マジで連載開始してから1年半くらいずっと悩みましたが、ようやく彼にピッタリなヒーローネームが決まりました。
時は遡り、分断直後。
心操達は、蛇腔病院跡地にて超常解放戦線の残党や混乱に便乗した
順調に
(優勢だといい気になっているのも今のうちだ。この“超高周波装置”と我らの“個性”を組み合わせる事で計画は遂行される。この高周波は、オールフォーワンの音声を加工したもの。どれ程堅牢な拘束だろうと、この“声”は遮蔽物をすり抜け…マキアの“個性”の一つ、『犬』の聴覚に届く)
残党がほくそ笑みながら高周波装置の電源を入れようとした、その時だった。
突然、リューキュウがその場にいたヒーロー達に向かって叫ぶ。
「今よ!! 全員スピーカーをオンにして!! 音量は最大に!!」
「なっ!?」
リューキュウが叫ぶと、ヒーロー達は一斉にスピーカーをオンにし、爆音の高周波を放った。
ヒーロー達が放つ爆音の高周波により、残党の高周波装置の音がかき消される。
互いの音波が打ち消し合って無音状態になったため、その隙にMt.レディが小大の“個性”で巨大化したスパナを振り下ろして空中にいた残党を地上に叩き落とした。
一気に劣勢に追い込まれた
「ウッソだろ…!? 何で完璧に対応できてんだよ!?」
◇◇◇
数日前。
ナイトアイは、蛇腔チームに自分の『予知』の結果を話した。
「蛇腔での作戦当日の行く末を見た。敵の小細工によってギガントマキアが覚醒、奴はヒーローを殲滅しようと暴れるも、心操の“個性”で洗脳され味方につく。これが私の見た未来だ」
ナイトアイが予知した未来を話すと、蛇腔チームは複雑そうな表情を浮かべる。
ギガントマキアと戦うのは確定だと言われたようなものだからだ。
「じゃあ、俺らのとこは、作戦自体は成功する、けど…」
「やっぱ結局あのバケモノと戦わなきゃいけねぇのかよ…」
骨抜と峰田は、ナイトアイの予知を聞いてぼやいていた。
作戦が成功すると分かっていても、二人はギガントマキアの恐ろしさをその目で見ていたため、いざ戦いが避けられないと聞かされると尻込みするのも無理はなかった。
だがその時、心操が口を開く。
「いや、今聞いた限りの情報だと、俺達の被害を最小限にギガントマキアを味方にできるかもしれない。だから俺達に話した。…ですよね、ナイトアイ」
「そうだ。私が見たのは、あくまで『ギガントマキアが覚醒し、心操がギガントマキアを味方につける』未来。もし、そこに至るまでの過程が変わったとしたら…?」
心操が自分の考えを話すと、ナイトアイは心操の発言に対し補足をする。
すると二人の考えに気がついた峰田は、心操の方を見る。
「おいおい待てよ、それってまさか…」
「
「成功確率は高いはずだ。何しろ、私が“視た”からな」
心操とナイトアイは、今回の作戦の要を話した。
二人の説明を聞いて、芦戸と切島は二人の発言の意図に気付く。
「そっか、ナイトアイが見た未来は変えられない…!」
「だからそれを逆手に取んのか!」
芦戸と切島は、ナイトアイが未来を事前に話した理由を理解した。
ナイトアイの“個性”には、原則未来を変える事はできず、予知された未来を変えようとしても帳尻を合わせるような出来事が発生し、結局元の流れに修正されてしまうという性質があった。
『未来を変えられない』という事象を利用して、未来ではギガントマキアを起こすはずだった残党の役目を横取りし、はじめから『洗脳』がかかった状態でギガントマキアを戦わせる、これが心操とナイトアイが考えた作戦だった。
「これまでこの“個性”と向き合ってきてわかった事だが、私の未来予知は、『結果』は変えられなくともそこに至るまでの『過程』は変えられる。同じ『結果』でも、
◇◇◇
そして
『起きろォォォマキアァアア!!!!』
心操は、自分の声をオールフォーワンの声に変えて叫んだ。
心操が新たに装着しているペルソナコードは、共鳴管を使って声を電気信号に変える事なく音量を増幅し、音の屈折と反射を利用して遮蔽物の向こうにも声を届ける効果があった。
心操が叫んで数秒後、その声に応えるように地響きが起こった。
「来るぞ!!」
切島が叫んだその直後、ギガントマキアが檻を破壊しながら現れた。
心操の声で起きたギガントマキアは、カッと目を見開いて雄叫びを上げる。
「オォオオオオオオオオオオ!!!!」
心操の洗脳を受けたギガントマキアは、そのまま
だが
それを見た鉄哲は、思わず目を見開く。
「な……!? 止まった…!? どうなってんだ!?」
「抗ってるんだ。操られまいと必死に抵抗してる。こんなの、緑谷に仕掛けた時以来だ」
鉄哲が尋ねると、心操が答える。
何とかギガントマキアの洗脳を維持しようとしている心操は、珍しく額に青筋と冷や汗を浮かべていた。
作戦の要である心操が苦しそうな表情を浮かべているのを見て、峰田は動揺した様子で尋ねる。
「じゃあどうすんだよ!?」
「俺がもう一度声をかけに行く。それしか方法が無い。大丈夫。『予知』で俺は死んでない。必ず成功させるさ」
心操は、グッとサムズアップをしながら言った。
峰田は、心操の手が震えている事に気がつく。
ナイトアイの見た未来は変わらない、しかし全面戦争の際はたった一つの『奇跡』によって全てが瓦解し、明るいものだったはずの未来は変わってしまった。
もし何かの拍子に未来が変わってしまったら、その可能性はゼロではなかった。
峰田は、震えながらもギガントマキアに歩み寄ろうとする心操を見て、泣き言を言うのをやめた。
するとその時、芦戸が心操の肩をバシッと叩きながら言った。
「よっしゃ、絶対成功させよう、心操! 全部終わったら皆で授業受けるんだもんね!」
「…ああ!」
芦戸が笑顔を浮かべながら言うと、心操が頷く。
Mt.レディは、足元にいる
「全員、心操くんを援護して!! 何が何でも彼をギガントマキアのもとへ送り届けるの!!」
Mt.レディが叫ぶと、ヒーロー達は息を合わせて心操を援護した。
空中にいた残党が死角から心操に攻撃を仕掛けようとしたその時、おはぎが“個性”を使って心操への攻撃を阻止した。
おはぎの“個性”によって地面に叩き落とされた残党は、砕けた仮面から顔を覗かせながらおはぎを睨む。
「ぐ…何故ハイエンドがヒーローの味方を…!?」
「ア……ウゥ………」
ハイエンドがヒーローの命令に従うという信じがたい出来事に、残党は理解が追いつかずにいた。
するとおはぎは、たどたどしくも話し始めた。
「人…シ…クン……は、優シイんだ…! 僕は、人使クンの…や、役ニ、立つンダ…!」
おはぎは、
殻木がハイエンドに向けていたのは、あくまで自分で生み出した実験動物としての愛情だった。
だが心操は、ハイエンドの中に残っていた生前の人間の『痛み』や『苦しみ』に触れようとした。
おはぎは、あくまで自分を実験動物として見ていた殻木やオールフォーワンではなく、人として見ようとした心操に従うと決めたのだ。
一方で、かつて爆豪を襲ったヘドロ
すると芦戸がヘドロ
「『アシッドジェット』!!」
「ぎゃああああああああ!!?」
芦戸がヘドロ
芦戸は、『アシッドマン』で
「行って!!」
芦戸が叫ぶと、心操は
すると小大は、ナットに“個性”を発動してナットを巨大化させる。
「大」
小大がナットを巨大化させると、心操は捕縛武器を使ってナットにしがみついた。
その直後、Mt.レディがナットを拾い上げてそのままギガントマキアの方へ走った。
「心操くん!!」
Mt.レディは、ナットにしがみついている心操に向かって叫んだ。
すると心操は、再びギガントマキアに洗脳を仕掛けようとする。
だがその時、心操の目には信じがたいものが映った。
「俺は…主の為に……主……主の……」
ギガントマキアは、心操の洗脳に抗いながら涙を流していた。
心操は、その涙と、ギガントマキアの抱える苦しみを見逃がさなかった。
心操は、ギガントマキアの心の苦しみに語りかけた。
「置いていかれたのがそんなにショックだったか?」
心操が語りかけると、ギガントマキアの動きがピタリと止まる。
自分を置いて逃げたオールフォーワンに対する『疑念』や『怒り』、裏切られた事に対する『失望』。
心操は、ギガントマキアの抱えるオールフォーワンへの叛逆の芽につけ込んだ。
「オールフォーワンは…あいつは、あの場でお前を助けずに置いて逃げた。お前は見捨てられたんだ。お前も、本当は薄々わかっていたんじゃないか? あいつがお前をただの駒として利用しているに過ぎないって事に」
「オ…オォ…オォオオォオオ……!!」
心操が語りかけると、ギガントマキアは涙を流しながら嗚咽を漏らした。
オールフォーワンを敬愛しているギガントマキアだが、心操の言葉を聞くうちにオールフォーワンへの疑念や怒りが膨れ上がり、『違う』と反論できなかった。
心操の“個性”への抵抗力を失ったギガントマキアは、そのまま心操に洗脳された。
今度こそギガントマキアを手中に収めた心操は、ギガントマキアに語りかける。
「わかるよ。見捨てられる苦しさも、信じてたものに裏切られる絶望も。そういうの、全部乗り越えてきたから。俺が全部受け止める」
心操は、失意のあまり涙を流すギガントマキアの心に寄り添った。
“個性”のせいで人間関係に苦しんだ心操は、ギガントマキアの苦しみが手に取るようにわかった。
心操は、自分を苦しめてきた言葉の数々を脳裏に思い浮かべていた。
──人使くんの“こせい”こわい! もう遊ばない!
“個性”が発現するまでは毎日一緒に遊んでいた親友は、“個性”が発現した途端に話しかけてこなくなった。
──あぁ、サンキュ…って、あっぶね! 今話しちゃってたわ…
義務教育の期間中、出会った人間全員に警戒されて無視を決め込まれてきた。
自分の何気ない発言にうっかり相手が答えてしまった日には、まるで汚物にでも触ったかのように避けられた。
──勝手に操るとかマジあり得ないんだけど!! このクソ
事故に遭いそうだった女子を“個性”で助けたら、礼を言われるどころか散々罵倒された。
反論しようと口を開こうものなら、相手の女子は見るからにビクビク怯えながら無視を決め込んできた。
心操は、その“個性”のせいで警戒され、誰とも心を通わせる事は叶わなかった。
“個性”が発現してから10年以上も人間関係に苦しみ、心操の心は荒んでいった。
だが心操が幸運だったのは、荒んだ心を救ってくれる存在に出会えた事だった。
──おはよーひー君! あのねぇ、今朝ねぇ! ちょっと外でランニングしてたんだけど、猫が道端で寝てたのね? でさ、その寝方なんだけど…へそ天でぐでーっとして寝てんの! 中にオッサン入ってんのかと思ったわ! …あ、写真撮ったけど見る? エアドロで送ったげるね!
──聞いてひー君〜!! あのクソ親父、今朝何したと思う!? 僕の歯ブラシ勝手に使ったんだよ!? あり得なくない!? 何で間違えるかね!? 今日に限って歯ブラシのストック無かったからコンビニに買いに行ってて遅刻しそうになったしさぁ! あー思い出しただけで腹立ってきた! んも〜バカバカバカ!! ヒゲ面!! 消しゴム頭!!
──ひー君、僕と出会ってくれてありがとうね。大好きだよ。
ひなたは心操と話す時に警戒一つせず、それどころか1話せば10で返してきた。
ひなたは心操の事を『しょうもない話や愚痴もちゃんと聞いてくれるところが好き』と言っていたが、心操はずっと、しょうもない話で笑い合い、愚痴も言い合える関係に憧れていた。
ひなたの何気ない言動ひとつひとつが心操にとっては何よりの救いで、誰よりも話しかけてくれるひなたは心操にとって誰よりも最高のヒーローだった。
普段は笑顔で明るいひなたが本当は誰よりも苦しい過去を背負っていると知った時は、ひなたの抱え込んできた苦しみと向き合いたい、ひなたの心を救いたいと本気で願った。
愛する者を救いたいという想いが、彼自身の“個性”を進化させたのだ。
ギガントマキアが心操に洗脳されると、
計画が失敗した上、ギガントマキアがヒーローの味方についてしまったらもうどこにも勝機は無いからだ。
「そんな…嘘だろ…!?」
ギガントマキアを奪われた
するとその時、ギガントマキアの肩に乗った心操が大声で叫んだ。
「聞け!!!! 俺達は今から、こいつと一緒にオールフォーワンの元へ向かう!! 俺達と一緒に戦う奴がいるなら、すぐにでも拘束を解いてやる!! ついて来る奴はついてこい!!」
心操は、下にいる
すると
今回は見逃がす代わりに、オールフォーワン相手に特攻を仕掛けろと言っているのだ。
どう考えても正気の沙汰とは思えない提案だった。
心操が提案すると、何人かの
「はっ、何を言い出すかと思えば…誰がてめェになんかついて行くかバァカ!! そんなバカみてぇな提案に乗って死ぬくらいなら、ここでふん縛られてた方がずっとマシだ!!」
「そもそも俺達ァ、オールフォーワンの起こした混乱に便乗して来てンだよ! 親玉裏切っててめぇらにつく理由がどこにあんだよ!?」
そもそも自分達は
決死の覚悟でオールフォーワンに特攻を仕掛けるメリットなどどこにもなく、今すぐに拘束を解いてもらえるからといって立ち上がる者は誰一人としていなかった。
するとその時、心操は
「本当にそれでいいのか!!?」
心操が叫ぶと、何人かの
心操は、
「オールフォーワンに乗せられた奴、何となく乗っかった奴、ここにいる奴大体そうだろう? あんな奴の口車に乗せられちゃいけない事くらい、少し考えればわかるだろう? 苦しい事から逃げて、より楽な方に流れていった思考停止野郎。それがお前らだ!! あんな奴の甘言に惑わされるのは、お前らの心が弱いからだ!!」
「何だと!!?」
「お前ら、どうして道を踏み外したんだ!? 自分の『原点』を思い出せ! お前らは、躓いたから、照らされなかったからここにいるんじゃないのか!? ここでオールフォーワンの言いなりになっちまったら、世界がオールフォーワンの手で変えられちまう! ヒーロー社会で躓いたお前らにとっては、オールフォーワンの作る世界の方が輝いて見えるかもしれない! だけどそれは、お前らが一方的にオールフォーワンに搾取される世界だぞ!! 利用されるだけ利用されて、要らなくなったら切り捨てられる、お前らの望みは本当にそんな事なのか!?」
心操は、今一度この場にいる
すると
「望み、だと…!? 俺の望みは、とうにお前らヒーローに潰された!! 俺は、この世界に捨てられた!! 今更、もう止まれねえんだよ!!」
「止まれるよ」
「!!」
「いるんだよ。誰かが困ってたらそれが
心操は、“個性”でも暴力でもなく、あくまで言葉で
中にはただただ純粋に暴力を振るって人を傷つけるのが好きで
オールフォーワンに一方的に搾取される世界は、少なくとも、ここにいるほとんどの
ここに来て、
「いつまでも躓いてる場合じゃねえだろ!! これからどう生きたいか、自分の頭で考えて、自分の足で立って歩け!!」
心操は、目を見開いて叫んだ。
その声は、言葉は、その場にいた
心操が叫んだ直後、その場には静寂が訪れる。
そんな中、一人の
「………俺は、こんな“個性”を持って生まれたせいで、何もしてないのに石を投げられた。住む場所も追われて、食うのにも困る毎日だった。俺をこんな目に遭わせた社会に、復讐してやろうと思ってた…だけど、今気付いた。俺、本当はそんな事望んじゃいねえんだって。本当はただ、普通に生きたいだけだった」
「おい!!」
「そりゃあ憎いよ…! こんな世界、ぶっ壊れちまえばいいって今でも思ってる。でも、オールフォーワンに搾取されるのだけは『違う』って思った…! だから…!」
「やめろ!!」
だが話していた
「…ヒーローは、こんなクズの事も救けてくれるのかよ?」
「救けるよ。その為に今戦ってるんだ」
その言葉を聞いた
するとそれを皮切りに、次々と他の
「お、おい…! お前ら!」
次々と立ち上がる
ギガントマキアに仕掛けた『洗脳』を火種に、心操の“個性”は、心を動かされた者に次々と伝播していく。
誰よりも人の心に触れてきた心操だからこそ、“個性”の特性を最大限引き出す事ができたのだ。
心操に洗脳された
◇◇◇
そして現在。
オールフォーワンは、ギガントマキアや蛇腔から来たヒーロー達、そして心操の“個性”で寝返った
オールフォーワンは、脱獄を助けた恩も忘れてあっさりと手の平を返し自分に攻撃を仕掛けてくる
「貴様ら…一体どういうつもりだ」
「誰もあんたのもとにはつかないって事だよ」
「!」
オールフォーワンが
心操は、ペルソナコードの下で笑みを浮かべながらオールフォーワンを挑発する。
「偉そうにしてるみたいだけどよ。あんたさ、自分が初手の初手で大ポカやらかしてんのにまだ気付かねえの?」
心操がオールフォーワンを煽ると、オールフォーワンの目元がピクリと動く。
オールフォーワンは心操の発言に、顳顬にピキッと青筋を浮かべるが、心操の発言に反応したら洗脳を喰らうのを知っていたため黙って聞いていた。
「初手で潰しに行く相手間違えてんだよ。
心操は、オールフォーワンの殺気に晒されながらも、ひたすらオールフォーワンを煽りまくった。
A組の生徒達は、オールフォーワンの殺気に気圧されそうになりながらも必死に自分を奮い立たせて煽る心操を、心の中で応援していた。
◇◇◇
冬休み明け、ひなたと心操はババ抜きをしていた。
意外にも白熱した勝負だったが、6回連続でひなたが負けた。
「くっそー、また負けた! ひー君ババ抜き強すぎ! 僕1回も勝てた事ないや!」
「ひなたが顔に出過ぎなだけだろ」
ひなたが悔しがると、心操がツッコミを入れる。
ひなたはふと、自分の手元に残ったジョーカーのカードを見つめながら言った。
「ねえひー君、何でトランプのジョーカーって道化師の絵が描かれてるか知ってる?」
「さあ?」
「中世ヨーロッパには、ジェスターっていう王族や貴族に雇われる宮廷道化師がいたんだけど、中にはおどけながら王様を批判するジェスターもいたんだ。普通なら王族に喧嘩売ったりなんかしたら即極刑だけど、雇われ芸人の言う事にいちいち反応してたら『器が小さい』って思われるから、見逃される事も多かったんだって。それで、『
「へー…」
ひなたが指先でジョーカーのカードをクルクル回しながら言うと、心操は素直に感心する。
するとひなたは、唐突に心操の顔をじっと見つめる。
「……何?」
「…何かさ、ひー君みたいじゃない?」
「は?」
「ほら、ひー君が喋ったら誰も何も言い返せないって、まさにこのカードに描かれてる道化師みたいじゃん! “個性”も切り札みたいだし、ペルソナコードで声を変えられるとことかワイルドカードっぽい要素あるし!」
「……!」
ひなたがニコッと笑いながら言うと、心操は僅かに目を見開く。
心操はずっと、相澤やひなたといった実力者を間近で見て自分の実力不足を痛感していたせいか、自分に合ったヒーローネームを決められずにいた。
だがたった今、ひなたの何気ない一言で、自分のなりたいヒーロー像とそれに相応しいヒーローネームを閃いたのだ。
ヒーローネームを決めた心操は、早速相澤に報告しに行った。
「先生。ヒーローネームの事で相談が」
「あぁ、そういやまだ決まってないの爆豪とお前だけだったな。もう決めたのか」
「…はい。ついこの前、天啓を得ました。俺のヒーローネームは───…」
◇◇◇
一方で、ギガントマキアに乗って突撃を仕掛ける心操を見た相澤は、オールフォーワンに目を向けて“個性”を発動する。
(震えろ、オールフォーワン。腹を括ったあいつは、俺が今まで見てきたヒーローの中で誰よりも強えぞ)
相澤は、辛うじて“個性”が使える片目でオールフォーワンを睨み“個性”を消していた。
心操は、オールフォーワンの殺気に晒されながらも、一切怯む事なく喋り続けた。
「『ジェスター』、それが俺のヒーローネームだ」
心操は、ようやく自分で決めたヒーローネームを名乗った。
まるで
それが心操の目指すヒーロー像だった。
心操は、ギガントマキアの頭の上で大袈裟な身振りをしながらオールフォーワンを嘲笑った。
「これまでの失敗は全部、あんたの自業自得だ!! 救いようのないアホでいてくれてありがとな、ラスボスさんよォ!!!」
心操がそう叫んだ直後、その場にいたヒーローも
ここに来てヒーローも
心操の“個性”が伝播したヒーローや
心操は、その場にいた全員に“個性”を伝播させ、オールフォーワンに立ち向かわせた。
その場にいた者達は、ただ目の前にいるオールフォーワンを倒す為だけに全力をかけて立ち向かった。
「全員、“ジェスター”に続け!!」
ホークスの叫び声を受けて、ギガントマキア、Mt.レディ、リューキュウ、
相澤が弱った“個性”を何とか振り絞ってオールフォーワンの“個性”を消している間に、ヒーローも
オールフォーワンがヒーローや
Mt.レディと一緒に郡訝に来た峰田も、目に涙を浮かべながらももぎもぎを投げながらオールフォーワンを煽った。
「オラオラオラァ!! 何が巨悪だ、おめーなんてなぁ!! オイラ達からすりゃあ、自分より弱い奴を集めていい気になってるだけのお山の大将なんだよぉ!!」
峰田の投げたもぎもぎがオールフォーワンの脚にくっつくと、オールフォーワンは額に青筋を浮かべて激怒の表情を見せる。
蛇腔側のヒーローの参戦によって一時は優勢だったヒーロー達だったが、オールフォーワンは、相澤の死角に入ると同時に衝撃波を放ち、Mt.レディとリューキュウを吹き飛ばした。
オールフォーワンが衝撃波と同時に放った超高圧電流によって、Mt.レディとリューキュウは意識を刈り取られた。
「岳山ァ!!」
「龍ねぇ!!」
二人が気絶させられると、シンリンカムイと竜崎が目を見開いて叫んだ。
竜崎は、親戚であるリューキュウの仇を取ろうと、オールフォーワンを巨大な水の竜で飲み込もうとした。
だがその直後、竜崎はオールフォーワンの放った電気の槍によって貫かれ、全身黒焦げになり血反吐を吐きながら吹き飛ばされる。
竜崎が致命傷を負って木々を薙ぎ倒しながら倒れると、夜嵐が目を見開いて叫んだ。
「カイリィイイイ!!!」
「貴様ァ…!!」
常闇は、仲間を傷つけたオールフォーワンに対して激怒しながらも、
だがその直後、オールフォーワンが掌から閃光を放ち、その光によって
「ヒャン!!」
オールフォーワンは、
オールフォーワンは、かつては仲間だった二人に対し冷酷な言葉を放った。
「君達はもう要らない。殺処分だ」
そう言ってオールフォーワンは、二人を衝撃波で吹き飛ばすと、槍のようなものを放って二人を串刺しにした。
オールフォーワンがそのまま自分をおちょくった心操の“個性”を奪いに行こうとすると、エンデヴァーとホークスが全力でそれを阻止した。
「「ぬ゛ぉ゛お゛ぉ゛お゛お゛!!!」」
エンデヴァーはありったけの炎を浴びせてオールフォーワンを焼き、ホークスはオールフォーワンが放った攻撃を全て羽根で撃ち落とした。
だが『無効』の“個性”を発動しているオールフォーワンは、高温の炎に焼かれながらも平然としていた。
「若いっていいねぇ。さっきの火力を喰らってもほら、この通りだ」
そう言ってオールフォーワンは、全身から鋲を伸ばした。
次の瞬間、エンデヴァーとホークスは、オールフォーワンが伸ばした鋲で串刺しにされる。
「
そう言ってオールフォーワンは、落ちていく二人を見下ろした。
最前線で戦っていた二人を倒したオールフォーワンは、残ったヒーロー達の方を振り向く。
「さて…」
オールフォーワンは、片腕を振るうと衝撃波で残っていたヒーロー達を全員吹き飛ばした。
オールフォーワンの一撃によって、ほとんどのヒーローは呆気なく吹き飛ばされた。
だが心操の近くにいた切島だけは、心操を庇う形で『
「切島…!!」
「あ…ぐぅ……! 倒すんだろ、あいつを…!!」
切島は、オールフォーワンの衝撃波を喰らってボロボロになっており、そのまま前のめりに倒れて意識を失った。
その場に立っているヒーローが心操ただ一人になると、オールフォーワンは薄ら笑いを浮かべながら心操を煽る。
「あれだけ大口を叩いておいてこのザマか。哀しいね」
オールフォーワンが心操に殺気を向けながら煽ると、心操は冷や汗を流しガクガクと震えながらも腰に差したナイフを抜いてオールフォーワンに立ち向かった。
心操は、“個性”を使って倒れているヒーローや
「っ…お前はまだ…!! 誰一人殺せちゃいないだろうが!!」
心操は、全力で叫びながら捕縛武器を操り、ナイフを持った右腕を振りかぶった。
だがその直後、オールフォーワンが心操の横を通り過ぎ、心操の脇腹を斬り裂いた。
「うん、そうだね。君がその記念すべき一人目だ」
「……がはっ…」
「
オールフォーワンは、腹を斬り裂かれて意識が遠のいていく心操を見下しながら煽った。
そして心操の頭を掴むと、そのまま“個性”を奪おうとする。
「君の“個性”を貰うよ。じゃあね、哀れな
オールフォーワンは、心操の“個性”を奪おうとしたが、“個性”が発動せず奪えなかった。
オールフォーワンが鬱陶しそうに視線を逸らした先には、瀕死にもかかわらず“個性”を使ってオールフォーワンを睨んでいる相澤がいた。
「本当に、ヒーローというものは…」
相澤に“個性”を消されて苛つくオールフォーワンだったが、死柄木の人格の制御が奪われかけている事に気がつくと、今は一分一秒が惜しいと考え、じきに死ぬであろう心操の“個性”は諦め死柄木のもとへ向かう事にした。
オールフォーワンは、死柄木の元へ向かう間際、倒れているヒーロー達に向かって捨て台詞を吐いた。
「何も守れなかったな、ヒーロー」
オールフォーワンは、速度を上げながら死柄木の元へと飛んでいく。
『転送』が発動する距離まであと少しのところまで迫った、その時だった。
「よくやった。心操少年、皆…おかげで、間に合った」
オールフォーワンの目の前には、今でも夢に出てくる忌々しい人影が映った。
その人物が目に映ったオールフォーワンは、激しく表情を歪める。
「思い出すよなァ? 長く戦ってきた…死柄木弔の“憎しみ”が、
そこには、力を使い果たしてガリガリの姿で、それでいて巨悪を前にして笑顔を浮かべる男の姿があった。
「私が来た」
オールフォーワンのもとへ駆けつけたオールマイトは、手に持っていたアタッシュケースを開き、中に入っていたサポートアイテムを展開した。
それを見たオールフォーワンは、ずっと殺したいと願っていた宿敵が自ら姿を現した喜びのあまり不気味な笑みを浮かべた。
心操くんのヒーローネームがようやく決まりました。
そして心操くんの“個性”ガチで政治家のおっさんの完全上位互換で草。
自分より強い相手に遭遇しても解除されない分、心操くんの“個性”の方がレベルが高いです。
そして彼が梅干しにやられた事を知ったらひーちゃん魔王化待ったなし。梅干し超逃げて。