抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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※これからのオリジナル展開をやっていく上で、零の“個性”を変更しました。
何度も変更してややこしくなってすみません。


継承

 ホークスがトゥワイスを確保した頃。

 レッドスパローとホワイトタイガーは、キュリオスを倒し確保していた。

 

「ああ、そんな…!」

 

「キュリオス様ぁ!!」

 

 キュリオスの直属の部下達は、キュリオスの敗北に涙していた。

 キュリオスは、レッドスパローの炎で焼かれ、ホワイトタイガーの打撃で壁に叩きつけられて意識を失っていた。

 キュリオス達は、大量の地雷と見事な連携プレーで一度は二人を追い詰めたものの、トップ10ヒーローに次ぐ実力者二人の前にはまるで歯が立たず、圧倒的な力量で攻略されてしまった。

 レッドスパローは、捕まえた敵を炎の羽で持ち上げて拘束し、ぷぅと頬を膨らませていた。

 

「むぅ〜、地雷多すぎだよ〜! 私の羽ほとんど飛ばされちゃった〜! コーくん大丈夫〜?」

 

「ええ。こちら『四神』。敵幹部を一名捕獲完了。至急他の加勢に向かいます」

 

 キュリオス率いる元異能解放軍の戦士達を殲滅したレッドスパローとホワイトタイガーは、苦戦している他のヒーローの加勢に向かう。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、プリンセスプリティハニーは、頭から血を流しながら息を整えていた。

 彼女の視線の先には、意識を失い蜜でガチガチに拘束されたマグネがいた。

 プリンセスプリティハニーとマグネは、激しい肉弾戦を繰り広げていたが、勝利の女神はプリンセスプリティハニーに微笑んだ。

 

「アナタ中々強かったわよ、マグネ。こんな強敵と戦ったの、何年ぶりかしら。アナタとは、もっと早く出会えていれば素敵なお友達になれたかもしれないのにね」

 

 プリンセスプリティハニーは、マグネを久々の強敵と認め、彼女が堕ちる前に出会えなかった事を惜しく思っていた。

 だがすぐに思考を切り替えると、サイドキック達に指示を出した。

 

「さて…と。ハニー達! アタシは他の皆の加勢に行ってくるわ! ここは任せたわよ!」

 

「「「「はい姫!!」」」」

 

 プリンセスプリティハニーが指示を出すと、サイドキック達が一斉に返事をした。

 プリンセスプリティハニーは、蜜で滑走しながら苦戦している仲間を探しに行く。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、ブルードラゴン達はというと。

 

「ぐぁ……!!」

 

「くそ……」

 

 ブルードラゴンとブラックトータスは、零の“個性”で操られたヒーローや戦士達によって集中砲火を浴びせられ満身創痍になっていた。

 いくら四神に変身して強力な戦闘能力を手に入れられる二人でも、圧倒的な数の暴力の前では無力だった。

 

「流石ヒーロー、僕の“個性”が攻略されちゃった。でもごめんね、やっぱり僕の方が強かった」

 

 そう言って零は、ナイフについた血を舐め取りながらニヤリと笑った。

 零の“個性”は、右眼を刺されてもなお解除される事はなく、操られたヒーロー達が次々と二人を袋叩きにする。

 

「あークソ、右眼潰されたせいでこれ以上駒を増やせなくなっちゃったじゃんよ。まあいいや、死んどいてよ」

 

 そう言って零は、そのまま二人目掛けてナイフを振り下ろそうとする。

 だがその次の瞬間、衝撃波が襲いかかり零の身体がくの字に曲がって吹っ飛ばされる。

 

「おんどれぁ!!!」

 

 プリンセスプリティハニーは、零が立っていたあたりの地面に拳を叩きつけ、周囲に衝撃波を放った。

 衝撃波をまともに喰らった零は、吹っ飛ばされて瓦礫に激突する。

 そしてそのまま崩れた瓦礫で生き埋めになる。

 だが零は、瓦礫を蹴り飛ばして抜け道を作ると、服についた瓦礫の破片を手で払いながら立ち上がった。

 

「アナタが零ね。アナタに操り人形にされた男子達の恨み、ここで晴らすわ!!」

 

 プリンセスプリティハニーは、ボキボキと拳を鳴らしながら零に一歩ずつ歩み寄る。

 すると零は、プリンセスプリティハニーを睨みながら口に溜まった血を吐き捨てた。

 

「恨み、ねぇ…あんたマグ姉と戦ってたはずだろ」

 

「ええ。彼女、とても強かったわ」

 

 零が尋ねると、プリンセスプリティハニーが答える。

 それを聞いた零は、僅かに目を見開いた。

 プリンセスプリティハニーは、零に対してビシッと指を差す。

 

「次はアナタの番よ」

 

「あ゛?」

 

 プリンセスプリティハニーが指を差しながら言うと、零は目を見開いて低い声を上げた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、ファットガムは上鳴、常闇、小森、骨抜の4人を腹に吸収して走っていた。

 

「どけどけファっタクのお通りや〜!!」

 

「本当にもう後衛回っていいんスか?」

 

「俺らまだやれますぜ!!」

 

 骨抜と上鳴がファットガムに言うと、ファットガムが説明した。

 

「君らを始めとした広域制圧“個性”で相手の初動を挫く! したら、包囲網を狭めてく! そうやってじわじわ潰すんや。狭なると広範囲攻撃は却って味方の足引っ張ってしまうやろ。君らの力借りんのはここまでや! あとは大人でケリ着け…」

 

 ファットガムが言いかけたその時、アジトから蒼炎が上がる。

 それを見た常闇には、ある思いが過った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、ホークスは荼毘に蒼炎で燃やされていた。

 

「よくも!」

 

 そう言って荼毘はさらに蒼炎を起こす。

 ホークスは咄嗟に蒼炎を避け、身体に燃え移った炎を消そうとする。

 

「ハッ、ハッ」

 

 すると荼毘がホークスを踏みつける。

 

「よくもトゥワイスを!! “個性”壊すなんてヒーローのやる事じゃねえだろ!!」

 

「ハァ…それが… 仲間を傷つけられた奴の表情か… !?」

 

 ホークスに迫る荼毘は、目を細め口角を吊り上げて不気味な笑みを浮かべていた。

 

「なんって言い草だ!! ひどい! 涙腺が焼けて泣けねえんだよ、俺ァよ! トゥワイスがいりゃあ俺の夢はより確実に叶ってたんだ! 悲しいに決まってる! すげえ悲しいよ」

 

 そう言って荼毘は足の裏から蒼炎を起こしホークスを追い詰めていく。

 するとホークスが荼毘に語りかける。

 

「連合の…っ、素性を調べたっ! お前と…死柄木、そして零…お前達は何も出なかった…!! 誰だ…誰だお前は」

 

 すると荼毘は、自分の本名を語った。

 それを聞いたホークスは思わず目を見開く。

 

「トゥワイスよりも、誰よりもお前は俺をマークしなきゃいけなかったんだ。連合も死柄木も、ハナからどうでもいい。一人の人間のたった一つの執念で、世界は変えられる。この世界に本物の英雄なんていやしねえ。俺は、ステインの意志を全うする者だ。じゃあな、ホークス。お前の生死も俺にはどうでもいい」

 

 そう言って荼毘がホークスにトドメを刺そうとした、その時だった。

 

 

 

「ホークス!!」

 

 常闇が空を飛んで駆けつけ、黒影(ダークシャドウ)でホークスを救い出した。

 するとその直後、斬撃と炎が荼毘目掛けて飛んでくる。

 荼毘は、咄嗟に後ろに退いて飛んできた攻撃を避けた。

 

「チッ…」

 

 荼毘の視線の先には、炎の翼を生やして空を飛ぶレッドスパローと、バルコニーを駆け上がるホワイトタイガーがいた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、ミルコ、通形、ひなたの三人は、ハイエンドと交戦していた。

 ミルコは、“個性”を消されながらも常人の数十倍のパワーとスピードで襲いかかってくるハイエンド達に苦戦しつつも、ハイエンドを片っ端から肉塊へ変えていった。

 

「んのっ、しつけーなぁ!!」

 

「やぁっ!!」

 

 ミルコが蹴りでハイエンドの頭を潰し、ひなたが捕縛武器での攻撃でミルコを援護した。

 すると通形は、ヘルメットを被りながら死柄木のいる部屋へ突進していく。

 

「ミルコ! 俺なら邪魔されずに進めます! 先行ってます!」

 

「しゃーねっ、頼んだぜ!」

 

「はい!」

 

 通形が言うと、ミルコは死柄木の確保を通形に任せた。

 するとハイエンドは、通形を止めようと立ちはだかる。

 

「あ、あいツ、主の、トコろ、行ク気」

 

「と、止メ、る、ぞ」

 

 ハイエンドは次々と通形を攻撃して妨害するが、通形は全ての攻撃を透かすと、死柄木のいる部屋を隔てる壁を透過で通り抜け文字通り一直線に駆け抜けた。

 ひなたは、通形とミルコを援護する為、捕縛武器を鋭いドリルにしてハイエンドの脳に突き刺そうとする。

 だがハイエンドのうちの一体が近くに落ちていた瓦礫を掴み、ひなたの方へ投擲した。

 ミルコは即座にハイエンドの頭を蹴り潰したが、瓦礫の投擲は防げず、ひなたの方へ無数の瓦礫の弾丸が飛んでいく。

 

「チビ!!」

 

 ひなた目掛けて無数の瓦礫が飛んでいくと、

 ひなたは、咄嗟にアコースティックシューズを起動させて瓦礫から逃げようとする。

 だが、次の瞬間だった。

 

 

 

 FAKOOM!!! 

 

 

 

 突然炎が一直線に伸びて瓦礫を全て吹き飛ばし、ひなたを瓦礫の雨から守った。

 大きく目を見開いたひなたの目には、エンデヴァーが映っていた。

 エンデヴァーの姿を目で捉えたひなたは、思わず叫び声を上げる。

 

「エンデヴァー!!」

 

 同刻。

 ミルコがハイエンドに囲まれ、苦戦していた、その時だった。

 突然、奥の通路から盾が刺さった肥満ハイエンドが飛び出し、ミルコに襲い掛かろうとしたハイエンドの頭を殴りつけて潰した。

 

「ギャぱみピャ」

 

 頭を潰されたハイエンドは、そのまま吹っ飛んで壁に叩き潰される。

 それを見たミルコは、脳無が脳無を殺すという信じがたい光景に驚いていた。

 

「脳無が脳無を殺しやがった…! どうなってんだ!?」

 

「大丈夫です。そいつはもう味方です」

 

 ミルコが驚いていると、奥の通路から心操が現れた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 少し前。

 クラストは、肥満体型のハイエンドと交戦していた。

 だがその時、どこからか殻木の声が聞こえてくる。

 

「おォい! そこで何をしておるんじゃ!! 早くワシを助けろォ!!」

 

「は、ハ博士…!?」

 

 殻木の声が聴こえてくると、ハイエンドは殻木の声に反応する。

 するとその瞬間、ハイエンドの身体がピタリと止まった。

 その直後、クラストの背後から、聞き覚えのある声が聴こえてくる。

 

「…ふぅ。やっぱり、生みの親の命令には逆らえないよな。一か八かの賭けだったけど、うまくいったみたいだ」

 

「その声は…!」

 

「遅れてすまない。加勢に来た」

 

 心操の声にクラストが振り向くと、エンデヴァーがクラストに声をかけた。

 見ると、エンデヴァー達がすぐそこまで来ていた。

 その中には、ペルソナコードのツマミをチキチキと回す心操がいた。

 クラストがハイエンドと交戦する音を聴いて加勢に来たヒーロー達だったが、駆けつける途中で、下手に消耗せずに確実に勝利する為にもハイエンドを洗脳してしまうという手を心操が思いついた。

 音本と合体していたとはいえ人間の治崎にすら効かなかった『洗脳』がハイエンドに効くのかという疑問はあったが、心操は“個性”の訓練を重ねた事で洗脳に幅を利かせられるようになっており、幸いにもハイエンドは人語を喋り自分の頭で考える事ができる個体だったので、心操の“個性”が通じたのだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして現在、ヒーロー達はひなた達と合流していた。

 

「ミルコ、遅れてすまない! その傷は…!」

 

「うるせ、ただのかすり傷だ!」

 

 クラストが泣きながらミルコを心配すると、ミルコは額から流れる血を拭いながら強がってみせた。

 ナイトアイは、印鑑を投げつけてミルコを援護しつつ、ひなたに状況を尋ねる。

 

「クレシェンド! 状況は!?」

 

「ルミルオンが死柄木の確保に向かってます! 奥の研究施設に、死柄木がいます!!」

 

「よし…私の『予知』通りだ。イレイザー! プレゼントマイク! エクスレス! 先に行ってくれ!」

 

「「「了解!」」」

 

『予知』の“個性”でこれから何が起こるのかをあらかじめ知る事ができるナイトアイは、相澤、プレゼントマイク、エクスレスの三人に死柄木確保に向かわせた。

 鼻の長いハイエンドが三人の前に立ち塞がると、クラストがシールドを生み出してハイエンドの身体を真っ二つにした。

 

「GO!!」

 

 クラストが叫ぶと、三人は死柄木のいる最奥の部屋へと駆けていく。

 他のヒーローは、残ったハイエンドと交戦していた。

 ひなたの“個性”でハイエンドが“無個性”化を喰らっているのと、心操の“個性”で味方になった肥満ハイエンドのおかげでヒーロー達は何体ものハイエンド相手に無傷で戦えていた。

 だが、肋骨が浮き出たハイエンドが肥満ハイエンド目掛けて拳を振りかぶる。

 

「こ、こコ、こノ、裏切リ者ォ!!」

 

 肋骨ハイエンドが肥満ハイエンドに右ストレートを喰らわせると、肥満ハイエンドは吹っ飛ばされて配管に叩きつけられる。

 その衝撃で、肥満ハイエンドにかけていた洗脳が解ける。

 すると心操が焦った様子で目を見開く。

 

「まずい…今ので『洗脳』が解けた!」

 

「ひー君!!」

 

 心操が目を見開いて叫ぶと、ひなたが咄嗟に飛び出して心操を抱える。

 肥満ハイエンドがギョロっと二人に目を向けると、イナズマは雷撃を纏った拳を構えて肥満ハイエンドに雷撃を浴びせようとする。

 

「チッ…!!」

 

 だが、その直後だった。

 

 

 

「………え?」

 

 肥満ハイエンドは二人の身体を掴むと、壊れ物を扱うかのように安全な場所に置いた。

 二人を安全な場所に避難させた肥満ハイエンドは、指先でそっと心操の頬を撫でた。

 

「あ、あぶ、危なイ…カラ、か、か隠レ、てて…」

 

 肥満ハイエンドは、二人を安全な場所に避難させると、別のハイエンド目掛けて瓦礫を投げつけた。

 それを見た心操は、その場にへたり込む。

 

「洗脳が解けたのに、俺達を助けた…? しかも、命令してないのに…あいつ、まさか自分の意思で……?」

 

「………」

 

 心操は、命令していないにもかかわらず、しかも先程の衝撃でハイエンドの洗脳が解けたにもかかわらず、ハイエンドが自分達の味方をした事に理解が追いつかない様子だった。

 ハイエンドは、殻木と死柄木、そしてオールフォーワンの命令だけを聞くように改造された改人で、洗脳が解けた後で他人を守る為に自分の意思で行動するなど、絶対にあり得ないはずだった。

 ひなたは、大きく目を見開いて呆然としている心操の瞳が、僅かに光を帯びているのを見逃がさなかった。

 心操の“個性”がもう一つ先のステージへ一歩踏み出した、その片鱗だった。

 

「とりあえずありがとう! えっと……」

 

「な、なな、ナ、名前…」

 

 ひなたが、自分達を助けた肥満ハイエンドに礼を言うと、肥満ハイエンドは片言で何かを伝えようとした。

 ハイエンドの操り主である心操は、ハイエンドの言葉をうまく聞き取れずに聞き返そうとする。

 

「え、何て…?」

 

「名前! 名前つけてほしいんじゃない!?」

 

「名前って…急に言われても…」

 

「じゃあ『おはぎ』!!」

 

 心操が肥満ハイエンドの名前を決めろと言われて困惑していると、ひなたが代わりに命名した。

 黒くてでっぷりした見た目から『おはぎ』という、何とも安直なネーミングだった。

 心操は、ひなたのあまりにも雑なネーミングに呆れつつも、迷っている時間はないのでそれで納得する事にした。

 

「…時間無いしもうそれでいいよ。『おはぎ』! ここにいるヒーロー達を援護しろ!」

 

「ワ、わかり、マシたァ!!」

 

 心操が指示を出すと、新たに名前を与えられたハイエンドは別のハイエンドを蹴散らしていく。

 前の名前だった『おでぶちゃん』よりは『おはぎ』の方が気に入ったのか、ハイエンドは妙に上機嫌だった。

 それを見たミルコは、女型のハイエンドと交戦しつつも、信じがたい光景に再び驚く。

 

「何だァ!? あいつ、脳無をペットにしちまいやがったぞ!」

 

「全くだ。とんだ逸材を育て上げたものだ、イレイザーヘッド」

 

 脳無を手懐けて窮地を一気に逆転させてしまった心操に対し、ミルコが面白いものを見るような目を向け、エンデヴァーも予想だにしない逆転劇を起こした心操に些か驚いている様子だった。

 

「大丈夫、ここまで私が見た未来は何一つ狂っていない! 死柄木の捕獲に成功し、我々の完全勝利!! この未来を、確定させるぞ!!」

 

 ナイトアイは、ハイエンド目掛けて印鑑を投げつけながら他のヒーローを鼓舞した。

 ナイトアイは、今回の作戦に備え、トップヒーロー達の未来を見てきた。

 今までは人の死を確定させてしまうのが怖くて“個性”を使ってこなかったが、ひなたと緑谷に絶望しかない未来を捻じ曲げられ心を救われた事で、人を救う為に未来を見ようと考えを改めたのだ。

 ナイトアイは、この瞬間まで、自分が見た未来を信じてその通りに動いてきた。

 確定した未来の到来は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で相澤、プレゼントマイク、エクスレスの三人は、死柄木のいる最奥の部屋に辿り着いていた。

 三人の目の前には、巨大な培養器の中で眠っている死柄木の姿があった。

 その近くでは、通形が片っ端から周囲の精密機器を壊していた。

 

「イレイザー! とりあえず、周りの機械は全部壊したんだよね!」

 

「助かる」

 

 通形が報告すると、相澤が返事をする。

 死柄木の培養器にはバリアが張られており、通形の“個性”をもってしてもバリアに弾かれて死柄木を回収できなかったため、先に機械の方を壊して死柄木の蘇生を阻止していたのだ。

 相澤は“個性”を発動し、培養器の中にいる死柄木を睨みつけた。

 すると、培養器のバリアは“個性”に由来するものだったのか、相澤が睨みつけたと同時にバリアが解けた。

 相澤が死柄木の“個性”を封じると、プレゼントマイクが爆音で死柄木の入っている培養器を破壊した。

 

「『ラウドヴォイス』!!」

 

 プレゼントマイクが培養器を破壊すると、エクスレスが駆け寄って死柄木を確保する。

 エクスレスは、中に入っていた死柄木の心臓が動いておらず、息が止まっている事に気がつく。

 

「………? 息が無い。心臓が止まってる」

 

「恐らく、仮死状態にされているんでしょう。ですがまだ油断はできません。俺が視ときますんで、今のうちに弾を撃ち込んじまいましょう」

 

「ああ!」

 

 相澤が“個性”で死柄木を見ながら言うと、エクスレスが頷いた。

 エクスレスは、公安から配布された特殊弾を撃ち込んで死柄木の“個性”を壊そうとする。

 だがその時、近くにあった配管からピリッと漏電する。

 死柄木の蘇生には到底不十分な、微弱な電流だった。

 だが次の瞬間、死柄木の身体が大きく躍動した。

 ひなた達がハイエンドを全滅させ、群訝山荘の戦線メンバーも全滅し、死柄木も目覚めずヒーロー側の完全勝利。

 これがナイトアイの見た、確定した未来だった。

 だが、死柄木の中に眠っていた“個性”の小さな揺らぎが、狂気とも呼ぶべき執念が、たった今、確定したただ一つの未来を捻じ曲げた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時は少し遡り、郡訝山荘前線より30m程後方にて。

 

「あかんツクヨミ!」

 

 ファットガムの身体から、常闇が飛び出す。

 するとファットガムが目を丸くして叫ぶ。

 

「出たらあか━━━━━━ん!!」

 

「何してんだバカ!!」

 

 ファットガムと上鳴が叫ぶと、常闇が叫び返す。

 

「最上階! ホークス! 恐らくピンチだ!」

 

「ホークスが!?」

 

 常闇が要件だけ伝えて飛び去っていくと、ファットガムは他の3人を腹から押し出した。

 

「君らこっから走り」

 

「ぴゃ」

 

「乗り逃げは許さへんでぇ━━━!!」

 

 ファットガムは、3人を押し出すと一直線に常闇を追いかけていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして時は現在に戻り、常闇はホークスを助け出していた。

 黒影(ダークシャドウ)は、ホークスに常闇のマントを被せながら常闇に声をかける。

 

「フミカゲ、マズいヨ…」

 

「言うな!」

 

「ホークスの背中が…ナイ…!」

 

 常闇は黒影(ダークシャドウ)の言葉を遮ろうとするが、黒影(ダークシャドウ)が告げて現実を突きつけた。

 一方でレッドスパローは、満身創痍のホークスに代わって気を失ったトゥワイスを炎の羽で掴んで持ち上げていた。

 

「かぁくほ〜!!」

 

「ツクヨミくん、でしたよね。ホークスを連れて退いて下さい。ここは我々が引き受けます」

 

「レッドスパロー! ホワイトタイガー!」

 

 レッドスパローがトゥワイスを回収し、ホワイトタイガーが爪と牙を剥きながら言うと、常闇が目を見開いて叫ぶ。

 すると荼毘が口を開く。

 

「雄英の……ダセェなァ、学生まで引っ張り出してんのか…見ろよガキ」

 

 荼毘は、そう言ってレッドスパローが運んでいるトゥワイスを親指で差す。

 

「そいつがやった。“個性”を壊しやがった。仲間を守ろうと走る背中を、撃った! 俺の仲間の人生を、尊厳を、踏み躙った! ひと思いに殺すよりもよっぽど酷え仕打ちだ」

 

 それを聞いた常闇は、目を見開いて固まる。

 するとさらに荼毘が続ける。

 

「何しに来た? 助けに来たか? 何を助けに来た? お前が学生が健気に夢見るプロってやつあ敵達なんかよりよっぽど薄汚えぞ」

 

 荼毘が不敵な笑みを浮かべながら言うと、ホークスが瀕死ながらも声を絞り出す。

 

「常…闇…くん…」

 

 すると常闇は、ホークスを抱き抱えてホークスを守るように黒影(ダークシャドウ)を前に出した。

 

「俺は、ただ師を案じただけだ」

 

「思考停止」

 

 荼毘がそう言い放ち蒼炎を放とうとした、その時だった。

 荼毘の足元の床に亀裂が入り崩れ、間髪入れずに荼毘目掛けて大量の炎の矢が降り注ぐ。

 荼毘の視線の先には、頬をぷぅと膨らませて炎を操るレッドスパローと、爪を尖らせて次々と斬撃を飛ばすホワイトタイガーがいた。

 

「むぅ〜! よくもホークスを! 許さな〜い!」

 

「ツクヨミくん! ここは僕達に任せて! 早く!」

 

「っはい!」

 

 ホワイトタイガーが言うと、常闇はホークスを連れて飛び去ろうとする。

 レッドスパローとホワイトタイガーは、荼毘を足止めして常闇とホークスを逃がそうとした。

 

「私、もう怒ったんだから〜!」

 

 レッドスパローは、密かに推しているヒーローがボロボロにやられた怒りで大量の炎を操り、容赦なく荼毘に浴びせた。

 だがその直後、レッドスパローに蒼炎が浴びせられる。

 

「ぎゃ!!」

 

 荼毘は、両脚から放つ炎で浮き上がって落下を回避し、右手でレッドスパロー目掛けて蒼炎を放った。

 エンデヴァーと互角かそれ以上の火力で放たれた蒼炎は、レッドスパローに直撃し全身を焼いた。

 炎の“個性”故に生まれつき炎に耐性があるレッドスパローだったが、自身の耐久温度を遥かに超える高温の炎で焼かれ、耐火仕様のコスチュームもボロボロに焼かれた。

 レッドスパローは、変身を保てなくなって人間の姿に戻り、そのまま真っ逆さまに落下した。

 ボロボロに焼かれた仲間を見て、ホワイトタイガーは珍しく目を見開いて叫ぶ。

 

「すずめ!!」

 

「話になんねえな。火力が違えんだよ」

 

 ホワイトタイガーが叫ぶ中、荼毘は失望混じりの声を上げつつも手から煤を出した。

 仲間を傷つけられて激昂したホワイトタイガーは、牙と爪を歪な形の刃に変え、全身の毛並みを輝く鋭い棘に変化させて突進した。

 だが荼毘は、すぐにホワイトタイガーの方を振り向くと、レッドスパローに浴びせた火力をホワイトタイガーにも浴びせた。

 

「ぁが……!!」

 

「ったく…何度も“個性”使わせんなよ。こちとらまだ本調子じゃねえんだ」

 

 荼毘の炎を喰らったホワイトタイガーは、全身の毛並みを熱で溶かされて重傷を負った。

 全身の毛並みを焼かれたホワイトタイガーは、変身を保てなくなり人間の姿に戻った。

 それを見た常闇は、血相を変えて目を見開く。

 

「貴様ァ…!!」

 

「ダメだ……常、闇…くん……」

 

 常闇は、自分達を助ける為に立ちはだかった二人を焼かれて激昂し、ホークスの制止も聞かずに黒影(ダークシャドウ)を荼毘目掛けて飛ばす。

 だが荼毘は、常闇に青い火球を放ってきた。

 荼毘の炎によって黒影(ダークシャドウ)が弱り、常闇がダメージを負ってしまった。

 

「ヒャン!!」

 

「ぐぅ…!!」

 

「フミカゲ、ごみぇん」

 

 常闇が荼毘の炎で焼かれると、黒影(ダークシャドウ)は泣きべそをかきながら常闇に謝る。

 黒影(ダークシャドウ)は、蒼炎の光で弱りビクビクと怯えていた。

 ホークスは、常闇の耳元で呟く。

 

「まだ…喋る…」

 

 すると、荼毘が炎を出しながら歩み寄る。

 

「考えろよ、焼き鳥共。本当に救いを必要としてるのは誰だと思う?」

 

 常闇は、荼毘に精神を乱されながらもホークスに指示を仰ぐ。

 

「指示を」

 

 するとホークスは、常闇に耳打ちをする。

 

「今、行け」

 

 その直後、黒影(ダークシャドウ)が手を伸ばす。

 黒影(ダークシャドウ)は、廊下の柵を掴むと常闇に指示を出す。

 

「フミカゲ!!」

 

 それと同時に、常闇はホークスを抱え黒影(ダークシャドウ)を命綱にして廊下から飛び降りる。

 だが、荼毘が炎を出すと黒影(ダークシャドウ)が弱って手を離す。

 

「ごみぇん、力ガ…」

 

 すると、二人は下の階の廊下へ投げ出され着地した。

 

「ホークス! ホークス!!」

 

 常闇はホークスに呼びかけるが、ホークスは気を失っており返事はなかった。

 

「すまないホークス! 黒影(ダークシャドウ)!! ここなら炎もない!」

 

 常闇は、ホークスを抱えて『黒の堕天使』で飛ぼうとする。

 だがその時、上から荼毘が現れ両手から炎を放ってきた。

 

「こんな事もあろうかと、前2発弱火で節約しました」

 

 そう言って荼毘が二人を燃やそうとした、その時だった。

 

 

 

 

 ズガッ

 

 

 

「!?」

 

 突然氷山が迫って来て荼毘が吹き飛ばされる。

 そして同時刻、森を走っていたファットガムは思わず目を見開いて叫び声を上げる。

 

「おおおお!?」

 

 ファットガムの目に前には、Mt.レディが迫ってきていた。

 ファットガムが避けた直後、Mt.レディが尻餅をつく。

 

「ケツー!!」

 

「氷!?」

 

 Mt.レディが少し痛がりながら突然現れた氷山に驚いていると、氷を操って空中に留まる外典が現れる。

 

「これ以上リ・デストロの邪魔をするな。楽に死ねると思うなよ、国の犬共」

 

「外典様!!」

 

「包囲網を押し拡げた! 闇雲に張り合うな、思う壺だ! 一点に集中し穴を開けろ!!」

 

 外典が部下に指示を出すと、ギャングオルカの背後から外典の部下が音もなく氷に穴を開けて現れる。

 一方荼毘は、いきなり範囲攻撃を繰り出してきた外典に呆れていた。

 

 

 

「ってえ…ぶっ放しやがって、あの氷野郎…っ、早めに始めるか」

 

 一方常闇は、一瞬の隙を突いてホークスを抱えて脱出に成功していた。

 常闇は、大粒の涙を流しながら叫ぶ。

 

「薄汚くなどないぞホークス!! 信じてる! 皆信じてる! 正しい事をしたんだと! だから! 死ぬな!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、講堂では。

 

「脚のスペアはまだか!?」

 

 リ・デストロは、常闇に義足を砕かれ身動きが取れなくなっていた。

 すると部下の一人がリ・デストロに声をかける。

 

「……リ・デストロ」

 

「何だ!」

 

 部下の一人は、ギガントマキアを指差していた。

 

「立ってます……!」

 

 ギガントマキアは、立ち上がって死柄木の匂いを探っていた。

 

「主の匂い」

 

 

 

 

 

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