抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が8件9が30件だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。


洸太くん

 合宿二日目、午前5時30分。

 A組の生徒達は眠たげで、ヘアセットも終わっていなかった。

 ひなたも髪をボサボサにしたままで大きなあくびをしていた。

 すると相澤が生徒達の前に立つ。

 

「お早う諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の心の準備だ。心して望むように。というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」

 

 そう言って相澤は、ボールを爆豪に投げた。

 するとボールを受け取った爆豪が口を開く。

 

「これ…体力テストの…」

 

 爆豪が受け取ったボールは、“個性”把握テストの時に投げたボールだった。

 すると相澤は入学時の記録を見せながら言った。

 

「前回の… 入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」

 

 すると、他の生徒達も盛り上がる。

 

「おぉ! 成長具合か!」

 

「ここ3ヶ月色々濃かったからな! 1kmとか行くんじゃねぇの!?」

 

「行ったれバクゴー!」

 

 瀬呂や芦戸が大いに期待しながら爆豪に声援を送ると、爆豪は前に出て右腕をブンブンと振るう。

 そして、左脚を軽く上げて投げる姿勢を取った。

 

「んじゃよっこら…くたばれ!!!」

 

(((……くたばれ…)))

 

 爆豪が罵声を吐き捨てながら球威に爆風を乗せると、ひなたを含むA組全員が固まった。

 ボールは大きく飛んで森の中に入って行き、相澤の持っている端末がピピッと鳴り記録が出た。

 すると相澤は、端末を全員に見せながら記録を発表する。

 

「815.4m」

 

「「「おおおおおおお!!?」」」

 

 爆豪が800m超えの記録を叩き出すと、A組がどっと歓声を上げる。

 正直ここまでの記録を叩き出すのは相澤も想定外だったのか、職場体験で既に“個性”を伸ばす方法を掴んだのでないかと考え爆豪に尋ねる。

 

「…お前、職場体験で何があった?」

 

「無駄にとっ散らかってた爆破を収束させただけだ。技術で補っただけで、“個性”そのものが伸びたわけじゃねえ。あんたが言いてえのはそういう事だろ」

 

「まあな。正直、技術面の強化だけでこの伸びは想定外だ」

 

 爆豪が急激な成長の理由を話すと、相澤は、“個性”因子そのものの成長ではなく技術面だけでここまでの爆発的な成長をしたという事実に驚きつつも話を続ける。

 

「約三ヶ月間様々な経験を経て確かに君らは著しく成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで、爆豪が今言ったように、“個性”そのものはそこまで成長していない。だから──今日から君らの“個性”を伸ばす」

 

 相澤は、合宿での特訓の説明をA組にした。

 そして相澤は、右手の人差し指を立てて不敵な笑みを浮かべる。

 

「死ぬほどキツいがくれぐれも…死なないように──…」

 

 相澤が不敵な笑みを浮かべながら言うと、A組の大半が青くして震え上がる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 それから数十分後、B組はというと。

 

「“個性”を伸ばす…!?」

 

 ブラドキングの発言に対し、拳藤が尋ねる。

 するとブラドキングはA組の方を親指で差しながら言った。

 

「A組はもうやってるぞ。早く行くぞ。前期はA組が色々目立ってたが、後期は我々の番だ。いいか? A組ではなく我々だ!」

 

(((先生…!! 不甲斐ない教え子でごめん!)))

 

 ブラドキングが言うと、鉄哲、凡戸、黒色は心の中で謝る。

 すると、取蔭と鎌切が尋ねる。

 

「当然“個性”を伸ばすと言っても…21名21通りの“個性”があるし…何をどう伸ばすのかわかんないんスけど…」

 

「具体性が欲しいな」

 

「筋繊維は酷使するほど壊れ、強く太くなる…個性も同じだ。使い続ければ強くなりでなければ衰える! 即ちやるべき事は1つ! 限界突破!!」

 

 

 

「ぎゃああああああああああ!!!」

 

「いてええええええええええ!!!」

 

「クソがあああああああああ!!!」

 

 B組の目の前には、A組が訓練している姿が晒け出される。

 地獄絵図になっており、所々から悲鳴が聞こえてくる。

 その様子はもはや拷問を受けている囚人だった。

 

「何だこの地獄絵図…!!」

 

「もはやかわいがりですな」

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型・その他複合型は“個性”に由来する器官・部位の更なる鍛錬。通常であれば肉体の成長に合わせて行うが…」

 

「まぁ、時間ないんでな。B組も早くしろ」

 

「しかし私達も入れると42人だよ? そんな人数の“個性”、たった6名で管理できるの?」

 

「だから彼女らだ」

 

「そうなのあちきら四位一体!」

 

「「「「!?」」」」

 

「煌めく眼でロックオン!!」

 

「猫の手手助けやってくる!!」

 

「どこからともなくやって来る…」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」」」

 

 そう言って出てきたのはマンダレイとピクシーボブ、そして丸い目が特徴的な女性と筋骨隆々の男だった。

 

「あちきの“個性”『サーチ』! この目で見た人の情報100人まで丸分かり!! 居場所も弱点も!」

 

「私の『土流』で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

 

「そして私の『テレパス』で一度に複数の人間へアドバイス」

 

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ…!」

 

((((色々駄目だろ))))

 

「単純な増強型の者! 我の元に来い。我ーズブートキャンプはもう始まっているぞ」

 

「ひ━━」

 

 虎の背後には、緑谷が全身を動かしながら特訓していた。

 

((((古))))

 

「さぁ今だ撃ってこい」

 

「はっ、25%『デトロイトスマッシュ』!!」

 

 虎は緑谷の攻撃を身体をグニャリと曲げて躱し、逆にカウンターを叩き込む。

 

「よォォォしまだまだキレキレじゃないか!! 筋繊維がちぎれてない証拠だよ!!」

 

「イエッサ!!」

 

「声が小さい」

 

「イエッサァ!!」

 

(((ノリ怖え!)))

 

「プルスウルトラだろぉ!? しろよ! ウルトラ!」

 

(((この人だけ性別もジャンルも違うんだよなぁ)))

 

 虎が緑谷をいじめ抜いていると、B組の生徒達は全員心の中でツッコんだ。

 こうしてA組とB組は“個性”を伸ばすための訓練をする事になった。

 …のだが、A組の中で一部の者は職場体験や期末試験の対策で大幅に地力を伸ばし、文字通り桁違いの成長を見せた者が何人かいたため、B組の担任のブラドキングの対抗心に火がついてしまい、B組の訓練は当初の予定よりも数倍ハードなものとなっていた。

 

 

 

 ◆青山優雅

 

「AN! OH! UU…オナカイタイ……☆」

 

 射出時間を伸ばすため腹を壊してもレーザーを出し続ける。

 

 

 

 ◆芦戸三奈

 

「うがぁああ!! いぎぃいいい……!!」

 

 溶解液の長時間使用に耐える皮膚の耐久度強化する為、酸を出し続ける。

 

 

 

 ◆蛙吹梅雨

 

「ケロ…ケロ…!」

 

 跳躍力とベロ力等、地力を鍛える筋トレ。

 

 

 

 ◆飯田天哉

 

「ぬおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 脚力と持久力を鍛え、あらゆる地形に対応した柔軟な動きを習得する為、ピクシーボブの作ったS◯SUKE風のコースをひたすら走る。

 

 

 

 ◆麗日お茶子

 

「うぅ……お゛え゛ぇええええ…」

 

 三半規管の鍛錬と酔いの感覚を鳴らし限界重量を増やす為、酔っている状態でも“個性”を使用し続けて鍛える。

 

 

 

 ◆尾白猿夫

 

「ふっ!! セイ!!」

 

 尻尾の強度を上げる為ひたすら硬い物(切島)を殴り続ける。

 

 

 

 ◆上鳴電気

 

「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!!」

 

 許容量を上げるため高圧電流を浴び続ける。

 

 

 

 ◆切島鋭児郎

 

「ンガァ!! グゥッ!!」

 

 筋力と硬度を上げ相乗効果を狙って硬化状態で尾白に殴られ続ける。

 

 

 

 ◆砂藤力道

 

「んぐ…うぷっ、ぁぐ…」

 

 効果時間とパワーの増幅の為、糖分を摂取しながら筋トレをする。

 

 

 

 ◆障子目蔵

 

「…………………」

 

 複製速度強化や、複数同時複製時のコントロール調整。

 

 

 

 ◆耳郎響香

 

「ふっ、くっ、んがぁ!!」

 

 ジャック部分を鍛えて音質をよくする様にジャックをひたすら打ち付ける。

 

 

 

 ◆心操人使

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 声が“個性”なので声が遠くまで届くよう発声練習。

 プラス、より複雑な命令ができるようイメージ修行。

 

 

 

 ◆瀬呂範太

 

「ぬああああああああああああ!!!」

 

 テープの容量、強度、射出速度を強化する為ひたすらテープを伸ばし続ける。

 

 

 

 ◆常闇踏陰

 

「ま、待て!! ちょっ…ぎゃあああああああああああ!!!」

 

 暗闇下でも黒影(ダークシャドウ)を制御する為に洞窟の中で黒影(ダークシャドウ)と喧嘩。

 

 

 

 ◆轟焦凍

 

「はぁ…はぁ………くっ」

 

 体温を一定に保ちつつ、許容上限の底上げの為氷と炎を同時に使い続ける。

 

 

 

 ◆葉隠透

 

「そーっと…そーっと………」

 

 透明人間なので気づかれずに行動できるように障子とかくれんぼ。

 

 

 

 ◆爆豪勝己

 

「クソがあああああああああああああ!!!」

 

 より汗腺を発達させて汗の燃費を上げる為、高温下で発汗トレーニングをしつつ爆破を使い続ける。

 

 

 

 ◆緑谷出久

 

「うぉおおお!!」

 

「よおおし伸ばせ千切れヘボ“個性”を!!」

 

「イエッサー!!」

 

 地力を鍛える為虎と我ーズブートキャンプ。

 

 

 

 ◆峰田実

 

「はぐぁぁぁぁっ、ぐうぇぇぇ!!!」

 

 もぎり続けても血が出ない頭皮を作る為、血が出てももぎり続ける。

 

 

 

 ◆八百万百

 

「うぷ……んぐ、ぁむ……うぅ…」

 

 砂藤と一緒に高カロリーのものを食べながらクオリティの高い物を創造し続ける。

 

 

 

 そしてひなたはというと。

 

「相澤。お前の訓練内容は別だ。ついて来い」

 

「? はい!」

 

 相澤は、誰もいない森の奥へとひなたを呼び出した。

 

「この辺でいいか…」

 

「おと…あ、じゃなかった…相澤先生。僕は何をすれば?」

 

 ひなたは、いまいち要領を得ない様子で相澤に尋ねる。

 すると相澤は、いきなりひなたを睨みつけて“個性”を消した。

 “個性”を消されたひなたは、反射的に身構える。

 

「わ!? ちょ、いきなり何するんだよ!?」

 

「この状態で“個性”を使ってみろ」

 

「いや、今先生が消してるんだから使えるわけ…」

 

「いいからやれ」

 

 相澤が“個性”を発動したまま命令すると、ひなたは“個性”を使おうとする。

 相澤に“個性”因子を止められているため“個性”は発動できなかったが、髪がふわっと浮き上がり瞳が弱く点滅した。

 

「どんな感じだ?」

 

「すっごく重い…ですけど……ちょっとだけ動きます…」

 

 相澤が尋ねると、ひなたは表情を歪めながら答える。

 すると相澤は、ふっと髪を下ろした。

 

「やっぱりな」

 

「はい?」

 

「俺の“個性”が効きにくくなってる」

 

 相澤が言うと、ひなたがハッとする。

 もしやUSJで負った傷が原因で相澤の“個性”が弱まっているのではないかと思ったのだ。

 

「…先生、まさかUSJの時の傷が響いて…」

 

「違う。俺が弱くなったんじゃない。お前の“個性”が強くなってるんだ」

 

「!」

 

「俺はお前を引き取ってから、“個性”を制御する訓練こそさせてきたが、“個性”そのものを成長させる訓練は一度もさせてない。お前の“個性”はかなり特殊で、何もしなくても勝手に膨張し続けちまうものだからだ。最近、“個性”を使うと疲れやすいんじゃないか?」

 

「あ、そういえば…」

 

「それはお前の体力の成長が“個性”の成長に追いついていないからだ。力の成長を抑制する方法が無い以上、お前自身の成長を少しでも“個性”の成長速度に追いつかせるしかない。喉の筋力と緻密性を高める為の発声練習、より強い振動に耐える為の振動トレーニング、音感や聴力を鍛える為のトレーニング、基礎体力を鍛える為の筋トレ、総合力を鍛える為実戦を意識した練習試合などなど…これらを並行して行う。先に言っておくが、死ぬほどキツいから覚悟しておけよ」

 

 相澤がニィッと笑いながら言うと、ひなたは無言で考え込む。

 そして数秒の間を置くと、何かの覚悟を決めたかのように無表情かつ抑揚のない声で尋ねる。

 

「この状況からでも入れる保険ってありませんか?」

 

 ◆相澤ひなた

 

 ・発声練習

 ・振動トレーニング

 ・音感トレーニング

 ・筋トレ

 ・我ーズブートキャンプ

 ・瞑想

 ・練習試合

 

 総合力を鍛える為、これらを並行して行う。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時間が進み、時刻はPM4:00

 プッシーキャッツ達の前には、野菜や肉などの大量の食材と調理器具が並んでいた。

 

「さぁ、昨日言ったね。『世話焼くのは今日まで』って!!」

 

「己で食う飯くらい己で作れ!! カレー!!」

 

「「「「「イエッサ……」」」」」

 

 ハイテンションのプッシーキャッツ達とは対照的に、生徒達は全員疲れ切っていた。

 するとラグドールがケラケラと笑い飛ばす。

 

「アハハハ全員全身ブッチブチ!! だからって雑なねこまんまは作っちゃダメね!」

 

 ラグドールが笑いながら言うと、ピクシーボブに揉まれまくってボロボロになったひなたが呆れ顔を浮かべる。

 だがただ一人、飯田だけはこの状況を前向きに考えていた。

 

「確かに…災害時など避難所で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環……さすが雄英、無駄が無い!! 世界一美味いカレーを作ろう皆!!」

 

「「「オ…オオ〜…」」」

 

 飯田は、勝手に過大解釈し生徒達を纏め上げた。

 すると相澤は、

 

(飯田便利)

 

 などと考えていた。

 そしてA組とB組共同でカレーを作り始める。

 

「轟ー! こっちも火ィちょーだい」

 

 炭を用意していた芦戸が、轟に声をかける。

 

「爆豪爆発で火ィ付けれね?」

 

「付けれるわクソが!」

 

「ええ…!?」

 

 瀬呂が爆豪に頼むと爆豪は逆ギレしながら爆破で火をつけ、瀬呂がドン引きする。

 

「皆さん! 人の手を煩わせてばかりでは、火の起こし方も学べませんよ」

 

「………」

 

「八百万、お前それは……」

 

 チャッカマンを創造して火をつけながら呼びかける八百万に対し、耳郎と心操はもはやツッコミの言葉すら出なかった。

 

「いや、いいよ」

 

 そう言って轟は左手で火を起こす。

 すると麗日がピョンピョン飛び跳ねながら喜ぶ。

 

「わー! ありがとー!!」

 

「燃えろー! 燃やし尽くせー!」

 

「尽くしたらあかんよ」

 

 上機嫌になって言う芦戸に対し、麗日がツッコミを入れる。

 一方で、火をつけ終わったひなたは、早速食材の下拵えに取り掛かっていた。

 

「食材は…何があるかな。オーソドックスな食材に……おっ、変わり種も用意してくれてるんだ」

 

「カレールウある時点でほぼ味決まったようなもんだよな」

 

「まあでもせっかく食材用意してもらったわけだし、色々工夫してみましょ」

 

 心操が『これで世界一美味いカレーを作れと言われてもな』と言いたげな表情を浮かべて言うと、ひなたはふんっと鼻を鳴らしてみせた。

 サルミアッキ中毒のせいで騙されがちだが、ひなたは相澤の食事をほとんど毎日作っていただけあってクラスの中でも料理は得意な部類だった。

 早速カレーの下拵えに取り掛かったひなた達だったが…

 

「あのさヤオモモ、生肉は洗わなくていいんだよ…」

 

「も、申し訳ありませんひなたさん!」

 

「おい半分野郎! ジャガイモの芽まだ残ってんぞ!」

 

「悪い」

 

「なあ砂藤…『剥く』ってさ、何かエロくね?」

 

「知らん! 手を動かせ!」

 

 主にひなた、爆豪、砂藤の三人が仕切るキッチンは戦場と化していた。

 才能マンと称される爆豪は言わずもがな、スイーツ男子の砂藤も趣味で料理をする事が多いので、実はA組の中では一番料理が得意だった。

 

「なあかっちゃんくん…もうそれくらいでいいんじゃないですか?」

 

「ふざけんなもっと辛くした方が美味いだろうが!!」

 

 上鳴が恐る恐る声をかけると、爆豪は香辛料を片っ端からカレーの鍋にぶち込んだ。

 ハバネロパウダーやショウガ、コショウ、ガラムマサラなど、用意された調味料の瓶を丸々一本使い切る勢いで鍋にぶち込む爆豪を見て、上鳴がドン引きする。

 

「ヒェッ…」

 

「ああ、どんどんカレーが赤く…」

 

 カレーを激辛にする爆豪を遠目で見たB組の男子達はドン引きしており、特に辛いのが苦手なメンバーは顔を青くしていた。

 

「向こうは激辛にしてるし、僕達は甘口のカレーを作ろうか」

 

「何入れる?」

 

「appleを入れたらドウでしょウ? 初メテ食べたジャパニーズカリー、apple入ってて美味しかったデース」

 

「リンゴ…!?」

 

 リンゴ好きの角取が言うと、同じくリンゴ好きの常闇が反応した。

 一方で、拳藤達B組の女子達は、もう一つの鍋の具材を何にするか話し合っていた。

 すると小大が自慢げにトマトを取り出す。

 

「どうしたの、唯」

 

「んん!」

 

 拳藤が尋ねると、小大はトマトを見せながらアピールした。

 小大曰く、以前家でカレーを食べた時、トマトをカレーに入れたら美味しかったそうだ。

 

「なるほどね。じゃあこっちの鍋にはトマト入れてみよっか」

 

「ん!」

 

「キノコも入れると美味しいノコよ!」

 

 B組の女子達は、夏野菜とキノコのカレーを作る事にしたようだ。

 トマト、茄子、カボチャ、ズッキーニ、オクラ、パプリカ、インゲン、マッシュルームなどの野菜を切って下ごしらえしていく。

 するとひなたは、冷蔵庫から調達してきた食材を運びながら声をかける。

 

「ん、B組は夏野菜カレーにするんだ。じゃあ僕は野菜の素揚げ作るね」

 

「えっ、いいの…?」

 

「うん。っていうかそっちのカレーも食べてみたいし。何事もギブアンドテイクだよ」

 

 柳が尋ねると、ひなたは口の端から涎を垂らしながら微笑んだ。

 ひなた達A組は、爆豪の激辛カレーの他に、冷蔵庫にあった冷凍シーフードミックスを使ってシーフードカレーを作る事にした。

 

「ひなた、シーフードミックス蒸し焼きにしといたぞ」

 

「カレールウ入れたよー!」

 

「ありがとう! じゃあそっちの鍋に入れちゃって。あと、ココナッツミルクとオイスターソースで味整えて」

 

「わかった」

 

 ひなたは、夏野菜の素揚げを作りながら、クラスメイトに指示を出した。

 

「よし、できた!」

 

 ひなたは、夏野菜カレー用の素揚げを作り、人数分の皿に盛り付けた。

 数十分後、ハバネロ入り激辛カレー、リンゴとハチミツの甘口カレー、三種の魚介入りシーフードカレー、夏野菜とキノコのトマトカレーの4種類のカレーが完成した。

 A組とB組は、それぞれ食べたいカレーを自分の皿に盛って食べた。

 

「いただきまーす!」

 

「うめぇ! この状況も相まってうめぇ!」

 

「下手したらそこらの店よかうめえ!」

 

 ヒーロー科の生徒達は、自分達で作ったカレーをがっつき始めた。

 切島と瀬呂は、自分達で作ったカレーの味に感動していた。

 

「ヤオモモがっつくねー!」

 

「ええ。私の“個性”は脂質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄える程沢山出せるのです」

 

「うんこみてえ」

 

「「黙れェ!!」」

 

 瀬呂が口を滑らせると八百万が落ち込み、ブチ切れた耳郎とひなたが瀬呂を殴る。

 すると、話を聞いていた洸汰が俯いて呟く。

 

「何が“個性”だ…本当…下らん…!!」

 

 その洸汰を、緑谷は心配そうに見ていた。

 洸汰がどこかへ去っていくと、緑谷は席を立った。

 

「ごめん、僕ちょっと洸汰くんの所行ってくる」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方洸汰はというと、洞窟の入り口に座り込んで夜空を眺めていた。

 すると、緑谷がカレーを持ってきた。

 

「お腹空いたよね? これ食べなよ」

 

「てめぇ! 何故ここが…!」

 

「あ、ごめん。足跡を追って…! ご飯食べないのかなと…」

 

 緑谷がカレーを差し出すと洸汰が悪態をつきながら尋ね、緑谷が少しビクッとしながら話す。

 緑谷が心配すると、洸汰は緑谷を睨んで拒否した。

 

「いいよ。いらねえよ。言ったろ、つるむ気などねえ。俺のひみつきちから出てけ」

 

「ひみつきちか…!」

 

「“個性”を伸ばすとか張り切っちゃってさ…気味悪い。そんなにひけらかしたいかよ、力を」

 

 洸汰は緑谷に背を向けて次々と不満を吐き捨てる。

 すると緑谷が尋ねた。

 

「君の両親さ…ひょっとして水の“個性”の『ウォーターホース』…?」

 

 洸汰は、緑谷が自分の両親の事を知っていたので思わず緑谷の方を振り向く。

 

「…………マンダレイか!?」

 

「あ、いや、えっと、あ━━━…ごめん!! うん…何か流れで聞いちゃって…情報的にそうかなって…残念な事件だった。覚えてる」

 

 洸汰が尋ねると、緑谷が答える。

 すると洸汰は、緑谷から目を逸らしながら話し始める。

 

「…………うるせえよ。頭イカレてるよみーんな…馬鹿みたいにヒーローとか(ヴィラン)とか言っちゃって殺し合って、“個性”とか言っちゃって……ひけらかしてるからそうなるんだバ━━━カ」

 

 そう言い捨てる洸汰の目が僅かに涙ぐんでいるのを、緑谷は見逃さなかった。

 

「何だよ、もう用無いんだったら出てけよ!」

 

 洸汰が叫ぶと、緑谷は話し始める。

 

「いや…あの……えー、友達…僕の友達がさ! …親から“個性”が引き継がれなくてね」

 

「……は?」

 

 緑谷が言うと、洸汰が声を漏らす。

 緑谷が話していたのは、“個性”が無いと医者に告げられた時の自分の話だった。

 

「先天的なもので稀にあるらしいんだけど…でもそいつはヒーローに憧れちゃって、でも今って“個性”がないとヒーローにはなれなくて、そいつさ、しばらくは受け入れられずに練習してたんだ。物を引き寄せようとしたり、火を吹こうとしたり…“個性”に対して色んな考えがあって一概には言えないけど、そこまで否定しちゃうと君がつらくなるだけだよ。えと…だから…」

 

「うるせえ、ズケズケと!! 出てけよ!!」

 

 洸汰が叫ぶと、緑谷は俯いた。

 

「…………ごめん。取り留めのない事しか言えなくて…カレー置いとくね」

 

 そう言って緑谷は戻っていく。

 洸汰が残っていた“ひみつきち”の壁は、水でもぶつけたのか小さく抉れて濡れていた。

 するとしばらくして、入れ替わりでひなたが洸汰の“ひみつきち”に訪れる。

 

「あー、やっぱりここにいた!」

 

 ひなたが声をかけると、洸汰は警戒した様子で振り向く。

 するとひなたは慌てて洸汰に謝る。

 

「あっ、ごめん! デッくんが君の様子見に行ってから一人で戻ってきたからその、君が心配で…ほら、僕もマンダレイさんにお世話になってるし…余計なお節介ってわかってるけど、放っておけなくて…悪い癖ですね、ハイ」

 

 ひなたが頭を掻きながら言うと、洸汰はひなたを睨むのをやめる。

 かつて世話になった相手なので緑谷の時のように失礼な事をしてはいけないというのは、5歳の洸汰でもわかっていた。

 ひなたは、緑谷が置いていったカレーに一口も手をつけられていないのを見ると、洸汰に注意をする。

 

「あ! やっぱりカレー残してる! ダメじゃん! ご飯食べなきゃ!」

 

「…うるせぇ…どうだっていいだろそんな事!」

 

「良くない! 僕、君がちゃんとご飯食べるまでここから動かないから!」

 

「何でそうなるんだよ!? 大体………あ」

 

 ひなたの注意に対して洸汰が反発すると、ひなたはその場にどかっと座り込んで意地でも動かないという意志を見せた。

 あくまでも居座ろうとするひなたに対し洸汰がキレそうになるが、日が暮れてしばらく経つ上に“個性”を使っていたせいで腹が減っていたのか、ひなたにキレる前に腹の虫が鳴る。

 それを聞いたひなたは勝ち誇った表情をする。

 結局洸汰が折れて緑谷の置いていったカレーを食べ始めると、ひなたはあえて顔を見ないように座って石を積みながら話しかける。

 

「そのカレーおいしいでしょ。やっぱこういうとこで食べるカレーって一味違うよねぇ。ちょうど訓練の後でお腹空いてたし…あ、野菜残したら許さん」

 

「わかってるよ」

 

 ひなたがケルンを作りながら言うと、洸汰がぶっきらぼうに答える。

 すると、ふとひなたが話しかける。

 

「君の両親さ、ウォーターホースだよね?」

 

「……マンダレイから聞いたのか」

 

「ううん、知ってたの。っていうか、昨日思い出した。僕、小学生の頃、何度か君のご両親に会ってるんだ。お父さんの仕事の関係でね。覚えてないだろうけど、君がすごく小さい頃一緒に遊んだりしてたんだよ。僕もとっても優しくしてもらってて、亡くなったって聞いた時は悲しかった。…何で昨日君と会ってすぐ思い出せなかったかな」

 

 ひなたは、自分で積んだ石を見つめながら話す。

 すると、洸汰は涙を堪えながら自分の気持ちを吐き出す。

 

「何で…何でパパもママも、僕を置いて行っちゃうんだよ…!! みんな、立派だとか言っちゃってさ…!! 人の為に死ぬのがそんなに偉いのかよ!? どいつもこいつも…みんな、大っ嫌いだ!!」

 

 洸汰は、後ろにひなたがいるのも気にせず自分の気持ちを曝け出した。

 するとひなたは、座っていた低い岩から立ち上がって洸汰に歩み寄って口を開く。

 

「…つらい事思い出させちゃってごめん。でも話してくれてありがとう」

 

 ひなたが言うと、洸汰は困惑した表情を見せる。

 ヒーローが嫌いという感情を否定的に捉えずに受け入れられたのは初めてで、自分でもどう反応したらいいのかわからなかったのだ。

 ひなたがちょこんと洸汰の隣に座ると、洸汰は後退りする。

 

「な、何だよ…あんたもどうせ仲良くしろとかヒーローを嫌いになるなとか言いに来たんだろ!?」

 

「言わないよ、そんな事。君は何も間違ってない。嫌なものは無理に受け入れなくていいと思う。僕の事も嫌いでいいよ。ただ、できるだけ自分の事だけは大事にしてあげな」

 

 ひなたは、優しく洸汰に話しかけながら帽子の上から手を置く。

 

「大丈夫。僕は何があっても君の味方だから。泣きたい時は泣いていいんだよ」

 

 ひなたが優しく微笑みながら言うと、洸汰はずっと抱え込んでいたものが溢れ出し、ついには泣き出した。

 洸汰がひなたに抱きついて泣くと、ひなたはそっと目を閉じて右手を洸汰の背中に回し、左手で洸汰の頭を撫でた。

 洸汰にとっては、自分を否定せずに受け止めてくれるひなたは、歳の離れた姉のようだった。

 

 

 

「へくしっ!!」

 

 しばらくして洸汰が泣き止んだ頃、夜冷えのせいかひなたがくしゃみをする。

 ひなたは、ずびずびと鼻を啜りながら崖から立ち上がると、洸汰に声をかける。

 

「…ごめん。長々と話しちゃったね。そろそろ戻ろう? 一緒についてってあげよっか?」

 

「………大丈夫。一人で戻れる」

 

「そっか……ねえ、ホントに一人で大丈夫? 獣道だよ? あ、そうだ。肩疲れてない? 疲れに効くツボを…」

 

「あんたが一人で戻るの怖いだけだろ! 何しに来たんだよ!」

 

 ひなたがオドオドした様子で言うと、洸汰は照れ臭そうにひなたの誘いを断る。

 すると虫や幽霊が出そうな夜道を一人で戻るのが怖いひなたが念押しするようにしつこく尋ねるので、洸汰がツッコミを入れる。

 結局、へっぴり腰のひなたを洸汰が(仕方なく)連れて戻る形でマタタビ荘に戻った。

 ひなたが戻り、引き続き残ったカレーを食べていると、何やらマンダレイが生徒達に話をしていた。

 

「明日の夜は肉じゃがね」

 

「うお ー!」

 

 肉とじゃがいもなどの野菜を醬油と砂糖などで煮こんだ、おふくろの味ともいうべき和食の定番。

 カレーで満たされた腹でも、明日の肉じゃがを思い男子たちは盛り上がった。

 だが、そのあとに続いたマンダレイの言葉。

 

「お肉は豚肉と牛肉だから、A組とB組でどっちがいいか選んどいてね」

 

 その言葉に多少のざわつきが上がった。

 

「肉じゃがって豚肉だよな?」

 

「え、牛でしょ?」

 

 肉じゃがは東日本は豚肉、西日本では牛肉が主流らしい。

 また地域とは関係なく、それぞれの家庭でも違う。

 豚だ、牛だと意見が分かれる皆を見て、飯田が手をグルグル回しながら立ち上がった。

 

「それでは、今決めてしまおう! いいかい、拳藤くん!」

 

 少し離れて座っていた拳藤は話しかけられ、立ち上がる。

 

「あぁいいよ。じゃあ、ジャンケンで勝った方が選ぶって事で」

 

「異論ない。では……」

 

「ちょっと待った!」

 

 委員長同士がジャンケンしようとしたその時、それを止める声が響いた。

 スッと立ち上がったのはB組の物間だ。

 

「ねえ、ジャンケンなんかで決めるのつまらないだろ。ここはきっちり勝負して決めたほうがいいんじゃない?」

 

「は? 別にジャンケンでいいだろ」

 

 拳藤がそう言うと、物間はハッと鼻で笑う。

 

「何言ってるんだい、拳藤。憎きA組と直接対決できるせっかくのチャンスなんだよ? そんなジャンケンごときで決めるなんてバカなのかい」

 

「だから、別に憎くはないっつ ーの」

 

 なにかと注目を集めるA組になにかと対抗する物間に、近くにいた柳が声をかける。

 

「べつに豚でも牛でもどっちでもいい」

 

「ん」

 

 その意見に隣の小大も頷く。

 そんな女子達の意見に、鉄哲が男らしく言った。

 

「肉食えりゃ、俺もどっちでもいいぜ!」

 

 そんな鉄哲に、他の男子達も同意する。

 

「肉はなんだってうまいしな!」

 

「だよな!」

 

 切島と鉄哲はニッとサムズアップし合った。

 どちらも身体が硬くなる“個性”同士、そして男気を大事にする熱い性格同士で気が合っている。

 そんな意見に同化されたように、他の生徒にもどちらでもいいというような空気が広がったその時、またも物間が声をあげた。

 

「ハァ? どっちでもいいわけないだろう? 肉じゃがは豚肉に決まってるんだよ」

 

 実際のところ、物間も内心はどちらでもかまわなかった。

 ただ難癖をつけて勝負に持ちこみ、A組に勝ちたいだけなのだ。

 そしてA組に火をつけるには、その着火点は誰がいいか物間はよく知っている。

 

「……あぁでもA組がどっちでもいいっていうなら、ジャンケンもしないでこっちで選ばせてもらおうよ。牛肉の肉じゃがなんて僕には想像もできないけど、A組はかまわないんだろ? ねえ、爆豪くん?」

 

「あぁ?」

 

 A組の着火点、爆豪に物間はニヤリと厭味ったらしい笑みを浮かべてみせる。

 

「君は牛肉でもいいんだろ? 勝負を放棄したA組を差しおいて選んだ豚肉はきっとおいしいだろうなあぁ! A組は牛肉の肉じゃがでも食べてればいいよ」

 

 相手からの明らかな挑発。

 だが、火をつけられてしまうのが爆豪だ。

 

「……ふざけんな、こっちだって豚肉だ!!」

 

 爆豪だって豚か牛、どちらでもかまわなかった。

 だが、B組から一方的に押しつけられたケチのついた肉など自尊心の塊のような爆豪が受けつけるわけがない。

 するとその時、見兼ねたひなたが声を上げた。

 

「ねえ、いい加減やめない? ハッキリ言って不毛だよ」

 

 ひなたがため息をつきながら口を開くと、爆豪が振り向く。

 

「…おい、てめぇ今何つったクソ触角」

 

「だからさ、不毛だって言ったんだよ。どうして僕達の意見も聞かずに勝手に話を進めるの? 僕は最初から牛肉にしようと思ってたのに。普段は豚で作るから、たまには牛で作ってみたいし。ねえ、りっきー?」

 

「お、おう…」

 

 物間の挑発に乗った爆豪にひなたが言い放つと、砂藤も頷いた。

 正直ひなたは、豚か牛、どちらでも良かった。

 ただ、物間の挑発のせいで飯が不味くなっては精神衛生上良くないので、ケチをつけられた方の牛肉の肩を持つ事にしたのだ。

 そして砂藤も、豚か牛、どちらでも良かった。

 だが事を穏便に済ませるにはひなたに便乗するのが吉だと判断し、ひなたに賛成した。

 するとひなたに口を挟まれた爆豪は、掌から爆破を放ちながら反論した。

 

「てめぇの意見は聞いてねンだわクソチビ触角…! 俺はケチつけられた肉なんざ食いたかねえんだよ!!」

 

「ふーん、そういう事、言うんだ。僕とりっきーには選ばせてもくれないんだね。料理人の意見無視して勝手に食材選び進めたらどうなるか、そんな事もわからないんだ? そんなに不味い肉じゃがが食べたいんだね。あ、何でもかんでも辛けりゃいいって思ってるバのつく舌にこんな事言ってもわかるわけないか。難しい事言ってごめ〜んね?」

 

「んだとてめぇ今ここでブッ殺したろか!!」

 

 ひなたが爆豪を挑発すると、爆豪は即座に怒りの矛先をB組からひなたに切り替えた。

 爆豪は、ひなたにバカ舌扱いされた屈辱で目の前が真っ赤に染まり、もはや肉選びなどどうでも良くなっていた。

 ひなたもひなたで、どうすれば爆豪をより怒らせる事ができるのかはわかっているつもりだった。

 わざと爆豪を怒らせて怒りの矛先を自分に向ける事で、A組とB組の争いを避けようという魂胆だった。

 ひなたは、殺気剥き出しで襲いかかってくる爆豪をあしらいつつ、委員長の飯田に話しかけた。

 

「というわけだからさ、僕達は牛がいいんだけど、いいかな天ちゃん?」

 

「うむ、ひなた君と砂藤くんの意見ならば文句はあるまい! B組もそれで構わないか?」

 

「ああ、うん。何かごめんなA組」

 

 飯田が尋ねると拳藤は、A組がこの場を丸く収めるために譲歩した事に対して申し訳なさそうに謝る。

 だがそうは問屋が卸さないと言わんばかりに、物間が再び爆豪の導火線に火をつけようとした。

 

「おやおや、そうやって君達は、勝負から逃げるつもりなんだ? ああ、ごめんねぇ! 勝てる気がしないからって尻尾巻いて逃げるような弱い君達に、勝負をしようなんて提案して、ごめんねぇ!?」

 

「黙れ」

 

 物間が事態をややこしくしようとしたのを見兼ねたのか、相澤が物間を捕縛して黙らせた。

 

「じゃ、A組が牛肉でB組が豚肉な」

 

 相澤が言うと、どちらでもいいから早く決めて部屋に戻りたい生徒達はほとんど全員納得した。

 ひなたは、宿泊施設に戻る最中、B組の女子達と話していた。

 

「まあでも、ぶっちゃけ豚の方も食べてみたいんだよね。そっちの肉じゃが少し貰ってもいい? こっちも牛肉のやつあげるからさ」

 

「ああ、いいなそれ。せっかくだし食べ比べするか」

 

 ひなたの意見に、拳藤が賛成した。

 それを聞いた他の生徒達の中には、実は食べ比べをしてみたかった者もいたので、二人の考えは思いの外多くの賛同を得られた。

 明日の夕食は、A組とB組がそれぞれ肉じゃがを作り、食べたい方の肉じゃがを選ぶ事にした。

 

 

 

 

 

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