数十分前、郡訝山荘。
「これは……」
「何て事…」
多古場での戦いを終えた尾白達は、郡訝へ増援に来ていた。
だが尾白達が来た時には既に全てが終わっており、『巻き戻し』を使ったオールフォーワンによって蹂躙されたヒーロー達は、全員地面に倒れていた。
中には、“個性”を奪われたヒーローや、致命傷を負ったヒーローもいた。
「リューキュウ…レディ…! 頑張ったんだな…!!」
郡訝へ駆けつけてきたクラストは、ボロボロになったリューキュウとMt.レディを見て涙を流していた。
一方でミッドナイトは、重傷のヒーローを『眠り香』で眠らせて鎮静化しつつ、尾白達ヒーロー科の生徒やヒーロー達に指示を出していた。
「全員、重傷者から順に応急処置を! 事態は一刻を争うわ! 早く!」
ミッドナイトが指示を出すと、指示されたヒーロー達は各々の“個性”で郡訝のヒーロー達を救出した。
尾白と砂藤は意識のないヒーロー達を運び、瀬呂はテープを包帯代わりにして重傷者の手当てをした。
「ハァ…ハァ……クソッ………」
オールフォーワンの“個性”で串刺しにされ、奪った“個性”の炎で焼かれたホークスは、霞んだ目でオールフォーワンの去っていった空を眺めていた。
そしてエンデヴァーも、限界まで火力を上げた『プロミネンスバーン』を連発した事で体温の上昇が止まらなくなり、おまけにオールフォーワンに串刺しにされたダメージが祟って立ち上がれなかった。
「俺…は……燈矢を…あの子を見届けるまでは……」
一方、その場にいたA組は、全員一ヶ所に集まって涙を流していた。
そこには、脇腹から大量の血を流し、顔が青白くなり呼吸もおかしくなっている心操がいた。
「ゲホッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
「おい、しっかりしろよ心操!!」
心操が出血性ショックを起こし息も絶え絶えになっていると、切島が涙を流しながら叫ぶ。
峰田は、もぎもぎで心操の傷を塞ぎつつ、涙を流しながら叫んだ。
いくら傷をもぎもぎでくっつけても焼石に水程度にしかならず、心操の脈は小さくなっていく一方だった。
「ざけんじゃねえぞ!! お前、相澤を置いていく気かよ!? 皆を笑顔にするヒーローになるんじゃなかったのかよォ!!」
峰田は、ボロボロと泣きながら心操に向かって叫んだ。
ひと足先に恋人同士となった心操とひなたを僻んでいた峰田だったが、ひなたが自分の過去を打ち明けてから、実は誰よりもひなたと心操の幸せを願っていたのは彼だった。
「人手も時間も何もかもが足りない!!」
「回復系の“個性”は!? 誰か無事な奴いないのか!?」
クラストが尋ねると、ボロボロになりながらも別のヒーローの救助をしていたシンリンカムイが苦しそうな表情を浮かべながら言った。
「……郡訝の方はいません。ただでさえ貴重な回復“個性”をオールフォーワンの養分にされるのを避ける為に、回復系の人員を極力減らしてましたから」
「そんな……」
シンリンカムイが言うと、尾白は絶望の表情を浮かべる。
するとその時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「そのまま固定してて、峰田。あと傷口には極力触らないで。雑菌に触れさせたくない」
ちょうど郡訝に到着したひなたが、心操を手当てしていたA組に声をかける。
突然のひなたの登場に、A組は僅かに目を見開く。
「ひなちゃん……」
「大丈夫。絶対助かるし、何が何でも助けるから」
そう言ってひなたが心操に歩み寄ると、後ろからMr.コンプレス、トゥワイス、マグネ、そして死穢八斎會若頭の治崎が現れる。
マグネは、かつて敵だったヒーローに対しフランクに話しかけた。
「おひさ〜♪」
フランクに歩み寄る連合とは対照的に、ヒーロー達は連合が何か企んでいるのではないかと警戒していた。
「なっ…
「…と、治崎!! 何でここに!?」
ヒーロー達が連合と治崎を警戒して攻撃態勢を取ると、ひなたは手を挙げて攻撃態勢をやめさせた。
「安心してください。今は味方です。皆の回復の為に来てもらいました」
ひなたが言うと、トゥワイスは早速分身を増やす。
「人手が足りねえんだろ。俺に任せとけ「嫌だね「ボク怖いここどこ「任せとけ! 「俺達がいりゃあ百人力だ!」
トゥワイスの分身は、致命傷を負ったヒーローのもとへ駆けつけ、輸血用の分身を作ったり応急処置をしたりと役割分担をしてヒーロー達を治していった。
Mr.コンプレスは、“個性”で圧縮したビー玉を大量にばら撒き、“個性”を解除した。
すると大量の医療機器や薬が出現した。
「病院から必要そうなもん一通り貰ってきたけど、これで足りるかい?」
マグネは、“個性”でヒーロー達に磁力を付与し、負傷の度合いごとに分けて運んだ。
「ったく、いい大人が揃いも揃ってだらしないわね!」
一方で治崎は、一番重傷の心操のもとへ歩み寄ると、心操を手当てしていたA組に声をかける。
「おい、そいつ診せろ。俺が
そう言って治崎は、“個性”を使って手袋を塵に変え、心操に直接触れた。
すると心操の傷はみるみるうちに塞がっていき、数秒もしないうちに完治した。
トゥワイスは、重傷を負い虫の息のホークスの元へも分身を増やすと、無言でホークスを見下ろす。
トゥワイスの分身のうちの一体と目が合ったホークスは、ゆっくりと顔を上げた。
「分倍河原……」
「ホークス…てめぇなァにやってんだよ…」
ホークスが口を開くと、トゥワイスは聞こえるか聞こえないかくらいの声でポツリと呟く。
◇◇◇
数日前。
超常解放戦線の幹部7人は、拘置所に収監されていた。
連合のメンバーを逃がすために重傷を負ったMr.コンプレスに関しては、
するとその時、警官がトゥワイスの収監されている独房の前に立って口を開く。
「分倍河原。来客だ。出ろ」
警官がトゥワイスに声をかけると、トゥワイスは顔を上げる。
トゥワイスが連れられた先の面会室には、ホークスがいた。
トゥワイスは、警官に見張られながらパイプ椅子に掛けると、ボソボソと聞こえるか聞こえないかくらいの声でホークスに尋ねた。
解放戦線に入り込んで二重スパイをしていたホークスを恨んでいたトゥワイスだったが、もはやホークスに恨みをぶつける気力すらなくなっていた。
「…今更何の用だ」
トゥワイスが虚な目をホークスに向けながら言うと、ホークスはトゥワイスに本題を話す。
「単刀直入に言います。分倍河原、最終決戦であなたの力を借りたい」
ホークスは、トゥワイスに最終決戦で力を貸すよう頼み込んだ。
だがトゥワイスは、ホークスの要求を飲もうとはしなかった。
「何を言い出すかと思ったらよぉ…てめぇ自分が何したのか忘れたのか? 俺の仲間は連合の皆だけだ。失せろ」
「今死柄木がオールフォーワンに乗っ取られようとしているんだぞ!!」
トゥワイスがホークスに帰るよう言うと、ホークスは突然声を荒げた。
ホークスの発言を聞いたトゥワイスは、顔を上げてホークスの顔を見た。
「………あ?」
「このままだと、死柄木の肉体はオールフォーワンに完全に乗っ取られて『死柄木弔』という人間はこの世から消えてなくなる。そうなれば、お前の居場所だった
ホークスは、本来なら
仲間想いのトゥワイスなら、死柄木が乗っ取られようとしている事態に黙っていないだろうと思ったのだ。
するとトゥワイスは、ホークスを睨みながら尋ねる。
一度ホークスに騙されたトゥワイスは、二度もホークスの言葉を鵜呑みにする程馬鹿ではなかった。
「…その話、嘘じゃねえだろうな」
「紛れもない事実だ。あいつは、道を踏み外した人間の心の弱みにつけ込んで、言葉巧みに操っているだけだ。このままオールフォーワンの好きにさせれば、ヒーローも
ホークスが言うと、トゥワイスは項垂れる。
オールフォーワンがどういった人間なのかは、死柄木から聞かされていた。
魔王として君臨しようとしているオールフォーワンであれば、死柄木を乗っ取ろうなどと考えてもおかしくはないと思い、ホークスの言葉が嘘ではないと確信したのだ。
だがトゥワイスは、それを聞いてもなお重い腰を上げようとはしなかった。
「俺は…俺に居場所をくれたあいつらの為に生きたかった。てめぇの話が本当だったとして、死柄木がどこの誰かもわかんねえ奴に乗っ取られて、皆が搾取されんの
「ああ、言い忘れてましたがあの弾、“個性”を壊す効果なんてありませんから」
「…は?」
ホークスがしれっと言うと、トゥワイスは顔を上げて目を見開く。
もう隠す必要もないと考えたホークスは、本当の事を話した。
「あれは一時的に“個性”因子を弛緩させて“個性”を封じる薬です。真面目にリハビリすりゃあ、数日で元に戻るそうです」
「てめぇ……」
「すいません、あの時は嘘つきました。ああでも言わなきゃあなたは諦めてくれないと思ったんで。薬を作るのに協力してくれた子が言ってた言葉なんですが、実は続きがあったんです」
ホークスは、“個性”抹消弾を造る際にひなたが言っていた言葉を、トゥワイスに伝えた。
その言葉は、トゥワイスにとっては意外なものだった。
──僕の血で、“個性”を壊すような薬は作らないでほしいんです。僕は、
「俺は、あの子の気持ちを尊重する事にしました。俺だって、個人的にはあなたの事結構好きでしたし」
「あの状況で、何でそんな事…」
「“人”を救う為です」
自分が殺されるかもしれなかった状況で何故ハッタリを使ってまで
『“人”を救う為』、その言葉はホークスがトゥワイスを撃った時にも言った言葉だが、意味が全く違った。
トゥワイスは、ひなたの“個性”を使った弾で撃たれた事で“個性”を封じられ投獄されたが、結果的にはそのおかげでオールフォーワンの支配から逃れられたのだ。
オールフォーワンに乗っ取られようとしている死柄木、世界を壊す為だけに自らの命を放棄しようとしている荼毘や零、ヒーローへの憎悪に駆られて暴走しているトガ、そしてオールフォーワンの甘言に乗っかって精神を破壊されたスピナーに比べれば、早めに捕まったトゥワイスはまだマシな方だった。
ホークスが言っていた救ける“人”の中には自分達も含まれていたのだと、トゥワイスは今になって気がついた。
ホークスが要件を伝え終わると、ちょうど面会時間が終わり、ホークスは椅子から立ち上がる。
「それじゃ、時間なんで俺はこれで。良い返事を待ってます」
「待て」
ホークスが立ち上がったその時、トゥワイスが声をかけた。
「作戦決行日はいつだ。教えろ」
トゥワイスは、ホークスに作戦の詳細を尋ねた。
そして元
元異能解放軍のリ・デストロは、作戦への参加を拒否した。
キュリオス、トランペット、外典の3名に関しても、リ・デストロが拒否した事を理由に作戦へは参加しなかった。
結局、作戦に参加する事になったのは、拘置所に収監されていた元
「俺こいつと一緒かよ。俺嫌いなんだよね」
「俺の方こそ願い下げだ」
互いに因縁があるMr.コンプレスと治崎は、互いに睨み合っていた。
その様子を見てひなたは呆れつつ、4人に尋ねる。
「じゃああんた達、オールフォーワンの事好き?」
「「「「嫌いだ(よ)!!」」」」
ひなたが尋ねると、4人は一斉に答えた。
ひなたはそれを見て、腕を組んだままうんうんと頷く。
「なら皆目的は同じだね。一緒にあの梅干し面をギャフンと言わせてやろう!」
◇◇◇
そして現在。
4人を乗せたひなたは、オールフォーワンの方へ全速力で駆けつけていた。
そしてクラスト、瀬呂、尾白、砂藤の4人も、グラントリノに抱えられて全速力で駆けつけた。
ボロボロになったヒーロー達、特に相澤と心操の惨状を見てから明らかに雰囲気が変わったひなたに対し、Mr.コンプレスが声をかける。
「嬢ちゃん」
「何も言うな。僕ァ今すこぶる冷静だから」
あくまで平静を装うひなただったが、父親と恋人を殺されかけた怒りはそう簡単に収まるものではなく、ひなたは額に青筋を浮かべ引き裂けそうなほど口角を吊り上げながらオールフォーワンを睨んでいた。
Mr.コンプレスは、ある程度オールフォーワンに接近すると、オールフォーワン目掛けてビー玉を何個か投げつけた。
「そろそろかな…行ってこい、トゥワイス!!」
Mr.コンプレスがビー玉を投げつけ、空中で“個性”を解除すると、空中にトゥワイスの分身が現れる。
トゥワイスの分身は、解放された瞬間に自ら分身を生み出し、あっという間に何百人ものトゥワイスが生み出された。
マグネは、トゥワイスの分身に磁力を付与し、オールフォーワン目掛けて一直線に飛ばした。
「「「「「どっけ邪魔だコラァアアアアア!!!」」」」」
トゥワイス軍団は、オールフォーワンに飛びかかり、圧倒的な数の暴力によってオールフォーワンからオールマイトを引き剥がした。
そして、ひなたや
「頼んだ!!」
「頼まれた!!」
瀬呂にオールマイトを託されたひなたは、オールマイトを引き上げながら返事をした。
ひなたがオールマイトを引き上げると同時に、クラストがひなた達を守るように盾を展開した。
「クラスト!」
「オールマイト…何という姿に…! 何故私はもっと早く駆けつけなんだ…!!」
ひなたがオールマイトを引き上げると、クラストはひなた達を盾で守りながら涙を流す。
自分を裏切ってオールマイトを助けた連合に対し、オールフォーワンは殺意を剥き出しにして尋ねる。
「貴様ら…一体何の真似だ」
「うるせぇよ。死柄木を乗っ取ろうとして、スピナーをぶっ壊して、零と荼毘を『出来損ない』だの『失敗作』だの馬鹿にして、そんな奴に俺がついていくと思うか?」
オールフォーワンが尋ねると、トゥワイスも怒りを剥き出しにしながら言った。
トゥワイスは、ヒーロー達の通信を聴いて、ホークスの言葉通りオールフォーワンが死柄木を乗っ取ろうとしている事、スピナーがオールフォーワンの手で精神を破壊された事、そしてオールフォーワンが荼毘と零を取るに足らない失敗作だと見下していた事、全て知った。
トゥワイスは、仲間を弄んだオールフォーワンに怒りを覚え、『
「俺ァてめぇの顔見てっとすげぇムカつくんだよ!! よって、今からてめぇをぶん殴る!! 以上!!」
トゥワイスは、自分の分身を増やし続けながら叫んだ。
そしてMr.コンプレスとマグネも、オールフォーワンに向かって言い放つ。
「そういう事。悪いけど、俺もそこまで馬鹿じゃねえからよ。手を貸す相手は選ぶようにしてんのよ」
「生憎私達は、あんたの下につく気はないの。私達は私達の好きなように生きるわ!!」
Mr.コンプレスは圧縮したトゥワイスの分身や武器を投げ、マグネはオールフォーワンに磁力を与えて引き寄せた。
すると瀬呂は、引き寄せられたオールフォーワンにテープを巻き付ける。
「強度最大…『テープショット・グングニル』!!」
瀬呂は、最大限強度を引き上げたテープを射出し、オールフォーワンに巻きつけて一気に引き寄せた。
するとグラントリノは、オールフォーワンの顔面に蹴りを浴びせた。
「ふんっ!!」
クラスト、砂藤、尾白の三人は、瀬呂に引き寄せられグラントリノに蹴られ無防備になったオールフォーワン目掛けて一斉に攻撃を浴びせる。
「『シュートシールド』!!」
「『シュガースクリューブロー』!!」
「『尾空嵐舞』!!」
三人は、瀬呂にテープで巻きつけられて隙ができたオールフォーワンに、最大威力の攻撃を浴びせた。
トゥワイスも、『
だがオールフォーワンは、傷を負うどころか若返る事すらなく、衝撃波を放ってトゥワイスの分身や瀬呂達ををまとめて吹き飛ばした。
「「「「俺達ィイイイイ!!!!」」」」
まとめて分身を吹き飛ばされたトゥワイスは、声を揃えて叫ぶ。
「治崎!」
「今やってる!!」
ひなたが治崎に呼びかけると、治崎はオールマイトに“個性”を発動する。
治崎は、オールマイトの身体を一度『分解』し、『修復』で元の状態を再現する事で蘇生した。
奇しくも、ナイトアイの『オールマイトが
一方でオールフォーワンは、死柄木に“個性”を譲渡させまいと攻撃を続ける瀬呂達にゴミを見るような目を向けると、再び衝撃波を放って吹き飛ばした。
「羽虫が」
オールフォーワンが衝撃波を放つと、クラストのシールドも粉々に砕け、瀬呂達も吹き飛ばされた。
無慈悲な一撃によってトゥワイスの分身は完全に全て消えてなくなり、Mr.コンプレスとマグネも衝撃波に巻き込まれる。
Mr.コンプレスは、意識を失う寸前、死柄木の事を思い浮かべていた。
──死柄木、俺ァ俺の好きなようにするからよ
──だからお前も、お前の好きなように生きろよ
一方で死柄木は、目の前の人物を見て鬱陶しそうな表情を浮かべる。
そこには、先程大規模攻撃に巻き込まれて意識を失ったはずの爆豪がいた。
爆豪の姿を見た死柄木は、先程爆豪に与えられた傷が痛み、忌々しそうに表情を歪める。
爆豪は、全身の汗を爆破させて空中に留まりながら、死柄木目掛けて爆破を放った。
死柄木は、爆豪の爆破をいなしつつ、不機嫌そうに呟いた。
「またお前か」
「かっちゃん、何で…!」
「うるせえ!! 何でもクソもあるか!! てめぇクソダセェラスボスに時間かかりすぎなんだよ!!」
突然の爆豪の登場に緑谷が驚いていると、爆豪はBOMB!! と両手を爆発させながら吼えた。
爆豪は、死柄木にやられた傷が開き、ブシュッと血を噴きながらも、死柄木に爆破を浴びせた。
「今、
そう言って爆豪は、死柄木の顔面目掛けて爆破を浴びせた。
死柄木を地面に触れさせないよう、爆破で死柄木を押さえ続けた。
緑谷は、爆豪が死柄木を止めている間に『変速』の反動で呼吸の止まった細胞を休ませ、細胞の呼吸が済んだタイミングで死柄木に攻撃を仕掛けた。
だが死柄木は、爆豪から受けたダメージを『超再生』で回復すると、爆豪に肘打ちを放って衝撃波で爆豪を吹き飛ばした。
「がはっ……!!」
「かっちゃん!! ぐっ!!」
血反吐を吐きながら地面をバウンドする爆豪を見て、緑谷は目を見開いて叫ぶが、死柄木は緑谷の意識が自分から逸れた隙を突いて衝撃波を浴びせた。
死柄木は、地面に蹲って血を吐きのたうち回っている爆豪を見て、鼻で笑いながら言い放つ。
「そのショボい“個性”でよくやったよ、爆豪勝己。でもな、いい加減現実を見なきゃなぁ。『ワンフォーオール』や『共鳴』の足元にも及ばない、何もかも中途半端なお前がここに来た事自体、間違いだったんだよ」
「ガハッ、ゲホッ……!」
「肺に刺さるように肋骨を折った。“個性”を組み合わせてそういう器用な事もできるようになったんだ」
「ク…ソ、がぁ…!!」
「そのままだと苦しいだろ。今楽にしてやるよ」
そう言って死柄木が爆豪に触れて『崩壊』させようとした、その時だった。
突然、死柄木の身体がドクン、と大きく波打つ。
「…『現実見ろ』だァ? その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
死柄木の身体の異変を察知した爆豪は、血を吐きながらも立ち上がり、してやったりと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「俺ァ汗を揮発させる事もできンだよ。揮発した汗は、一定の濃度で空気中に混ざる。てめぇは空気中に混ざった汗を吸収し続けた。つまりよぉ…どういう事かわかんだろ?」
爆豪がそう言った直後、死柄木は体内を爆破され、身体の内側からボボボボッと何度も爆発音を立て死柄木は大ダメージを負う。
死柄木は『超再生』で再生させようとするが、全身を爆弾に変えられているせいで再生させた側から爆発していった。
爆豪は、口から垂れた血を拭いながら、ニィッと笑みを深くしていた。
「『
爆豪が死柄木に一矢報いると、死柄木は内部破壊によってとうとう地に膝をついた。
死柄木に大ダメージを与えた爆豪は、緑谷に声をかける。
「デク!! 今だ!!」
「うん!!」
爆豪が叫ぶと、緑谷は死柄木に攻撃を仕掛けようとする。
だがその時、死柄木の身体がブクっと膨れ上がり、大量の血と肉片を撒き散らしながら爆散した。
そこには、全身血と肉塊まみれになりながら、不気味な笑みを浮かべる死柄木がいた。
流石の爆豪も、死柄木の奇行に思わず目を見開く。
「あいつ…! 前の身体を捨てやがった…!」
死柄木は、再生したばかりの頭をボリボリと掻きむしりながら立ち上がる。
「ったく……全身爆弾に変えるとか誰が想像できんだよ…おかげで
「てめぇ……」
「爆豪…お前を見くびるのはもうやめだ。お前と俺はもう“ヒーロー”と“
そう言って死柄木は、爆豪に対し不気味な目を向ける。
次の瞬間、死柄木、緑谷、爆豪の三人による目に留まらぬ空中戦が繰り広げられた。
オールマイトを凌ぐパワーとスピードで動き回り、尚且つ複数の“個性”を無駄なく使いこなしてくる死柄木に対し、緑谷と爆豪は何とか膠着状態に持ち込んでいた。
死柄木が爆豪目掛けて手を伸ばしてくると、爆豪は空中で身を翻して回避した。
「チッ…!!」
死柄木の攻撃を回避した爆豪だったが、籠手に死柄木の指先が掠った。
すると爆豪は、その瞬間に籠手を爆破し、『崩壊』が伝わるのを防いだ。
「っらァ!!」
爆豪は、死柄木の『崩壊』を紙一重で防いでみせた。
するとその直後、死柄木は、緑谷が超速で急接近しているのを感知する。
緑谷の接近を感知した死柄木は、黒い槍状の“個性”と電磁波の“個性”と衝撃波の“個性”を同時に使い、緑谷を返り討ちにしようとした。
だが緑谷は、『浮遊』と『変速』で軌道を変える事で死柄木の攻撃を回避していた。
このままでは埒があかないと判断した死柄木は、まず爆豪の方から始末しようと考える。
死柄木は、脇腹から出した“個性”を使い、音速を超えるスピードで突きを放つ。
すると爆豪は、先程喰らった腹部の負傷が悪化し、目を見開いて血を吐いた。
「げほぁ…!!」
先程の傷が悪化した爆豪は、反応が著しく鈍る。
すると死柄木は、その隙に爆豪の顔面に触れようとした。
緑谷は死柄木の全身に黒鞭を巻きつけてそれを阻止しようとしたが、死柄木は狂ったような笑い声を上げながら爆走し、まるで止まる気配がなかった。
そして死柄木がニィッと笑みを浮かべながら爆豪の顔面に手を伸ばした、その瞬間だった。
「『
突然、どこからか現れたミルコが、死柄木の脳天に蹴りを喰らわせて地面に叩きつけた。
いきなり不意打ちを喰らった死柄木は、目を見開いて混乱する。
死柄木は、周囲数百m以内にいる人間の生体電気を読み取って位置を感知するという応用技が使えるようになっていた。
にもかかわらず、蹴りを喰らうまでミルコの接近を許してしまったのだ。
ミルコが死柄木に不意打ちを喰らわせるのに使ったのは、高速移動で片付けられる類の手段ではなかった。
死柄木が一つの可能性を思い浮かべて振り向くと、そこには黒いワープゲートを出現させている物間がいた。
「フィーフィフィフィフィ…全部壊すとか言っといて、ざまぁないね…」
物間は、死柄木の攻撃によってボロボロになりながらも、笑顔を浮かべながら死柄木を煽った。
その後ろには、ワープゲートを通って現れたベストジーニスト達がいた。
あの後、物間は間一髪のところで意識を取り戻し、カートリッジを消費して『抹消』に設定していた“個性”を再び『ワープ』に切り替え、緑谷のもとへ増援を送る為にワープゲートを開いたのだ。
「さっきまで動けなかった筈なのに、ここに来た途端、何だか力が湧いてくるの…! 不思議!」
先程死柄木が放った衝撃波によって気を失っていたはずの波動は、グッと拳を握りしめながら笑みを浮かべていた。
その場にいたヒーロー達の周りには、淡い青紫色の光の粒が舞っていた。
郡訝でひなたに伝染した心操の“個性”が緑谷に伝染し、そして緑谷からその場にいたヒーローに伝染したのだ。
物間の『ワープ』でやってきたヒーロー達を見て、死柄木は呆れたように呟く。
「ったく、オールスターかよ」
死柄木が不機嫌そうに呟く中、ベストジーニストはコスチュームの繊維を操りながら死柄木に向かって話しかける。
「全て壊す、か…やりたければやってみろ。貴様が立ち上がる限り、
雄英に送り込まれたヒーロー達は、死柄木の破壊衝動を全て受け止める覚悟で、全員死柄木の目の前に立ちはだかった。
死をも恐れず立ち向かうヒーロー達を見て、死柄木は目を細めて不気味な笑みを浮かべた。
「そうかよ、じゃあ死ね」
【お知らせ】次回か次々回に決着がつきます。決着の次の回を最終話とする予定です。
捏造技紹介
『テープショット・グングニル』
瀬呂の本作オリジナル技。
最大強度のテープを一本にまとめ、その状態で相手を巻きつけて引き寄せる技。
『シュガースクリューブロー』
砂藤の本作オリジナル技。
シュガードープで強化した状態でコークスクリューブローを放つ。
『尾空嵐舞』
尾白の本作オリジナル技。
尾空旋舞の上位技。
身体への負担が大きくなる代わりに、技の強度が増す。
『
爆豪の本作オリジナル技。
技の読み方は、『Internal Combustion Bomb』の略。
身体中の汗を気化させ、それを吸収させる事で相手の体内で爆破を起こす奥の手。
下手に使うと冗談抜きで相手が死にかねないので、自己回復能力持ちの相手にしか使わない事にしている。