抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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OVA・2  Training of the Dead
Training of the Dead


 プロヒーローへの職場体験が終了し、雄英に戻ったひなた達は、いつもの日常を送る筈だった。

 だが…

 

「いきなりだが本日のヒーロー実習に勇学園ヒーロー科の生徒4名が特別に参加する事になった」

 

「「「のっけから新キャラキタ━━━!!!」」」

 

 相澤が勇学園から来た4人の生徒を紹介すると、A組は一斉に盛り上がる。

 

「メガネ女子だぜー!!」

 

「峰田くん興奮しすぎ…」

 

「不潔」

 

 峰田が涙を流しながら歓喜していると、緑谷が引き攣った笑みを浮かべ、ひなたが白い目で見る。

 一方で、上鳴は早速その眼鏡女子に声をかけていた。

 

「彼女彼女、ライン教えて!」

 

 上鳴が眼鏡女子とラインを交換しようとすると、耳郎が上鳴の耳にジャックを差し込んで制裁する。

 

「どわっ!!」

 

「他校にバカを晒すな」

 

「失礼だぞお前ら……」

 

 耳郎と心操が注意をすると、切島と瀬呂は制裁を受けている上鳴を見て大笑いしていた。

 すると相澤が“個性”を発動してA組全員を睨みつけ、生徒全員が黙り込んだ。

 

「自己紹介を」

 

「は…はい」

 

 相澤が言うと、早速眼鏡女子が自己紹介をする。

 

「実習に参加させて頂く勇学園ヒーロー科赤外可視子です」

 

「「「おお!」」」

 

 赤外が微笑むと、A組のほとんど全員が声を上げた。

 すると今度は相澤から見て一番右の汗っかきな男子が自己紹介をする。

 

「同じく多弾打弾です。よろしくお願いします」

 

「「「おお…」」」

 

 多弾が自己紹介をすると、A組のテンションが若干下がる。

 すると今度は水色髪の目つきの悪い男子が自己紹介をする。

 

「藤見」

 

「「「おお……」」」

 

 見るからに輩っぽい雰囲気に、A組はあからさまに声を小さくした。

 すると爆豪は藤見と目が合う。

 

「ん?」

 

「あ…」

 

 爆豪が藤見と目が合ったので、緑谷は若干緊張していた。

 すると相澤が怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「ん? もう一人いるはずだが」

 

 相澤が言うと、赤外の後ろから蛇の顔をした女子が現れる。

 すると女子の顔を見た蛙吹が僅かに目を見開く。

 

「ケロッ」

 

「あっ」

 

「ケロッ!」

 

「ああっ! 梅雨ちゃん!」

 

「羽生子ちゃん!」

 

 蛙吹と蛇顔の女子は、目が合った次の瞬間には抱き合っていた。

 するとそれを見た麗日とひなたが興味津々といった様子で見る。

 

「梅雨ちゃんの友達?」

 

「みたいだね」

 

「何だろう、すごくハラハラするぞ。ネーチャー的に」

 

「あまり深い事考えちゃダメだよーデッくん」

 

 緑谷が蛇と蛙が抱き合っているのにハラハラしていると、ひなたがツッコミを入れる。

 ひなたの言う通り、この超人社会において動物の“個性”同士の相性は気にしても仕方のない事だった。

 すると藤見が蛇顔の女子に注意をする。

 

「万偶数! 雄英の奴なんかと仲良くしてんじゃねえ」

 

 藤見が言うと、爆豪が立ち上がって怒鳴り散らす。

 

「おい今何つった!? 二流以下のクソ学生が!!」

 

 爆豪がキレると、後ろの席の緑谷が慌てて注意をする。

 

「マズいよかっちゃん」

 

「黙ってろクソナード!!」

 

「そういうお前も黙れ」

 

「くっ…!」

 

 注意をする緑谷に対して爆豪がキレると、相澤が爆豪を注意し爆豪は押し黙った。

 するとその直後、チャイムが鳴った。

 

「時間だ。全員コスチュームに着替えてグラウンドΩに集合。飯田、勇学園の生徒達を案内してやれ」

 

「承知しました!」

 

 相澤が指示を出すと、飯田が承諾する。

 一方で、藤見と爆豪は至近距離で睨み合って火花を散らしており、緑谷はその様子を見て苦笑いを浮かべ、ひなたは二人が散らす火花に充電ケーブルのUSBを近づけて携帯の充電を試みていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後女子更衣室で、女子達は情報交換をした。

 

「あーやっぱり! 二人は同じ中学出身だったんやね!」

 

「ええ。とっても仲の良いお友達だったの」

 

 麗日が言うと、蛙吹は万偶数と手を取り合いながら話す。

 万偶数は、舌を出しながら目玉をギョロギョロ動かしていた。

 

「シャー…」

 

「そ、そうなんだ」

 

「危険な感じは拭えないけど…」

 

 万隅数が鳴いていると、芦戸と麗日は怖がって距離を置いていた。

 だがひなたは、目をキラキラと輝かせて万隅数に話しかけていた。

 

「ぶーやんは何食べるの? ネズミ? トカゲ?」

 

「ひなた平気なんだ……」

 

「蛇はむしろ好き! カァイイから!」

 

「そっか…」

 

「っていうかぶーやんって万偶数ちゃんの事?」

 

 ひなたが万隅数に積極的に話しかけていると、耳郎と葉隠がツッコミを入れた。

 一方で、八百万は赤外と話をしていた。

 

「赤外さんはクラス委員長をしてらっしゃるのね」

 

「はい。でも…色々大変なんです。1人問題児がいて…」

 

「それは…こちらも同じですわ」

 

「可視子っちも苦労してるんだね…」

 

 赤外が苦笑いを浮かべながら言うと、八百万も苦笑いを浮かべひなたも激しく首を縦に振る。

 その頃男子更衣室では、爆豪と藤見がいがみ合っていた。

 

「不良上がりみたいな奴がトップにいるとは雄英も地に落ちたもんだ」

 

「んだとこの陰気野郎が」

 

 それを見ていた他の男子達は、爆豪の態度にオロオロしていた。

 

「止めろよ、緑谷…」

 

「無理だよ」

 

 峰田は緑谷に爆豪を止めるよう言うが、緑谷は震え上がったまま断る。

 

「気に入らねえんだよ雄英に入ったってだけでお前みたいなのが世間に認められてちやほやされてんのが」

 

「…!」

 

 藤見が言うと、心操は僅かに目を見開く。

 爆豪は、藤見を至近距離で睨みながら悪態をついた。

 

「喧嘩売ってんなら言い値で買ってやんよ」

 

「この実習で俺達の方が優れてるって事証明してやる」

 

「かかって来いや!!」

 

「いい加減にしないか爆豪くん!!」

 

 爆豪と藤見が言い合いをしていると、飯田が注意をした。

 すると多弾が慌ててA組男子に謝る。

 

「ごめんなさい! 藤見くんは口が悪いけど決して悪い人ではないんです」

 

「あんたも苦労してるんだな」

 

 多弾が謝ると、心操は多弾に同情した。

 すると飯田も多弾に謝る。

 

「こちらこそすまない。尤も…こちらは『悪い人間じゃない』…と言えないのが何とも」

 

「ああ!?」

 

 飯田が言うと、爆豪がキレる。

 それを見ていた緑谷は、ヒヤヒヤしていた。

 

「大丈夫かな…この実習」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、コスチュームに着替えたヒーロー科の生徒達はグラウンドΩに集まった。

 

「よし、全員集まったな。今日のヒーロー実習を担当するのは俺ともう1人…」

 

 相澤がもう一人の教師を紹介しようとした、その時だった。

 

 

 

「私が!!!」

 

 突然スーツを着たオールマイトが空から降ってきて、生徒達の目の前に現れた。

 

「スペシャルゲストのような感じで来た!!!」

 

 すると勇学園の生徒達は、生のオールマイトに感動する。

 

「オ…オールマイト…!」

 

「本物…!」

 

「すごい迫力!」

 

「雄英が羨ましい!」

 

 悪態をついていた藤見も、オールマイトを見て目を輝かせていた。

 それを見た緑谷と心操は、顔を見合わせて微笑んでいた。

 

「さて、今日の実習だが…全員参加でサバイバル訓練に挑戦してもらう!」

 

「サバイバル訓練?」

 

「バトルロイヤルみたいなもんか?」

 

 オールマイトが言うと、切島と上鳴が首を傾げる。

 するとオールマイトが空中にプロジェクターを表示しながら説明した。

 

「状況を説明しよう! 生徒達は4人又は5人1組、全6チームに分かれ、こちらが指定した任意ポイントから訓練を始めてもらう。訓練の目的はただ一つ。生き残る事。他チームと連携しようが戦おうが構わない。とにかく、最後まで生き残ったチームの勝利となる!」

 

 オールマイトがルールを説明すると、相澤が確保テープを取り出しながら言った。

 

「他チームとの戦闘に突入した際…この確保テープを相手に巻き付けたら戦闘不能状態にする事ができる。雄英生ならお馴染みのアイテムだ」

 

「それではチーム分けを発表するぞ!!」

 

 

 

 Aチーム:相澤ひなた、芦戸三奈、蛙吹梅雨、麗日お茶子、緑谷出久

 

 Bチーム:切島鋭児郎、障子目蔵、爆豪勝己、八百万百

 

 Cチーム:尾白猿夫、心操人使、轟焦凍、葉隠透

 

 Dチーム:飯田天哉、砂藤力道、瀬呂範太、常闇踏陰

 

 Eチーム:青山優雅、上鳴電気、耳郎響香、峰田実

 

 Fチーム:赤外可視子、多弾打弾、藤見露召呂、万偶数羽生子

 

 

 

 チーム分けが終わると、相澤が説明をする。

 

「全チーム指定したポイントで待機。5分後に合図無しで訓練を開始する」

 

「皆生き残れよ!!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 オールマイトが言うと、ヒーロー科の生徒達は一斉に返事をした。

 その後、生徒達は指定されたポイントに向かった。

 

「頑張ろうねデクくん!」

 

「うん!」

 

 麗日が話しかけると、緑谷が頷く。

 

「負けないわよ梅雨ちゃん!」

 

「私も全力を尽くすわ!」

 

 万偶数が言うと、蛙吹も言い返した。

 

「吠え面かかせてやるよ」

 

「やってみろや」

 

 藤見が喧嘩を売ると、爆豪が買った。

 

「ひなた、お互い最後まで生き残ろうな」

 

「うん!」

 

 心操が言うと、ひなたはニッコリと笑みを浮かべて頷く。

 その後指定されたポイントに向かったAチームは、作戦を話し合っていた。

 ひなたはというと、枝を使って地面に絵を描いていた。

 

「どんな作戦でいく?」

 

「他チームをやっつけていくしかないんじゃない?」

 

 麗日が離すと、芦戸が提案する。

 すると緑谷が反対する。

 

「いや、迂闊に動けば障子くんや耳郎さん、常闇くんのような索敵要員に見つかる可能性が高いし、相手チームを発見できたとしても戦闘すれば違うチームにこっちの位置を知られてしまう。チーム間で連携して攻められたら一巻の終わりだよ」

 

「うん…特にかっちゃんチームとかに見つかったら一網打尽にされそう…例えばこんな風に」

 

「絵はカワイイけどシチュエーションが地獄絵図ね」

 

 ひなたがAチームが爆豪の目眩しを喰らって八百万の大砲で拘束されている図を地面に絵を描くと、蛙吹がツッコミを入れる。

 

「じゃあどうすれば…」

 

 緑谷とひなたの指摘に対して麗日が考え込んでいると、蛙吹が口を開く。

 

「皆これがサバイバル訓練だという事を忘れてないかしら」

 

 蛙吹が言うと、芦戸はポンと掌を打つ。

 

「そっか、オールマイトが言った通り生き残りさえすればいいんだ!」

 

「別にキル数を競う訓練じゃないもんね!」

 

「だから迂闊に動かずここで待機してた方がいいと思うわ」

 

「うん、僕もそう思う」

 

「賛成!」

 

「その方が楽ちんだ!」

 

 ひなた達Aチームは、全員動かずその場で待機する作戦を取った。

 すると芦戸がお菓子を出しながら話しかける。

 

「麗日、うららかなおやつ食べる?」

 

「食べる〜!」

 

「ひなたは?」

 

「食う!」

 

「余裕出し過ぎなんじゃない!?」

 

 芦戸、麗日、ひなたの三人が一緒になってお菓子を食べていると、緑谷がツッコミを入れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃相澤とオールマイトは、高台の上で生徒達の様子を観察していた。

 

「既に訓練を開始して5分経ちます」

 

「やはりどのチームも動かないか。相澤くん、わざわざ勇学園の生徒達が来てくれているのにこんな地味な訓練で良かったのか?」

 

「ウチも勇学園の生徒達も憧れのヒーロー科に入って血気盛んな時期。こういう時だからこそ戦いを避け自分を律して行動する事を学ばせる必要があるんですよ」

 

「確かに一理あるが…」

 

 そう言ってオールマイトが森を覗くと、森の奥から爆発の光と音と共に爆煙が上がる。

 それを見たオールマイトは、ニカッと笑みを浮かべる。

 

「そうでない生徒もいるようだ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方爆発の中心では、爆豪が暴れていた。

 

「誰が来ようが片っ端からブッ潰す」

 

 一方、その近くの崖の上ではEチームの耳郎が索敵をしていた。

 

「爆豪の声。足音は一人分」

 

「一人で来てんのか!」

 

「調子乗りすぎ☆」

 

「よっしゃ、全員で仕留めっぞ!」

 

 Eチームは、全員で爆豪を仕留めにかかった。

 爆豪が森の中を走っていると、崖の上からネビルレーザーが降ってくる。

 爆豪は、咄嗟にネビルレーザーを避けて空へと飛び上がった。

 だがその直後、峰田のボールが大量に飛んでくる。

 爆豪は、峰田の攻撃を避けつつ、Eチームは耳郎の探索のおかげで自分が一人で来ている事を知っていると確信する。

 

「耳女か!!」

 

「うわああああ!!」

 

 爆豪が地面を爆破すると、耳郎が爆音にやられて頭を抱える。

 するとその直後、峰田が爆豪に大量のボールを投げてくる。

 

「くたばれー!!」

 

「戴き☆」

 

「オラア!!」

 

 峰田がボールを投げ、青山もネビルレーザーを放とうとすると、爆豪は爆破で峰田のボールを吹き飛ばす。

 すると峰田のボールは青山の方へと飛んでいき、青山に引っ付いた。

 そして青山はその勢いで転倒し、下で耳郎を介抱していた上鳴の方へ転がっていった。

 

「「うわあああああああ!!」」

 

 青山にぶつかった上鳴は大量のボールがくっつき、耳郎は耳を塞ぎながら悶絶していた。

 

「せめて女子にしてくれ…! つうか取れねえ」

 

 一気に三人が戦闘不能に陥ったのを見て、峰田が悔しがる。

 

「爆豪の奴…」

 

「呼んだか?」

 

「!?」

 

 爆豪の声に反応した峰田が振り向くと、後ろには悪人面を浮かべた爆豪が立っていた。

 それを見た峰田は、絶望の表情を浮かべる。

 

「あ…あああ…あああああ…」

 

 Eチームは、そのまま4人まとめて爆豪にテープで雁字搦めにされて全員脱落した。

 爆豪にやられた峰田は、ポツリと呟く。

 

「酷え…」

 

 その頃緑谷達Aチームは、急に爆発音が止んだ事に疑問を抱いていた。

 

「爆発音が止んだ…?」

 

「どうなってんだろう…」

 

 緑谷と麗日は、キョロキョロと辺りを見渡していた。

 一方飯田達Dチームは、爆豪を捕縛しにかかっていた。

 

「行け、黒影(ダークシャドウ)

 

「アイヨ!」

 

 常闇が命令すると、黒影(ダークシャドウ)は爆豪に突進する。

 だが爆豪は、怯む事なくDチームに特攻を仕掛ける。

 

「相性悪いって…言っただろうが!!」

 

「イヤアアア!!」

 

 爆豪が爆破を放つと、黒影(ダークシャドウ)は悲鳴を上げる。

 

「くっ…」

 

「任せろ!」

 

 常闇の次は、機動力に長ける飯田が爆豪を捕縛しにかかった。

 爆豪が逃げると、飯田が爆豪を追う。

 

「逃がさん!!」

 

 だがいつの間にか爆豪はいなくなっており、代わりに飯田の目の前には捕縛テープが張られていた。

 

「!! しまったぁぁ!!」

 

 飯田は急ブレーキをかけるが、そのまま爆豪の罠に嵌り捕縛されてしまった。

 爆豪は、そのままDチーム全員を捕縛してしまった。

 するとそこへ他のBチームが駆けつけてくる。

 

「爆豪さん! 先行しすぎですわ!」

 

「敵はどこに?」

 

「終わってるよ」

 

 切島が尋ねると、爆豪はテープで拘束されてまとめて吊るされた4人を指差す。

 

「一人で8人を…」

 

「味方だと頼りになり過ぎだろ!!」

 

 爆豪の無双っぷりに、八百万と切島がツッコミを入れる。

 すると爆豪は他の三人に尋ねる。

 

「陰気野郎はどこにいる!?」

 

「誰の事だ?」

 

「勇学園の奴だよ!」

 

 爆豪に対して障子が尋ね返すと、爆豪はキレながら答えた。

 一方その近くの崖の上では、Fチームの赤外がBチームを監視していた。

 

「チームに合流したわ。距離100m。移動開始」

 

「すごいわね…あの爆豪とかいう人」

 

「ケッ」

 

 赤外が報告すると万偶数が驚き、藤見が不貞腐れる。

 すると赤外が目を見開く。

 

「! こっちに向かってる」

 

「よし打弾! ダダーンといけ!」

 

 赤外が報告すると、藤見が多弾に指示を出す。

 

「正直戦いは苦手なんだけど…」

 

「距離80m」

 

「ヒッ!」

 

 多弾が戦闘を渋っていると、赤外がBチームが接近している事を報告し多弾が震え上がる。

 すると多弾は、開き直ったのか突然笑い出す。

 

「ハッ…ハハハッ…そうさチームの為さ!! 全員焦土にしてやんよ!!」

 

 そう言って多弾は、コスチュームに開いた穴から大量のロケットを発射した。

 その頃、耳で探索していた障子が目を見開く。

 

「来る!」

 

「何が?」

 

「あれって…ミサイル!?」

 

 八百万が空を見上げると、大量のミサイルがBチームの方に飛んできていた。

 その直後、大量のミサイルが森中に降り注ぎ、森全体に爆音が響き渡る。

 

「今の何!?」

 

「凄い音!!」

 

 ひなた達Aチームは、耳を塞いで爆音を耐え凌いでいた。

 ひなたも、ヘッドホンの音量を最小限に絞る事で何とか耐えていた。

 

「勇学園が動き出した…?」

 

 その頃Fチームは、Bチームを探していた。

 

「おかしいわね。生体反応が見当たらないわ」

 

「まさか、逃げられちゃったんじゃ…」

 

「いくらフラッシュバンとはいえ…これだけ広範囲に撃ったんだからそんな事は…」

 

「この辺りで気絶してる筈なんだけど」

 

 赤外は、自身の“個性”で索敵をしながら言った。

 すると藤見が悪態をつく。

 

「ハッ、本物のミサイル撃ち込んでやりゃ良かったな」

 

「おいコラ!」

 

 突然爆豪の声が聞こえてきたため藤見が振り向くと、後ろの木に貼り付いていた保護シートが剥がれてBチームの4人が出てきた。

 

「いちいちムカつく野郎だな」

 

「あの一瞬で…!?」

 

「ぐ…」

 

 爆豪がヒーローらしからぬ笑みを浮かべながら言うと、赤外が驚き藤見が悔しがる。

 藤見は、自身のコスチュームを作動させていた。

 

「覚悟は出来てんだろうな?」

 

 爆豪がそう言ってFチームに特攻を仕掛けようとすると、万偶数が前に出る。

 

「私に任せて!」

 

 万偶数は、そう言って両目を光らせた。

 すると万偶数の目の光をを見た爆豪以外のBチーム三人はその場に倒れる。

 

「この隙に攻撃を!」

 

「! 見て!!」

 

 多弾が頭上を指すと、空中に爆豪が浮いていた。

 

「!? 弛緩する前に跳躍!?」

 

「たった3秒程度かよ。小っちゃい“個性”だなおい!!」

 

 万偶数の“個性”が解けた爆豪は、爆破で4人に特攻を仕掛ける。

 すると藤見が怒りを露わにする。

 

「バカにすんな…!」

 

「ブッ潰す!!」

 

「舐めんな!!」

 

 爆豪が爆破を繰り出しながら拳を振りかぶると、藤見も拳を振りかぶる。

 

「藤見ダメよ!!」

 

 赤外は藤見を止めようとするが、藤見は聞かずにコスチュームから煙を放った。

 藤見の放った煙は爆豪を覆い尽くし、そのまま森全体へと広がっていく。

 

「こ、これは…!?」

 

「藤見のバカーッ!!」

 

 八百万は藤見の煙を見て驚き、赤外は口を塞ぎながら藤見を責めた。

 一方、爆豪にやられたDチームはというと。

 

「何だこりゃ!?」

 

「いかん! 吸ってはダメだ!」

 

 瀬呂が謎の煙に驚いていると、飯田が叫ぶ。

 そして同じくEチームはというと。

 

「ピンクのガス?」

 

「エロくない?」

 

 耳郎が謎の煙に驚いていると、峰田が場違いな発言をした。

 一方、森の中に隠れていたAチームはというと。

 

「何だろうあれ?」

 

「まさか毒ガス…!?」

 

「分からないけど、近づかない方がいいわ」

 

「安全な場所へ行こう!」

 

 緑谷が指示を出し、5人はすぐに森から抜け出した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、高台から様子を見ていた相澤がオールマイトに進言していた。

 

「あのガス…勇学園の生徒の資料を読みましたが、かなり厄介な“個性”ですよ。訓練は中止にした方が…」

 

「いや、この状態こそまさにサバイバルと言える。大丈夫! いざとなったら私が止めに行くさ!」

 

「ハア…頼みますよホント」

 

 オールマイトが楽観的な発言をすると、相澤が呆れ返ってため息をつく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、ひなた達5人は森から抜け出していた。

 するとその途中、轟達Cチームと合流する。

 

「あっ、轟くん!」

 

「ひー君! 良かった無事だったんだ!」

 

「ひなた!」

 

 緑谷は轟に声をかけ、ひなたは心操の方へ手を振った。

 すると轟が緑谷に話しかける。

 

「緑谷、今は争ってる場合じゃねえ」

 

「う、うん」

 

「あのガス、何だか分かるか?」

 

「多分、勇学園の人の“個性”だと思うけど…効果までは…」

 

「待って!」

 

 緑谷が分析していると、突然ひなたが何かに気付いて足を止め、緑谷も足を止める。

 すると麗日も足を止めて尋ねる。

 

「どうしたの? デクくん、ひなたちゃん」

 

「あれ…」

 

 ひなたが指を差した先では、煙が僅かに揺らぎ人影が映っていた。

 

「誰か来る…!」

 

「ガスから逃げてきたのかしら」

 

 緑谷と蛙吹はガスから逃れたクラスメイトが助けを求めているのかと思い、麗日が叫ぶ。

 

「おーい! こっち! こっ…ち………あっ、あれ…」

 

 煙が晴れて向かってきていた者達の正体がわかると、麗日は目を見開く。

 ひなた達の方に向かって来ていたのは、ゾンビと化したBチームだった。

 

「ヒッ…」

 

「ゾ…」

 

「「「「ゾンビだぁぁぁ!!!」」」

 

 ゾンビ化したBチームを見たAチームとCチームは、一斉に叫び声を上げる。

 

「いやあああああ!!!」

 

 オカルト系の物が苦手なひなたは、ギャン泣きしながら心操にしがみ付いていた。

 

 

 

 藤見露召呂

 “個性”『ゾンビウイルス』

 周囲にウイルスを撒き散らし感染させる! 

 感染するとどんな攻撃でもダメージを受けない! 

 代わりに思考が停止する! 

 さらに凶暴化して攻撃力まで増す! 

『ああ…』って言う!! 

 …つうかこれ、ヒーローが使う“個性”か? 

 危険過ぎるだろ! 

 

 

 

「羽生子ちゃん…」

 

「皆どうして…」

 

「あのガスを吸ったせいだ! 完全にゾンビになっちゃってる…!」

 

「摩訶般若波羅密多心経観自在菩薩行深般若波羅密多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色…」

 

「恐怖心でひなたが壊れた…」

 

 ゾンビ化した他のクラスメイトを見て、蛙吹、麗日、緑谷は目を見開いていた。

 一方ひなたは、心操にしがみ付いたままブルブル震えてひたすらお経を唱えていた。

 するとそこへ、藤見が現れる。

 

「ハハハハ! どうだ俺の“個性”は!? 雄英なんぞ大した事…」

 

 藤見が自分の“個性”を自慢していると、緑谷と麗日が藤見を、厳密には藤見の後ろを指差す。

 するとその直後、ゾンビ爆豪が藤見の首元に噛み付いた。

 

「オーマイガー!!」

 

 爆豪に噛まれた藤見は、その場に倒れ込む。

 

「かっちゃん、ゾンビになってもしつこい…」

 

「不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法無眼界乃至…」

 

 ゾンビになっても執拗に藤見を狙う爆豪に緑谷がツッコミを入れ、その後ろでは心操のひっつき虫と化したひなたがひたすらお経を唱えていた。

 

「ケロ」

 

 蛙吹が目を見開いたその直後、藤見がゆっくりと手を伸ばしてくる。

 

「あ…あ…ああああ…」

 

 爆豪に噛まれた藤見は、自分もゾンビになっていた。

 

「え…映画と同じだ…! 噛まれたらゾンビになるんだ!」

 

「使った本人がアレじゃ…“個性”を解く方法も聞き出せないな」

 

「唯一何とか出来そうなひなたもこのザマだ」

 

「亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無所得故菩提薩垂依般若波羅蜜多故心無圭礙無圭礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多…」

 

 心操が自分の背中を指差すと、ひなたは心操にしがみついてお経朗読マシンと化していた。

 

「だったら…」

 

 轟は、足元から氷を出してゾンビ達を凍らせた。

 

「やった!」

 

 だがゾンビ達は簡単に氷を砕き、女子である八百万ですらいとも簡単に氷を蹴飛ばしていた。

 

「ヒッ!?」

 

「やっぱり映画と同じだ! 力が増してる!」

 

「しまった!」

 

「「ああああああ!!」」

 

 尾白と葉隠は、それぞれゾンビ切島とゾンビ常闇に噛まれていた。

 二人に噛まれた尾白と葉隠は、ゾンビと化した。

 

「尾白くん!! 葉隠さん!!」

 

「「ああ…」」

 

「葉隠、ゾンビになってるんだよね?」

 

「多分…」

 

 ゾンビ化しても透明な葉隠を指差して、芦戸と麗日がツッコミを入れる。

 

「ああ…」

 

 そして峰田はというと、ゾンビ化しても赤外にセクハラをしていた。

 

「峰田くん…何という執念…!」

 

 ゾンビになっても変態な峰田に対し、緑谷はツッコミを入れていた。

 

「ねえどうすんの!?」

 

「とりあえず、ここを離れよう!!」

 

 芦戸が尋ねると、緑谷が指示を出す。

 するとその直後だった。

 

「「あぁ〜…」」

 

「ヒッ!!」

 

 ひなたの方にもゾンビが押し寄せ、ひなたは思わずビクッと肩を跳ね上がらせる。

 そしてゾンビ軍団がひなたの方へ襲いかかってきた、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

『ぎゃああああああああああああああ!!!!! ゾンビいやあああああああああああああ!!!!!』

 

 

 

 

 

 ひなたは、パニックを起こすあまり、普段では到底出せないような大声を出して叫んだ。

 完全にパニックを起こしているため、“個性”の制御などできるはずもなく、ビリビリと殺人級の大音量が響き渡る。

 

「くっ…!?」

 

「うっるさ…!!」

 

「ケロォ…! ひなたちゃん、気を確かに…!」

 

 いきなり至近距離で爆音を喰らった緑谷達は、咄嗟に耳を塞いで鼓膜が破れるのを防いだ。

 この大音量が功を奏し、周りにいたゾンビ軍団は藤見の“個性”が解けて元に戻った。

 

「…あれっ? 俺達、何し…」

 

 だが…

 

「ぎゃあああああ!! うるっせええ!!」

 

「痛い痛い、鼓膜破れる!!」

 

「ちょ、誰かひなちゃん止めろ!!」

 

「無理だって、今“個性”出ねえもん!!」

 

「おい!! これやめろクソ触角!! 聞いてんのか!!」

 

 A組の生徒達は、目覚めた瞬間に爆音を喰らい、耳を塞ぎながら悶えていた。

 ひなたの声のせいで“個性”を消され、近づく事すらできないので誰もひなたを止められない。

 普段は喧嘩腰の爆豪も、耳を塞ぎながらひなたを罵倒する事しかできなかった。

 

「何この音量、プレゼントマイク!?」

 

「クッソ、雄英…! ふざけやがって…!」

 

「元はと言えばあんたのせいでしょ藤見!!」

 

 一方で、万偶数はひなたの爆音攻撃にプレゼントマイクを連想しており、自分が今爆音を喰らっているのは雄英のせいだと逆恨みする藤見を赤外が怒鳴っていた。

 ゾンビ攻撃は確かに厄介だが、殺人級の“個性”破壊音波の方が段違いに厄介だった。

 結果としてゾンビ化の解除には成功したものの、事態は余計に悪化していた。

 するとその時、突然ひなたの爆音が鳴り止む。

 当の本人は、意識を失って泡を吹いていた。

 生徒達がもしやと思い後ろを振り向くと、爆音対策に耳栓をつけた相澤が一際高い塔の上に立っていた。

 

「…お前ら、静かにしろ」

 

 相澤が拡声器を通して地を這うような声で生徒達を威圧すると、生徒達は「シン…!」と静まり返った。

 こうして勇学園を招いた授業が終わった。

 一方で、授業が終わった後のオールマイトはというと。

 

「私の出番…」

 

 結局、授業中はほとんど活躍の機会がなかったため、少ししょげていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、A組と勇学園の生徒達は別れる時が来た。

 

「皆さん、本当にすみませんでした」

 

 自分のクラスメイトの失態で迷惑をかけた赤外は、A組に謝る。

 すると八百万と飯田も頭を下げる。

 

「とんでもありませんわ」

 

「こちらこそ申し訳ありませんでした! さあ、爆豪くんも謝れ!」

 

「藤見も謝って!」

 

 飯田と赤外は爆豪と藤見に謝るよう言うが、二人は不貞腐れて意地でも謝ろうとしなかった。

 

「「謝れ(って)!!」」

 

「「ケッ!」」

 

 飯田と赤外が怒鳴ると、爆豪と藤見は歪みあった。

 一方で、蛙吹は万偶数と一緒に話をしていた。

 

「羽生子ちゃん、今日は会えて嬉しかったわ」

 

「私もよ、梅雨ちゃん」

 

「ゾンビになったり…」

 

「うるさかったりしたけど…」

 

「でも、楽しかったわ!」

 

「一緒にいられて嬉しかった!」

 

「羽生子ちゃん、立派なプロヒーローを目指してお互いに頑張りましょう」

 

「ええ、絶対に!」

 

 蛙吹と万偶数は、抱き合って互いの夢を応援し合った。

 一方でひなたは、多弾に話しかけていた。

 

「だー君!」

 

「は、はい…えっと、僕の事でしょうか…?」

 

「そ! あのねえ、森の中に隠れてる時凄い音したんだけどさ! キーンって! あれ何、フラッシュバン? ヤバかったね!」

 

「あれは僕の“個性”で…僕の“個性”は『ミサイル』、色んな種類のミサイルを出せるんです」

 

「へー! 凄いねえ!」

 

「そんな…僕はチームの為にやっただけで、正直戦うのは苦手で…」

 

「そうなの? でもでも! 僕ね、もっと自信持っていいと思うな! 超カッコいいし!」

 

 多弾が謙遜していると、ひなたはニコッと微笑みながら言った。

 すると多弾は、緊張したのかさらにダラダラと汗をかく。

 

「あっ、えっ、えっと……」

 

「んでさ、ライン交換しよ…って、大丈夫? 今日そんなに暑い? 汗すごいけど…」

 

 ひなたが触角を揺らしながら多弾に話しかけると、多弾はドキッとする。

 するとそれを見ていた上鳴と峰田が顔を見合わせた。

 

「おい、見ろよアレ…」

 

「魔性の女だ…!」

 

 上鳴と峰田は、普段自分達が女として見ていないひなたが他校の男子をドキドキさせているのを見て、わなわな震えていた。

 一方で、心操は藤見に声をかけていた。

 

「なあ、あんた…」

 

「あ? 何だよ。お前ら雄英生と馴れ合う気なんか無えよ」

 

「あんた、入試会場にいなかったか?」

 

 心操が言うと、藤見が僅かに目を見開く。

 実は心操と藤見は同じ会場で筆記試験を受けており、この頃は『どうせヒーロー向きの“個性”じゃないから』と捻くれていた心操は同じ匂いがする藤見の事をたまたま覚えていたのだ。

 

「…チッ、そんな細けえ事よく覚えてんな。ああそうだよ。落ちたんだよ。あんな試験じゃ点稼げなくてよ」

 

「………」

 

「試験に受かったからってあんな奴ばっかりちやほやされてよぉ…気に入らねえんだよ。(ヴィラン)向きの“個性”はヒーロー目指すなってか!?」

 

 藤見が不満をぶつけると、心操は僅かに目を見開く。

 心操は、何故自分が藤見の事を覚えていたのかをようやく理解した。

 藤見をかつての自分と無意識のうちに重ねていたのだ。

 藤見がやたらと雄英生だからという理由で自分達にキツく当たり、“個性”をひけらかしてきたのは劣等感によるものだった。

 この訓練でA組を完膚なきまでに負かす事で、自分の方が上なのだと証明したかったのだ。

 

「で? バカにする為に話しかけてきたのか?」

 

「バカになんてしねえよ、だって…俺も同じだったから」

 

「!」

 

「“個性”が(ヴィラン)向きだとか言われて、俺の味方は父さんと母さんだけだった。それでも俺は、オールマイトみたいなヒーローに憧れた。俺は運良く俺の事を認めてくれる奴に出会えたからここにいるってだけで、お前と何も変わらないよ」

 

 心操が首を手で押さえながら言うと、藤見は僅かに目を見開く。

 すると、ひなたが藤見の方へ走ってきて話しかけた。

 

「あのさ! 君の“個性”見てて思ったんだけどさ、ゾンビはダメージ受けないんだよね? だったらいっそ開き直って救助方面に“個性”使ってみるっていうのは…「エグくね?」

 

 ひなたが触角をピコピコさせながら言うと、心操がツッコミを入れる。

 

「藤見、絶対立派なヒーローになれよ」

 

 心操は、右手を差し出しながら藤見に声をかけた。

 すると藤見は、フンッと鼻を鳴らして踵を返す。

 

「言われなくてもお前らより立派なヒーローになってやんよ」

 

 相変わらず生意気そうな藤見だが、これを機に少しだけ雄英生との距離が縮まっていた(ただし爆豪は例外)。

 勇学園の生徒達を見送った後の道は、夕日に照らされてすっかりオレンジに染まっていた。

 

 

 

 

 

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