10が6件、9が27件…だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。
「また後でね〜!」
「うん!」
緑谷は、クラスメイトと後で会う約束をして解散した。
すると、後ろからメリッサが声をかける。
「デクくん!」
メリッサが声をかけたので、緑谷が振り向く。
するとメリッサが緑谷に頼み事をする。
「ちょっと私に付き合って貰えないかな?」
◇◇◇
一方、I・EXPO内のホテルでは、ひなたは心操と一緒にパーティーの準備をしていた。
「パーティー楽しみだねぇひー君!」
「うん…っていうかひなたさ、ちゃんと正装とか持ってたんだ」
ひなたが上機嫌で話しかけると、心操が頷く。
そして心操が意外そうに言うと、ひなたは触角をパタパタ振って上機嫌で話す。
「まぁね。親戚のマイク先生にI・EXPOの事話したら、わざわざオーダーメイドの正装を用意してくれたんだよね。あのね、黒いAラインのドレスでね、キラキラしてて花とかで飾ってあってとっても綺麗なの! 上着も水面みたいにキラキラしててね、ブローチが可愛いんだー」
ひなたは、キャイキャイはしゃぎながら持ってきたドレスについて話した。プレゼントマイクにI・EXPOの事を話したところ、世界中のプロヒーローが集まるのだからあまり安っぽい服で行くと恥ずかしいといってわざわざひなたのためにオーダーメイドのドレスを用意してきたのだ。
「そうなんだ。じゃあ俺着替えてくるよ」
「うん! また後で!」
心操が自分の部屋を指差しながら言うと、ひなたはコクリと頷く。
するとひなたが自分の部屋に戻る前に心操が声をかける。
「ひなた」
「ん?」
ひなたが振り向くと、心操は首を手で押さえながら話す。
「…俺の事、誘ってくれてありがとな。お陰ですごく楽しかった」
「いやいや、お礼ならお父さんに言ってよ! 招待状くれたのお父さんだし! じゃ、また後でねー!」
心操が微笑みながらひなたに礼を言うと、ひなたはニコッと笑って返す。
そして手を振りながら自分の部屋へと向かっていった。
するとひなたは、自分の部屋の前でため息をつく。
「はぁ……」
(僕の馬鹿…この気持ちは忘れようって決めてたのに、未練タラタラじゃんか。純粋にひー君に楽しい思いしてもらいたくて誘ったつもりだったのに、変な期待して、気を引くためにわざわざパパに良いドレス用意してもらって、ホント最低だ…)
ひなたは、ドアの前で俯いたまま微かに頬を赤らめてため息をつく。
本当は、片想い中の心操の気を少しでも引きたくてレンタルではなくきちんとしたドレスをプレゼントマイクにねだったのだ。
ひなたは、そのつもりがあって誘ったわけではないのにこれを機に距離を縮めようと期待して、わざわざ高いドレスを親に用意してもらってまで気を引こうとしている自分の浅ましさを恥じていた。
(あーあ、僕が普通の女の子だったらこんな事で悩まずに素直に想いを伝えられたんだろうな……知ってたよ、わかってたんだよ最初から。僕が…僕なんかが恋なんかしちゃいけないんだ。忘れなきゃ、こんな顔で出席したら皆に心配されちゃう。こんな馬鹿みたいな事考えてないでパーティーの準備しなきゃ)
ひなたは、正装に着替えるため自分の部屋に入ろうとするが、その時ふとメイク道具を忘れてきてしまった事を思い出した。
「あ…てかそういえば正装持ってきたはいいものの、僕メイク道具持ってきてないじゃん…どうしよ…ノーメイクでドレスって流石に変だよね…? ヤオモモに助けてもら…ダメだそれじゃ集合時間に間に合わない。ホントどうしよ……」
ひなたが頭を抱えてうんうん悩んでいると、背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「お困りのようですね、ひなたちゃん」
「ぴゃ!? …って、幽華ちゃん!?」
ひなたがビクッと肩を跳ね上がらせながら後ろを振り向くと、既にパーティー用の正装に着替えた影山が立っていた。
影山が来ていたのは暗い青のスレンダーラインのドレスで、高校生離れしたスタイルの良さが強調されていた。
何故か影山が招待状を持っているか付き添いでないと入場できないはずのI・EXPOに来ていたため、ひなたは目を見開いて尋ねる。
「何でここに!? 招待状が無いと来れないはずじゃ…もしかして誰かの付き添い?」
「企業秘密です」
「…!?」
ひなたが尋ねると影山が怪しい笑みを浮かべながら言ったため、ひなたは思わず警戒して目を見開く。
「うふふ、冗談ですよ。親からI・EXPOの招待状をくすねたんです。ひなたちゃんが行くと小耳に挟んだものですから、何かお役に立てればと思って…あ、レセプションパーティーにももちろん出席しますよ!」
(行動力の鬼や…!!)
影山が左手を頬に当ててときめきながら言うと、ひなたは影山の行動力の高さに思わず目を見張る。
「お化粧道具を忘れた、との事でしたよね? うふふふ、お任せ下さい。私がひなたちゃんをとびっきり可愛くしてあげます」
(ち、近い…)
「あはは…あ、ありがとう…」
影山が息を荒くしながらメイク道具を両手にひなたに詰め寄ると、ひなたは思わずドン引きして苦笑いを浮かべる。
ひなたを手助けしたいという目的の他に別の目的があるような気がしなくもなかったが、詮索したら碌な事が無さそうなのでひなたはあえてツッコまないでおいた。
「さあ善は急げ! ひなたちゃんを大変身させてみせます!!」
「はぁ!? え、ちょっと…!?」
影山は、ひなたの手を取って半ば強引にひなたの部屋に押し入る。
ひなたは若干戸惑いつつも、時間が無かったのでメイクは影山に任せる事にした。
◇◇◇
一方緑谷は、メリッサに連れられてメリッサが通っているアカデミーの校舎に来ていた。
「ここが私の通うアカデミーの校舎! そしてここが、私の使っている研究室」
そう言ってメリッサは研究室を指し、緑谷を研究室に招き入れた。
研究室には様々な設備や資料が並んでおり、ヒーローに関する研究をするのにうってつけの部屋となっていた。
「散らかっててごめんね」
「わぁ…本格的…! こんな場所で研究出来るなんて…!」
机の上が資料や研究の成果で散らばっていたためメリッサは謝るが、緑谷はその本格的な設備に感動していた。
すると緑谷は、研究室の棚の上に飾ってあった、メリッサが受賞したと思われる賞の数々を見つける。
「メリッサさん、本当に優秀なんですね!」
「実はね、私そんなに成績良くなかったの。だから一生懸命勉強したわ。どうしてもヒーローになりたかったから」
メリッサが恥ずかしそうに言いながら奥の部屋へ入っていくと、緑谷がメリッサに尋ねる。
「え…プロヒーローに?」
「ううん。それはすぐに諦めた。だって私“無個性”だし」
メリッサが言うと、緑谷は僅かに目を見開く。
メリッサは、かつての緑谷と同じ“無個性”だったのだ。
「え… “無個性”って…!?」
「5歳になっても“個性”が発現しないから、お医者様に調べてもらったの。そしたら発現しないタイプだって知らされたわ」
メリッサの話を聞いた緑谷は、医者に“無個性”と知らされて絶望して泣いていた自分を母親が泣きながら抱きしめ何度も謝ってきた事を思い出し、もしかしたらメリッサに嫌な事を話させてしまったかもしれないと思い謝る。
「す…すいません…何か、その…」
するとメリッサが小さな箱を持って奥の部屋から戻り、俯きながら謝る緑谷を見てキョトンとする。
「ん? どうしたの?」
「あ、いや…周りの人達が当たり前のように持っているものが無いって言われるって…」
緑谷がメリッサに同情すると、メリッサは微笑みながら言った。
「…もちろんショックだったわ。でも、私にはすぐ近くに目標があったから」
「え…? 目標…?」
緑谷が尋ねると、メリッサはデヴィットとの家族写真を眺めながら話す。
「私のパパ。パパはヒーローになれるような“個性”を持ってなかったけど、科学の力でマイトおじさまやヒーロー達のサポートをしている。間接的にだけど、平和の為に戦っている」
「ヒーローを助ける存在…」
「そう。それが私の目指す、ヒーローのなり方!」
メリッサの話に対して緑谷が呟くと、メリッサが答える。
その眼差しからは、目標に向かってひたむきに努力している姿勢が見て取れた。
するとメリッサが持ってきた箱を緑谷の目の前で開ける。
箱の中には、赤いリングが二つ入っていた。
「このサポートアイテムね、前にマイトおじさまを参考に作ったものなの」
「オールマイトを…?」
緑谷が尋ねると、メリッサは緑谷の右手に赤いリングを装着しながら話す。
「ここのパネルを押してみて」
緑谷がメリッサの言う通りパネルを押すと、リングが変形して腕に纏わり付きガントレットの形になった。
「これは…!?」
「名付けるなら『フルガントレット』かしら! デクくんと初めて会った時、手に傷跡があるのを見て…アトラクションをしていた時も意図的に“個性”をセーブしているように感じて、それで思ったの。デクくんは強すぎる“個性”に身体がついていけてないんじゃないかって…」
「…!」
メリッサが言うと、緑谷は目を見開く。
初めて会った時点でメリッサは緑谷の“個性”のデメリットに気付いていたのだ。
「この『フルガントレット』、マイトおじさま並みのパワーで拳を放っても3回は耐えられるくらいの強度があるわ。きっとデクくん本来の力が発揮できると思う!」
「僕の…力を…?」
メリッサが自信満々に言うと、緑谷はメリッサにつけてもらったガントレットを見つめる。
するとメリッサは緑谷に提案する。
「それ、デクくんが使って」
「えっ、でも…大切なものなんじゃ…」
「だから使ってほしいの! 困ってる人達を助けられる、素敵なヒーローになってね!」
「……!」
メリッサの宝物を貰い受ける事に少し抵抗を覚えた緑谷だったが、メリッサが快く渡すと緑谷は笑顔を浮かべて受け取る。
メリッサにとって一番嬉しいのは、自分の発明したアイテムを未来のヒーローに使ってもらう事なのだ。
「はい!」
緑谷が笑顔で頷くと、メリッサも満足そうに笑顔を浮かべる。
するとその時、緑谷の携帯が鳴る。
かけてきたのは飯田だった。
「もしもし…「何をしている緑谷くん!! 集合時間はとっくに過ぎてるぞ!!」
緑谷が電話に出た次の瞬間、飯田が電話越しに怒鳴りつけてきて緑谷が目を見開く。
飯田が集合時間の事を伝えると、緑谷は18時半に集合する約束をしていた事を思い出した。
◇◇◇
「ごめん遅くなって!!」
正装に着替えた緑谷は、集合場所の7番ロビーへと駆けつけ遅れた事をクラスメイトの謝罪する。
緑谷が着ていたのは、クリーム色のシャツと黒い蝶ネクタイの上にえんじ色のスーツといった格好だった。
「って…あれ?」
緑谷は、ロビーに集まっているメンバーを見て首を傾げる。
そこにいたのは、白いシャツの上に青いスーツと黄色いネクタイを身に付けた飯田、水色のシャツの上に白いスーツと赤いネクタイを身に付けた轟、白いスーツの上にラベンダー色のスーツと紫色のネクタイを身に付けた心操、そしてバイトの制服の上鳴と峰田だけだった。
「他の人は?」
「まだ来てない! 団体行動を何だと思っているんだ!?」
緑谷が尋ねると、飯田が苛立った様子で答える。
するとその時、入り口の扉が開く。
「ごめん! 遅刻してもうた!」
謝りながら現れたのは、ピンクと白を基調としたドレスを着た麗日だった。
白薔薇と黒いリボンの髪飾りと真珠のネックレスをつけており、いつもとは違う華やかな格好だった。
「「おほぉ〜!!」」
「似合ってるよ、麗日」
「えへへ…ありがとう。私こういう格好した事ないから不安だったんよ…」
麗日の華やかな正装に、上鳴と峰田が興奮気味に叫ぶ。
心操が麗日の正装を誉めると、麗日は若干照れ臭そうにしながらも素直に喜ぶ。
すると再び扉が開く。
「申し訳ありません…耳郎さんが…」
扉から現れたのは、ライムグリーンの大人の女性らしいスレンダーラインのドレスを着た八百万と、紺とピンクを基調としたドレスと黒い上着を着た耳郎だった。
耳路は髪を纏め上げていつもの私服とは違った意味でお洒落な格好をしていたが、恥ずかしいのか八百万の後ろに隠れていた。
「「OhYes!! Yes!!」」
八百万のセクシーな格好に、上鳴と峰田が再び歓声を上げる。
「二人とも綺麗だね」
「まあ、ありがとうございます」
「そ、そうかな…? う…ウチこういう格好はその、何というか…」
心操が率直に二人を褒めると八百万が礼を言い、耳郎は照れてはいたものの嬉しそうな様子だった。
すると上鳴と峰田が耳郎の正装についてコメントする。
「馬子にも衣装ってやつかな!?」
「女の殺し屋みてぇ…」
「失礼だぞお前ら」
上鳴と峰田の発言に対し心操が注意すると、耳郎が上鳴と峰田の耳にジャックを刺して爆音を浴びせる。
「「ぎゃあああああああ!!?」」
爆音を浴びせられて伸びている二人に対し、耳郎が睨みつけて黙らせる。
「黙れ」
「何だよ!? 俺褒めたじゃんかぁ!?」
「褒めてない!」
二人を睨む耳郎に上鳴が不満を漏らすと、耳郎が腹を立ててそっぽを向く。
するとその時、再び扉が開く。
「ごめ〜ん! 大遅刻だ! 女の身だしなみって時間かかるんだねぇ…!」
そう言って駆け込んできたのはひなただった。
ひなたは、黒を基調としスカート部分に赤地に緑色のリボンと白いフリルが装飾されたラインが入っており裾に金色のキラキラしたダマスク柄の刺繍が施されたドレスと、水面のようにキラキラした白いボレロを着ていた。
髪は百合の花をモチーフにした髪飾りで飾られており、普段の外ハネの髪は左側を編み込みふわっとしたボブになっていた。
音符のイヤリングとト音記号のブローチ、赤い宝石のネックレスと真珠のブレスレットをつけており、腰には桜色のリボンと赤い薔薇が飾られ、さらには影山に施されたナチュラルメイクをしていた。
ひなたの姿を一目見た心操は、思わず目を見開く。
「ひなた…」
「えへへ…どうかなひー君? 似合うかな? なんて…」
ひなたは、心操の方へ駆け寄っていくと全身が見えるようにその場でクルッと回った。
「…ああ、すごく綺麗だよ。よく似合ってる」
心操が言うと、ひなたはぱあっと表情を明るくする。
「えへへへ…ありがとう! 幽華ちゃんにお化粧してもらったんだよー」
「げ…影山も来てんのか」
「うん! レセプションパーティーに参加するって言ってたから、会えるかもね!」
「会いたくないんだけど…」
ひなたが影山の話をすると、心操は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
ひなたと仲がいい心操にとって、隙あらばひなたを独占しようとする影山とはまさに水と油だった。
すると心操は首を手で押さえながら何かを考え込む。
ひなたは、それを見てキョトンとした。
「? 何?」
「いや…普段あんまり気にしてなかったけど、こうして見るとひなたってすげぇ美人なんだなって…」
心操が感想を言うと、ひなたは目を丸くして首や耳まで真っ赤にする。
「…っ!! はっ…ぁ…は、反則……」
「?」
不意を突かれたひなたが慌てふためいた様子で照れ隠しをすると、心操は首を傾げる。
すると上鳴と峰田もひなたの正装についてコメントする。
「おお…やるじゃねぇか! 相澤のくせに!」
「うむ…幼児体形なのに見惚れざるを得ない…」
「お前らいい加減にしとけよ」
上鳴と峰田の発言に対し心操が注意すると、耳郎が上鳴と峰田の耳にジャックを刺して爆音を浴びせる。
「「ぎゃあああああああ!!?」」
爆音を浴びせられて伸びている二人に対し、耳郎が睨みつけて黙らせる。
「謝れ」
「「はいすみませんでした…」」
耳郎が二人を睨みながらひなたに謝るよう言うと、二人は細々とした声を絞り出してひなたに謝る。
二人が耳郎に強制土下座させられている間、麗日が緑谷に話しかける。
「正装なんて初めてだぁ…! 八百万さんに借りたんだけど…」
「に、似合ってるよ! うん、すごく!」
「わーデクくんったら!! お世辞なんて言わんでいいって!!」
「麗日くん!?」
麗日が言うと緑谷は緊張しつつも麗日の衣装を褒め、麗日は緑谷に褒められて恥ずかしくなり顔を真っ赤にして手を振り、麗日の挙動を飯田が心配する。
するとその時、また扉が開く。
扉の方を振り向いた上鳴と峰田は、再び歓声を上げた。
「うっほー!!」
「わあああ!!」
「デクくん達まだここにいたの!? パーティー始まってるわよ!」
扉から出てきたのは、青と白を基調としたドレスを着たメリッサだった。
長い髪はポニーテールにしており、いつもの眼鏡を外しナチュラルメイクをしているメリッサは誰が見ても『美しい』という感想を抱かせるほど魅力的だった。
「真打ち登場だぜぇ!!」
「ヤベェよ峰田、俺どうにかなっちまうよど〜しよぉ〜!!」
「どうにでもなれ」
「たはは…」
号泣しながら喜ぶ上鳴と峰田に、耳郎とひなたが冷ややかな姿勢を向ける。
◇◇◇
セントラルタワー2階、レセプション会場
会場には豪華な食事が並んでおり、世界中の有名ヒーロー達が集まっていた。
『えー、ご来場の皆様。I・EXPOのレセプションパーティーにようこそおいで戴きました! 乾杯の音頭とご挨拶は、来賓でお越し戴いたNo. 1ヒーロー、オールマイトさんにお願いしたいと思います!』
司会が言うと、パーティーの客達は一斉に歓声を上げる。
『皆様、盛大なる拍手を!』
司会が拍手を求めると、客達はオールマイトに盛大な拍手を送った。
オールマイトは、笑顔を浮かべつつも若干困惑していた。
『どうぞステージにお越し下さい!』
司会が言うと、オールマイトは隣にいたデヴィットに小声で話しかける。
「デイヴ…聞いてないぞ」
「オールマイトが来ると知ったらそうなるさ」
オールマイトがデヴィットに文句を言うと、デヴィットは苦笑いを浮かべながら答える。
「やれやれ…」
オールマイトは、呆れつつも司会の指示通りステージに向かっていった。
一方、既に会場に来ていた影山は周りを見渡してひなたを探していた。
「ひなたちゃんまだかしら…会場で待ってれば会えると思ったのに、どこにいるのかしら?」
◇◇◇
その頃飯田は、まだ来ていない爆豪と切島に電話をかけていた。
「ダメだ…爆豪くんも切島くんも、どちらの携帯にも応答が無い」
「携帯部屋に置いてきちゃったまま迷子になってたりして…」
「シャレになんないよ…よりによってそんなアホなミスやらかすかよ」
「だよね!」
飯田が報告すると、ひなたが苦笑いを浮かべながら言い心操がツッコミを入れる。
するとひなたもそんなわけないと思い笑い飛ばした。
◇◇◇
その頃、爆豪と切島は。
「おい…! 本当にこの道で合ってんのか?」
爆豪は、一緒に歩いていた切島にイライラした様子で尋ねる。
「多分…そうだと思うけど…」
「多分だぁ!?」
「あ、いやぁ! 実は携帯部屋に忘れてきちゃってさ!」
爆豪がキレると、切島は頭を掻いて笑いながら報告した。
奇しくもひなたの予想が的中していたのだ。
◇◇◇
その頃オールマイトは、壇上に上がって客達に挨拶をしていた。
『ご紹介に預かりました、オールマイトです! 堅苦しい挨拶は…』
オールマイトが言いかけたその時、後ろのモニターに警告画面が現れ警告音が鳴る。
すると客達は慌てふためく。
その直後、I・アイランド全体に向けたアナウンスが鳴り響く。
『I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより、I・EXPOエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手しました。I・アイランドは現時刻をもって厳重警戒モードに移行します。島内に住んでいる方は自宅または宿泊施設に。遠方からお越しの方は近くの指定避難施設に入り待機して下さい。尚、今から10分以降の外出者は、警告なく身柄を拘束されます。くれぐれも外出は控えて下さい。また、主要施設は警備システムによって強制的に封鎖されます。繰り返します。警備システムにより…』
アナウンスが鳴り響くと、島内にいたA組は驚いて顔を見合わせるが、冷静にアナウンスの指示に従った。
I・アイランドの全エリアには、警備ロボットが大量に放たれる。
セントラルタワーは警備システムによってシャッターが閉まり、脱出できなくなっていた。
そして、パーティー会場には仮面を被り機関銃を武装した者達が押し寄せ客達に銃を突きつける。
客達が悲鳴を上げていると、赤髪をオールバックにし仮面を被った
「聞いた通りだ。警備システムは俺達が掌握した。反抗しようなどと思うな。そんな事をしたら…」
ウォルフラムは、そう言ってI・アイランドの全エリアの様子を映したモニターを表示する。
街では、大量の警備ロボットが住民達を取り囲んでいた。
「警備マシンがこの島にいる善良な人々に牙を剥く事になる。…そう! 人質はこの島にいる全ての人間だ! 当然、お前らもな。やれ」
ウォルフラムがパーティー会場にいた客達を脅し部下に指示を出すと、床の捕縛装置が起動し、瞬く間に会場にいたヒーロー達を拘束してしまった。
「セキュリティ用捕縛装置が…!!」
「いかん…!」
拘束されたオールマイトは、力尽くで捕縛装置を引き千切ろうとする。
するとウォルフラムがいきなり拳銃を発砲した。
「動くな! 一歩でも動けば即座に住民共を殺すぞ」
「Shit!」
ウォルフラムがパーティーの客達に銃を突きつけると、オールマイトは悔しそうに吐き捨てる。
するとウォルフラムがオールマイトを蹴り飛ばして転ばせる。
「いい子だ。全員オールマイトを見習って無駄な抵抗はやめるんだな!」
「くっ…!!」
ウォルフラムがオールマイトを見下しながらパーティーの客達を脅すと、オールマイトはウォルフラムを睨みつける。
するとデヴィットが首を横に振って大人しくウォルフラムの要求に従うように目で伝える。
◇◇◇
その頃、ひなた達はというと。
「ダメ…! 繋がらない!!」
「携帯が圏外だ。情報関係が全て遮断されちまったらしい」
「ま、マジかよ…」
ひなたが“個性”を使って交信を試みるが繋がらず、轟も携帯が圏外になっている事を伝えると、峰田が狼狽える。
「エレベーターも反応無いよ!」
「マジかよぉ!?」
さらにエレベーターを確認していた耳郎が報告すると、峰田はさらに動揺する。
あまりにも大袈裟な警備システムに、メリッサは違和感を覚え考え込む。
「爆発物が設置されただけで警備システムが厳戒モードになるなんて…」
すると緑谷が飯田に声をかける。
「飯田くん。パーティー会場に行こう」
「何故だ?」
「会場にはオールマイトが来てるんだ」
「オールマイトが!?」
「なんだ、それなら心配要らねえな!」
飯田の質問に緑谷が答えると麗日が驚き峰田が安心する。
すると緑谷がメリッサに声をかける。
「メリッサさん。どうにかパーティー会場まで行けませんか?」
「非常階段を使えば会場の近くに行けると思うけど…」
「案内お願いします!」
◇◇◇
その頃、パーティー会場では。
「安心しろ。大人しくしていれば危害は加えない。時間が来れば解放する準備もある」
ウォルフラムがパーティーの客達を人質に取って脅すと、ヒーローの一人が叫ぶ。
「貴様らの目的は何だ!?」
するとその直後、ウォルフラムが叫んだヒーローの下顎を蹴り上げる。
「がっ!?」
「聞こえなかったのか? 大人しくしていろ」
ウォルフラムは、ヒーローを見下しながら言った。
するとウォルフラムに部下から連絡が入る。
「…ああそうか。…わかった」
ウォルフラムは、通信を切るとサムの方に目を向け唐突に質問する。
「お前、ここの研究者だな?」
「は、はい…!」
サムが答えると、ウォルフラムは部下に命令する。
「連れて行け」
「一体何を…!?」
ウォルフラムの命令を受けた部下達がサムを連れて行こうとすると、サムが狼狽える。
すると、その時だった。
「やめろ!」
呼び止めるが聞こえたので後ろを振り向くと、デヴィットが立っていた。
デヴィットは、サムを庇う形でウォルフラムに話しかける。
「彼は私の助手だ! どうするつもりだ!?」
「ん…? デヴィット・シールドじゃねぇか。お前も来い!」
ウォルフラムが命令すると、デヴィットが尋ねる。
「断ったら…!?」
「この島のどこかで誰かの悲鳴が響く事になる」
「…! わ、わかった…行こう…!」
デヴィットの質問に対しウォルフラムが不敵な笑みを浮かべながら言うと、デヴィットは悔しそうに歯を食いしばりながらもウォルフラムの要求を飲む。
ウォルフラムは、そのままデヴィットとサムを会場の外へと連れ出した。
拘束されていたオールマイトは、この窮地をどう切り抜けようかと考えていた。
その時ふと上を見上げると、天井のガラス越しに緑谷が携帯の懐中電灯を使って合図を送っていた。
上の階では緑谷が合図を送り、耳郎が会場の音を拾っていた。
「オールマイトが気付いた…! 耳郎さん、行けそう?」
「いいよ!」
「喋って下さい! 聞いてます!」
緑谷が尋ねると、耳郎が頷く。
すると緑谷は、下の階にいるオールマイトにジェスチャーをした。
緑谷のジェスチャーを見たオールマイトは、小声で話す。
「聞こえるか?
オールマイトのメッセージを受け取った耳郎は、緑谷に報告する。
「大変だよ緑谷…!」
◇◇◇
そして二人からの報告を聞いたひなた達は。
「オールマイトからのメッセージは受け取った。俺は、雄英高教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出する事を提案する!」
飯田が言うと、八百万も飯田の意見に賛成した。
「飯田さんの意見に賛同します。私達はまだ学生…ヒーロー免許も無いのに
「あ、なら脱出して外にいるヒーローに…」
「それはいいけどまずどうやって脱出するんだ? 厳重な警備システムで強制的に封鎖されてるんだぞ」
「あ…」
上鳴が提案すると、心操が上鳴の提案に意見し上鳴がハッとする。
上鳴は、そもそもここから脱出する事ができないかもしれない可能性がすっかり抜けていたのだ。
するとメリッサも上鳴の提案に対して意見を言う。
「人使くんの言う通り、脱出は困難だと思う…ここは
「じゃあ、助けが来るまで大人しく待つしか…」
メリッサの発言に対し上鳴が半ば諦めた様子で言うと、耳郎が立ち上がって上鳴に声をかける。
「上鳴、それでいいわけ?」
「どういう意味だよ?」
「助けに行こうとか思わないの!?」
耳郎が上鳴に言うと、峰田が耳郎に反論する。
「おいおい、オールマイトまで
峰田が言うと、緑谷が僅かに俯く。
すると轟が自分の掌を見つめながら言った。
「俺らはヒーローを目指してる」
轟が言うと、八百万が反論する。
「ですから、私達はまだヒーロー活動を…」
「だからって…何もしないでいいの?」
轟が拳を握り締めながら言うと、八百万は何も言えなくなる。
「そ、それは…」
すると、俯いていた緑谷が自分の意見を言った。
「助けたい。助けに行きたい!」
緑谷が言うと、峰田が即座に反対した。
「
「違うよ峰田くん! 僕は考えてるんだ!
「気持ちはわかるけど、そんな都合のいい事…」
「それでも探したいんだ! 今の僕達にできる最善の方法を探して、皆を助けに行きたい!」
「デクくん…」
峰田と上鳴が止めても緑谷が言うと、メリッサと麗日が僅かに目を見開く。
するとひなたも笑顔を浮かべながら全員に提案する。
「やろうよ皆! 助けに行こう、今の僕達にできる事はあるはずだよ!」
「相澤さん…!」
ひなたが緑谷の意見に賛同して全員に呼びかけると、緑谷が目を見開く。
「根拠は?」
「勘!!」
心操の質問にひなたが自信満々に答えると、心操は呆れ返った目でひなたを見る。
「確かに上手くいく根拠は無いよ。でもさ、ここには策士でオールマイト並みのパワーを持つデッくんや、頭が良くてこの建物の構造に詳しいメリッサさんがいるんだよ? 天ちゃんは脚が速いし、お茶子っちは救助に最適だし、焦ちゃんはプロに負けないくらい強い! ヤオモモは何でも作れて、きょーちんは索敵ができて、ひー君は洗脳ができる! 電吉はチャラいし、峰田はエロブドウだし…」
「ひなちゃん、最後二つは褒め言葉じゃねぇぞ…」
「何でオイラ達だけ貶されたんだ…」
ひなたが全員の長所を挙げていく中上鳴と峰田の事だけ貶すと、上鳴がツッコミを入れ峰田が傷つく。
「そんでもって、僕はお父さんから受け継いだ“力”がある! ほらね!? 僕達、力を合わせればこんなに色々できるんだよ!?」
「……!」
ひなたが自信満々に言うと、メリッサが目を見開く。
するとひなたはニッと笑って拳を握りしめる。
「Plus Ultraってやつさ! 僕らなら、何だってできる気がするんだ!!」
「ひなた…」
ひなたが言うと、心操が僅かに目を見開く。
すると緑谷とひなたの言葉に心を動かされたメリッサが話し始める。
「I・アイランドの警備システムは、このタワーの最上階にあるわ。
「メリッサさん…!」
メリッサが言うと、緑谷が目を見開く。
すると耳郎がメリッサに尋ねる。
「監視を逃れるって、どうやって?」
「現時点で私達に実害は無いわ。
メリッサが言うと、轟も少し考え込む。
「戦いを回避してシステムを元に戻すか…なるほど」
「それならいけんじゃね!?」
「だよね!」
上鳴と耳郎がメリッサの作戦に賛同し、峰田がビクビクと震え上がる。
だが、懸念要素が無いわけではなかった。
「しかし最上階には、
「戦う必要は無いんだ! システムを元に戻せば、人質やオールマイト達が解放される! そうなれば、状況は一気に逆転するはず…!」
八百万が不安そうに言うと、緑谷が全員に訴えかける。
すると麗日が緑谷とひなたに話しかける。
「デクくん!! ひなたちゃん!! 行こう!!」
「麗日さん!」
「お茶子っち…」
「ひなたちゃんが言ってたように、私達にできる事があるのに何もしないでいるのは嫌だ! そんなの、ヒーローになるならない以前の問題だと思う!」
麗日が言うと、緑谷とひなたは顔を見合わせて頷く。
そして緑谷が麗日の意見に賛同した。
「うん! 困っている人達を助けよう! 人として当たり前の事をしよう!」
「「おう!」」
緑谷が言うと、麗日とひなたが力強く返事をする。
すると心操も立ち上がって話しかける。
「俺も行くよ」
「ひー君…!」
心操が緑谷達に賛同すると、峰田が半泣きになりながら止めようとする。
「心操! お前ここで待ってる派だったろ!?」
「脱出するのが現実的じゃないと言っただけだ。アテがあるなら試してみるに越した事はない。それに、ひなたは頭良いのにバカなとこあるから放っておいたら無茶しそうで怖いんだよ」
「う…」
峰田の反論に対し心操が自分の意見を言いひなたの頭に拳を置くと、ひなたは思い当たる節があるのか苦笑いを浮かべて黙り込む。
すると心操は、ふいと視線を逸らしながら聞こえるか聞こえないかくらいの声で言った。
「………ま、そういうところが好きなんだけど」
「何か言った?」
「別に」
心操の独り言にひなたが聞き返すと、心操は首を手で押さえて誤魔化す。
すると轟と耳郎も緑谷達に賛同する。
「緑谷。俺も行くぜ」
「ウチも!」
「轟くん!」
「響香ちゃん!」
そして、飯田も緑谷に話しかける。
「これ以上無理だと判断したら引き返す。その条件が飲めるなら、俺も行こう!」
「飯田くん!」
「天ちゃん!」
飯田が言うと、緑谷とひなたが笑顔を浮かべる。
「そういう事であれば私も!」
「よっしゃ、俺も!」
「八百万さん!」
「上鳴くん!」
八百万と上鳴も賛同すると峰田が狼狽えた様子で周りを見る。
「あーもうわかったよ行けばいいんだろ行けばぁ!!」
行きたくないのは自分だけとなってしまったので、泣き喚きながら渋々ついていく事に決めた。
すると緑谷とひなたをはじめとするA組が笑顔を浮かべる。
「ありがとう峰田くん!!」
「よく言った峰田!」
「いっちょやってやろうぜ峰田!」
「頑張ろう、峰田くん!」
峰田が泣きながらもついていく事に決めると、緑谷、ひなた、上鳴、麗日が声援を送る。
すると緑谷がメリッサに話しかける。
「メリッサさんはここで待っていて下さい」
「私も行くわ!」
「で、でも…メリッサさんには“個性”が…」
「この中に警備システムの設定変更ができる人いる?」
「あ…」
緑谷は“無個性”を理由にメリッサに待機するよう言うが、メリッサが言うと全員顔を見合わせる。
ひなたも精密機器の扱いが大の苦手というわけではなかったが、得意という程でもないので自信が無かった。
「私はアカデミーの学生! 役に立てると思う!」
「でも…」
「最上階に行くまでは足手まといにしかならないけど…私にも、皆を守らせて! お願い!!」
緑谷はメリッサの身を案じるが、メリッサは強く頼み続けた。
ひなたの『皆で力を合わせれば何だってできる』という言葉に心を動かされ、自分も皆の役に立ちたいと思ったのだ。
するとメリッサの同行を反対した緑谷も頷いて同行を認める。
「…わかりました。行きましょう! 皆を助けに!」
緑谷が言うと、他のA組も頷く。
するとメリッサは笑顔を浮かべて力強く返事をした。
「…ええ!」
◇◇◇
そしてパーティー会場では。
ヒーロー達は全員拘束され、人質も脅されて身動きを取れずにいた。
オールマイトも発動限界が近づいて咳き込んでいると、天井のガラスから緑谷が覗いている事に気がつく。
「緑谷少年…!」
緑谷の目を見たオールマイトは、緑谷達が自分達を助けようとしている事に気がつくが、緑谷達の身を案じて脱出するよう目で伝える。
すると緑谷は首を横に振り、目で『出来る限りの事をやりたい』と伝える。
そして必ず助けると約束して頷くと、A組やメリッサと合流した。
するとオールマイトは、緑谷達がこの状況を打開すると信じて待つ事に決めた。
「行くぞ!!」
「「「「おう!!」」」」
飯田が言うと、その場にいた全員が力強く頷いた。