面白いと思っていただけましたら、お気に入り(特に)、高評価、感想などなどよろしくお願いします。
展開をゆっくり考えたいので、月1ペースくらいの更新を目安に頑張っていこうと思います。
追記
お気に入り1件増えてるるるるぅぅぅぅぅ!!(CV:若●規夫)
やったあ!!
ありがとうございます!!
超常解放戦線との戦い及び刑務所の襲撃から数日が経った。
世間からの信頼を失ったヒーロー達は、次々とヒーローをやめていった。
しかし、それでもまだ立ち上がる者達はいた。
世間から非難を浴びせられようと、最前線で市民を守りつつ
ある者は大切なものを守る為に、そしてある者は過去の自分にけじめをつける為に。
未だに世間からの目は厳しかったが、少しずつ前にと進んでいた。
そしてそれは、雄英も同じだった。
ヒーロー科の生徒達は、雄英周辺の住民の避難誘導及び
この頃には住民の避難はほとんど完了し、脱ヒーロー派の自警団や過激派達の沈静化は他のヒーローや警察で行える範疇になっていた。
プロヒーローの指示で周辺の治安の維持や住民の救助、超常解放戦線についての情報収集を行っていたひなた達も、今では雄英の敷地内で力を蓄える事に集中できるようになっていた。
エンデヴァーの元でインターンをしていた4人は、暴動の沈静化と周辺のパトロールを終えて雄英に戻ろうとしていた。
「ありがとう、三人とも」
「緑谷、相澤。お前ら最近働きすぎだ。休んどけ」
「えっ、僕も!?」
緑谷が自分をフォローしてくれた他の三人に礼を言うと、轟が緑谷とひなたに注意をする。
するとひなたが思わず目を丸くして聞き返す。
緑谷とひなたは、ここのところ度がすぎる程にパトロールと訓練に勤しんでいた。
緑谷は少しでも早くオールフォーワンを止める為、ひなたは一人でも多くの人を救って自分の過去を清算する為、毎日朝から晩まで働きっぱなしだった。
ひなたが目を点にしていると、爆豪が二人を指差して怒鳴ってくる。
「あの顔金玉が来やがった時へばってたらどうすんだ? ああ!? てめぇらちったぁ最大戦力の自覚持てや!」
「ご、ごめん…」
「以後気をつけます…!」
爆豪が怒鳴ると、緑谷とひなたが縮こまった。
助けたいという気持ちだけが先行しても、いざという時に動けないのでは何の意味も無いという事は痛いほどよくわかっていた。
クラスメイト達も、教師陣やプロヒーローも、そして一部の理解ある人達も、二人が抱え込んでいたものを少しでも肩代わりして、皆で前に進んでいこうとしていたのだ。
無茶のしすぎで爆豪に怒られているひなただったが、ふとエンデヴァーの事を思い出し、隣にいた轟に尋ねる。
「そういえば焦ちゃん、エンデヴァーは雄英には来れない感じかな?」
「今すぐには無理だろ。避難してきた人達の中には、未だに荼毘がチラつく人も多いだろうからな」
「う━━━ん……やっぱりそうだよね。それに僕達と一緒にいたら、マスコミに嗅ぎ回られちゃうだろうし」
轟が言うと、ひなたはしょぼくれた表情を浮かべながら考え込む。
民間人の中にはエンデヴァーに対して不信感を抱いている者が少なくはなく、雄英に来れば避難してきた民間人から非難を浴びせられるのは目に見えていた。
それだけでなく、ワンフォーオールを持つ緑谷と、
そのため、常に雄英の関係者とは一定の距離を保って行動をしていた。
エンデヴァー自身が蒔いた種とはいえ、自分達のせいで母校に戻れない事に関してはひなたも責任を感じていた。
「何でお前がそこまで気にするんだ」
「そりゃあ気にするなっていう方が無理だよ。僕をここまで鍛え上げてくれた師匠だもの」
エンデヴァーの事で責任を感じているひなたに対して轟が尋ねると、ひなたは短くなった髪をいじりながら答える。
そして少し考え込んだかと思うと、徐に口を開く。
「あのね、焦ちゃん。今だから言える事だけど、僕、職場体験先にエンデヴァーの事務所選んで良かったって思ってるんだよ」
「え」
「僕、今までしてきた事された事が全部明るみになって、僕のせいで皆にも迷惑かけて、もう自分でも何がしたいのかわかんなくなっちゃってた。でもね、『No.1ヒーローに認めてもらってるのにこんなところで諦められるかよ』って思いがどこかにあったんだ。だから僕は、エンデヴァー事務所のインターン生になった事を誇りに思ってる」
ひなたは、胸に手を置きながら思っている事を率直に轟に伝えた。
荼毘の告発によって、エンデヴァーは一部の民衆から蛇蝎の如く忌み嫌われるようになった。
だがそれでも、ひなたにとっては自分に居場所をくれたヒーローの一人だった。
「怒らないで聞いて欲しいんだけど、日本中がこんな事になったのにエンデヴァーの落ち度が全く無いとは僕は思ってないんだ。嫌いなとこがないわけじゃないし…世間からの信用を失ったのも…まあ仕方ないかなって思う。でもね、そのせいで焦ちゃんや焦ちゃんの家族、サイドキックの人達が傷つくのは絶対に許せないんだ。それに僕、やっぱり嫌だ。僕を認めてくれた人を…ここまで成長させてくれた人を悪く言われるのは。僕、おかしい事言ってるかな?」
ひなたは、髪をいじりながら首を傾げて轟に尋ねる。
すると轟は、ふ、と短く息を吐きながら言った。
「…相澤、ありがとな」
「え、どうして?」
「お前がそうやって真っ向から本音ぶつけてくれたから、少し気が楽になった。…すげえよ、お前は。どんなにひでえ目に遭っても前向き続けててよ」
「えへへ…そうだよ。僕はすごいんだよ! どやっ!」
轟が言うと、ひなたはふにゃりと笑顔を浮かべる。
ひなたが嬉しそうに胸を張ると、轟は微かに笑ったような表情を見せた。
エンデヴァーの醜い一面が晒されてもなお、自分と似たような境遇を持つひなたがエンデヴァーのインターン生である事を誇りに思っているというのは、少なくとも轟にとっては救いだった。
轟とひなたが顔を見合わせていると、ちょうどいいタイミングで邪魔が入る。
「いつまでてめぇら二人だけで浸っとんじゃクソが!! 話が長えんだよ!!」
「かっちゃん…!」
爆豪が目を80°ほど吊り上がらせて怒鳴ると、緑谷が慌てて爆豪を止めた。
タイミング良く二人の話を切り上げた爆豪は、今後の事について三人に話をする。
「ンな事よりこれからの事だ。てめぇら気付いてるか? ここまで暴れておいて、あの顔金玉の居場所を知ってるクソが誰もいやがらねえ」
「ん…確かに、変だな。奴の事だから、ワンフォーオール奪取にダツゴクを利用してくるもんだと思ってたが…」
「うーん…もしかしたら、今まではそれどころじゃなかったんじゃないかな」
爆豪と轟が話していると、ひなたはこてんと首を傾げて自分の考察を話す。
「僕、あの梅干し顔の“個性”ぶっ壊したから多分今弱ってるだろうし…死柄木の身体を万全の状態で乗っ取って、かつ世間のヒーローへのヘイトを煽るアンチ活動まで並行しようと思ったら、相当時間と隠れる場所、あとは戦える仲間を増やす必要があると思うんだ」
「でも、いつ奪取に方針を切り替えてもおかしくない。ヒーローがダツゴクや脱ヒーロー派の対処に追われて疲弊してきた頃合を狙って、ワンフォーオールを奪いに来るつもりだとしたら…」
「今になって何かしらのアクションを起こしてくる可能性はあるってか」
「情報が少なすぎて、断定は出来ないけど…」
「かっちゃんが普通にデッくんと話してる…!」
「いい加減慣れろや」
緑谷と爆豪が普通に会話をしているのを見てひなたがあんぐりと口を開けていると、爆豪がツッコミを入れる。
以前の行いが酷すぎて、未だに二人が普通に話している事に違和感しか感じなかった。
「だから向こうから情報を持ってきてもらう為に、パトロールって名目でお前ら二人に囮になってもらってるわけだが…」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、だよ! 情報を集めたかったらこっちから行動起こさなきゃ。大丈夫だよ、何かあったら皆が一緒に戦ってくれるでしょ?」
轟が申し訳なさそうに言うと、ひなたはふんっと鼻を鳴らして得意げに両拳を握った。
クラスメイトを頼りにしているひなたを見て、緑谷は新しく装備したサポートアイテムを見つめながら言った。
「皆がいなかったら、僕は雄英にいる事もできなかった。僕は…人に恵まれた」
「…確かにね」
緑谷が言うと、ひなたも頷く。
ひなたは、全面戦争以降、世間中から憎悪や恐怖、好奇の目を向けられるようになった。
今まで純粋に応援してくれた人も、ひなたの過去が明るみになった途端にあっさり手の平を返してきた。
避難してきた住民達の中には、ひなたを追い出せと声を荒げる者も少なくはなかった。
それでも雄英に残り続ける事ができたのは、クラスメイトが避難者一人一人を説得してくれたからだった。
これだけは、人々の不満の原因になってしまっているひなたにはできない事だった。
ひなたは、自分の居場所を守ってくれただけでなく、一緒に戦うと言ってくれたクラスメイトに感謝してもし切れなかった。
そしてそれは緑谷も一緒だった。
自分を信頼してくれるクラスメイトがいなければ、ワンフォーオールの秘密を共有して共に戦うという選択はできなかった。
「絶対勝とうね」
「……うん」
ひなたが右手で左手をキュッと握りながら言うと、緑谷も頷く。
するとその時、緑谷とひなたが同時に反応する。
緑谷は4代目の“個性”の『危機感知』で、ひなたは『
「「!!」」
敵の存在を感知した二人は、同時に目を見開く。
緑谷は、咄嗟に叫ぼうとした。
「逃げ……
緑谷が他の三人に危険を知らせようとした、その瞬間だった。
緑谷の眼前に、円錐状の鋭い銃弾が飛んでくる。
緑谷が間一髪銃弾を避けると、銃弾はそのまま壁に突き刺さり、銃弾から声が聞こえてくる。
『緑色の…少年…お前をつれていく。大人しく従えば、手足は残してやる』
銃弾からは、威圧するような女性の声が聴こえてきた。
ひなたは、突然撃たれた緑谷を心配して声をかけようとする。
「デッく…」
『相澤ひなた』
「!」
『お前も回収対象のリストに入っている。痛え目見たくなけりゃ、余計な抵抗はしない事だ』
銃弾から聴こえてくる声を聴いた緑谷とひなたは、それが誰かを確信する。
かつて公安直属のヒーローだったスナイパー、レディナガンだった。
息を殺して物陰に隠れていたひなたは、ゴーグルのつまみを回してレディナガンを探知しながらギリっと歯を食い縛る。
(ついに来たか…オールフォーワンの刺客…!)
ひなたは、物陰に隠れたままハンドサインで轟と爆豪に指示を出す。
轟は素直に指示に従い、爆豪も不満そうにしつつも指示に従った。
「投降する気はなし…か」
二人に投降する気が微塵も無い事がわかると、レディナガンは緑谷とひなた目掛けて弾幕を張る。
一切考える時間を与えずに弾丸を打ち込み、確実に選択肢を奪っていく。
緑谷は黒鞭で弾丸を受け止め、ひなたは捕縛武器を網状にして弾丸を受け止め、速度を殺してから銃弾に込められた“個性”を消した。
「なるほど、オールフォーワンが目をつけるわけだ…!」
「メリッサさんにこの捕縛武器作ってもらっててよかった…!」
レディナガンの銃弾を受け止めたひなたは、ふぅと安堵のため息をついた。
◇◇◇
数ヶ月前、I・アイランドに訪れていた時の事。
I・アイランドでの騒動の後、ひなたはメリッサのラボに呼び出されていた。
「ひなたちゃん、ちょっとこれ一回試してもらえないかな」
メリッサがそう言って渡してきたのは、赤いブレスレットだった。
ひなたは、それを見てキョトンとする。
「えっ、これってこの前の捕縛武器ですよね?」
「その改良版よ。前のは強度が足りなかったから…」
ひなたは、メリッサに促されるまま捕縛武器を両手首につける。
ひなたは、そのデザインに思わず目を輝かせ、付き添いの心操も感心する。
「ほわぁぁああ…!」
「カッコいいじゃん。使ってみてよ」
「うん!」
ひなたは、早速捕縛武器を使って近くにあったものを取ろうとする。
すると捕縛武器は何故か心操の方へ飛んでいき、網状に変形した捕縛武器が心操をギチギチに絡め取る。
それを見たひなたは、思わず目を丸くして素っ頓狂な叫び声を上げる。
「わああああ!!? ひ、ひー君!!」
「ほ、捕縛力は申し分ないみたいだな…」
「ごめんねひー君!! こんなはずじゃなかったの! あれれぇおっかしいなぁ、思ったように動かない…」
ひなたは、慌てて心操を絡め取っていた捕縛武器を解く。
それを見ていたメリッサは、少し落胆しつつも、こうなる事がわかっていたかのように呟く。
「…やっぱりね。それ、失敗作なの」
「え?」
「I・アイランドの捕縛装置を参考に作ってみたものでね、筋肉の動きに合わせて変形する仕様にしてみたんだけど、変形パターンを細かくしすぎてかえって使い勝手が悪くなってしまったの」
「動きに合わせて…細かく変形……」
「?」
メリッサが言うと、ひなたは捕縛武器を見つめながらボソッと呟く。
その様子を見ていた心操は、疑問符を浮かべていた。
「動作テストに付き合ってくれてありがとう。やっぱりまだまだ改良の余地が…」
「それって、使い手の訓練次第では無限の可能性を生み出せるって事ですよね!?」
メリッサが少し残念そうに言おうとすると、ひなたが目を爛々と輝かせて詰め寄ってくる。
ひなたのあまりの勢いにメリッサが目を点にしていると、ひなたは捕縛武器を見せながらニコッと微笑んだ。
「すっごく気に入りました! これを使いこなせれば、どんな状況でも人を助けられるかもしれない…!」
ひなたが純粋に喜んでいるのを見て、メリッサは嬉しそうに微笑む。
ひなたに使われるならこのサポートアイテムも喜ぶだろうと確信し、捕縛武器を指差しながら言った。
「それ、あげる」
◇◇◇
(両手を思いのままに動かすだけで、形状も、硬度も、靭性も、自由自在に変えられる。真剣に向き合えば、可能性はどこまでも広がっていく。僕にピッタリな最強の武器だ…!)
ひなたは、網状にした捕縛武器をピンと張りながら態勢を整える。
一方で緑谷は、黒鞭で銃弾を防いでいた。
だがその直後、銃弾が速度を上げながら高速回転を始め、黒鞭を貫かんとしてくる。
「ぬ゛っ…うう゛…!!」
受け止めていた銃弾に押されそうになった緑谷だったが、寸前のところで衝撃波で弾き返した。
4人で一緒に弾の射程から逃れるのは不可能だと悟った緑谷は、ここで決着をつけに行く事にした。
銃弾を防いでみせた二人を見て、レディナガンは微かに驚く。
「これも防がれたのは初めてだ」
そう言ってレディナガンが一度右腕のライフルを元に戻すと、レディナガンが連れてきた治崎が呟く。
“個性”である腕を失った治崎は、もはや生気を感じられず、譫言のように組長の事をブツブツと呟いていた。
「オヤジ…オヤジの元へ……早く…」
「はいはい! これ終わったらな!! 隠れてろ、標的来っから。やっぱ捨てとくべきだったかな」
レディナガンは、呆れながら治崎を引っ張り上げる。
レディナガンは、『ある見返り』を貰う代わりに緑谷とひなたを連れて来るという任務をオールフォーワンから受けており、治崎も協力する代わりに組長のもとへ連れて行ってもらうという契約をレディナガンと交わしていた。
「任務を遂行する」
そう言ってレディナガンはフワリと空中に浮き上がる。
レディナガンがオールフォーワンから見返りとして貰ったのは、『エアウォーク』の“個性”だった。
その頃緑谷とひなたは、うまく建物の影を利用しながら空中を爆速で駆け抜けてレディナガンとの距離を一気に詰めようとしていた。
だがその直後、二人の死角から銃弾が飛んでくる。
ひなたは咄嗟に音のバリアを張って銃弾を防いだが、緑谷は予想外の方向からの銃弾に対応し切れずに脇腹に掠ってしまう。
「くっ……!」
(今の、曲射ってレベルじゃないぞ…!? どこから撃って…)
緑谷は、咄嗟に物陰に隠れてレディナガンを探す。
レディナガンを探していたひなたは、悔しそうに左腿を拳で殴る。
(クソッ、やっぱりオールフォーワンに“個性”を与えられてたか! 道理で波長がゴチャゴチャしてると思った…!)
レディナガンをゴーグル越しに見つけたひなたは、ギリっと歯を食いしばる。
レディナガンは、『エアウォーク』で空中を動き回りながら二人を狙う事で、不可能な角度からの射撃を可能にしていた。
緑谷は、レディナガンの目を眩ますため、6代目の“個性”である煙幕を広範囲に張る。
「煙幕…あいつも複数持ちか、闇が深えな。けど……」
レディナガンは、煙幕にも一切動揺せずライフルの銃弾を放った。
まるで
死角から放たれた銃弾は、緑谷の右脚を掠める。
『危機感知』と『浮遊』の“個性”で対応しつつも、一瞬反応が遅れてしまった。
「っ…!?」
(デッくん…!)
緑谷とひなたは、予想外の攻撃に思わず目を見開く。
レディナガンは、髪を千切って銃弾に変え、ライフルに装填しながら言い放つ。
「それ、大して意味ねえぞ」
二人の動きを完全に見切ったレディナガンは、狙撃の準備をする。
レディナガンの目は、ぼんやりと黄色に光っていた。
脱獄時、レディナガンはオールフォーワンからこんな提案を受けていた。
『いくら君でもあの二人を相手にするのは厳しいだろうからね。念の為もう一つ“個性”を付与しておこう』
レディナガンがオールフォーワンから与えられたもう一つの“個性”は、『熱源感知』の“個性”だった。
『熱源感知』で視覚に頼らずとも標的の位置を正確に特定し、『エアウォーク』で動き回りながら死角から確実に狙い撃つ。
不可能な狙撃をも可能にする彼女は、まさに最強のスナイパーだった。
ひなたは、捕縛武器を使って音もなく接近し、音波攻撃を当てようと試みる。
だがレディナガンは、ひなたの方を一瞥もせずにノールックショットを放つ。
ひなたは、レディナガンの銃弾を反射的に捕縛武器で防いだ。
「ぎっ…!」
「…チッ」
レディナガンは、視界が悪い中二人に一切接近の余地を与えずに銃撃を放つ。
いくら強い“個性”を持つ二人といえど、予測できない角度から狙撃してくるレディナガンに接近するのは容易ではなかった。
一方で、ひなたに待機の指示を出されていた轟と爆豪は、物陰に隠れて状況を分析していた。
「爆豪」
「ンだよ」
「気付いてるか? 視界が悪い中であの正確さ…ナガンは
「わぁっとるわボケ。この期に及んで何考えてんのか知らねえが、俺らが隠れてんのわかってて放置してやがんだろ」
轟が言うと、爆豪は『そんなの最初から気づいてた』と言わんばかりに悪態をつく。
爆豪は、ひなたがレディナガンに狙われた際に言ってきた事を思い出した。
(ナガンの標的は僕ら二人だけ。僕の読みが正しければ、君達の事はすぐには攻撃してこないはず。でもこの距離と地形じゃ、分が悪すぎる。僕とデッくんで最大限引きつけるから、僕達が合図するまで隠れて待機してて)
爆豪は、レディナガンに追い詰められている二人を見て、ギリっと歯を食い縛る。
オールマイトを超えるヒーローになるはずが、敵に敵とすら認識されずに放置されている現状が腹立たしくて仕方がなかった。
「クソが…! 俺らは眼中にナシかよ、舐めやがって…!」
爆豪が苛立ちを露わにした、その時だった。
突然、通信機からひなたの声が聞こえてくる。
『かっちゃん、焦ちゃん!』
「「!」」
『わかったかも、レディナガンの索敵能力のカラクリが。一気にカタつけに行く。二人とも手伝って!』
「ああ」
「命令すんな」
ひなたが指示を出すと、轟はひなたの意図を汲み取って頷き、爆豪も悪態をつきつつも動き出した。
煙の中で何かが動くのを感知したレディナガンは、その方向へと銃口を向ける。
するとその瞬間、熱を帯びた蒸気が一気に広がる。
「熱っつ」
突然広がった蒸気に、レディナガンは思わず怯む。
だがその直後、蒸気の中で熱源が動くのを発見した。
レディナガンは、その熱源をひなただと判断すると、躊躇なく狙撃した。
「無駄だっつってんだろうが」
レディナガンがひなたを狙撃するが、手応えがなかった。
揺れ動いたものを目視で確認すると、そこにはひなたの着ていたケープがあった。
「!」
ひなたの着ていたケープをよく見てみると、微かに湯気が出ていた。
轟が氷と炎を同時に出して大量の蒸気を発生させ、その蒸気の熱でひなたのケープを体温に近い温度に保ち囮として使ったのだ。
ただでさえ煙幕と蒸気で視界が悪い中、轟の“個性”で『熱源感知』を鈍らされ、先程までの正確無比な射撃は不可能となっていた。
標的であるひなたと緑谷の捕獲を優先してあえて轟と爆豪を狙う事をしなかったレディナガンだが、下手な抵抗をされる前に倒しておけば良かったという思考が一瞬頭を巡る。
「チッ、しゃらくせぇ!」
『熱源感知』を使えなくなったレディナガンは、今度は音を頼りに標的の位置を特定しようとする。
だが、その直後だった。
「死ねぇえええええ!!!」
爆豪が両掌から爆破を放ちながら死角から現れる。
視界が悪く熱と爆音で感覚を鈍らされる中、レディナガンは爆速で向かってくる爆豪を撃った。
直撃は免れたものの、超音速で飛んでくる弾丸が頬を掠める。
「ッソがぁ…!」
「まさか、これで勝ったつもりじゃないだろうな」
「ったりめーだろ」
レディナガンが平然とした様子で言い放つと、爆豪がニヤリと笑う。
するとその直後、緑谷とひなたがレディナガンの背後に現れる。
直前で二人に気付いたレディナガンだったが、ライフルの銃口は接近してくる二人ではなく、ビルの上にいる治崎の方に向いていた。
「まだか! 早くオヤジの元に」
「「───治崎!!!!?」」
治崎の姿を確認した緑谷とひなたは、思わず目を見開く。
治崎は、ビルの屋上からレディナガンに向かって叫ぶ。
「契約はとっくに履行したぞ! 早くオヤジに会わせろ!!」
「……英雄教育が最も嫌がる事だ。それがどんな人間であれ…己の過失で死なれちゃ寝覚めが悪いだろ?」
レディナガンは、そう言って治崎目掛けて銃弾を放つ。
それと同時に、ひなたはそうはさせまいと“個性”で叫ぶ。
すると、ひなたの“個性”を喰らったレディナガンの腕の砲身が元の腕に戻る。
だがコンマ数秒気付くのが遅く、発砲された弾丸までは消し飛ばせなかった。
すると緑谷が、三代目の“個性”『発勁』でエネルギーを貯めて爆速で飛び出し、ついに銃弾をも追い抜き、治崎を突き飛ばして助ける。
“個性”を全て消された上でひなたの変幻自在な捕縛武器で拘束され、治崎も緑谷に確保されたレディナガンは、ここに来てついに敗北を悟った。
「くっ……」
「誰も死なせない。助けて勝つんだ。僕には、
「理想ばかり…ハリボテ教育の賜物だ」
ひなたの言葉に対し、レディナガンが悪態をつく。
レディナガンは、観念したかのように胸の内を語った。
「たくさん殺した。ヒーローへのテロを企んでいた
「!」
「おかしいと思わなかったのか? どうしてお前が
「オイ。何の話してやがんだ」
「………」
レディナガンが言うと、爆豪は発言の真意を問い詰めようとし、ひなたは黙り込む。
そもそもの話、本来ならあり得ない事だった。
アングラヒーローの保護下に置かれていると言えど、
ひなたが普通に過ごせていたのは、公安がひなたを嗅ぎ回って回収しようとしていた
レディナガンも、ひなたのような公安が保護した身寄りのない子供を守る為に自ら手を汚した事があった。
ヒーロー社会は表の顔と裏の顔で成り立っており、レディナガンはその歯車の役割を担っていた。
だが手を汚していくうちにヒーロー社会のあり方に疑問を抱くようになり、ついには偽りの正義を背負い続ける事に嫌気が差し、当時の公安委員長を撃ち殺した。
「お前達が見せられているのは、キラキラした表の顔だけだ。何が正義だ、そんなものは汚れた裏の顔をハリボテで綺麗に見せただけの紛い物だ。だったら、オールフォーワンの創る世界の方がよっぽどマシだろうよ」
レディナガンは、絶望の底に沈んだ目を下に向けながら話した。
“個性”を二つも与えられて身体に異常を来さないわけもなく、肉体改造をしていない普通の人間に複数の“個性”を付与すれば、適合できない“個性”同士が拒絶反応を引き起こすせいで永くは生きられず、最悪その場で命を落とすリスクがあった。
それでもレディナガンは、そのリスクを受け入れて“個性”を受け取った。
腐り切ったヒーロー社会の中で生き延びるくらいなら、命を削ってでもオールフォーワンに与した方がいくらかマシだと思っていた。
「本当にそう思ってますか?」
レディナガンが言い放つと、緑谷が反論する。
見上げると、緑谷と轟が治崎を連行しながら歩み寄っていた。
「違うはずだ。治崎に撃った弾、軌道がズレてた。あなたが本当に悪に与したのなら、そもそも初撃で僕の腰を撃ち抜いて終わりだった…!!」
「俺達を真っ先に狙えば、確実に緑谷と相澤をここに留めておく事ができた。なのにあなたはそれをしなかった。今なら、俺達を狙わなかった理由がわかります。俺達を巻き込みたくなかったんですよね」
緑谷と轟が言うと、レディナガンは黙って二人の方を見る。
彼女は、肯定も否定もしなかった。
するとひなたは、胸の前でぎゅっと拳を握りながら話し始める。
「…知らなかった。僕の当たり前の日常が、あなたのような人の苦しみの上で成り立っていたなんて。僕は、多くの人に助けられた。だから今度は、僕達があなたを助ける番です。もう誰もあなたのように苦しまなくて済むようにする。理想論だって嗤われたって、どんなに時間がかかったって、いつか必ず実現してみせる。その時は、生きたいように生きて下さい」
ひなたはそう言うと、拘束したレディナガンの視線に合わせてしゃがみ、“個性”を発動する。
するとひなたを中心に周囲数メートルが音の膜に包まれ、ひなたの目の前にいたレディナガンの身体がひなたの瞳と同じ色に光る。
それだけではなく、“個性”の範囲内にいた緑谷と爆豪の傷が消える。
「何か不穏な波長を感じたので、オールフォーワンから“個性”を与えられる前の状態に戻しました。こういう器用な事もできるんですよ」
「お前、どうして……」
「言ったでしょう、今度は僕達が助ける番だって。あなたが胸を張って生きられる未来だって、きっと創れる。僕達は、独りじゃないから」
「闇を知ってるあなたなら、これから照らすべき方向もわかるハズだ。僕らと一緒に戦って下さい、あなたの心はまだヒーローのままです」
ひなたと緑谷は、レディナガンに訴えかけた。
するとレディナガンは、微笑みながら二人に告げた。
「もっと早く会いたかったなァ。お前らみたいな本物のヒーローに」
◇◇◇
少しして、緑谷達が刺客に狙われたと報告を受けたオールマイト、エンデヴァー、ホークスが駆けつけてくる。
三人が駆けつけた時には、既にひなた達4人がレディナガンと治崎を確保していた。
ひなたは、レディナガンから感じた波長について真っ先に報告をする。
「ナガンに付与された“個性”から、歪な波長を感じました。恐らく、裏切りや失敗を感知すると起爆する仕組みでも仕掛けられていたんだと思います」
「奴の事だ、それぐらいはやるだろうとは思っていたが…」
「一刻も早く皆に伝えて下さい。あと、刺客を見つけたら僕に言うよう伝えておいて下さい。僕なら“個性”ごと起爆装置を解除できます」
ひなたは、エンデヴァーに報告をした。
するとホークスは、爽やかな笑顔を浮かべながらサムズアップをする。
「何にせよ、お手柄だったよひなたちゃん。君がいなかったら危ないところだった」
「えへへ…」
ホークスがひなたを褒めると、ひなたは分かりやすく照れる。
一方で、オールマイトは、4人が無事だった事に安堵していた。
「遅れてすまなかった。4人とも無事どころか、既にもう全部終わらせてしまったとは…強いな、君達は」
「いえ…ほとんど緑谷と相澤のおかげです」
「ケッ」
オールマイトが全面戦争の時とは見違える程強くなった4人に驚いていると、轟が謙遜し、爆豪がそっぽを向いた。
それぞれが現状を報告し合っていると、拘束されたまま車に乗せられていたレディナガンがホークスに話しかける。
「後輩くん。君はどうして平気でいられるんだ。私は…心が保たなかった」
「支えてくれる人がいた。楽観的なんす、俺。詳しい話は後で聞かせてもらいますよ先輩」
レディナガンが尋ねると、ホークスは微笑みながら答える。
とりあえずはこれで一件落着、とひなたが落ち着いた、その時だった。
「おい、暴れるな貴様!」
「離せ!! 話が違うぞ、捕まったじゃないか! オヤジに会わせろ…!! 俺にはもうオヤジしかいないんだ。オヤジに、謝りたい………!!」
感情を剥き出しにしながら暴れる治崎を、エンデヴァーが押さえつけていた。
するとひなたは、治崎に歩み寄って正面から睨みつける。
壊理の事を思えば、目を合わせただけで腑が煮えくりかえる思いだった。
「あんたさぁ……自分の立場わかってる? 言っとくけど、お前がエリちゃんにした事、僕は絶対に許さないから」
「そうだ、壊理…! あいつさえいれば…壊理はどこにいる!?」
「はぁ……」
治崎が必死に尋ねると、ひなたは冷め切った目を向けながらため息をつく。
そして息を吸ったかと思うと、“個性”を発動して髪をざわつかせ両眼を光らせる。
ひなたが治崎の事を見限り痛めつけようとしているのではないかと察したオールマイトは、ひなたを止めようとする。
「いけない、相澤少女…!!」
オールマイトは咄嗟にひなたを止めようとしたが、ひなたがとった行動は想像とは真逆の行動だった。
ひなたは、“個性”を発動して治崎を死柄木達に襲われる前の状態に戻した。
死柄木と零、Mr.コンプレスに奪われた両腕が元に戻り、目を見開きながら自分の両手を見つめている治崎に対し、ひなたが事情を話す。
「八斎會の組長なら、僕が今やったみたいに元に戻しておいた。今は事情を話して雄英に避難してもらってる」
ひなたが事実を告げると、治崎は顔を上げてひなたの方を見る。
ひなたが以前言っていた『会いたい人』というのは、死穢八斎會の組長の事だった。
プッシーキャッツ達との“個性”訓練を経てひなたの“個性”が成長し、以前よりも簡単に人を戻せるようになったので、もしかしたら助けられるのではないかと思い教師陣に頼み込んで組長のいる病院へと連れて行ってもらっていたのだ。
以前から壊理をそろそろ家族に会わせてあげた方がいいのではないかと思っていた事もあって、組長を治した後は事情を話して当分の間は雄英に避難してもらっていた。
ひなたは、若干不服そうに頭を掻きながら治崎に言い放つ。
「『あのバカの目を醒まさせてやってほしい』ってさ。あんたの事は死ぬほど嫌いだけど、あの人との約束を反故にするのだけは嫌だからさ。あんたが一緒に死柄木達と戦うっていうなら、レディナガンとの約束は僕達が引き継ぐよ」
ひなたが言うと、治崎は静かに俯く。
こうして最初の刺客との戦いは幕を閉じ、ひなた達は少しずつ巨悪の残した足跡を掴み始めたのだった。