャア!!』
「クレア!?」
突然、クレアボヤンスの悲鳴が聞こえた。
その声にエンデヴァーが反応した次の瞬間には、エンデヴァー、バーニン、相澤、そして飛行系のサイドキックの4人が緑色の鞭のようなもので絡め取られていた。
「こ、これは!?」
◇◇◇
一方、日本チームはというと。
「あっ、障子!! 緑谷達が爆弾の解除に向かってるって!」
「気を抜くな、耳郎!」
耳郎が障子に報告すると、障子が索敵しながら叫んだ。
「今やるべき事は、与えられた任務をこなす事だ!」
「う、うん…!」
障子が言うと、耳郎も索敵に集中する。
するとその時、ギャングオルカがトリガーボムを発見した。
「トリガーボム、発見!! あの貨物列車の前から3番目!! コンテナの中だ!!」
「よっしゃ!」
ギャングオルカが位置を知らせると、ファットガムと天喰が列車の上に降り立つ。
だが二人の目の前にはヒューマライズの団員が三人立ちはだかり、そのうちの一人が両腕をドリルに変形させた。
「
天喰が驚いていると、さらに背後にも団員が数人現れる。
「チッ、護衛がおんのかい!」
◇◇◇
その頃、フランスでは。
「ウラビティ! フロッピー! トリガーボムを安全な場所に!」
「はい!」
「ケロ!」
リューキュウが竜化して、サーベルタイガー化した団員を押さえながら麗日と蛙吹に指示を出すと、二人は返事をしながらトリガーボムが積まれているトレーラーに向かう。
(デクくん達が爆弾を止めてくれるって信じる! でも今は、私達にできる事を!!)
麗日が目的のトレーラーに向かうと、トレーラーの天井を破って三人の団員が立ち塞がる。
だが麗日は、お構いなしに突進した。
「どけえええっ!!」
◇◇◇
その頃、司令部では。
オセオンタワーの付近にて、相澤が鞭使いの団員を睨んで“個性”を消し、エンデヴァーが炎を放っている映像が表示される。
だが今度は、ビームを放つ団員が現れた。
「各チーム、トリガーボムを発見していますが、ヒューマライズの抵抗を受けて回収できません!」
モニターに、各地で苦戦しているヒーローチームが映し出された。
さらには、タイムリミットまで迫っていた。
「リミットまで30分を切りました…!」
オペレーターが報告をするとオールマイトは、ヒーロー達が命懸けで戦っているのに自分はその場にいる事すらできない歯痒さを、脇腹を抑えながら耐えていた。
(ヒーロー達も必死に闘っている…頼むぞ……未来のヒーロー達よ!)
◇◇◇
その頃、ヒューマライズの本拠地付近では。
豪雨の中、プロペラ機が近くまで来ていた。
「近いぞ!」
それらしき建物が見えてくると、ロディは一直線に建物に向かってプロペラ機を操縦した。
だがその様子は既にヒューマライズに捉えられており、祭壇の巨大なモニターに表示されたプロペラ機を見て団員達がどよめく。
「重病者どもを粛清せよ!」
フレクトターンが告げると、フレクトターンの後ろにいた団員達が頭を下げる。
そしてその頃ロディは、本拠地の着陸地点まで辿り着いていた。
「あそこが本拠地! 着陸するから掴まってろ!」
ロディが言うと、ひなたと緑谷がロディに言った。
「うん、後は僕らに任せて!」
「ロディはこのまま引き返して!」
「あ? 何でだよ!?」
二人が引き返すよう言うと、爆豪、心操、轟も口を開く。
「パンピーは大人しくしてろ」
「お前まで巻き込むわけにはいかない」
「ここから先は…」
「「「「「ヒーローの仕事だ!!」」」」」
5人は、そう言って一斉にプロペラ機から飛び降りた。
爆豪は爆破で、轟は炎で、緑谷はエアフォースで、ひなたは心操を抱えたままサポートアイテムで落下速度を制御した。
その直後、団員達がマシンガンを放ってくる。
すると爆豪は落下しながら爆破をマシンガンのように放ち下にいた団員達を蹴散らし、ひなたは爆音攻撃で団員達に大ダメージを与えた。
「雑魚共は引っ込んでろ!!」
『どけぇえええええ!!!』
「「「うわあああ!!」」」
二人に蹴散らされた団員は、勢いよく吹っ飛んでいく。
すると今度は両腕を大砲に変形させた団員が、5人を狙ってエネルギー砲を撃ってくる。
ひなたは、爆音攻撃でエネルギー砲を残らず消し飛ばした。
「団員の中にも“個性”持ちが…!?」
「団員のほとんどは“無個性”のはず…!」
「傭兵だけじゃねえのか!?」
団員が普通に“個性”を使ってきたので、緑谷、心操、轟が驚く。
心操はペルソナコードで声色を変えて団員同士の仲間割れを起こし、轟は炎で大砲の団員を倒した。
だがその直後、他の団員が音波で爆豪を狙った。
「う…! 音波か…!」
爆豪は、耳を劈く爆音に両耳を塞ぎ、その隙に他の団員がマシンガンで爆豪を狙った。
するとひなたが前に出て、軽く息を吸い込んだ。
「同じ“個性”で喧嘩売った事、後悔させてやるよ」
ひなたは息を吸い込むと、団員の何倍もの音量で叫んだ。
『YEAHHHHHHHHHHHH!!!!!』
「ぐあ!?」
ひなたは、“個性”を破壊するエネルギーを纏った音波を放ち、団員の音波を殺すとそのまま爆音で気絶させた。
そして緑谷は、爆豪をマシンガンで狙っていた団員を蹴散らした。
「「かっちゃん!」」
「わあってらあ!!」
ひなたと緑谷が叫ぶと、爆豪は爆破で団員達を蹴散らした。
轟は、氷結で作った柱から飛び上がり、氷の槍で団員達を蹴散らした。
「緑谷! 相澤!」
そしてそのままひなたと緑谷を拾うと、二人を抱えたまま氷結で滑っていった。
「爆豪、心操! ここは任せた!」
「わかった!」
轟が言うと、心操が頷く。
「行かせるな! 「指図すんじゃねえ!」
団員がマシンガンを放ってくると、爆豪は轟に反発しつつも爆破を放って団員達を吹き飛ばした。
その頃、ひなた達三人は、轟が伸ばした氷結の上に乗ってひたすら突き進んでいた。
「止まれええええ!!!」
「…デッくん!!」
「うん、この突き当たりを右だよ!」
「よし」
ひなたと緑谷が言うと、轟が頷く。
一方で心操と爆豪は、団員達を次々と薙ぎ倒していた。
「うおらああああああ!!!」
「「「うわああああああ!!!」」」
爆豪の無双の前にはほとんどの団員が歯が立たず、心操が援護するまでもなく全滅した。
「へっ、雑魚ばっかかよ」
「もうお前一人で良かったんじゃないかな」
「てめえがノロマなンだよ!!」
「悪い…」
爆豪の無双っぷりに心操が半ば呆れていると、爆豪が心操に悪態をつき心操は素直に謝った。
すると心操は、足元に気を失った団員が転がっている事に気が付き、団員の服を調べて何かを回収した。
その直後だった。
「下がってろ!!」
爆豪が心操を足蹴にし、自分も爆破で回避した。
するとその直後、蛇腹のような剣が二人目がけて襲い掛かってきた。
二人の目の前には、蛇顔の団員がいた。
「ウフフフ…」
蛇顔の団員エナが不気味な笑い声を上げると、心操がエナに尋ねる。
「何で“個性”持ちのあんたがヒューマライズに加担してるんだ」
「我々はヒューマライズに選ばれし者…」
心操が“個性”でエナの意識を奪おうとした、その瞬間だった。
エナの背後から、
「!!」
エナと全く同じ姿をした影分身のような人物が剣を伸ばしてくると、爆豪は咄嗟に剣を爆破で弾き飛ばす。
エナの後ろから現れたのは、彼の双子の弟であるディオだった。
ディオの乱入によってエナの洗脳に失敗し、二人は不気味な笑みを浮かべながら心操と爆豪に剣の鋒を向けてくる。
「キヒヒヒ…」
「チッ、もう一匹いやがったか…! 死ねええええ!!!」
爆豪は爆破をマシンガンのように撃ち込むが、二人は左右に分かれて回避した。
(速え!)
するとその直後、エナの剣が襲いかかる。
咄嗟に籠手で剣を受けたが、背後からディオの剣が爆豪を襲った。
「ぐああ!!」
ディオの剣で切り裂かれた爆豪は、血を流してマスクが半分切り裂かれる。
エナとディオがさらに爆豪を切り裂こうとしたその時、乾いた火薬の弾ける音と金属音が同時に響く。
「キヒッ…」
ディオが自分の方に飛んできた銃弾を剣で弾き、後ろを振り向くとそこには拳銃を構えた心操がいた。
「爆豪!!」
「てめえ、それ…!」
「さっき拾った! “無個性”の団員なら、護身用に持ってる可能性が高かったからな!」
心操はエナとディオを拳銃で狙撃して爆豪から遠ざけようとしたが、二人は銃弾を躱すと剣で心操の顔を切り裂いた。
剣が心操の顔に当たってペルソナコードが壊れ、顔から血が噴き出る。
「アハハハハ!!」
「ぐぁ…!!」
すると爆豪は、痛みに顔を歪めながら態勢を立て直している心操に何かを渡しながら話しかけた。
「おい、癪だが手ェ貸せ心操!」
「っ…! いいけど…息合わせられるのか!?」
「バァカ! てめーが俺に合わせンだよ!」
「…わかった!」
◇◇◇
その頃、ロディはというと。
「あいつら、勝手しやがって…!」
ロディは、本拠地から少し離れた森の中にプロペラ機を着陸させていた。
ロディは、ひなた達を置いて帰る事は出来ず自分も本拠地に向かおうとしていた。
だがその時、団員達に囲まれてしまう。
「ロディ・ソウルくん…だね?」
◇◇◇
そしてその頃、ひなた達三人はというと。
三人は、刃向かってくる団員達を返り討ちにしながら目的地へと直進していた。
だがその時、壁の一部に仕掛けられたレーザー機器からレーザーが発射されて氷結が粉砕され、三人は下に落ちる。
轟は、指先から炎熱を放ってレーザー機器を焼き切った。
「轟くん!!」
「焦ちゃん!」
「先に行け! 時間がねぇ!」
「…! だったら僕も…「俺一人で十分だ! いいから行け!」…うん!」
轟が言うと、緑谷とひなたは先に進んだ。
すると轟は、氷結と炎熱を同時に出す。
「一気に決める! 『膨冷熱波』!!!」
轟は、目の前を一瞬で凍らせると、氷結に炎熱をぶつけて爆風を起こす。
爆風をまともに喰らった団員達は全員吹き飛び、轟は二人を追いかけようとした。
…が。
「グォオオオオオオ!!!」
後ろから赤い角を生やした団員、レヴィアタンが煙の中から飛び出してくる。
轟は咄嗟に炎熱を放つが、レヴィアタンは灼熱の炎をものともせずに直進してきた。
「グオオ…グオオオオオオオ!!!」
レヴィアタンが拳を放ってくると、轟は後ろに退いて態勢を立て直した。
「炎が効かねえ…!」
轟は、今度は氷結を放ってレヴィアタンを足止めしようとする。
だがレヴィアタンは、氷結を破って威嚇してきた。
「グオオオオオオ!!!」
(自我が無え…! トリガーをキメてんのか!?)
するとその直後、レヴィアタンの両手の指が触手のようにうねり、轟に襲い掛かった。
轟は氷結を細く伸ばして回避するが、レヴィアタンの触手に氷結を砕かれて落下する。
その瞬間、レヴィアタンに身体を掴まれ、そのまま床に叩きつけられる。
すると床が大きく割れて下の地下水脈まで突き抜け、轟は何とか床にしがみついて落下を免れていた。
だがその直後、地下水路から水の竜巻が襲いかかり、轟を飲み込んだ。
轟が地下水路に落ちると、不自然な水流が轟を攫っていく。
「グルルルルルル…」
波に攫われながらも水を掻き分けていた轟が見たのは、レヴィアタンの手の動きに合わせて流れていく波だった。
水流を操っていたのはレヴィアタンだったのだ。
(“個性”を回転させて、水流を操ってんのか…!?)
「グォオオオオオッ!!!」
◇◇◇
その頃、緑谷とひなたはというと。
「スマアアアアアッシュ!!!」
「すぅ……『どぉぉけぇぇえええええええ!!!!』
二人は、足止めしようとしてくる団員達を残らず蹴散らした。
緑谷が蹴りを入れると突風が起こり、ひなたが叫ぶと無数の鍵盤の刃が生えて団員達を突き刺していく。
二人は、そのまま制御システムのある最下層の部屋へと走っていく。
◇◇◇
その頃、爆豪と心操はというと。
爆豪が爆破を放ち心操がそれに合わせて発砲するが、エナとディオが銃弾を避け爆豪の爆破を斬り裂く。
(クソッ、爆破そのものも斬っちまいやがる…!!)
(クッ、一発も当たらねえ…!)
悪戦苦闘する二人を見てエナが舌舐めずりをすると、ナメたような態度が気に入らなかったのか爆豪がブチ切れる。
「余裕ブッこいてんじゃねえぞ!!」
爆豪は、エナに爆破を浴びせて追い詰めていく。
「ゼロ距離で…」
爆豪はエナをゼロ距離で吹き飛ばそうとしたが、ディオの伸ばした剣が直撃して大量の血が噴き出る。
「ぐぁぁ!!」
「アハハハ!! ざァんねェん!」
「爆豪!!」
ディオは、血塗れになる爆豪を見て笑っていた。
心操は拳銃を発砲して援護するが全て避けられ、ついには弾切れを起こしてしまった。
心操がヤケクソと言わんばかりに捕縛武器を投げつけるが、二人に斬り裂かれて脇腹を斬りつけられた。
「アハハハハハ!!」
「ぐぁ…!!」
「チッ……! ちょこまかウゼーんだよ!!」
爆豪は、今度はディオ目掛けて爆破を浴びせた。
するとディオは爆破を切り裂き、エナが背後から剣での攻撃を放ってくる。
爆豪は勢いよく飛び上がって二人に爆破を浴びせ心操も捕縛武器で援護するが、エナとディオは二人の攻撃を避けていく。
そしてエナとディオは、再び心操と爆豪を切り裂いた。
「「ぐぁあ!!」」
エナとディオは、心操と爆豪を切り裂くと二人同時に着地し剣をうねらせながら笑った。
「「アハハハハハハハ!!」」
「クッ…その笑い声、耳障りなんだよ!!」
そう言って爆豪は、エナとディオの後ろにあった柱目がけて籠手で爆破を放った。
すると爆豪と心操が攻撃の度に投げた手榴弾が連鎖的に爆発を起こし、それと同時に心操が捕縛武器を引っ張ると柱の重心が傾いて柱が崩れる。
エナとディオは、柱の崩壊に巻き込まれ、瓦礫の中に生き埋めになった。
「ハッ、雑魚にはわかんねぇよなぁ…戦いながら手榴弾仕込んでたなんてなァ」
「悪い。会敵した時点で洗脳できていれば…油断した」
「それやめろや…ウジウジうぜェんだよ…!」
爆豪が笑いながら言うと心操が爆豪に謝り、自分を卑下する心操に爆豪が弱々しくキレた。
だがその時、瓦礫の中でエナとディオが首筋に注射器を打った。
するとその直後、蛇腹のような剣が瓦礫を突き破って飛び出し、その中から二人が現れる。
二人は現れた瞬間にボコボコと変形し、背中から4本の剣を生やした。
さらに青紫色の髪には白髪が混じり、元々不気味だった爬虫類顔はさらに不気味さを増す。
「「キャハハハハハハハハハ!!!」」
狂ったように高笑いする二人を見て、心操と爆豪は戦闘態勢を取る。
「あいつら、まさかトリガーをキメたのか…!?」
「本物のイカレになりやがったか……!」
そう言って爆豪が爆破で飛び出し、心操も爆豪を追いかけた。
◇◇◇
その頃、緑谷とひなたはというと。
二人は、団員達からマシンガンでの攻撃を受けつつもトリガーボムのある部屋へと一直線に向かっていた。
(早く…早く…!)
(早く解除しなきゃ…!)
「「邪魔をするなあああ!!!」」
二人は、マシンガンで弾幕を張ってくる団員達に向かって攻撃を放ち、部屋の扉ごと吹き飛ばした。
最奥の部屋に辿り着いた二人は、そのまま部屋の中へと足を進める。
(ここが一番奥の部屋…なら、あの扉の先にトリガーボムの制御システムが…)
「! デッくん」
「!」
ひなたが声をかけた直後、二人の足元へレーザーが飛んでくる。
二人は、後ろに跳んでレーザーを避けた。
するとその時、どこからか声が聞こえてくる。
「失せよ。お前達のような重病者が立ち入っていい場所ではない」
そう言って現れたのは、フレクトターンだった。
(団体指導者、フレクト・ターン…!)
(こいつが、ヒューマライズのボス…!)
「ここは人類を救済する神聖なる場所だ」
フレクトターンがそう告げて大階段を降りていくと同時に、後ろのシャッターが次々とせり上がっていく。
すると緑谷とひなたは、フレクトターンを睨みながら言った。
「何が人類の救済だ! 『“個性”終末論』は科学的に実証されていない! ただの俗説じゃないか! そんなあやふやな主張を鵜呑みにして、なぜこんな恐ろしい事をする!?」
「お前が何の罪もない人達を傷つけようとしてるのなら、それは到底受け入れられない!!」
緑谷とひなたが反論すると、フレクトターンが告げた。
「純粋なる人々は“個性”という病魔、その脅威にさらされている。それは時とともに混ざり、深化し、コントロールを失って人類を滅亡させる。“個性”保持者は、生まれながらに罪人なのだ」
「そんな事はない! “個性”も“無個性”も、病気でもなんでもない! みんな生きてる同じ人間だ!」
「“個性”社会のせいで苦しむ人達は大勢いる。だけどそんな中でも、望まない“個性”と、“無個性”と向き合って一生懸命生きてる人達を、僕は知ってる!!」
フレクトターンの暴論に、緑谷とひなたは感情を剥き出しにして反論した。
制御できない“個性”に苦しみながらも、困難を乗り越えてきた緑谷。
自分の“個性”に悩みながらも、憧れ続けたヒーローになる為にここまで来た心操。
恵まれた“個性”を持って生まれたばかりに虐待紛いの教育を受け、それでも自分の“個性”と向き合った轟。
“無個性”である事を悲観せず、自分に出来る方法でヒーローを助けようとしているメリッサ。
“個性”の残り火が燃え尽きてもなお、依然“平和の象徴”であり続けたオールマイト。
“個性”で親を消してしまい治崎に苦しめられ、それでも自分の“個性”と向き合っている壊理。
“個性”で未来を見て希望を託したサー・ナイトアイ。
ひなたの脳裏に浮かんでいたのは、今の自分と向き合って前に進んできた者達の姿だった。
そしてひなた自身も、自身の“個性”に苦しんできた一人だった。
“無個性”故に“個性”に強い憧れを抱いていた緑谷と、強過ぎる“個性”故に“個性”に怯えて生きてきたひなた。
立場こそ真逆だったが、互いに目指すものは同じだった。
するとフレクトターンは、ひなたに語りかけた。
「…“個性”を壊す“個性”……難儀な病魔を抱えたものだ。周りの病人から忌み嫌われ、自身の“個性”を呪った事は無かったか? 生まれ落ちた事を後悔した事は無かったか?」
フレクトターンが尋ねると、ひなたが目を見開く。
全人類の天敵と言うべき“個性”を持つひなたが忌み嫌われるのは、想像に難くなかった。
するとひなたは、過去の苦い記憶を噛み締めながら言った。
「……! …うん、あったよ」
「…!」
ひなたが言うと、緑谷が目を見開く。
研究施設で散々拷問を受け、施設を出てからも苦しい毎日だった。
雄英という環境が特殊だっただけで、小学校では“個性”を気味悪がられ、中学校では竜崎以外の友達ができず、ひなた自身もそれが普通の反応なのだと受け入れてきた。
するとフレクトターンは、ひなたに向かって手を差し伸べてくる。
「ならば私の元へ来い。お前は既に重病者だが、お前の力があれば病に侵された人類を救済できる。全ての人類を救済した暁には、お前の望みを叶えてやろう」
「嫌だ!!!」
「!」
フレクトターンが自分のところに来るよう言うと、ひなたは大声を張り上げて反発し、激昂した。
「確かに昔は、生まれてきた事を後悔した事もあった。でも、僕を支えてくれた人達がいたから、僕は僕を好きになれた!! 今はこの“個性”を持って生まれた事をこれっぽっちも後悔してない!! 勝手に僕を哀れむな!!!」
ひなたが言うと、フレクトターンは呆れたように口を開く。
「…重病者は度し難い…やはり私がやらねばならぬ」
「絶対にトリガーボムは止める!!」
「誰も傷つけさせない!!」
緑谷とひなたは、フレクトターンと正面から対峙し攻撃態勢を取った。
緑谷はフルカウルを使って飛び出し、ひなたも“個性”を発動して大きく息を吸い込む。
「スマアアアアアアッシュ!!!」
『YEAHHHHHHHHH!!!』
二人は同時にフレクトターンに攻撃を放ったが、二人の攻撃は僅かにフレクトターンに届かなかった。
そしてその直後、その衝撃が二人に跳ね返ってきた。
「ぐっ…あ゛あっ!!」
「い゛っ…うぅ……! デッくん…!」
緑谷にはまるで自分と同じ衝撃波を喰らったようなダメージが直撃し、ひなたは自分の出した声で耳を劈かれた。
「弾かれた…! …違う、この衝撃と威力…まるでスマッシュを受けたような…」
(どうなってるの…!? 音波が弾き返された…! “個性”を発動させる隙なんて与えてなかったはず…)
「まさか、常時発動型の…!」
緑谷とひなたがフレクトターンの“個性”を推測すると、フレクトターンは“個性”を使って浮き上がりながら答える。
「そうだ。私は生まれながらに病を患っている。決して消えることがない、全てを反射してしまう病を…」
(やっぱり…身体に受けた衝撃を反射する“個性”…! しかも常時発動型…!)
「自分も“個性”持ちなのに、何故“個性”を信じられないんだ!?」
そう言って緑谷がエアフォースを放ち、ひなたも靴底から衝撃波を放つが、全て弾き返される。
自分の放った衝撃波に吹き飛ばされた二人は、壁に叩きつけられた。
「ぐぁっ!!」
「がっ…!!」
二人が壁に叩きつけられてゆっくりと立ち上がろうとしていると、フレクトターンが告げた。
「信じる…だと…? 愚かな。この病のせいで、私は両親から一度も抱きしめられた事がない。心通わせた友人も、想いを寄せた人も、心すら反射させ私の元から離れていった…全てを反射する私は、自ら死を選ぶこともできない。コントロール出来ない“個性”は苦しみを生むだけ…そして人類は身体も心も深化する“個性”に押し潰される!」
そう言ってフレクトターンが飛び出した瞬間、緑谷も飛び出した。
(インパクトの瞬間だけ“個性”を使わずに…!)
緑谷は、インパクトの瞬間だけ“個性”を引っ込めて拳の力だけで殴った。
だが拳の力はフレクトターンに触れる前に全て一点に集約され、緑谷へと襲いかかった。
(それでも、反射される…!)
その直後、フレクトターンは緑谷の腹に拳を叩き込んで吹き飛ばした。
「ぐっ…うわぁああ!!」
フレクトターンに吹き飛ばされた緑谷は、シャッターを突き破って本棚に激突する。
するとその直後、緑谷と同時に飛び出していたひなたが横からフレクトターンに蹴りを入れる。
(だったら、インパクトの瞬間に引っ込めてベクトルを逆転させれば…!)
ひなたは、インパクトの瞬間にシューズを起動させて脚を引っ込め、その反射でフレクトターンを殴ろうと考えたが、失敗して逆に弾き返された。
「ぎぁ…!!」
吹っ飛ばされたひなたは、大きな弧を描きながら地面に叩きつけられた。
ひなたは、叩きつけられた身体を起こしながら緑谷と作戦を話し合う。
「デッくん! 何となくだけど、わかってきた…! こいつの“個性”の本質…!」
ひなたは、口元から流れた血を拭いながら自分の考察を緑谷に話した。
「光や音波を反射するはずなのに視覚と聴覚が正常に機能してるし、服とか普通に着てるって事は、多分だけど無害なものと有害なものを無意識下で常にフィルタリングしてるんだよ。一度無意識下で外敵としてフィルタリングされたものは意識して反射しないようにする事ができない…こういう事なんじゃないかな?」
ひなたがフレクトターンの方を見ながら言うと、フレクトターンはひなたの推測の範囲内で自身の“個性”を話した。
「正解だ。お前の言う通り、私は無意識下で反射するものと受け入れるものを選別している。私の“個性”は、両親や友人を有害なものと見做して反射した。故に私は私に絶望したのだ」
フレクトターンは、悲しげな目をして自分の生い立ちを語った。
他者から与えられる攻撃が全て『有害なもの』として認識され反射される時点で勝ち目など無かったが、ひなたはそれでもひたすら勝つ方法を模索し続ける事を選んだ。
「行ってデッくん! どのみち、ここで戦って二人とも消耗するのは合理的じゃない。僕がこいつを足止めするから、行って!」
二人は、ひなたがフレクトターンを足止めしている間に緑谷が制御システムに向かう作戦に出た。
だが、そんな二人を妨害するかのようにレーザーが二人を襲ってくる。
「私は私を否定する。“個性”という病を、この世から消し去る」
レーザーを避け続けていた二人だったが、フレクトターンは背中から鏡のようなものを展開する。
するとレーザー機器から発射されたレーザーは、鏡を反射していく。
「そして純粋なる人類を滅亡から救うのだ…!」
何枚もの鏡を反射したレーザーは、二人の身体を貫いた。
「「ぐぁあああ!!!」」
レーザーを喰らった二人は、その場に倒れ込む。
倒れ込んだ二人の身体からは、血が流れ出す。
「哀れな…」
そう言ってフレクトターンは、展開した鏡を自分のもとへ引き寄せると、モニターを展開した。
モニターには、世界各地でヒーロー達が戦っている様子が映し出されていた。
「あと5分…ついに人類の救済…その第一歩が始まる…! 数多のヒーロー達の死によって…」
そう言ってフレクトターンが口角を上げたその時、後ろから声が聞こえる。
「させない…」
「ん?」
「トリガーボムは…絶対に止める…!」
「僕が…皆を救けるんだ……!」
そう言って、緑谷とひなたはボロボロに傷つきつつも立ち上がった。
するとフレクトターンは、目を細めて告げる。
「ならば仲間と共に殺してやろう」
そう言ってフレクトターンは、レーザーを鏡に反射させる。
すると二人は、再び反射したレーザーに身体を貫かれた。
ひなたは、左耳のヘッドホンにレーザーが直撃し、ヘッドホンを粉々に砕かれた。
「「ぐぁあああ!!!」」
レーザーに身体を貫かれた二人は、そのまま地面に倒れ込んだ。
だが、それでもまた立ち上がった。
(麗日さん…蛙吹さん…上鳴くん…瀬呂くん…峰田くん…切島くん…耳郎さん…障子くん…八百万さん…皆、必死に戦ってる…! トリガーボムを止める為に…! 皆の笑顔を守る為に…!)
二人は、大量の血を流しながらも立ち向かった。
二人の目は、まだ死んでいなかった。
(考えろ…あいつに勝つ方法を…!)
(勝って、皆を救ける方法を…!)
二人はフレクトターンに立ち向かっていこうとするが、血を流しすぎて意識が遠のいていく。
だがその時、誰かが二人の身体を支えた。
二人が見上げると、そこにはロディが立っていた。
「ロ…ロディ…どうして……?」
「ロディ…くん……」
二人がフラフラの状態で尋ねると、ロディは笑顔を浮かべながら言った。
「もう大丈夫だ。デク、ヒナタ」
フレクトターンの“個性”に本作オリジナル要素をねじ込み、バチクソ強化しました。
とあるの一方通行をイメージしていただければわかりやすいと思います。
作者は、この手の作品では主人公とのパワーバランスを保つ為に敵を強化する派です。