抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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授業参観編
うるわしの4人娘


 職場体験が終わり、やってくる期末テストに向けてそれぞれが備えはじめた、とある日。

 

「次、緑谷」

 

 荒廃した街の中で、地上から相澤が生徒達のいるビルの三階に向かって声をかけた。

 ビルは今にも崩れそうなありさまだ。

 

「はいっ」

 

 相澤に呼ばれた緑谷は、少し緊張した面持ちでそう返事をする。

 

「デクくん、がんばって!」

 

「うん!」

 

 後ろで順番を待つ女子達の中から顔を覗かせ、朗らかに麗日が声をかける。

 その麗らかな笑顔に、緑谷は思わず頰を赤らめながら頷き、三階から地上へと繫がっている袋の中へ入っていく。

 避難で使う垂直式救助袋、滑り台の要領で建物の高いところにいる人を地上に避難させるために使う器具だ。

 

「っと」

 

 わずかな浮遊感の後、緑谷は救助袋を出て無事着地した。

 

「よし、男子は全員終わったな。次は女子。八百万」

 

「はいっ」

 

 相澤が声をかけると、八百万が返事をし降りてくる。

 

「ふうっ」

 

 無事着地した八百万を待ちかまえていた峰田が、なぜだか盛大にため息を吐く。

 

「どうしたの? 峰田くん」

 

 緑谷が聞くと、峰田はさらにため息を吐いた。

 

「緑谷、女子が滑り台で滑るっていえばめくれるスカートだろうが! なのになんで体操服なんだよ……知ってたけど! 味気も色気も仏もありゃしねえよ!!」

 

 峰田が残念そうに言うと、突然峰田の目にザクッと何かが突き刺さる。

 

「ぎゃあああああ!!!」

 

 目を潰されてのたうち回る峰田の前には、八百万の次に降りてきたひなたが八百万を庇う形で立っていた。

 ひなたは、鋭い目つきを向けながら、シュッシュッと二本の指を立てた右手を前に突き出していた。

 

「セクハラ絶許」

 

「ブレないわね、峰田ちゃん」

 

 お約束とでも言うべきやり取りに、ひなたの次に降りてきた蛙吹がツッコむ。

 

「そうだぞ、峰田くん。いちいちスカートがめくれていては授業にならないだろう? 動きやすさを重視した体操服で避難訓練をするのは合理的……いや、待てよ。これが現実の避難だと仮定するとスカートをはいている女性は多々いるだろう。なるほど、より現実味を増すためのスカートというわけだな!」

 

「いや、多分違うと思うよ」

 

 ハッとして納得する、真面目が服を着て歩いているような飯田に、緑谷は困ったように笑いながら言う。

 

「ニヤニヤしてんじゃねーよ、クソデク」

 

 そんな緑谷に不機嫌そうな声が投げかけられる。

 

「かっちゃん……」

 

 少し離れて、鋭い目で睨んでくるのは爆豪だ。

 不機嫌そうなのも緑谷に暴言を吐くのも日常茶飯事。

 それでも中学の頃と比べれば、むやみやたらに周囲に突っかかる頻度は減った。

 

「つーか、避難訓練なんてクソダリィ」

 

「何を言ってるんだ、ヒーローたるものいついかなる時でも人命救助は最優先だろう! その人命を救う救助器具を学ぶのはとても重要な事。有意義な授業じゃないか!」

 

「知るか。人には向き不向きがあんだよ。俺が(ヴィラン)をぶっとばしてる間に他の奴らがやっときゃいいじゃねーか」

 

「なっ、君は本当にヒーロー志望なのか!?」

 

 人一倍正義感が強い飯田と、人一倍では足りないほど自尊心が強い爆豪が相容れるはずもない。

 爆豪に詰め寄ろうとする飯田を、緑谷は慌てて押さえた。

 

「飯田くん、落ち着いて!」

 

「まあ、向き不向きがあるのは確かだな」

 

 近くにいた轟がそう呟く。

 

「轟くんっ?」

 

「爆豪が人命救助してるところは想像できねえ」

 

「……っんだと、てめえ!」

 

「あーわかる、逆に怪我させそう!」

 

「確かにな。あと、言動でシンプルに怖がられそう」

 

「てめーらを先に怪我させてやろうか!!」

 

 上鳴と心操が轟の意見に賛同すると、爆豪は掌の上で爆発を起こす。

 救助袋から降りてきた女子達が騒ぎにきょとんとしているのに対して、男子はわらわらと止めに入ったり、呆れたりしている。

 収拾がつかなくなってきたところで、静かな声が響いた。

 

「…お前ら、今何の時間かわかってんのか」

 

 相澤の地を這うような声に、A組の生徒達は一瞬で姿勢を正し、動きを止めた。

 合理性をモットーに生きている相澤の恐ろしさは、ここ数か月で身に染みている。

 相澤は“個性”を発動し、瞳を赤く光らせていた。

 大人しく生徒達の様子に、相澤はいつも通りの無気力そうな目に戻って口を開く。

 

「向いてるとか向いてねえとかさっき言ってたが、現場でそんな言い訳は通用しねえからな。やる事当たり前にできてこそプロヒーローなんだよ。救助隊や警察が間に合わなかった場合、避難の誘導をするのも務めだ」

 

「救助、避難、撃退。ヒーローに求められる基本三項ですよね」

 

「その通り」

 

 相澤が説明すると、ひなたが相澤の発言に補足する形で発言し、相澤が頷いた。

 葉隠が挙手をしながら尋ねる。

 

「誘導するくらいなら救出したほうが早いんじゃ?」

 

「誘導するくらい大勢の場合という事では?」

 

 八百万がそう言うと、相澤は小さく頷いた。

 

「そうだ。一人や二人なら救出は難しくないだろう。だが、大勢いた場合は救助器具が大いに役立つ。いざ、その時になって使い方がわからねえんじゃ話にならないだろ。だから一通りの救助器具のカリキュラムがあるんだよ。わかったか、爆豪」

 

「……っス」

 

 名指しされた爆豪は小さく呟いた。

 そんな爆豪の近くで、緑谷が小さくハッとしてブツブツと呟きだす。

 

「そうだ、大勢を避難させるのに救助器具と“個性”を組み合わせるのはどうだろう……? 例えば麗日さんの何かを浮かせる“個性”とか瀬呂くんのテープとか……峰田くんのくっつくボールも使えそうだ。相澤さんの『声』や心操くんの『洗脳』も、パニックになった人達を鎮めるのに有効そうだし…プロヒーローなら……うひょお、組み合わせは無限のバリエーションがあるな……!」

 

「おお、デッくんって感じだぁ」

 

 緑谷がブツブツと呟くと、ひなたは触角をピコピコさせて反応した。

 最初は緑谷のブツブツに対しいちいち驚いていたひなただったが、今ではもはやお約束のようなものとして受け入れていた。

 

「じゃ、次は……」

 

 その時、相澤の声を遮るように、空から空を切るような音が響く。

 騒音に驚いた生徒達が上空を見上げると、一台のヘリコプターが降下してきた。

 そしてそのヘリコプターから、巨体がバッと飛び降りてくる。

 

「空から……私が来たー!!」

 

「オールマイト!?」

 

 ズシンッと大地を轟かせて着地したのは、マッスルフォームのオールマイトだった。

 オールマイトは、白い歯を見せてニカッと笑った。

 

「やぁ遅れてすまないね、諸君! ちょっと出がけに(ヴィラン)を捕まえてきたものでね!」

 

「全くですよ。本来ならあなたの担当時間だったんですから」

 

 呆れ返る相澤とは対照的に、緑谷は目を輝かせながらオールマイトに話しかける。

 

「もうネットニュースになっています! お昼休みにチェックしました! 銀行強盗を捕まえたんですよね!?」

 

「おや、もう一つの立て籠もりの方はまだニュースになっていないようだね」

 

「っ…流石オールマイト!」

 

 オールマイトが感心したように言うと、緑谷はさらに興奮する。

 するとオールマイトは、緑谷を諭すように言った。

 

「緑谷少年、賞賛はありがたいがもうおなかいっぱいさ。ヘリをいつまでも待たせておくわけにはいかない」

 

「ヘリ? オールマイトを運んできただけじゃ……」

 

「緊急時でもあるまいし、私の登場だけで使うワケないだろう?」

 

「オールマイトが本気出したらビルの上跳んでった方が速いですもんね」

 

「確かに…!!」

 

「よせやい!!」

 

 疑問を抱いている様子の緑谷にオールマイトが当然のように言うと、ひなたが若干呆れたように笑顔を浮かべながら言った。

 ひなたの指摘に緑谷がハッとしていると、オールマイトはHAHAHAと高笑いした。

 

「さ、これからヘリによる救助訓練さ! アーユーレディ!?」

 

「さっすがヒーロー科……」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後は、ヘリによる雪山、水辺での救助訓練を終えた生徒達は、教室に戻ってきていた。

 

「オイラ、海で溺れたら人工呼吸は女子にしてもらうんだ……思わず息の根止まっちまうようなディープなヤツを……!」

 

「その前に、もう止まってんじゃねえ?」

 

「煩悩の塊……」

 

 峰田と上鳴の会話に、近くの席の常闇が呟く。

 その会話を聞いていたひなたは、もし自分が溺れた時に心操が助けてくれたらと妄想して顔を緩ませる。

 そして、コソッと心操に尋ねた。

 

「ねえひー君…もし僕が海で溺れたらどうする?」

 

「お前はまず溺れないから大丈夫だろ」

 

「う…!」

 

 ひなたが尋ねると、心操がバッサリ切り捨て、ひなたは顔を引き攣らせる。

 するとその時、相澤が教室に入ってきた。

 その瞬間、全員が席に戻り背を伸ばす。

 

「はい、おつかれ。さっそくだが再来週、授業参観を行います」

 

「「「授業参観ー!?」」」

 

 相澤の言葉に、生徒達は一斉に声を上げた。

 

「ヒーロー科でもそういうのあんだな」

 

 切島は、生徒達を代表するように呟いた。

 生徒達がざわついている間に相澤が授業参観のプリントを後ろに回すように言いながら前の席に配っていく。

 

「プリントは必ず保護者に渡すように。で、授業内容だが保護者への感謝の手紙だ。書いてくるように」

 

 その発表に教室は一瞬静まり、それからドッと笑い声が響いた。

 

「まっさかー、小学生じゃあるまいし!」

 

 明るい調子で上鳴が言ったクラスの総意を、相澤が切る。

 

「俺が冗談を言うと思うか?」

 

 相澤の静かな威嚇に瞬時に静まり返る教室。

 

「いつもお世話になっている保護者への感謝の手紙を朗読してもらう」

 

「マジでー!? 冗談だろ!」

 

「流石に恥ずいよねぇ……」

 

 教室がざわつく中、飯田がサッと立ち上がり腕を直角に振りながら叫んだ。

 

「静かにするんだ、皆! 静かに! 静かにー!!」

 

「飯田ちゃんの声が一番大きいわ」

 

「ム、それは失礼」

 

 蛙吹の指摘に、飯田は素直に謝罪した。

 

「しかし先生、みんなの動揺ももっともです。授業参観といえば、いつも受けている授業を保護者に観てもらうもの。それを感謝の手紙の朗読とは、納得がいきません! もっとヒーロー科らしい授業を観てもらうのが本来の目的ではないのでしょうか!?」

 

 鼻息荒く話した飯田に、相澤が答える。

 

「ヒーロー科だからだよ」

 

「それはどういう……」

 

 相澤がクラスを見回し、話し出す。

 

「お前達が目指しているヒーローは、救けてもらった人から感謝される事が多い。だからこそ、誰かに感謝するという気持ちを改めて考えろって事だ。ま、プロになれるかどうかまだわからないけどな」

 

「……なるほど! ヒーローとしての心構えを再確認する、そしてヒーローたる者、常に感謝の気持ちを忘れず謙虚であれ、という事を考える授業だったのですね! 納得しました!!」

 

「納得はやっ」

 

 飯田の変わり身の早さに、麗日が吹き出した。

 もはやクラスは、諦めムードだった。

 

「ま、その前に施設案内で軽く演習は披露してもらう予定だが」

 

「むしろそっちが本命じゃねえ!?」

 

 相澤の言葉に、上鳴が全員の心の声を代表して叫んだ。

 一方で、相澤の話を始終無言で聞いていたひなたはというと。

 

「………」

 

(皆の話についていけん!!)

 

 ひなたは、カッと目を見開いて心の中でツッコミを入れた。

 ひなたは両親がどちらも雄英の教師なので、授業参観の意味がなかった。

 クラスメイトの話についていけずに寂しがっているひなたを、心操は遠目で見ていた。

 ホームルームの後、相澤はひなたを呼び出して声をかけた。

 

「おい相澤、ちょっとこっち来い」

 

「え、何ですかヤダ怖い」

 

 相澤に呼ばれたひなたは、若干憂鬱そうな表情を浮かべながらもついていく。

 その様子を、心操は目で追いかけていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、時は進み授業参観前日。

 ひなたは、夕食の食材を買うためスーパーに向かっていた。

 

「今日の夕飯どうしよっかなぁ。ガツンとお腹にたまるもの食べたいけど、そうすると食費がなぁ…」

 

 ひなたは、スーパーのチラシを見ながらうんうんと考え込んでいた。

 本当なら食費を気にせずガツンとしたものを食べられるだけ食べたいものだが、現実問題そうはいかなかった。

 成人男性の10倍は平らげる大喰らいな上に多趣味なひなたは、養父である相澤に迷惑をかけないよう投資やピアノ演奏のスパチャ配信で食費と趣味代を稼いでいたのだが、それでも毎日腹一杯食べて豪遊できる程の稼ぎはなかった。

 なので、材料費を抑えつつ出来るだけ腹に溜まるものを作って食べる生活を送っていた。

 それでも単純に食べる量が桁違いなので、相澤家のエンゲル係数は爆上がりだった。

 そんな中、ふとスーパーのチラシを見ると、キャベツと焼きそばが普段より安い事に気がつく。

 それを見たひなたは、目を輝かせながらグッと拳を握りしめる。

 

「よっしゃ、今日の夕飯は広島焼きだ!」

 

 ひなたは、グッと拳を握りながら今日のメニューを決めた。

 今日の夕飯のメニューは、

 

 ・広島焼き

 ・ちくわの磯辺揚げ

 ・もやしとトマトのナムル

 ・鶏ガラキムチスープ

 

 の4品だ。

 そうと決まれば、あとは必要な材料を買うだけだった。

 

「キャベツと焼きそば♪ キャベツと焼きそば♪」

 

 ひなたは、ルンルンとスキップしながらスーパーへ走って行った。

 するとその時、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 そこにいたのは、スーパーのチラシを見ながら歯痒そうに身悶える麗日だった。

 

「うう、ケチくさぁ〜!」

 

「お茶子っち、どったん?」

 

「ああっ、いいところに! 聞いてよひなたちゃん! このお餅、こんなに安くておいしいのにお一人様一つまでなんだよ!? ケチくさくない!? せめてお一人様、二つ……いや、三つ……いや、せめて四つ……いやいや、五つ……ええい、もういっその事十でどうだ!」

 

 特大お餅パックがどんどん増えていく夢のような妄想に、麗日が思わずたたき売りのような啖呵を切ったところで声がかけられた。

 

「ひなたさんに麗日さん、どうかしましたの?」

 

「何が十?」

 

 声をかけてきたのは、八百万と蛙吹だった。

 

「八百万さん! 梅雨ちゃん! わー! どうしたの? 珍しい組み合わせだね!」

 

「私は本屋に参考書を探しに。その帰りに偶然、梅雨さんにお会いしましたの」

 

「私は足りなくなった便箋を買いに。そういうお茶子ちゃんとひなたちゃんは?」

 

「お夕飯の食材買いに来たんだ〜。今日はねぇ、キャベツと焼きそばが安いから広島焼き!」

 

「うちもスーパーに買い物! 明日、父ちゃんが来るから、食材買っとこと思ってさ」

 

「そういえば麗日さんは一人暮らしでしたわね。自炊しているなんてすごいですわ。大変でしょう?」  

 

 八百万に感心したように言われて、麗日は照れて笑った。

 

「そんな事ないよ~、外食とか出来合いの弁当とか買ってたら食費、えらい事になるからさ。それに手、抜きまくりだし。めんどくさい時はおもち一個とかですませちゃう……」  

 

 そう言いかけて、ハッとする麗日。

 

「そう、おもち~!!」

 

 一転してがっくりとうなだれた麗日に、八百万と蛙吹は顔を見合わせる。

 

「お餅がどうかしましたの?」

 

「それがね……」

 

 麗日がお餅の次第を説明すると、二人はきょとんとしたあと笑った。

 

「さっきお茶子ちゃんが言ってたのは、お餅のことだったのね」

 

「すごい剣幕だったから、何ごとかと思いましたわ」

 

「う……だってね、安いおもちが一袋買えるのと二袋買えるのとは、えらい違うんよ~っ。一か月生き延びるのと、二か月生き延びるのくらい違うんだよ?」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめる麗日。

 そんな麗日に三人が言う。

 

「なら、お餅買うの手伝うわ。一人一つなんでしょ?」

 

「クラスメイトの命が伸びるのでしたら、私もお手伝いさせていただきますわ」

 

「しょーがない、僕もひと肌脱ぎますか」

 

「……女神!!」

 

 天の慈悲かと思うようなクラスメイトのありがたい申し出に、麗日は思わず三人を崇めた。

 三人が止めなかったら思わず跪きそうになったところだ。

 さっそくスーパーへと向かう四人。

 

「おもち四袋~♪ おもち三昧~♪」

 

 スキップしそうな勢いで歩く麗日はご機嫌で、自分で自分を浮かさなくても、そのまま飛んでいってしまいそうだ。

 

「お餅好きねぇ、お茶子ちゃん」

 

「でも、お餅ばっかりじゃ飽きたりしません?」

 

「なに言ってるの、八百万さん! おもちには無限の可能性があるんだよ……! お醬油でしょ、海苔でしょ、海苔お醬油マヨネーズでしょ、バター醬油でしょ、砂糖醬油でしょ、きなこでしょ、納豆でしょ、納豆キムチでしょ、納豆キムチマヨネーズでしょ、大根おろしでしょ、お雑煮でしょ、お汁粉でしょ、チーズでしょ」

 

「そ、そんなに種類がありますの……私、お餅を甘く見ておりましたわ」

 

「甘いおもちなら、意外とチョコもいけるんだよ。これが」

 

「普通に美味しいよね。あと甘い系だったらピーナッツバターとかジャムとか塗って食べるのもアリだよねぇ」

 

「そう! そうなんだよひなたちゃん! パンに合うものはおもちにも合うんだよ! パンが無いならおもちを食べればいいんだよ!」

 

「どこのマリーアントワネットだよ」

 

 麗日がずいっと詰め寄って目を輝かせながら言うと、ひなたがツッコミを入れる。

 お餅の話題で盛り上がる二人に、蛙吹と八百万はついていけない様子だった。

 

「お餅にチョコ? 合うのかしら?」

 

「想像できませんわ……」

 

「八百万ちゃんにも想像できないものがあるのね」

 

「想像したくないと言ったほうが正しいかもしれませんわね」

 

「えー、美味しいのに」

 

「あっ、おもちのお礼にチョコおもちご馳走するよ!」

 

「う~ん、できるなら他の種類だとありがたいですわ……」

 

「えー、騙されたと思って食べてみなよ。絶対ハマるよ!」

 

「私はちょっと食べてみたいかも」

 

「任せて!」

 

 そんなことを話しつつ、スーパーに着いた。

 全国展開しているチェーン店で、食料品だけでなく、日用品や衣類なども取り扱っている大きな店だ。

 

「さっ、行こー! ……ん?」

 

「ここがスーパー……」

 

 自動ドアをくぐり、買い物かごを持ったひなた、麗日、蛙吹が、あたりをキョロキョロと見回す八百万を振り返る。

 

「八百万ちゃん?」

 

「あ、すみません。あまりスーパーに来たことがなくて、つい……」

 

「おお~、お嬢様だ!」

 

「あ、あの、このカートは使いませんの……?」

 

 カゴの隣に置いてあるカートをちらりと見る八百万。

 

「あ、使う?」

 

 麗日がカゴをカートに入れる。

 珍しそうにそれを見ている八百万に、麗日がそのカートを差し出す。

 

「八百万さん、押す?」

 

「えっ、いいんですの? 実は、前からちょっと気になっていて……」

 

 そっとカートを押す八百万。

 

「まぁ、スムーズ! これは腕が疲れなくて便利ですわね」

 

 興奮したような八百万の様子に、蛙吹が無表情だがどこか微笑ましそうに言う。

 

「八百万ちゃん、子供みたいね」

 

「そうねぇ」

 

「なんかかわい!」

 

 ひなたと麗日も同調して頷く。

 八百万は衣類エリアを見て口を開いた。

 

「まぁ、衣類も売っているんですの? スーパーって」

 

「うーん、まあ服は売ってないとこもある、かな」

 

「ぐるっと見てみようか。あ、でもまずは……」

 

「お餅の確保ね」

 

 通いなれた麗日が先導して「こっち」と歩きだす。

 その途中、陳列されている野菜などを八百万がカートを押しながら珍しそうに見回して言った。

 

「麗日さん、人参とじゃがいもの詰め放題ですって! 何に詰めますの? バッグ?」

 

「ビニール袋だよ。バッグに詰めたら万引きやん!」

 

「確かに……」

 

 笑ってツッコミを入れる麗日。

 八百万が少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめてから思い出したように言う。

 

「そうそう、たまにテレビでやってますわね、万引き」

 

「夕方のニュースとかね。物を瞬時に移動させる“個性”とか使ったものだと、発覚しにくいから小さなお店だと大変らしいわ」

 

「この前もあったよね。お腹に袋がある“個性”の女の人が妊婦さんのフリして万引きしてたってやつ」

 

「許せないなっ、小さなとこはいっぱいいっぱいでやってるのに」

 

 実家と重ねているのか鼻息荒い麗日に、八百万も深く頷く。

 

「窃盗ですからね。凶悪な犯罪ばかり注目を集めがちですけど、犯罪は犯罪ですわ。きちんと取り締まらなければ。自分だけが得をしようとする人が多すぎます」

 

 その言葉に、麗日はハッとする。

 

「──今更だけど、お一人様ひとつなのに、友達に頼んで買ってもらうのっていいんかな……!?」

 

 真剣に悩むお茶子に、三人は顔を見合わせてから考えこむ。

 

「……難問ですわ……何しろ、私、こういう事態が初めてなので……」

 

「実家にいた時は家族で並んで買った事はあったけど、友達やろ? こういうのって買収とかそういう汚い大人のやり方なんかな~?」

 

「うーん…まあ、元はといえば安くて美味しいものをより多くの人に行き渡るようにっていうお店側の配慮だもんねぇ」

 

「確かに、誰かが多く買った分、他の誰かが買えなかった……なんて事もあるかもしれないわね」

 

 冷静なひなたと蛙吹の意見に、麗日は引き裂かれそうな心を押さえこむように両手で頭を抱えこんだ。

 

「あかん……ヒーロー志望なのに、他人のおもちと自分の生活費が両天秤で揺れとる……!」

 

「麗日さん……」

 

「あ、あれお餅パックじゃないかしら」

 

 蛙吹が少し離れた場所にそれらしきものをみつける。

 近づいてみると、お餅パック大袋は大量に積んであった。

 

「お茶子ちゃん、このくらいたくさんあれば大丈夫じゃない?」

 

「そうですわ、この中の四袋くらい大海の一滴です」

 

「そうそう! 早く買ってもらったほうがお餅も喜ぶよ!」

 

「そ、そうだよねっ」

 

 三人に励まされるように言われて、一旦は一袋をカゴに入れ、二袋目に手を伸ばそうとした麗日だったが、ぐらぐらと揺れる天秤にその手を止める。

 

「う~、でももしかしたらすぐ大家族がどっと買いにくるかもしらんし……おもちパーティ計画してるかもしらんしぃ~……っ、あ、でも私もおもちパーティしたいなぁ~っ……うう、どないしよ〜っ」

 

「それじゃ、こうしたらどうかしら。もう少し待ってみて、全然減ってなかったら私達も買う。ちょっと減ってたら私、八百万ちゃん、ひなたちゃんの誰かが買う。いっぱい減ってたらお茶子ちゃんだけが買う」

 

「それがいいですわ。売れ残りはお店も避けたいでしょうし」

 

「そうだねぇ。需要と供給のバランス、大事!」

 

「でも、いいの? 三人も、時間は……」

 

「私は大丈夫よ」

 

「平気〜」

 

「私もかまいませんわ。それに、スーパーを見て回るのは、とても興味深いですし」

 

「ありがとう! 三人とも~っ」

 

 かくして、4人はスーパーの中を回って時間を潰す事にした。

 お菓子コーナーなどで昔好きだったお菓子談義に花を咲かせたりしながら、衣類エリアへと移動する。

 

「あ、そういえば梅雨ちゃん、便箋ってもしかして明日の手紙? 授業参観の」

 

「パジャマまで置いてあるのですね」などとはしゃぐ八百万を微笑ましく見ながら、思い出したように麗日が言う。

 

「そう。あと少しってところで便箋がなくなっちゃって。同じ便箋じゃないと気持ち悪いでしょう? お茶子ちゃんはもう手紙書き終った?」

 

「うん! バッチリ! ひなたちゃんは?」

 

「一応ねー。まあでも、ぶっちゃけ僕だけ茶番みたいなもんじゃない?」

 

 ひなたが髪を左耳にかけながら苦笑すると、麗日は「そんな事あらへんよ〜」と麗らかに笑った。

 ひなたは、スーパーではしゃいでいる八百万にも声をかける。

 

「ヤオモモは?」

 

「え? えぇ、もちろんですわ。ただ、やはり個人的な手紙を人前で朗読するというのは少々恥ずかしいですけど」

 

「だよね~。父ちゃんとか大げさにリアクションしそうで、そっちも心配」

 

 苦笑する麗日に蛙吹が言う。

 

「そういえば、お茶子ちゃんの家はお父さんが来るのね」

 

「うん。本当は母ちゃんも来たかったらしいんだけど、話し合いとじゃんけんの末、父ちゃんに決まったみたい」

 

「仲のいいご家族ですわね」

 

「うらやま〜!」

 

「そういう八百万さんの家は?」

 

「母ですわ。そういう行事などは全部」

 

「八百万さんのお母さんか~、なんか上品そう!」

 

「ねぇ! ブルジョワ〜って感じの!」

 

 麗日とひなたは、八百万と似た母親を想像する。

 

「よく子供の頃、友達からそんなことを言われてましたけど、私にとっては普通の母ですわ。でも、しっかりと家庭を守りながらも、自分のことにも気を抜かずにいるのは女性として尊敬しています。でも……少し……おっちょこちょいなところがあるのがたまにキズなんですけど……」

 

「たとえば?」

 

「コーヒーと麵つゆを間違えたり、歯磨き粉で顔を洗ったり、砂糖と塩を間違ったり……」

 

「「ベタベタや!!」」

 

 八百万が恥ずかしそうに言うと、ひなたと麗日が吹き出した。

 蛙吹は、八百万の母の失敗談に苦笑しつつも、八百万をフォローした。

 

「完璧なお母さんより、そういうところがあったほうが親しみが湧くわ」

 

「そうでしょうか……そういう梅雨さんは明日、どなたがいらっしゃいますの?」

 

「ウチはお父さんよ」

 

「梅雨ちゃんのお父さんか! どんな人?」

 

「カエル顔だからすぐわかると思うわ……ケロ?」

 

 ふと、梅雨が何かに気づいたように、麗日と八百万の後ろのほうをじっとみつめる。

 

「どしたの?」

 

「……どうかしたのかしら、あの人」

 

 その言葉に、麗日と八百万が振り返る。

 するとそこには、俯きながらもまるで警戒しているようにあたりを忙しなくキョロキョロと見回している細身の男がいた。

 歳は20歳前後のように見える。

 よく見ると、大汗をかいているのがわかった。

 

「わー、あの人汗だくだ。動悸もドキドキ」

 

「……具合でも悪いのかな?」

 

「それはいけませんわね、倒れる前に……」

 

 八百万が声をかけようと一歩踏み出そうとしたその時、お茶子がハッとした。

 

「──ちょっと待って。あそこ、下着売り場じゃない……?」

 

 男がうろついているのは女性下着コーナー。

 女性物のピンクや白や黒やベージュや紫や赤などなどの華やかな色のお花畑だ。

 明らかに挙動不審な様子に、麗日達は思わずパジャマの陰に隠れる。

 そして、そっと様子を窺った。

 

「……もしかして下着泥棒……」

 

 緊張しながらそう呟いた麗日に、八百万も緊張しながら続ける。

 

「その可能性はありますが、決めつけるのは早いですわ。もしかしたら彼女や奥様へのプレゼントを選んでいるのかもしれませんし……」

 

「自分用の可能性もあるわよ、八百万ちゃん」

 

「た、確かにいろんな趣味の方がいらっしゃいますしね……」

 

 いつもの様子で動じない梅雨の呟きに、八百万が動揺しながらも努めて冷静に呟き返す横で、麗日はめくるめく趣味の世界を妄想した。

 

「無限の可能性やな……」

 

「……なんだか私達、万引きGメンみたい」

 

 麗日と蛙吹が言う中、ひなたは平然とした様子で口を開く。

 

「普通に声掛けに行けばいいじゃん」

 

 ひなたが平然とした様子で言うと、麗日と八百万がギョッとし、蛙吹も無表情ではあったものの顎に指を当てていた。

 八百万は、ひなたの方を振り向いて小声で尋ねる。

 

「な、何を仰っていますのひなたさん!? この状況はどう見ても…」

 

「だから、普通にだよ」

 

 そう言ってひなたは、他の三人が止めようとするのも聞かず、何食わぬ顔で女性下着コーナーに向かった。

 男が焦った様子で白いショーツを手に取りポケットに入れようとしたその時、ひなたが声をかける。

 

「奥さんか彼女さんへのプレゼントですか?」

 

「奥っ、えっ!? あっ!?」

 

 ひなたが尋ねると、男はビクッと肩を跳ね上がらせ、慌てた様子で周囲を見渡した。

 男は自分の間違いに気付くと、すぐに頭を掻きながら取り繕った。

 

「あ、はは…ま、間違えて女性用の下着売り場に来ちゃったのか…僕はただ普通に男用のパンツが欲しかっただけなんだ。じゃぁ、僕はこれで…」

 

 そう言って男が男性用の下着コーナーに行こうとしたその時、ひなたが男性の手首を掴んで止めた。

 

「待って!」

 

「!?」

 

「お財布、見せてもらっていいですか」

 

 ひなたが男の手首を掴んだまま尋ねると、男は見るからに動揺する。

 

「っえ……」

 

「実は今、“個性”を使った万引きが多発してるんです。別に疑うわけじゃないですけど、未然に可能性を潰せるに越した事はありませんから。一瞬見せてもらうだけでいいんで。さぁ」

 

 ひなたが左手を前に出しながら言うと、男はさらに動揺する。

 そして、意を決したかのように腕に力を込めてひなたの手を振り解こうとする。

 

「ご、ごめんなさい、ごめんなさいぃい〜!!」

 

 男はひなたの右手を振り解いて逃げようとしたが、ひなたはさらに男の手首を握る力を強めて逃がさなかった。

 ひなたが少しずつ腕を握る力を強めると、男は顔を真っ青にし、ダラダラと汗をかきながら、その場に膝をついた。

 

「う、うう…! ごめん、なさい…!」

 

 男は膝をつくと、そのまま項垂れて肩を振るわせながら咽び泣いた。

 するとひなたは、男の視線に合わせてしゃがみながら声をかけた。

 

「大丈夫です。僕はあなたを警察に突き出したりなんかしませんから。何か、事情があったんですよね?」

 

 ひなたの言葉に、男が観念したように両手を挙げながら立ち上がると、ひなたはパジャマの陰に隠れていた三人にハンドサインを送った。

 するとパジャマの陰から三人が現れ、ひなたを含めた四人で男に事情聴取をする。

 男は、目に涙を浮かべながらポツポツと話し始めた。

 

「……はいていた下着を汚してしまって……大学に入学して一目惚れした彼女……みゆきさんを、やっとデートに誘えたんだ。四年間、ずっと片思いしてきたみゆきさんとデートできるんだと思うと、もう三日前から眠れなかった……今日は緊張で朝からお腹が痛くて……待ち合わせ前にトイレに行こうとしたらなかなかみつからなくて……それで……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、もらしてしまったんだ……」

 

「「「「あー……」」」」

 

 男の告白にどうリアクションしたものかわからず、四人は曖昧に頷いた。

 

「そんな汚れた下着のまま彼女に会うわけにはいかないだろう!? 下着を捨て、新しい下着を買おうと思ったら……サイフ、家に忘れたのに気づいて……」

 

「あちゃー」

 

 男のついてなさに、麗日は思わず額をペシッと叩いた。

 

「時間は迫ってくるし、早くなんとかしなきゃとパニックになって、つい……」

 

 八百万は同情したように小さく首を振った。

 

「……残念な不幸が重なった末の犯行でしたのね……」

 

「でも別に、はかないままでもよかったんじゃ? ズボンはいていればわからないでしょ?」

 

 首をかしげる蛙吹に、男は叫んだ。

 

「みゆきさんの前でノーパンでいるなんて、そんな失礼な事できないよ……!」

 

 男が言うと、ひなたはキュロットのポケットから財布を取り出す。

 そしてその中から一万円札を取り出すと、男に握らせた。

 

「このお金、使ってください」

 

「えぇっ!?」

 

 ひなたが一万円札を握らせると、男が驚く。

 男は、弱々しく首を横に振った。

 

「そ、そんな…見ず知らずの人からこんなお金、受け取れないよ…!」

 

「万引きして前科つく方が大問題でしょ。ほら! これからデートなんでしょう? 急いで!」

 

 ひなたは、男の背中を押して早く下着を買うよう急かした。

 すると男は、見ず知らずの自分に親切にしてくるひなたに対し、恐る恐る尋ねる。

 

「ど、どうして…万引きをしようとした僕にここまでしてくれるんだい?」

 

「ヒーロー志望、ですんで!」

 

 ひなたは、天真爛漫な笑みを浮かべながらグッとサムズアップをした。

 すると男は、涙を流しながら一万円札を握りしめた。

 

「っ……ありがとうっ、この恩は一生忘れないよ…!」

 

 男は、涙を流しながらひなたに礼を言うと、男性用の下着を購入して急ぎ足でスーパーを出て行った。

 走り去る男の背中を見送った麗日は、微笑ましくも肩の荷が降りたかのようにため息をつく。

 

「これで一件落着、なんかなぁ」

 

「あの人、デートうまく行くといいね」

 

「そうね、お手柄だったわひなたちゃん」

 

「えへへ…」

 

 蛙吹がひなたを褒めると、ひなたは僅かに顔を赤くして頭を掻いた。

 すると八百万がひなたに尋ねる。

 

「その事なのですが…ひなたさんはどうやってあの状況であの男性の素性を見抜いたんですの?」

 

「ん? 別に見抜いてたわけじゃないよ? ただ、もしあの状況でヒーローがあの場にいたら、迷わず声かけに行くだろうなって思っただけ」

 

「え?」

 

「だって、もしかしたら彼女や奥さんへのプレゼントで、相手に合うサイズやメーカーがわからなくて困ってる人だったかもしれないでしょ?」

 

「「あ……!」」

 

「下着プレゼントして失敗したって話、よくあるからさ。そういう事なら代わりのプレゼントを選んであげられるし、もしこっちの考えすぎだったら『ごめんなさい思い違いでした』で済む話だし」

 

 ひなたが言うと、麗日と八百万が目を見開く。

 男性が女性用の下着売り場で挙動不審になるのは、やましい事がある場合だけではなかった。

 ひなたは、男が相手の女性のサイズを調べずに来てしまい困っている可能性を真っ先に疑ったからこそ、『普通に声をかけに行けばいい』と言ったのだ。

 

「えっ、じゃああの人が万引きしようとしてるって分かったのは何で…」

 

「ああ、アレはただの勘…なんだけど、強いて言うなら値札かな」

 

「値札?」

 

「そ。買う気があるなら、値札くらい確認するでしょ? なのにあの人、値札どころか自分が手に取ったパンツもよく見てなかったんだもの。『間違えて女性用の下着売り場に来ちゃった』ってセリフを聞いて、『あ、万引きする気だったんだな』ってピンと来たわけ」

 

「言われてみればそうね。ちゃんと値段見てたら、持ち去る前に気付くものね」

 

「要は、今回は僕の勘がたまたま当たって、たまたま良い方向に事が進んだってだけの話」

 

 ひなたが笑いながら言うと、八百万と麗日は感心したようにひなたの顔を眺め、蛙吹はうんうんと頷く。

 するとその時、麗日の腹がキュルルと鳴る。

 

「あはは、何かおなかすいちゃった……あー!! おもち!!」

 

 麗日は、思い出して叫んだ。

 

「すっかり忘れてましたわね。お餅、まだ残っているといいんですけど……」

 

「大丈夫じゃない? そんなにお客さん出入りしてなかったし」

 

「行ってみましょ」

 

「うん!」

 

「今なら、チョコお餅も食べられそうな気がします」

 

「任せて!」

 

 四人は楽しそうにお餅の事を考えながらお餅売り場に向かって駆けだした。

 ──明日、自分たちの身に降りかかる事件のことなど微塵も知らず。

 

 

 

 

 




ヤオモモがレベチすぎて霞んでしまうのと、相澤先生もひーちゃんも雄英に近けりゃいい的な安易な考えで選んだ安いアパートに住んでるのでイメージ湧きにくいかもしれませんが、ひーちゃんはお嬢です。
そりゃあね、親がプロヒーローですし、パパからもお小遣い貰ったり色んなとこ連れてってもらったりしてますし。
でなきゃ毎日食堂で罪悪感なくドカ食いなんて出来ませんよ。
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