この章からはオリジナルストーリーとなります。
くっそう…展開が全然思いつかねぇ…
やっぱり堀越先生は偉大だと実感させられます。
オールマイトは、眠りながらワンフォーオールと対話をする緑谷を見守っていた。
すると、緑谷の病室の扉をホークスがノックする。
そして、ホークスとベストジーニストが入ってくる。
『初めましてオールマイトさん。俺は速過ぎる男なんて呼ばれてまして、諸々すっ飛ばして伺いたい事が。…って、緑谷くんやばい感じスか』
「いや! 大丈夫、きっともうじき起きる。それより何だい、ホークスくん」
『『ワンフォーオール』と緑谷くんについてです。先の戦いに参加したヒーローが辞職の際メディアに伝えたものです。ジワジワと広まっていってます……そして、今しがたエンデヴァーさんから緑谷くんが死柄木に狙われていたと伺いました。言い間違い、聞き間違い、些細なミスであったとしても穴は埋めたい。俺達はこれから…
「…場所が良くないな… 全てを話そう」
◇◇◇
それから三日が経った。
パニックは収まらない。
不安が伝染していた。
けれど世間はただ責め立てたいわけではなく、縋るような想いがあった。
エンデヴァーは、ホークス、ベストジーニストと共に会見に応じていた。
「荼毘の件…そして、私が部下の指導を怠ったせいで未来ある少年が命を落とした事、全て真実です。誠に申し訳ございません」
エンデヴァーは、深々と頭を下げて謝罪をした。
すると記者達は一斉にエンデヴァーを責め立てる。
「ホークスとベストジーニストは事実と異なる様ですが…!」
「ジーニストさん殺害は潜入の為の工作であり、告発の全てを覆すものではありません。父の件も、相澤ひなたさんの“個性”を使った弾で、逃げる
すると、女性記者が手を挙げて発言する。
「よろしいでしょうか。ギガントマキアの“縦断”によって、私の母は重傷を負いました。『全て事実でした、すみません』じゃ取り返しのつかない事態なんですよ! この一週間弱でどれだけの人が住む家を失ったかご存知ですか!? なぜそんな澄ました顔でいられるんですか!? やったのは
女性記者がエンデヴァーを責めると、エンデヴァーが答える。
「…… 憔悴した顔で泣いていれば、取り返しがつきますか?」
「はあ!? つくわきゃねーだろ、社会の不安を取り除け!!
感情的になって捲し立てる女性記者だったが、そこまで言ってようやくエンデヴァーのやるべき事、そして自分達がどういう態度で現状と向き合っていくべきなのかに気づく。
「…それが」
「仰る通りです。それが今、エンデヴァーにできる償いです」
エンデヴァーが言うと、ベストジーニストが今後の方針について話す。
「とはいえヒーローも減ってしまった今、全ての人々を守るのは困難です。つきましては、守るべき範囲を削減します」
「何を…!? どういうつもりで…!」
「政府との相談の上本日より、雄英をはじめとした広大な敷地と十分なセキュリティを持つヒーロー科の学校を指定避難所として開いて頂く運びとなりました。既に学生の家族には避難を進めてもらっています」
「先の見えない避難所生活なんて…… 納得できるか!」
記者達が次々に文句を言い出すと、エンデヴァーが記者達に語りかける。
「先を見る為です…非難も、不安も……私だけに向けて欲しい。これから命を張る者たちにではなく──! 皆で俺を、見ていてくれ」
そう言ってエンデヴァーは顔から炎を出す。
ヒーローが篩に掛けられた。
人々から求められる者をヒーローだと言うならば、あの日ヒーローは消えた。
それでもまだ立ち上がる人はいる。
エンデヴァーは『ワンフォーオール』について聞かれ、『わからない』と答えた。
緑谷とオールマイトに石が投げられないように。
◇◇◇
数日後、A組は全員退院し、ハイツアライアンスに戻っていた。
寮内の談話スペースにはA組全員が集まっており、全員ひなたの方を注目していた。
全員の携帯には、ひなたから『全員寮の談話スペースに来てください。皆に話があります』とメールが送られてきていた。
「皆ごめんね。こんな時に集まってもらって。でも、どうしても話しておかなきゃいけない事があったから。この話を受けて皆がどう思おうと、それをとやかく言うつもりは無い。…でも、今から言う事を真実として受け止めてもらいたいんだ」
ひなたが暗い表情を浮かべながら前置きを言うと、全員が緊張気味にひなたの方を見る。
全員、ひなたがこれからする話が重要な話だという事はその前置きで察した。
ひなたの恋人の心操は、ひなたが何を話そうとしているのか知っているのか、ひなたの後ろに立って複雑そうな表情で俯いていた。
重い空気の中、峰田が冷や汗をかきながら徐に口を開く。
「話って何だよ、相澤……いきなり呼び出されて、そんな前置きされて、オイラそんな大事な話される心の準備ができてねぇよぉ!」
峰田が言うと、ひなたは俯きながら口を開く。
「……ごめん。突拍子もない話だってわかってる。でも今言わなきゃいけない話なんだ。………あのね」
ひなたが口を開くと、心操は俯いたまま歯を食い縛る。
その頃、入院中の相澤は俯いて顔を左手で押さえながら右拳を握りしめており、会議室にいた山田は項垂れてデスクを拳で殴りながら歯を食い縛っていた。
「僕が
「……………え」
ひなたが話すと、ほとんど全員が目を見開いて唖然とする。
いきなりひなたが内通者だと聞かされてほとんど全員が理解が追いつけずにいる中、芦戸が恐る恐るひなたに尋ねる。
「ひなた……嘘、だよね…? ねえ、内通者ってどういう事……?」
芦戸だけではなかった。
大多数が、『どうか嘘であってくれ』、そう願うような目をひなたに向けていた。
するとひなたは、俯きながら真実を話した。
「…僕だったんだよ。入学した時からずっと、オールフォーワンに雄英の情報を流し続けてたのは。この前の戦いで零と接触した時、思い出したの。林間合宿の時、かっちゃんと一緒に攫われた時の事」
◇◇◇
林間合宿の最中、ひなたは
零の“個性”で正常な意識を奪われぼんやりと一点を見つめており、零は上機嫌で鼻歌を歌いながらひなたの身体を隅々まで念入りに洗っていた。
「いっやぁ、まさか僕の“個性”で101号を通して情報盗んでたなんて誰も思わないだろうね」
「ああ。よくやってくれたよ零。もしこの事実が明るみになれば、ひなたちゃんは雄英を去らざるを得なくなる。きちんと退路を絶ってから、彼女をこちら側へ迎え入れるんだ」
零とオールフォーワンは、端末越しに話をしていた。
ひなたに幻覚を仕掛けて連合に情報を垂れ流しにしていたのは、他でもない零だったのだ。
ひなたの身体を洗い終わった零は、ひなたの身体をバスタオルで拭きながらひなたの頭を撫でた。
「お疲れ101号。よくやってくれたよ。流石は僕の妹だ」
零は、ひなたの髪を撫でながらそっとひなたの身体を抱きしめた。
ひなたの耳元で囁く零は、不気味な笑みを浮かべていた。
「自分が内通者だったなんて知ったら、罪の意識であいつらのところに帰る事なんてできないだろ? 大丈夫。俺がお前をあんな吐き溜めから助け出してやるからさ。嫌なもの全部ぶっ壊して、自分の本能に正直に生きていこうぜ」
◇◇◇
その頃、連合が新たに作った洞窟のアジトでは。
オールフォーワンからひなたが情報源だという話を聞かされた荼毘が、オールフォーワンに尋ねていた。
「情報源、ねえ……それ、バレたらこちらがマズくなるんじゃねーの?」
「ならないよ。バレたらバレたでヒーロー達の信頼が地に堕ちる。それであの子が民衆のヘイトを集めてくれたら万々歳さ」
荼毘が尋ねると、オールフォーワンは余裕そうに語った。
「むしろひなたちゃんは今までよくやってくれたよ。あの子が健気にヒーローの卵として切磋琢磨しているのを見て、僕は安心したんだ。あの子がヒーローを目指さなかったら、僕の計画はとうに破綻していた。全てはあの子がヒーローに憧れたところから始まった。僕はね、もし彼女にまた会えたらこう伝えたいんだ。『青臭くて不相応な夢を抱いてくれてありがとう』」
オールフォーワンは、不気味な笑みを浮かべながら語った。
初めからひなたに仕掛けた盗聴器からの情報にはさほど期待していなかったが、ひなたが雄英に入学した事をきっかけに、ヒーローへの信頼を失墜させる事ができた事には大いに満足している様子だった。
◇◇◇
その頃、校舎の会議室では。
プレゼントマイクは、ひなたが情報源だと気付かなかった自分を責めながら机を殴っていた。
「クソッ、ずっとあいつと一緒にいて、何で今まで気付かなかったんだよ…! クソッ!!」
「マイク。気付かなかったのはあなただけじゃないし、今更気付かなかった事を後悔したってしょうがないでしょ」
父親でありながら娘が無自覚のうちに内通者にされていた事に気付かなかった自分を責めるプレゼントマイクを、ミッドナイトが宥めた。
ひなたが情報源だと露呈した事に関しては、教師陣のほとんどが同じ気持ちだった。
ようやく
自らの意思でオールフォーワンの内通者になったのならまだ怒りをぶつける事ができたが、何も知らずにただ利用され続けていただけの少女に怒りをぶつける事などできるはずもなく、全員が全員やるせなさが沸々と湧いていた。
その頃未だに入院中の相澤は、他の教師陣同様やるせなさに打ちひしがれていた。
一番悔しかったのは、7年間ずっと一緒に暮らしていながら娘の身体に盗聴器が仕掛けられていた事に気付けず、生徒達を危険に晒してしまった相澤だった。
すると校長は、かつてウロボロスから押収したひなたのデータを眺め、悔しそうに俯きながら言った。
「…完全にしてやられたね。奴等は、ひなた君が情報源だと露呈して信頼を失う瞬間をずっと待っていたんだろう。最初から、彼女を悪者にして裏切らせる気だったのさ」
◇◇◇
そしてハイツアライアンスのA組寮にて。
ひなたは、いつになく真剣な表情を浮かべて全員の前で話をした。
「…知っての通り、僕は10年前に
ひなたは、自分の過去を包み隠さず全員に話した。
ひなたの話した壮絶な過去、そして無自覚のうちに内通者にさせられていたという残酷な事実に、クラスメイト達は戸惑いを隠せなかった。
「そんな……」
「入学してからどころじゃない…10年間、ずっと……!?」
10年間ずっと
クラスメイトに軽蔑されたかと思ったひなたは、唇を噛み締めながら俯く。
すると、終始ほとんど無反応だった爆豪が心操に尋ねる。
「心操。お前はそれ知ってたんか」
「……ああ。内通者の件に関しては入院中に聞いた」
「先生達は」
「…昨日話した。この事を知ってるのはここにいる皆と先生達、あとはトップヒーローの三人だけだよ」
「内通者はてめぇ一人だけか」
「………多分」
「…そうかよ」
爆豪が尋ねると心操とひなたが答え、爆豪が僅かに目を伏せながら呟く。
すると心操が顔を上げて爆豪に尋ねる。
「疑わないのか?」
「今思やぁ、色々合点がいくからな。今までの奇襲は全部、こいつを通して情報盗んでたって事だろ。そりゃあ誰も気付かねえよな。だって本人にすら自覚が無えんだからよ」
「………」
いつになく冷静に話す爆豪に対し、心操は僅かに驚いた様子で話を聞いていた。
以前の爆豪ならキレ散らかしてひなたを問い詰めるところだったが、今は誰よりも冷静にひなたの話を聞いていた。
真実を打ち明けたひなたは、俯きながら自分の本心を語った。
「……僕は最低だ。自分が死にたくないからって大勢の人を犠牲にしてきた。あまつさえ、僕から情報が漏れてたせいで皆の楽しい時間が台無しになって、オールマイトが力を失って、大勢の人が死んだ。それなのに、まだ、ヒーローになりたいって思ってるんだ…! 身の丈に合わない夢を、皆と一緒に叶えたいって思っちゃったんだよ! 望んじゃいけない事だってわかってる。それでも…っ! 僕は皆と一緒に、このヒーローアカデミアを卒業しだい゛っ!!」
ひなたは、涙ながらに自分の本心を打ち明けた。
するとクラスメイトがポツポツと口を開く。
「嘘だろ…?」
「最低……」
「ひでぇ…」
「許せない」
クラスメイトが次々と口を開くと、ひなたは暗い表情を浮かべて俯く。
だが…
「ひなたちゃん、今までつらかったんだねぇ」
「……え?」
葉隠が泣きながらひなたに抱きつくと、ひなたはポカンとする。
すると切島がいきなり泣きながらひなたに土下座してくる。
「ごめんひなちゃん!! 今まで気付いてやれなくて!!」
「俺ら、ひなちゃんがずっとつらい思いしてたの、全然知らなかった。今までごめんな!」
「何も知らねーでウェイウェイしてたわ! ホントごめん!」
「もっと早く気付いてやれれば良かった。…すまない」
「え?」
「相澤さんをそんな事に利用するなんて…オールフォーワンが許せない」
「どいつもこいつも、ひなたを何だと思ってるのさ!」
「え、え?」
切島、瀬呂、上鳴、障子は今までひなたの抱えていた苦しみに気付かなかった事を謝罪し、尾白と芦戸はウロボロスやオールフォーワンがひなたを苦しめていた事に怒りを覚えていた。
ひなたを傷つけた者にこそ怒りを覚えど、ひなたを責める者は誰一人いなかった。
想定外の反応にひなたが目を点にしていると、麗日がひなたに話しかける。
「ひなたちゃん。私も、ひなたちゃんと一緒にヒーローになりたい。街の人達を助けて、オールフォーワンを倒して、そしたら一緒に授業受けよう」
麗日が言うと、ひなたは目に涙を溜めながらクラスメイトに尋ねる。
ひなたにしてみれば、罵倒されて見放された方がまだ気が楽だった。
今まで迷惑をかけ続けただけでなく、これからも
「皆…どうして? 僕は、
「それ以前に君は俺達のクラスメイトだ。クラスメイトが困っていたら助けるのは、ヒーローとして、委員長として当然の事だ」
「私は…いえ、私達は何があってもひなたさんの味方ですわ。1年間共に過ごした仲間ですもの」
「相澤。俺はお前の好きなように生きてほしいと思ってる。『生きたいように生きろ』、俺にそう言ってくれたのはお前だろ」
ひなたが尋ねると、飯田、八百万、轟が自分達の思いをひなたに伝えた。
すると、他のクラスメイトもそれぞれの思いをひなたに伝える。
「ウィ☆僕、体育祭の騎馬戦の時、相澤さんのおかげでキラメけたのが嬉しかったんだよね☆」
「ああ。相澤。俺は騎馬戦の時、
「相澤ァ! お前、USJの時オイラ達を逃がす為に無茶しやがってよぉ! ヒーローになりたいも何も、オイラの中じゃあん時のお前はとっくにヒーローなんだよ!」
「ひなたさ。あんたがいてくれたから、文化祭のライブ良いものにできたんだよね。あんたのおかげで、皆楽しめたじゃん!」
「相澤。クリスマスの時、一緒にケーキ焼いたの覚えてるか? 皆がケーキを美味そうに食ってくれて、お前すげえ喜んでただろ? また一緒にケーキ作ろうぜ!」
青山、常闇、峰田、耳郎、砂藤が言うと、ひなたの目に涙が溜まっていく。
すると蛙吹が泣くのを堪えながらひなたに話しかける。
「ひなたちゃん。私、お友達がそんなに酷い目に遭っていただなんて、とてもじゃないけど堪えられないわ。でももっと悲しいのは、ひなたちゃんが今でも自分を責め続けてる事なの。お願いだから、もう自分を責めないであげて」
蛙吹が目に涙を溜めながら言うと、ひなたの目からポロっと涙が溢れる。
すると爆豪がいつになく落ち着いた態度でひなたに話しかける。
「てめぇを許してやれ、てめぇがそう言ったんだろが。オールマイトの件だってそうだ。てめぇがオールマイトを終わらせただとか、思い上がってんじゃねえぞ」
「………」
爆豪が言うと、ひなたは初めて、かつて轟と爆豪に言った『生きたいように生きろ』、『自分を許してやれ』という言葉が自分にも返っている事に気がつく。
未だに自分を許せずに過去に束縛されているのは、ひなた自身だった。
ひなたが涙を流していると、緑谷もひなたに声をかけた。
「相澤さん。僕達も、エリちゃんも、皆君に助けられたんだよ。どんなに
緑谷が言うと、ひなたは涙を流しながら唇を震わせる。
すると心操は、いきなりひなたの頭を小突いてくる。
「ひなた。約束したよな。そうやって自分の事人形だとか
「ご、ごめんなさい…! お父さんにチクるのだけはご勘弁…!」
心操がひなたの頭をグリグリして説教すると、ひなたは相澤にキツいお仕置きを喰らうのを想像しながら震え上がった。
二人が普段通りに戯れているのを見て、ほとんどのクラスメイトは安心していた。
そこには、ひなたを責める者は誰もいなかった。
心操は、笑顔を浮かべながらひなたの頭を撫でた。
「…ほらな? 俺の言った通りだっただろ」
「うっ、ふぅっ、うぁああぁああああああああ…!!」
心操が言うと、ひなたは目からボロボロと涙を溢して大声で泣いた。
心操は顔をくしゃくしゃにして泣くひなたを愛おしそうに抱きしめ、他のクラスメイトもひなたに寄り添い、どさくさに紛れてひなたの尻を触ろうとした峰田は心操に頭を引っ叩かれた。
◇◇◇
数日前、ひなたと心操は病院で話をしていた。
ひなたは、恋人である心操を信頼して全てを打ち明ける事にした。
「決めたよ。僕は、皆に話す事にする。僕の生い立ちを、今まで受けてきた仕打ちを………僕が内通者だって事も全部」
「……えっ?」
「…ごめん。僕、内通者だったんだ。僕に仕込まれてた発信器から情報が漏れてたの。林間合宿の時に攫われて、発信器はその時に取り外されてたんだ。ずっと記憶を消されてたけど、零と接触した時思い出したの」
「じゃあ、ひなたは無自覚で内通者をやらされてたって事か?」
「………うん」
ひなたが真実を打ち明けると、心操は驚いた様子で尋ね、ひなたは暗い表情を浮かべながら頷く。
すると心操は、頭を掻きながらため息をつく。
「何だよそれ…」
頭を掻きながら深くため息をついて落胆する心操を見て、ひなたは僅かに俯く。
だがその直後、心操はひなたの頭をぽんぽんと軽く叩きながら言った。
「ひなた、今までつらかったな。話してくれてありがとな」
「疑わないの?」
「お前はそんな嘘言う奴じゃないだろ。大丈夫。俺も一緒に皆に謝ってやるから。もう一人で苦しむな」
「…もし、皆が僕に雄英から出て行けって言ってきたら?」
「ひなたを連れてどっかに逃げる」
「な…!」
ひなたが恐る恐る尋ねると心操が即答したので、ひなたは目を丸くする。
ひなたはできる事ならこれ以上心操を巻き込みたくなかったが、心操はどこまでもひなたについていく気満々だった。
ひなたが不安そうにしていると、心操はひなたの両肩を掴んで言った。
「でも大丈夫だよ。皆はお前に雄英から出て行けだなんて絶対言わないから。お前が内通者をやらされてたって知ったら、皆お前を助けようとするはずだ。オールマイトだって言ってただろ? 『余計なお節介はヒーローの本質だ』って」
「ひー君……」
心操が微笑みながら言うと、ひなたはうっすらと目に涙を浮かべる。
ひなたが心操に抱きつくと、心操はひなたの背中に右手を回してそっと抱き寄せた。
◇◇◇
ひなたは、しばらく心操の腕の中で泣き続けた。
ひなたが泣くだけ泣いて落ち着いてくると、緑谷は自分が内通者だと打ち明けたひなたを見てある決意をする。
「皆。僕から伝えておかなきゃならない事があるんだ」
緑谷がそう言うと、緑谷の話の内容を察した爆豪は頬杖をつきながら緑谷の方を見た。
それから緑谷は、『ワンフォーオール』の事をクラスメイトに打ち明けた。
自分はかつては“無個性”だった事、自分の“個性”はオールマイトから貰ったものだという事、『黒鞭』や『浮遊』は歴代継承者達の“個性”だという事、そして『ワンフォーオール』を受け継いだ以上オールフォーワンと戦わなければならない運命にある事を話した。
今まで爆豪以外の人間にワンフォーオールを秘密にしていた緑谷だったが、日本中が危機に晒された以上、これ以上隠し通す事はできなかった。
「デッくんが、オールマイトの“個性”を…?」
「今までずっと騙しててごめん。でも、どうしても言えなかった。『ワンフォーオール』にはどうしたってオールフォーワンの脅威が付き纏う。オールフォーワンとの戦いに、皆を巻き込みたくなかったんだ。今だって、皆を巻き込みたくないと思ってる。………ごめん」
緑谷が言うと、全員が神妙な面持ちで話を聞いた。
緑谷はオールマイトからワンフォーオールを受け継ぎ、オールフォーワンの脅威から人々を守るという使命を抱えてきたのだと、改めてその責任の重さに気付かされた。
そして緑谷は、未だに全員で一緒に戦う事を躊躇っていた。
するとひなたは、何か覚悟を決めた様子で立ち上がった。
「デッくん。一緒に戦おう」
そう言ってひなたは、一切の迷いなく緑谷に手を差し伸べた。
完全に吹っ切れたのか、ひなたの表情はスッキリしていた。
「よく考えたら、あの梅干し顔に散々こき使われてすこぶるムカついてきたし! 思いっきりぶん殴ってしまいたい!」
「あ、相澤さん…!?」
ひなたがいきなり凶暴な一面を剥き出しにして本音を漏らすと、緑谷が若干表情を引き攣らせる。
ひなたは、胸を張ってこれからの自分を誇った。
「僕、生きたいように生きる事にしたんだ。でも困ってる人がいたら、『もう大丈夫だよ』って手を差し伸べてあげたい。それを邪魔する奴なんか、全部まとめてぶっ飛ばしてやる」
ひなたは、自分の胸をドンッと叩きながらハッキリと自分の意見を伝えた。
自分の生きたいように生きて、それを邪魔する誰かがいたら真正面から戦って自分のわがままを押し通す、それがひなたが出した答えだった。
「デッくん。君が何と言おうと、僕はオールフォーワンと戦うよ。もう決めたから。ああ、でもそうしたら一人で突っ走って無茶しちゃうかもしれないなぁ! 有望なヒーロー候補生が一人減っちゃうかもしれないなぁ!」
ひなたは、大袈裟な身振り手振りをしてわざとらしく言った。
以前とは違い、自分がどれほど周りに大事に思われてるかをよくわかっていた。
「放っておけないよね?」
ひなたがニヤッと笑いながら全員に尋ねると、心操が真っ先に立ち上がった。
「ひなたが戦うなら、俺も一緒に戦う。お前ら二人とも危なっかしくて見てらんねえしな」
心操がひなたの肩に手を置いて言うと、ひなたは僅かに目を見開いて少し頬を赤らめる。
すると麗日も立ち上がった。
「デクくん。一緒に戦おう。私は、あん時とはちゃう!」
麗日は、かつて爆豪とひなたが攫われた時、『二人が私達に連れ戻されるのは屈辱なんじゃないのか』と言った事を後悔していた。
すると、轟、飯田、切島、常闇、障子、八百万も立ち上がった。
「緑谷。俺も戦うぞ。体育祭の時、俺を救ってくれたお前を、今度は俺達が助けたい」
「ああ。道を踏み外しかけた俺を正してくれた君に、一人で背負わせるわけにはいかない」
「俺もやるぜ!! ダチが戦おうとしてんのに、黙って見てられっかよ!!」
「俺もだ。合宿襲撃時、俺達を助ける為に駆けつけてくれた事、俺は忘れない」
「ああ。『このメンツならオールマイトだって恐くない』、合宿襲撃時にお前が言ったセリフだ」
「オールフォーワンの脅威から人々を守る為、一緒に戦わせて下さい」
6人が言うと、緑谷は僅かに目を見開く。
すると瀬呂、上鳴、耳郎、砂藤の4人も立ち上がって言った。
「放課後『黒鞭』の訓練付き合ってやったろ? 俺達も一緒に戦わせろよ」
「ああ! 緑谷! 全然趣味とか違げーけど、お前は友達だ!」
「ウチも! ウチだって、街の人達助けたい!」
「緑谷! お前は特別な力持ってけっけど、気持ちは俺らも同じだ!」
4人が立ち上がって言うと、尾白、葉隠、芦戸、蛙吹、峰田、青山の6人も緑谷と一緒に戦うため立ち上がった。
「お前だけがボロボロになって戦うなんて見過ごせない」
「うん! 私達、友達じゃんか!」
「あたしも! あんたがいなくなるのなんて嫌だよ!」
「ケロ。お友達を一人で戦わせたりなんてしないわ」
「緑谷! オイラ、USJん時一緒に道を切り拓いたお前をカッケェって、ああなりてぇって思ったんだよ!」
「スィ☆緑谷くん。僕、君が僕の気持ちをわかってくれたのが嬉しかったのさ☆」
6人が言うと、緑谷は目を見開いて目に涙を浮かべる。
全員、緑谷と一緒に戦いたいという気持ちは変わらなかった。
すると爆豪が緑谷に歩み寄って言った。
「出久。お前が拭えねぇもんは俺達が拭う。オールマイトを超える為に、お前も雄英の避難民も街の人も、もれなく救けて勝つんだ。なるんだよ。全員で、最高のヒーローに」
爆豪が言うと、緑谷は目から溢れそうになる涙を拭いながら頷いた。
「…う゛ん゛」
緑谷が頷くと、ひなたをはじめとしたクラスメイトが緑谷に寄り添う。
すると上鳴が唐突に口を開く。
「さて…と! ひなちゃんと緑谷が腹割って話してくれた! って事でさ…」
上鳴が言うと、他のクラスメイトが上鳴の方を見る。
すると上鳴は、腹に手を当てながらヘラっと笑った。
「そろそろ飯にしねぇ?」
上鳴の提案に、ほとんどのクラスメイトが目を点にする。
数秒間沈黙が続いたかと思うと、耳郎が呆れ顔を浮かべる。
「上鳴、あんたねぇ…」
「だって腹減ってたんだもん! この空気で言い出せなかったけど!」
シリアスな空気をぶち壊しにした上鳴に対し、耳郎が呆れ顔でツッコミを入れようとすると、上鳴が腹の虫を鳴らしながら言った。
するとひなたがそれを見て笑いながら立ち上がる。
「確かにね。僕、あるもので何か作ってくるよ」
「おぉ、任せたひなちゃん!」
「コラァ! この流れで早速ひなたをこき使わないの!」
ひなたが食事を作ろうと厨房に向かうと主に男子がひなたの食事を待ち侘び、芦戸がひなたを家政婦扱いする男子に注意をした。
するとひなたは、笑顔を浮かべながら言った。
「いいよ。僕がやりたいんだ! これからの戦いに備えて、おいしいもの食べて元気出そ!」
ひなたは、ニコッと笑みを浮かべながら料理にやる気を出した。
男子達は、この状況でも明るく振る舞っているひなたを見て、神々しさを感じ胸打たれていた。
(((天使だ…!)))
(母ちゃんだ…!)
(流石俺の彼女)
(ケツがエロい)
ひなたが笑顔を浮かべると何人かの男子は感激し、心操は自分の彼女が男子から憧れの眼差しを向けられているのを見て得意げになっており、峰田は相変わらず下心丸出しでひなたを見ていた。
その後、ひなたは料理担当の砂藤と一緒に夕食を作った。
ひなたと緑谷が秘密を打ち明けて全員が一致団結した中で食べる食事は、節約しなければならない生活の中での質素な食事だという事を忘れる程に充実していた。
その後は全員で風呂に入り、全員が風呂から上がると、ひなたの提案で全員でボードゲームをしたり“個性”を見せ合ったり雑談したりして夜遅くまで楽しいひと時を過ごした。
深夜2時、まだA組寮の明かりがついている事に気がついたオールマイトは、A組の様子を見に行く。
オールマイトがA組寮に顔を出すと、寝息やいびきが聴こえてくる。
オールマイトは、全てを打ち明けてスッキリした表情で眠るひなたと緑谷を見て、微笑みながら寮の明かりを消して去っていった。
そして夜が明けた午前5時、全員の携帯にメールが届く。
「ん…」
ひなたが眠い目を擦りながら携帯を見ると、エンデヴァーからメールが届いていた。
メールの内容は、出動要請と決戦の作戦会議の日時についてだった。
メールを確認すると、A組は顔を見合わせて頷く。
「行こう」
A組は出動要請を受け、全員コスチュームに着替えた。
はい。
今作オリジナル展開と言ったのはまさにこれです。
ひーちゃんが雄英で切磋琢磨している一方、連合側では梅干しとシスコンによるひーちゃん曇らせ計画が進められていました。
別に本作は青山不在じゃありませんが、この世界線だったら梅干しの性格的にひーちゃんを無自覚内通者にしそうじゃね?って思ったので。
この変更を機に、これまでの話もガッツリ編集しました。
本作では青山の内通者設定はなく、僕は知ってるよチーズはミスリードです。
ただし彼の“個性”については、この後本作オリジナルの設定が付随される予定です。
そして前倒しになったかっちゃんの謝罪とひーちゃんのカミングアウトによりデク君が雄英を出ていく事もなくなり、ここからはクラスメイトとの共闘ルートで進んでいきます。