抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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評価が上がっとる…!
うれしい
面白いと思っていただけましたら高評価(特に9・10あたり)、お気に入り、感想等よろしくお願いします。
高評価とお気に入りと感想はいくら貰っても嬉しいですからね、ええ。


騎馬戦決着

 轟チームと、轟チームと緑谷チームの鉢巻を狙う他のチーム達が一斉に緑谷達を狙ってきた。

 

「時間はもう半分! 逃げ切るよ!」

 

「はい!」

 

 緑谷は、騎馬3人に指示を出す。

 すると影山が“個性”を発動する準備をする。

 

「飯田、前進!」

 

「ああ!」

 

 轟が飯田に指示を出すと、飯田が前に出る。

 

「八百万、ガードと伝導を準備」

 

「ええ!」

 

 轟が八百万に指示を出すと、八百万は“個性”でガードと伝導を創造し始める。

 

「上鳴は…」

 

「いいよわかってる!! しっかり防げよ…無差別放電130万V!!!」

 

 轟が指示をしようとすると、上鳴はありったけの電流を放つ。

 すると、轟チームの後ろにいた他のチームが電流で痺れる。

 

 

 

 上鳴電気

 “個性”『帯電』

 W数が許容オーバーすると脳がショートし著しくアホになるぞ!! 

 

 八百万百

 “個性”『創造』

 生物以外なら何でも生み出せる!! 

 それを可能にするのは分子構造まで把握する彼女の知識量だ! 

 

 

 

「残り6分弱。後は引かねぇ。悪いが我慢しろ」

 

 そう言って轟は、伝導を伝って地面を凍らせていき他のチームの足を凍らせる。

 

「ぐっ!!?」

 

『何だ何した!? 群がる騎馬を轟一蹴!』

 

『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた…流石というか…障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな』

 

『ナイス解説!!』

 

 いきなり他の騎馬が凍らされたのでプレゼントマイクが驚いていると、相澤が冷静に分析して解説した。

 だが…

 

「あれ!? うっそ待って何アレ!?」

 

 上鳴は、緑谷チームの方を見てギョッとする。

 緑谷チームは上鳴の電撃を受けておらず、轟の氷結が緑谷チームにまで届いていなかった。

 

『緑谷チーム、轟チームの攻撃を完全防御! つーかどうなってんだこれ!?』

 

「影山幽華。あいつの“個性”だ。“個性”は『否定』。目で見た無生物を消す事ができる。電撃や氷結も然りだ」

 

 プレゼントマイクが驚いた様子で実況していると、相澤がマイクで拾えないくらいの声量で言った。

 相澤の手元には普通科の生徒名簿があり、影山についての詳細が書かれていた。

 するとプレゼントマイクがズレたサングラスを直しながら驚く。

 

「マジかよ…ハイパーチートじゃねぇか」

 

「何を今更…こいつ、入試でやらかして合格取り消された奴だぞ」

 

 相澤が呆れながら言うと、プレゼントマイクがキョトンとした表情を浮かべる。

 

「え…? そうだっけ…?」

 

「お前も覚えてないのかよ」

 

 入試の試験官を務めたプレゼントマイクですら入試で問題を起こした影山の事を覚えていなかったため、相澤は呆れてため息をついていた。

 

「ちっ、避けられたか…」

 

 放電からの氷結をあっさり避けられたため、轟は舌打ちをする。

 すると緑谷が影山に話しかける。

 

「影山さん! 君の“個性”の弱点、誰にも知られてないよね!?」

 

「え、ええ…まあ…あなた達以外には話してないので」

 

「………知られてないなら、牽制にはなる…! 大丈夫…! 何としても1000万ポイントは持ち続ける!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃爆豪は、物間に爆破されていた。

 

「ははぁ…へえ! すごい! 良い“個性”だね!」

 

 物間が爆豪と同じ『爆破』を繰り出すと、爆豪は驚いていた。

 

「俺の…!!」

 

「爆豪おめーもダダ被りか!!」

 

「くそが!!!」

 

 爆豪は、自分の“個性”を使われた事に苛ついて物間を爆破しようとする。

 だが物間は、自分の腕を硬化させて防いでいた。

 

「僕の方が良いけどさ」

 

 物間が切島の“個性”を使うと、切島が声を上げる。

 

「んなああー! 俺の!? また被っ…「違え、こいつ…コピーしやがった」

 

 切島が驚いていると、爆豪が訂正した。

 すると物間が得意になってネタバラシをする。

 

「正解! まぁ、バカでもわかるよね」

 

 

 

 物間寧人

 “個性”『コピー』

 触れた者の“個性”を触れてから5分間は使いたい放題! 

 同時に2つとかは使えないぞ! 

 

 

 

「おわ!」

 

 突然、2チームの間に粘着質の液体が飛んでくる。

 物間が左を見ると、クラスメイトの小大達のチームがいた。

 

「凡戸! 仕掛けてきたな」

 

「物間、あとは逃げ切るだけだ。このポイント数なら確実に4位以内に入る!」

 

 小大達のチームが近づいてくると、左騎馬の男子回原が声をかける。

 粘着質の液体が固まって切島が動けなくなっている間に、物間が逃げる。

 

「固まった! すげえ! 動けねぇ!」

 

「ちょい待ち! 私の“個性”で溶かすから!」

 

「早く! 0ポイントだぞ早く!!」

 

 切島を拘束している物体を芦戸が酸で溶かそうとすると、瀬呂が芦戸を急かす。

 すると物間が去り際に爆豪を煽る。

 

「あ、怒らないでね。煽ったのは君だろ? ホラ…宣誓で何て言ってたっけ…恥ずかしいやつ…えー…まぁいいや、おつかれ!」

 

 すると、爆豪の額にビキビキと青筋が浮いていく。

 

「1位だ…ただの1位じゃねえ、俺がとるのは完全無欠の1位だ…!!」

 

 爆豪は、そう言って怒りを爆発させていく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方その頃、ひなた達のチームはというと。

 

「ねぇ心操くん…これひょっとして僕達ヤバいんじゃなウィ? ☆」

 

「落ち着け青山」

 

 周りを見渡して顔を青くして震えている青山に、心操が声をかけて落ち着かせる。

 1位の鉢巻を諦めて最多本数の鉢巻を持つひなた達のチームから鉢巻を奪って確実に4位以内に入る作戦に切り替えたB組のチームがひなた達を取り囲んでいたのだ。

 

「さっきはよくもやってくれたなァ…! だが、そんなに鉢巻を集めたら集中砲火を喰らうとは考えなかったかァ!? 馬鹿が!」

 

 角取チームの鎌切が苛立った様子で言うと、心操が冷静に煽り返す。

 

「馬鹿はそっちだ。別に集中砲火を喰らっても問題ないからやったんだろうが」

 

「………! なm「乗っちゃダメデース!」

 

 心操の挑発にブチ切れた鎌切が怒鳴り散らそうとすると、騎手の角取が止める。

 心操の挑発に乗った拳藤と塩崎が操られたのを見ていたため、心操の“個性”に気付いていたのだ。

 

「チッ…」

 

(今のでスイッチ入れようと思ったんだけど。流石にもう他の奴等が喰らった手は喰らわないよね)

 

 “個性”のカラクリに気付かれた心操は、若干悔しそうに舌打ちをする。

 

「このママ逃げ切って確実ニ2位通過する気でしょうケド…そうはサセマセーン!」

 

 角取の声を合図に、B組が攻撃を仕掛けようとしてくる。

 するとピクリと反応した心操が口を開く。

 

「は? 逃げ切る? 2位通過? おたくら何甘い事言ってんの?」

 

 心操は、何か考えがある様子で常闇に声をかける。

 

「行くぞ、常闇!」

 

「ああ…!!」

 

 心操が言うと、常闇が頷く。

 するとその直後、B組が一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 だが、ひなた達のチームを襲おうとしたB組に、突然緑色の鞭が飛んでくる。

 

「うぉ!? え、塩崎!?」

 

 B組チームが振り向くと、そこには目を虚ろにした鉄哲チームがいた。

 

「『やれ』」

 

 心操が塩崎に命令すると、塩崎はB組の方へ蔓を伸ばして攻撃する。

 

「あいつ操られてる…!」

 

「これ、かなりマズイのでは!?」

 

「悪いな。このまま逃げ切らせてもらうぜ」

 

 鱗と宍田が驚いていると、心操が笑いながら言った。

 ひなた達のチームは、常闇の黒影(ダークシャドウ)と心操に操られた塩崎の蔓でB組チームを返り討ちにしていく。

 

『緑谷と轟が一騎打ちを繰り広げてる中、相澤チームはリベンジに来たチームを圧倒的な攻防力で薙ぎ払ってんぞ!? さすが相澤が率いるチーム、チキンレース三位通過は伊達じゃな━━━━━い!!』

 

『騎手自身は何もしてないだろ』

 

 プレゼントマイクがどさくさに紛れてひなたを褒めちぎろうとすると、横から相澤がごもっともなツッコミを入れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして、残り時間があと1分まで迫った頃。

 

『残り時間約1分!! 轟、フィールドをサシ仕様にし…そしてあっちゅー間に1000万奪取!! とか思ってたよ5分前までは!! 緑谷なんと、この狭い空間を5分間逃げ切っている!!』

 

 緑谷チームは、氷の壁で囲まれて逃げ場を失っていた。

 だが、狭い空間の中を5分間も逃げ切っていた。

 轟が攻めに行こうとすると、緑谷チームは轟チームの左側に回って轟の攻撃範囲から逃れる。

 すると、飯田が自分達のチーム3人に話しかける。

 

「皆。残り1分弱…この後俺は使えなくなる。頼んだぞ」

 

「飯田?」

 

「しっかり掴まっていろ。奪れよ轟くん!」

 

 飯田がそう叫んだ直後だった。

 

 

 

「トルクオーバー! レシプロバースト!」

 

 

 

 DRRRRRRR!!! 

 

 

 

「「「「!!」」」」

 

 突然飯田が超加速して突っ込んできて、影山が“個性”を発動する暇もないまま轟が通り過ぎざまに緑谷の鉢巻を奪い取った。

 

「………な!?」

 

 緑谷は、あまりの速さに一瞬反応が遅れ、通り過ぎた飯田の方を見ていた。

 

『な━━━━!!? 何が起きた!!? 速っ速━━━!! 飯田、そんな超加速があるんなら予選で見せろよ━━━!!!』

 

「トルクと回転数を無理矢理上げ爆発力を生んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメートにはまだ教えてない裏技さ。言ったろ緑谷くん、君に挑戦すると!!」

 

 飯田は、そう言ってニッと笑ってみせた。

 

『逆転!! 轟が1000万!! そして緑谷、急転直下の0ポイント━━━━━━!!』

 

 飯田が鉢巻を奪うと、プレゼントマイクが実況を挟む。

 笑顔を浮かべる飯田を見た影山は、少し目元が引き攣るが至って冷静だった。

 

(まさかあんな急加速で1000万を奪われるとは…ですがあの程度の急成長なら想定内です。残り時間は約50秒…まだ奪い返せる可能性はゼロではありませんが、正直不安要素が大きいんですよね。一番気味が悪いのが、相澤さんのチーム。少なくとも彼女は、安全に2位通過なんて考える人じゃない。何か裏がある。私の“個性”で盗聴を試みても作戦を全然探れなかったし、何を仕掛けてくるか不透明なのが怖いですね)

 

「どうします、大将?」

 

「突っ込んで!!」

 

「正気ですか?」

 

「ポイントの散り方を把握出来てない! ここしかない!!」

 

 緑谷が指示を出すと、影山が驚いた様子で尋ねる。

 すると緑谷がすぐに返した。

 

「よっしゃ! 取り返そう、デクくん!! 絶対!!」

 

 麗日がそう言うと、緑谷は麗日や発目、そして影山の思いを背負っている事を思い出し気合を入れ直した。

 

「SMAAAAAAASH!!!」

 

 緑谷は、緑色の光を纏って右腕を振りかぶり超パワーを発動しようとする。

 すると轟は、緑谷がオールマイトと一瞬重なり、つい炎を出してしまった。

 

『残り1分を切って現在、轟1000万ポイントを所持!! ガン逃げヤロー緑谷から1位の座をもぎ取ったあ!!! 上位3チームこのまま出揃っちまうか!?』

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃物間は、余裕綽々といった様子で状況を把握していた。

 

「3位か…ちょっと出来過ぎかも。まァキープに専念だ」

 

「客うるせ〜」

 

 すると背後から切島の声が聞こえる。

 

「待てえええ!! 待てって!!」

 

 切島の声を聞いた物間は、切島達が性懲りも無く追ってきたのだと思いため息をつく。

 

「しつこいなあ、その粘着質はヒーロー以前に人として…」

 

 だが…

 

 

 

「勝手すなぁあ爆豪━━━━!!!」

 

 切島が叫ぶと同時に、爆豪が爆破で空を飛んで物間に詰め寄ってくる。

 切島が叫んでいたのは、怒りに身を任せ物間に特攻を仕掛ける爆豪に対してだった。

 

「円場!! ガード!!」

 

「っしゃあ!!」

 

 物間が円場に指示を出すと、円場は息を吹き出して空気の壁を作り爆豪の特攻を防ぐ。

 

「てっ!」

 

「ハハ! 見えねー壁だ! ざまァみろ!」

 

 

 

 円場硬成

 “個性”『空気凝固』

 空気を固めて壁や足場に!! 

 肺活量で大きさが決まるぞ! 

 

 

 

 爆豪が空気の壁にぶつかると、円場がしてやったりといった表情で高笑いする。

 だがその直後、爆豪は空気の壁を殴って破るとそのまま物間の鉢巻を掴んで奪い取った。

 

「取られた!」

 

『爆豪チーム、鉢巻を取り返し3位に!! この終盤で順位が変わりゆく!! 若気の至りだあ!!』

 

 爆豪が自分の鉢巻を取り返した事で順位が逆転し、爆豪チームが3位、物間チームが4位になった。

 

「くそっ…」

 

「大丈夫だ、4位だ! 他の奴等の鉢巻は相澤チームが根こそぎ奪い取ってるから…」

 

「ああ…! この一本死守すればもう確実に…」

 

 円場が悔しがっていると、回原が冷静に現状を説明する。

 そして物間も、自分の鉢巻を握りしめて言った。

 自分の鉢巻を取り返した爆豪は、瀬呂に回収される。

 

「跳ぶ時は言えってば!!」

 

「でも、これで通過は確実…」

 

「まだだ!!!」

 

 切島がそのまま逃げようとすると、爆豪が叫ぶ。

 それを聞いた3人は、思わず呆れ返る。

 

「はあ!?」

 

 瀬呂が呆れて声を漏らすと、爆豪は切島の頭を何度も叩きながら叫ぶ。

 

「完璧な1位なんだよ、取るのは!! さっきの俺単騎じゃふん張り効かねえ、行け!! あいつらのポイントも奪い取って、1000万へ行く!!」

 

 爆豪が言うと、3人は驚いて目を見開きつつも呆れたような笑みを浮かべて頷く。

 

「ったく!」

 

「しょうゆ顔! テープ!!」

 

「瀬呂な! っと!!」

 

 爆豪が指示を出すと、瀬呂が肘からテープを伸ばす。

 だが、テープは物間チームにわずかに届かず手前の地面に貼り付いた。

 

「外れだ」

 

 すると、すかさず爆豪が芦戸に指示を出す。

 

「黒目! 進行方向に弱め溶解液!」

 

「あ・し・ど・み・な!」

 

 爆豪に指示された芦戸は、地面に酸をばら撒く。

 すると爆豪は両手を後ろに構え、爆破の推進力で一気に物間チームに詰め寄った。

 円場が空気で壁を作って防ごうとするが、爆豪は空気の壁を爆破で破って物間の鉢巻を掠め取った。

 

『爆豪!! 容赦なし━━━!!! やるなら徹底! 彼はアレだな、完璧主義だな!! さぁさぁ時間ももうわずか!!』

 

「次!! デクと轟んとこだ!!」

 

 爆豪チームは、全速力で緑谷チームと轟チームのもとへ向かった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方その頃、緑谷と轟は。

 

「あああああああああ!!」

 

 緑谷は、緑色の光を纏い、右腕を振りかぶり超パワーを発動しようとする。

 すると轟は、緑谷がオールマイトと一瞬重なり、つい炎を出してしまった。

 その直後、緑谷は轟の目の前で右腕を横に振るって轟を崩しにかかる。

 そしてその一瞬の隙をついて、鉢巻を奪い取った。

 

「取った!! 取ったあああ!!」

 

 轟から鉢巻を奪い返した緑谷は大声で叫ぶ。

 

『残り17秒!! こちらも怒りの奪還!!』

 

 だが…

 

「待って下さい! その鉢巻…違いませんか!?」

 

 発目がそう言うので手元の鉢巻を見ると、鉢巻には『610』と書かれていた。

 緑谷が奪い取ったのは、元々轟が持っていた鉢巻だった。

 

「…やられた!!」

 

 一方、何とか1千万ポイントを守り切った轟は安堵からかため息をついていた。

 

「轟くん、しっかりしたまえ!! 危なかったぞ!」

 

「万が一に備えてハチマキの位置は変えてますわ! 甘いですわ緑谷さん!」

 

 飯田が轟に注意し、八百万が緑谷に言い放つ。

 

『そろそろ時間だ! カウント行くぜ! エヴィバディセイヘイ!』

 

「くっ…!」

 

「それ寄越せ半分野郎ァアアアア!!!」

 

 プレゼントマイクがカウントダウンを始めると同時に緑谷、そして爆破で空を飛んできた爆豪が轟に迫り来る。

 すると、その時だった。

 

「行け、黒影(ダークシャドウ)!!」

 

「アイヨ!」

 

「「「!?」」」

 

 突然、巨大化した黒影(ダークシャドウ)が3人の方へ迫ってくる。

 今の今までひなた達のチームが1千万を狙ってきた事は一度もなかったため、完全に虚を突かれた3人は目を見開いて驚く。

 

「邪魔だどけコラァ!!」

 

「八百万!」

 

 爆豪は爆破で、轟は自分の氷と八百万の創造した武器で黒影(ダークシャドウ)を退けようとする。

 だがその時、轟、爆豪、緑谷の目には、黒影(ダークシャドウ)の口の中で蠢く見慣れた触角が映った。

 そしてその瞬間だった。

 

 

 

 

 

『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!』

 

 

 

 

 

「ぐっ…!?」

 

「クソが…!」

 

「うぁあっ……!!」

 

 黒影(ダークシャドウ)が口を開いた瞬間、ひなたが黒影(ダークシャドウ)の中から飛び出し、爆音攻撃が炸裂した。

 すると爆豪の掌の爆発が消え、轟の氷と八百万の武器は粉々に砕け散り、影山は“無個性”化によって『否定』出来なくなる。

 3チームの虚を突き、3チームを完全に無力化した、その直後だった。

 

「僕の出番☆」

 

 ひなたと背中合わせに固定されていた青山がネビルレーザーを放つ。

 ひなたと青山はひなたの服で背中合わせに縛り付けられており、ひなたは青山のレーザーによって猛スピードで空中を一直線に進んでいく。

 

「ぬぅおりゃああああああああ!!!」

 

 そして、青山のレーザーで通り過ぎざまに器用に右手で轟の鉢巻を、左手で爆豪の鉢巻2本を掴み、そして口で緑谷の鉢巻を咥えてそのまま通り過ぎていく。

 “個性”が一瞬使えなくなった爆豪が地面に落ちそうになると瀬呂が慌ててテープを貼り直して回収し、ひなたも青山のレーザーが切れてそのまま二人一緒に地面に落ちそうになる。

 するとすかさず黒影(ダークシャドウ)が二人をキャッチした。

 ひなたは、口に咥えた610ポイントの鉢巻を右手に握り直すと、2本ずつ鉢巻を握った両手を上に掲げて叫ぶ。

 

 

 

「取ったど━━━━━━━!!!!」

 

 

 

 ひなたが叫ぶと、ひなたのチームの3人以外の全員が目を見開く。

 すると、常闇の後ろにいた心操が他のチームに鋭い目を向けながら冷静に言い放つ。

 

「安全に2位通過? 馬ァ鹿、俺達が狙ってたのは初めからただ一つ。全チームのポイントの強奪、絶対的な1位だよ」

 

 その言葉に同調するように常闇もフンッと笑い、ひなたもふんすと鼻を鳴らす。

 プレゼントマイクは、目の前の信じがたい光景に驚くあまりエネル顔のまま言葉を失っていた。

 

『や………やりやがったぁああ━━━━━━ぁあああ!!!! イレイザァア!! おまっ……お前、ホントどんな教育してやがんだ!? 1ーA相澤、他のチームの鉢巻全部…奪ったぁあああ━━━━━━!!!』

 

『マジかよ…』

 

『そしてここでTIME UP!! 第二競技しゅーりょー!!』

 

 騎馬戦は、ひなたのチームが他のチームの鉢巻を全て奪い取り圧倒的な一位で幕を閉じた。

 エネル顔をしているプレゼントマイクの隣に座っていた相澤も、目を大きく見開いて驚いていた。

 自分の娘が圧倒的に強いのは知っていたが、まさかここまでやるとは思わなかったからだ。

 

『しっかしあいつら、何しやがった!?』

 

『…終盤1分間、相澤がブースト役の青山を背中合わせで固定した状態で黒影(ダークシャドウ)の中にずっと隠れてたんだ。そして4本の鉢巻が一箇所に集まる最後のカウントダウンまで待って、黒影(ダークシャドウ)で奇襲を仕掛けて全員の“個性”を一斉破壊し、青山のレーザーを推進力に、通りすぎざまに一気に奪い取った』

 

 プレゼントマイクが状況を飲み込めずにいると、相澤がひなた達の取った作戦を丁寧に説明する。

 

『この競技を制するのは、最初に鉢巻を奪ったチームじゃない。最後に鉢巻を奪ったチームだ。最後のカウントダウンの瞬間まで一度も1000万ポイントを狙わずに安全圏を保持し続けたのは合理的な判断だったな』

 

 相澤は、ひなた達の取った作戦を高く評価していた。

 ひなた達は、最初からこうするつもりだった。

 事実、終盤5分間、ひなたの視線は1000万を持つ騎馬の方に向いていた。

 自分達は安全圏をキープしつつ、虎視眈々と全員の鉢巻を狙っていたのだ。

 

『ああっ、ホントだ!! よく見りゃ黒影(ダークシャドウ)が二人を飲み込んでら!!』

 

『お前は気付いとけよ』

 

 プレゼントマイクがリプレイ映像を指差しながら言うと、相澤がツッコミを入れる。

 プレゼントマイクは、会場のスピーカーをオフにして会場にいるミッドナイトに無線で尋ねる。

 

「ってか…これどうするんすか先輩!? 俺らの娘が全部鉢巻取っちゃいましたけど!?」

 

『私だってこんな展開になるなんて思わなかったわよ! とりあえず、1位の相澤さんのチームを除いた11チームで2位以下を決め直すしかないでしょ!』

 

 プレゼントマイクが『どうしてくれんだ』と言わんばかりにミッドナイトに言うと、ミッドナイトも逆ギレする。

 すると相澤がプレゼントマイクの横から代替案を出す。

 

「今更もう一度やり直すのは時間の無駄です。こうなってしまったもんは仕方ない、直前の上位4チームで最終競技やればいいでしょうよ」

 

『そ、それもそうね相澤くん…』

 

 相澤が言うと、ミッドナイトも納得する。

 結局協議の結果、圧倒的1位の相澤チーム、そしてひなたに鉢巻を奪われる直前まで鉢巻を持っていた轟チーム、爆豪チーム、緑谷チームを上位4チームとして最終競技に出場させる事にした。

 

『えー、何やかんやあったけど! 待たせたなリスナー達! そんじゃあ早速上位4チーム見てみよか!! 鉢巻は全部爆音ガール相澤が取っちゃったけど、協議の結果直前の順位で判断する事にしたぜ! 1位はもちろん相澤チーム! 2位轟チーム! 3位爆豪チーム! 4位緑谷チーム! 以上4組が最終種目へ…進出だああ━━━━━━━━━━━━!!』

 

 プレゼントマイクが順位を発表すると、ひなたは子犬のように触角をブンブン振り、その場でピョンピョン跳んで大喜びした。

 

「やったぁ! やったなひー君!!」

 

「しっかしお前…よくこんなエグい作戦思いつくね」

 

「たぁっはは…最後の作戦自体は、峰田達の真似しただけなんだけどね」

 

「いや、そうじゃなくて…よく全部の鉢巻を根こそぎ奪うなんて大胆な事思いついたなって意味」

 

「あーははは…お父さん達が見てくれてるし、ひー君とふみにゃんとゆー君の期待を背負ってたから…ついムキになっちゃった。僕、やるって決めたら一直線になっちゃうんだ」

 

 ひなたは、自分でもやりすぎたと思ったのか苦笑いを浮かべて頭を掻いていた。

 そして頭を掻きながら話し始める。

 

「…僕ね、こんな(ヴィラン)みたいな“個性”だから他の皆みたいにカッコよく“個性”使えた事なんてほとんど無くってさ。ずっと自分の力に自信が持てなかった。だから今度こそ、ここにいる皆に全力で挑戦したかったんだ。この力で全力で1位取って、僕だってヒーローなんだって皆の前で胸張って言おうって思ったの」

 

 ひなたは、無邪気な笑みを浮かべながら言った。

 そして着替え終わると、騎馬を組んだ3人に歩み寄る。

 

「でも1位になれたのは、ひー君とふみにゃんとゆー君のおかげ。他の人と組んでたら、多分ここまでうまくいかなかったと思う。だからさ! このチームじゃなきゃダメだったんだよ、きっと! ありがとうね、3人共!」

 

「いや…俺は…」

 

「礼を言うのは俺の方だ。本当に全チームからポイントを根こそぎ奪い取ってしまうとはな…」

 

「僕が最後にキラめけたからオールオッケー☆」

 

 ひなたが笑顔で手を差し出すと、心操は謙遜して首を右手で押さえ、常闇はひなたの手を握り、青山は平常運転で決めポーズを取っていた。

 

「あ、それはそうとひー君、いばっちゃん達はもう戻したの?」

 

「…あっ、忘れてた……」

 

 ひなたが思い出したように言うと、心操は塩崎と鉄哲を洗脳したままだった事を思い出し、すぐに“個性”を解除する。

 

「……てかこれ今更謝りに行ったところで向こうのチーム、もう修復不可能な事になってるんじゃ…」

 

「あはは…」

 

 心操は、塩崎と鉄哲を操って鉢巻の回収役やB組からの防御役として利用してしまったので、同じチームだったクラスメイト達との関係が最悪になってしまったのではと罪悪感に苛まれており、それを見たひなたは苦笑いを浮かべていた。

 一方、当の鉄哲チームはというと。

 

「あああ…神よ、私はなんという事を…しかし、これはきっとあの小さい方から卑劣な方法で鉢巻を奪った罰なのですね…」

 

「皆、すまねえ!! 俺がカッとなっちまったせいで…!!」

 

「それより二人ともホントにもう大丈夫なの?」

 

「対応が柔軟かよ骨抜ィ!」

 

 峰田達から真っ当とは言えない方法で鉢巻を奪い取り、心操に操られて味方であるB組を全滅に追いやってしまった塩崎は涙を流しながら自分の行いを懺悔していた。

 そして鉄哲は、地面に額がめり込む程強く頭を打ちつけて土下座をした。

 だが骨抜と泡瀬は二人が操られていた事をわかっていたので責め立てる事はせず、むしろ心配や同情といった感情を向けていた。

 結局心操の心配は杞憂に終わったが、心操自身はかなり気まずい事になってしまった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、実況席にいた相澤とプレゼントマイクはというと。

 

「いやぁしっかし…ひなたの奴ホントにやりやがったな」

 

「この世の終わりみたいな顔してたぞ、お前」

 

「マジで!?」

 

 プレゼントマイクが相澤と肩を組みながら話すと、相澤はため息をつきながら言った。

 するとエネル顔の自覚がなかったプレゼントマイクは、相澤の方を振り向いて驚く。

 

「消太お前さぁ…ホント、どういう教育してんの? 俺が最後に訓練に付き合ってやった時はあんなに強くなかったろ? “個性”も戦闘能力もさ」

 

「別に俺は大した事はしてねぇよ、あいつは元々背負うもんがデカい方が際限無しに強くなれる奴だってだけだ」

 

「まぁ…確かにな。俺、ひなたの面倒見てて思ったもん。こいつは天才だって。血の繋がりとか関係なくお前が気にいるのもわかる気がするよ」

 

 プレゼントマイクが尋ねると相澤が答え、プレゼントマイクは相澤の答えに納得する。

 相澤は、いつもなら「喧しい」とプレゼントマイクを小突くところを、「ふん」と笑いながら返事代わりにそっと目を閉じた。

 

 

 

 

 




ひーちゃん無双w
そらプレマイ先生もエネル顔になりますわw

ちなみに騎馬戦成績

1位 相澤チーム(相澤、青山、心操、常闇)TOTAL 10004730P
2位 轟チーム(轟、飯田、上鳴、八百万) TOTAL 0P(直前TOTAL 10000360P)
3位 爆豪チーム(爆豪、芦戸、切島、瀬呂)TOTAL 0P(直前TOTAL 955P)
4位 緑谷チーム(緑谷、麗日、影山、発目)TOTAL 0P(直前TOTAL610P)
5位 鉄哲チーム(鉄哲、泡瀬、塩崎、骨抜)TOTAL 0P
5位 葉隠チーム(葉隠、尾白、砂藤、耳郎)TOTAL 0P
5位 蛙吹&峰田チーム(蛙吹、峰田、障子)TOTAL 0P
5位 物間チーム(物間、円場、回原、黒色)TOTAL 0P
5位 拳藤チーム(拳藤、小森、取蔭、柳) TOTAL 0P
5位 小大チーム(小大、庄田、吹出、凡戸)TOTAL 0P
5位 角取チーム(角取、口田、鎌切)   TOTAL 0P
5位 鱗チーム (鱗、宍田)       TOTAL 0P
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