抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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当初はI・アイランドはすっ飛ばす予定でしたが、楽しみにしているお声を頂いたので急遽書く事にしました。
今まで全くプロットを作っていなかったので投稿が遅れる可能性が高いですが、ご了承あれ。

面白いと思っていただけましたら高評価(8・9・10あたり)、お気に入り、感想等よろしくお願いします。


二人の英雄・1

 夏休み。

 ひなたと心操は、一緒にジェット機に乗っていた。

 

「俺、飛行機なんて生まれて初めて乗ったわ…足が地につかない感じがして落ち着かない」

 

「あはは…今時、本州なら新幹線かリニアでどこでも行けちゃうもんねぇ」

 

 どこか緊張した様子の心操に対し、ひなたはコーヒーを飲みながら笑った。

 今時、どこにでも新幹線やリニアモーターカーが通っているので、北海道か沖縄にでも行かない限り、わざわざ国内便を利用する理由がないので、日本から出発している航空便の7〜8割方は国際便なのだ。

 

「すげぇ…飛行機から見る景色って、こんな綺麗なんだな」

 

 心操は、窓の外の景色を眺めながら感動していた。

 その姿は、まるで純粋無垢な子供のようだ。

 男子の心がくすぐられるのか、人生で初めて飛行機に乗って若干はしゃいでいる様子の心操を、ひなたはクスッと笑いながら見ていた。

 すると、心操が窓の外を指差す。

 

「あっ、見えてきた」

 

「わぁぁぁ…!」

 

 心操が指を指すと、ひなたも窓の外を覗いて目を輝かせる。

 窓の外には、ひなた達の目的地であるI・アイランドと呼ばれる島があった。

 二人が上からの島の景色に見惚れている中、飛行機のアナウンスが鳴り響く。

 

『え〜、当機はまもなくI・アイランド空港への着陸態勢に入ります。最後にもう一度、シートベルトがしっかり締まっているか、背もたれとテーブルが元の位置にあるか、お手荷物がきちんと収納されているか、ご確認ください。We are making our final approach to I-Island Airport. Please make sure one last time that your seat belts are securely fastened, your seat backs and tray tables are in their full upright position, and your carry-on baggage is properly stowed』

 

 機内アナウンスを聞きながら、ひなた達は快適な空の旅を楽しんでいた。

 I・アイランド。

 世界中の才能を集め“個性”の研究やサポートアイテムの発明等を行うために造られた人工島。

 この島が移動可能なのは、研究成果や科学者達を(ヴィラン)から護るためで、その警備システムはタルタロスに匹敵する能力を備えていて(ヴィラン)による犯罪は一度も起こった事が無いといわれている。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、I・アイランドでは。

 

『只今より入国審査を開始します』

 

 I・アイランドの空港にて、緑谷とオールマイトが入国審査を受けていた。

 緑谷が入国審査中にいつものブツブツを披露していると、オールマイトがサムズアップをしながらツッコミを入れる。

 二人が入国審査を終えると自動ドアが開き、アナウンスが放送される。

 

『入国審査が完了しました。現在、I・アイランドでは様々な研究・開発の成果を展示した博覧会、I・EXPOのプレオープン中です。招待状をお持ちであれば、ぜひお立ち寄りください』

 

 空港で簡単な手続きを済ませ、空港のゲートから出るとすぐI・アイランドの街並みが広がっていた。

 緑谷は、その光景に目を輝かせる。

 一般公開前のプレオープンで多くの来場者が訪れており、研究者が開発したと思われる噴水やスピーカーなどが街を鮮やかに彩っていた。

 I・アイランドでは日本とは違い“個性”の使用が自由に認められており、“個性”が使われたアトラクションもあった。

 オールマイトがホテルの場所を確認していると、スタッフや来場者、さらに報道陣までもがが一斉に集まってくる。

 オールマイトは大勢に囲まれて困惑しつつも、全員に神対応をした。

 一通り対応を終えたオールマイトは、顔面がキスマークだらけになっていた。

 

「あそこまで足止めされるとは…約束の時間に遅れてしまうところだったよ」

 

「約束?」

 

 緑谷が尋ねると、オールマイトが答える。

 

「ああ、久しぶりに古くからの友人と再会したいと思ってたところなんだ。悪いが少し付き合ってもらえるかい?」

 

「オールマイトの…親友…!? もちろん喜んで!!」

 

 オールマイトが緑谷に話すと、緑谷は笑顔で了承する。

 オールマイトを尊敬する緑谷にとって、その親友に会えるのはこれ以上ない光栄な事だった。

 するとオールマイトが少し姿勢を低くして緑谷に耳打ちをする。

 

「彼には、ワンフォーオールや緑谷少年に“個性”を譲渡した事は話してないから、そのつもりで」

 

「し、親友にも内緒にしてるんですか?」

 

「ワンフォーオールの秘密を知る者には、危険が付き纏うからね」

 

「そっか…! そうですよね」

 

 緑谷は、オールマイトにワンフォーオールの事を聞いた時の事を思い出した。

 ワンフォーオールを受け継いだ者は、悪と戦う運命を背負わなければならないのだ。

 緑谷は、いつか来るその日の為にも一日でも早くワンフォーオールを使いこなせるようにならなければと意気込む。

 すると、広場の大階段から長い金髪で眼鏡をかけた少女がホッピングで飛び跳ねながら近づいてくる。

 少女の姿を見たオールマイトは、笑顔を浮かべる。

 すると少女は飛び跳ねながらオールマイトに話しかける。

 

「おじさま〜! マイトおじさま〜!!」

 

 少女は、ホッピングから飛び出すとそのままオールマイトに抱きつき、オールマイトもまた高笑いしながら少女を受け止めた。

 そしてオールマイトは、少女を抱えたままグルグルと回り少女を強く抱きしめる。

 

「HAHAHA!! Oh〜! メリッサ!!」

 

「お久しぶりです! 来て下さって嬉しい!」

 

「こちらこそ、招待ありがとう! しかし見違えたな! もうすっかり大人の女性だ!」

 

「17歳になりました! 昔と違って重いでしょ?」

 

「なんのなんの! HAHAHAHA!!」

 

 オールマイトは、メリッサという少女を持ち上げるとそのまま赤ん坊でもあやすかのように軽く揺すり、そのまま優しく地面に下ろした。

 オールマイトとメリッサのやりとりを見ていた緑谷は、完全に蚊帳の外になっておりポカンとしていた。

 

「マイトおじさまも相変わらずお元気そうで良かった! 遅れてごめんなさい! 研究してたらつい!」

 

「HAHAHAHA! 構わないさ!」

 

 メリッサを見て、緑谷はとてもオールマイトの古くからの親友とは思えない年齢なので、そういう“個性”なのではと考えていた。

 するとオールマイトがメリッサに尋ねる。

 

「…それで? デイヴはどこに?」

 

「フフフ、研究室にいるわ! 長年やってきた研究が一段落したらしくて、それでお祝いとサプライズを兼ねてマイトおじさまをこの島に招待したの!」

 

「そういう事か! ちなみに、今回デイヴはどんな研究を?」

 

「それが、守秘義務があるからって私にも教えてくれないの」

 

「科学者も大変だな!」

 

 オールマイトとメリッサが楽しそうに話していると、話についていけない緑谷が気難しそうな顔をする。

 すると緑谷を置いてけぼりにしてしまっていた事を思い出したオールマイトは、緑谷に話しかける。

 

「…ああ、緑谷少年。彼女は私の親友の娘で…」

 

「メリッサ・シールドです! はじめまして!」

 

 メリッサが緑谷に声をかけ握手を求めると、緑谷はメリッサをオールマイトの親友と勘違いしていた事を恥ずかしがりながら笑顔を浮かべる。

 

「…そういう事か」

 

「え? 何?」

 

「あ、いえ!」

 

 緑谷の独り言に対してメリッサがキョトンとすると、緑谷は慌てて誤魔化す。

 そして、手袋を外してメリッサの手を取り自己紹介をした。

 

「あ…は、はじめまして! 雄英高校ヒーロー科1年、緑谷出久といいます!」

 

「雄英高校…じゃあマイトおじさまの!」

 

「はい、生徒です!」

 

「未来のヒーロー候補さ!」

 

 メリッサが言うと緑谷が答え、オールマイトも緑谷を指しながらメリッサに紹介した。

 するとメリッサは目を丸くして驚き、緑谷に食いつく。

 

「すごい! マイトおじさまの教え子だなんて! 将来有望なのね!」

 

「いや…! 僕はまだ修行中の身というか、何というか…」

 

 メリッサが話しかけると緑谷が緊張気味に謙遜し、メリッサは緑谷に近づいてコスチュームを観察しながら尋ねる。

 

「どんな“個性”を持ってるの!?」

 

「ぱ、パワー系です!!」

 

 メリッサが尋ねると、緑谷は緊張した様子で答える。

 メリッサは、緑谷のコスチュームを至近距離で観察しながらコメントをする。

 

「カッコいいけど…オーソドックスなデザインね…補助的なアイテムも見当たらないし…」

 

(ち…近い…!!)

 

 メリッサにコスチュームを観察されていた緑谷は、顔を真っ赤にして心臓をバクバク鳴らしていた。

 するとメリッサは、緑谷の傷ついて形の変わった右手に気がつく。

 

「…! コスチューム…改良した方がいいんじゃ…」

 

 メリッサが言いかけると、オールマイトは咳払いをしてメリッサに声をかける。

 

「オッホン! メリッサ、そろそろ」

 

「あっ! ごめんなさい、つい夢中になって! 早くパパを喜ばせてあげなくちゃ!」

 

 オールマイトが声をかけるとメリッサはハッとし、ホッピングを圧縮して片手で持ち運べるサイズにする。

 

「こっちです! マイトおじさま!」

 

 そしてズボンのポケットにホッピングをしまうと、二人を父親のもとへと案内する。

 すると緑谷とオールマイトは顔を見合わせて笑い、メリッサについていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 明るい茶髪をオールバックにし眼鏡をかけた科学者が端末を眺めていると、小太りの科学者が声をかけてくる。

 

「博士、デヴィット博士!」

 

「ん?」

 

 小太りの科学者の声にデヴィットという科学者が振り向くと、小太りの科学者が部屋に入ってきて報告をする。

 

「こちらの片付けも終わりました!」

 

「そうか、ご苦労様サム」

 

 デヴィットが言うと、サムは穏やかな笑顔を浮かべる。

 サムは、デヴィットの後ろを歩きながらデヴィットに話しかける。

 

「たまにはお嬢さんとランチにでも行ってきてはいかがですか」

 

「今日もアカデミーに行ってるよ」

 

 デヴィットが言うと、サムが尋ねる。

 

「I・EXPO中は休講では?」

 

「自主的に研究してるんだよ」

 

 デヴィットが答えると、いつの間にか来ていたメリッサが話しかける。

 

「だってパパの娘ですもの! 似ちゃったのね!」

 

「メリッサ!」

 

「こんにちは、お嬢さん」

 

 メリッサが話しかけるとデヴィットが驚き、サムが挨拶をする。

 するとメリッサはサムに話しかける。

 

「こんにちは、サムさん。いつも研究に明け暮れるパパの面倒を見てくれてありがとう!」

 

「あはは…」

 

「参った参った」

 

 メリッサが言うと、サムとデヴィットは苦笑いを浮かべる。

 するとデヴィットがメリッサに尋ねる。

 

「それより、どうしてここに?」

 

「私ね! パパの研究が一段落したお祝いに、ある人に招待状を贈ったの!」

 

「ある人?」

 

「パパの大好きな人よ!」

 

 そう言ってメリッサが後ろを振り向くと、デヴィットが目を見開く。

 

「私がああああ!! 再会の感動に震えながら来たぁあっ!!」

 

 オールマイトがいつもの決め台詞を言いポーズをしながら登場すると、デヴィットとサムは目を見開き驚いた様子で固まる。

 

「としっ…オールマイト…!」

 

「ほ、本物…!」

 

「HAHAHAHA!! わざわざ会いに来てやったぜ!! デイヴ!!」

 

 オールマイトは、デヴィットに駆け寄るとデヴィットの身体を両手で掴み、グルグルと回して地面に若干乱暴に置くとデヴィットの顔を覗き込む。

 するとメリッサがオールマイトの後ろからヒョッコリ顔を出して笑顔でデヴィットに話しかける。

 

「どう!? 驚いた!?」

 

「あ、ああ…! 驚いたとも…」

 

 メリッサが尋ねると、デヴィットは驚いた様子で笑顔を浮かべる。

 デヴィットが立ち上がると、オールマイトは上機嫌でデヴィットに話しかける。

 

「お互いメリッサに感謝だな! しかし何年振りだ!?」

 

「やめてくれ。お互い考えたくないだろ、歳の事は」

 

「HAHAHAHA!! 同感だ!」

 

 オールマイトが言うとデヴィットが苦笑いを浮かべながらオールマイトを小突き、二人は年甲斐もなく大笑いをした。

 

「会えて嬉しいよ! デイヴ!」

 

「私もだ、オールマイト!」

 

 二人は数年ぶりの再会を喜び、互いに拳を軽く打ちつけ合った。

 するとオールマイトが後ろを振り向き、後ろで震えながら立っていた緑谷に声をかける。

 

「緑谷少年! 紹介しよう! 私の親友、デヴィット・シールド「知ってます!! デヴィット・シールド博士!! ノーベル“個性”賞を受賞した“個性”研究のトップランナー!! オールマイトのアメリカ時代の相棒で、オールマイトのヒーローコスチューム『ヤングエイジ』『ブロンズエイジ』『シルバーエイジ』、そして…『ゴールデンエイジ』!! それら全てを制作した天才発明家!! まさか本物に会えるだなんて! か、感激です!!」

 

 オールマイトが緑谷にデヴィットを紹介しようとすると緑谷は興奮して食い気味に自分の持ちうる知識を話し、目を輝かせながらデヴィットに駆け寄る。

 すると、それを見たメリッサはクスクスと笑い出しデヴィットも笑顔で緑谷を迎え入れる。

 

「紹介の必要は無いようだね」

 

「あ、すみません!! 何か…」

 

「いや、構わないよ」

 

 デヴィットが言うと緑谷は慌てて頭を直角に下げ、デヴィットは笑って緑谷の非礼を許した。

 するとオールマイトがゴホゴホと咳き込み、オールマイトを心配したデヴィットが話し始める。

 

「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが、積もる話をさせてくれないか」

 

「あ、はい…」

 

 デヴィットが言うと、緑谷が頷く。

 するとデヴィットはメリッサに話しかける。

 

「メリッサ! 緑谷くんにI・EXPOを案内してあげなさい」

 

「わかったわ! パパ!」

 

「いいんですか!?」

 

 デヴィットの頼みに対しメリッサが快諾すると、緑谷が食い気味に尋ねる。

 するとメリッサは笑顔で緑谷に話しかける。

 

「未来のヒーローとご一緒できるなんて光栄よ! 行きましょう!」

 

「はい! よろしくお願いします!!」

 

 緑谷は、メリッサに連れられてI・EXPOを探検する事になった。

 その様子をサムが微笑ましそうに見ていると、デヴィットがサムに話しかける。

 

「サム、君ももう休んでくれ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「君の事、何て呼べばいい? 緑谷くん? 出久くん?」

 

 メリッサが話しかけると緑谷は少し考え込み、笑顔で答える。

 

「僕の事は………デクと呼んで下さい!」

 

「デク? 変わったニックネームね。私はメリッサでいいから!」

 

 緑谷が言うと、メリッサはキョトンとするがすぐに笑顔で返した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「失礼します」

 

 そう言ってサムが研究室を出て行った直後、オールマイトの身体から大量の蒸気が発生する。

 さらにオールマイトが咳き込み身体が縮んでいくと、デヴィットは心配そうにオールマイトに声をかける。

 

「!? おい、大丈夫かトシ!?」

 

 デヴィットがオールマイトに声をかけると、オールマイトはガリガリのトゥルーフォームになっていた。

 

「助かったよ…マッスルフォームを維持する時間がさらに減っていてね…」

 

「メールで症状は知っていたが、まさかそこまで悪化してるとは…」

 

 オールマイトが咳き込みながら言うと、デヴィットは心配そうにオールマイトの顔を覗き込んだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「すごいなぁ…!! こうしていると、ここが人工の島だなんて思えないや!!」

 

 緑谷が目を輝かせてI・EXPOを回っていると、メリッサがI・EXPOについて説明する。

 

「大都市にある施設は一通り揃ってるわ。出来ないのは旅行くらいね」

 

「そうなんですか!?」

 

「ここにいる科学者とその家族は、情報漏洩を防ぐ守秘義務があるから…」

 

 メリッサが説明をしていると、緑谷が目を見開いて歓声を上げる。

 

「うわぁああ!! 怪獣ヒーロー『ゴジロ』!!」

 

「スポンサーを出している企業から招待されたのね…! 最新アイテムの実演とかサイン会とか、色々催し物があるみたい!」

 

「さすがI・EXPO!!」

 

 メリッサが言うと、緑谷は感激して目を輝かせる。

 するとメリッサはさらに説明を続ける。

 

「夜には関係者を集めたパーティーも! …って、デクくんも出席するんだよね。マイトおじさまの同伴者なんだし」

 

 メリッサが言うと、緑谷はオールマイトに『正装を持って来い』と言われた事を思い出す。

 するとメリッサは近くにあった建物を指差す。

 

「あ、デクくん! あそこのパビリオンもオススメよ!」

 

 緑谷は、メリッサが勧めたパビリオンへ入っていく。

 パビリオンの中には、最新のサポートアイテムが揃っていた。

 ヒーローオタクの緑谷は、サポートアイテムに目を輝かせる。

 

「最新のヒーローアイテムがこんなに…!」

 

「デクくん見て見て!! この多目的ビークル、飛行能力はもとより、水中行動も可能なの!」

 

「すごい!!」

 

「この潜水スーツは、深海7000mにまで耐えられるの!」

 

「すっごい!!」

 

「このゴーグルには、36種類のセンサーが内蔵されてるわ!」

 

「見えすぎる!!」

 

 メリッサがサポートアイテムを紹介していくと、緑谷はその性能の高さに毎度驚く。

 

「実は、ほとんどのものはパパが発明した特許を元に造られてるの!」

 

「へぇ〜、すごいなぁ〜!」

 

「ここにあるアイテム一つ一つが、世界中のヒーロー達の活躍を手助けするの!」

 

「お父さんの事、尊敬してるんですね!」

 

 メリッサの説明に対して緑谷が言うと、メリッサ話しかけると照れ臭そうに笑いながら言った。

 

「パパのような科学者になるのが夢だから!」

 

「あ、そういえばメリッサさんってここのアカデミーの…」

 

「うん! 3年!」

 

「I・アイランドのアカデミーっていったら、全世界の科学者志望憧れの学校じゃないですか!」

 

 緑谷が尊敬の眼差しを向けながら言うと、メリッサは謙遜する。

 

「私なんかまだまだ…! もっともっと、勉強しないと」

 

「僕も…オールマイトのようなるために…もっと努力しなくちゃ!」

 

 父のような科学者になるために日々精進しているメリッサを見習い、緑谷もオールマイトのようなヒーローになるために努力しようと心に決めた。

 するとメリッサが笑いながら話しかける。

 

「デクくん、ホントにマイトおじさまが大好きなのね! さっきは凄い勢いでビックリしちゃった」

 

「なぁ…! すいません、ついその…癖で…」

 

 メリッサが言うと、緑谷は慌てて頭を掻きながら謝る。

 そんな緑谷を見て、メリッサは微笑んでいた。

 するとだ。

 

 

 

「楽しそうやね、デクくん」

 

「だねぇ」

 

 麗日とひなたは、ニコニコと笑みを浮かべながら後ろから緑谷に話しかける。

 すると緑谷とメリッサが驚いて後ろを振り向く。

 

「わ!? う、麗日さん!? それに相澤さん!? どうしてここに!?」

 

「楽しそうやね!」

 

「2回言った!?」

 

 動揺している緑谷に対して麗日が再び言うと、緑谷がツッコミを入れる。

 すると後ろからさらに咳払いする声が聞こえる。

 

「ゴッホン!」

 

 声がしたので後ろを振り向くと、八百万が立っていた。

 

「八百万さん!?」

 

「とっても楽しそうでしたわ」

 

 すると、八百万の隣にいた耳郎も話しかける。

 

「緑谷、聴いちゃった」

 

「恐るべし…! 耳郎さんのイヤホンジャック…!」

 

 耳郎がジト目を向けながら言うと、緑谷がツッコミを入れる。

 すると耳郎の隣にいた心操も声をかける。

 

「楽しそうだったな、緑谷…」

 

「心操くんまで!?」

 

 すると、メリッサが緑谷に尋ねる。

 

「お友達?」

 

「学校のクラスメイトで…何か誤解してるみたいで…あの! 僕はメリッサさんに会場の案内をしてもらってるだけで…」

 

 緑谷は、クラスメイト5人にメリッサと一緒にいる訳を話す。

 するとメリッサも緑谷と一緒にいる訳を話そうとする。

 

「そうなの! 私のパパとマイトおじさまが…「わ────っ!!!」

 

 メリッサが言おうとすると、緑谷は大声を出してメリッサの声をかき消した。

 そして、その場でしゃがみ込んでメリッサに小声で耳打ちする。

 その様子を、5人はじっと眺めていた。

 

「お願いします! 僕がオールマイトの同伴者だって事は内緒にしておいて下さい!」

 

「どうして?」

 

「色々事情がありまして…!」

 

 緑谷は、顔の前で手を合わせて必死にメリッサに頼み込む。

 するとメリッサは笑顔を浮かべて了承した。

 

「わかったわ!」

 

 メリッサは、満面の笑みを浮かべて立ち上がると5人に話しかける。

 

「良かったらカフェでお茶しません?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「へ〜! お茶子さん達、プロヒーローと一緒にヒーロー活動した事あるんだ!」

 

 メリッサは、ひなた達から学校の話を聞いて感激していた。

 すると麗日と耳郎が謙遜しながら話す。

 

「訓練やパトロールくらいですけど…」

 

「ウチは事件に関わったけど、避難誘導をしたくらいで…」

 

「それでもすごいわ!」

 

 麗日と耳郎が言うと、メリッサは二人を褒める。

 八百万は、ウワバミの元で何故かCMに出演させられた事を恥ずかしそうに話す。

 

「私は何故かテレビCMに出演する羽目に…」

 

「普通じゃ出来ない事ね! ステキ!」

 

 八百万が話すと、メリッサは八百万を褒める。

 

「俺なんかずっと訓練とか基礎トレ漬けで…ヒーロー活動らしい事は何も…」

 

「プロヒーローに直接訓練してもらったんでしょ? すごい事じゃない!」

 

 さらに心操が相澤との地獄のマンツーマン訓練の日々を思い出し首を手で押さえながら話すと、メリッサが褒める。

 するとひなたは引き攣った笑みを浮かべながらボソッと呟く。

 

「僕なんて死にかけたけど…」

 

「えぇ!? 何があったの!?」

 

「あ…いや! えっと……落ちてたもの拾って食べたらお腹壊しちゃって…いやー今思えばあれは大変だったなー…何で落ちてるもの拾って食べちゃったかなー…あはははは…!」

 

 ひなたがうっかり口を滑らせるとメリッサが驚いてひなたを心配し、流石にヒーロー殺しの事を話すわけにはいかないと思ったひなたはかなり無理のある誤魔化し方をした。

 すると耳郎が今後の予定をメリッサに話す。

 

「明日、アカデミーの作品展示してるパビリオンにも行く予定なんです!」

 

「すごい楽しみ〜!」

 

「メリッサさんの作品も!?」

 

「ええ、もちろん!」

 

「わあ! 絶対行きます! な、ひー君!」

 

「う、うん」

 

 初対面にもかかわらず、4人はメリッサと親しげに話していた。

 一方、緑谷は何とかワンフォーオールの事を誤魔化せたので隣のテーブルでため息をついていた。

 するとだ。

 

「お待たせしました」

 

 そう言ってウェイターが緑谷のテーブルにジュースを置く。

 するとウェイターの声に反応した緑谷が顔を上げる。

 

「その声…! か、上鳴くん!!」

 

 緑谷にジュースを渡したウェイターは、何と上鳴だった。

 そして、上鳴の隣には上鳴と同じウェイターの制服を着た峰田がいた。

 

「と、峰田くん!?」

 

「あんたら何してんの!?」

 

 麗日と耳郎が尋ねると、上鳴と峰田が上機嫌で答える。

 

「EXPOの間だけ、臨時にバイトを募集してたから応募したんだよ! なー?」

 

「休み時間にEXPO見学できるし、給料貰えるし、来場した可愛い女の子とステキな出会いがあるかも…しれないしなぁ!」

 

 峰田は、緑谷達と一緒にいたメリッサに釘付けになりながら言った。

 そして、メリッサ目当ての上鳴と峰田は緑谷に詰め寄る。

 

「おい緑谷、あんな美人とどこで知り合ったんだよ!?」

 

「紹介しろ、紹介…!」

 

 緑谷に詰め寄ってメリッサを紹介してもらおうとしている二人を見て、メリッサはキョトンとした様子でひなたに尋ねる。

 

「彼らも雄英生?」

 

「いえ、変態(ゲス)です」

 

「うわあ即答」

 

 メリッサが尋ねると、ひなたが真顔で答え心操がツッコミを入れる。

 ヒーロー科の生徒でなくとも変態とクラスメイトだと思われたくないというのは自然な感情だったが、ひなたのあまりの薄情さに心操は若干引いていた。

 

「俺達も雄英生です」

 

「ヒーロー志望です「黙れ」

 

 上鳴と峰田がカッコつけながらメリッサに言いよると、ひなたが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 変態二人を威圧する時の顔は、A組を黙らせる時の相澤の表情そっくりだった。

 するとだ。

 

「何を油を売っているんだ!! バイトを引き受けた以上、労働に励みたまえええええ!!」

 

「「いやああああああああ!!」」

 

 飯田が怒鳴りながら全力疾走してきたので、上鳴と峰田が悲鳴をあげる。

 二人を追いかけ回している飯田を見て、緑谷、ひなた、麗日が声を上げる。

 

「い、飯田くん!?」

 

「天ちゃん!?」

 

「来てたん!?」

 

 麗日が尋ねると、飯田がロボットダンスをしながら話す。

 

「ウチはヒーロー一家だからね! I・EXPOから招待状を戴いたんだ! 家族は予定があって、来たのは俺一人だが!」

 

 すると、八百万が少し驚きながら話をした。

 

「飯田さんもですの!? 私も、父がI・EXPOのスポンサー企業の株を持っているものですから、招待状を戴きましたの!」

 

「で、ヤオモモの招待状が2枚余ってたから…」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 夏休み前。

 

「うーらみっこなーしよ! じゃんけんポン!」

 

 放課後、女子達が公園でじゃんけんをする。

 その結果、麗日と耳郎が勝ち、負けた芦戸とひなたは悲鳴を上げる。

 

「やっちまった━━━!!」

 

「神は死んだ━━━!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「厳正な抽選結果、ウチらが一緒に行く事になったってわけ!」

 

「うん! 他の女子もこの島には来てるんよ!」

 

「んで、僕は……」

 

 耳郎と麗日が話すと、ひなたも話し始める。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「ううっ…ぐすっ……何であそこでチョキ出しちゃうんだよぉ…僕のバカバカバカぁ……」

 

 ひなたは、じゃんけんで負けてI・EXPOの招待状を入手し損ねてしまったので消沈して泣いていた。

 すると相澤がひなたに声をかける。

 

「ひなた」

 

「何だよぉ! 気休めなら聞きたくな…」

 

「そうか、I・EXPOの招待状を持ってるからやろうと思ったんだが、要らないんだな」

 

「ゑ!!?」

 

 相澤がサラッと言うと、ひなたがテーブルから立ち上がって相澤に詰め寄る。

 

「今何と仰いました!!?」

 

「I・EXPOの招待状を持ってるからやるって言ったんだ」

 

「な……は…は……!?」

 

 相澤が言うと、ひなたはこれ以上ないくらいに大きく目を見開いて固まる。

 すると相澤がひなたに招待状を渡しながら言った。

 

「プリティハニー先輩がI・EXPOのスポンサー企業とちょっとしたコネがあってな…彼氏(サイドキック)とデートに行く予定だったらしいが、急用が入って行けなくなったから俺が招待状を譲って貰ったんだ。『せっかくだからたまには父娘(おやこ)デートでもして来い』と言われたんだが、生憎俺は忙しい。誰か誘って一緒に行って来い」

 

「あ…あああ…ありがとう!! お父さん大好きっ!!」

 

 相澤から招待状を受け取ったひなたは、ぱあっと表情を明るくして相澤に礼を言った。

 ひなたは、早速貰った招待状を眺めてニヤニヤしていた。

 

「えへへ、本当に貰っちゃっていいのかなぁ…そうだ、明日ひー君に渡して誘ってみよっかな! はぁ〜、考えただけでドキドキしてきた」

 

「不整脈だろ」

 

「うっせえ!!」

 

 相澤がボソッと言って去っていくと、ひなたは触角をブンブン振って怒鳴る。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「てなわけで、僕は相澤先生から招待状譲ってもらったんだよね!」

 

「…で、付き添いとして俺が一緒に行く事になったわけ」

 

 ひなたが満面の笑みを浮かべてサムズアップをし、心操が首に手を置いて言うと、緑谷が納得する。

 

「そうなんだ!」

 

「明日からの一般公開日に全員で見学する予定ですの!」

 

 八百万がそう言うと、メリッサが提案する。

 

「良ければ、私が案内しましょうか?」

 

「いいんですか!?」

 

「うん!」

 

 麗日が尋ね返すとメリッサが笑顔で快諾するので、ひなた達4人は大喜びし心操も礼を言った。

 

「「「「やったあ!!」」」」

 

「ありがとうございます」

 

 すると上鳴と峰田が出しゃばってくる。

 

「「俺達も連れてって!!」」

 

「引っ込めゲス……」

 

 出しゃばってくる二人に対してひなたが注意しようとしたその時、大きな衝突音が鳴り響く。

 すると緑谷とひなたが反応する。

 

「!? 何だ…!?」

 

 緑谷が驚いて爆発音のした方向へ向かうと、その先には山岳を模したアトラクションがあった。

 すると、スタッフの女性が実況をする。

 

『クリアタイム26秒! 第6位です!』

 

 女性が表示するモニターに映っていたのは、切島の姿だった。

 それを見た緑谷とひなたは、同時に目を見開く。

 

「切島くん!?」

 

「鋭ちゃん!?」

 

 するとメリッサが切島を見て緑谷に尋ねる。

 

「デクくん、あの人も…!?」

 

「はい、クラスメイトです…!」

 

 メリッサの質問に対して緑谷が答えた、その時だった。

 

『さあ! 次なるチャレンジャーは…』

 

 女性の実況と同時に入場ゲートから現れた人物を見て、緑谷とひなたは目を見開く。

 入場ゲートから現れたのは爆豪だった。

 

「「か…かっちゃん!!?」」

 

『それでは、(ヴィラン)アタック! レディ…GO!!』

 

 爆豪は、開始の合図と同時に爆破を使って空を飛び、次々と仮想(ヴィラン)を爆破していく。

 爆豪は、大きく腕を振りかぶると暴言を吐いた。

 

「死ねえええええええ!!!」

 

((死ね!?))

 

 爆豪の暴言に、ひなたと緑谷は目を丸くする。

 爆豪は、暴言と共に大爆発を放った。

 

『これはすごい…! タイム7秒、トップです!!』

 

 女性がタイムを知らせると同時に、爆豪は山岳から飛び降りる。

 すると観客席から歓声が上がる。

 その時、近くにいた切島が観客席を指差しながら言った。

 

「あれ!? あそこにいるの緑谷じゃね!?」

 

 切島の声に反応した爆豪が観客席を見ると、緑谷をはじめとしたA組が集まっていた。

 すると、爆豪はいきなり観客席の柵に飛びついて威嚇してくる。

 その姿はまるで動物園の猛獣だった。

 

「うわあああ!?」

 

 突然の出来事に緑谷が腰を抜かして尻餅をつくと、爆豪は緑谷を睨んで罵声を浴びせる。

 

「なんでてめぇがここにいるんだァ!!?」

 

「や、やめようよかっちゃん! 人が見てるから!」

 

「だから何だってんだ!!」

 

「動物園…」

 

 緑谷は何とか爆豪を宥めようとするが、爆豪は聞く耳持たずに罵倒を続け、ひなたが呆れながらツッコミを入れる。

 すると飯田が緑谷を庇う形で前に出て爆豪を注意する。

 

「やめたまえ爆豪くん!!」

 

 荒れる爆豪を見て、女子達や心操は呆れ返りメリッサは疑問を抱いていた。

 

「あの子どうして怒ってるの…?」

 

「いつもの事です」

 

「怒っちゃんです」

 

「もはや発作だよなあれ…」

 

「男の因縁ってやつです」

 

 メリッサが尋ねると、耳郎、ひなた、心操、麗日が答える。

 すると八百万が切島に尋ねる。

 

「切島さん達もEXPOへ招待を受けたんですの?」

 

「いや、招待されたのは雄英体育祭で優勝した爆豪! 俺はその付き添い! 何? これからアレ挑戦すんの?」

 

 そう言って切島がアトラクションを親指で差すと、爆豪が柵に掴まったまま緑谷を貶す。

 

「やるだけ無駄だ! 俺の方が上に決まってんだからな!」

 

「うん、そうだね! うん!」

 

 緑谷は、笑顔を浮かべて爆豪の発言に頷き何とか宥めようとする。

 すると麗日とひなたが横から口を挟む。

 

「でも、やらなきゃわからないんじゃないかな…」

 

「うんうん、デッくんが勝つかもしれないよねぇ」

 

「うん、そうだね! …はっ」

 

 ついうっかり二人の発言に頷いてしまった緑谷は、その直後にハッとして冷や汗をダラダラ流す。

 すると爆豪が観客席に上がり込んで緑谷に詰め寄り罵声を浴びせる。

 

「だったら早よ出て惨めな結果出して来いや!! クソナードがぁぁ!!」

 

「は…はい!!」

 

 爆豪が罵声を浴びせると、緑谷が返事をする。

 すると爆豪はひなたにも罵声を浴びせてきた。

 

「てめぇもだ触角ァ!!」

 

「何で僕まで…?」

 

 面倒事に巻き込まれたくないひなたは拒否しようとするが、心操と耳郎が追い討ちをかける。

 

「頑張れ、ひなた」

 

「爆豪なんて負かしちゃいなよ!」

 

「う…ぅん…」

 

(ひー君ときょーちんの裏切り者ぉ!!)

 

 二人がひなたを応援するとひなたは参加せざるを得なくなり、人の気も知らずに応援してくる二人に心の中で恨み言を吐いた。

 

『さて! 飛び入りで参加してくれたチャレンジャー! 一体どんな記録を出してくれるのでしょうか!?』

 

 緑谷は、両拳と両足に力を込めると緑色の火花を放つ。

 

(ヴィラン)アタック! レディ…GO!!』

 

 女性が合図をすると同時に、緑谷は驚異的なスピードで崖を駆け抜けていき超パワーでロボットを次々と破壊していく。

 それを見ていたメリッサは、目を見開いていた。

 

『これもすごい! 8秒! 第2位です!!』

 

 緑谷が驚異的な記録を叩き出すと、観客が歓声を上げる。

 緑谷の“個性”を目の当たりにしたメリッサは、同じような“個性”を持つオールマイトを重ねていた。

 

「ん〜…惜しい!!」

 

「流石だな! 緑谷くん!」

 

「まさかかっちゃんの記録にここまで迫れるなんて…!」

 

 麗日と飯田が緑谷に話しかける。

 すると爆豪が緑谷に向かって怒鳴る。

 

「だー! クソありえねー!! もっかい突き放したらァ!!」

 

 爆豪が荒れたその時、女性スタッフが次のチャレンジャーを紹介する。

 

『さぁ続いてまたしても飛び入り参加! あの首の布どっかで見た事あるよーな……可愛らしいチャレンジャーの挑戦です!』

 

 次の挑戦はひなただった。

 ひなたは、捕縛武器を両手に掴んで構える。

 

(ヴィラン)アタック! レディ…GO!!』

 

「ふっ!!」

 

 ひなたは、開始の合図と同時に山岳に捕縛武器を巻き付けて飛び上がると、一気に山岳を登っていった。

 そして、捕縛武器を使って器用に飛び降りると大きく息を吸い込む。

 そしてその直後、爆音攻撃によって仮想(ヴィラン)は壊れて動かなくなった。

 

『おぉーっ!! これはすごい!! ろっ…6秒! 現在トップに躍り出ました!!』

 

「やったあ!」

 

 ひなたが一瞬で全ての仮想(ヴィラン)を倒し終えると女性が記録を発表し、ひなたはガッツポーズをして喜ぶ。

 すると観客は一斉に歓声を上げ、A組やメリッサも賞賛の声をかける。

 

「すごいわひなたちゃん! 今のは音の“個性”!? 首の武器は特殊合金!?」

 

「やるじゃん!」

 

「うむ、流石だな!」

 

「いいぞひなたー!」

 

 メリッサ、耳郎、飯田、心操が声をかけると、ひなたは気分が良くなって満面の笑みを浮かべる。

 すると爆豪がブチ切れて爆破を繰り出しながらひなたに詰め寄る。

 

「だァ━━━どういうつもりだてめ触角コラァ!! んな技持ってんなら出す時出せやコラァ!!!」

 

「ひいいいいいごめんなさい!!」

 

 体育祭の時に全力を出さなかったひなたに負け逃げされたのを未だに根に持っていた爆豪がひなたに罵声を浴びせると、ひなたは小動物のように震え上がりながら謝る。

 するとその時、スタッフの女性が驚きのあまり悲鳴を上げる。

 

『キャ━━━!! すごいすごいすごーい!! また6秒!! 現在同率1位です!!』

 

 女性が記録を発表すると同時に歓声が上がる。

 そこに立っていたのは、巨大な氷を出す轟だった。

 

「焦ちゃん!?」

 

「轟くん!」

 

 轟も来ていたので、ひなたと緑谷が驚いて声を上げる。

 するとメリッサがA組に尋ねる。

 

「彼もクラスメイト?」

 

「はい!」

 

「皆凄いわね! 流石ヒーローの卵!」

 

「そんな事…」

 

 メリッサが率直な感想を言うと、八百万が照れながら言い麗日と耳郎も照れ臭そうにしていた。

 するとその時、爆豪が爆破で飛び出し轟に食ってかかる。

 

「てめぇ!! この半分野郎!!」

 

「爆豪…」

 

 爆豪は、轟の前に立つといきなり轟に罵声を浴びせる。

 

「いきなり出てきて俺スゲェアピールかコラ!?」

 

「相澤、お前らも来てたのか」

 

「うん! 焦ちゃんも来てたんだねぇ」

 

「無視すんな!!」

 

 荒れる爆豪を無視して二人で話をしていると、爆豪が掌を爆発させてブチ切れる。

 そして高圧的な態度で轟に尋ねる。

 

「大体何でてめぇがここにいんだよ?」

 

「招待受けた親父の代理で」

 

「エンデヴァーの!?」

 

 轟が言うと、ひなたが食いつく。

 

「あの~…次の方が待って…「うっせェ!! 次は俺だァ!!!」キャア!!?」

 

 スタッフの女性が荒れる爆豪を宥めようとすると、爆豪がキレ散らして女性を退かせた。

 するとそこへ飯田が駆けつけてくる。

 

「皆! 止めるんだ!! 雄英の恥部が世間にさらされてしまうぞ!!」

 

「「お、おう!」」

 

「う、うん!」

 

「恥部て…」

 

 飯田が言うと切島、心操、緑谷の3人が同時に飛び出し、ひなたも呆れつつも爆豪を宥める。

 それを見て女子三人は申し訳なさそうに縮こまっていたが、メリッサは楽しそうに笑っていた。

 

「ウフフ…!」

 

「「「………」」」

 

 3人が恥ずかしそうにしているのに気が付いたメリッサは、笑うのをやめて率直な感想を言った。

 

「あっ! ごめんなさい! 雄英高って楽しそうだなぁと思って!」

 

「少なくとも退屈はしてないですわね……」

 

「「確かに……」」

 

 モニターに表示された爆豪を見て八百万が呆れ気味に言うと、麗日と耳郎が同意する。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして18時、閉園を知らせるアナウンスが流れる。

 

『本日は18時で閉園になります。ご来園ありがとうございました』

 

 その頃、バイトをしていた上鳴と峰田は働きすぎて疲れ果てていた。

 

「あ゛〜…」

 

「プレオープンでこの忙しさって事は、明日からどうなっちまうんだ一体…」

 

「やめろ考えたくない…!」

 

 峰田が言うと、上鳴が絶望の表情で頭を抱える。

 すると緑谷が二人に声をかける。

 

「峰田くん上鳴くーん!」

 

「「……?」」

 

 二人が顔を上げると、ひなた達8人が歩いてくる。

 

「お疲れ様ー!」

 

「労働よく頑張ったな!」

 

 緑谷と飯田が声をかけ、飯田が2枚のチケットを二人に渡す。

 

「?」

 

「何これ?」

 

「レセプションパーティーへの招待状ですわ!」

 

 二人が尋ねると、八百万が答える。

 

「パーティー…?」

 

「俺らに…?」

 

 二人は、信じられないといった表情で8人に尋ねる。

 すると耳郎と麗日が答える。

 

「メリッサさんが用意してくれたの」

 

「せめて今日ぐらいはって!」

 

「余ってたから…よかったら使って?」

 

 二人が言うと、メリッサは笑顔を浮かべながら言った。

 すると峰田と上鳴は感激して目を潤わせる。

 

「上鳴ぃ…!」

 

「峰田ぁ…!」

 

「「俺達の労働は報われたぁ!!」」

 

 二人は、感激のあまり涙を流しながら抱き合った。

 飯田は、早速クラスメイト達に指示を出す。

 

「パーティーには、プロヒーロー達も多数参加すると聞いている! 雄英の名に恥じない為にも、正装に着替え団体行動でパーティーに出席しよう! 18時30分に、セントラルタワーの7番ロビーに集合! 時間厳守だ! 轟くんや爆豪くんには俺からメールしておく! では、解散!!」

 

 飯田が指示を出して全力疾走で去っていくと、緑谷がサムズアップをして飯田の背中を見送った。

 

「飯田くん、フルスロットル!」

 

 

 

 

 

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