「もう大丈夫だ。デク、ヒナタ」
笑顔でそう告げたのは、ロディだった。
「あ、あぶない…ここから離れて…」
「逃げ、て……」
緑谷とひなたが弱々しくもここから離れるように言うと、ロディは緑谷のコスチュームのポーチをまさぐった。
「ああ、こいつを奴等に渡したらな」
そう言ってロディが取り出したのは、制御システムの解除キーだった。
「…! 解除、キー…? ロディ…」
「なんで……」
「…言われたんだよ…こうすりゃ、オセオンの爆弾だけは止めてくれるってさ…」
ロディが言うと、緑谷とひなたは痛みに顔を歪めながらもロディを止めようとする。
「ロディ……ダメだ…僕達が、絶対に、止めてみせるから……う、うう…!」
「君の…弟と妹も、絶対…助けるから……! お願い、やめて…ぐっ…うぅ……!」
二人は必死にロディを止めようとするが、ロディは解除キーを握ったまま二人の方を振り向かずに言った。
「そんな身体で、どうやって止めるんだよ。どうやってあいつらを助けてくれるっていうんだよ。もう時間もねぇ。爆弾は爆発…ゲームオーバーだ」
「「ロディ」くん…!」
「…だから、弟と妹だけは俺が守る」
そう言ってロディは、フレクトターンに歩み寄る。
「デク、ヒナタ。俺はしがないチンピラだ…ヒーローのお前らみたいに、全部守る、全部背負うなんて事はできねえ…世界と家族…二つに一つしかねぇなら、どっちか取るしかねえんだよ……俺の親父も、そうだったんだろ?」
「そう、君の父親であるエディ・ソウルは、人類救済爆弾の開発に協力してくれた」
ロディが尋ねると、フレクトターンが答える。
「う…エディ…」
するとその時緑谷は、SDカードの音声の内容を思い出した。
『『エディ・ソウル』が命にかえて作ってくれた爆弾の解除キーで…どうか世界を救ってほしい…』
ロディは、父親を無理矢理自分に従わせたフレクトターンを睨みながらも彼に歩み寄る。
「何が協力だ…俺ら家族を人質にして言うこと聞かせたんじゃねーか」
「おかげで彼は正しい選択ができた。そして、君も父親と同じだ。愛するものを守るために正しい選択をした。私も同じ。私は人類を愛したからこそ、この計画を選択した…」
ロディが言うと、フレクトターンはロディに言い放った。
緑谷とひなたは、這いずりながらもロディを止めようとする。
「ロディ……ダメだ…ロディ……! ロディ……!」
「諦めちゃ…ダメだ……! ロディくん……!」
二人は、這いずりながらロディに声をかけた。
そうしている間にも、タイムリミットは迫っていた。
するとフレクトターンのもとへ辿り着いたロディは、全てを諦めた様子で言った。
「諦め時だぜ、ヒーロー…人は、こうやって裏切られていくんだ…俺もそうだ。いつもの事さ。嘆く事ねーだろ…」
「ロディ…」
「ロディくん…」
二人がロディに目を向けたその時、ロディのパーカーのフードからピノが顔を出す。
ピノは、声を出さずに首を横に振っていた。
「…!」
ロディが解除キーをフレクトターンに渡そうとしたその時、二人はロディとの会話を思い出した。
──ねえロディ、“個性”あるよね? どんな“個性”?
──あ! 僕も気になってたぁ!
──…笑わねーなら
──笑わない!
──うん!
──絶対だな!?
──絶対笑わない!
──うんうん!
──…俺の“個性”は……
ピノの合図で、二人は手に力を込める。
ロディがフレクトターンに解除キーを渡そうとしたその時、ロディは指で解除キーを空中に弾いた。
それを見たフレクトターンは、思わず目を見開く。
するとその瞬間、フードに隠れていたピノが鳴いた。
「「うぁああああ!!!」」
二人は同時に立ち上がると、フレクトターンに同時に攻撃をした。
「ピノ!」
その隙にロディがピノを呼ぶと、ピノは空中を舞う解除キーを嘴で咥えてキャッチした。
「よっしゃ! 狙い通り!!」
ロディは、初めから二人を裏切ってなどいなかった。
捕まったのをいい事に、システムのある部屋に侵入する機会を虎視眈々と窺っていたのだ。
だがその時、緑谷が自分の放った拳に吹き飛ばされてシャッターに叩きつけられ、ひなたは自分の声で左耳の鼓膜が破れて蹲っていた。
すると、ロディが目を見開いて叫ぶ。
「デク! ヒナタ!!」
「愚か者め!」
そう言ってフレクトターンは、壁のレーザーを作動させてロディを狙い撃ちしていく。
ロディは、次々と襲ってくるレーザーを軽い身のこなしで避けていく。
「ロディ!!」
緑谷とひなたは、ロディを助ける為レーザー機器を破壊した。
緑谷はエアフォースで、ひなたは超音波でレーザー機器を狙い撃ちしていく。
だがロディが階段を駆け上がっていたその時、レーザーが当たって階段が崩れ落ち、その瞬間に残っていたレーザーがロディの脇腹を貫いた。
「「あ……!」」
ロディが地面に倒れ込むと、二人は大きく見開いて叫んだ。
「「ロディイイイ!!!」」
二人はロディの元へ駆けていくが、緑谷の目の前にフレクトターンが現れ、拳を叩き込まれて吹き飛ばされた。
そしてひなたの目の前にはフレクトターンの左足が迫り、蹴り飛ばされて壁に激突した。
「ロディ! うっ…!」
二人はそれでもすぐに跳躍しロディの元へ行こうとするが、二人の頭を掴んで地面が割れる程の力で押し潰した。
「小賢しい…!」
二人が押し潰されそうになった、その時だった。
「デク! ヒナタ!」
ロディの声が聞こえ、二人が声のした方を見ると、脇腹から血を流したロディが奥の部屋の扉にもたれかかっていた。
「そのクソ野郎をブッ倒せ! 爆弾は俺が止める! 行け!!」
ロディが言うと、二人は目を見開く。
「行くんだヒーロー!! 行けええええ!!」
ロディが叫びながら奥へと走っていくと、緑谷とひなたはフレクトターンの両手を押し退けて立ち上がった。
二人は、同時にフレクトターンに攻撃を放つ。
二人の攻撃は通らず、フレクトターンに弾かれたが、それでも二人は立ち向かった。
「「行かせない!! ここから先は…絶対に!!」」
二人は、再び正面からフレクトターンに渾身の攻撃を放つ。
フレクトターンが正面から緑谷の拳を受け止め鏡でひなたの音波を受け止めると、緑谷の手袋が破れて緑谷は苦しそうな表情を浮かべ、ひなたの左耳からはさらに血が噴き出る。
だがその時、フレクトターンの鏡のうちの一枚にピシッとヒビが入った。
「!」
その頃ロディは、システムのある部屋に向かいながら“個性”について二人と話した事を思い出していた。
──ねえロディ、“個性”あるよね? どんな“個性”?
──あ! 僕も気になってたぁ!
──ん…こいつが俺の“個性”だよ。こいつの…ピノの行動は、『俺の本心』を示す
──へぇ〜!
──凄いね!
──凄かねーよ。いくら俺が嘘ついても、ピノを見られると…本音がバレちまう。本当、大した事ない“個性”だろ…
ロディは、ボロボロに傷ついたピノを掌に乗せて制御システムへと向かう。
だが意識が朦朧とし、その場に座り込んでしまった。
その頃緑谷とひなたは、ボロボロに傷つきながらも戦っていた。
ロディは、“個性”を打ち明けた時に二人に言われた言葉を思い出した。
──そんな事ないよ、ロディ。嘘を付けないなんて、とっても素敵な“個性”じゃないか!
──本当の気持ちってさ。言わなきゃわからないのに、本当に誰かにわかってほしい時にはなかなか言えないものだよ。いいよね、いつでも本音を打ち明けられるってさ!
二人に言われた言葉を思い出し、ロディは壁にもたれかかりながら階段を降りていった。
◇◇◇
その頃爆豪と心操は、トリガーで強化されたエナとディオに苦戦していた。
爆豪は爆破を放ってエナとディオを引きつけるが、二人はあっさり躱すと柱を斬り刻みながら爆豪に追い討ちを喰らわせにかかった。
「ぐぁあ!!」
爆豪は、エナとディオの猛攻を喰らいつつも逃げ続ける。
(クソ! 右側の反応が……!)
(爆豪が俺を庇って敵を引きつけてくれてる…だがこのままじゃいずれやられる…! 俺がミスしたから…!)
敵を引きつけて一方的に攻撃を喰らっていく爆豪を見て、心操は自分の不甲斐なさに顔を歪めていた。
するとその時、初めての戦闘訓練の時にひなたが笑いながら話しかけてきた事を思い出した。
──カッコいいよ!!
(何やってんだ、俺は…!!)
心操は、悔しそうにナイフを握りしめ歯を食いしばっていた。
爆豪は斬り裂かれながらも応戦するが、エナとディオの猛攻は止まらなかった。
するとその時、爆豪の身体に数本の剣が突き刺さる。
「がぁ!!」
「爆豪!!」
「「ギャハハハハ~!!」」
爆豪に剣が刺さると、エナとディオは笑い声を上げる。
だが爆豪は、それを両手で掴むと、エナとディオの剣を柱に巻きつけた。
「心操ォ!!」
「っ…!!」
爆豪が叫ぶと、心操は捕縛武器を使って飛び上がり、エナとディオに急接近した。
だがエナとディオが伸ばした剣に斬り裂かれ、大量の血飛沫を上げる。
「ぐ…あぁあああ!!」
心操は、叫び声を上げながらナイフを10本出し、エナとディオに5本ずつ投げた。
すると、心操の投げたナイフが二人の服や手足に刺さり、二人は柱に磔になって動きを封じられた。
「「キャア!!?」」
すると爆豪は、剣を身体から引き抜きながら凶悪な笑みを浮かべる。
「やっと…大人しくなりやがった…!」
爆豪は、そう言って両手の籠手を発射し二人の方へ吹き飛ばした。
「「シャア!!」」
二人は、口から剣を伸ばして飛んでくる籠手を斬り刻んだ。
すると中に溜まっていた爆豪の汗が炸裂し、大爆破を起こす。
爆豪は、両手から爆破を放ち、猛スピードで回転しながら上空へと舞い上がった。
身動きが取れない二人が見上げると、目の前に巨大な爆炎の竜巻が渦巻いていた。
「今度こそ…ブチ込んだらぁああああ!!」
爆豪は、竜巻の中を回転しながら二人に向かって直進する。
「『
爆豪が両手を前に出してありったけの爆破を放つと、最大火力の爆破が一瞬にして二人を飲み込み柱ごと粉々にした。
そして、爆風と熱が建物の中にも広がっていく。
二人は崩れた建物の下敷きとなり、爆豪は右手を掲げてサムズダウンをし心操は瓦礫に体重を預けていた。
「この…タコども…が……」
「緑谷…轟…ひなた……俺…少しは…役に、立てたかな……」
そう言って爆豪と心操は、血を流しすぎて二人とも意識を失い倒れた。
◇◇◇
そしてその頃、轟はというと。
轟は、レヴィアタンの生み出した水流に飲まれていた。
水流を凍らせてもその氷結を破って再び水流に飲まれ、抜け出せずにいた。
(い…意識が…)
水流に飲まれていた轟がゆっくりと目を開けると、その先には光が見えた。
地下水路が流れる先は崖になっており、地下水が滝のように流れていた。
(間に合え…!)
轟は、自身を覆っていた水流を凍らせ、そのままレヴィアタンの触手を凍らせていく。
そして轟とレヴィアタンが崖から落ちると、轟は炎熱で氷結を打ち破った。
「グオオオオオオ!!!」
「くっ…!」
レヴィアタンが触手を伸ばしてくると、轟は最大出力の氷結でレヴィアタンを拘束する。
するとレヴィアタンの本体と触手が凍りつくが、レヴィアタンは頭の角をドリルのように回転させて氷結を打ち破り、頭から伸ばした触手で轟を攻撃する。
「緑谷と相澤の邪魔はさせねえ! 『膨冷熱波』!!」
轟は、右手から火球を生み出すとそれをレヴィアタン目掛けて投げつけた。
するとその直後、冷やされた空気が急激に熱された事で膨張して爆風が起こり、轟に吹き付ける。
「くっ…!」
だが、その直後だった。
「グオオオオオオオ!!!」
レヴィアタンの形をした炎が襲い掛かり、轟を飲み込んだ。
轟は、灼熱の炎に焼かれて叫び声を上げる。
「うぅっ…あがぁああぁあああ!!!」
轟の視線の先には、周囲の炎を操るレヴィアタンがいた。
(炎まで操れんのか…!! なら…! 今、俺にできる最大の…!!)
轟は、身体の左側から炎を出すと、それを左拳に凝縮させる。
そしてレヴィアタンも、最大火力の炎を全身に纏った。
「赫灼熱拳!! 『噴流熾炎』!!!」
轟とレヴィアタンは、互いの炎をぶつけ合った。
轟がレヴィアタンの腹に拳を入れるとレヴィアタンの炎が吹き飛び、轟の炎がレヴィアタンの身体を突き抜けた。
「うぉおおおおおおお!!!」
轟がレヴィアタンの身体に最大火力を叩き込むと、その熱で水蒸気爆発が起こり下の氷が砕けていく。
轟とレヴィアタンは炎を上げながら落下していき、やがて両者を覆っていた炎が燃え尽きた。
(緑谷…相澤…止めろ…必ず……!)
轟は、緑谷とひなたに託すとそのまま気を失い、下の川に落ちていった。
◇◇◇
一方緑谷とひなたは、フレクトターンと死闘を繰り広げていた。
フレクトターンが拳を叩き込むと、緑谷は受け身を取るものの吹き飛ばされた。
そしてひなたも、蹴り飛ばされて壁へと叩きつけられ、右のヘッドホンも粉々に砕けた。
だが緑谷は、それでもなおフレクトターンの方へ直進し、ひなたもありったけの声で叫んだ。
一方、ロディはようやく制御システムまで辿り着いていた。
だが、自分の血で滑って転倒してしまい、その時落ちたペンダントが床を転がっていく。
ロディは、諦めずに解除キーを持った右手を前に伸ばした。
「お、俺も…親父…みてえに…!」
自分を守ってくれていた父親のように。
「お、俺も…デク…みてえに…ヒナタ…みてえに……!」
何度も自分を助け、世界中の人々の笑顔を守る為に今必死で戦っている二人のように。
その思いを胸に手を伸ばしたが、僅かに届かず力尽きた。
そのすぐそばで、ピノが消え始めていた。
その時、タイマーは残り1分を切った。
それを見た緑谷とひなたは、目を見開く。
「ロディ…!」
「助けなきゃ……!」
ロディがシステムを解除する前に力尽きたのを察した二人は、ロディを助けに行こうとする。
だがフレクトターンが緑谷を蹴り飛ばし、ひなたの腹を殴り飛ばした。
「がぁっ!!」
「ぐぁっ!!」
二人が吹き飛ばされると、フレクトターンは残り1分を切ったタイマー、そして制御システムの前で力尽きたロディが映されたモニターを見て口を開く。
「親子そろって無駄死にとは…クズは救いようがない」
「「違う!」」
フレクトターンがロディを嘲笑っていると、緑谷とひなたは口を揃えて否定した。
「ロディは…僕の友達はクズなんかじゃない!!」
「僕達を、皆を助ける為に…ここまで来てくれた…僕の友達を、バカにするな!!!」
二人は、再びフレクトターンに攻撃を放つ。
緑谷は蹴りを、ひなたは爆音の槍を放った。
しかし二人の攻撃は、すぐに跳ね返されて二人は衝撃を喰らう。
緑谷は苦しそうな表情を浮かべ、ひなたも無事だった右の耳からも血が噴き出る。
「ぐぅぅ…!!」
「ぎぁっ…!! う゛ぅ…!!」
「無駄だ。まだわからぬのか」
二人が攻撃を続けると、フレクトターンは冷たく言い放った。
だが二人は、一歩も退かなかった。
「当たり前だ…! 僕はロディを信じる!」
「友達を…仲間を信じる…!!」
「「ヒーローを信じる…!!」」
二人が叫びながら攻撃を放ったその時、フレクトターンの顔に妙な模様が浮かび上がる。
そして、それと同時にフレクトターンの鏡にピシッと亀裂が入った。
「!!」
◇◇◇
その頃、オセオンでは。
エンデヴァーは、大量の炎を噴き出して爆速で駆けつけると、トリガーボムを持ち上げて浮き上がらせた。
「ウォオオオオオオ!!!」
するとその時団員がエンデヴァーに奇襲を仕掛けようとしたが、相澤、バーニン、クレアボヤンスが返り討ちにした。
「エンデヴァーを援護しろ!」
「行って下さい、エンデヴァー!!」
バーニンと相澤が言うと、エンデヴァーはトリガーボムを持ったまま上空へと飛び上がった。
「焦凍よ!! ここは俺に任せろォオオオッ!!!」
◇◇◇
その頃、アメリカでは。
ホークスが羽根の剣で団員を倒しつつ、剛翼でトリガーボムを運んでいた。
「行け、剛翼! 被害が及ばない場所へ!」
ホークスが剛翼を飛ばしてトリガーボムを運ぼうとしたその時、飛行系の“個性”を持つ団員が追いかけてくるが、常闇が駆けつけ
だがその直後、プテラノドンの“個性”を持つ団員が襲いかかってくる。
「邪魔をするなァ!!!」
だがその時、イナズマが飛び出し団員の顔面を金棒で殴り飛ばした。
「グァア!!」
「それはこっちの台詞や!! 行くで風華ァ!!」
「うん、姉ちゃん!!」
イナズマが叫ぶと、イブキが勢いよく息を吹き込み竜巻を起こす。
そしてイナズマは、イブキが起こした竜巻に雷を纏わせた。
「「『疾風迅雷』!!!」」
「ぐぁあぁあああああ!!」
雷の竜巻が団員の身体を槍のように貫くと、団員は丸焦げになって下に落ちていく。
五常姉妹が助けに来ると、常闇が礼を言った。
「助かった!」
「礼を言うんは後よ、ツクヨミくん!」
イブキが言うと、常闇はホークスに連絡を入れた。
「ホークス! 新たなトリガーボムが発見された!!」
『なっ…! 何だって!?』
常闇が報告すると、ホークスが目を見張った。
◇◇◇
そしてその頃、日本では。
ファットガム達が、トリガーボムを回収していた。
「こちらは対処終了!」
「残りのトリガーボムは!?」
セメントスが報告しファットガムが尋ねると、障子が答える。
『現状、あと二つ!』
『待って! 新たに発見! 合計三つです!』
障子が報告した直後に、耳郎が新たに報告をした。
その頃切島と鉄哲は、向かってくる団員を次々と殴り飛ばしていた。
(ぜってー諦めねぇ!! そうだろ、爆豪!!)
◇◇◇
その頃、フランスでは。
麗日がトリガーボムに触れ、“個性”を発動させた。
「このまま上昇させて…!」
麗日がトリガーボムを浮かせようとしたその時、団員がカマキリの腕で麗日に斬りかかってくる。
だがその直後、蛙吹が舌で団員の身体を絡め取った。
「ケロ!」
蛙吹は、そのまま団員を舌で持ち上げて放り投げた。
そして地面に着地し、麗日に声をかける。
「お茶子ちゃん!! トリガーボムが!!」
空中に浮いたトリガーボムがビルの方へゆっくりと流れていくと、麗日は全速力で走り出し、自身に“個性”を発動させ浮かび上がるとトリガーボムに飛びついた。
(諦めない。デクくんなら絶対に!!)
◇◇◇
その頃、エジプトでは。
「『プリティハニー・ア・ラ・モード』!!!」
「「「ぐああああああ!!!」」」
トリガーボムを蜜のボールで包み込んだプリンセスプリティハニーは、“個性”で自身にドーピングをして筋肉をバキバキに盛り上がらせ周りの団員達を一方的に蹂躙した。
そして上鳴は、団員にポインターを投げつけると、電流を浴びせて感電させる。
「「「ギャアアアアアア!!!」」」
(緑谷達が諦めるかよ…!!)
((だったら俺達も!!))
瀬呂と峰田も、次々と団員に攻撃を放っていく。
◇◇◇
その頃、マレーシア・シンガポールでは。
ヒーローが口からの大噴水でトリガーボムを持ち上げている間、八百万は創造で生み出した武器で団員と戦っていた。
(絶対に諦めませんわ!)
◇◇◇
その頃、ヒューマライズの本拠地では。
仲間達が世界各地で戦っている様子が、モニターに映し出される。
「そう、ヒーローは諦めない! 諦めたりするもんか!!」
「どんな時でも…絶対に…諦めてたまるかぁぁ!!」
緑谷は身体から緑色の火花を散らし、ひなたは髪を逆立てて瞳を光らせながら突進した。
二人が同時に攻撃を浴びせると、フレクトターンは反射で攻撃を返そうとする。
だが、攻撃を受け止めるのに使った鏡が割れ、その影響でフレクトターンが初めて押された。
「!?」
緑谷とひなたは、さらに同時に攻撃を放った。
するとフレクトターンの反射が弱まり、またしても後方に押される。
(やはりパワーが上がった…?)
フレクトターンを守るように鏡が二人の攻撃を跳ね返すが、鏡が攻撃を受け切れずに割れていき、二人に全反射されるはずの攻撃が四散した。
フレクトターンは、ここに来て初めて表情に焦りが現れていた。
「違う…それだけではない……!」
(威力が落ちてきてる!! そうだ、あいつの反射の“個性”には限界点があるんだ!!)
(それだけじゃない、僕の“個性”は全反射されてたわけじゃない…少しずつ効いてたんだ…!!)
緑谷とひなたは、フレクトターンが弱体化した理由を推測した。
ひとつはフレクトターン自身の“個性”の限界、そしてもうひとつはひなたの“個性”によるものだった。
フレクトターンの“個性”では、ひなたの音波攻撃は反射できたものの、インパクトの瞬間に起こった共鳴までは無効化出来なかったのだ。
(なら!! その限界を超えろ!!)
(目の前に壁があるなら…ブチ破れ!!)
緑谷が渾身の蹴りを放ち、ひなたが髪を長くし瞳を変色させて攻撃を繰り出すと、フレクトターンの服が少し破れ、フレクトターンの身体の鏡にも小さなヒビが入る。
「「うあぁあああああああ!!!」」
二人が同時に攻撃を放つと、二人の放った攻撃は四散し、後ろの壁が吹き飛んだ。
そして小さなヒビが入っていた程度だった身体の鏡にも、ピシッと亀裂が入った。
「まさか…“個性”の限界…!? 私の“個性”が、
生まれて初めて経験する事象にフレクトターンが驚いていると、緑谷が言った。
「お前は諦めたんだ。諦めなければ…何度もぶつかっていけば、人と触れ合えたかもしれないのに…! 病気だとか言って勝手に諦めて、絶望して、お前はぶつかる事をやめたんだ!」
「黙れ…」
緑谷が言うと、フレクトターンは拳を握りしめながら緑谷を睨む。
すると、ひなたも言った。
「諦めずに“個性”の苦痛を乗り越えた人達を、弱さを強さに変えて胸を張れる生き方をしている人達を、僕は知ってる…! 何とかなる、ってやつだよ!!」
「黙れ…」
ひなたが言うと、フレクトターンはさらに怒りで顔を歪める。
二人は、立ち上がってフレクトターンを見据えながら言った。
「僕達は、諦めない言葉を知っている…!」
「黙れ…!」
「いつも自分に言い聞かせてる…!」
「黙れ…!!」
二人は、同時に叫びながら今の自分にできる最大限の攻撃をした。
「「更に向こうへ!!! プルスウルトラァアアアアアア!!!!」」
「黙れえええええええ!!!」
二人とフレクトターンが同時に攻撃をすると、三人の間で力が拮抗する。
そして数秒間力がぶつかり合うと、フレクトターンの右腕の袖が破れ拳の鏡がヒビ割れる。
二人がさらに攻撃をすると反射されるが、二人はさらに立ち向かっていく。
緑谷が踵落としを放ち、ひなたが爆音を放つと、フレクトターンは二人を吹き飛ばす。
二人は、何度も、何度もフレクトターンにぶつかっていった。
「『デトロイト…スマアアアアアッシュ』!!!」
「『
二人は、渾身の攻撃をフレクトターンに叩き込んだ。
すると、フレクトターンを覆っていた鏡が全て粉々に砕ける。
ついに、二人の攻撃がフレクトターンの“個性”を打ち破ったのだ。
緑谷とひなたは全身に渾身の力を込めてフレクトターンに殴りかかり、フレクトターンもまた初めて素の力だけで二人と殴り合いをした。
だが二人とも血を流しすぎて身体はとうに限界を迎えており、フレクトターンに殴り飛ばされて意識が遠のいていく。
するとその時、二人にとっての最高のヒーローの言葉を思い出した。
──ヒーローとはピンチをぶち破っていくもの!
(オール…マイト…)
緑谷は、オールマイトの言葉を思い出した。
オールマイトは、司令部で緑谷の健闘を祈っていた。
(緑谷少年…!!)
──そういう
──かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者』と!!
(お父さん…パパ……)
ひなたは、父親である相澤とプレゼントマイクの言葉を思い出した。
二人は、それぞれ命懸けで戦いながら、娘の健闘を祈っていた。
((ひなた…!!))
──ヒーローは、守るものが多いんだよ。だから……
「だから負けないんだ!!」
「だから絶対…勝つんだよぉおお!!!」
緑谷は、満身創痍の身体に100%の力を纏った。
ひなたは、全身から血を噴き喉が裂け、眼の血管が切れて血で濁ってもさらに“個性”を使い続けた。
「「うおぉおおぁあああああぁああああ!!!」」
緑谷は何度も拳を放ってフレクトターンに打ち付け、ひなたは爆音攻撃をフレクトターンに叩きつけた。
そしてついに、フレクトターンの身体に纏った鏡が全て砕け散った。
フレクトターンが見上げると、緑谷は右脚を大きく振り上げ、ひなたは血を撒き散らしながら声を張り上げていた。
「『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ワールドスマッシュ』!!!!!」
「『
緑谷の放つ限界点を超えた凄まじい蹴りと、凄まじい勢いで放たれた爆音がフレクトターンに直撃し、フレクトターンは檀上に掲げられていたヒューマライズのマークに激突した。
その瞬間、フレクトターンの青く光る皮膚がヒビ割れ、素の肌の色が見えた。
原型を保っていた本拠地が、まるで主人を失ったかのように崩壊を始める。
その土煙の中、二人は制御システムのある部屋へと一直線に向かっていく。
タイムリミットが10秒を切り、瓦礫の上に倒れていたフレクトターンは、虚ろな目で空を見上げながら呟く。
「もう……手遅れだ……」
そしてそれと同時に、二人は制御システムのある部屋へ駆け込んだ。
その瞬間、二人は目を大きく見開いた。
◇◇◇
ほぼ同時刻、エジプトでは。
とうとうタイムリミットが来てしまい、シンリンカムイが爆発に備えて身構えた。
だが…
「ん…あっ」
「……あら?」
トリガーボムは爆発せず、その場にいたシンリンカムイとプリンセスプリティハニーがキョトンとする。
「タイムリミット…過ぎたのに…」
◇◇◇
一方、フランスでは。
麗日は、爆発せずに空中に浮いているトリガーボムを見て呟く。
「爆発しない…」
◇◇◇
一方、オセオンでは。
エンデヴァーは、トリガーボムを運びながら考えていた。
(機能が停止している…)
そして、それを見上げていた相澤は、緑谷とひなたを思い浮かべた。
「まさか、あいつらが…」
◇◇◇
一方、アメリカでは。
上空を飛んでいた4人が、起こった事を推測して笑顔を浮かべていた。
「解除…したのか…?」
「ああ…! やってくれた…!」
「姉ちゃん…!」
イブキは、隣を飛んでいたイナズマに笑顔で右手を差し伸べる。
するとイナズマは、微笑みながらその手を握り返した。
「…ああ、これで皆助かったんや…!」
◇◇◇
一方、司令部では。
世界が救われた事でオペレーター全員が歓声を上げ、オールマイトも世界中のヒーローの健闘を讃えて笑顔を浮かべていた。
(よくやってくれた、皆…!!)
◇◇◇
一方、制御システムのある部屋では。
部屋に入った二人は、大きく目を見開いた後安堵して笑顔を浮かべた。
二人の視線の先には、ぐったりとした様子で解除キーを制御システムに差し込んでいるピノがいた。
ピノは、駆けつけてきた二人を見るなり、左の翼でサムズアップをした。
そしてロディも、サムズアップをしていた。
二人は、ロディのもとに駆けつける。
「ありがとう…ロディ…」
「ロディくん…良かった、良かったぁ…!」
二人は、ロディに駆け寄るとロディの手を握った。
ひなたに至っては、世界が救われた事、そして何よりロディが生きていた事を喜ぶあまり血の混じった涙を流していた。
「少し我慢して、すぐに病院に…」
二人がロディを連れて本拠地を出ようとしたその時、ロディが二人に話しかける。
「デク…ヒナタ…お…俺は……親父みたいに、家族を守れたんだよな…?」
「「…うん」」
「爆弾…止められたよな…?」
「「…うん」」
「お前らみてーに…全部取れたよな…?」
ロディが尋ねると、二人は笑顔を浮かべてロディの顔を覗き込みながら答える。
「…うん。取れた。凄いよロディ!」
「君が世界を救ったんだよ…! ナイスファイト!」
二人はそう言って涙を浮かべる。
するとロディも、二人のように涙を浮かべて笑った。
「へへへ…俺、カッケー…」
ロディが弱々しくも誇らしげに言うと、ピノは解除キーの上で胸を張った。
それを見た三人は、顔を見合わせて高らかに笑った。
「「「フ…フフフ…ハハ…アハハハ! アハハハハ! アハハハハ!」」」
◇◇◇
『全世界を震撼させた無差別テロは、ヒーローチームの活躍により、未然に防ぐ事に成功。テロを主導したヒューマライズの幹部達も次々と逮捕され、事件は収束に向かっています』
その後、フレクトターンをはじめとしたヒューマライズの団員達、そして緑谷とひなたに汚名を着せ発砲許可を出したオセオン警察の長官は無事逮捕された。
ひなた達は、駆けつけてきた救助隊によって無事救助された。
その後病院に入院したロディは、無事弟や妹と会う事ができた。
こうして、事件は終わった。
トリガーボムは一発も爆発することなく、ヒーロー達は世界を守り抜いた。
だが、彼等だけではなかった。
本当に世界を救ったのは、諦めなかったのは…。
「やりすぎだよおバカ!!」
「っだぁ!!」
ひなたは、病院でリカバリーガールにチョップを喰らっていた。
リカバリーガールは、呆れた様子でひなたに説教をした。
「眼球、鼓膜、声帯、あとちょっとでも治療が遅れてたら全部使い物にならなくなってたよ。全部完治したのが奇跡だと思うんだね」
リカバリーガールがため息をつきながら言うと、ひなたはしょぼくれるどころか目を輝かせる。
「おお…現代版ヘレン・ケラー…! もしそうなってたら数百年後に伝記になってましたかね!?」
「反省しとんのかい!」
ひなたが目を輝かせながら天然発言をすると、リカバリーガールが再び説教をした。
するとそこへ、心操がひなたの病室に入ってくる。
「あっ、ひー君!」
ひなたがピョコンと触角を立てて喜ぶと、心操は無言でひなたに歩み寄る。
「えっ、何、ちょっ、何か言って!? 怖い怖い!」
ひなたの目の前まで来た心操は、いきなりひなたの両頬をつねって左右に引っ張った。
「いははははは!! ほめんなはいほめんなはいほめんなはい!!」
「…皆心配してたんだぞ。お前が目見えなくなるんじゃないか…二度と“個性”が使えなくなるんじゃないかって…」
「あ…」
心操が涙を堪えながら言うと、ひなたは申し訳なさそうな表情を浮かべる。
すると心操は、ひなたの身体を抱きしめながらひなたの回復を喜んだ。
「……元気になってくれて、本当に良かった…!」
「………うん」
心操が言うと、ひなたは目を見開いて少し頬を赤らめる。
そして、小さく頷きながら心操を抱き返した。
◇◇◇
そして帰国日。
空港にて、5人はエンデヴァーと相澤に連れられて飛行機に乗りに行っていた。
背後からピノの声が聞こえ、二人が後ろを振り向くと、片松葉をついたロディがいた。
「あ…! ロディ!」
「ロディくん!」
二人が声をかけると、ロディは軽く手を振った。
「退院は明後日じゃあ?」
「わざわざ抜けて来てくれたの!?」
「へへっ、もう大丈夫だってよ」
ロディが笑いながら言うと、二人とも安堵の表情を浮かべる。
「そっか!」
「良かった…!」
「あのままくたばってたら、伝説になれたかもしれねーのにな」
「縁起でもないこと言わないで!」
「そうだよ! 本当に心配したんだから!」
ロディが縁起でもない事を言うと、二人が怒る。
その会話を、エスカレーターに乗っていた轟達が聞いていた。
「あいつらも大概人の事言えんだろうに…」
「まあまあ…」
「ケッ」
相澤が呆れながら言うと心操が世界を守った二人の肩を持って宥め、爆豪は不機嫌そうな表情を浮かべた。
その後ろでは、緑谷とひなたとロディが笑い合っていた。
「「「アハハハハ…!」」」
すると緑谷は、思い出したようにロディに尋ねる。
「あっ、ねえ! ロディはこれからどうするの?」
「いつもの生活に戻るだけさ。もちろん、どっちかじゃなく、どっちも手に入れてやる」
ロディが言うと、ピノも返事をした。
すると緑谷は、笑顔を浮かべながら頷く。
「うん」
「でも、もう危ない稼ぎ方はしない事! 家族が心配する!」
「…わかってるよ」
ひなたが念を押すように言うと、ロディは頭を掻きながら笑いピノも頷きながら元気よく返事をする。
するとその時、搭乗手続きを知らせるアナウンスが鳴った。
『NNY224便の搭乗手続きを開始いたします』
「そろそろ行かなきゃ!」
「それじゃ…元気でね」
「もう二度とオセオンに来んなよ。お前らといるとロクなことがねぇ。日本で勝手にヒーローしてろ」
二人が別れの挨拶をするとロディは憎まれ口を叩くが、ピノは涙を堪えていた。
すると緑谷とひなたは、ロディに抱きつく。
「また、会いに来るから」
「うん…! 今度は、もっとカッコいいヒーローになって会いに行くよ」
二人が言うと、ロディは松葉杖を手放して二人を抱きしめ返し、涙を堪えながら言った。
「……二度と来んな…」
◇◇◇
その後、ロディは離陸する飛行機を見送ると、いつものバーへと入っていった。
「おっちゃん、仕事ない? できれば、真っ当なやつで!」
ロディが笑顔を浮かべながら言うと、店主はロディの態度の変わりように不審がりつつも呆れながら言った。
「ん〜…? ……店員が一人辞めやがった。手伝え」
「え? う〜ん…どうすっかなぁ?」
大袈裟に渋るような仕草を見せるロディの髪から飛び出したのは、満面の笑みを浮かべたピノだった。
最終決戦で最初に決着が見たいのはどこのチームですか?(梅干しと死柄木は最後にします)
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お茶子VSトガ
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焦凍VS荼毘
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障子VSスピナー
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ひなたVS零