抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が8件9が33件だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。

※オリヴィランの名前の読み方を変更しました。


転転転!

「嘘でしょ……何でここに………」

 

「やだなぁ、そんな顔しないでよ。たった一人の兄さんに対して…」

 

 ひなたが目を見開きながら言うと、零はクスクスと笑いながら言った。

 すると心操は、戸惑った様子でひなたに尋ねる。

 ひなたに兄がいるという話は一度も聞いた事がなく、ひなたの父親の相澤もそんな事は言っていなかったので当然の反応だった。

 

「え……兄さんって…ひなた、知り合いなのか?」

 

「…………!!」

 

 心操が言うと、ひなたは目を見開いて黙り込む。

 するとそれを見た零は何かを察したのか、呆れたような笑みを浮かべる。

 

「ああ、そっか。そういうアレかお前。はは、ホントウケる」

 

 零が笑いながら言うと、心操はその隙にひなたに合図を送る。

 戦闘許可が出たため、心操が零を操ってその隙にひなたを施設まで逃がすつもりだったのだ。

 零の『兄さん』という言葉が気になってはいたが、ひなたの口からは言えない事情があるのだと考え、それよりも今は目の前の(ヴィラン)を何とかする方が先だと考えた。

 

「お前ら…お前らの目的は何だ!? ひなた達を連れて何する気だ!?」

 

 心操は、洗脳スイッチを入れるため零に尋ねる。

 すると零は、ヘラヘラと笑いながら前髪を掻き上げ、真っ赤に光った左眼を見せた。

 

「へぇー、『洗脳』かぁ。いい“個性”だね。でもごめんね。僕、効かないんだ」

 

「なっ……!?」

 

 

 

 零

 本名 不明

 “個性”『無効』

 自分の左眼に映った人物の“個性”を無効化する! 

 ついでに誰が何の“個性”を使ったのかもわかる! 

 ただし発動型と変形型に限る!! 

 

 

 

「ちなみに“個性”破壊音波使おうとしても無駄だからね? 僕そういうの全部効かないから」

 

 零が“個性”を使いながら言うと、心操が目を見開いて驚く。

 二人の“個性”はとっくに零にバレていたのだ。

 相手に“個性”が効かないこの状況をどう切り抜けようか考えるが、相手が何十人も殺している手練れである以上戦って勝つのは現実的ではなかった。

 そうなれば二人に残された選択肢は一つだった。

 

「ひなた!! 逃げろ!!」

 

「え、でも…」

 

 心操が叫ぶと、ひなたは戸惑う。

 目の前に見知った男が突然現れたので、どうすればいいのかわからなかったのだ。

 すると戸惑うひなたに対して心操が叫ぶ。

 

「こいつらの目的はお前だ!! いいから行け!!」

 

「っ………!!」

 

 心操が叫ぶと、ひなたはギュッと目を瞑って走り出した。

 すると零はヒュウっと口笛を吹き、懐からナイフを取り出すと心操目掛けて振るう。

 心操は、零のナイフを避けて相澤直伝の格闘術で上手い事いなした。

 戦って勝つのは現実的ではなかったが、それでもひなたが逃げ切るまでの時間稼ぎをする事くらいならできた。

 すると零は僅かに目を見開いて驚く。

 

「へぇ、すごいすごい。ガッツだなぁ…流石雄英生だぜ。でも……」

 

 一方、ひなたは一度施設に戻って助けを呼ぼうと全速力で森の中を走り抜けていった。

 相澤に“個性”を消してもらうしか方法は無いと考えたひなたは、走りながら相澤に連絡しようとする。

 だが、その時だった。

 

 

 

 バキッ

 

「………!?」

 

 突然森に鈍い音が響き渡り、ひなたは後ろを振り向く。

 そして視線の先にあった光景に、大きく目を見開いた。

 ひなたが見たものは、頭から血を流して倒れ込む心操、そして心操を見下ろして嘲笑う零の姿だった。

 

「お友達の兄貴に『お前』とか『こいつ』はないだろ」

 

 零が言うと、ひなたはその場で足を止める。

 零は、小さく息を吸うと大声を張り上げて叫んだ。

 

「さて、と……戻って来いよ101号!! じゃないとお前のお友達をうっかり殺しちゃうかもなぁああ!? さぁん!! にぃぃ!! いぃち!!!」

 

 零が大声を張り上げてひなたを誘き寄せようとするので、心操はひなたが零の挑発に乗らずに逃げ切って応援を呼んでくる事を祈っていた。

 だがその時、森の奥からガサガサと音が鳴る。

 音が鳴った方向を見た心操は、思わず目を見開く。

 

「やっぱり無理だよ…僕……ひー君を置いて逃げるなんて、そんな事できない…!」

 

 ひなたは、息を切らしながら心操に向かって言った。

 すると零は、両手を大きく広げて高笑いした。

 

「ハハハハ! いい子だ101号! お前なら戻ってきてくれるって信じてたよ! 自分が傷つくより人が傷つく方がつらいもんな!? お前は昔からそういう奴だった! ああ、この子が気になるかい? 悪いがこの子は僕の“個性”で動けなくなってるよ。まあ、そうじゃなくても打ち所悪かったからしばらくまともに動けないと思うけどね」

 

 零は、自分の足元にいる心操を指差して嘲笑った。

 心操は殴られたのか頭から大量の血を流しており、零の“個性”にかかっているのか身動きが取れず声も出せずにいた。

 ひなたは、高笑いをしている零に向かって叫ぶ。

 

「こんな事して…何が目的なんだよ!? 僕を一体どうしたいの!?」

 

「ははっ、目的? そんなのひとつしかないだろ?」

 

 ひなたが叫ぶと、零はプッと吹き出して笑った。

 そして徐に右手をひなたに差し伸べる。

 

「連合に来いよ、101号。僕達と一緒に何もかも壊しまくろう」

 

「……!?」

 

 零が言うと、ひなたは目を見開く。

 すると零はひなたを指差して続ける。

 

「この世界は腐ってる。名誉欲に溺れたクソヒーローと、超人社会の歪みに気付こうともしないクソ砂利共。でも、お前は違う。お前は、超人社会のクソみたいな常識に染まっちゃいない。それにお前には、世界を壊せるだけの力がある。お前はこっち側にいるべきなんだ。この腐った世界をぶち壊そうぜ」

 

「断る! 僕は、お父さんみたいなヒーローになる為にここにいるんだ!」

 

「ヒーロー? ハッ、笑わせんなよ。お前がヒーローになれるわけないよ。だってお前は、(ヴィラン)に生み出されたモルモットだろ?」

 

 零が言うと、ひなたは冷や汗をかいて大きく目を見開いた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方爆豪と轟は、いきなり緑谷と障子、そして暴走した黒影(ダークシャドウ)が現れたため目を見開く。

 すると障子の複製した口が二人に向かって叫ぶ。

 

「早く“光”を!!! 常闇が暴走した!!!」

 

 障子が言った直後、黒影(ダークシャドウ)が襲いかかってきたため轟は氷を出してガードし障子は黒影(ダークシャドウ)から逃げる。

 轟は炎で黒影(ダークシャドウ)を鎮めようとするが、爆豪が轟を止める。

 爆豪の視線の先には、先程黒影(ダークシャドウ)に潰されたムーンフィッシュがいた。

 

「肉〜〜駄目だぁああ…肉〜〜〜にくめんんん…駄目だ、駄目だ、許せない…その子達の断面を見るのは僕だぁあ!!! 横取りするなぁあああああ!!!」

 

 そう言ってムーンフィッシュは黒影(ダークシャドウ)に対して殺意を露わにしながら歯を伸ばす。

 すると黒影(ダークシャドウ)は、あっさりムーンフィッシュの攻撃を受け止め勢いを殺してしまった。

 

「強請ルナ、三下!!」

 

 黒影(ダークシャドウ)は、ムーンフィッシュの身体を強く握り締め、そのまま木々を薙ぎ倒しながら投げ木に叩きつけた。

 ムーンフィッシュは、歯が全て折れてなくなりそのまま意識を手放す。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛暴レ足リンゾォア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 黒影(ダークシャドウ)がそのまま方向転換し轟と爆豪目掛けて突進すると、二人はそれぞれ炎熱と爆破を使って黒影(ダークシャドウ)を鎮めた。

 すると黒影(ダークシャドウ)は常闇の身体へと引っ込んでいき、常闇はその場で膝をつく。

 轟は自分達が防戦一方だった敵をいとも簡単に倒してしまった事に驚き、障子は協力してくれた常闇に礼を言った。

 緑谷は近くに敵がいるのが分かっていたため、黒影(ダークシャドウ)に抗わずに身を委ねるよう指示を出したのだ。

 常闇は、自分の未熟さのせいでクラスメイトを巻き込んでしまった事を謝罪し、障子はあっさり常闇を許した。

 すると緑谷が常闇に報告する。

 

「そうだ…! (ヴィラン)の目的がかっちゃんと相澤さんだって判明したんだ」

 

「命を狙われているのか…? 何故?」

 

「わからない…! とにかく…ブラドキング・相澤先生、プロの二名がいる施設が最も安全だと思うんだ」

 

 障子は、道なりに戻るのは(ヴィラン)の目につく上にタイムロスになるため一直線に施設に戻るのが得策だと話す。

 緑谷は、障子が索敵能力で(ヴィラン)を探して鉢合うのを避けつつひなたの居場所を探し出し、そして万が一(ヴィラン)と鉢合った場合轟の氷結と常闇の黒影(ダークシャドウ)で爆豪を守る事を提案した。

 

「このメンツなら正直…オールマイトだって恐くないんじゃないかな…!」

 

 すると、あまりにもトントン拍子で話が進むので、爆豪は逆ギレした。

 

「何だこいつら!!!!」

 

「お前中央歩け」

 

「俺を守るんじゃねぇ、クソ共!!!」

 

 爆豪は、自分が守られているのに納得がいかずキレ散らかした。

 障子は、キレる爆豪を無視して施設の方へと走っていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして少し前。

 蛙吹は、腕を負傷した麗日を庇う形で前に立っていた。

 二人の前には、麗日の血がついたナイフをまるで宝物でも愛でるかのように目を輝かせて眺めているトガがいた。

 

「急に切りかかって来るなんてひどいじゃない、何なのあなた」

 

「トガです! 二人共カァイイねえ。麗日さんと蛙吹さん」

 

 蛙吹が尋ねると、トガはナイフを二人に向けて言った。

 トガに名前がバレていたので、二人は僅かに驚く。

 トガも体育祭を見ていたので、当然二人の名前を知っていたのだ。

 

「血が少ないとね、ダメです。普段は切り口からチウチウと…その…吸い出しちゃうのですが、この機械は刺すだけでチウチウするそうでお仕事が大変捗るとの事でした。刺すね」

 

 そう言ってトガはシリンジを取り出しナイフとシリンジの針を二人に向ける。

 そしてその直後、トガが二人に飛びかかる。

 すると蛙吹は、麗日の身体を舌で掴んで投げた。

 

「施設へ走って。戦闘許可は『(ヴィラン)を倒せ』じゃなく『身を守れ』って事よ、相澤先生はそういう人よ」

 

「梅雨ちゃんも!!」

 

「もちろん私も…」

 

 蛙吹が麗日に続けて逃げようとすると、トガが蛙吹の舌をナイフで斬りつける。

 トガは、パアッと笑みを浮かべると蛙吹に詰め寄った。

 

「梅雨ちゃん、梅雨ちゃん…梅雨ちゃんっ! カァイイ呼び方! 私もそう呼ぶね」

 

「やめて、そう呼んで欲しいのはお友達になりたい人だけなの」

 

「やー、じゃあ、私もお友達ね! やったあ!」

 

 蛙吹が逃げようとすると、トガは上機嫌でシリンジを蛙吹の髪ごと木に刺して身動きを封じてしまった。

 

「血ィ出てるねえ、お友達の梅雨ちゃん! カァイイねえ、血って私大好きだよ」

 

「離れて!!」

 

 トガが蛙吹に詰め寄って引き裂けそうな笑顔を浮かべると、後ろから麗日が駆けつける。

 トガは咄嗟に麗日目掛けてナイフを突き出すが、麗日はトガのナイフを避けると首と手首を掴んで組み伏せた。

 麗日が咄嗟に対応できたのは、ガンヘッドにG(ガンヘッド)M(マーシャル)A(アーツ)を教わっていたおかげだった。

 麗日は、蛙吹に舌でトガを拘束できないか尋ねる。

 するとトガは、麗日に組み伏せられたまま言った。

 

「お茶子ちゃん…あなたも素敵。私と同じ匂いがする。好きな人がいますよね」

 

「!?」

 

「そして、その人みたくなりたいって思ってますよね。わかるんです、乙女だもん」

 

 トガが尋ねると、麗日は目を見開く。

 恍惚とした表情を浮かべながら話すトガに、麗日は得体の知れない不気味さを感じ思わず全身を粟立たせた。

 

「好きな人と同じになりたいよね、当然だよね。同じもの身につけちゃったりしちゃうよね。でもだんだん満足できなくなっちゃうよね。その人そのものになりたくなっちゃうよね、しょうがないよね。あなたの好みはどんな人? 私はボロボロで血の香りがする人大好きです。だから、最期はいつも切り刻むの。ねえ、お茶子ちゃん楽しいねえ。恋バナ楽しいねえ」

 

 トガは、恍惚とした笑みを浮かべながら麗日の左腿にシリンジを刺す。

 そしてそのまま血液を吸い取ろうとした、その時だった。

 

「麗日!?」

 

 障子達が駆けつけ、その声に麗日が一瞬気を緩めた隙にトガは麗日を押し退けて逃げた。

 

「人増えたので。殺されるのは嫌だから、バイバイ」

 

 そう言って逃げようとするトガだったが、ボロボロになった緑谷を見て恍惚とした表情を浮かべる。

 そしてそのまま森の奥へと逃げていった。

 麗日はすかさずトガを追おうとするが、どんな“個性”を持っているかわからないため深追いしないよう蛙吹が言った。

 二人は怪我をしていたが、逃げられない程の怪我ではなかったため緑谷達は一安心する。

 

「とりあえず無事でよかった…そうだ、一緒に来て! 僕ら今かっちゃんの護衛をして相澤さんを探しつつ施設に向かってるんだ」

 

 緑谷が事情を説明すると、蛙吹は誰も予想だにしなかった質問を投げかける。

 

「爆豪ちゃんを護衛? その爆豪ちゃんは何処にいるの?」

 

「え? 何言ってるんだ、かっちゃんなら後ろに…」

 

 そう言って緑谷は後ろを振り向くが、後ろにいたはずの爆豪と常闇がいつの間にかいなくなっていた。

 この非常時に、油断している人間など誰一人いるはずがなかった。

 するとその直後、二人を消した張本人の声が聞こえ、緑谷は思わず顔から血の気が引いていく。

 

「彼なら、俺のマジックで貰っちゃったよ。こいつぁヒーロー側(そちら)にいるべき人材じゃあねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」

 

 突然現れ木の上に立っていた紳士の装いの(ヴィラン)『Mr.コンプレス』は、手の上でビー玉を転がしながら言った。

 すると緑谷は血相を変えて叫ぶ。

 

「───!? っ返せ!!」

 

 するとMr.コンプレスは、何を言っているのかわからないといった様子で緑谷を嘲笑う。

 

「返せ? 妙な話だぜ。爆豪くんは誰のモノでもねえ。彼は彼自身のモノだぞ!! エゴイストめ!!」

 

「返せよ!!」

 

 Mr.コンプレスが嘲笑うと、緑谷は怒りに身を任せて叫ぶ。

 轟は、すかさず氷結を放ってMr.コンプレスを拘束しようとする。

 だがMr.コンプレスは、あっさりと轟の氷結を避けた。

 

「我々はただ凝り固まってしまった価値観に対し、『それだけじゃないよ』と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」

 

 Mr.コンプレスが宙を舞いながら言ったその時、障子が常闇もいなくなっている事に気がつく。

 轟は、音もなく二人を攫ってしまったMr.コンプレスの正体不明の“個性”を警戒する。

 

「わざわざ話しかけてくるたァ…舐めてんな」

 

「元々エンターテイナーでね、悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ。ムーンフィッシュ…『歯刃』の男な。アレでも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性、彼も良いと判断した!」

 

 そう言ってMr.コンプレスは、緑谷達の目の前でビー玉をギュッと握る。

 すると緑谷は怒り狂って叫ぶ。

 

「この野郎!! 貰うなよ!」

 

「緑谷、落ち着け!」

 

 怒りで冷静さを失っている緑谷を障子が落ち着ける。

 そして轟は円場を麗日に任せて最大威力の氷結を放つ。

 だがMr.コンプレスは、あっさりと轟の氷結を避けてしまった。

 

「悪いね、俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ! ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。開闢行動隊! 目標回収達成だ! 短い間だったがこれにて幕引き!! 予定通りこの通信後5分以内に回収地点へ向かえ!!」

 

 Mr.コンプレスは、それぞれ持ち場にいる開闢行動隊にメッセージを入れた。

 そしてそのまま轟の氷の上を走って逃げていくと、轟がMr.コンプレスを追おうとする。

 

「させねえ!! 絶対逃がすな!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、分身で相澤を翻弄しつつ山火事を起こして回っていた荼毘とトゥワイスはというと。

 

「おい荼毘無線聞いたか!? テンション上がるぜ、Mr.コンプレスが早くも成功だってよ! 遅えっつうんだよなあ!? 眠くなってきちゃったよ」

 

「そう言うな、よくやってくれてる。後はここに戻ってくるのを待つだけだ」

 

 トゥワイスが矛盾したセリフを言うと、トゥワイスの言動に理解があるのか荼毘は冷静に返す。

 炎とガスによる煙幕で撹乱する予定だったのだが、マスタードが倒された事でそれも不可能となってしまった。

 予定通りには行かないと荼毘がぼやきトゥワイスが予定通りと的外れな返しをする中、青山は茂みの裏に身を隠して息を殺していた。

 青山の足元にはガスマスクをした耳郎と葉隠が横たわっており、青山は自分はどうしたらいいかと考えていた。

 するとその時突然荼毘が後ろを振り向き、青山は目が合ってしまったのかと思いバクバクと心臓を鳴らしブルブル震える。

 だが荼毘は気のせいだと思ったのかそのまま歩き出した。

 すると、トゥワイスが荼毘に声をかける。

 

「おい荼毘! そういやどうでもいいことだがよ! 脳無って奴呼ばなくていいのか!? お前の声にのみ反応するとか言ってたろ!? とても大事な事だろ!!」

 

「ああいけねえ、何の為に戦闘加わんなかったって話だな」

 

 トゥワイスが尋ねると、荼毘は思い出したように言った。

 

「死柄木から貰った俺仕様の怪物…一人くらいは殺してるかな」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃B組の泡瀬は、頭を負傷した八百万を抱えて大量の腕から武器が生えた脳無から逃げていた。

 

「八百万!! 生きてるか!? おい!! 頼む走れ!! 追いつかれる!!」

 

「すみません…泡瀬さん…!! 大…丈夫です!!」

 

 泡瀬が八百万に呼びかけると、八百万は頭から血を流しつつも大丈夫だと答える。

 二人は訳もわからないままいきなり襲われ、気が付いたら攻撃されていたのだ。

 

「くそっ!! 畜生!!! 何なんだよ!! 何なんだよォ━━━━━!!!」

 

 混乱して叫びながらも八百万を連れて逃げる泡瀬を追いかける脳無は、泡瀬目掛けてチェーンソーの刃を振るおうとする。

 だがその直後、突然チェーンソーの刃を寸分のところで止め、生やしていた腕を仕舞うと踵を返して森の奥へと去っていった。

 脳無が突然帰っていったので泡瀬が怪訝そうな表情を浮かべていると、八百万が何かを創造して泡瀬に手渡す。

 

「泡瀬さん……“個性”でこれを! …奴に!」

 

 八百万が泡瀬に手渡したのは何かのボタンだった。

 泡瀬が何を渡したのかを八百万に尋ねるが、八百万は奴が行ってしまうと言って泡瀬を急かした。

 すると泡瀬は、脳無の背後に忍び寄り脳無の背に“個性”で八百万に貰ったボタンを結合する。

 

 

 

 泡瀬洋雪

 “個性”『溶接』

 別々のモノを分子レベルで結合させてしまう! 

 ただし、結合したモノとモノに触れていないと発動しない! 

 

 

 

 幸い、脳無は泡瀬が背中にボタンを貼り付けた事には気づかずそのまま去っていった。

 役目を終えた泡瀬は、そのまま八百万を抱えて施設へと逃げた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、マンダレイと虎は。

 

「ちょっとスピナー! あんたのせいよ!!」

 

「うるさい!!」

 

 虎は、文句を言うマグネを柔らかくした両腕で縛り付けていた。

 

 

 

 虎

 本名 茶虎柔

 “個性”『軟体』

 柔らかいぞ!! 

 平たくなったりもできる為、崩落事故等の救助も繊細に行える! 

 

 

「誰のせいと言うなら…悪事を働いた己の所為だ」

 

「そういう事よ、(ヴィラン)のスピナーくん」

 

 マンダレイがスピナーを組み伏せていると、スピナーがマンダレイを罵った。

 

「ええい離れろ! 不潔女! 畜生…!! ステインは蘇る…! いいか!? 意志が! ここでだ! 俺によって!! 俺はてめぇら生臭ヒーローと眼鏡くんを粛清しなきゃいけねぇんだ」

 

「意味わからない。それにしてもあんた、“個性”を一切見せなかったわね」

 

「うるさいどけ!!」

 

 スピナーがそう言った瞬間だった。

 

「そう……お二方とも少し、どいていただきましょう…」

 

 突然、黒霧が四人の前に現れた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、轟達は逃げるMr.コンプレスを全速力で追っていたが、Mr.コンプレスは本人が自負していた通り非常に逃げ足が速く追いつくどころか引き離されていた。

 飯田がいればと麗日は言うが、生憎施設で待機しているよう言われている飯田が来るはずがなかった。

 すると緑谷は、痛みで顔を歪めつつも作戦を考える。

 

「諦めちゃ…ダメだ…!! っ…!! 追いついて…取り返さなきゃ!」

 

「しかし、このままでは離される一方だぞ」

 

 障子が言うと、緑谷は作戦を話し始める。

 まず麗日が全員を無重力にし、蛙吹が舌を使って思い切り緑谷達を投げる。

 障子は腕で軌道を修正しつつ牽引し、麗日はMr.コンプレスとの距離を見計らって“個性”を解除する。

 麗日は全身ボロボロの緑谷を心配し轟も緑谷は残るよう言うが、緑谷は痛みに耐えながら言った。

 

「痛みなんか今知らない! 動けるよ…早くっ!!」

 

 緑谷が言うと、麗日はせめて応急処置だけでもと緑谷の両腕に添え木をし自分の上着を破って固定した。

 そして男子3人を無重力にすると、蛙吹に合図を出す。

 蛙吹は、無重力になった3人を舌で巻いてそのまま投げた。

 

「必ず二人を救けてね」

 

 そう言って蛙吹が3人を投げると、3人は猛スピードで空を飛んでいく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃麗日達から逃げたトガは、他のメンバーと合流していた。

 

「あれ? まだこんだけですか」

 

 その場に集まっていたのは、トゥワイスと荼毘だけだった。

 

「イカレ野郎。血は採れたのか? 何人分だ?」

 

「一人です」

 

「一人ィ!? 最低三人はって言われてなかった!?」

 

「仕方ないのです。殺されるかと思った」

 

 荼毘の質問に対しトガが答えるとトゥワイスが問い詰めてきたので、トガはしれっと言い訳をした。

 そしてトガとトゥワイスが漫才のようなやり取りを始めると、荼毘が黙るように言った。

 するとその時だった。

 

 

 

 ズドォン

 

「「「!!?」」」

 

 突然、緑谷、障子、轟の三人がMr.コンプレスと一緒に落ちてくる。

 するとトゥワイスが三人を指差しながら言った。

 

「知ってるぜこのガキ共! 誰だ!?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 少し遡り、施設にて。

 

「ダチが狙われてんだ、頼みます行かせて下さい!!」

 

「ダメだ!」

 

 飯田とA組の赤点組は自分達を加勢に行かせるようブラドキングに直談判していたが、ブラドキングは頑なに許可を出さなかった。

 それでも飯田と切島が食い下がるが、その時施設の入り口から物音がする。

 切島は、相澤が帰ってきたと思い直談判しようとする。

 だが、その直後だった。

 

 

 

 ゴォッ

 

 次の瞬間、青い炎が大量に噴き出て扉が吹き飛ぶ。

 ブラドキングは、咄嗟に生徒達を守った。

 

「皆下がれ!!」

 

「さっきやられてた… (ヴィラン)!!?」

 

 峰田は、相澤が倒したはずの荼毘が現れた事に驚く。

 荼毘は、右手から炎を出そうとするがブラドキングによって壁に叩きつけられる。

 

「こんなところにまで考えなしのガン攻めか、随分舐めてくれる!」

 

 ブラドキングは、自身の血を操って荼毘を拘束した。

 切島はブラドキングの強さに驚き物間は荼毘が拘束された事で安堵していた。

 すると荼毘は、ブラドキングにバカにしたような笑みを浮かべながら言った。

 

「そりゃあ舐めるだろ。思った通りの言動だ。後手に回った時点でお前ら負けてんだよ。ヒーロー育成の最高峰雄英と、平和の象徴オールマイト。ヒーロー社会に於いて最も信頼の高い二つが集まった。ここで信頼の揺らぐような案件が重なれば…その揺らぎは社会全体に蔓延すると思わないか? 例えば───…何度も襲撃を許す杜撰な管理体勢。挙句に生徒を犯罪集団に奪われる弱さ」

 

「てめー…まさか爆豪とひなちゃんを……」

 

「そういう事かよ!? ざけんじゃねぇ!」

 

 荼毘が言うと、切島と上鳴が怒りを露わにする。

 上鳴に至っては、両手からバチバチと放電して威嚇していた。

 だが荼毘は、ブラドキングや生徒達を嘲笑い続ける。

 

「見てろ。極々少数の俺達がお前らを追い詰めてくんだ」

 

 するとそこへ相澤が駆けつけ、荼毘の顔面に蹴りを入れる。

 相澤は、荼毘を捕縛布で縛り付けると容赦なく何度も踏みつけた。

 

「無駄だブラド。こいつは煽るだけで情報出さねぇよ」

 

「抹消ヒーロー相澤先生!」

 

「それに見ろ、偽物だ。さっきも来た」

 

 相澤の足元には、踏まれて溶けた荼毘の偽物がドロッと纏わりついていた。

 するとブラドキングが相澤に尋ねる。

 

「イレイザーお前何してた!」

 

「悪い、戦闘許可を出しに行ったつもりが洸汰くんを保護してた。預かってくれ。俺は戦線に出る。ブラドは引き続きここの護衛を頼む」

 

 そう言って相澤が洸汰を置いて行こうとすると、ブラドキングが呼び止めた。

 

「待てイレイザー! またどれだけ攻めてくるかわからん!」

 

「ブラド一人で大丈夫だ。この偽物を見ろ。二回ともコレ一体だ。強気な攻めは俺らの意識をここに縛る為と見た。人員が足りない中で案じられた策だこりゃ」

 

 相澤が言うと、切島と飯田が訴える。

 だが相澤は、生徒達に残るよう言った。

 

「プロを足止めする以上、狙いは生徒。たまたま判明したのが爆豪と相澤ってだけで、他にも狙ってるかも知れん。情報量じゃ依然圧倒的に負けてんだ。俺達はとりあえず、全員無事でいる事が勝利条件だ」

 

 そう言って相澤が飛び出したその時、相澤の携帯が鳴った。

 相澤は、携帯に送られてきたメッセージを見て目を見開く。

 そして血相を変えて森へと駆けていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 さらに遡り、ひなたが零のもとへ戻った直後。

 ひなたが零の言葉に目を見開き立ち尽くしていると、零はひなたを嘲笑う。

 

「ははぁ、なるほどなぁ…その反応はやっぱりアレか、お友達にも黙ってたのか。ははっ、嘘はいけないぜ101号! いくらいい子ぶって隠し通したって、過去は消えない! お前がこれから先どんなに世の為人の為に尽くしたって、誰もお前をヒーローとは認めない! お前が社会に受け入れられる時なんか来ない! お前の過去を知ったら、皆よってたかって石を投げるだろうよ!」

 

「違う…お父さんは、僕だってヒーローになれるって言ってくれたんだ!」

 

「あはは、そりゃあ口ではそう言うだろうさ! お前がグレて(ヴィラン)になったりなんかしたら、自分が殺されるかもしれないもんな! ハリボテの英雄教育で洗脳してでも手元に置いておきたいよな! くだらない情に絆されて本質を見失うな! お前はゴミヒーローの保身に利用されてるだけだ! 認めろよ、お前は根っからの(ヴィラン)なんだよ!」

 

「やめろ…!」

 

「いいや言うね! お前の目を覚まさせる為なら、何度だって言ってやる! お前の力は!!」

 

 

 

 ──お前なら誰よりも立派なヒーローになれる。お前の力は、人を救う為の力だ

 

 

 

 零が言うと、ひなたはふと相澤にかつてかけられた言葉を思い出す。

 だが零は、その言葉を全否定するかのようにひなたを貶める。

 

「人を殺す為の力だ!!」

 

 零がひなたを指差して告げた、その時だった。

 頭から血を流して倒れていた心操が、零の右足首を掴んだ。

 零の“個性”で歩けなくさせられているのを差し引いても打ち所が悪く平衡感覚を狂わされており立って逃げる事はままならなかったが、それでもせめてもの抵抗と言わんばかりに零の足首を掴む。

 すると零は、ハンっと鼻で笑い見下し左足で心操の頭を踏みながら告げていく。

 細身の身体からは考えられないほど力が強く、頭に足を置かれているだけで身動きが取れなかった。

 

「っ……!!」

 

「ふぅん、お前らそういうアレか。だったらいい事教えてやるよ、洗脳くん。あいつは君らとは何もかもが違う。生い立ちも、境遇も、生物としての種ですらな。人間の姿をしてるが人間じゃない。とあるヒーローの遺伝情報を再現して造られた、ただのタンパク質の塊でしかない。全身を何度もメスで切り刻まれて、薬漬けにされて、生みの親の奴隷にされて、親の命令で無抵抗の人間を大量虐殺して、壊れる度にまるで玩具を直すみたいに『修理』されてきたのさ。いつまでも子供のままのあの身体が何よりの証拠だよ」

 

 零がひなたを指差して笑いながら言うと、ひなたと心操は目を見開く。

 零の言葉は、言い方こそ最悪だが全て事実だった。

 マスターと呼ばれていた男の“個性”で身体をいじられ、身体の成長を妨げられていたのが何よりの証拠だった。

 零は、ひなたを指差しながら心操を見下ろして笑う。

 

「わかるかい? いくら過去の痕跡を消したって本質は変わらないのに、今更君らと同じになんてなれるわけがないのに、一丁前に人並みの幸せを夢見ちゃってる哀れで浅ましい“お人形”…それがお前が惚れた女の醜い正体なんだよ!!」

 

『っうぁあああああああああああああああ!!!』

 

 零が嘲笑うと、ひなたは絶望で顔をグシャグシャにする。

 一番知られたくなかった心操の前で自分の醜い過去を暴露され、普段の温厚な性格からは考えられないほど取り乱した表情をしていた。

 そして、必死に押さえ込んでいた感情がついに溢れ出し泣き叫びながら零に突進した。

 感情的になるあまり“個性”が発動していたが、『無効』を使っている零には効かなかった。

 そしてその直後、零はヘラヘラしながらひなたの腹を蹴飛ばした。

 吹っ飛ばされたひなたは、木に背中を叩きつけられる。

 

「がはっ……げほっ…!!」

 

 蹴飛ばされ木に叩きつけられたひなたは、その場に膝をついて激しく咳き込む。

 一方ひなたを蹴飛ばした零は、俯いて顔を左手で覆っていた。

 

「ったく…いきなりブッパとかふざけんなよ。こちとらまだ“個性”の調節が……」

 

 零が文句を言いつつも再び“個性”を使おうとすると、その前にひなたが再び『声』を張り上げようとする。

 零が“個性”を使う時は相澤同様必ず相手を目視しており、視線が逸れている間は“個性”を使えなかった。

 それに気付いたひなたは、零が再び左眼の“個性”を使う前に『声』で“個性”を封じようとした。

 だが、その時だった。

 

 

 

 ゴッ

 

 

 

「ぁぐっ……!?」

 

 突然視界が暗くなった直後顔に痛みが走り、ひなたは吹き飛ばされて地面をバウンドし数メートル離れた所に倒れ込んだ。

 鼻と口から血を流して倒れたひなたは、あり得ない光景に目を見開く。

 

「無駄でした♪」

 

 ひなたの目の前には、もう一人の零がいた。

 ひなたが声を出そうとした瞬間に現れたもう一人の零にひなたが驚いた一瞬の隙に、本物の零がひなたの顔を殴ったのだ。

 ひなたは、顔を強く殴られて意識が薄れゆく中目の前の現象が理解できず混乱していた。

 零の“個性”によって動けなくなっている心操も、ひなたと同様だった。

 

(クソッ、身体が動かない…声も出ない……何なんだこいつの“個性”…!? さっきの幻覚もこいつが生み出してたのか!? 何だ、『無効』の“個性”じゃないのか…!?)

 

 二人が混乱している中、零はひなたに近づき右手を差し伸べる。

 零の右眼は、うっすらと青く光っていた。

 

「さて…と。色々と面倒だったけど、これでようやく目的を果たした。まだまだ暴れ足りないだろうけど、説得してる時間も無いしそろそろおねんねよ」

 

 突然零の身体に捕縛武器が巻きつき、偽物の零が消える。

 零が捕縛武器が飛んできた方を見ると、“個性”を使って零を睨みつけている相澤がいた。

 

「ウチの生徒が随分と世話になったようだな。礼はきっちりさせて貰おうか」

 

 相澤が零を睨みつけると、零は不機嫌そうに相澤を睨み返す。

 相澤がそのまま零に飛び蹴りをしようとすると、零は相澤の膝を受け止めた。

 零が引き裂けそうな笑みを浮かべながら折り畳みナイフの刃を抜いて振るってくると、相澤はそれを全て受け流す。

 

「お前のクソみてぇな演説は全て聞かせてもらった。俺の娘を泣かすなよ」

 

 そう言って相澤が零を睨みながら右ストレートを放つと、零は間一髪それを避けたが、零の左頬に赤い線が走る。

 ほぼ互角の戦いを繰り広げていたが、相澤が一撃一撃に娘を侮辱された怒りを込めて攻撃を放ってくるせいか、零は若干攻めにくそうにしていた。

 相澤が捕縛武器を放ってくると、零はそれを軽い身のこなしで避けながら言った。

 

「ハッ、娘だぁ? 人の親になった事なんてないくせに、よくもまあ偉そうな口叩けたもんだな。イレイザーヘッド、僕はずっとあんたを殺したくて仕方なかった。今回はそれは叶いそうにないが、賭けに勝ったのは僕だ」

 

 零がニヤリと笑ったかと思うと、その直後には相澤の蹴りが飛んでくる。

 零が咄嗟に右脚で蹴りを受け止めると、零の右脚からはミシッと嫌な音がする。

 

「くっ…!」

 

 相澤の蹴りで脚を痛めた零は、一旦距離を取ろうとする。

 だがそれを見逃がす相澤ではなく、目に留まらぬ速度で零を捕縛すると、そのまま地面に組み伏せた。

 

「ただの負け惜しみだな。詳しい話は後で聞かせてもらおうか」

 

 そう言って相澤が零を連行しようとした、その時だった。

 零がニヤリと笑いながら、袖の中に隠し持っていた機械のスイッチをカチッと押す。

 すると、ゴーグルでも防ぎ切れない程の強力なレーザー光が放たれ、相澤の目を直撃する。

 

「っ…ぐぁああ!!」

 

 ゴーグルをしていなければ失明は確実な程の強力なレーザー光によって、相澤の目に焼かれるような激痛が襲いかかる。

 相澤が目の痛みに悶えると、零にかけていた“個性”が解け、零は右眼の青い眼光でひなたに催眠をかける。

 零は、相澤を指差しながら見下したように高笑いした。

 

「アッハハハ!! ざまあねえなあ!! 目に頼りすぎだぜイレイザーヘッドォ!! 目が“個性”の相手に対策を用意してくるのは当然だろ? あんた、昔から目が弱点だったよなァ!!」

 

「くっ……逃がすか…!!」

 

「目標は確保した。もうあんたに用はない」

 

「くそ……!」

 

「安心しろよ、イレイザーヘッド。お前は依然ヒーローだ。せいぜい可愛い生徒を命懸けで守り抜け」

 

『お前に守るべき娘なんかいない』、零は皮肉たっぷりに相澤に言った。

 零がひなたの腕を掴んで去ろうとすると、相澤は零の声から零の居場所を突き止め零目掛けて捕縛武器を投げつける。

 だが、その時だった。

 

 

 

「お久しぶりですね、イレイザーヘッド。彼女は我々にとって必要な人材。手出しはさせませんよ」

 

「なっ……」

 

 突然黒霧が現れ、零とひなたの目の前にワープゲートを出現させた。

 すると零はワープゲートの中に消えていき、ひなたもワープゲートに引き摺り込まれそうになる。

 

「ひなた!!」

 

 相澤は、血相を変えてひなたの方へと駆けていきひなたの方へと手を伸ばす。

 そして、一度相澤が『抹消』を使った事で零の暗示が解けた心操も、ひなたに向かって叫ぶ。

 

「っ……おい…! 行くなひなた…!! お前、相澤先生みたいなヒーローになるんだろ…!? お前は!! こんなところで終わるような奴じゃないだろ!?」

 

 心操は、自分の“個性”を使ってひなたを連れ戻そうとした。

 だが暗示をかけられたひなたには、その声は届かなかった。

 相澤は、なりふり構わずひなたに向かって手を伸ばす。

 ここで目の前にいる少女一人取り返せなければ、教師としてもヒーローとしても父親としても失格だと考えながら。

 だが非情にも、ワープゲートは相澤の目の前で閉じた。

 

「っ……クソッ…チクショウ…あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

 あと一歩のところでひなたを(ヴィラン)に攫われてしまった相澤は目を見開き、ひなたを守りきれなかった心操はその場で地面を叩きつけながら叫び声を上げた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 そして同時刻。

 

「Mr.避けろ」

 

「了解!」

 

 Mr.コンプレスが下がると同時に、荼毘は青い炎を出した。

 トゥワイスは思わず退き、緑谷達三人は炎で吹き飛ばされた。

 

「死柄木の殺せリストにあった顔だ! そこの地味ボロくんとお前! 無かったけどな!」

 

 トゥワイスがメジャーを取り出すと、轟は氷を出して攻撃した。

 トゥワイスは、咄嗟に轟の氷を避けた。

 一方トガは、チューブで繋がれた専用の注射器を緑谷に飛ばした。

 そして、ナイフを持って緑谷を組み伏せた。

 

「トガです出久くん! さっき思ったんですけど、もっと血出てた方がもっとカッコいいよ出久くん!!」

 

「はあ!!?」

 

 そして自分に“個性”を発動して逃れていたMr.コンプレスは、“個性”を解いて何もないところから現れた。

 

「いってて…飛んで追ってくるとは! 発想がトんでる」

 

「爆豪は?」

 

「もちろん」

 

 荼毘に尋ねられたMr.コンプレスは、右ポケットを探すが入れていた二つの球が無い事に気がつく。

 するとその直後障子が叫ぶ。

 

「二人共逃げるぞ!! 今の行為でハッキリした…! “個性”は分からんがさっきお前が散々見せびらかした───…右ポケットに入っていたこれが、常闇・爆豪だなエンターテイナー」

 

 障子が二つの球を取り出すと、緑谷と轟は喜びMr.コンプレスは驚いていたものの感心していた。

 

「障子くん!!」

 

「────ホホウ! あの短時間でよく…! さすが6本腕!! 弄り上手め!」

 

「っしでかした!!」

 

「アホが…」

 

「いや待て」

 

 荼毘は二人が入った球を取り戻そうとするが、Mr.コンプレスが制止する。

 するとその直後、黒霧のワープゲートと脳無が現れた。

 

「ワープの…」

 

「合図から5分経ちました。行きますよ荼毘」

 

「ごめんね出久くんまたね」

 

 トゥワイスとトガは、ワープゲートの中へ入っていった。

 

「待て、まだ目標が…」

 

「ああ…アレはどうやら走り出す程嬉しかったみたいなんでプレゼントしよう。悪い癖だよ、マジックの基本でね。ものを見せびらかす時ってのは…………」

 

 Mr.コンプレスは、シルクハットと仮面を取りながら言った。

 口の中には、爆豪と常闇が入った球が二つ入っていた。

 

見せたくないモノ(トリック)がある時だぜ?」

 

 すると直後、障子が持っていた球が氷に変わる。

 

「ぬっ!!?」

 

「氷結攻撃の際に『ダミー』を用意し、右ポケットに入れておいた。右手に持ってたもんが右ポケットに入ってんの発見したらそりゃー嬉しくて走り出すさ」

 

「くっそ!!!」

 

 常闇と爆豪を取り戻すのに失敗した緑谷は、歯を食いしばって悔しがった。

 

「そんじゃーお後が宜しいようで…」

 

 Mr.コンプレスと荼毘がワープゲートに入ろうとすると、突然Mr.コンプレスの仮面にレーザーが当たって割れる。

 

「!?」

 

 レーザーを出したのは、茂みに隠れていた青山だった。

 Mr.コンプレスが口から球を吐き出したと同時に緑谷達三人が駆け出し、障子が一つ球を掴むがもう一つの球は荼毘が掴んだ。

 

「哀しいなあ、轟焦凍」

 

 荼毘は、手を伸ばした轟に憐れむような目を向けた。

 

「確認だ。解除しろ」

 

「っだよ今のレーザー…俺のショーが台無しだ!」

 

 Mr.コンプレスが指を鳴らすと、障子が掴んだ球は常闇に、荼毘が掴んだ球は爆豪に変わった。

 すると、荼毘はニィと笑う。

 

「問題なし」

 

 緑谷は、ボロボロの身体に鞭打って飛び出した。

 

「かっちゃん!!」

 

「来んな、デク」

 

 荼毘に首を掴まれた爆豪は、そう言い残してワープゲートの中へと消えていった。

 森の中には、残された緑谷の叫び声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 





(ヴィラン)名:(ゼロ)

本名:不明

性別:男性

年齢:23歳

所属:(ヴィラン)連合

“個性”名:『???』『無効』(右眼と左眼で別の“個性”を所持)

身長:168cm

体重:54kg

誕生日:2月29日

血液型:不明

出身地:不明

好きなもの:妹

嫌いなもの:妹

性格:拗らせシスコン

戦闘スタイル:初見殺し&近接格闘

口調:一人称は『僕』。口調はフレンドリーだが、連合メンバー曰く『何故か癇に障る喋り方』。

ICV:緒方恵美



VILLAIN’S STATUS
 
パワー:B
スピード:A
テクニック:S
知力:B
協調性:E

(ヴィラン)連合の一員で、自称ひなたの兄。元々はひなたを生み出した組織『ウロボロス』にいたが、施設から姿を消し、(ヴィラン)としての人生を歩んでいる。その後の経緯は不明だが、(ヴィラン)連合に加入している。
何故かひなたに執着して連合にスカウトしようとしているが、目的は不明。
 
◯容姿
長い白髪でオッドアイ(右が青で左が赤)。所謂アルビノ。全体的に中性的な造形で美形なため女性と間違えられがちだが、歴とした男性。
ズボラで服装に無頓着なため、草臥れたロングコートを着ており美形の顔がなければ浮浪者にしか見えない。

◯“個性”
右眼と左眼でそれぞれ別の“個性”を所持している。
両眼の“個性”を同時に使う事はできないため、片方の“個性”を使う時はもう片方の目は髪で遮っている。

『???』
強力な幻覚を操る“個性”。“個性”使用中は右眼が青く光る。
他にも強力なマインドコントロールを行ったり、動物を使役したりする事ができる。
ただし効果の個人差が大きく、人によっては全く効かない場合もある。
また、右眼を開けていないと“個性”を発動できない模様。

『無効』
左眼側の“個性”。“個性”使用中は左眼が赤く光る。
左眼で見た相手の“個性”を無効化する(あくまで自分に効かなくなるだけで、“個性”そのものが消えるわけではない)。
ただし発動型と変形型に限り、物理攻撃までは無効化できない。
ちなみに探知機の役割も果たしており、相手が自分に対して何の“個性”を使っているのかもわかる。

寮制になった事だしそろそろひーひーカップルをくっつけたいんだけどどこまで進展させてほしい?アンケートによって結果が決まります

  • くっついた、はいおわり
  • お部屋デートとかぬるいやつ
  • A(軽め)
  • A(ガッツリめ)
  • B(直接的な描写ナシ 仄めかす程度)
  • C(直接的な描写ナシ 仄めかす程度)
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