抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が8件9が30件だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。


狼煙

 合宿三日目、赤点組5人はほとんど眠れなかったせいで動きが鈍くなっていた。

 

「補習組、動き止まってるぞ」

 

「オッス…!!」

 

「すいません…ちょっと…眠くて…」

 

「昨日の“補習”が…」

 

 相澤が喝を入れると、芦戸、上鳴、切島、瀬呂、砂藤の5人が返事をする。

 

「だから言ったろ、キツいって」

 

 相澤が言うと、遠くで見ていたひなたは苦笑いを浮かべる。

 通常就寝は22時、赤点組の就寝時間は2時、そして起床時間は全員5時というハードなスケジュールだった。

 相澤は、赤点組5人に対して今後の方針を説明し指導をする。

 

「砂藤・上鳴は容量が直接死活に関わる。容量を増やすには反復して使い続けるのが基本。瀬呂は容量に加えテープの強度、射出速度の強化。芦戸も溶解液の長時間使用によって皮膚に限度がある。その耐久度を強化。切島は筋力と硬度を上げる事で相乗効果を狙う。そして何より期末で露呈した立ち回りの脆弱さ!! お前らが何故他より疲れているか、その意味をしっかり考えて動け。麗日! 青山! お前らもだ。赤点こそ逃れたがギリギリだったぞ。30点がラインだとして35点くらいだ」

 

「ギリギリ!」

 

「心外☆」

 

 相澤が麗日と青山にも言うと、二人はショックを受ける。

 この二人に関しては、制限時間ギリギリの合格だった事と、期末試験のルールに甘えた合格だったため点数が低かったのだ。

 

「気を抜くなよ。皆もダラダラやるな。何をするにも原点を意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて何の為にグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ」

 

 相澤の言葉を聞いた生徒達は、自分の原点について一から考え始めた。

 すると、緑谷が相澤に尋ねる。

 

「そういえば相澤先生、もう三日目ですが」

 

「言ったそばからフラッとくるな」

 

 緑谷がフラフラしながら言うと、相澤がツッコミを入れる。

 すると緑谷は話し始める。

 

「今回オールマイト…あ、いや、他の先生方って来ないんですか?」

 

「合宿前に言った通り、(ヴィラン)に動向を悟られぬよう人員は必要最低限」

 

「よってあちきら4人の合宿先ね」

 

 緑谷の質問に相澤が答えると、ラグドールがヒョコッと顔を出した。

 マスコミの時やUSJで(ヴィラン)に侵入されている為、今回の合宿も厳戒態勢で行っていたのだ。

 

「そして特にオールマイトは(ヴィラン)の目的の1つと推測されている以上、来てもらうわけにはいかん。良くも悪くも目立つからこうなるんだあの人は…」

 

((“悪くも”の割合デカそう…))

 

 相澤が不満そうに言うと緑谷とひなたが引き攣った表情を浮かべる。

 

「そっか……」

 

 オールマイトが来ないと知った緑谷は、少し残念そうな表情を浮かべていた。

 するとそこで、ピクシーボブが発表をする。

 

「ねこねこねこ…それより皆! 今日の晩はねぇ… クラス対抗肝試しを決行するよ! しっかり訓練した後はしっかり楽しい事がある! ザ! アメとムチ!」

 

 ピクシーボブの発表に、A組とB組の生徒達は耳を傾ける。

 

「ああ…忘れてた!」

 

「怖いのマジやだぁ…」

 

「オバケやだ…」

 

「闇の狂宴…」

 

 拳藤が思い出したように言い、耳郎とひなたが憂鬱そうに言い、逆に常闇は若干ワクワクした様子だった。

 

「イベントらしい事もやってくれるんだ」

 

「対抗ってところが気に入った」

 

 鱗が言うと、物間は悪い笑みを浮かべた。

 

「というわけで、今は全力で励むのだぁ!!!」

 

「「「イエッサァ!!」」」

 

 虎が喝を入れると、生徒達は一斉に返事をした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 訓練の後は夕食の時間となり、全員で肉じゃがを作る事になった。

 爆豪は包丁使いで相変わらず才能マンっぷりを発揮しており、ひなたは心操と一緒に肉じゃがの味付けをしていた。

 

「んっと、料理酒と醤油と…」

 

「あと味噌とバターとはちみつ」

 

「だいぶアレンジ加えるんだな」

 

「うん。皆訓練で疲れてお腹空いてるだろうし、ご飯が進むこってりした味付けの方が喜ぶと思って」

 

「確かにな…今はとにかくガツンとしたもの腹に入れたい気分」

 

 ひなたは、心操と一緒に肉じゃがの味付けについて話し合っていた。

 一方で、緑谷が薪を焚べていると、轟が声をかける。

 

「オールマイトに何か用でもあったのか? 相澤先生に聞いてたろ」

 

「ああ…っと…うん。洸汰くんの事で…」

 

「洸汰? 誰だ?」

 

「ええ!?」

 

 轟が緑谷に尋ねると、緑谷が答える。

 すると轟がキョトンとした様子で首を傾げながら質問してきたので、緑谷は轟が洸汰の事を忘れていた事に驚く。

 

「あの子だよ、ホラえと…あれ…またいない…」

 

 緑谷は洸汰を指差したつもりだったが、洸汰はいつの間にかいなくなっていた。

 

「その子がさ、ヒーロー…いや、“個性”ありきの超人社会そのものを嫌ってて、僕は何もその子の為になるような事言えなくてさ。オールマイトなら……何て返したんだろって思って……轟くんなら、何て言う?」

 

「……………場合による」

 

「っ…そりゃ場合によるけど…!!」

 

 緑谷の質問に対し轟がだいぶ間を開けて答えると、緑谷が求めてた答えと違うと言いたげな表情をする。

 すると轟が緑谷に言った。

 

「素性もわかんねぇ通りすがりに正論吐かれても煩わしいだけだろ。言葉単体だけで動くようならそれだけの重さだったってだけで…大事なのは、“何をした・何をしてる人間に”言われるか…だ。言葉は常に行動が伴う……と思う」

 

 それを聞いた緑谷は、ハッとして少し俯いた。

 

「…そうだね、確かに…通りすがりが何言ってんだって感じだ…」

 

「お前がそいつをどうしてえのか知らねぇけど、デリケートな話にあんまズケズケ首突っ込むのもアレだぞ。そういうの気にせずブッ壊してくるからなお前、意外と」

 

「…何かすいません…」

 

 轟が緑谷に対して注意すると、緑谷は頭に手を置いて謝る。

 するとひなたは皿を運びながら声をかける。

 

「あのさ、“個性”社会を嫌いなのって、そんなにダメなのかな?」

 

「相澤さん…」

 

「“個性”社会を否定してたら生きづらいのは事実だよ。でも、だからってそれが間違ってるかどうかなんて、誰かが決める事じゃないと僕は思うんだ。とにかく、あの子の気持ちを尊重してあげる事が一番大切だと思うよ」

 

「そっか…そう、だよね…」

 

 ひなたが自分の意見を話すと、緑谷は思わず納得させられた。

 “個性”社会を嫌っている洸汰の事を心配するあまり、洸汰がこれ以上“個性”やヒーローを嫌いにならないようにする方法ばかり考えていたが、それが本当に正しい事なのかまでは考えが至っていなかった。

 

「さ、お喋りはここまで! とりあえず飯食って元気出して、そっから前向きに考えていこうぜ!」

 

「うん…!」

 

 緑谷が頷いて納得すると、ひなたが野菜のボウルを渡しながら笑いかける。

 するとその時、飯田が声をかける。

 

「君達手が止まってるぞ!! 最高の肉じゃがを作るんだ!!」

 

「お前が一番手止まってるよ」

 

 飯田が指示を出すと、心操がツッコミを入れた。

 数十分後、全員分の食事が完成した。

 A組とB組は、違いが分かりやすいように模様の色が違う器に肉じゃがを盛り付けた。

 

「赤い方が牛、青い方が豚だからね」

 

「おかわりたくさんあるからな!」

 

 ひなたと砂藤は、肉じゃがの列に並んだクラスメイトに言った。

 肉じゃがが全員に行き渡ると、全員席について食事を始めた。

 

「うん、やっぱり豚肉も美味しいね!」

 

「くぅ〜、牛肉の方美味えな! こりゃ米が進むぜ!」

 

 ひなたと鉄哲は、互いのクラスの肉じゃがを食べ比べして感想を言った。

 結局、ほとんど全員が食べ比べをしたため、肉じゃがの鍋はあっという間に空になった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして夕食を食べ終わって皿を洗い終わり、お待ちかねの時間となった。

 

「…さて! 腹もふくれた皿も洗った! お次は…」

 

「肝を試す時間だー!!」

 

 ピクシーボブが言うと、芦戸が上機嫌で乗っかる。

 すると相澤が赤点組を指差しながら言った。

 

「その前に大変心苦しいが、補習連中は… これから俺と補習授業だ」

 

「ウソだろ!!?」

 

 相澤の発表に、芦戸はこの世の終わりのような表情を浮かべる。

 赤点組5人は、相澤に捕縛布で縛られて引き摺られていった。

 

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので、こっちを削る」

 

「「「「「うわああ堪忍してくれえ試させてくれえ」」」」」

 

(芦戸さん…上鳴くん…!!)

 

 5人が泣きながら訴えると、緑谷とひなたは歯を食いしばって拳を握りしめ、断腸の思いで5人を見送った。

 するとその時、芦戸がひなたに向かって叫ぶ。

 

「助けてひなたぁぁ!!」

 

「えっ」

 

(何で僕だけ名指し…)

 

 芦戸がひなたを指名してきたため、ひなたは心の中でツッコミを入れる。

 するとすかさず他の4人も便乗した。

 

「今こそイレイザーヘッドの娘の特権をフル活用する時だぞ!!」

 

「おい心操お前からも何か言ってくれぇ!!」

 

「は?」

 

「弟子の特権濫用しろぉ!!」

 

 5人は、A組の中で一番相澤と仲が良い二人に必死に頼み込んだ。

 相澤の娘のひなたと弟子の心操なら、相澤を説得して補習地獄から解放してくれると思ったのだ。

 5人にとって、二人はまさに釈迦が地獄に垂らした蜘蛛の糸だった。

 だが…

 

「「逝ってらっしゃい」」

 

「「「「「そんなぁ!!」」」」」

 

 二人はあっさり5人を見捨てた。

 するとピクシーボブが説明する。

 

「はい、というわけで脅かす側先攻はB組! A組は2人1組で3分おきに出発、ルートの真ん中に名前を書いたお札があるからそれを持って帰る事!」

 

「闇の共演…」

 

 ピクシーボブの説明に対し常闇が呟くと、ひなたが苦笑いを浮かべる。

 ひなた以外の賑やかしメンバーがおらず、当のひなたもこういうイベントに関しては乗り気ではないので神妙な空気になってしまっていた。

 

「脅かす側は直接接触禁止で、“個性”を使った脅かしネタを披露してくるよ」

 

「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」

 

「やめて下さい汚い……」

 

「なるほど! 競争させる事でアイデアを推敲させその結果、“個性”に更なる幅が生まれるというわけか。流石雄英!!」

 

 虎の言葉に耳郎がドン引きしている一方で、飯田はまたしても一人で納得していた。

 そして組分けのクジを引く事になった。

 クジ引きの結果、

 

 1番 障子&常闇

 2番 爆豪&轟

 3番 耳郎&葉隠

 4番 青山&八百万

 5番 麗日&蛙吹

 6番 相澤&心操

 7番 尾白&峰田

 8番 飯田&緑谷

 

 となった。

 すると、轟と一緒になった爆豪が尾白にガン飛ばしてくる。

 

「おい尻尾…! 代われ…!」

 

「青山オイラと代わってくれよ………」

 

「俺は何なの…」

 

 爆豪には轟と代わるように言われ、ペアの峰田は八百万とくっつこうとしていたので尾白の心境は複雑なものだった(峰田は当然青山に全力で断られ八百万には汚物を見るような目を向けられた)。

 それを見ていたひなたは、尾白に同情して苦笑いを浮かべていた。

 

「ひなた、同じペアだな」

 

「…う、うん」

 

 心操がそう言ってひなたの隣に立つと、ひなたは顔を赤くしてコクリと頷く。

 すると峰田が、今度はひなたのペアに言い寄ってくる。

 

「もうこの際相澤でいい…心操、オイラと「絶対やだ」即答!?」

 

「あはは…」

 

(まっしーどんまい)

 

 峰田が心操に言い寄ろうとするが、峰田が要件を言い終わる前に心操が拒否した。

 心操に即刻拒否された峰田はショックを受け、尾白は若干傷ついた様子で苦笑いを浮かべる。

 そんな尾白にひなたが同情していると、今度は爆豪がひなたにガン飛ばしてくる。

 

「おい触角…! てめェ代われやクソが……!」

 

「はぁ!? やだし! ふざけんな!」

 

 爆豪がひなたを睨みながら言うが、ひなたはせっかく心操と同じペアになれたので食い気味かつキレ気味に拒否した。

 すると、爆豪のペアの轟が若干シュンとした様子で口を開く。

 

「俺とペアはそんなに嫌なのか…」

 

「へっ!? あ、ち、違うの! 焦ちゃんが嫌とかじゃなくて、その…ほら、今更ペア変えてもややこしくなっちゃうでしょ?」

 

「それもそうか」

 

(((わかりやすっ)))

 

 ひなたは『心操と一緒のペアになれたから代わりたくない』とハッキリ言えずに無理矢理言い訳をし、天然な轟はひなたの言い訳に納得した。

 それを見ていた他のクラスメイトは、わかりやすく動揺しているひなたに心の中でツッコミを入れた。

 ひなたが心操に想いを寄せているのは、轟以外にはバレバレだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 15分後、ひなた達の番となった。

 

「じゃ、6組目…ひなひなキティとシンソーキティGO!」

 

 ピクシーボブが合図をすると、ひなたと心操は森の中へ入っていく。

 ひなたは、へっぴり腰でガチガチ震えながらチビチビと歩き、スタート地点からほとんど進んでいなかった。

 すると前を歩いていた心操が後ろを振り向いて声をかける。

 

「ひなた、早く行くよ。後ろがつっかえちゃうだろ」

 

「無理無理無理!! これ以上は絶対無理!! ほら悲鳴上がってるし!! これだから僕、森の夜道って大っ嫌いなんだよ!!」

 

 心操がひなたを急かすと、ひなたは柄にもなく大泣きしながら弱音を吐いた。

 すると心操が呆れながら尋ねる。

 

「どうして?」

 

「虫とオバケどっちも出るじゃん!! こんな事ならみなっちと代わってあげれば良かった!!」

 

「補習の方がマシだったのか…」

 

 ひなたがわんわん泣き叫ぶと、心操が呆れ返る。

 ひなたはプレゼントマイク譲りの虫嫌いだけでなく、幽霊や呪いなどの非科学的なものも大の苦手なのだ。

 虫はプレゼントマイク同様遺伝子レベルで無理という理由で、幽霊や呪いは“個性”や格闘術が通じないという理由で苦手だった。

 虫と幽霊両方苦手なひなたにとって、田舎のトイレと夜の森はまさに天敵だった。

 すると心操は、少し考える仕草をしてひなたに向かって手を差し伸べる。

 

「じゃあさ…手、繋ぐ?」

 

「ああ、うん。それがい…………はい!?」

 

 心操が言うと、ひなたは一度は真顔で答えるものの、すぐにその言葉の意味に気付き目を見開いて顔を赤くしていく。

 そして手をブンブン振って心操の提案を全力で拒否する。

 

「はぁ!? え、何でそうなんの!? え、いやいやいやいや!!」

 

「怖いんでしょ? ほら」

 

「お…お言葉に甘えさせていただきます……」

 

「ん、素直でよろしい」

 

 恥ずかしさのあまり心操の提案を拒否していたひなただったが、心操がさらに手を差し伸べてくるとひなたは首や耳まで真っ赤にして俯きながらも心操の手を取った。

 一人では怖くて歩けないので、腹を括るしかないと思ったのだ。

 ひなたが立ち上がって心操の手を取ると、心操はひなたの左手の指にしっかりと自分の右手の指を組んで所謂恋人繋ぎをする。

 するとひなたは、ビクッと肩を跳ね上がらせて元々赤い顔を更に赤くし心臓をバクバク鳴らす。

 

(確かに怖くはなくなったけど……羞恥と緊張で死にそう!! え、何で恋人繋ぎ!? いやいやいや…こんな、こんな事されたらまともに顔見れないんですけど!?)

 

「…手の筋肉すごいね。どんな鍛え方したらこうなんの?」

 

(言うなひー君!! ムードブチ壊しやぞ!!)

 

 心操がひなたの手を握りながら言うと、ひなたは心の中でツッコミを入れる。

 ひなたは、普段から握力を鍛えていたおかげで手の皮膚が厚くなり手の筋肉も発達していたのだが、この状況でそれを褒められても全くいい気はしなかった。

 すると心操がひなたに尋ねる。

 

「やっぱりまだ怖い?」

 

「……え?」

 

「いや、だって手汗すごいから」

 

(ひー君のせいなんですけどね!?)

 

 心操が言うと、ひなたが心の中でツッコミを入れる。

 ひなたは、心操の言動ひとつひとつにいちいち緊張して胸を高鳴らせていた。

 

(はわ…やっぱりひー君の手、大きいなぁ。ちょうどいい温かさで安心する。僕は……やっぱりひー君が好きだ。…わかってるよ、僕なんかが恋なんてしちゃいけない事くらい。でも…だからって、この気持ちを忘れる事なんてできないよ…)

 

 ひなたは、顔を赤らめて俯く。

 ひなたはずっと自分の気持ちを忘れて身を引こうとしてきた。

 だが、忘れようとすればする程想いは強く残り、忘れる事など出来やしなかった。

 するとその時、心操が若干意地の悪い笑みを浮かべながら言った。

 

「それにしても、ひなたも怖いものとかあったんだな。まあ俺としてはこうやって手を繋げるからラッキーなんだけど」

 

「え? それってどういう……」

 

 心操の発言に対しひなたが尋ねようとすると、心操が頭を掻きながら言った。

 

「ひなた。俺さ…好きだわ」

 

「………はぁ!!?」

 

 心操が言うと、ひなたは3秒ほど間を置いてから赤面して目を見開く。

 恥ずかしそうに頭を掻く心操に、ひなたは恐る恐る尋ねる。

 

「えっ、ちょっ…そ、それってlikeの方だよね?」

 

「いや、loveの方」

 

「は……え、いやいやいや…ちょっ、い、一旦落ち着こ? それ絶対吊り橋効果だから! 後で冷静になったら冷めるやつだから! 頭冷やして考え直そ!? ね!?」

 

「俺、本気なんだけど…」

 

「な………!?」

 

 ひなたは、心操が自分の事を好きになるわけがないと思いしつこく確認する。

 そのせいで余計恥ずかしくなったのか、心操はそっぽを向きながら言った。

 まさかの両想いだったので、ひなたは顔が真っ赤になり目がグルグルになり頭からプシューと湯気が出ていた。

 ひなたは全く気付いていなかったが、心操は入試で助けてもらったひなたと同じクラスになった時からずっとひなたに気があった。

 委員長決めでひなたに投票したのも、ひなたの事が好きだからだった。

 心操がひなたにずっと抱いていた感情は愛情、それは自分にとってのヒーローに対する敬愛、親友としての親愛、そして一人の女性に対する恋愛、全てを含んだ感情だった。

 

「ひなたと同じクラスになってから、ずっと好きだった。だから俺と……」

 

 心操が言おうとすると、ひなたは俯きながら答える。

 

「……ごめん。僕…ひー君の事、友達としてしか見れない」

 

「そっか…そう、だよな…ごめん、変な事言った」

 

「ううん、いいの! こっちの方こそごめんね?」

 

 心操が気まずそうに首を手で押さえながら謝ると、ひなたはすぐに表情を切り替えて謝り返す。

 

「……好きなのに振ってごめんなさい………サイテーだ、僕…」

 

「?」

 

 ひなたは、ズキズキと痛む胸を押さえじわりと滲む涙を拭いながら聞こえないくらいの声で謝る。

 ひなたは(ヴィラン)に造られ利用され続けたという過去があり、そんな自分が誰かと恋人同士になれば相手を不幸にしてしまうのではないかと考え、自分のせいで誰かが傷つく事を恐れていた。

 ひなたは、叶うはずもないのに浅ましくも恋心を抱いてしまった事、そしてそんな自分を好きだと言ってくれた相手に嘘をついて振ってしまった事に心を痛めていた。

 すると、心操がひなたに話しかける。

 

「…なぁ、臭くないか?」

 

「え、ウソやだそんな汗臭い!? ちゃんとシャワー浴びて着替えたのに…」

 

 心操が言うと、ひなたは恥ずかしそうに自分の体臭をチェックする。

 炎天下の訓練で汗を大量に流したため、まだ体臭が残っているのではないかと思ったのだ。

 

「いや、そうじゃなくて…さっきから何か焦げ臭くないか?」

 

「あ、確かに…何かを燃やしたみたいな…」

 

 心操が言うと、ひなたも焦げ臭い匂いがする事に気がつく。

 するとその時、木の影から人影が現れる。

 

「うぎゃあああ出たああ!!!」

 

「うわぁああ!?」

 

 ひなたが恐怖のあまり叫び声を上げると、聴き覚えのある声が聞こえる。

 

「いやあああオバケ怖いお願い呪わないで………って、デッくん…!?」

 

 聴き覚えのある声に、縮こまってガタガタ震えていたひなたがそっと目を開いて上を見ると、緑谷が驚いた様子でひなたを見下ろしていた。

 

「ビックリしたよ、相澤さん急に叫ぶんだもん…」

 

「あ…ごめん……僕、こういうのマジで苦手でさ…あーホント心臓止まったかと思った」

 

「相澤さんって怖いの苦手なんだね…」

 

「あははは…お恥ずかしながら…」

 

 緑谷が苦笑いを浮かべながら言うと、ひなたもつられて苦笑いを浮かべる。

 すると、それを見ていた心操が目を見開いてひなたに声をかける。

 

「ひなた…? お前、()()()()()()()()()()()()()…!?」

 

 心操には、ひなたが話しかけている緑谷が見えていなかった。

 実際はひなたの目の前には誰もおらず、緑谷の幻覚を見ていたひなたは誰もいないところに向かって話しかけていたのだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時は少し遡り、ひなたと心操が森に入っていった頃。

 骨抜達B組は、森の中に入ってA組を脅かしていた。

 

「カッカッカ! 小大、お前の脅かし今んとこ全員ビクッてなってっぞ」

 

「体張るねえ唯!」

 

「爆豪と轟、超ウケたなー。『お』て!」

 

 骨抜は、轟と爆豪を脅かした時の二人のリアクションを思い出して笑っていた。

 普段クールな轟と挑発的で怖いものなしな爆豪の二人がビクッと肩を跳ね上がらせて驚いている光景はかなりレアだった。

 だがその直後、拳藤、小大、骨抜の3人は異臭と煙が蔓延している事に気がつく。

 爆豪が驚愕のあまり“個性”を暴発させたのかと考えていた骨抜だったが、その直後意識が飛んで地面に倒れ込む。

 

「骨抜!?」

 

 するとその直後、煙の危険性に気付いた拳藤が口と鼻を手で覆いながら隣にいた小大を大拳で覆う。

 

「唯、吸っちゃダメこの煙…有毒!!」

 

 そしてその頃、荼毘は木々を燃やして回りながらそれぞれの持ち場にいる仲間に指示を出すように呟いた。

 

「さァ始まりだ。地に堕とせ。(ヴィラン)連合、開闢行動隊」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして一方、スタート地点で待機していたマンダレイ達はというと。

 

「何このこげ臭いの────……」

 

「黒煙……」

 

 ピクシーボブとマンダレイは、森から上がる煙を見て目を見開いていた。

 生徒全員の“個性”を把握しているはずのピクシーボブとマンダレイも状況が理解できていない様子だったので、生徒達は肝試しによるものではないと薄々気付き始める。

 するとその直後、突然ピクシーボブの身体が森の中へと引き寄せられ、バキッと殴られる音が聞こえた。

 

「!!」

 

 

 

「飼い猫ちゃんは邪魔ね」

 

 森の中から、唇の厚いオカマ口調の男『マグネ』、ステインのコスプレをしたトカゲのような男『スピナー』が現れる。

 

「何で…! 万全を期した筈じゃあ……!! 何で…何で(ヴィラン)がいるんだよォ!!!」

 

 峰田は、凶悪な(ヴィラン)二人を前にして青ざめていた。

 二人の足元には、頭を負傷したピクシーボブが倒れていた。

 

「ピクシーボブ!!」

 

 緑谷は、“ひみつきち”にいるであろう洸汰の事を思い出した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、赤点組5人は相澤に連れられて施設へ戻っていた。

 すると、いきなり物間が煽ってくる。

 

「あれぇおかしいなァ!! 優秀なはずのA組から赤点が5人も!? B組は一人だけだったのに!? おっかしいなァ!!!」

 

「どういうメンタルしてんだお前!!」

 

 B組唯一の赤点の物間が高笑いしながら煽りまくってきたため、A組の赤点組がツッコミを入れる。

 ちなみに物間は昨日の補習でも全く同じ煽りをしており、意外な事に絶望的に勉強ができない物間は筆記でも赤点を取っていた為他の5人よりもキツい補習地獄だったのだが、それでも笑いながら煽りまくれるメンタルはある意味尊敬に値するものがあった。

 相澤とブラドキングが補習の打ち合わせをしていたその時、脳内にマンダレイの声が響く。

 

『皆!!』

 

 マンダレイの声が脳内に響くと赤点組はキャッキャとはしゃぎ、相澤が赤点組を静かにさせた。

 するとマンダレイが報告する。

 

(ヴィラン)二名襲来!! 他にも複数いる可能性アリ! 動ける者は直ちに施設へ!! 会敵しても決して交戦せず撤退を!!』

 

 マンダレイのテレパスを聞いた相澤は、血相を変えて施設を飛び出す。

 森の方を見ると、既に火が大きくなり山火事が起こっていた。

 するとその直後、荼毘が相澤の目の前に現れる。

 

「心配が先に立ったか、イレイザーヘッド」

 

「───ブラド…」

 

 相澤がブラドキングに向かって叫ぼうとしたその時、荼毘が大量の蒼炎を相澤目掛けて放つ。

 

「邪魔はよしてくれよ、プロヒーロー。用があるのはお前達じゃない」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、緑谷達は。

 

「ご機嫌麗しゅう雄英高校!! 我等(ヴィラン)連合開闢行動隊!!」

 

 突然緑谷達の前に現れたスピナーは、高笑いしながら名乗った。

 すると緑谷、飯田、尾白、峰田の4人が目を見開く。

 

「この子の頭潰しちゃおうかしら、どうかしら? ねえどう思う?」

 

「させぬわこのっ…」

 

 マグネが武器と思われる棒をピクシーボブの頭に押しつけ虎が応戦しようとすると、スピナーが二人の間に入って止める。

 

「待て待て早まるなマグ姉! 虎もだ落ち着け。生殺与奪は全て、ステインの仰る主張に沿うか否か!!」

 

 スピナーが言うと、飯田は目を見開いて驚く。

 ステインの逮捕後、ステインに影響されてステインの真似事をする(ヴィラン)が増えていたのだ。

 

「ステイン…! あてられた連中か────……!」

 

「そしてアァそう! 俺はそうお前、君だよ眼鏡君! 保須市にてステインの終焉を招いた人物。申し遅れた、俺はスピナー。彼の夢を紡ぐ者だ」

 

 そう言ってスピナーは、大量の刃物を繋ぎ合わせて作られた巨大な剣を取り出す。

 すると、虎が前に出てスピナーに怒りをぶつける。

 結婚して幸せを掴もうと頑張ってきたピクシーボブを傷付けられた事が許せなかったのだ。

 するとスピナーが嘲笑いながら大剣を振るい、虎とマンダレイが応戦する。

 

「皆行って!! 良い!? 決して戦闘はしない事! 委員長引率!」

 

「承知しました! 行こう!!」

 

 飯田がクラスメイトを引率しようとすると、緑谷が立ち止まる。

 

「…………飯田くん、先行ってて」

 

「緑谷くん!? 何を言ってる!?」

 

「緑谷!!」

 

 緑谷が言うと飯田が尋ね、尾白も叫んだ。

 クラスメイト達が止めようとすると、緑谷がマンダレイに向かって叫んだ。

 

「マンダレイ!! 僕、知ってます!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして、拳藤は小大と骨抜を大拳で覆いながら森を抜けようとしていた。

 するとその時だった。

 

「拳藤!!」

 

「鉄哲! 茨!」

 

 拳藤の目の前には、塩崎を抱えた鉄哲がいた。

 近くに八百万がいたため、二人は八百万に創造してもらったガスマスクを装着していた。

 鉄哲が拳藤達3人にもガスマスクを渡すと拳藤は早く施設へ戻るよう指示を出すが、鉄哲はここに残ってガスの発生源の(ヴィラン)を仕留めると言い出した。

 当然拳藤は反対したが、鉄哲はA組が常にピンチをチャンスに変えてきた分今度はB組がピンチを覆す番だと言って(ヴィラン)を探し出した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方洸汰の方は、緑谷の嫌な予感が的中して(ヴィラン)の男と対峙していた。

 洸汰が逃げ出すと、男はマスクを外して一瞬で洸汰の前に回り込んだ。

 

「景気づけに一杯やらせろよ」

 

 洸汰は、男の顔と筋繊維が盛り上がった腕を見て目を見開く。

 その男は、洸汰の両親『ウォーターホース』を殺した犯人として容疑者に挙がっていた男『マスキュラー』だった。

 マスキュラーの顔の左側にはウォーターホースに付けられた大きな古傷が残っており、左眼に特徴的な義眼をつけていた。

 

「パパ…! ママッ…」

 

 男が拳を振り下ろした、次の瞬間だった。

 

 

 

 ドゴォッ!!! 

 

 

 

 突然緑谷が飛び出し、緑谷は洸汰を抱えて飛び跳ねた。

 

「何で…!!」

 

 緑谷が洸汰を助け出すと、洸汰は目を見開いて尋ねる。

 

「んん? お前は…リストにあったな」

 

 マスキュラーは、突然飛び出してきた緑谷を見て言った。

 緑谷は応援を呼ぼうとしたが、今の攻撃で携帯が粉々になってしまい応援は呼べなかった。

 相手は強敵だったが、洸汰を守る為にも一人で戦うしかなかった。

 緑谷は、涙を流しながら立ち尽くす洸汰に微笑みかけた。

 

「大丈夫だよ、洸汰くん…必ず救けるから」

 

 

 

 

 




そろそろ心ひなカップルをイチャイチャさせたかった。
許せ。
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