よっしゃあああああああ(狂喜)!!
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価・感想・お気に入りなどなどよろしくお願いします。
4/6 一部加筆しました。
時は少し遡り、入試の採点直後。
「実技総合成績が出ました」
その声と共に大きなスクリーンに受験生の実技のポイントが書かれた順位表が表示される。
スクリーンには上位十名が表示されていた。
1位 相澤ひなた 77P(
1位 爆豪勝己 77P(
3位 切島鋭児郎 74P(
4位 麗日お茶子 73P(
5位 塩崎茨 68P(
6位 拳藤一佳 65P(
7位 飯田天哉 61P(
8位 緑谷出久 60P(
9位 鉄哲徹鐵 59P(
10位 常闇踏陰 57P(
「レスキューポイント0で1位とはなぁ!!」
「『1P』『2P』は標的を捕捉し近寄って来る。後半他が鈍って行く中、派手な“個性”で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」
審査員が、金髪のツンツンヘアーと目つきの悪い顔が特徴的な爆豪という受験生の映像を見て感想を言う。
爆豪は街を縦横無尽に駆け回り、ハイペースで次々とギミックを爆破して回っていた。
周りの受験生達に悪態をついて脅かしたり『死ね』などといった暴言を吐いていたためレスキューポイントは0だったが、それでもギミックを壊して稼いだ点数だけで1位を取っており、才能と技術は頭ひとつ抜けている事は誰の目から見ても明らかだった。
「対照的に
「思わず YEAH! って言っちゃったからな━━━」
「しかし自身の衝撃で甚大な負傷…まるで発現したての幼児だ。妙な奴だよ。あそこ以外はずっと典型的な不合格者だった」
「細けえ事はいんだよ! 俺はあいつ気に入ったよ!!」
「YEAH! って言っちゃったしな━━」
審査員が、説明の時に眼鏡の受験生に注意をされていた緑谷という受験生のポイントや過程を見て感想を言った。
緑谷は爆豪とは対照的に終盤まではポイントを全く稼げておらず誰の目から見ても落ちこぼれという印象だったが、0ポイントギミックから逃げる時に転んだ受験生を助けようとして超パワーのパンチでギミックをブッ飛ばし、レスキューポイントで60ポイントも稼いでいた。
だが、自分の“個性”を制御し切れずに腕がボロボロになっており、その点に関しては審査員達も不安に感じていた。
「それとこの小さい子、相澤くんの秘蔵っ子だっけ? まさかレスキューポイントだけで1位取っちゃうとはね」
「まさか最後アレをブッ壊しちゃうとはな! いきなりダウンしたもんだからこっちもビックリしたよ」
「しかもあの身のこなし! 戦闘のセンスもとてもじゃないが中学生とは思えないね」
「序盤のアレがなきゃ間違いなく首席どころか歴代トップクラスの成績だっただろうに……惜しいな」
「
審査員達は、音波攻撃で0ポイントギミックを停止させるひなたの映像を見て盛り上がっていた。
心操の『洗脳』を受けていたため
ひなたに関しては何人かの審査員がレスキューポイントで満点をつけており、彼女が受験生の中では最もヒーローとしての素質を持っている事は誰が見ても明らかだった。
すると相澤が、騒々しいと言った様子で口を挟む。
「いつまでも余計な話してる場合じゃないでしょう。全く合理的じゃない……」
「そーんな事言って、本当はひなたの事大好きなクセに「やかましい」やんっ、何soon……」
相澤の発言に対して山田が茶化し、相澤はさらに不機嫌そうな表情を浮かべ、絡んでくる山田を押し退けた。
そして、他の教師達に意見を言い放つ。
「そんな事より、審査の点で一つ言いたい事がある」
相澤がそう言うと、横から山田が口を挟む。
「言いたい事ぉ? もう順位は出てるんだしそれ通りに採用してくだけだろ?」
「問題は試験の採点だ。合格枠には漏れてしまったが、一人見込みのある受験生がいた」
相澤が言った直後、下の方からアニメ声が聴こえてくる。
「それは38位の彼の事を言っているのかい?」
「……根津校長」
声に反応した相澤が振り向くと、服を着た身長85cmほどのネズミがいた。
彼は根津といい、雄英の校長を務めている。
ネズミだが人間以上の頭脳を持っており、雄英の校長の座についているのもその叡智と財力によるものだった。
すると、他の教師が相澤に対して反対意見を出してくる。
「いや確かに彼もいい線いってたよ? でもさ、他の受験生を操ってポイント稼ぐってヒーローとしてどうなのよ? しかも操られてたのって、相澤くんとこの子でしょ?」
「それに関しては、こちら側の不手際でもあります。元々この試験方式は合理的じゃないと俺は散々言ってました。それに、結果論ではありますが、彼の“個性”で操られた受験生が他の受験生を助けたのも事実です。校長、
他の教師が疑問を投げかけると、相澤はそれに対して反論した。
心操の“個性”によってひなたを助けた受験生達にもその分のレスキューポイントが10点ほど加算されており、その分の加算で心操のポイントを上回り心操の順位が下がる結果となってしまったのだ。
ひなたを操った事を考えれば自業自得と言える結果だったが、そもそもこの試験自体が受験生同士のポイントの奪い合いを想定した方式となっており、明確に妨害行為と言い切れない彼の行動も反則スレスレではあったがルール違反ではなかった。
そのため、受かる為に策を講じた彼を責めるのはお門違いだと相澤は考えていた。
そして相澤は、それを踏まえて校長に進言した。
「確かに彼は、一度は俺の娘を陥れました。しかし、一度過ちを犯したらヒーロー失格なんて事はないでしょう。彼はヒーローとしての素質は十分に持っています。『洗脳』の“個性”も、今回娘を救ったように人の為に使えば多くの命を救える力です。差し出がましいのは重々承知です。しかし、優れた資質を持つ貴重な人材を落とすなど言語道断。どうか、今一度彼の合否を見直していただけないでしょうか」
それを聞いて、教師陣は少し驚いていた。
冷徹で徹底した合理主義者というイメージの相澤が一人の生徒に、それも一度は自分の娘を陥れた受験生に固執するなど考えられなかったからだ。
しかし相澤にしてみれば、試験と相性の悪い“個性”でも諦めずにポイントを稼ぎ、人を助ける為に力を行使した者が排斥されるという不条理に納得がいかなかった。
『洗脳』の“個性”は使い方次第で多くの命を救える力になり得、心操自身もヒーローとしての高い素質を持つ優秀な受験生だったからだ。
「つっても今更順位の変更はできねーぞ? こいつを合格させるって事は、本来受かってたはずの奴を落とすって事なんだからよ」
相澤の意見を聞いた山田が言うと、校長が可愛らしく手を挙げて意見を出す。
「なら簡単な事さ、合格者を増やせばいいのさ! A組B組それぞれ1人ずつ一般枠を増やす、これなら他の優秀な受験生を削らずに彼を合格させられるのさ!」
校長がそう言うと、教師陣がどよめく。
「校長!? よろしいのですか!? 国立高校である我が校が国の決めた定員を超過するなど……」
「責任は全て私が取るさ。相澤くんの言う通り、彼には見込みがある。ヒーローを育成する教育機関が貴重な人材を排斥してしまうなど、あってはならない事なのさ!」
校長の思い切った決断に教師陣は動揺するが、聡明で心優しい校長の言う事ならと納得した。
反対意見を出した教師も、本心では心操の事を落とすには惜しい人材だと思っていた。
「……ありがとうございます」
相澤は、自分の我儘を通してくれた校長に感謝し頭を下げた。
こうして38人(元は36人)の合格者枠が埋まったところで、クラス分けの協議が行われた。
「実技入試首席の相澤ひなたですが……例年通りB組に配属するのですか?」
来年度の1年B組を受け持つ強面の教師、ブラドキングこと管が校長に言った。
管の言う通り、教師の身内が入学する場合別のクラスに配属するのが普通で、雄英でもそれは例外ではなかった。
現に、過去にも教師の身内が入学したケースが何度かあったが、例外なく別のクラスに配属されているのだ。
例年通りであれば、ひなたは相澤が担任を受け持つA組ではなくB組に配属される筈だった。
だが、校長は首を横に振った。
「いいや、彼女は相澤くんのクラスに配属するのさ!」
「な、何故ですか!?」
校長が言うと、管が理由を尋ねる。
てっきりひなたが自分のクラスに配属されるものと思っていたからだ。
すると校長が話し始める。
「彼女は特例中の特例なのさ。理由は主に二つ。一つ目は彼女の素性が関係しているのさ。彼女自身、
一つ目は、ひなたの素性が理由だった。
ひなた自身、
決してヒーローの適性があるとして合格を認めたひなたを疑っているわけではなかったが、
それにいくら実力があろうと、経験値でいえばたった10歳の少女と変わらないのだ。
だからこそ相澤が担任として、父親として、ひなたを支えるべきだとの判断だった。
「二つ目は彼女の“個性”の問題さ。知っての通り彼女の“個性”は、一歩間違えば隣のクラスメイトを一生“個性”を使えない身体にしてしまいかねない。だから“個性”を消せる相澤くんが担任として側にいる必要があるのさ。これは彼女のクラスメイトと親御さんへの配慮でもあるのさ」
二つ目は、人を“無個性”に変えてしまうひなたの“個性”が理由だった。
実はひなたが小学生の頃、ひなたの通っている学校の生徒の親が学校に『危険な“個性”を持つ子をうちの子と同じ学校に通わせるなんて何を考えているんだ』と苦情を入れてきた事があった。
当然ひなたは“個性”をコントロールできているのでいきなりクラスメイトを“無個性”にしたりする心配はなかったが、“個性”を消せる相澤が担任であればひなたのクラスメイトの親も安心して我が子を通わせられると校長は考えていた。
「うむ……そういう事であれば……」
校長が言うと、管も納得した。
こうしてひなたはA組に配属される事が決まり、他の合格者もそれぞれのクラスに配属されていく。
◇◇◇
そして4月、この日は雄英の入学式だった。
ひなたは新品の制服を着て初めての登校をする。
正門にたどり着くと、門を通ろうとする見覚えのある後ろ姿を見つける。
「あ! 君は!」
ひなたが声をかけて駆け寄ると、心操が振り向く。
「お」
「良かった、受かったんだね! そりゃそうだ、僕を助けてくれたヒーローだもん!」
「!」
心操がひなたの姿を見て驚くのも気にせずひなたは話しかける。
「……そっちこそ、受かってくれて良かったよ。俺のせいで落ちてたら、一生償い切れないところだった。本当にすまなかった」
心操は、試験でひなたを操って邪魔をしてしまった事を改めて謝罪した。
するとひなたは、ニコッと笑顔を浮かべて話題を切り替える。
「そんな事よりさ、まだ名前聞いてなかったよね。僕は相澤ひなたっていうんだ。って、受験票見たから知ってるか。よろしく!」
ひなたが言うと、心操は僅かに目を見開く。
ひなたが自分の人生がかかった試験を邪魔された事をあっさり許し『そんな事』で済ませてしまうというあまりにも予想外の反応をしてきたため、心操は驚いて言葉を失っていた。
「君は名前なんていうの?」
「あ、えと……」
驚いている時にいきなり尋ねられたため、心操はうまく答えられずにどもってしまう。
するとひなたが何を勘違いしたのか手を差し伸べてきた。
「アエトくん? 変わった名前だね。よろしく」
「違うよ」
「え、違うの?」
心操がツッコミを入れると、ひなたが首を傾げる。
心操は、ひなたのどこか抜けた反応に少し呆れつつ自己紹介をした。
「心操人使。改めてよろしくな、相澤」
「ひなたでいいよ。せっかく仲良くなったんだしさ、ひー君!」
「ひ、ひー君……!?」
ひなたがいきなりあだ名呼びしてきたため、心操は驚いていた。
ひなたは、コクリと頷くと平然と話を変えてくる。
「うん、人使くんだからひー君。あ、向こうにクラス書いてあるみたいだよ! 同じクラスだといいね!」
ひなたは、クラスが書かれた掲示板を指差しながら心操を引っ張って一緒にクラスを確認しに行った。
「えっと、あ……あ……あった! 僕A組だよー! ひー君は?」
「俺もA組だ……」
「え、ホント? やったぁ! 一緒のクラスだ! ラッキーだね!」
「……そうだな」
ひなたが嬉しそうに言うと、心操は自分の首に手を回して微笑む。
校舎に到着すると、二人は1年A組の教室を探す。
すると、『1ーA』と書かれた7mはある引き戸を発見した。
「わぁあ……で、デカい……」
引き戸の大きさに、ひなたは思わず目を見開いて固まる。
雄英は校舎全てがバリアフリー対応で、大柄な生徒でも小柄な生徒でも異形型の生徒でも快適に使える造りになっていた。
「どんだけお金かけてんだ雄英」
「金の話はやめようぜ」
ひなたが思わずツッコミを入れると、野暮だと思った心操が止める。
ひなたが苦笑いを浮かべながらドアを開けると、教室の中では眼鏡の男子飯田とツンツンヘアーの男子爆豪が喧嘩をしていた。
「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ。てめーどこ中だよ端役が!」
飯田が机に足をかけている爆豪に対し注意していると、爆豪が飯田に悪態をつく。
すると飯田は律儀にも自己紹介をした。
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明〜〜〜!? クソエリートじゃねえかブッ殺し甲斐がありそうだな」
「君ひどいな! 本当にヒーロー志望か!?」
爆豪が飯田に悪態をつくと、飯田は思わずドン引きする。
ひなたと心操は、その様子を教室の入り口で見ていた。
「……教室間違えちゃったかな。行こっか」
「お、おう」
ひなたは、今のやりとりを見なかった事にしてスススとドアを閉めようとする。
すると爆豪がひなたに気付いてズカズカと歩いてくる。
「てめぇかぁ!? 同率一位だったっつぅ野郎は?」
「えっと……そう、なるのかな? てか野郎じゃな……」
爆豪が悪態をつくと、ひなたは若干引きながら答えようとする。
すると、爆豪がいきなりひなたの胸ぐらを掴んで持ち上げ睨みつけてきた。
「てめぇみてぇなちんちくりんが俺と同じ順位なんざあり得ねぇ。たまたま一位だったからって調子に乗んなよ、殺すぞモブが」
「え……」
ひなたがいきなり脅されて戸惑っていると、心操が怒りを露わにしながら爆豪に話しかける。
ヒーローとしての心を持っている彼にとっては同じヒーロー科の人間がクラスメイトを脅しているのを黙って見ている事はできず、何より恩人が脅されているのを見過ごすわけにはいかなかった。
「おい、初対面の相手にそれはないだろ。あんたそれでもヒーロー科か?」
「あぁ!? 誰だてめー、モブがしゃしゃり出てんじゃねぇよ。ブッ殺されてぇんか」
爆豪が心操に対しても悪態をつくと、心操は冷静に反論する。
「そんな事して退学になっても知らないぞ。せっかくの合格を棒に振るう気か?」
「チッ……」
『退学』という言葉に反応したのか、意外にも爆豪は大人しくひなたを離しそれ以上は突っかかって来なかった。
自分の席に戻っていく爆豪を、ひなたはドン引きしながら見ていた。
「うわぁ……みみっちぃ……」
ひなたが思わず心の声を漏らすと、心操がひなたを心配する。
「大丈夫か?」
「うん……っていうか、“個性”使わなかったんだね」
「授業外で“個性”使っちゃダメだろ。下手に使って根に持たれても困るし」
「あーね」
心操が言うと、ひなたは苦笑いを浮かべて頷く。
ひなたが席を確認して一番前の席に行くと、「よいしょ」と机の上に鞄を置く。
すると、女子達がひなたの席に集まってくる。
「わぁ! ちっちゃい子だ! かわい〜!」
「え?」
透明で制服だけが浮いているように見える女子が話しかけると、ひなたはキョトンとする。
「ケロケロ、弟と同じくらいかしら」
「勝った……」
カエルの異形型の“個性”と思われる女子と耳朶がイヤホンのジャックのような形をした女子も口を開く。
すると、髪と肌がピンク色で二本の角が生えた女子が話しかける。
「私ねー、芦戸三奈っていうの! よろしく!」
「うん! よろしくねみなっち!」
芦戸が自己紹介をすると、ひなたは笑顔で返事をする。
すると今度は黒髪のポニーテールの女子と透明人間の女子が話しかける。
「私は八百万百と申しますの。以後お見知り置きを」
「私は葉隠透! 見ての通り透明人間でーす!」
「ヤオモモにとおるんね、よろしく!」
そして次はカエルの女子と耳朶ジャックの女子が話しかける。
「ケロ、私は蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「ウチは耳郎響香。よろしく」
女子達が自己紹介をすると、ひなたはニコッと微笑む。
「よろしくね、梅雨ちゃん、きょーちん。僕は相澤ひなただよ。僕の事は下の名前で呼んでくれると嬉しいかな」
すると、女子だけではなく男子もひなたに話しかけてくる。
最初に話しかけてきたのは飯田だった。
「相澤ひなたくん……で合ってるかい? 俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。よろしく」
「あ、入試で思いっきり『恥ずべき痴態』とか言ってた人! よろしくね天ちゃん」
「て……天ちゃん!?」
ひなたがいきなりあだ名呼びしてくると、飯田は驚きのあまり固まっていた。
すると逆立った赤髪の男子、醤油顔の男子、筋骨隆々の身体にタラコ唇の男子が自己紹介をする。
「俺ァ切島鋭児郎! よろしくな!」
「俺、瀬呂範太。よろしく」
「俺、砂藤力道!」
「うん。鋭ちゃんにはーちんにりっきーね。みんなよろしくー」
ひなたは、切島、瀬呂、砂藤の3人にあだ名をつけて挨拶をする。
すると今度は金髪に黒い稲妻型のメッシュの男子が話しかけてきたかと思えば、いきなりナンパしてきた。
「俺、上鳴電気っつーんだけどさ。入学式終わったら飯食いに行かね? 食いもん何好きとかある?」
「えっとね、サルミアッキ」
「……マジで?」
「よろしくねー、電吉!」
ひなたがんーと考える仕草をしながら答えると、上鳴がドン引きする。
すると、下の方から何かをブツブツ言う声が聞こえてくる。
「な……ぜ、0cm……だと……!?」
「……?」
ふと下の方を見ると、ひなたよりさらに背の低いブドウ頭のイロモノがいた。
イロモノは、ひなたの方に手を差し出して自己紹介をする。
「オイラ峰田実。よろしくな、えっと……」
「僕は相澤ひなただよ。よろしくね、峰田!」
峰田が名乗ると、ひなたはニコッと笑いながら言った。
すると峰田は自分だけ苗字呼び捨てで呼ばれたので釈然としないといった様子で他の男子の方を振り向く。
「何でオイラだけ普通の呼び方……」
「さぁ……今ので近寄りたくないって思われたんじゃね?」
「!?」
ひなたにセクハラ発言を聞かれていたため距離を置かれたのではと瀬呂が言うと、峰田はショックを受けた表情でひなたを見る。
そんな中、教室には緑谷と茶髪のボブの女子が一緒に話をしながら教室に入ろうとしていた。
するとその時だった。
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」
ドアの方から聴き慣れた声が聴こえてきたので見てみると、相澤が寝袋に入ったまま廊下に寝転がっていた。
「ここは……ヒーロー科だぞ」
相澤は、寝袋からゼリー飲料を取り出すとそれを一気に飲み干した。
その風貌は、誰がどう見ても不審者か巨大な芋虫にしか見えず、A組の生徒達はドン引きしていた。
(((なんか!!! いるぅぅ!!!)))
そしてそれはひなたも同じだったのか、目を丸くしてガタッと席から立ち上がる。
「お父さん!!? 何してんだよこんなところで!!」
(((親子!!?)))
不審者がまさかのひなたの父親だったため、A組の生徒達は全員ひなたの方を見てギョッとしていた。
「見ての通りだ。早く席につけ」
「いや何が『見ての通り』だよ! 今日くらいはちゃんとした格好で来いって散々言ったよね!? 初登校で父親が不審者だと思われてる思春期の娘の気持ちとか少しは考えてよ! この際だからハッキリ言うけど、学校の廊下で寝袋着て寝てるオッサンと親子だなんて思われたくないんだよ!」
(((何かメチャクチャ怒られてる……!!)))
ひなたが寝転がっている相澤に説教をすると、A組の生徒達は思わず心の中でツッコミを入れる。
常に相澤を父として、師として、そしてヒーローとして尊敬してきたひなただったが、唯一人様の前で寝袋を着て寝てる時だけは距離を置きたいとすら思っていた。
体格が小柄で中性的な為忘れられがちだが、ひなたもれっきとした思春期真っ只中の少女だった。
友達との人間関係などを気にする年頃であれば尚更、不審者と身内だと思われたくないという心理が働くのは当然の事だった。
だが相澤は、ひなたに説教された直後に寝袋を脱いで立ち上がった。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
(担任だった!?)
(つーかこのタイミングで言うか普通!?)
相澤が生徒の目の前で娘に説教をされた直後に平然と自己紹介をしたため、A組の生徒達は心の中でツッコミを入れる。
もはやそこには威厳などといったものは一切なかった。
すると相澤は、寝袋の中をゴソゴソと漁って何かを取り出す。
「早速だが、
「……ちょっとお父さん、寝袋の中に入ってたのを着ろっていうの?」
「違う。机の横にかかってる自分のやつだ」
相澤が寝袋から体操服を取り出すとひなたが顔を引き攣らせながら言うので、相澤がツッコミを入れた。
◇◇◇
着替えに行く途中、ひなたは入り口で話していた緑谷と茶髪ボブの女子に会った。
ひなたは早速二人に声をかけに行く。
「おはよー!」
「あ、さっきの……えっと」
緑谷は、ひなたが相澤に説教をしていた事を思い出して若干戸惑っていた。
ひなたは、自己紹介がまだだった事を思い出し自己紹介をする。
「僕は相澤ひなた。お父さんと紛らわしいからひなたでいいよ。君らは?」
「ぼ、僕は緑谷出久です」
ひなたが尋ねると緑谷が辿々しく名乗る。
すると茶髪の女子も自己紹介をした。
「私、麗日お茶子! よろしくねひなたちゃん」
「うん!」
麗日が言うと、ひなたは満面の笑みを浮かべて頷く。
3人は、この後すぐ最初の試練が待っているとは思ってもみなかった。
◇◇◇
「“個性”把握…テストォ!?」
体操服に着替えてグラウンドに出ると、いきなり相澤から『個性把握テストをやる』と聞かされたので全員驚きを露わにする。
それはひなたも例外ではなく、目を丸くして相澤の方を見ていた。
すると生徒達を代表して麗日が相澤に尋ねる。
「入学式は!? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り」
相澤が言うと、生徒達はいまいち要領を得ない様子で聞いていた。
「ハンドボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ? “個性”禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ」
(うわぁ始まったよお父さんの愚痴……素の力を知りたい人もいると思うんだけどなぁ)
相澤が生徒の前にもかかわらず愚痴をこぼしていると、ひなたはウンザリとした表情を浮かべる。
相澤もまた、ウンザリしているひなたの方を一瞥する。
(ひなたの“個性”じゃここでやらせても意味無えからな。ここは同じ首席の爆豪にやらせるのが合理的だろう)
ひなたの“個性”がテストに向いていないのを知っていた相澤は、デモンストレーションをやらせるのに最適ではないと判断し、同じ首席の爆豪に声をかける。
「爆豪、中学の時ハンドボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ“個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何をしてもいい。早よ。思いっきりな」
そう言って相澤がボールを渡すと、爆豪はボールを受け取って円の中に入る。
「んじゃまぁ…死ねぇ!!!」
ボオォン!!!
(((……死ね?)))
爆豪が罵声を上げながら球威に爆風を乗せてボールを投げると、ひなたも含めたクラスメイト達はドン引きしていた。
すると、しばらくしてボールが着地し、相澤の持っていた端末から『ピピッ』と音がする。
「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
そう言って相澤が見せた端末には、『705.2m』と表示されていた。
すると、他の生徒達は“個性”を使っていいテストを面白がり一気に湧き出した。
「なんだこれ!! すげー面白そう!」
「705mってマジかよ!?」
「“個性”思いっきり使えるんだ!! 流石ヒーロー科!」
他の生徒達がキャッキャとはしゃいでいる中、ただ一人ひなただけは『やっちゃった』とでも言いたげな表情を浮かべていた。
「……あーあ、言っちゃったね」
「え?」
「お父さんこういうの嫌いだからさ。来るよこれ」
ひなたが構えて警戒しながら言うと、心操が反応する。
ひなたは相澤がこういうノリが嫌いなのを知っていたため、他の生徒がはしゃぎ出した時点で嫌な予感しかしていなかった。
するとひなたの予想通り、相澤は呆れた様子で呟いた。
「………面白そう…か。ヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
相澤がそう言うと、ひなたは『もうダメだ』と言わんばかりにため息をつく。
こうなってしまった以上、ひなたにも相澤を止める事は出来なかった。
すると相澤は、誰も予想していなかった衝撃発言をする。
「よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「「「はあああ!?」」」
それを聞いたクラスメイト達は、一斉に声を荒げた。
ひなたは、声を上げはしなかったものの目を見開いて相澤の方を見ていた。
「生徒の如何は
相澤は、前髪をかき上げながら不気味な笑みを浮かべた。
たった今、高校生活の最初の試練が始まった。
心操くんが操った事でポイントが上回ってしまった生徒とは、物間・峰田の事です。
物間に至っては37位で彼も不合格でしたが、一個下の順位の心操くんの合格が決まったため彼も一個空いたB組の枠に入れてもらえたって感じです。
心操くんがもっと早い段階で救助に振り切っていればレスキューポイントで逆転されてしまう事も無かったので、二人の合格は無かったかもしれません。
ちなみに何でかっちゃんがひーちゃんが入試一位だった事を知っているかと言うと。
オールマイト『おめでとう!君は同率一位だ!』
爆豪「ざけんなァ!!」
後日、学校
爆豪「どこのどいつだ!?俺と同じ一位っつう野郎は!?」
モブ1「聞いた?あの子、首席でヒーロー科受かったらしいよ」
モブ2「ああ、あの触角が生えた小さい女の子ね。俺、あの子が巨大ロボ止めてくれたおかげで助かったんだよね。他の受験生の救助とか避難誘導までしてたし」
爆豪(は?俺がスルーした巨大ロボを止めた奴がいんのかよ!?)
モブ1「あの子受かって良かったね」
モブ2「入学式終わったらお礼言いに行かなきゃ」
爆豪「触角チビ女か、後でブッ殺す!」
こんな感じ