抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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OVA編です!
気が向いたので書いてみました!
それではどうぞ!


OVA・1 救え!救助訓練! 
救え!救助訓練!


 USJ襲撃事件から数日後。

 相澤は、1年A組の保護者達に事件の報告をしていた。

 

(ヴィラン)連合によるUSJ襲撃事件についてのご報告。雄英高校ヒーロー科1年A組生徒21名は救助(レスキュー)訓練を行うべく『ウソの災害や事故ルーム』、略してUSJに赴くも、訓練開始直前『(ヴィラン)連合』と名乗る集団からの襲撃を受けました。(ヴィラン)連合側の“個性”によって生徒達は格救難施設に分断。担当教師であった相澤と13号は(ヴィラン)に対抗するも、黒霧と名乗る(ヴィラン)によって13号は負傷。相澤もまた主犯格である死柄木弔と脳無と呼ばれる(ヴィラン)の攻撃を受け戦闘不能状態に陥りました。諸般の事情により遅れてきた教師オールマイトが戦闘に参加し、負傷しつつも脳無を撃退した事で形勢が逆転。また、A組クラス委員である飯田天哉が本校校舎にいたプロヒーロー達に連絡。現場に急行させた事で事件は一気に収拾しました。結果として教師3名、生徒1名が負傷するという学校側の運営責任を問われ兼ねない事態を招いた事に遺憾であると言わざるを得ません。しかし、雄英校としては数日の後にヒーロー科を通常のカリキュラムに戻す予定でいます。人々を困難から救い(ヴィラン)と戦う術を生徒達に身につけさせるために、3年という期間はあまりにも短い。その旨を鑑みての処置だとお考え下さい。1年A組生徒の保護者の皆様には、ご心配とご迷惑をおかけ致しますが、何卒ご理解とご協力を賜りたいと思っております。雄英高校ヒーロー科1年A組担任、相澤消太」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 (ヴィラン)連合による襲撃から4日後。

 1年A組は再び雄英高校訓練施設USJに来ていた。

 13号は、右手の人差し指を立てながら生徒達に説明をした。

 

「まああんな事があったけど、授業は授業! というわけで、救助訓練しっかり行って参りましょう!」

 

 すると麗日が心配そうに13号に尋ねる。

 

「13号先生、もう動いて大事なんですか?」

 

「背中がちょっと捲れただけさ。先輩に比べたら大したものじゃないよ」

 

「授業を行えるなら何でもいい。とにかく早く始めるぞ。時間がもったいない」

 

 そう言って相澤は、先にスタスタと歩き出していった。

 すると緑谷が声をかける。

 

「相澤先生!」

 

「ん?」

 

「前回は13号先生と相澤先生と、あとオールマイトが見てくれる筈でしたけど……オールマイトは?」

 

 緑谷が尋ねると、相澤は少し間を置いて答える。

 

「知らん。放っとけあんな男」

 

「酷っ!!」

 

 相澤が言い放つと、ひなたは目を丸くしてツッコミを入れた。

 緑谷は、相澤のあまりにもぶっきらぼうな物言いに違和感を覚えていた。

 そして間もなくして、救助訓練が始まった。

 

「ではまずは山岳救助の訓練です! 訓練想定としまして、登山客3名が誤ってこの谷底へ滑落。1名は頭を激しく打ち付け意識不明。もう二名は脚を骨折し動けず救助要請。という形です」

 

 13号が説明すると、切島と上鳴が前に出て谷を覗き込む。

 二人は、底が全く見えない谷底に驚いて声を上げる。

 

「「うわぁああ!?」」

 

「深っけぇえええ!!」

 

「二名はよく骨折で済んだなオイ!」

 

 すると飯田が駆け出して二人を叱った。

 

「切島くん上鳴くん、何を悠長な事を!! 一刻を争う事態なんだぞ!! 大丈夫ですかぁ!! 安心して下さい!! 必ず助け出しまぁす!!」

 

 飯田が谷底に向かって叫ぶと、切島と上鳴が呆れる。

 

「おめーは早すぎんだろ」

 

「まだ人いねーよ」

 

「天ちゃん、フルスロットル……!」

 

 早速やる気モードの飯田を見て、ひなたもツッコミを入れていた。

 一方麗日も、やる気満々といった様子だった。

 

「うおおお!! 本格的だぜ!! 頑張ろうねデクくん!!」

 

 麗日がノリノリな様子で緑谷に話しかけると、緑谷は顔を赤くする。

 緑谷は、一刻も早く“個性”を使いこなせるようにならなければと意気込んでいた。

 だが……

 

「じゃ、怪我人役はランダムで決めたこの3人です!!」

 

(((助けられる方か……!)))

 

(ドンマイ!)

 

 要求助役に選ばれたのは、飯田、麗日、緑谷の3人だった。

 よりにもよって先程までやる気満々だった3人が選ばれたため、ひなたは苦笑いを浮かべる。

 

「全力で怪我するぞ二人共!!」

 

「おー!!」

 

「怪我のフリね……!」

 

「よし。それじゃあまず、救助要請で駆けつけたと想定し、この5名だ。そこの道具は使っていい事とする」

 

 最初の救助役に選ばれたのは、八百万、常闇、轟、爆豪、ひなたの5人だった。

 相澤は担架やロープなどといった道具を指しながら言った。

 すると爆豪がキレる。

 

「待てオイ!! 何で俺が助けにゃならんのだ!!」

 

 すると蛙吹とひなたが口を挟む。

 

「アニメフェスタだからよ、爆豪ちゃん」

 

「おー! ジャンプスペシャル!」

 

「ああ!?」

 

「梅雨ちゃん、ひなちゃん! やめとこ、そういうの」

 

「ひなたお前そういうとこだぞ」

 

 蛙吹とひなたが言うと爆豪がキレ、切島と心操が二人のメタ発言にツッコミを入れた。

 するとその時、谷底から飯田の声が聞こえてくる。

 

「誰かああ!! 助けて下さい!! 脚があああああ!!」

 

 飯田が叫ぶと、轟は谷を覗きながら4人に声をかける。

 

「始めるぞ。誰が降りる」

 

「仕切ってんじゃねーぞ半分野郎!! 降りるまでもねえ。谷そのものを無くしちまえば問題ねえ!!」

 

 爆豪がヒーロー志望とは思えない悪人面をしながら言うと、八百万とひなたが注意をする。

 

「正気ですか!?」

 

「コラーかっちゃん!!」

 

 それを見ていた他のA組も呆れ返っていた。

 

「考え無しじゃないけど、考える事が人とは思えないわ」

 

「本当にヒーロー志望か……? あいつ……」

 

「緑谷絡むとやべーなあいつホント」

 

 爆豪の問題発言に、蛙吹、心操、上鳴が引いていた。

 一方で、轟は爆豪の問題発言に呆れてため息をつきつつ八百万に指示を出す。

 

「八百万。お前はプーリーを出せ。倍力システムを作る。意識不明の奴から一人ずつ上にあげる。介添は常闇を下ろす。俺、爆豪、相澤、八百万で引き上げる」

 

「待ててめえ!! 勝手に全部決めてんじゃねえ!!」

 

 轟が指示を出すと、爆豪がブチ切れて轟の胸ぐらを掴む。

 すると常闇は呆れ返り、八百万とひなたが止めに入る。

 

「ちょっと、爆豪さん……!」

 

「かっちゃんステイ! 訓練にならないでしょーが!」

 

「てめーは黙ってろ触角チビ!!」

 

 爆豪が怒鳴り散らすと、ひなたは爆豪の荒れ様に引く。

 すると轟が冷たく言い放つ。

 

「これがベストだろ」

 

「ああ!?」

 

「遊び半分でやってるんなら何もしなくていい。俺はこんな訓練で揉める程暇じゃねえんだよ」

 

「誰が……遊び半分だって!?」

 

 轟が言い放つと、その発言に痺れを切らした爆豪が突っかかる。

 すると八百万が仲裁に入った。

 

「おやめなさい!! お二人共みっともない! それに我々にはまず初めにやるべき事があります! ひなたさん」

 

「わかった!」

 

 八百万が指示を出すと、ひなたはヘッドホンのダイヤルを調整し“個性”で声を大きくして谷底に向かって叫んだ。

 

『皆さん! 聴こえてます! 安心して下さい、今すぐ向かいます! 落ち着いてこちらの指示に従って下さい!』

 

「早くしてくれー!! 麗日くんが、麗日くんがー!!」

 

「やっと来てくれたー助かったー」

 

 飯田が要救助者役を熱演し、緑谷は棒読みで演技をしていた。

 意識不明役の麗日は、飯田の熱演っぷりに笑いを堪えていた。

 

(お茶子っち笑ってんな……)

 

 ひなたは、笑っている麗日に呆れて引き攣った笑みを浮かべていた。

 八百万は、喧嘩をしていた爆豪と轟を窘める。

 

「要救助者への接触。これが第一です。絶望的状況でパニックを起こす方も少なくないと聞きます。そんな方々を安心させる事が迅速な救助に繋がるのです。『こんな訓練』? 真剣に取り組まずに何が訓練ですか!」

 

「ヤオモモ! 全員脈拍、呼吸共に正常の範囲内! 命に別状は無さそう! 骨折二人に関しても、受け答えは正常! ただ、お茶子っちが頭を負傷して脳機能に何かしらの障害が出てるかもしれないから、一刻も早く救助を!」

 

 ひなたは、ヘッドホンを装着して拾った音から要救助者の状態を確認して八百万に報告した。

 テキパキと動く二人を見て、クラスメイトが感心する。

 

「すげぇ……立派だな二人共……」

 

「ああ……」

 

 切島が素直に感心している一方で、峰田はしゃがみ込んで八百万の尻を凝視していた。

 

「ご立派……」

 

「クズかよ!!」

 

「峰田お前ホントいい加減にしとけよ」

 

 峰田が涎を拭きながら言うと、切島と心操がツッコミを入れる。

 5人は、八百万が作った倍力システムで早速救助を行った。

 八百万は、下に降りた常闇に声をかける。

 

「常闇さん! 別のロープで担架を降ろしますから、ゆっくりでいいですわ」

 

「ああ!」

 

 常闇が下に降りると、緑谷が声をかける。

 

「やあ! 常闇くん」

 

「待たせたな」

 

 常闇が救助に来ると、飯田が涙を流しながら麗日に声をかける。

 

「麗日くん!! もう大丈夫だ!! 助かるぞ!! 俺達皆助かるんだ!!」

 

 飯田の熱演っぷりに、麗日は必死に笑い声を堪えていた。

 すると常闇が三人に指示を出した。

 

「よし、意識不明の麗日から引き上げる」

 

「了解! ……と、ダメだ。僕らは足が動かないから手伝えないんだった」

 

「頭を打った人を一人で抱えるのは危なくないですか!?」

 

「フッ、案ずるな」

 

 常闇は、微笑みながら黒影(ダークシャドウ)を召喚した。

 

「俺は常に二人だ」

 

「「「!」」」

 

黒影(ダークシャドウ)、麗日を担架へ」

 

「ウルセーナ!」

 

「早くしろ」

 

「チッ、ヤリャアイインダロヤリャア!」

 

 常闇が命令すると、黒影(ダークシャドウ)は文句を言いつつも麗日を担架に乗せた。

 麗日を乗せた担架は、ゆっくりと上へ昇っていく。

 

「担架を支えたまま上昇だ。ぶつけるなよ」

 

「ッタク……!」

 

 常闇が命令すると、黒影(ダークシャドウ)は不満そうに麗日を持ち上げた。

 すると緑谷が声をかける。

 

「すごい“個性”だね黒影(ダークシャドウ)……!」

 

「奴の真価はこのような雑務ではなく、攻守の範囲と機微にある」

 

「いやぁ……これが真価だと思うなぁ……! どこでも助けられる! 超カッコいいし!」

 

 緑谷が目を輝かせながら言うと、常闇は僅かに目を見開きフッと笑う。

 

「……妙な男よ」

 

 その後、麗日は無事4人に救出された。

 

「保護!!」

 

「ありがとう!! ヒーロー!!!」

 

「わ!?」

 

 飯田が大声で叫ぶと、ヘッドホンからの大声にひなたが驚く。

 一方八百万は、見るからに様子がおかしい麗日に声をかけていた。

 

「……麗日さん? 何を笑っていますの?」

 

「ブフッ……だってー飯田くん……ブーッ!! 真面目やでさ……耐えれやんかった……」

 

「飯田さんの姿勢は素晴らしいですわ。笑う事ではありません」

 

「ブフッ……ごめんわかるけど……でも……ブフッ!!」

 

 八百万は呆れながら麗日を窘めるが、麗日は笑いが堪え切れずに吹き出した。

 ひなたは、谷底の音を拾いながら轟に声をかける。

 

「焦ちゃん! 次大丈夫そう!」

 

「じゃあ次降ろすぞ」

 

「黙れ指図すんな」

 

 轟が爆豪とひなたに言うと、爆豪が文句を言いつつロープを降ろした。

 

「“個性”を上手く作用させ合い人助けをする! 一組目にしてはとても効率の良い模範的な仕事です! これこそ、超人社会のあるべき姿だ!!」

 

「一人ただ引っ張るだけの人いますよ」

 

「そういや爆豪だけ“個性”使ってなかったね」

 

「外野がうっせんだよ黙れや!!」

 

 瀬呂が爆豪を指差しながら言い心操もそれに同調すると、爆豪が二人にキレた。

 すると13号が爆豪のフォローをする。

 

「自身の“個性”が貢献できないと判断した場合、それは正しい。適材適所! 最近のヒーローはそれができない人が多いんです。自分が、自分がばかりでかえって状況を悪くしてしまう例も多発しています。そこをよく理解してフォローに回る事を覚えれば彼もきっと素敵なヒーローになると思いますよ!」

 

「いやぁ、素敵にはならんでしょうな」

 

「性格がアレだからね……」

 

(後で二人まとめて殺す……!! あの醤油顔と根暗野郎……!!)

 

 13号の言葉に対して瀬呂と心操が言うと、爆豪が二人に殺意を抱く。

 救助訓練は、そのまま順調に進んだ。

 

「じゃあ次の組でラストだ」

 

 相澤は、最後の組に同様の指示を出した。

 救助者役は麗日、尾白、心操、緑谷がやる事になり、要救助者役はひなた、蛙吹、爆豪がやる事になったため爆豪は『何で俺がクソ触角と一緒にクソデクに救助されなきゃなんねーんだ!!』とキレていた。

 無重力の“個性”を使える麗日が谷底へ降り、意識不明役のひなたを担架に乗せて浮かせた。

 

「麗日! いいぞ!」

 

「解除!」

 

「保護!!」

 

 尾白が叫ぶと、麗日が“個性”を解除して心操がひなたをキャッチする。

 ひなたをキャッチした心操は、麗日に声をかける。

 

「ひなた、もう大丈夫だ。助け……ひなた?」

 

「きゅう…………」

 

 心操がひなたを抱きかかえながら声をかけると、ひなたは目を回して顔を真っ赤にし気を失った。

 ひなたが本当に気を失ってしまったため、心操が慌てる。

 

「えっ、ちょっ、おい! 本当に気絶する必要無いんだけど!?」

 

 ひなたが心操に抱きかかえられて緊張するあまり気を失ったのを、飯田は勘違いして勝手に感心していた。

 

「何という熱演っぷり……!! 脱帽したぞひなた君!!」

 

「いや、アレ違うと思うよ……」

 

「ったく……」

 

 ひなたが気絶したのを迫真の演技と勘違いし感心する飯田に耳郎がツッコミを入れ、相澤が呆れ返る。

 ひなたが無事(?)救助されたところで、次は爆豪の番となった。

 

「爆豪くん、なるべく体勢崩さないで……「っせえ指図してんじゃねー丸顔!!」酷……!」

 

「暴れないの爆豪ちゃん。あなた脚を骨折している設定なんだから」

 

 麗日が爆豪を手当てしながら言うと爆豪がキレたので、麗日は目を丸くし蛙吹が注意をした。

 その後は同様に緑谷が爆豪を救助し、案の定爆豪が緑谷に逆ギレして相澤に叱られた。

 そして最後は蛙吹の番となった。

 

「これで良し。梅雨ちゃん、ちょっと怖いかもしれないけどなるべく体勢崩さないでね」

 

「ケロ」

 

 麗日が蛙吹の脚を縛りながら言うと、蛙吹が頷く。

 麗日は、蛙吹に“個性”を使って浮かせた。

 すると尾白が緑谷に声をかける。

 

「来るぞ緑谷」

 

「任せて!」

 

 緑谷は、空中に浮く蛙吹の下に両手を伸ばした。

 すると尾白が麗日に声をかける。

 

「麗日! いいぞ!」

 

「解除!」

 

 麗日が“個性”を解除すると、蛙吹は緑谷の腕の中に落ちた。

 

「保護!」

 

「緑谷ちゃん早く降ろして。何だかとても恥ずかしいの」

 

 蛙吹が僅かに顔を赤らめながら言うと、緑谷は顔を真っ赤にして慌てる。

 

「あと私、足を骨折しているの。ダメよこの体勢」

 

 蛙吹が自分をお姫様抱っこしている緑谷に注意すると、緑谷はさらに慌てふためく。

 全員の救助が終わったため、尾白が13号に声をかける。

 

「要救助者、全員保護しました!」

 

「はい終了です!」

 

 それを見ていた砂藤は、緑谷達のやり方に感心する。

 

「ロープやら何やらと要救助者を浮かせてキャッチか……」

 

「ズ・ル・ウィ☆」

 

「いや別にズルくはねーだろ」

 

 青山が決めポーズをしながら言うと、砂藤がツッコミを入れた。

 1回目の救助訓練が終わると、13号が全員の前で話をする。

 

「皆さん大変素晴らしい成果でした! 1回目にしては! 救助とは時間との戦いでもあります。まだまだ改善の余地が皆さんにはありました。即ち! まだまだ伸び代があるという事!」

 

「何か呆気ねーや」

 

「気を抜くな」

 

 13号の発言に対し上鳴がポロッと言うと、相澤が上鳴を睨みつける。

 

「まだ授業は続くぞ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「で、次はこちら。倒壊ゾーンです! 救助訓練の1回目という事で、今回は色んな状況を経験してもらいます。この倒壊ゾーンでの訓練想定は、震災直後の都市部。被災者の数・位置は何もわからない状態で、なるべく多くを助ける訓練です。8分の制限時間を設定し、これまた4人組又は5人組での救助活動を行います。残りの16名又は17名は各々好きな場所に隠れて救助を待つ事。ただしそのうち8名は“個性”を出せない状態と仮定します。その8名は私が指定します」

 

 13号が言うと、芦戸がキャッキャとはしゃぐ。

 

「それって隠れんぼ! 隠れんぼじゃん!」

 

「簡潔に言うと近いですね。では、1回目の5人組はこちら!」

 

 ランダムに選ばれたのは、ひなた、麗日、爆豪、緑谷、峰田の5人だった。

 すると爆豪がキレる。

 

「何でつくづくデクとやんなきゃなんねーんだよ!!」

 

 爆豪がキレると、麗日とひなたが口を挟む。

 

「しょうがないよ、アニメフェスタなんだもん」

 

「アニメフェスタなら仕方ないよね!」

 

「さっきから何だそれは!?」

 

「二人共やめろって。そういうの白けるから」

 

 麗日とひなたのメタ発言に、爆豪と切島がツッコミを入れた。

 一方で、峰田は女子の尻を凝視しながら独り言を言っていた。

 

「被害者を運ぶにあたって胸及び臀部にやむを得ず触れてしまった場合、それは何か罪に当たるのか否か「ギルティ」

 

 峰田が良からぬ考えを抱いていると、ひなたが峰田を捕縛して“個性”を発動させる。

 

「相澤さんの必殺コンボ……!! 相澤先生譲りの捕縛術と相手の“個性”を掻き消す声の恐ろしい組み合わせだ……!!」

 

 ひなたが峰田をギチギチに捕縛すると、緑谷がひなたの早技に震え上がっていた。

 そしてその後、救助訓練が始まった。

 

「要救助者側が隠れて2分。それでは捜索訓練を始めます! 震災直後、何が起きてもおかしくないという事を忘れずに! では、出動!」

 

 13号が言うと、緑谷は他の4人に指示を出す。

 

「よし、とりあえず救助者を探そう!」

 

「僕やるよ!」

 

 緑谷が言うと、ひなたは“個性”で隠れている16人を探し出した。

 

「ん! 発見!! 北50m先に二人!!」

 

 ひなたが指を差しながら言うと、緑谷が爆豪に指示を出そうとする。

 

「かっちゃん「指図すんな!! 俺について来いカス共!!」

 

 爆豪は、爆速ターボで空を飛んで一人で行ってしまった。

 ひなたは、探索の途中で独断行動をした爆豪に呆れ返る。

 

「ちょっと……! まだ続きがあったのに!」

 

 そして峰田も、爆豪の傍若無人っぷりにキレていた。

 

「なんだよもー!! 勝手な奴だな!!」

 

「仕方ない、とにかく視認・声の届く範囲内で四方に散ろう」

 

「うん!」

 

「探すのは任せて! 要救助者を見つけ次第声で知らせる!」

 

 緑谷が指示を出すと、麗日が頷きひなたがヘッドホンを調整しながら言った。

 

「救助は時間との戦い。迅速にいこう!」

 

「オッケー!」

 

「よっしゃー! ゴー!」

 

 4人は、それぞれ別の方向へと走り出した。

 

 その頃、隠れていた轟はというと。

 轟は、かつて父であるエンデヴァーにされた仕打ちを思い出して憎しみを抱いていた。

 

「チッ……思い通りにはならねえ……!」

 

 轟がそう呟いた、その時だった。

 

 

 

「何て顔だ」

 

 突然、何者かの声が聞こえる。

 

「誰だ!?」

 

 轟が立ち上がったその直後、建物が倒壊する。

 そして土埃の中からは、仮面を被った筋骨隆々の巨漢が現れる。

 

「とてもヒーローの目つきとは思えんな」

 

 仮面男が言うと、轟は見覚えのない仮面男を警戒する。

 すると仮面男はゴキゴキと首を鳴らしながら言った。

 

「4日ぶりに暴れるか……」

 

「4日前……!?」

 

 仮面男の発言に、轟が驚く。

 4日前といえば、ちょうど襲撃事件があった日だった。

 仮面男を連合の残党と考えた轟は、足から氷を出して仮面男を攻撃する。

 だが仮面男は、轟の攻撃を難なく避けて背後に回り込んだ。

 

「遅い!!」

 

 仮面男は、轟目がけて拳を振りかぶる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数分前。

 緑谷は、要救助者役のクラスメイト達を探していた。

 

「おーい!! 助けてくれー!!」

 

「尾白くん発見!」

 

「緑谷!」

 

「待ってて! すぐに助けるから!」

 

 尾白が手を振っていると、緑谷は尾白に声をかけた。

 一方で、峰田は錆びた配管にボールをくっつけていた。

 

「なるほど。オイラの超くっつく球を使うのか」

 

「瓦礫をつければ簡単梯子の完成! 尾白くん、球には触れないよう登ってきて!」

 

「なるほどな!」

 

「よくすぐ思いつくな!」

 

「ヒーローの“個性”活用法を考えるのが昔から好きなんだ」

 

 一方で、ひなたは瓦礫を退けて心操を見つけ出していた。

 

「ひー君発見!!」

 

「チッ、バレた……」

 

「私もひなたちゃんに見つかったー!」

 

 ひなたに見つかった心操は悔しそうに頭を掻き、真っ先にひなたに見つかった葉隠も悔しそうにしていた。

 一方、麗日も瓦礫を浮かせて耳郎を見つけ出していた。

 

「響香ちゃん発見!」

 

「あー……絶対見つかんないと思ったんだけどな……」

 

 麗日に見つかった耳郎は、悔しそうに頭を掻いていた。

 するとその時、飯田が声を荒げる。

 

「麗日くん!! 耳郎くん!!」

 

「あれ? 要救助側の筈じゃ……「逃げろ!!」

 

 飯田は、咄嗟に二人を抱えて身を挺した。

 するとその直後、飯田の背後で建物が倒壊する。

 その音に反応した緑谷、峰田、ひなた、爆豪が音のした方を振り向く。

 飯田に庇われた二人は、飯田に状況を尋ねる。

 

「いててて……何?」

 

(ヴィラン)だ!」

 

「「え!?」」

 

 飯田が言うと、二人が驚く。

 するとその直後、仮面男が土煙の中から現れる。

 

「何でここに!?」

 

「隠れてたって事!?」

 

 その直後、麗日は仮面男の手元を見て目を見開く。

 

「そんな……まさか……轟くん!!」

 

 仮面男は、右手に気絶した轟を掴んでいた。

 

「クラスで一番強いのが……!」

 

「だから早く! 君達は先生の元へ!」

 

「でも……!」

 

 飯田が指示を出すと、麗日は困惑する。

 一方で、緑谷と峰田も駆けつけていた。

 

(ヴィラン)!?」

 

「嘘だろ!?」

 

 そして、他の要救助者役の生徒も駆けつけてくる。

 

「そんな……!」

 

「マジかよ!?」

 

 一方で、尾白は相澤と13号に報告をしていた。

 

「先生! (ヴィラン)の残党が!」

 

「何てこった。俺達はまだ怪我で戦える状態じゃない」

 

「では……!」

 

「では、では、逃げて下さい! 正面出口まで、早く!」

 

 尾白が報告すると、相澤と13号は棒読みで指示を出す。

 すると仮面男は、右脚を大きく振りかぶる。

 

「逃がしゃしないさ、全員まとめて……死にさらせぇぇ!!!」

 

 仮面男が右脚を大きく踏み込むと、倒壊ゾーン全体にその衝撃が伝わっていく。

 緑谷と峰田は、仮面男が生み出した衝撃波で吹っ飛ばされて倒れ込んだ。

 

「何じゃこりゃあ!?」

 

 峰田は、更地となった倒壊ゾーンを見て目を見開く。

 

「どんだけだよ!?」

 

「こんな奴がずっと潜んでたのか!?」

 

 上鳴と切島も、仮面男の強さに驚いていた。

 

「どうしようひなたちゃん!?」

 

「……!!」

 

(あれ……? この波長、どこかで……)

 

 ひなたと一緒にいた葉隠は、ひなたの肩を掴みながら尋ねる。

 ひなたは、仮面男の波長を知っている事に気がつく。

 

「よぅし、周りは壁になったな。一人たりとも逃がさんぞ」

 

 仮面男は、人差し指を立てながら物騒な事を言った。

 一方で13号は、建物の被害を見て驚いていた。

 

「ああ……ウソでしょ!? 皆早く逃げて!」

 

 13号が指示を出したその時、爆豪が仮面男の方へと飛び出す。

 

「でやああああ!!」

 

 爆豪は仮面男に爆破を繰り出すが、仮面男にあっさり見切られた。

 爆豪は、仮面男と対峙しながら言った。

 

「逃げてえ奴は勝手に逃げろ! こいつは俺が潰してやる!」

 

「完全に見切られておいてよく言えたもんだ」

 

「オラアア!!」

 

 爆豪は、さらに仮面男に爆破を繰り出していく。

 それを見ていた峰田は、涙目になりながら爆豪の行動にツッコミを入れていた。

 

「バカかよ、何で力量の差を考えねえんだ! どう見ても格が違えってわかんだろ!」

 

 峰田は爆豪を馬鹿だと言っていたが、緑谷は違った。

 爆豪は考え無しに飛び出したのではなく、自分なりにやれる事を考えて飛び出したのだ。

 爆豪が仮面男と攻撃を打ち合っていると、仮面男が爆豪の爆煙を薙ぎ払う。

 

「痛いだろうが!!」

 

「危ない!」

 

 仮面男が攻撃を仕掛けようとすると、飯田が声をかける。

 すると爆豪は、空中で身を翻して仮面男の背後から爆破を浴びせた。

 

「オラアアアアア!!!」

 

 仮面男に爆破を浴びせた爆豪は、飯田に声をかける。

 

「おい! 人の心配する程強えんかてめえは! ああ!?」

 

「あっ……」

 

「棒立ちしてんなら、とっととその辺の奴等逃がしとけよ雑魚が!」

 

「何で君はそう憎まれ口しか叩けないんだ!」

 

 爆豪が言うと、飯田が爆豪に反論する。

 すると切島も爆豪に反論した。

 

「おいおい爆豪、その辺の奴等ってのは無えんじゃねえのか?」

 

「1年A組21人」

 

「一応全員ヒーロー志望なんだけど!」

 

「おう!」

 

 八百万と麗日も言うと、ひなたも拳を握りながら頷く。

 すると峰田は涙目になりながらも笑みを浮かべ、緑谷も笑みを浮かべる。

 

「皆!」

 

「ほう、随分勇ましいな。しかし……ふんっ!!」

 

 仮面男は、そう言って腕を振りかぶった。

 すると男の怪力によって生み出された衝撃波で瓦礫が飛んでくる。

 

「お任せ!」

 

 青山は、ネビルレーザーで瓦礫を砕いた。

 切島と砂藤も、拳で瓦礫を砕いていく。

 耳郎とひなたも、爆音で仮面男を攻撃した。

 

『AHHHHHHHHHHHH!!!!!』

 

「くっ……!!」

 

 仮面男が二人の攻撃に怯むと、瀬呂がテープで、八百万が捕縛ネット入りの大砲で仮面男を拘束した。

 

「今ですわ!!」

 

「行くぞ!! A組!!」

 

 八百万と飯田が指示を出すと、主に近接メインの生徒達が仮面男に突進する。

 すると仮面男は、二人の拘束を引きちぎった。

 

「ぬうううう!!!」

 

 仮面男が薙ぐように腕を振るうと、その衝撃波でA組は吹き飛ばされる。

 

「まさか全員で挑んでくるとはな。予想外だがその程度じゃこの俺は……」

 

 仮面男が言ったその時、爆豪が背後から仮面男に爆破を仕掛ける。

 だがその攻撃は、あっさり見切られて避けられた。

 

「あっ」

 

「チッ!」

 

 爆豪は仮面男に攻撃を仕掛けるが、仮面男はそれを難なくいなす。

 爆豪は一度距離を取ってから再度接近し蹴りを放つが、それも左腕で軽く受けられた。

 爆豪が掌から爆破を放つと、仮面男は上半身を軽く反らして回避する。

 

「かっちゃん……あっ! 飯田くん、峰田くん、相澤さん、麗日さん、あす……梅雨ちゃん。僕に考えがある!」

 

 仮面男と戦い続けていた爆豪だったが、決定打を与えられず息を切らしていた。

 

「ふう……流石に疲れてきたな。そろそろ〆るか」

 

「ヘッ、笑わせんな。まだまだこっからよ」

 

 爆豪がニヤリと笑みを浮かべうると、緑谷が飛び出す。

 

「今だ!」

 

「行くよ!」

 

 麗日は、走っていく緑谷とハイタッチをして“個性”を発動した。

 

「蛙吹さん!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで!」

 

 緑谷が指示を出すと、蛙吹は緑谷を舌で巻いて投げつける。

 

「オラアアアア!!」

 

 爆豪は、仮面男に大爆破を浴びせた。

 だが仮面男は、爆豪の攻撃を喰らってもビクともしなかった。

 

「いくらやっても……ん?」

 

 仮面男が後ろを振り向くと、峰田のボールを持った緑谷がいた。

 

「解除!」

 

 麗日が“個性”を解除すると、ボールが轟のコスチュームにくっつく。

 緑谷は、そのまま轟を抱えて仮面男から距離を取った。

 

「爆発のタイミングで……」

 

「やった! 成功!」

 

「ケロケロ」

 

 緑谷の作戦が上手くいき、麗日と蛙吹は喜んでいた。

 緑谷は、すかさずひなたに指示を出す。

 

「相澤さん!!」

 

「オッケー! 最大音量……『消滅幻想曲(エンテラルファンタジア)』!!!!』

 

 ひなたが仮面男目がけて爆音を放つと、仮面男は耳を塞いで怯む。

 

「ぐぅう……!!」

 

 仮面男がひなたの声に怯むと、その瞬間緑谷が“個性”を発動してデコピンを放った。

 仮面男と互角の衝撃波が仮面男を襲い、仮面男は一瞬よろめきはしたものの持ち堪えた。

 

「ダメか……!」

 

「雑魚は引っ込んでろ!」

 

 仮面男に決定打を与えられなかった緑谷が悔しがっていると、爆豪が飛び出す。

 

「野郎は俺がぶっ殺すんだよ」

 

「ぬぅ!!」

 

 仮面男は、緑谷が放った衝撃波を薙ぎ払った。

 するとその瞬間、爆豪が仮面男に詰め寄る。

 

「死ねぇ!!!」

 

 爆豪は、大爆破を0距離で仮面男に浴びせた。

 すると仮面男は、爆風で吹き飛ばされる。

 仮面男が吹き飛ばされた先には、峰田のボールが大量にくっついた瓦礫があった。

 仮面男は、そのまま瓦礫に叩きつけられ拘束された。

 

「ざまあ! トリモチ完璧だぜ! これでもう動けねえ!」

 

「ああ! 軌道上からの避難誘導もバッチリ。計画通りだ緑谷くん!」

 

「良かった……」

 

 峰田と飯田は仮面男を拘束できた事を喜び、緑谷も安心していた。

 すると麗日、蛙吹、ひなたが声をかける。

 

「デクくんやったね!」

 

「お見事よ!」

 

「デッくんナイス!」

 

「ありがとう、皆のお陰だよ。それに……」

 

(僕の作戦を瞬時に理解し最大級の爆発で(ヴィラン)を吹き飛ばした。やっぱり君は凄い人だ!)

 

 緑谷は、爆豪の背中を見ながら心の中で称賛していた。

 一方で、爆豪は拘束された仮面男に歩み寄っていた。

 

「う……動けん……」

 

「トドメだ。クソ(ヴィラン)

 

「ま……待て! 私、私……!」

 

 爆豪が仮面男にトドメを刺そうとすると、仮面男は慌てふためく。

 するとボールにくっついた男の仮面が脱げ、男の素顔が露わになる。

 

「私が来てた!!」

 

 仮面男の正体は、オールマイトだった。

 それを見た爆豪と緑谷は、目を見開いて声を上げる。

 

「「オールマイト!!?」」

 

「HAHAHA!!! 実はちょっとサプライズ的に(ヴィラン)が出た際の救助訓練をと思ってね! ほら、前あんな事が起きたばかりだし……いやー、しかし皆思いの外テキパキしてて、流石雄……え……?」

 

 オールマイトは、いつの間にかA組に囲まれていた。

 A組がいつになく殺気立った目でオールマイトを睨んでくるので、オールマイトは冷や汗をかく。

 

「何か……すいませんでした……」

 

「「「「やりすぎなんだよオールマイトォ!!!!」」」」

 

 オールマイトが謝ると、爆豪、上鳴、切島、瀬呂がオールマイトを責める。

 4人は、そのままオールマイトを袋叩きにした。

 それを見ていたひなたは、呆れてため息をつく。

 

「やっぱり……そんな事だろうと思った」

 

「え? ひなたお前、気付いてたのか」

 

 ひなたが言うと、心操がひなたに尋ねる。

 

「おかしいと思ったんだよ。本物の(ヴィラン)だったら、焦ちゃんを倒した時点で殺してたはず。『全員殺す』とか言う奴が人質なんか取る意味無いもんね。それに二人共怪我をしてたとはいえ、あんなに強い(ヴィラン)が暴れてるのに先生達は僕達の安否を確認しようともしなかった。先生達もグルだったんだよ。何よりあの仮面(ヴィラン)、オールマイトの波長と同じだった」

 

「気付いてたなら言ってくれれば良かったのに……」

 

「言ったら皆躊躇してたでしょ」

 

「確かに……」

 

 ひなたが言うと、心操が納得した。

 13号と相澤は、オールマイトを袋叩きにする生徒達を見て呆れ返っていた。

 

「先輩の言う通りでしたね……」

 

「やっぱ向いてないな、あの人」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時は遡り、昨日夕方。

 トゥルーフォームのオールマイトは、相澤にサプライズの件を持ちかけていた。

 

「サプライズ?」

 

「そう」

 

「俺は反対です。A組は四日前に(ヴィラン)の襲撃を受けたばかりですよ」

 

「彼らはあの襲撃を事故だと思っている。何千、何万分の一の確率で起きた偶然だと。しかしそうではない。ヒーローには絶えず危険が付き纏う。その事を自覚してほしいのさ」

 

「承諾しかねますね。下手すればトラウマになりかねない」

 

「それを乗り越える覚悟を学ばせる。それこそが教師である我々の務めだと思わないかい!?」

 

 オールマイトがマッスルフォームになって言うと、相澤はため息をつく。

 

「ん……ハァ、責任は取って下さいよ」

 

「HAHAHAHA!! 大丈夫! 私は彼等の力を信じてるよ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして現在。

 

「しかし……全員立ち向かっていくとは驚きました」

 

「ああ」

 

 13号が言うと、相澤が頷く。

 一方で、上鳴、切島、瀬呂の三人はオールマイトを袋叩きにしていた。

 

「冗談にも程があるっての!」

 

「タチ悪すぎだって!」

 

 三人がオールマイトを袋叩きにしていると、ひなたがオールマイトを庇う形で前に出る。

 

「ちょっと待ってよ皆」

 

「なっ……ひなちゃん!! これは正当なデモだ!!」

 

「今のが本物の(ヴィラン)でも同じ事が言える?」

 

 ひなたが言うと、先程までオールマイトを袋叩きにしていた三人が黙り込む。

 

「この前の襲撃は偶然でも事故でもない。ヒーローは常にああいう脅威と隣り合わせなんだよ。今のが本物の(ヴィラン)だったら、遭遇した時点で全員殺されてた。オールマイトは、危険はいつどこに潜んでるかわからないって事を僕らに学ばせたかったんじゃないのかな」

 

「相澤少女……!」

 

 ひなたが言うと、ほとんど全員がその場で考え込んだ。

 オールマイトは、ひなたが自分のやりたかった事を理解し学んでいた事に感動し涙を流していた。

 だが……

 

「とは言え!」

 

 ひなたが言うと、オールマイトはビクッと肩を跳ね上がらせる。

 ひなたは、殺意のこもったオーラをゴウっと沸き立たせながらオールマイトの方を振り向く。

 

「それはそれ、これはこれですオールマイト。抜き打ちで生徒を怪我させておいてサプライズで済ませるのは教師として如何なものかと思うんですけど……」

 

「え、えっと……」

 

「覚悟、できてますよね?」

 

 ひなたは、髪をざわつかせて“個性”で目を光らせながら殺意のこもった笑みを浮かべる。

 ひなたを完全に怒らせたオールマイトは、冷や汗をダラダラとかきしどろもどろになっていた。

 その直後、ひなたは相澤直伝の捕縛術でオールマイトに制裁を下した。

 緑谷がその様子を苦笑いを浮かべながら見ていると、轟が歩み寄る。

 

「あっ、轟くん」

 

「ああ!? てめえもこのクソサプライズ共犯か!?」

 

 爆豪が尋ねると、轟は無言で頷いた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数分前。

 仮面男は、轟目がけて拳を振りかぶる。

 轟がそれに対して氷で応戦しようとすると、仮面男は寸前のところで轟に掌を突きつけた。

 

「ストーップ!!」

 

「!」

 

「HAHAHA! 私だよ轟少年!」

 

 仮面男は高笑いをすると仮面を脱いで正体を明かした。

 仮面男、もといオールマイトは満面の笑みを浮かべながら轟に頼み事をする。

 

「少し協力してくれないか?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして現在。

 

「悪かったな」

 

 轟は、少し俯きながら緑谷に謝った。

 一方で、芦戸、飯田、麗日はひなたに制裁を受けているオールマイトを責めていた。

 

「酷いよオールマイト!」

 

「ごめんて……本気じゃなかったんだよ」

 

「しかし緑谷くんは指を負傷しております! これは学校としては非常にマズい事になるのでは!?」

 

「もうダメですからねオールマイト!! ねえデクくん!?」

 

 麗日が緑谷に声をかけると、緑谷はその場に尻餅をつく。

 飯田と麗日は、緑谷を心配して駆け寄った。

 

「いや……でもサプライズで良かった!」

 

 緑谷が満面の笑みを浮かべながら言うと、飯田と麗日は呆れたようにため息をつく。

 

「緑谷少年……」

 

 オールマイトが緑谷の心の広さに感動していると、他のA組がオールマイトを睨む。

 

「『緑谷少年……』じゃねえんだよ!」

 

「オールマイト、反省して下さい」

 

「サーセン!!」

 

 上鳴とひなたがオールマイトを責めると、オールマイトは涙目で謝った。

 

「デクくん、早くリカバリーガールのとこ行こ!」

 

「うわっ! ち……近い……」

 

 麗日が緑谷に駆け寄って心配すると、緑谷は顔を真っ赤にして動揺する。

 それを見ていた轟は、黙って二人に背を向けた。

 こうして初めての救助訓練が終わったのだった。

 

 

 

 

 

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