抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が5件、9が23件…だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。


『ヒーロー殺しステイン』、その余波

 事件後、警察やヒーローは脳無とステインを拘束し、事態は無事収束に向かった。

 ヒーロー殺しと交戦した4人とネイティヴは重傷を負っていたため、保須総合病院に搬送された。

 

「冷静に考えると…すごい事しちゃったね」

 

「そうだな」

 

「うん」

 

 緑谷が言うと、轟とひなたが頷く。

 4人は、それぞれ傷つけられた箇所に包帯を巻いていた(ひなたはわざわざ自分の病室から松葉杖をついて3人の様子を見に来ていた)。

 

「あんな最後見せられたら、生きてるのが奇跡だって…思っちゃうね。僕の脚、これ多分…殺そうと思えば殺せてたと思うんだ」

 

 緑谷は、左脛と右腿に巻かれた包帯を見て言った。

 あの場で両脚を斬り落とされていてもおかしくなかったにもかかわらず、4人とも五体満足で生還する事ができたのは奇跡としか言いようがなかった。

 

「ああ。俺らはあからさまに生かされた」

 

 轟が言うと、ひなたもぼんやりと自分の掌を見つめながら言った。

 両の掌は、ステインが逮捕されてもなお震えていた。

 

「あのさ…ステインが、『お前は生かす価値がある』って言ってたじゃん…あいつ、多分本当に僕達相手には本気じゃなかったんだ。あれに本気で殺しに来られたらって思うとゾッとするよ…」

 

「………」

 

 ひなたの発言に対して、飯田が俯く。

 飯田は助けに来てくれた3人とは違ってステインに殺すべきだと思われていたため、3人が来なかったら確実に殺されていたのだ。

 すると轟が飯田に対して言った。

 

「あんだけ殺意向けられて、尚立ち向かったお前はすげぇよ。救けに来たつもりが逆に救けられた。わりぃな」

 

「いや…違うさ、俺は―…」

 

 飯田が言いかけたその時、緑谷の職場体験先のグラントリノと飯田の職場体験先のマニュアルが病室に入ってくる。

 

「おぉ、起きてるな怪我人共!」

 

「グラントリノ!」

 

「マニュアルさん…!」

 

 グラントリノが緑谷のベッドの前まで来ると、緑谷は説教されるのかと思いきちんと座り直した。

 するとグラントリノはため息をつきながら話し始める。

 

「すごい…グチグチ言いたい…が」

 

「あっ…す…?」

 

 緑谷が心の整理をして身構え他の3人も立ち上がると、グラントリノが振り向いて後ろを差す。

 

「その前に来客だぜ。保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」

 

 グラントリノとマニュアルの後ろから、犬顔の警察官が現れる。

 4人は、どう見ても犬の顔面をしている事と、普通は一生徒の病室に見舞いに来る事などあり得ない人物が来た事とで目を見開いて驚く。

 

「面構!! 署…署長!?」

 

「掛けたままで結構だワン。君達がヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね」

 

 面構が尋ねると、4人はコクリと頷く。

 

「ヒーロー殺しだが…火傷に骨折となかなかの重傷で現在治療中だワン」

 

「「「「!」」」」

 

 面構が言うと、4人は僅かに目を見開く。

 すると面構は話を続けた。

 

「超常黎明期…警察は統率と規格を重要視し、“個性”を武に用いない事とした。そしてヒーローはその穴を埋める形で台頭してきた職だワン。個人の武力行使…容易に人を殺められる力。本来なら糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは、先人達がモラルやルールをしっかり遵守してきたからなんだワン。資格未取得者が保護管理者の指示なく“個性”で危害を加えた事、たとえ相手がヒーロー殺しであろうともこれは立派な規則違反だワン。君達相澤ひなたと轟焦凍を除く二名及びプロヒーロー『マニュアル』、『グラントリノ』、この四名には厳正な処分が下されなければならない」

 

「何で相澤さんと轟くんだけ…?」

 

「僕達はエンデヴァーに許可取ったからね」

 

 緑谷は自分達の犯した違反の重大さに初めて気がつき目を見開くが、ひなたと轟は処罰が免除されている事が気になりひなたに尋ねる。

 ひなたは、顔を引き攣らせて頭を掻きながら答えた。

 すると轟が前に出てくる。

 

「待って下さいよ」

 

「轟くん……」

 

 面構の言い分に反感を抱いた轟は、緑谷や飯田の代わりに反論する。

 遅れてきた自分達は処罰を免れ最初にヒーロー殺しを止めようとした飯田や緑谷が処罰を受けなければならないのが納得いかなかったのだ。

 

「飯田が動いてなきゃネイティヴさんが殺されてた。緑谷が来なけりゃ二人は殺されてた。誰もヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ。規則守って見殺しにするべきだったって!?」

 

「ちょちょちょ」

 

 轟が感情的になって問い詰め緑谷が止めようとすると、面構が反論する。

 

「結果オーライであれば規則など有耶無耶でいいと?」

 

 面構が尋ねると、轟が反論した。

 

「―…人をっ…救けるのがヒーローの仕事だろ」

 

「だから…君は“卵”だ。全く…良い教育をしてるワンね。雄英も…エンデヴァーも…」

 

「この犬ー…」

 

 面構が呆れたように言うと、轟は面構に怒鳴りつけようとする。

 

「焦ちゃん!」

 

「やめたまえ、もっともな話だ!!」

 

 面構の言葉が頭に来た轟が前に出るとひなたと飯田が止め、グラントリノが宥める。

 

「まァ…話は最後まで聞け」

 

 グラントリノが轟を宥めて話を聞くよう諭すと、面構は咳払いをして話を続ける。

 

「以上が──…警察としての意見。で、処分云々はあくまで公表すればの話だワン」

 

「!」

 

「公表すれば世論は君らを褒め称えるだろうが処罰は免れない。一方で汚い話公表しない場合、ヒーロー殺しの火傷跡からエンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン。幸い目撃者は極めて限られている。この違反はここで握り潰せるんだワン。だが君達の英断と功績も、誰にも知られる事は無い」

 

 面構が言うと、4人は僅かに目を見開く。

 面構は、親指を立てて笑顔を浮かべながら言った。

 

「どっちがいい!? 一人の人間としては…前途ある若者の『偉大なる過ち』に、ケチをつけさせたくないんだワン!?」

 

「まぁどの道監督不行届で俺らは責任取らないとだしな」

 

 マニュアルがガックリと肩を落として言うと、飯田は深く頭を下げた。

 

「申し訳ございません…」

 

「よし! 他人に迷惑がかかる! わかったら二度とするなよ!!」

 

 マニュアルは、軽く飯田の頭を小突いた。

 ひなた、轟、緑谷の三人も深く頭を下げる。

 

「……よろしく…お願いします」

 

「大人のズルで君達が受けていたであろう称賛の声は無くなってしまうが…せめて、共に平和を守る人間として…ありがとう!」

 

 面構もまた、四人に深く頭を下げた。

 するとひなた、緑谷、飯田は安堵して笑みを浮かべ、轟は「初めから言って下さいよ」と呆れ返った。

 思わぬ形で始まった路地裏の戦いは、こうして人知れず終わりを迎えた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、麗日から着信があったため病室を出ていた緑谷が病室に戻ってくる。

 

「あ、飯田くん。今麗日さんがね…」

 

 緑谷が飯田に話しかけようとすると、轟が遮って話をする。

 轟とひなた、そして飯田は深刻そうな表情を浮かべていた。

 

「緑谷。飯田、今診察終わったとこなんだが」

 

「………?」

 

 緑谷がキョトンとしていると、飯田が俯きながら話をする。

 

「左手、後遺症が残るそうだ。両腕ボロボロにされたが…特に左のダメージが大きかったらしくてな。腕神経叢という箇所をやられたようだ。とは言っても手指の動かしづらさと多少の痺れくらいなものらしく、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしい。ヒーロー殺しを見つけた時、何も考えられなくなった。マニュアルさんにまず伝えるべきだった。奴は憎いが…奴の言葉は事実だった。だから、俺が本当のヒーローになれるまで、この左手は残そうと思う」

 

「………あ……」

 

 緑谷は、飯田を止められなかった事を謝ろうとしたが、それはかえって失礼だと思い留まった。

 

「飯田くん、僕も…同じだ。一緒に強く…なろうね」

 

 そう言って緑谷はボロボロになった右の拳を軽く突きつける。

 二人の様子を見ていたひなたも、何も言わなかったものの小さく笑みを浮かべた。

 すると、轟が気まずそうに言った。

 

「何か…わりぃ…」

 

 轟が言うと、三人はキョトンとする。

 

「何が……」

 

 緑谷が首を傾げて尋ねると、轟は深刻そうな表情を浮かべて言った。

 

「相澤も肩斬られたし…俺が関わると…手がダメになるみてぇな…感じに…なってる……呪いか?」

 

 それを聞いた三人は一瞬固まり、どっと笑い出した。

 

「あっはははは、何を言っているんだ!」

 

「轟くんも冗談言ったりするんだね」

 

「ちょっと焦ちゃんいきなり笑わせてこないでよ!」

 

 三人がゲラゲラ笑うと、轟はさらに深刻そうな表情を浮かべる。

 

「いや、冗談じゃねぇ。ハンドクラッシャー的存在に…」

 

「「「ハンドクラッシャ━━━━━!!」」」

 

 思いがけない轟の天然発言に、三人は爆笑して転げ回った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、心操がひなたの病室へ見舞いに来た。

 ひなたがステインと交戦し負傷したという連絡を聞き、相澤の判断で職場体験を中断して駆けつけてきたのだ。

 

「ひなた…脚、大丈夫か」

 

「うん…明日には普通に歩けるようになると思う。先生が言うには、これだけ深く刺さってて何の後遺症もなく治ったのは奇跡だって」

 

 心操が尋ねると、ひなたは苦笑いを浮かべながら言った。

 それを聞いた心操は、とりあえずひなたに後遺症が残らなかった事を安心するが、大怪我を負った事には変わりないので再びひなたを心配する。

 

「そっか…早く治るといいな」

 

「うん、ありがとね」

 

 心操がひなたに声をかけると、ひなたはコクリと頷いて礼を言った。

 するとその直後、病室のドアをノックする音が聞こえてきたので、心操は席を立った。

 

「あ…じゃあ俺はこの辺で……またな、ひなた」

 

「ん。学校で会おうね」

 

 心操が去り際に言うと、ひなたは笑顔を浮かべて小さく手を振った。

 心操が病室を出て行った直後、相澤と山田が入れ替わりで病室に入ってくる。

 この日は平日だったので、きっと仕事を切り上げてわざわざ来てくれたんだろうと思いひなたはありがとうと伝える代わりに小さく手を振った。

 山田は、ベッドに座って小さく手を振るひなたを見るなりぶわっと目から涙を溢れさせてひなたが座っているベッドに駆け寄る。

 そして、ひなたに抱きついて髪を毟る勢いで頭を撫でた。

 

『ひなたぁぁ!! お前ぇ…こんなボロボロになって…!! 痛かったよな!? よく耐えた、よく頑張った!』

 

「ふぎゃ! ちょっ…パパ。“個性”出てるって」

 

 山田がひなたを心配するあまり“個性”を出してわんわん泣くと、相澤がウンザリした表情を浮かべひなたも何とか山田を宥める。

 ひなたが山田を静かにさせると、相澤が深刻そうな表情を浮かべてひなたに話しかける。

 

「…ひなた」

 

「ん? なあにお父さん」

 

 ひなたがコテンと首を傾げたかと思うと、相澤は躊躇なくひなたの病衣を捲った。

 包帯を巻かれた脚が晒され、山田はあんぐりと口を開きっぱなしになっていた。

 

「ちょっ!? な、何すんだよ!! 変態!! エロ親父!!」

 

 ひなたは、セクハラ紛いの行動を取ってきた相澤を軽く突き飛ばす。

 すると相澤は、ひなたの包帯を巻かれた脚を見て言った。

 

「…先生に何て言われた。脚の事で」

 

 相澤が言うと、ひなたはハッとして正直に担当医に言われた内容を報告した。

 

「……後遺症は残らない…けど、かなり目立つ傷が一生残るって」

 

 ひなたが相澤の目を見ずに言うと、相澤は深くため息をついて言った。

 

「お前がヒーローになりたいって言った時、俺と何を約束したか覚えてるか」

 

「…皆を守れるヒーローになりたきゃ自分を大切にしろって……」

 

「で、お前は今どうだ? こうして勝手に傷作って入院して、心配かけて、それで本当に胸張ってヒーローだって言えんのか?」

 

 相澤が言うと、ひなたが俯く。

 すると山田がひなたを責める相澤を止めようと二人の間に割り込む。

 

「おい消太、ひなただって病み上がりなんだし何も今言わなくったって…」

 

 山田が相澤を止めようとすると、ひなたはテーブルを叩いて相澤に反論した。

 

「別に自分はどうなってもいいだなんて思ってたわけじゃない!! そうじゃなくって…デッくんのメール見て、助けなきゃって思ったから……!」

 

「だったら何故大人を頼らなかった」

 

「………!」

 

 ひなたの反論に対して相澤がさらに反論で返すと、ひなたは僅かに目を見開く。

 すると相澤は両肘を膝の上に置いて手を前で軽く組んで話し始める。

 

「警察署長の面構さんから全部聞いたよ。本当に飯田や緑谷を助けたいと思うなら、轟が向かった時点でプロに同行してもらうべきだった。お前の言い分を要約するとこういう事だろ? 考え無しにわざわざ死地に赴いて怪我をしたが結果オーライで助かった、違うか?」

 

 相澤の言っている事は正しかった。

 それはひなたもわかっていた。

 だが、まだ15のひなたは何でも合理的に判断できるほど精神的に大人ではなかった。

 

「っ…!! そう…だよ……でも僕だって…僕だってもうお父さんが思ってるほど弱くないよ!! 最高のヒーローを志すなら一人で何でもできるようになれって言ったのはお父さんだよ!? 現に、ヒーロー殺しに勝って生還したじゃんか!!」

 

「手加減されて生かしてもらった、の間違いだろ」

 

「!」

 

 相澤が言い放つと、ひなたは目を見開く。

 

「つくづく合理性に欠くねお前は……それを自分の命を大事にしてないって言うんだ。この際だからハッキリ言わせてもらうよ。お前がこれ以上考え無しに突っ走るバカを繰り返すようなら、俺はもうお前を応援できない」

 

「………」

 

 相澤がひなたに説教をすると、ひなたは何も言い返せなくなり悔しそうに拳を握りしめた。

 相澤は、決してひなたの事を認めていないわけではなかった。

 だが父親として、たとえ将来ひなたが自分をも超えるヒーローになったとしても一生気にかけ続けるつもりだった。

 娘が命の危険に晒されていた時に何も出来なかった自分を棚上げしてまで叱っているのは、ひなたがヒーロー殺しと交戦して負傷したと聞いた時に一番心配していたからだった。

 すると相澤は、ひなたの頭に手を置いて言った。

 

「…だがお前の言う事も一理ある。被害が最小限で済んだのは、他でもないお前達のおかげだ。よく生きて帰ってきてくれた」

 

「………うん」

 

 相澤がひなたの頭を撫でながら言うと、ひなたは目を見開いて瞬きをし、そして相澤に撫でられた頭に両手を置いた。

 すると今まで黙っていた山田が相澤を茶化す。

 

「ひなた。病み上がりにいきなり説教されて凹んだかも知んねーけど、まあ消太の言い分もわかってやれよ。こいつ、お前が入院したって聞いた時一番心配してたんだからよ」

 

「黙れ」

 

「What's!?」

 

 相澤の肩に手を置いて茶化す山田を相澤が小突くと、ひなたは「ははは…」と笑った。

 そして、そのタイミングで二人に話そうと思っていた事を思い出し、二人に話しかける。

 

「…あのさ。ヒーロー殺しで思い出したんだけど…話そうと思ってた事があるんだ」

 

 ひなたは、自分の掌をぼんやり見つめながら話し始める。

 

「僕、(ヴィラン)も助けたい」

 

「!」

 

「ヒーロー殺しと戦って、感じたの。ヒーロー達を再起不能にした殺人鬼だし、言ってる事はメチャクチャだし、本当に恐ろしい奴だったけど…でも、確かに高揚したんだ。『何て凄い技術(スキル)なんだろう』って。自分だって殺されるかもしれない状況だったのに、あいつの戦闘技術に魅入ってしまった自分がいた」

 

 ひなたは、俯いたまま自分の思った事を率直に話した。

 その表情は、微かに笑みを浮かべているように見えた。

 

「あれだけの実力と執念があるなら、どこか違っていれば皆にヒーローのあるべき姿を示せるようなヒーローになる未来もあったんじゃないかと思うんだ。だからね、僕は『そういう未来』を示してあげられるようなヒーローになりたい。もちろん、(ヴィラン)になりたくてなった奴もいるし、被害者を蔑ろにしてるって思われても仕方ないっていうのはわかってる。本当は、全力でぶつかり合ったらあとはみんな友達っていうのが理想なんだけどね。そんな風に考えるのって、やっぱりおかしいのかなぁ」

 

 ひなたがそう言うと、山田はひなたの頭を撫でる。

 

「別に何もおかしくねえよ。ひなたは優しいな」

 

「え」

 

 山田が優しい笑みを浮かべながら言うと、ひなたは僅かに目を見開く。

 山田は、ひなたの頭をワシャワシャ撫でてひなたを励ました。

 

「お前は優しいから、色んな奴を大事にできるんだ。そのお前が正しいと思うなら、それがどんな道だろうと俺は精一杯応援してやるからな」

 

「…うん!」

 

 山田が言うと、ひなたは満面の笑みを浮かべて頷く。

 するとすかさず相澤が軽くひなたを睨んで水を差した。

 

「人に心配かけない範囲でな」

 

「………うん」

 

 相澤が念押しするように言うと、ひなたは数秒間を空けてからシュンとした様子で頷いた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして3日後、一週間の職場体験が終わった。

 ひなたは、エンデヴァーと炎のサイドキッカーズに向かって頭を下げる。

 轟も、炎のサイドキッカーズに礼を言った。

 

「一週間大変お世話になりました」

 

「本当に色々ありがとうございます」

 

「おう! 焦凍くんとひなたちゃんなら、私らいつでも大歓迎だからな!」

 

 二人がこの一週間の礼を言うと、バーニンが代表して気軽に二人に話しかける。

 すると、エンデヴァーがひなたに尋ねる。

 

「クレシェンドモルト。一週間前に与えた課題はクリアできたか」

 

 エンデヴァーの質問に対し、ひなたは笑顔を浮かべて力強く頷きながら答える。

 

「はい! お陰様で!」

 

「……そうか」

 

 ひなたの答えが聞けて満足したのか、エンデヴァーは踵を返そうとする。

 すると、轟がエンデヴァーに話しかける。

 

「親父。俺はお前の全てを認めたわけじゃねえ。……だが、友達をここまで強くして保須での被害を最小限に抑えたお前は間違いなくヒーローだった」

 

 轟が言うと、エンデヴァーは感激して轟に詰め寄る。

 

「焦凍ォ!!! よくぞ言ってくれた!! お前は俺の自慢の息子だ!! その調子で励め!!」

 

(うるせえ…余計な事言わなきゃ良かった)

 

「あはは…」

 

(何だかんだで親バカなんだよなぁ)

 

 エンデヴァーが轟に激励を送ると轟はウンザリした表情を浮かべてエンデヴァーを誉めた事を後悔し、ひなたも後ろで苦笑いを浮かべていた。

 こうして一週間の職場体験は無事終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして、翌日。

 A組の教室では。

 

「「アッハッハッハマジか!! マジか爆豪!!」」

 

「あはは…」

 

 切島と瀬呂が爆笑し、ひなたも苦笑いを浮かべていた。

 No.4ヒーローという理由でベストジーニストの元へ職場体験に行った爆豪は、自慢の爆発髪をキッチリ8:2にセットされていた。

 

「笑うな! 癖ついちまって洗っても直んねえんだ。おい笑うな! ブッ殺すぞ」

 

「「やってみろよ8:2坊や!! アッハハハハハハ!!」」

 

 爆豪がイラついてプルプル震えていると、切島と瀬呂が爆笑する。

 二人が笑いすぎて怒りが爆発した爆豪は、髪をボンッと爆発させ元に戻った。

 ひなたが苦笑いを浮かべていると、爆豪がひなたに突っかかってくる。

 

「何笑っとんだクソ触角ァ!! 言っとくが俺ァまだてめぇが体育祭でした事忘れてねえからな!!」

 

「しつこい…」

 

 爆豪がひなたに向かって吠えると、ひなたは両耳を塞いだ。

 ひなたは、爆豪のうるささに耳を塞ぎつつも、爆豪に話しかけた。

 

「でもかっちゃん、一週間前よりいい顔してる。ジーニスト事務所で何かあった?」

 

「……フン」

 

 ひなたが尋ねると、爆豪はドカッと席に座った。

 一方、芦戸、耳郎、蛙吹の三人は職場体験の話をしていた。

 

「へー、(ヴィラン)退治までやったんだ! 羨ましいなぁ!」

 

「避難誘導とか後方支援で実際交戦はしなかったけどね」

 

「それでもすごいよー!」

 

 耳郎が言うと、芦戸が羨ましがる。

 すると蛙吹がさらに上をいく発言をしてきた。

 

「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕らえたくらい」

 

「「それすごくない!?」」

 

 蛙吹がサラッと言うと、芦戸と耳郎が驚く。

 そして蛙吹が近くにいた麗日に話しかける。

 

「お茶子ちゃんはどうだったの? この一週間」

 

「とても、有意義だったよ」

 

 闘気を纏い洗練された構えをしている麗日は、もはや武闘家と化していた。

 

「目覚めたのねお茶子ちゃん」

 

「バトルヒーローのとこ行ったんだっけ」

 

 一週間前とは明らかに面構えが違う麗日を見て、蛙吹と耳郎がツッコミを入れる。

 そしてそれを遠目で見た上鳴もまた引いていた。

 

「たった一週間で変化すげぇな…なあ、お前んとこはどうだったのよ?」

 

「その話はやめろ上鳴!!」

 

 上鳴が峰田に職場体験の話を振ると、峰田は血眼で叫び上鳴を黙らせた。

 

「USJ襲撃? 怖くねぇよそんなもん…何が人生一怖かったかって…?」

 

「お前プリンセスプリティハニーのとこで何があった」

 

 峰田が爪を齧りながら何かに取り憑かれたような表情を浮かべると、上鳴が引き気味に止める。

 

「俺は割とチヤホヤされて楽しかったけどなー。ま、一番変化というか大変だったのは…お前ら四人だな!」

 

 上鳴は、飯田、轟、緑谷、そしてひなたに向かって言った。

 

「そうそうヒーロー殺し!!」

 

「…心配しましたわ」

 

「命あって何よりだぜマジでさ。エンデヴァーさんが救けてくれたんだってな! さすがNo.2だぜ!」

 

 瀬呂、八百万、切島は、ステインと交戦した4人に話しかける。

 

「…そうだな。救けられた」

 

「「うん」」

 

 轟が言うと、ひなたと緑谷も頷く。

 すると尾白が4人を心配した様子で口を開く。

 

「俺、ニュースとか見たけどさ。ヒーロー殺し、(ヴィラン)連合とも繋がってたんだろ? もしあんな恐ろしい奴がUSJに来てたらと思うとゾッとするよ」

 

 尾白が言うと、上鳴はつい軽はずみで発言する。

 

「でもさあ、確かに怖えけどさ。尾白動画見た? アレ見ると一本気っつーか執念っつーか、カッコよくね? とか思っちゃわね?」

 

「上鳴くん…!」

 

「え? あっ…飯…ワリ!」

 

 上鳴の軽率な発言に対し緑谷が慌てて止めると、上鳴はインゲニウムがステインに襲われた事を思い出し咄嗟に口を塞いだ。

 すると、飯田が後遺症を負った左手を見つめながら言う。

 

「いや…いいさ。確かに信念の男ではあった…クールだと思う人がいるのもわかる。ただ奴は、信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ。俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!! 改めてヒーローの道を俺は歩む!!!」

 

「飯田くん…!」

 

 いつものようにビシビシ腕を振るう飯田を見て、緑谷は安心した。

 飯田は、早速フルスロットルでクラスメイトに号令をかける。

 

「さァそろそろ授業だ、席に着きたまえ!!」

 

「五月蝿い…」

 

「何か…すいませんでした」

 

 飯田の声に常闇はウンザリし、上鳴は申し訳なさそうにションボリしていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして午後のヒーロー基礎学。

 オールマイトは、ヌルッと登場しそのままヌルッと話に入った。

 

「ハイ、私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね、ハイ、ヒーロー基礎学ね! 久しぶりだ少年少女! 元気か!?」

 

「ヌルっと入ったな」

 

「久々なのにな」

 

「パターンが尽きたのかしら」

 

 ヌルッと入ってきたオールマイトに対しA組が口々に言うと、オールマイトは「尽きてないぞ。無尽蔵だっつーの」と強がって苦笑いを浮かべながら説明を続ける。

 

「職場体験直後って事で今回は、遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!」

 

 オールマイトが今回の授業の内容を話すと、飯田が手を挙げて尋ねる。

 

「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか!?」

 

「あそこは災害時の訓練になるからな。私は何て言ったかな? そうレース!! ここは運動場γ! 複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯! 5人か6人のグループ4組に別れて1組ずつ訓練を行う! 私がどこかで救難信号を出したら一斉にスタート! 誰が1番に私を助けるかの競走だ!! 勿論、建物への被害は最小にな!」

 

「指差すなよ」

 

 オールマイトが爆豪を指差すと、爆豪はそっぽを向いた。

 1組目は緑谷、瀬呂、飯田、尾白、芦戸、そしてひなたの6人だった。

 

「じゃあ初めの組は位置について!」

 

 オールマイトが指示を出すと、はじめの6人が位置につく。

 

「飯田まだ完治してないんだろ? 見学すりゃいいのに…」

 

「クラスでも機動力良い奴が固まったな」

 

 クラスメイト達は、誰が一位になるかを予想していた。

 

「俺瀬呂が一位」

 

「あー…うーん、でも尾白もあるぜ?」

 

「オイラは芦戸! あいつ運動神経すげぇぞ」

 

 切島は瀬呂、上鳴は尾白、峰田は芦戸が一位と予想した。

 

「俺はひなたに勝ってほしいけどな…」

 

「相澤か、確かにあり得るかもな。けど緑谷もあいつ最近成長すげえぞ」

 

「は?」

 

 心操はひなた、砂藤は緑谷が一位と予想すると、爆豪が不愉快そうな表情を浮かべる。

 

「怪我のハンデはあっても飯田くんな気がするなぁ」

 

 麗日は飯田が一位と予想し、蛙吹もコクリと頷く。

 そして全員がスタート位置につくと、オールマイトが合図を出す。

 

「START!!」

 

 6人は、スタートと同時に駆け出した。

 瀬呂はセロファンを使って建物の上を移動する。

 

「ホラ見ろ!! こんなごちゃついたとこは、上行くのが定石!」

 

「となると滞空性能の高い瀬呂が有利か」

 

 滞空性能の高い瀬呂は、先頭を突き進んで天狗になっていた。

 

「ちょ━━っと今回俺にうってつけ過ぎ…る…?」

 

「確かにね!」

 

「い゛!?」

 

 瀬呂が天狗になっていると、何かが瀬呂の視界の横を通り過ぎた。

 瀬呂は、前を見て思わず目を見開く。

 ひなたが捕縛武器を使って人間とは思えない動きで飛び回っていたのだ。

 

「エンデヴァーを追いかけ回さなきゃいけない生活に比べれば僕に有利すぎたかも!」

 

 ひなたは、そう言ってニヤリと笑うとそのまま捕縛武器を使って20m以上離れた建物へと着地する。

 この一週間ひたすらエンデヴァーを追いかけて仕事を見ていた事で、ひなたの機動力は一週間前とは比べ物にならないほど成長していた。

 

「すごっ! ひなたちゃん相澤先生みたい!」

 

「成長しすぎだろ!! この一週間で何があったよ!?」

 

 たった一週間で飛躍的な成長を見せたひなたに、クラスメイトほぼ全員が驚く。

 だが、この一週間で成長していたのはひなただけではなかった。

 ひなたの横を何かが通り過ぎるのを見て、ひなたはギョッと目を見開く。

 緑色の火花を纏った緑谷が、飛び石の要領で建物の上を駆け回っていた。

 

「うってつけ過ぎる! 修業に!」

 

「おおお緑谷!? 何だその動きィ!!? ウッソだろ!!」

 

「一週間で…変化ありすぎ…」

 

 緑谷の動き方は、爆豪の動き方に似ていた。

 

「緑谷━━!? ちょ、速すぎない!?」

 

「前より格段にスピードが上がってる…!」

 

 緑谷の動きを見た瀬呂、芦戸、尾白は驚いていた。

 今までは10%、せいぜい一瞬だけ15%の出力を出すのが限界だった緑谷は、グラントリノにみっちりしごかれたおかげで最大30%の出力を負担なしで維持できるようになっていた。

 

「俺も負けてられん…! 『レシプロバースト』!!」

 

 飯田も負けじとエンジンの回転数を上げて突進し、勢いをつけて空中へ飛び上がると、さらにもう一段階ブーストさせて緑谷と並んだ。

 これには、他のクラスメイトも驚いていた。

 

「「「飛んだ!!?」」」

 

 飯田が飛んだのを見たひなたは、思わず目を丸くする。

 

「まっじィ!? だったら僕も…!」

 

 ひなたは後ろを振り向くと、髪をざわつかせて“個性”を発動する。

 ひなたは、爆発的に機動力を上げる技をこの一週間で編み出していた。

 両手でメロイックサインを作って前に突き出すと、ありったけの声で叫んだ。

 

『ROCK 'N' ROOOOOOOOOOOLLLLLLLLLLL!!!!!』

 

 ひなたが爆音で叫ぶと、音が収束して高威力の衝撃波となり、ひなたの身体を爆速で押し進めた。

 これには、レースを見ていたクラスメイトはさらに驚く。

 

「嘘だろなんだありゃあ!?」

 

「あれってまるで…」

 

「親父の…!」

 

『声』による衝撃波で緑谷と飯田を追い越したひなたを見て、何人かは足から噴く炎を推進力に高速移動をするエンデヴァーを思い出した。

 そのままひなたはオールマイトの待機している塔へとひとっ飛びで駆けつけた。

 だが…

 

「ぼへぁ!?」

 

 声の調整がまだ不十分だったらしく、ひなたはかっこ悪くも着地に失敗してオールマイトの近くをゴロゴロと転がる。

 ひなたが亜音速でローリングしながら着地するのを目撃したオールマイトは、心配そうに震えながらひなたの顔を覗き込む。

 

「大丈夫…? 相澤少女」

 

「いっちち…た、助けに参りました…」

 

 オールマイトが心配そうに尋ねると、ひなたは目を回しながらサムズアップをする。

 続けて緑谷と飯田が到着し、その次に瀬呂、尾白、芦戸の順に到着した。

 

「フィニ━━━ッシュ!」

 

 ひなたは、『助けてくれてありがとう』と書かれた襷をかけて若干照れ臭そうにしていた。

 

「一番は相澤少女だったが、皆入学時より“個性”の使い方に幅が出てきたぞ!!」

 

(アレで良かったんすかね…)

 

 オールマイトが褒めると、ひなたは複雑そうにキュッと唇を締める。

 ひなたが心の中でツッコんでいる間にも、オールマイトが他のクラスメイトに声をかけた。

 

「この調子で期末テストへ向け準備を始めてくれ!!」

 

「そっか、もうすぐ期末か」

 

 オールマイトは、緑谷に何かを耳打ちした。

 それを聞いた緑谷は、少し不安そうな表情を浮かべていた。

 その後のレースは、二組目が砂藤、障子、心操、常闇、葉隠

 三組目が切島、耳郎、爆豪、峰田、八百万

 四組目が青山、蛙吹、麗日、上鳴、轟

 の組み合わせで行われた。

 二組目が全員スタート位置につくと、オールマイトが合図を出す。

 

「START!!」

 

 オールマイトが合図を出すと、5人が一斉に走り出す。

 クラスメイトほとんど全員の予想通り、黒影(ダークシャドウ)で高速移動ができる常闇がぶっちぎりだった。

 だがほとんど全員が予想外だったのが、それに続く心操だった。

 心操は、相澤やひなたに教わった技術を駆使してビルの上を駆け抜け、一戦目のひなたや緑谷のように器用に動き回っていた。

 

「うわぁすごいやひー君!」

 

「そういえば心操くん、相澤先生のところに職場体験行ってたんだ」

 

 心操の動きを見て、ひなたと緑谷が感心した。

 二組目は、常闇、心操、砂藤、障子、葉隠の順でゴールした。

 続く三組目。

 爆豪は、職場体験でベストジーニストに教わった事を思い出していた。

 

 

 

 ──移動の時の爆破が分散しすぎている。無駄な爆煙も多い。燃料の圧縮力不足による不完全燃焼が原因だろう。燃料の出し方から変えねば綻びが生まれる。ダメージジーンズのようにな! 

 

 ──人の身体で遊ぶなクソがあああああ!! 

 

 

 

 ベストジーニストに教わった事を思い出していた爆豪だが、触診と称して全身に糸をつけられ操り人形のように遊ばれた記憶ばかりが鮮明に残り、苛立ちが蘇る一方だった。

 だが職場体験で教わった事は、確かに爆豪の成長の糧となっていた。

 

「START!!」

 

「爆速…ターボ!!」

 

 オールマイトが指示を出すと、爆豪は両手から爆破を放って急激に加速した。

 だが前とは違っていたのは、爆煙の放出が最小限に抑えられ、爆破も広範囲に拡散せずに一方向に噴射されていた。

 

「そんなんアリかよおおおおお!!?」

 

 目に留まらぬ速度で空中を爆走する爆豪に対し、ボールを使って移動していた峰田が驚愕する。

 以前とは比べ物にならない程移動速度が増した爆豪は、そのままぶっちぎりでゴールする。

 続いて八百万、切島、耳郎、峰田の順にゴールした。

 そして最後の四組目。

 

(体温を一定に保ったまま、炎を推進力に一気に駆け抜ける!)

 

 轟は、エンデヴァーやひなたに教わった事を思い出し、体温を一定に保ちつつ、左手の炎を推進力に右足から出した氷でスケートのように高速移動をした。

 

「ウェエ!? は、速すぎだろ!」

 

 一気に駆け抜けていく轟を見て、後ろを走っていた上鳴は度肝を抜かしていた。

 第四レースは当然の如く轟がぶっちぎりの一位でゴールし、続いて蛙吹、麗日、上鳴、青山(途中までいい調子だったものの途中で力尽きた)の順にゴールした。

 こうして全てのレースが終わり、この日の授業は終了となった。

 その後男子更衣室では、男子がコスチュームから制服に着替えていた。

 

「久々の授業汗かいちゃった」

 

「俺、機動力課題だわ」

 

「よく言うよ…」

 

 切島が機動力が課題と言うと、心操がツッコミを入れる。

 心操からしてみれば、切島も機動力のある“個性”でもないのに十分速かったからだ。

 

「情報収集で補うしかないな」

 

「それだと後手に回んだよな。お前とか瀬呂が羨ましいぜ」

 

 常闇が言うと、切島は瀬呂と常闇を羨ましがった。

 それそれが課題を話し合っている中、峰田が緑谷を呼び付ける。

 

「おい緑谷!! ヤベェ事が発覚した!! こっちゃ来い!!」

 

「ん?」

 

 峰田は、張り紙の裏の穴を興奮気味に指差した。

 

「見ろよこの穴、ショーシャンク!! 恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!! 隣はそうさ! わかるだろう!? 女子更衣室!!」

 

 それを聞いた上鳴、瀬呂、砂藤はピクリと反応する。

 だが当然心操と飯田が止めに入った。

 

「峰田…お前、やっていい事とダメな事とあるだろ。人として」

 

「そうだぞ!! 峰田くんやめたまえ!! 覗きは立派なハンザイ行為だ!」

 

 だが、峰田は聞く耳持たずに張り紙を剥がすと興奮して穴を覗き込んだ。

 

「オイラのリトルミネタはもう立派なバンザイ行為なんだよォォ!! 八百万のヤオヨロッパイ!! 芦戸の腰つき!! 葉隠の浮かぶ下着!! 麗日のうららかボディ!! 蛙吹の意外おっぱァアアア」

 

 ザクッ

 

「あああ!!!!」

 

 峰田の左眼にイヤホンのジャックが突き刺さり、ジャックから爆音が鳴る。

 それを見た緑谷は、ガタガタ震えながらご丁寧に解説していた。

 

「耳郎さんのイヤホンジャック…正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!!」

 

 隣の女子更衣室では、女子全員が呆れていた。

 

「ありがと響香ちゃん」

 

「何て卑劣…!! 今すぐ塞いでしまいましょう!!」

 

 蛙吹が耳郎に礼を言い、八百万が峰田を軽蔑しながら言った。

 すると峰田に何も言われなかったひなたと耳郎は殺気を漏らしながら言った。

 

「生ぬるいよヤオモモ。毛根燃やしちゃえ」

 

「ウチらだけ何も言われてなかったしね」

 

「ヒーローが出していいオーラじゃないよ二人とも!!」

 

 二人が殺気のこもった黒いオーラを放ちながら顔を見合わせて頷いていると、葉隠がツッコミを入れた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして数日後のホームルームで、相澤が生徒達に向かって言った。

 

「えー… そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが30日間一ヶ月休める道理はない」

 

「まさか…」

 

 生徒達が身構えていると、相澤が発表した。

 

 

 

「夏休み林間合宿やるぞ」

 

「「「「知ってたよ━━やった━━!!!」」」」

 

「肝試そ━━━!!」

 

「風呂!!」

 

「花火」

 

「風呂!!」

 

「カレーだな…!」

 

「行水!!」

 

「自然環境ですと…また活動内容が変わってきますね」

 

「いかなる環境でも正しい選択を…か。面白い」

 

「寝食皆と!! ワクワクしてきたぁあ!!」

 

「枕投げやりた…」

 

「湯浴み!! 「しつこい」…ハイすいませんでした」

 

 クラスメイトがワイワイとはしゃぐ中しつこく叫び声を上げる峰田を、ひなたが鶴の一声で黙らせた。

 ほとんど全員が騒いでいると、相澤が睨んで黙らせる。

 

「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は…学校で補習地獄だ」

 

「みんな頑張ろーぜ!!」

 

 相澤の言葉に、切島は必死な様子で叫んだ。

 すると爆豪が鬱陶しそうに吐き捨てる。

 

「クソ下らねー」

 

 ステインの事件から生還したひなた達だったが、次はテストという山場が迫っていた。

 

 

 

 

 




色々なエフェクトを使って表現する作品が多いですが、私はルビと文字消し以外は基本エフェクトを使わない主義です。
スマホだとうまく打てないのもありますが、出来るだけ地の文で表現をしたい派なので使わない方向性でやらせてもらってます(表現力乏しいのに変なこだわり持つから全然伝わらない駄文になっとるんやけどな…)
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