前線から少し離れ、生徒達は森の中で待機していた。
「うわぁ」
突然、音で索敵していた耳郎が地面からジャックを抜いて叫ぶ。
「どうした耳郎ジャック!?」
「ヤバい!!」
上鳴が尋ねると、耳郎が叫ぶ。
するとプロヒーローの一人が仲間からの連絡を聞いて目を見開く。
「何!? 包囲が突破された!?」
「え」
峰田が呆然としていると、耳郎が焦りながら報告する。
「めっちゃデカいのが向かって来ます!!」
「前に詰めるぞ、ラインを下げるな! インターン生はその場で待機!!」
ヒーロー達は、A組やB組に指示を出すと走っていった。
峰田は、報告を聞きヒーローから指示を受けてもまだ呆然としたままだった。
「ヒーロー集結してんだろ…? 何で状況が悪くなるんだよ!!?」
一方、捕まった二人と、リ・デストロ、トランペット、外典を除く解放戦線の隊長達は、ギガントマキアの背に乗っていた。
「何が起きた?」
「俺、地下にいたら…掴まれて乗せられた」
「同じく。ったくあのオカマ、覚えてろよ」
Mr.コンプレスが尋ねると、スピナーと零が答える。
二人が状況を飲み込めずにいると、荼毘とトガが口を開く。
「ボスが起きたんだろうな。それ以外にこいつが起きる道理が無ェ」
「予定より早いです」
「降ろせ荼毘。何故俺だけ連れてきた!? リ・デストロをお守りせねば」
スケプティックが荼毘に降ろすよう言うと、荼毘は無視して言った。
「静かに。まだ俺達に気付いてない」
「待ったぞ主よ!!! 今、会いに行きます!!」
ギガントマキアは、上機嫌で死柄木の元へ向かっていた。
ヒーロー達は、ギガントマキアを止めようとする。
「これだろ!? ”歩く災害”って! 動かないんじゃなかったか!?」
「蛇腔側がミスったとしか!!」
「レディを援護しろ!」
「ダメだ効かない! 硬すぎる!!」
ヒーロー達が連携してギガントマキアを止めようとしたその時、上から氷が降ってくる。
「うわあ!」
「氷の奴、まだ───」
外典は、怒りを露わにしながらヒーロー達に氷を飛ばす。
「何が起きてる!? もうメチャクチャだ!!」
するとその時、セメントスがセメントで外典を覆い、ヒーロー達への攻撃を防いだ。
「何が起きようと、己の仕事に命賭すべし!」
その次の瞬間、地下から巨大化したリ・デストロが飛び出してくる。
エッジショットは、リ・デストロの身体に細くした自身の脚を刺していた。
「実に不愉快!!」
「そのまま返そう!」
リ・デストロが言うと、エッジショットが言い返す。
リ・デストロは、ギガントマキアが起きた事から死柄木が不完全な状態で起きてしまった事を察した。
そして、その怒りを負荷塊に変えて撒き散らした。
「救世たる解放者に、君達一体何をした!!?」
そして、解放戦士達に指示を出す。
「ギガントマキアに続け! 解放戦士達よ!! ここより革命を始めよう!!」
一方、ミッドナイトはシンリンカムイに抱えられてギガントマキアに接近していた。
「もっと寄って!!」
「わかってます!! レディ!! もう少し頑張れ!!!」
シンリンカムイがMt.レディに声援を送ると、Mt.レディは力むあまり顔を真っ赤にして鼻血を吹き出す。
「んんばって、ますってぶぁ!!」
そう言って踏ん張るMt.レディだったが、ギガントマキアに押され左脚を掴まれる。
「い゛っ」
「主への“最短距離”」
そう言ってギガントマキアはMt.レディを投げ飛ばし、そのまま死柄木の方へ向かっていく。
するとシンリンカムイがMt.レディに向かって叫ぶ。
「岳山ァ!!!」
動揺するシンリンカムイに、ミッドナイトが声をかける。
「よそ見しないで!! 恐らく蛇腔が失敗した! 奴が街へ下りたら未曾有の大災害になる。力じゃ止まらない! 私を奴の顔まで連れてって!」
そう言ってミッドナイトは、左腕の極薄タイツを食い破って肌を露出させ眠り香を出そうとする。
シンリンカムイがミッドナイトを連れてギガントマキアに接近しようとしたその時、荼毘が二人に炎を浴びせる。
「な?」
だが、シンリンカムイが身を挺してミッドナイトを枝で縛って前へ突き出していた事で、ミッドナイトだけは炎を喰らっていなかった。
「ってオイ!!」
「振り払うぞ、Mr」
Mr.コンプレスが驚き、零は冷静に対処し指示を出す。
Mr.コンプレスは“個性”で創り出した玉をミッドナイト目掛けて投げつけ、零はナイフを投げつけた。
ミッドナイトは隊長達を眠り香で眠らせようとするが零に邪魔され、その直後Mr.コンプレスの投げた玉が瓦礫に変わった。
「くそ」
「ヒーローを舐めるなよ!!?」
「どの口が言うか」
「……」
Mr.コンプレスが言うと、荼毘と零が呆れ顔を浮かべる。
直後、瓦礫がミッドナイトに直撃し、ミッドナイトは地面に叩きつけられる。
「フ、フ」
ミッドナイトは、瓦礫が全身に直撃し満身創痍になっていた。
ミッドナイトは、ギガントマキアを止める為マジェスティックとの協力を試みるが、ギガントマキアが大きすぎるため無駄だと断念した。
そして、もう一人ギガントマキアを止められる可能性があるヒーローの存在を思い出すと、無線で連絡を試みる。
「ホント…不甲斐ない…聞こえるかしら、クリエティ!!」
『ミッドナイト先生!?』
ミッドナイトが通信をした相手は、八百万だった。
「状況は…わかってるね?」
『ええ、耳郎さんの“音”と障子さんの“目”で!』
『Mt.レディが投げ飛ばされた!?』
『ミッナイの通信だ』
A組やB組が混乱していると、ミッドナイトが八百万に指示を出す。
「力押しでは誰も止められない。眠らせたい」
『え!?』
「法律違反になっちゃうけど…事態が事態よ。麻酔で眠らせるの」
『何を仰っているのですか先生!?』
するとその時、背後から解放戦士達が迫ってくる。
「俺がやる」
そう言って解放戦士が接近している間も、ミッドナイトは八百万に指示を出す。
「ヒーローに麻酔を渡して…! その場を離れなさい…! 難しければ…すぐ…避難を…!! あなたの判断に…委ねます!」
そう言って振り向いたミッドナイトの背後には、大勢の解放戦士達がいた。
解放戦士達がミッドナイトに襲い掛かろうとしたその時、突然解放戦士達が投げ飛ばされる。
「おんどれァア!!」
解放戦士達の前には、零に致命傷を負わされて顔半分を抉られ腹部を貫かれたプリンセスプリティハニーがいた。
雄英時代の親友の登場に、ミッドナイトは僅かに目を見開く。
「睡ちゃん。アナタ、そんなにボロボロになって…よく頑張ったわね」
「癒原…!」
プリンセスプリティハニーは、瀕死ながらも乱れた息を整えて戦士達の前に立ちはだかる。
そして、親友を傷つけられた怒りに打ち震え、鬼のような形相で戦士達を睨む。
「てめェら…アタシの親友を傷つけてタダで帰れると思うなやァア!!!」
プリンセスプリティハニーは、自身の身体から生成した蜜でドーピングをし、限界を超えた力で戦士達を薙ぎ払っていく。
「ハニードープ1000%…秘技…『プリンセス・つけま手裏剣』!!!」
◇◇◇
「先生? 先生!?」
八百万は、突然の通信に戸惑い何度もミッドナイトを呼んだ。
周りの生徒達は、八百万以上に動揺していた。
「何だよ今の通信……」
「ヤオモモに委ねる?」
「眠らせるって、何で先生がやらねんだよ……」
「ミッナイが…何で……」
上鳴が言うと、全員の顔が不安で曇る。
八百万は、今自分達がどうすべきかを必死に考えていた。
その間にも、ギガントマキアはドシンドシンと轟音を鳴らしながら爆走していた。
「どうする!? ヤオモモ!」
「俺達このまま尻尾巻いて逃げ───…」
クラスメイト達が困惑する中、八百万は覚悟を決めて決断を下す。
「『イヤホンジャック』! 『テンタコル』!! 音の位置から距離とここへの到達時間を! 巨人の大きさを目算でいいのでお伝え下さい! 『マッドマン』! あなたの力もお貸し下さい!」
「えっ俺!?」
「皆さん動く準備を!!!」
「つーかもう見えてるし! 速いよ10秒もかかんない…」
耳郎は音で索敵をし、その直後目を見開く。
「!!!!」
ギガントマキアの左脚には、Mt.レディとシンリンカムイが組み付いていた。
「男に縋るなんて中学以来だわ、ちくしょうがぁあ!!」
すると、ギガントマキアが少し減速する。
「減速した!! ──でも少し──」
「約25mだ、Mt.レディより大きい!」
耳郎と障子が報告すると、八百万は液体の入った瓶を創造する。
「敵に背を見せるヒーローになれと…教わったことはございません」
すると、切島が頷く。
「ったりめーだ!!」
「私は…戦います…! 皆さんは───…」
八百万が尋ねようとすると、その前に上鳴が答える。
「言うな野暮だぜ! コス着て外出りゃヒーローなんだ」
「ここで迎えうちます!」
八百万は、覚悟を決めて全員に作戦を伝えた。
「よし、こんなもんかな」
骨抜は地面を柔らかくし、取蔭は身体をバラバラにして目でギガントマキアの動向をチェックし二人に伝える。
「バックバック早くバックもう目の前!」
「なァ取蔭、物間達のグループは無事かな…」
「気になるけど今は…」
取蔭は、不安そうにギガントマキアの様子を見ていた。
『創造』に脂質を使い過ぎた八百万は、その場に膝をついて苦しそうにしていた。
「ヤオモモ、大丈夫!?」
「ええ、問題ありませんわ」
耳郎が心配すると、八百万は遠征に備えて持参してきたリュックサックに入っていた揚げバターとピーナッツバターシェイクを手早く摂取し、脂質を補給しながら返事をした。
A組とB組の生徒達は、八百万の創造した小型ミサイルの発射装置の近くに立っていた。
すると、峰田が不安そうに呟く。
「…………ミッドナイト…生きてるよな…?」
すると芦戸が笑顔を浮かべて峰田を励ます。
「きっと大丈夫だよ! また皆で授業受けるんだもんね!」
ギガントマキアは、高笑いしながら死柄木の方へ向かっていた。
Mt.レディは、ギガントマキアに引きずられてボロボロになっていた。
「全っ然っ止まんない゛っ! 先輩っ起きっ…て! ほどいて…体勢をっ!!」
だがその時、突然ギガントマキアの身体が地面に沈み込む。
「かかった!!」
「位置ドンピシャあ!! ゴーゴーゴーゴー!!」
耳郎が叫ぶと、拳藤、砂藤、宍田は一斉に地面の下に潜り込ませたロープを引っ張る。
ギガントマキアの下顎には、峰田のボールとロープで拵えたトラップが貼り付いており、三人はトラップに繋がったロープを持っていた。
「多勢に無勢をお許しください」
そう言って塩崎はギガントマキアの首に蔓を巻きつけ、三人も一斉にロープを引く。
「立ち上がられたら望み薄ですぞ!!」
「寝ぇぇてぇぇろォォ!!!」
三人は、叫び声を上げながらありったけの力でロープを引く。
それを見ていた戦線の隊長達は驚いていた。
「雄英!! こんなに来てんのか」
「戦場にガキ引っ張ってくるたぁ、ヒーローも情けねえな」
隊長達が驚く中、零は失望の表情を浮かべていた。
だがその時、八百万が通信機器でA組とB組に指示を出す。
「狙撃班、砲撃用意!!」
八百万が指示を出すと、A組とB組の生徒達は発射装置をギガントマキアの方へ向け、照準を合わせる。
「発射!!」
八百万が合図をすると同時に、生徒達は発射装置のレバーを一斉に引いた。
すると発射装置に装備されていたミサイルが火を吹いて発射され、ギガントマキアの肘や膝に突き刺さり、突き刺さった瞬間に爆発した。
◇◇◇
数秒前。
八百万は、A組とB組に指示を出した。
「常人の致死量の500倍の毒薬を搭載した簡易式のミサイルですわ。いくら巨大で頑丈でも、人体の構造上脆くならざるを得ない部位があるはずです。確実に目や関節を狙って下さい。効かずとも、擦り傷さえ負わせれば十分ですわ」
八百万が指示を出すと、瀬呂が驚いた様子で声を上げる。
「ここで殺すって事か!? ミッナイの指示は眠らせるって話だったはず…」
「ここで止めねば、街への被害は計り知れませんわ! 『最悪』は何かを考えるんです! 私達の役目は、市民の皆さんの命をお守りする事! 違いますか!?」
◇◇◇
そして現在。
A組とB組は、ギガントマキアにミサイルを撃ち込み続けていた。
「よっしゃ効いてる!!」
「的がデカいのが仇になったな!」
「次、装填お願い!」
「撃てぇええ!! 撃ちまくれぇえええ!!」
A組とB組は、目や関節を集中的に狙ってミサイルを次々と発射した。
肘や肩、脇、膝に猛毒ミサイルを撃ち込まれたギガントマキアは、呻き声を上げる。
ギガントマキアが暴れると、Mr.コンプレスがギガントマキアにしがみつきながら尋ねる。
「うわ!? おい、どうしたマキア!」
「グゥウ…ウウウ……!!」
「はっは、あいつら殺意高すぎ。本当にヒーロー科か?」
「言ってる場合か!!」
零がこの状況でも笑っていると、スピナーがツッコミを入れる。
荼毘は、発射装置にミサイルを装填している生徒達に目を向けて呟く。
「チッ、やってくれたな」
だが…
「ブッ」
ボッ
「うわああ!!?」
突然ギガントマキアが息を噴き出し、生徒達は暴風で吹き飛ばされる。
「皆ァ!!」
「息臭ェ!!」
「あっ…」
ギガントマキアが生徒達に暴風を浴びせた直後、荼毘が風に炎を乗せ森を焼き払う。
それを見ていた零は、森が焦げる臭いに鼻を手で覆いながら感心していた。
「ひょー、すげえすげえ。つか臭え」
「高揚を体軀の変動エネルギーに変える“個性”。痛覚を遮断する“個性”。他にも色々…全て戦場に長く居続ける為の“個性”なんだとさ。氏子さんが言ってたよ。こいつこそ正しく守護者だって」
生徒達は、荼毘が放った炎のせいで立ち往生していた。
「ダメだ立ち上がる」
「あっちち」
「炎で影が…!」
「胞子も燃えちゃうノコ」
「炎で近付けない!!」
「ああ、発射装置が…!!」
「こっちの弾も全滅! どうしようヤオモモ!?」
狙撃班の耳郎は、司令塔の八百万に指示を仰いだ。
ミサイルの発射装置は、ギガントマキアの息と荼毘の炎で破壊され、残りのミサイルも破壊されて使い物にならなくなっていた。
だが、八百万はまだ諦めていなかった。
「まだ!」
その直後、地面の底が爆発しギガントマキアが沈み込む。
「柔化した地面の底に爆弾を設置しました。更に深く埋まれば… まだ チャンスは───!!」
八百万が走りながら言うと、スピナーは鼻で笑う。
「へっ、こいつは元々地面を潜るんだぜ! むしろ速度が…」
「潜ったら俺達死ぬでしょ」
「あ」
「バーカ」
スピナーが言うとMr.コンプレスが冷静にツッコミを入れ、零も呆れ返る。
「多分『俺達を連れて来い』って命令だ。俺らが縛りになってる今って…実は割とピンチなのかも」
すると、スケプティックが話をしている三人に向かって叫ぶ。
「おい!! 呑気に話してる場合か!?」
その直後、Mt.レディがギガントマキアを組み伏せる。
その頃、森の中にいた生徒達は火の海に囲まれていた。
「皆無事か!!?」
「火の回りが早すぎだ、なんつー火力ブッパしやがる」
「嘘だろ…? 猛毒だぞ!? 何で効かねえんだよ!?」
「まだ何人か…この中に───」
瀬呂が炎の海に向かって叫んだその時、氷の竜巻が炎の勢いを弱めた。
絶体絶命だった雄英生徒の前には、解放戦線との戦いで満身創痍になったブルードラゴンとブラックトータスがいた。
そしてその頃、Mt.レディはというと。
「大人しく、寝て、なさい!!」
Mt.レディは、ギガントマキアを上から組み伏せて無理矢理鎮めようとした。
するとその時、『アシッドマンALMA』を纏った芦戸が飛び出した。
芦戸は、唯一無事だった小型ミサイルを抱えていた。
「これでも、喰らえぇえええ!!!」
芦戸は、『アシッドマンALMA』でギガントマキアの顔の表皮を溶かし、ミサイルを投げて突き刺そうとする。
だが、その時だった。
「蝿に時間を割くなど寄道甚だしい。判断を誤った。二度と集らぬ様、払うが最短」
その声を聞いた芦戸は、目を見開く。
「あ」
芦戸は思い出した。
それはかつて、中学生だった頃の芦戸の前に現れ建物を壊しながら道を尋ねてきた不審者の声だった。
無意識に過去の自分と今の自分を重ねてしまった芦戸は、目を見開いて固まってしまう。
するとその直後、ギガントマキアが両腕を地面から引っ張り出し、右手でMt.レディの頭を掴んで投げ飛ばした。
ギガントマキアは、芦戸に向かって手を伸ばす。
するとその時、切島が芦戸を庇って飛び出し、芦戸が持っていたミサイルを片腕に抱えてギガントマキアに突進した。
芦戸が地面に尻餅をつくと、鉄哲が駆けつけ芦戸を立たせる。
「行くぞ!! 立てる!?」
「鉄哲! 切島が」
鉄哲が芦戸を立たせると、芦戸は不安そうに言った。
一方、隊長達はギガントマキアの右手に乗せられており、立ち上がったギガントマキアは隊長達を肩に乗せ直す。
「蝿は追い払った、同士よ。掴まってろ」
だが、一人だけギガントマキアの元から離れなかったヒーローがいた。
切島は、全身を硬化してギガントマキアの腕を登っていく。
「俺は
切島は、叫びながらギガントマキアの前に現れる。
「小蝿」
ギガントマキアは、目の前に現れた切島を振り払おうとする。
だが切島は、片腕に硬化を凝縮させると、芦戸が酸を浴びせて溶かしたギガントマキアの左目付近に硬化した腕を突き刺し、傷を負わせる。
ギガントマキアが一瞬怯んだ隙に、切島は持っていたミサイルを傷に突き刺した。
「うぉおおおおおぉおおおおおお!!!!」
切島が雄叫びを上げながらギガントマキアの傷を抉ると、ギガントマキアは切島を叩き潰そうとする。
するとその時、B組の生徒達が、八百万が最後の力を振り絞って創造した閃光弾を発射し、閃光弾の光でギガントマキアの視界が奪われた隙に取蔭が切島を救出した。
「
雄英生達は士気を高め、八百万は耳郎と葉隠に避難を促しながらマジェスティックと通信する。
「暴れる程回りが早まるはずです!! マジェスティック!!」
八百万からの通信を受けたマジェスティックは、他のヒーロー達を飛ばしてギガントマキアの元へ向かっていた。
「委細承知した! さすが百ちゃん俺の見込んだ女だよ! さぁ皆さんインターン生に頼りっぱなしはここまでにしよう!」
するとギガントマキアは、下顎のプロテクターを上へスライドさせる。
「小蝿は、キリがない」
◇◇◇
そしてその頃、蛇腔病院跡地では。
「終わりだ、死柄木弔」
エンデヴァーは、地面に蹲る死柄木に向かって言い放つ。
「つっ…っ!! ガハッ…」
死柄木は、ヒーロー達による総攻撃を受け、血を吐きのたうち回っていた。
「いくら…力を得ようとも…っ!! 信念無き破壊に我らが屈する事は無い!!」
死柄木が苦しんでいると、エンデヴァーが言葉を浴びせる。
すると死柄木は、苦しみながらも言葉を紡ぐ。
「ハァア…! …お前ら…ヒーローは、他人を救ける為に家族を傷つける…! 父の言葉だ。信念なら──…ある…! あったんだ…!」
死柄木は、身体からビキビキと音を立てながらひなた達を睨みつけた。
「ヒーローというのはな…他人を助けるために家族を傷つけるんだ」
それはかつて、死柄木が父親に言われた言葉だった。
死柄木は、ビキビキと音を鳴らしながら起き上がる。
すると、死柄木の攻撃を喰らったグラントリノが立ち上がる。
「っ…何じゃ…アレは」
グラントリノの視線の先には、フラフラの状態で立ち上がる死柄木がいた。
「お前達は、社会を守るフリをしてきた。過去…何世代も…守れなかったものを見ないフリして、傷んだ上から蓋をして───浅ましくも築き上げてきた。結果、中身は腐って蛆が沸いた。小さな積み重ねだ。守られる事に慣れたゴミ共、そのゴミ共を生み出し庇護するマッチポンプ共。これまで目にした全てに、お前達の築いてきた全てに否定されてきた。だからこちらも否定する。だから壊す。だから力を手に入れる。シンプルだろ? 理解出来なくていい、できないから。“ヒーロー”と“
死柄木が言った直後、エンデヴァーは死柄木に炎を放ち、クラストは死柄木に盾を投げつける。
「わざわざインターバルをどうも!! 貴様ももう虫の息だろう!! 観念───」
エンデヴァーが言いかけたその時、死柄木が炎の中から飛び上がってエンデヴァーを攻撃しようとする。
だがその時、グラントリノが死柄木に組みついて攻撃を阻止する。
すると死柄木は、身体を捩った際の衝撃波でグラントリノを引き剥がし、そのままグラントリノを地面に叩きつけた。
死柄木がグラントリノにトドメを刺そうとすると、ひなたが爆音を浴びせて死柄木を止めた。
すると死柄木の身体に青緑色の光のヒビが入り、内部破壊を喰らった死柄木は白目を剥く。
「ぁ…がぁ…!!」
死柄木がひなたの攻撃を喰らって白目を剥くと、ひなたはトドメの一撃を浴びせようと息を大きく吸う。
その威力は桁違いで、息を吸っただけで地面に燃え移っていたエンデヴァーの炎が消える程だった。
ひなたは、身の丈に合わない“個性”を無理矢理発動させた反動で喉に激痛が走り、額に青筋を浮かせ白目を剥きながらも緑色の光を纏って“個性”を使おうとした。
(僕が、皆を守るんだ!! 痛みなんか知らない!! 今僕にできる全力を、ここで──────
ザクッ
「 」
いつの間にか、ひなたの喉には瓦礫を突き刺さっていた。
銃弾以上の速度で撃ち出された鋭い瓦礫がひなたのマフラーを貫通して喉を抉り、首の後ろまで貫通した。
見ると、死柄木が笑いながら片手に瓦礫を握っていた。
「ぁ………」
ひなたは、瓦礫が突き刺さった首から血を流し、力なく地面に倒れ込んだ。
死柄木の“個性”を消すため視線を向けていた相澤は、目を見開いたまま放心していた。
ひなたと目が合った相澤の脳裏には、自分の近くで命を落としていった者達の顔が浮かんでは消えていった。
◇◇◇
「兄ちゃん! ぼく、オールマイトみたいなかっこいいヒーローになれるかなぁ!」
自分を慕ってくれていた弟は、事故で命を落とした。
笑顔で幼稚園の遠足に行く弟を玄関で見送った、その矢先だった。
「三人で事務所をつくろう! 面倒事はショータに任せる!」
自分を奮い立たせてくれた親友は、インターン中に子供を庇って命を落とした。
「お父さん! 僕、お父さんみたいなヒーローになって、いっぱい恩返しするね! だからさ、見ててよ! 僕の事!」
自分を支えてくれた娘は、地面に伏して血を流しながら虚ろな目を向けていた。
かつては何の希望も見い出せずに死んだ目をしていた女の子が毎日笑顔で過ごしてくれている、それだけで十分すぎる程の救いだった。
誰よりも立派なヒーローになれると信じていた者達は、皆呆気なくいなくなってしまった。
◇◇◇
「ははっ、なんだ。最初からこうしておけば良かった」
ひなたに致命傷を負わせた死柄木は、笑いながら立ち上がった。
喉に瓦礫が突き刺さって血を流すひなたを見て、爆豪はギリっと歯を食いしばっていた。
「っっっっっっっそがぁ……!!」
「うわぁああああああああ!!!」
ひなたが死柄木に瓦礫を刺されるのを目の当たりにした緑谷は、目に涙を浮かべながら突進した。
緑谷は、死柄木を黒鞭で絡め取り、100%の力で殴りつけた。
だが死柄木は、緑谷のフルパワーの攻撃を生身で受け止め、二人は取っ組み合いになった。
「死柄木ィ!! お前だけは絶対許さない!!」
「俺は誰も許さない」
緑谷が力で死柄木を押さえつけようとするが、死柄木は緑谷の脇腹に肘を叩き込んだ。
緑谷は、肋骨を折られて痛みに顔を歪めるが、必死に死柄木に喰らい付いた。
一方で爆豪は、ひなたの元へ駆けつけて移動させようとしていた。
「あっち…! クソが、どうなってンだこりゃあ!!」
爆豪は、ひなたの身体の熱さに驚きつつもひなたを運ぼうとする。
するとその時、ひなたが爆豪の腕を掴んで何かを伝えようとした。
「エンデヴァー!! こいつまだ生きてんぞ!! 救護班は!!」
「バクゴー…!」
爆豪が救護班の居場所をエンデヴァーに尋ねると、エンデヴァーが目を見開く。
だが、ひなたが生きていると知った死柄木は、今度こそ確実にひなたを殺そうとする。
「邪魔」
死柄木が爆豪とひなたをまとめて殺そうと飛び出した、その時だった。
突然氷山が死柄木を突き飛ばし、槍のように変形して死柄木を追い詰めた。
「相澤!!」
そこへ駆けつけてきたのは轟と、途中で合流した心操とプレゼントマイクだった。
轟が氷で死柄木の意識を逸らした隙に、緑谷が死柄木の脇腹に拳を叩き込み、そのまま黒鞭で拘束して地面に叩きつけた。
緑谷に叩きつけられた死柄木は、冷え切った視線を向けながら言った。
「守った先に何がある? 必死に先送りしようと、待ってるのは破滅だけ」
◇◇◇
その頃、住民達を避難誘導していた飯田達は。
「轟くんとも繋がらない!! もぉぉ!!」
「謹慎ボーイズを連れ戻すと言ったっきり!!」
「一定範囲が音信不通にされたようね」
麗日、飯田、蛙吹は心配そうに言った。
「……やっぱ私達も行くべきじゃ…」
麗日が提案しようとしたその時、住民の一人が口を開く。
「ちょっとちょっと、待って、ちょっと何このニュース! どうなってんだよこの国!!」
「聞かせて下さい!!」
飯田が住民に頼むと、住民は端末のニュースを見せた。
『ザ…ザザ… ───該当地域の……すぐに避難を始めて下さい。繰り返します。現在超大型の
ニュースを聞いた麗日は、目を見開く。
「……ヒーロー、今回の作戦で殆ど出張っとんねやろ」
その頃、ギガントマキアは建物を薙ぎ倒しながら死柄木の元へ向かっていた。
◇◇◇
一方、郡訝山荘では。
雄英生達は、絶望の表情で更地となった森を眺めていた。
「障子、ヒーロー達は…」
「遠すぎる。確認出来ない」
瀬呂が尋ねると、障子が答える。
「……なんて事…」
八百万は、絶望の表情で呟いた。
生徒達が無事だったのは、ギガントマキアに敵とすら認識されていなかったから、ただそれだけだったのだ。
◇◇◇
切島がギガントマキアに特攻を仕掛けてから、本気を出したギガントマキアが暴れ回り、ヒーロー達は命がけで止めようとしたが全く歯が立たず、次々とヒーロー達が命を落としていった。
そんな中、マジェスティックが生徒達の足元にリングを出現させて浮かせる。
「マジェスティック!!」
「君達の行動と決断は間違いなく正しかった、これから何が起きようともそれだけは確かさ」
そう言ってマジェスティックは1年生達を全員逃がした。
◇◇◇
そして現在、生徒達は不安そうにギガントマキアが向かった方角を眺めていた。
「ねえ、本当にちゃんとお薬効いてるノコ?」
「確かに、常人の致死量の数百倍の毒を盛ったはずです。立ちはだかる敵は殺す覚悟で、私達にできる全てを注ぎ込みました。ですがあれは……」
小森が不安そうに口を開くと、八百万と峰田が絶望の表情で口を開く。
「… 俺達の決断と行動は……本当に正しかったのかな。ヒーロー達の決断と行動は。なァ…! 今回の全部、こんなん…ただの、ヤブヘビじゃねえかよ!!」
◇◇◇
一方、ひなた達のピンチに駆けつけた轟達はというと。
轟は、氷を操って爆豪とひなたを助け出し、ひなたの首周りを凍らせて止血した。
「ショート!」
「リューキュウ達を助けてて遅れた。身体冷やせ、気休め程度にはなるだろ」
轟は、エンデヴァーの周りに冷気を放ってエンデヴァーの身体を冷やした。
心操とプレゼントマイクは、血相を変えてひなたに駆け寄る。
「「ひなた!!」」
二人は、ボロボロになったひなたに駆け寄り、壊れ物を扱うように抱き上げた。
プレゼントマイクは、震える手でひなたの血が抜けて白くなった頬を撫で、ギリっと歯を食いしばっていた。
「クソ…チクショウ…!」
「とりあえず、傷を塞ぎます。マフラー外して! 首を上に! 棘は抜かないで!」
「はい!」
エンデヴァー事務所の救護専門のサイドキック、アポロンが指示を出すと、二人は指示通りに動いた。
アポロンは、ひなたの首に触れると、“個性”を発動してひなたを治癒した。
アポロン
本名
“個性”『熱活力』
熱を吸収して生命エネルギーに変換する!
生み出した生命エネルギーを分け与える事で、治癒力を活性化させる事ができる!!
ちなみに炎熱系の“個性”の方が相手の炎を治療に使える分回復が早い!
アポロンがひなたを治癒すると、ひなた本人の並外れた回復力の高さもあり、瞬く間に喉の穴が塞がっていく。
「大丈夫、危ないところは乗り越えました。ショートくんが血液や細胞を冷凍してくれてて助かりました。ですが血が少し足りません。俺の“個性”じゃ、失血ばかりはどうにも…」
「俺の血を使え! 同じ型だ! いくらでもやるから、ひなたを助けてくれ!! 家族なんだよ!!」
アポロンが言うと、プレゼントマイクが名乗りを上げた。
アポロンは、プレゼントマイクの血をひなたに輸血した。
一方で相澤は、ひなたを殺されかけてもなお死柄木を睨み続けていた。
「イレイザー!」
「わかってる。ここで目を逸らしたら、ひなたの…ヒーロー達の頑張りが無駄になる…! 徹底的に、合理的に対処するまでだ!」
ロックロックが声をかけると、相澤は目を見開いて死柄木を睨んだ。
死柄木は、相澤を鬱陶しそうに見ながら口を開く。
「娘が死にかけたってのにノーダメージかよ。薄情だな。まあいいや、死ね」
死柄木は、地面目掛けて衝撃波を放ち、土煙を巻き上げる。
すると死柄木の身体が土煙で覆われ、姿が見えなくなる。
相澤は周囲を土煙で覆われても“個性”を解かなかったが、煙が目を直撃する痛みで一瞬目を細める。
その瞬間、死柄木が土煙から飛び出し、相澤の顔を掴んで“個性”を奪おうとする。
だが、その瞬間だった。
「ぬ゛ぅ゛う゛う゛う゛!!!」
緑谷は、超音速で死柄木に体当たりを仕掛け、相澤から死柄木を引き剥がした。
そのまま『崩壊』が使えないよう黒鞭で死柄木を拘束し、自分ごと『浮遊』で浮かせた。
いきなり超音速で飛び出し、オールマイト並みのパワーで死柄木を押さえつけた緑谷を見たグラントリノは、ニィッと笑みを深くする。
(アレは…2代目の『変速』と3代目の『発勁』…!!)
緑谷は、拳を振りかぶりながら死柄木に言い放つ。
「ここでお前を止める。僕の出来る全てを懸けて」
オリジナルサイドキックプロフィール
アルテミス
本名:
性別:女
年齢:26歳
“個性”:『火箭』
誕生日:12月25日
身長:158cm
血液型:O型
出身地:ギリシャ
好きなもの:弓道
性格:負けず嫌い
◯概要
エンデヴァー事務所のサイドキック。
30名以上が在籍する、通称『炎のサイドキッカーズ』の一人。
◯人物
アポロンの双子の姉。プラチナブロンドのポニーテールと琥珀色のツリ目、厚めの唇が特徴的な女性ヒーロー。
主に
弓の達人で、超遠距離狙撃や曲射などの難易度の高い射撃もそつなくこなせる。
勝ち気で面倒見のいい姉御肌。実は好きなタイプが『かわいい女の子』。
ちなみに純日本人だが、生まれと育ちはギリシャ。
◯“個性”
『火箭』
掌から可燃性の汗を分泌し、炎の弓矢を生成できる“個性”。
発汗量が多ければ多いほど大量に矢を生み出せる。
汗の成分を調整して炎色反応を起こし上空に撃つ事で、信号弾としての役割も果たす。
弓矢の大きさや速度は調整可能で、一本でも人一人くらいなら支えられる耐久力を持つため、自分ごと矢を撃ち出し高速飛行をする事も可能。
また、最大で5本までなら複数撃ちが可能。
アポロン
本名:
性別:男
年齢:26歳
“個性”:『熱活力』
誕生日:12月25日
身長:178cm
血液型:O型
出身地:ギリシャ
好きなもの:女性
性格:社交的
◯概要
エンデヴァー事務所のサイドキック。
30名以上が在籍する、通称『炎のサイドキッカーズ』の一人。
◯人物
アルテミスの双子の弟。プラチナブロンドの癖っ毛と切れ長の琥珀色の目を持つ美青年。
主に救助活動を担当しており、炎熱系専門の回復“個性”である事から重宝されている。
“個性”の関係上医療知識が豊富で、頭の回転も早い。
基本的に気さくだが軟派な性格で、異性関係で火傷し上司や同僚から窘められるのはもはやお約束。
ちなみに純日本人だが、生まれと育ちはギリシャ。
◯“個性”
『熱活力』
熱を吸収して生命エネルギーに変換し、身体能力を向上させる増強系の“個性”。
吸収する熱量が多いほど、強化倍率が上がる。
生み出したエネルギーは譲渡する事も可能で、触れた生物の自己治癒力を活性化させたり、動植物の成長を早めたりする事が可能。
ちなみに回復させる相手が炎熱系の“個性”だった場合、相手の炎を治療に使える分回復が早い。
“個性”の関係上、熱源を感知する事ができる。