毎日投稿を目標にしていましたが、19日・20日は忙しかったので書けませんでした。
2日も遅れて申し訳ございません。
10が6件、9が25件…だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。
試験開始数分前。
ひなた達は、期末試験の作戦会議をしていた。
「いいか。俺の考えはこうだ。この勝負、どっちが先に相手を見つけるかだ。相澤。“個性”で先生を探せ」
「わかった」
轟が作戦を話すと、ひなたはコクッと頷く。
相澤に見つかってしまえば無力となるのはひなたも同じだったため、これに関してはひなたも同意見だった。
「八百万! 何でもいい、試験が始まったら常に何か小物を創り続けろ。創れなくなったら相澤先生が近くにいると考えろ。この試験、どっちが先に相手を見つけるかだ。先生を見つけ次第、相澤と俺が捕獲しに行く。八百万はその隙に脱出ゲートへ突っ走る。これが一番安全にクリアできる方法だと思う」
轟が自分の考えた策を話すと、ひなたはコテンと首をかしげる。
轟の作戦を疑問に思ったひなたは、自分の唇に人差し指を当て、右斜め上を見ながら自分の考えを話した。
「うーん…それ本当に最善手かなぁ」
「どういう意味だ?」
「あ、ケチつけてごめんね。焦ちゃんの作戦、確かに悪くない作戦だと思うんだよ。でも正直、成功確率は低いと思う。何回も先生と鬼ごっこしてみてわかった事だけど、あの人相手の“個性”がわかってる状態での対人戦闘ならシャレにならないくらいバチクソ強いから」
ひなたは、轟の考えた作戦に対して、客観的かつ現実的な視点で批判をした。
7年間相澤に鍛えられてきたひなたは、相澤を引きつけるという作戦は失敗する可能性が高いと考えていた。
たとえひなたと轟が相澤を同時に攻撃しようとしても、二人の“個性”を熟知している相澤はそれに対して何かしらの対策をしている可能性が高く、無理に奇襲を仕掛ければ二人とも返り討ちにされてしまうからだ。
ひなたが言うと、轟はひなたに尋ねる。
「じゃあ、どうすれば…」
「とにかく先に見つけて罠にハメる。これが定石だと思うよ。先生相手に“個性”を使った攻撃はできない。でも
「…確かにな」
「まあでも、先生も僕の行動パターンはとっくに分析済みだし、あんまり期待しすぎないでほしい。僕はむしろヤオモモの意見が聞きたいかな。僕達だけでどうにかできる課題なら、先生だってわざわざ期末試験にしないだろうし」
「そうだな。悪い。八百万、何か考えがあるなら教えてくれ」
ひなたが八百万にも意見を聞くよう言うと、轟は八百万に意見を聞いていなかった事に気付き、八百万に意見を尋ねる。
だが八百万の表情はどこか暗かった。
「いえ…私は……」
八百万は何か考えがある様子だったが、何も言わずに黙り込んでしまった。
自分の策では轟の策には及ばないと考え、言い出せなかったのだ。
するとひなたは、ムスッとした顔のまま八百万に話しかける。
「…ヤオモモ」
「は、はい! 何でしょうか」
「ちょ〜っと痛いから覚悟しなさいね」
ひなたが八百万に話しかけると、ひなたはいきなり八百万の頭を掴んだ。
そして頭を後ろに逸らすと、次の瞬間、持ち前の石頭で重い頭突きをかます。
「喝!!!」
ひなたが勢いをつけて八百万に頭突きをかますと、ゴチンッと痛そうな音が鳴る。
突然の頭突きに、八百万は痛そうな表情を浮かべながら驚く。
「痛…!? ひ、ひなたさん、いきなり何を…!?」
「相澤…?」
ひなたの頭突きに、八百万は痛がり、轟は少し戸惑っている様子だった。
ひなたは、ぷぅと頬を膨らませて八百万の頬をぺちぺちしながら話しかける。
「ボーッとしてたよ今! ねえヤオモモ、ヤオモモは何か作戦無い? 何か考えがあるなら今のうちに言ってほしいな。言っとくけど、うちのクソ親父クソシャレにならないくらいクソ強いから、ちゃんと策練らないと勝てないと思う。ヤオモモならこういう時どうするかな」
「いえ…轟さんやひなたさんの策に比べれば、私の考えなんて…」
ひなたが念押しするが、自信を喪失している八百万は轟やひなたの策には到底及ばないと自己嫌悪に陥ってしまう。
するとひなたは、八百万の眼前で大声で叫んで喝を入れた。
「八百万百!!!!」
「は、はい!」
「君は何も間違ってない!! 大丈夫!! 自分が正しいと思った事をすればいい!! 絶対何とかなるし、僕達が何とかする!! 迷った時こそ胸を張れ!!」
ひなたは、大声で叫んで八百万に言い聞かせる。
すると轟も、ひなたに続けて八百万に喝を入れる。
「八百万!! 学級委員決めた時、お前二票だったろ! 一票は俺が入れた! そういう事に長けた奴だと思ったからだ!」
「…!」
轟が委員長決めの時の話をすると、八百万は目を見開く。
さらには、委員長決めの時に八百万が2票だった理由を聞いたひなたも僅かに目を見開く。
ひなたはその時八百万が2票だった事も気になっていたのだが、轟が0票だった事も気になっていた。
麗日と飯田は緑谷に票を入れており、心操はひなたに票を入れていたのでもしやと思っていたのだが、ひなたの予想通り轟が八百万に票を入れていたのだ。
「何かあるんだよな!? お前の策は、俺達が絶対成功させる! 自分を信じられねえなら、俺達を信じろ!!」
轟が言うと、八百万は固く目を瞑った。
八百万は、体育祭で納得いくような結果が出せなかった事で自信を喪失していた。
二人が最高のヒーローになる為にひたすら前に突き進んでいる間に自分は落ち込んでばかりで時間を浪費してしまった事、自分を認めて信頼してくれていた仲間の期待を裏切ろうとしてしまった事を恥じた。
(みっともない…! 本当に、みっともない…!)
八百万は、今まで抱いていた迷いを全て捨て、今はただ自分を認めてくれた仲間の期待に応える事だけを考えた。
そして両手で自分の頬を叩いて喝を入れると、前を向き直した。
「申し訳ありません、お二人とも…私、どうかしてました! あります! お二人とも! 私ありますの! 相澤先生に勝利するとっておきのオペレーションが!!」
「おお! いつものヤオモモだぁ!」
「とっておきのオペレーション?」
八百万が叫ぶと、ひなたが触角をピンと立て、轟が聞き返す。
すると八百万は、自信を取り戻したのか胸を張って話し始めた。
「ええ! 私本当は考えてましたの! 初めから!!」
「いいから早く教えろ」
「ええ。住宅街である以上、被害はなるべくおさえなければいけません。そして、あの捕縛武器による素早く捉え辛い動き…私の考えはこうです…………これなら、先生から逃げ切るよりも成功確率は高いハズです! 勝負は一瞬……よろしいですか?」
八百万が作戦の全容を話すと、轟とひなたは顔を見合わせて頷く。
「ああ、文句なしだ」
「同じく!」
轟とひなたは、同時に頷いた。
するとひなたは、何かを思い出したようにポケットを漁る。
「あ、そうだヤオモモ。これあげる」
「これは…爆弾ですか? どうしてまた」
「えへへ、先生にもまだ話してない秘密兵器。こんな事もあろうかとめいめい(※発目の事)に作って頂きました♪」
ひなたは、ニコッと笑顔を浮かべながら八百万に筒形の爆弾を手渡した。
ここ最近、ひなたは自身の“個性”を補助する為のサポートアイテムを作ってもらいに頻繁にサポート科に出入りしていた。
「はぁ…はぁ……これで、オペレーションに必要なものは全て創り終えましたわ」
「大丈夫か、八百万」
一度に脂質を使いすぎた八百万がぐったりしていると、轟が心配する。
ひなたは、事前に持ち込んでおいたリュックを下ろしてチャックを開け、中からアメリカンサイズのアイスクリームを取り出す。
「熱中症対策とカロリー補給を兼ねて、お弁当代わりにアイスクリームを持ってきました」
「アイスクリームは弁当代わりになるのか…?」
「まあまあ。ヤオモモアイス食べる?」
「…ありがとうございます。いただきますわ」
八百万は、ひなたから受け取ったアイスを食べ、手っ取り早く消費した分のカロリーを摂取した。
作戦に必要な準備を大方終えた頃、ついに試験が始まる。
『皆位置に着いたね。それじゃあ今から雄英高一年期末テストを始めるよ! レディイイ━━━━…ゴォ!!』
「行くぞ!」
「うん!」
「はい!」
リカバリーガールが試験開始の合図をすると、3人は一斉に動き出した。
試験開始と同時に、ひなたは超音波を放って索敵を始めた。
だがその直後だった。
「ぐぁあぁああ!!」
「相澤!?」
「ひなたさん!」
突然ひなたが大声を上げながらその場でのたうち回った。
突然のひなたの異変に、二人は血相を変えて駆け寄る。
「うぅ、痛い、痛い!!」
ひなたは、頭を抱えながら激痛に苦しんでいた。
頭と耳の痛みで苦しんでいるひなたを、二人が心配する。
「どうした相澤!? しっかりしろ!」
「ごめん、二人とも…
音で相澤の位置を確認しようとしていたひなただったが、ひなたが索敵用の技を持っているのを知っていた相澤は当然のように対策をしており、会場中のスピーカーからひなたにしか聞こえない爆音の超音波を流して妨害していた。
ひなたは、爆音で脳にダメージを受けて過呼吸を起こし、その場で膝をついて嘔吐する。
「うぅっ、オエ、ゲホッ…!!」
「ひなたさん!」
ひなたが嘔吐しながらガタガタ震えると、八百万がひなたの背中を摩る。
ひなたは息を乱し、目には涙を浮かべて今にも泣きそうになっていた。
脳にダメージを受けた事で、正常は判断を鈍らされ、平衡感覚を乱され気分は最悪だった。
ひなたは、過呼吸を起こしながらも二人に話しかける。
「大っ丈夫…! これくらいの事、想定内…!! 焦ちゃん、ヤオモモ…!」
「「!」」
「今すぐできるかできないかで答えて!! 僕なら、先生に勝てる!?」
ひなたは、二人に自分なら二人の期待に応えられるかを尋ねた。
ひなたの問いかけに対し、二人の答えは既に決まっていた。
「お前ならできる!!」
「はい! ひなたさんならできますわ!!」
二人は、今まさに立ちあがろうとしているひなたに激励を送った。
するとひなたの過呼吸が落ち着き、ひなたは髪を逆立てて索敵を続けた。
「…そうだね。僕なら、できる! プルスウルトラ…だもんね!」
ひなたは、自分を奮い立たせると、広範囲にわたって音波のドームを張って索敵を行う。
すると、ゲート前に相澤の反応がある事に気がつく。
「二人とも! 先生いた! ゲート前で陣取ってる!」
「よし…行くぞ!」
◇◇◇
その頃相澤は、脱出ゲートの前で待ち構え三人を待ち伏せしていた。
電柱の上に登って上から索敵を行いつつ、三人の出方を伺っていた。
ゲートの前にはマキビシが撒かれており、ゲートの前に設置されたスピーカーからはひなたの“個性”を相殺する為の音波が発生していた。
相澤は、7年間ひなたのヒーローの師匠をしていたため、当然ひなたの“個性”への対策もバッチリだった。
(向こうは索敵が使えるひなたがいるが、だったら向こうが俺を見つける前に妨害しちまえばいい。あいつの弱みは、“個性”発動時に物理的にも精神的にも隙が生まれる事と、人生経験の少なさから来る幼稚さだ。だからこそ、会敵する前に音で脳を揺らして混乱を誘った。お荷物になったクソガキを抱えて俺に勝てるかな)
相澤がそう考えた、その直後だった。
『AHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!』
突然甲高い爆音が響き渡り、相澤の目の前で相殺される。
ひなたの声が聴こえてきたのは、相澤の攻撃範囲のはるか遠くのビルからだった。
(あいつ…いきなり仕掛けてきたか)
相澤は、一定間隔で鳴り響く爆音を対処しつつ、自分の位置を特定して攻撃を放ってきた三人に対し、ひなたが爆音に苦しみながらも索敵を強行したのだろうと結論づけた。
無数の弾の対処をしていた相澤は、ひなたが爆音を放っている間にもう二人が二手に分かれて一気にゲートに近づく気だろうと考え、爆音が放たれた位置からゲートまでのルートを警戒し、屋根の上を走って移動した。
すると、黒い布を被った人物二人が二手に分かれてゲートに近づいてくるのが視界に映った。
「デメリットの方が大きいだろ。それ」
相澤は、黒い布を被った人物の首を捕縛武器で縛りつけ、地面に叩きつける。
すると、『ガシャァン!』と人間の頭から聞こえるとは思えない音が響く。
「マネキンかい」
相澤が捕縛武器で捕らえて潰したのは、車輪型の遠隔操作ロボットを取り付けたマネキンだった。
相澤が『ひなたとは別に他のメンバーが二手に分かれてゲートに接近するはずだ』と考える事すらも、八百万の想定通りだった。
狙いを外した相澤は、最後に残ったルートに視線を移す。
すると、バイクに二人乗りして走行する男女の姿が映る。
相澤の“個性”対策のためか、二人はヘルメットとボディースーツ、分厚いグローブを身につけていたが、体型から轟と八百万だろうと相澤は考えた。
相澤は、捕縛武器でバイクを横転させて二人を倒した。
「いてっ!」
突然バイクを横転させられた二人は、その場に倒れ込む。
相澤は、倒れた轟と八百万を捕縛武器で拘束した。
だが…
『AHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!』
相澤が捕らえた八百万がニヤッと笑ったかと思うと、大声で叫んだ。
その声を喰らった相澤は、全身がビリビリと痺れ思わず怯む。
何が起こっているのかわからない様子の相澤に、八百万はヘルメットを外して顔を見せた。
「ハイ残念ハズレクジ♪」
そこにいたのは、服の中に詰め物をして八百万の体型を再現したひなただった。
そしてひなたの後ろに乗っていた轟は、ただの人形だった。
「焦ちゃん!!」
ひなたが叫ぶと、轟が足元から氷結を放ちながら猛スピードで特攻を仕掛け、氷結と炎熱を放った。
だが轟が放った氷結と炎熱は、相澤にいとも容易く躱される。
相澤は、半ば失望が入り混じった表情を浮かべながら、轟に急接近する。
「単調な攻撃ばかり…」
そう言って相澤が轟の背後を取り掌底を叩き込もうとした、その時だった。
「それはどうかな」
「!」
轟は、咄嗟にしゃがんで掌底を躱すと、足元の氷に左手で触れた。
するとその直後、左手で熱された氷が一気に融け、発生した水分が空気に混じって霧が発生する。
視界が最悪な中、相澤は気配と霧の中に映る影を頼りに二人を探す。
背後に人の気配を感じた相澤は、背後に捕縛武器を投げようとする。
だがその時、何かが相澤の右肩に当たった。
「!?」
突然の出来事に、相澤は一瞬動きが止まった。
その一瞬を見逃さず、轟は瞬時に相澤を氷漬けにして拘束した。
「今だ相澤!!」
「うん!!」
轟が叫ぶと、ひなたは全速力でゲートへと駆け出した。
救助訓練レースの時のように、音波を使って爆速で駆け抜けていく。
相澤が振り向くと、そこには物陰からスナイパーライフルを構えた八百万がいた。
「……大したもんじゃないか」
ひなたがゲートを通過すると同時に、轟が相澤の両手首にカフスをかける。
三人が向かってくるであろうルートを予測し、手っ取り早く三人を見つけ出して拘束する、相澤はそれが最善手だと考えて実行に移した。
だがそれすらも、八百万の策略通りだった。
条件を達成したひなたが二人のもとへ戻り、子供のような無邪気な笑顔を浮かべながら両手を挙げると、轟と八百万も小さく手を挙げる。
するとひなたは、満面の笑みで二人にハイタッチをした。
「ほらねヤオモモ! 何とかなったでしょ!? 君は、ここにいる誰も思いつかなかった作戦を考えたんだよ! それって、メッチャすごい事だと思う! ホントありがとう!」
「八百万、お前のおかげでクリアできた。ありがとな」
二人が礼を言うと、八百万は感極まって涙を浮かべながら手で口を塞ぐ。
自分よりはるかに優れていると思っていた二人に認められて感謝されたのが嬉しかったのだ。
すると、八百万が吐き気を催しているのかと勘違いした轟が八百万を心配する。
「………どうした? 気持ち悪いか。吐き気には足の甲にあるツボが……」
「なっ、何でもありませんわ!」
天然発言をする轟と、照れ隠しにツンとした態度を取る八百万のやり取りを微笑ましそうに見ていた。
ひなたが二人のやり取りにほっこりしていると、相澤がひなたに声をかける。
「ひとつ聞いていいか」
「ん。何?」
「最初、俺に爆音を放ってきたろ。アレはどうやった」
「ああ、アレね。コレだよ」
そう言ってひなたは、ポーチから筒形の爆弾を取り出した。
ひなたが試験前に八百万に渡した爆弾は、発目に作ってもらった、ひなたの“個性”破壊音波を再現する装置だった。
ひなたの声を再現する装置を八百万作の超指向性スピーカーで音を増幅し、相澤に向けて発射する事であたかもひなたがビルの中にいるように見せかけていたのだ。
「ひなた。俺は、お前を見くびるのはもうやめる。あんな隠し玉を持ってるなんて思わなかった」
相澤が言うと、ひなたは照れ臭そうに頭を掻いた。
二人と協力して自分では絶対に敵わないと思っていた相澤を倒した事、そしてその相澤に認められた事が嬉しかったのだ。
「…ま、この程度の荒治療じゃ間抜けは治らなかったようだが」
「何だよ、お父さんのいじわる!」
相澤が一言余計な事を言うと、ひなたが頬を膨らませる。
しかし、相澤がひなたを認めていたのは事実だった。
救出した時からずっと自分の背中を追いかけてきた娘が予想以上の成長をし、一泡吹かせようと立ち向かってきたのが嬉しかった。
ひなたの喉を突いた時にそのまま喉を潰して再起不能にする事もできたにもかかわらず、ひなたの成長を見るためにあえてそれをしなかった相澤だったが、この様子なら仮に本気で潰しに行っていたとしてもクリアできていたかもしれないと考えた。
◇◇◇
その様子をモニターで見ていたリカバリーガールは、微笑みながら呟く。
「なんだかんだあまい男だこと」
そして、他の会場に轟トリオが試験をクリアした事を報告する。
『報告だよ。条件達成最初のチームは、相澤・轟・八百万チーム!』
◇◇◇
その頃、プレゼントマイクと戦っている耳郎と心操はと言うと。
『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!』
「うっるさ…!!」
「ひなたも大概だけど、3倍は強え…!!」
プレゼントマイクの爆音攻撃に晒されていた二人は、森の中で耳を塞いで爆音に耐えていた。
ひなたの渾身の技と同程度の音量を、それこそ赤子の手を捻るように平気で出しているのだ。
「心操! あんたの“個性”でこれ止めさせたりできないの!? 『洗脳』できるんでしょ!?」
「そうしたいけどごめん無理…! 相手が俺の声を聞いて返事をすれば操れるけど、この距離じゃまず俺の声が届かない!」
耳郎は、何とか心操の“個性”でプレゼントマイクを操れないか尋ねるが、心操は首を横に振って答える。
「耳を塞いでても鼓膜破けそう……! 格上どころじゃなかった……!! 完っ全に上位互換! 近付けもしない…!!」
耳郎は、耳を塞ぎながら言った。
プレゼントマイクは、脱出ゲートの前で邪悪な笑みを浮かべていた。
◇◇◇
そしてリカバリーガールのいる出張診療所では。
期末試験をクリアしたひなたは、念の為リカバリーガールの元で検査と治療を受けていた。
「うん、異常なし。試験お疲れ様、校舎に戻って休んでな」
「ありがとうございます」
治療を終えたひなたは、ふとモニターを眺める。
ひなたが眺めていたのは、耳郎と心操のペアだった。
するとリカバリーガールが声をかける。
「気になるかい?」
リカバリーガールが尋ねると、ひなたはポカンとする。
すると『気になる』の意味を勘違いしたひなたは、目を見開いてみるみる顔を赤くしていく。
「気に…!? あ、いやいやいや! べ、別にそういうんじゃなくてただ、先生方や皆の戦いをちょっと見てみたいかなー、的な? 的な! そう、的な! あはははは…!」
「わかりやすい子だねぇ…」
ひなたが残像が見えるほど素早く首を横に振って全力で否定すると、リカバリーガールが呆れ返る。
そういうつもりで聞いたわけではないリカバリーガールだったが、ひなた自身がボロを出してくれたお陰で、図らずもひなたが心操に対してどう思っているかを察してしまった。
ひなたがあまりにも心配そうにモニターを眺めるので、ひなたの気持ちを汲んだリカバリーガールは呆れてため息をつきながら提案する。
「いいよ、ここで見ていきな」
「いいんですか!?」
リカバリーガールが許可すると、ひなたは食い気味に尋ねる。
「見て学びたいんだろう? 駄目とは言わんよ」
「……! ありがとうございます!」
リカバリーガールが言うと、ひなたは早速モニターに釘付けになる。
ひなたは、早速オールマイトと戦っている爆豪と緑谷に目を向けた。
緑谷は、考えてきた作戦を爆豪に話した。
「かっちゃん、わかってると思うけど、今の僕達じゃどう考えたってオールマイトに勝てっこない。躍起になって挑んだって、時間と体力を無駄に削るだけだ」
「アホか! てめぇオールマイトから逃げ切れると本気で思ってんのかクソデク! 俺が先手必勝でブッ殺す。てめぇはその間にガン逃げでも何でもしてやがれ」
緑谷が作戦を話すと、爆豪がそれに対して反論した。
それを見たひなたは、思わず目を点にする。
(あれ…!? 意外とちゃんと会話が成立してる…!)
てっきり二人が開始早々喧嘩をおっ始めるものだと思っていたひなたは、二人の会話が一応成立している事に驚く。
緑谷はグラントリノの事務所での職場体験やステインとの戦闘を経験し、爆豪もベストジーニストの事務所での職場体験で急成長したおかげか、ひなたが思っているより二人とも冷静だった。
その直後、オールマイトがビルを破壊しながら二人に突撃を仕掛けてくる。
「試験だなんだと考えていると痛い目見るぞ。私は
オールマイトが現れると、爆豪が初手から大規模の爆破を放ち、緑谷がそれを合図に全速力でゲートへと向かう。
だがオールマイトは、容赦なく連続爆破を放ってくる爆豪を一撃でダウンさせると、逃げる緑谷目掛けて爆豪を投げつけて衝突させる。
オールマイトがわざと爆豪にストレスを与え、緑谷に対しては挙動一つ一つを潰して考える時間を奪っていくと、やがて二人の間に流れる空気が悪くなり、ついには喧嘩に発展してしまう。
それを見たひなたは、思わず額をペシッと叩く。
「あっちゃー、やっぱりこうなるか…」
爆豪が緑谷に怒鳴ると、緑谷は売り言葉に買い言葉と言わんばかりに反論する。
するとオールマイトは、論外と言わんばかりにスマッシュを放って二人を吹き飛ばした。
吹き飛ばされても折れずに特攻を仕掛ける爆豪を、オールマイトは圧倒的な力で沈める。
すると緑谷は、何度打ちのめされてもオールマイトに立ち向かう爆豪を見て、かつて自分が憧れた幼い頃の彼を思い出し、『フルカウル』を40%にまで引き上げてオールマイトにパンチをかまし、通り過ぎざまに爆豪を助け出した。
「あ…!」
緑谷が許容量を超えた力を引き出したせいで腕の激痛に顔を歪めていると、爆豪が『借りは作らねぇ』と言って緑谷に肩を貸し、二人でオールマイトから逃げ切った。
逃げた二人をオールマイトが探すと、爆豪がオールマイトの背後から現れ爆破を浴びせる。
爆発の光と風で目眩しをすると、それと同時に爆豪の籠手を借りた緑谷が現れ、爆豪の籠手に自身の衝撃波の威力を上乗せしてオールマイトをはるか遠くまで吹き飛ばした。
その隙に二人は全速力でゲートに向かうが、あと少しというところでオールマイトに追いつかれ、緑谷は身体を掴まれ爆豪は籠手を破壊されて踏みつけられてしまう。
だが、それでも爆豪は諦めなかった。
爆風を出しオールマイトを浮かせた瞬間、緑谷を掴んで投げ飛ばし、籠手無しで最大火力をオールマイトに浴びせた。
爆豪が再び最大火力をオールマイトに浴びせようとすると、オールマイトは、そういう身を滅ぼすやり方は看過できないとして爆豪にトドメの一撃を喰らわせた。
だが爆豪は決して諦めず、オールマイトの攻撃を喰らっても意識を手放さなかった。
衝撃波を放ってオールマイトを吹き飛ばし、その隙に爆豪を助け出してゲートを潜ろうと考えていた緑谷だったが、意地でも諦めない爆豪を見て、完全勝利という言葉が頭を過った。
緑谷は、自壊寸前までフルカウルの出力を上げ、オールマイトに渾身の一撃を放つ。
だがその一撃さえも、オールマイトに防がれ寸分の所で止められ、そのまま殴り飛ばされてしまった。
だが…
「っ…はぁ、はぁ…! 僕達の勝ちです、オールマイト…!」
「……Oh my goodness!! やられたね!」
オールマイトの腕には、いつの間にかハンドカフスがはめられていた。
緑谷は、自壊寸前まで威力を引き上げた渾身の一撃でオールマイトの注意を最大限引き付け、その一撃を捨て石にしてハンドカフスをかけたのだ。
しかし、緑谷がオールマイトにハンドカフスをかけるのに成功したのはそれだけではなく、爆豪が最後までオールマイトにしがみついてその場に留めさせたのが功を奏したのだった。
爆豪がここまで粘らなければ、オールマイトに衝撃波を浴びせてゲートを潜っていた緑谷だったが、自分を犠牲にしてまでオールマイトに喰らいついた爆豪を勝たせるためオールマイトに正面戦闘を挑んだのだ。
条件をクリアすると、緑谷と爆豪は意識を手放す。
リカバリーガールは、手元のマイクで緑谷ペアの条件達成を報告する。
『爆豪・緑谷チーム条件達成!』
するとひなたは、触角をピコピコさせ両腕をワサワサさせて喜ぶ。
「やるじゃん! デッくん、かっちゃん! 仲悪いから絶対一緒にクリアとか無理だと思ってたけど…」
そしてそこでしばらく戦いを見ていると、オールマイトがボロボロの二人を抱えて出張診療所に入ってくる。
特に爆豪に至っては気絶していたので、ひなたはギョッとして目を見開く。
「あ、オールマイ…ウワァ!?」
「すまないリカバリーガール、今すぐ爆豪少年と緑谷少年を治してほしい。やりすぎちゃった……」
「はぁ…まったく」
やり過ぎて二人をボロボロにしてしまったためかオールマイトは申し訳なさそうに頼むと、リカバリーガールが呆れ返る。
リカバリーガールは、ベッドに二人を寝かせると二人に治癒を施す。
「ありがとうございます、リカバリーガール…」
緑谷がヘトヘトの状態で言うと、リカバリーガールはオールマイトを叱る。
「あんた本当加減を知らないね! もう少し強く打ってたら取り返しのつかん事になってたよ! 特に緑谷の腰、コレギリギリだったよ! 爆豪の方はしばらく目覚めないだろう。治癒後は消耗激しいからね。とりあえず二人共校舎内のベッドで寝かしておきな。轟達もそっちで休んでもらってる」
すると椅子に座ってモニターを見ていたひなたは、振り向いて緑谷に声をかける。
「デッくんお疲れ様! オールマイト相手によーやったな!」
「相澤さん…」
緑谷は、モニターを眺めてリカバリーガールに尋ねる。
「あの…リカバリーガール。僕もここで見てちゃダメですか?」
「フラフラだろう、しっかり寝とかんと…」
「あ、いや…! でもっ…その、大丈夫です! こんなじっくりプロや皆との戦い見られる機会あまりないので……」
「んー…まァ駄目とは言わんが無茶なさんな。ていうか機会は割とあるだろ」
「ありがとうございます! もうアレです、半分趣味で…」
緑谷が言うと、ひなたは「ははは…」と笑う。
オールマイトは、爆豪を抱えて校舎へと向かっていった。
緑谷は、ひなたの隣に座って試合を観戦する。
「ひー君…頑張れ…!」
ひなたは、祈るように手を組みながらモニターを眺めて呟く。
原作では相澤先生の後遺症を利用しましたが、本作ではひーちゃんの“個性”を上手く使って攻略しました。
相澤先生の後遺症自体は、ひーちゃんがUSJで頑張ったおかげで残っていないという設定です。